特許第6152275号(P6152275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6152275-シート剥離装置および剥離方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152275
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】シート剥離装置および剥離方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170612BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20170612BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   !H01L21/304 622J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-19806(P2013-19806)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-150232(P2014-150232A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年9月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 幹
(72)【発明者】
【氏名】高野 健
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 孝久
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−004290(JP,A)
【文献】 特開2008−288485(JP,A)
【文献】 特開2004−153270(JP,A)
【文献】 特開2009−044008(JP,A)
【文献】 特開2001−319906(JP,A)
【文献】 特開2009−094132(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0308221(US,A1)
【文献】 特開2007−173495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0261783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の一方の面に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付する貼付手段と、
前記板状部材と前記剥離用テープとを相対移動させて前記板状部材から前記接着シートを剥離する移動手段と、
前記接着シートが剥離されて表出した板状部材の一方の面を押える押え手段とを備え、
前記押え手段は、前記板状部材と前記剥離用テープとの相対移動に合わせて前記剥離用テープの剥離方向に移動しながら、前記接着シートが剥離されて表出した前記接着シートの糸状に延びた接着剤層を切断する接着剤切断手段を備えていることを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
板状部材の一方の面に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付する工程と、
前記板状部材と前記剥離用テープとを相対移動させて前記板状部材から前記接着シートを剥離する工程と、
前記接着シートが剥離されて表出した板状部材の一方の面を接着剤切断手段で押えつつ、前記板状部材と前記剥離用テープとの相対移動に合わせて前記剥離用テープの剥離方向に前記接着剤切断手段を移動させながら、前記接着シートが剥離されて表出した前記接着シートの糸状に延びた接着剤層を前記接着剤切断手段で切断する工程とを実施することを特徴とするシート剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材に貼付された接着シートを剥離するシート剥離装置および剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、板状部材である半導体ウェハ(以下、単にウェハという場合がある)の表面に貼付された接着シートを剥離するシート剥離装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のシート剥離装置は、保護テープ(接着シート)が貼付されたウェハを吸着保持するテーブルと、剥離テープ(剥離用テープ)を供給する剥離テープ供給部と、剥離テープおよび保護テープを介してウェハを押え付けるエッジ部材とを備え、エッジ部材でウェハの持ち上がりを抑制し、当該ウェハの割れを防止しつつ保護テープを剥離するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−165570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、図3に示すように、接着シートASの剥離縁を微視的に観ると、接着シートASにおける剥離直後の接着剤層ADが糸状に延びるため、接着シートASが剥離された直後の板状部材WF1には、当該糸状に伸びた接着剤層ADによって持ち上げられる力が働く。