【実施例】
【0048】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り乾燥固形分あるいは実質成分の質量部および質量%を示す。
【0049】
(実施例1)
LBKP/NBKP=80/20部からなるパルプスラリーに、填料として二酸化チタン20部、両性PAM系乾燥紙力剤(荒川化学工業社製:ポリストロン851)1.5部、湿潤紙力剤(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂)1部、硫酸アルミニウム2部、アルミン酸ナトリウム0.5部を添加し、調成した紙料を長網抄紙機にて坪量60g/m
2となるように抄造し、抄造原紙を得た。JIS P 8251に準じて測定される灰分量は、16%であった。
【0050】
抄造原紙に含浸樹脂としてアクリル酸エステルエマルジョン(DIC社製:ボンコートAN−730)100部、アニオン系界面活性剤としてアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(花王ケミカル社製:ペレックスNBL)3部からなる含浸液をサイズプレス方式にて含浸樹脂の含有量が抄造原紙中に8%となるよう含浸した。シリンダードライヤーにて乾燥後、水溶性多価陽イオン塩として硝酸カルシウムを1.0g/m
2、界面活性剤(日信化学工業社製:オルフィンE1010)を0.01g/m
2となるように水溶性多価陽イオン塩および界面活性剤を含有する塗布液をグラビア塗工方式にて、含浸樹脂を含浸・乾燥した抄造原紙の片面に塗布・乾燥して、実施例1の化粧シート用原紙を作製した。なお、塗布・乾燥した面側を塗布面という。
【0051】
(実施例2)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンの含有量を10%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の化粧シート用原紙を作製した。
【0052】
(実施例3)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンの含有量を20%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の化粧シート用原紙を作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンの含有量を35%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の化粧シート用原紙を作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンをSBRエマルジョン(DIC社製:ラックスター3500T)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の化粧シート用原紙を作製した。
【0055】
(実施例6)
実施例2のアクリル酸エステルエマルジョンをSBRエマルジョン(DIC社製:ラックスター3500T)に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例6の化粧シート用原紙を作製した。
【0056】
(実施例7)
実施例3のアクリル酸エステルエマルジョンをSBRエマルジョン(DIC社製:ラックスター3500T)に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例7の化粧シート用原紙を作製した。
【0057】
(実施例8)
実施例4のアクリル酸エステルエマルジョンをSBRエマルジョン(DIC社製:ラックスター3500T)に変更した以外は、実施例4と同様にして、実施例8の化粧シート用原紙を作製した。
【0058】
(実施例9)
実施例3の硝酸カルシウムの塗布量を0.5g/m
2に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例9の化粧シート用原紙を作製した。
【0059】
(実施例10)
実施例3の硝酸カルシウムの塗布量を2.0g/m
2に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例10の化粧シート用原紙を作製した。
【0060】
(実施例11)
実施例3の硝酸カルシウムをカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例11の化粧シート用原紙を作製した。
【0061】
(実施例12)
実施例7の硝酸カルシウムをカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)に変更した以外は、実施例7と同様にして、実施例12の化粧シート用原紙を作製した。
【0062】
(実施例13)
実施例9の硝酸カルシウムをカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)に変更した以外は、実施例9と同様にして、実施例13の化粧シート用原紙を作製した。
【0063】
(実施例14)
実施例10の硝酸カルシウムをカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)に変更した以外は、実施例10と同様にして、実施例14の化粧シート用原紙を作製した。
【0064】
(実施例15)
実施例3の硝酸カルシウムの塗布量を0.5g/m
2に変更し且つカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)の塗布量が0.5g/m
2になるように加える以外は、実施例3と同様にして、実施例15の化粧シート用原紙を作製した。
【0065】
(比較例1)
実施例3の硝酸カルシウムを塗布しない以外は実施例3と同様にして、比較例1の化粧シート用原紙を作製した。
【0066】
(比較例2)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンの含有量を5%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の化粧シート用原紙を作製した。
【0067】
(比較例3)
実施例1のアクリル酸エステルエマルジョンの含有量を40%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の化粧シート用原紙を作製した。
【0068】
(比較例4)
実施例1で抄造した抄造原紙に、水溶性多価陽イオン塩として硝酸カルシウムを1.0g/m
2、界面活性剤(日信化学工業社製:オルフィンE1010)を0.01g/m
2となるように水溶性多価陽イオン塩および界面活性剤を含有する塗布液をグラビア塗工方式にて、片面に塗布・乾燥した。この水溶性多価陽イオン塩が塗布・乾燥された抄造原紙に、含浸樹脂としてアクリル酸エステルエマルジョン(DIC社製:ボンコートAN−730)100部、アニオン系界面活性剤としてアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(花王ケミカル社製:ペレックスNBL)3部からなる含浸液をサイズプレス方式にて含浸樹脂の含有量が抄造原紙中に8%となるよう含浸した。シリンダードライヤーにて乾燥後、比較例4の化粧シート用原紙を作製した。
【0069】
(比較例5)
実施例1で抄造した抄造原紙に、水溶性多価陽イオン塩としてカチオン性樹脂(里田化工社製:ジェットフィックス5052)を1.0g/m
2、界面活性剤(日信化学工業社製:オルフィンE1010)を0.01g/m
2となるように水溶性多価陽イオン塩および界面活性剤を含有する塗布液をグラビア塗工方式にて、片面に塗布・乾燥した。このカチオン性樹脂が塗布・乾燥された抄造原紙に、含浸樹脂としてアクリル酸エステルエマルジョン(DIC社製:ボンコートAN−730)100部、アニオン系界面活性剤としてアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(花王ケミカル社製:ペレックスNBL)3部からなる含浸液をサイズプレス方式にて含浸樹脂の含有量が抄造原紙中に8%となるよう含浸した。シリンダードライヤーにて乾燥後、比較例5の化粧シート用原紙を作製した。
【0070】
(比較例6)
LBKP/NBKP=80/20部からなるパルプスラリーに、填料として二酸化チタン20