このため、従来のシート剥離装置のエッジ部材(図3中EM)では、依然としてウェハの持ち上がりを抑制することができず、当該ウェハの割れを防止しつつ接着シートを剥離することができないという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、接着シートを剥離する際に板状部材が持ち上がって割れてしまうことを防止できるシート剥離装置および剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート剥離装置は、板状部材の一方の面に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付する貼付手段と、前記板状部材と前記剥離用テープとを相対移動させて前記板状部材から前記接着シートを剥離する移動手段と、前記接着シートが剥離されて表出した板状部材の一方の面を押える押え手段とを備え、前記押え手段は、前記板状部材と前記剥離用テープとの相対移動に合わせて前記剥離用テープの剥離方向に移動しながら、前記接着シートが剥離されて表出した前記接着シートの糸状に延びた接着剤層を切断する接着剤切断手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明のシート剥離装置において、前記押え手段は、前記板状部材の一方の面と前記接着シートとの間に進入可能に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明のシート剥離方法は、板状部材の一方の面に貼付された接着シートに剥離用テープを貼付する工程と、前記板状部材と前記剥離用テープとを相対移動させて前記板状部材から前記接着シートを剥離する工程と、前記接着シートが剥離されて表出した板状部材の一方の面を接着剤切断手段で押えつつ、前記板状部材と前記剥離用テープとの相対移動に合わせて前記剥離用テープの剥離方向に前記接着剤切断手段を移動させながら、前記接着シートが剥離されて表出した前記接着シートの糸状に延びた接着剤層を前記接着剤切断手段で切断する工程とを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、押え手段で接着シートが剥離されて表出した板状部材の一方の面を押えるため、当該一方の面から接着シートを剥離する際に板状部材が持ち上げられて割れてしまうことを防止することができる。
【0010】
本発明において、押え手段を板状部材と接着シートとの間に進入可能に設ければ、板状部材が持ち上げられて割れてしまうことをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシート剥離装置の側面図。
図2】シート剥離装置の動作説明図。
図3】従来のシート剥離装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、水平面内の軸とし、Z軸は、水平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸の紙面に直交する手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0013】
図1(A)において、シート剥離装置1は、板状部材としてのウェハWFの一方の面(上面)に貼付された接着シートASに剥離用テープPTを貼付する貼付手段3と、ウェハWFと剥離用テープPTとを相対移動させてウェハWFから接着シートASを剥離する移動手段5と、接着シートASが剥離されて表出したウェハWFの一方の面を押える押え手段としての第1押え手段6と、接着シートASを介してウェハWFを押える第2押え手段7とを備え、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によってウェハWFを他方の面(下面)から支持する支持手段8の上方に設けられている。
【0014】
貼付手段3は、剥離用テープPTを支持する支持ローラ31と、駆動機器としての回動モータ32によって駆動される駆動ローラ33との間に剥離用テープPTを挟み込むピンチローラ34と、剥離用テープPTを案内するガイドローラ35と、駆動機器としてのリニアモータ36のスライダ36Aに支持されたスライドプレート37と、駆動機器としての直動モータ38の出力軸38Aに支持された押圧ローラ39と、駆動機器としての直動モータ40の出力軸40Aに支持されたヒータ41を有する押圧ヘッド42と、駆動機器としての直動モータ43の出力軸43Aに支持された切断刃44と、切断刃44を受ける受け板45とを備え、その全体が図示しない駆動機器によって昇降可能に支持されたフレーム30に支持されている。
【0015】
移動手段5は、駆動機器としてのリニアモータ51のスライダ51Aに支持され、一対の把持爪52を有する駆動機器としてのチャックシリンダ53を備えている。
【0016】
第1押え手段6は、駆動機器としてのリニアモータ62の第1スライダ62Aに支持された駆動機器としての直動モータ63の出力軸63Aに支持され、ウェハWFの上面に当接可能に設けられた第1押え部材61を備えている。第1押え部材61は、左方向に向って次第に厚さが薄くなるくさび形状に形成され、前後方向の長さがウェハWFの前後方向の長さよりも長く形成されている。また、第1押え部材61の下面61Aには、第1押え部材61がウェハWF上面に当接して移動する際に、当該ウェハWF上面に傷が付くことを防止する樹脂やローラ等の図示しない低摩擦部材が設けられている。なお、第1押え部材61におけるくさび形状の尖った部分は、図3の従来例で示す接着シートASの接着剤層が糸状に延びた部分を切断する接着剤切断手段としても機能する。
【0017】
第2押え手段7は、当該第2押え手段7としても機能する上記リニアモータ62の第2スライダ62Bに支持された駆動機器としての直動モータ72の出力軸72Aに支持され、接着シートASの上面に当接可能に設けられた第2押え部材71を備えている。第2押え部材71は、右方向に向って次第に厚さが薄くなるくさび形状に形成され、前後方向の長さがウェハWFの前後方向の長さよりも長く形成されている。また、第2押え部材71の下面71Aには、第2押え部材71が接着シートASに当接して移動する際に、接着シートASに傷が付くことを防止する樹脂やローラ等の図示しない保護部材が設けられている。
【0018】
以上のシート剥離装置1において、接着シートASを剥離する手順を説明する。
先ず、剥離用テープPTを図1(A)中実線で示すようにセットする。次に、図示しない搬送手段がウェハWFを支持手段8上に載置すると、支持手段8が図示しない減圧手段を駆動し、ウェハWFを吸着支持する。その後、貼付手段3が回動モータ32およびリニアモータ36を駆動し、駆動ローラ33を回転させると同時にスライドプレート37を右方向に移動させ、図1(A)中二点鎖線で示すように、一対の把持爪52間に剥離用テープPTを繰り出す。次いで、貼付手段3が直動モータ38およびリニアモータ36を駆動し、押圧ローラ39を上方に退避させた後、スライドプレート37を左方向に移動させる。そして、移動手段5がチャックシリンダ53およびリニアモータ51を駆動し、図1(B)中実線で示すように、把持爪52で剥離用テープPTを把持した後、チャックシリンダ53を右方向に移動させて剥離用テープPTを引き出す。
【0019】
次に、貼付手段3が直動モータ40を駆動し、図1(B)中二点鎖線で示すように、ヒータ41で加熱された押圧ヘッド42を下降させ、当該押圧ヘッド42で剥離用テープPTを接着シートASの外縁領域に押圧して貼付する。次いで、貼付手段3が直動モータ38を駆動し、押圧ローラ39で剥離用テープPTをスライドプレート37に押圧した状態で、貼付手段3が直動モータ43を駆動し、切断刃44を下降させて剥離用テープPTを切断する。そして、貼付手段3が直動モータ40および直動モータ43を駆動し、押圧ヘッド42および切断刃44を元の位置に戻した後、図示しない駆動機器を駆動し、フレーム30を上昇させる。
【0020】
次に、第2押え手段7がリニアモータ62を駆動し、第2押え部材71をウェハWFの右外縁近傍に移動させた後、直動モータ72を駆動し、図2(A)中二点鎖線で示すように、第2押え部材71の下面71Aを接着シートASに当接させる。そして、移動手段5がリニアモータ51を駆動し、図2(A)中二点鎖線で示すように、把持爪52を左方向に移動させて第2押え部材71で剥離用テープPTを折り返す。次いで、第1押え手段6がリニアモータ62および直動モータ63を駆動し、図2(A)中二点鎖線で示すように、第1押え部材61をウェハWFと接着シートASとの間に進入させる。その後、チャックシリンダ53の左方向への移動に合わせて、第1押え手段6および第2押え手段7がリニアモータ62を駆動し、図2(B)に示すように、第1および第2押え部材61、71をそれぞれ同期して左方向に移動させることにより、第2押え部材71で接着シートASの上面を押えつつ、かつ、第1押え部材61でウェハWFの上面を押えつつ、接着シートASをウェハWFから剥離する。
【0021】
そして、接着シートASが全て剥離されると、支持手段8が図示しない減圧手段の駆動を停止し、図示しない搬送手段がウェハWFを次の工程に搬送する。また、第1押え手段6および第2押え手段7がリニアモータ62を駆動するとともに、移動手段5、第1押え手段6、および第2押え手段7がリニアモータ51、62を駆動し、チャックシリンダ53、第1押え部材61、および第2押え部材71を初期位置に移動させた後、図示しない駆動機器によってフレーム30を下降し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0022】
以上のような本実施形態によれば、第1押え手段6で接着シートASが剥離されて表出したウェハWFの上面を押えるため、当該上面から接着シートASを剥離する際にウェハWFが持ち上げられて割れてしまうことを防止することができる。
さらに、接着剤切断手段で糸状に伸びた接着剤層を切断するので、ウェハWFが持ち上げられて割れてしまうことをより効果的に防止することができる。なお、第1押え部材61の下面61Aは、ウェハWF上面に当接していなくてもよい。
【0023】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0024】
例えば、第1押え手段6がウェハWFと接着シートASとの間に第1押え部材61を進入させることは必須ではない。
また、第1押え部材61および第2押え部材71の少なくとも一方を振動させる振動手段を設け、当該振動手段で接着シートASの剥離を補助してもよい。
さらに、第2押え手段7は、接着シートASを介してウェハWFを押えることができればよく、例えば、ローラやエア噴き付けによりウェハWFを押える構成としてもよい。
また、接着剤切断手段にコイルヒータやニクロム線等の加熱手段、回行するワイヤ等の線部材、超音波振動体や振動モータ等の振動手段等を設け、糸状に延びた接着剤層を切断しやすくしてもよい。
【0025】
貼付手段3は、押圧ローラ39や押圧ヘッド42にかえて、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等を採用することができ、エア噴き付けにより押圧する構成も採用することができる。
また、押圧ヘッド42を振動させる振動手段を設けたり、ヒータ41に換えて温風、放電加熱機、赤外線加熱機、マイクロ波照射装置等を設けたりしてもよい。
【0026】
また、移動手段5は、支持手段8を移動させてもよく、支持手段8とチャックシリンダ53との両方を移動させてもよい。
【0027】
さらに、本発明における接着シートASの種別や材質などは、特に限定されず、例えば、基材シートと接着剤層との間に設けられる中間層を有するものや、他の層を有する等3層以上のものでもよい。また、接着シートASが貼付される板状部材は、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示でき、このような半導体ウェハに貼付する接着シートは、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルムに限らず、その他の任意のシート、フィルム、テープ等、任意の用途、形状のシート等が適用できる。さらに、板状部材が光ディスクの基板であって、接着シートが記録層を構成する樹脂層を有したものであってもよい。また、板状部材としては、ガラス板、鋼板、樹脂板、基板等や、その他の部材のみならず、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。さらに、ウェハの表面にパターン回路が形成されたものも対象とすることができる。
また、剥離用テープPTは、感圧接着性の接着シートや感熱接着性の接着シートであってもよく、感圧接着性の接着シートが採用された場合、ヒータ41は設けなくてもよい。
【0028】
さらに、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0029】
1 シート剥離装置
3 貼付手段
5 移動手段
6 第1押え手段(押え手段)
AS 接着シート
WF ウェハ(板状部材)
PT 剥離用テープ
図1
図2
図3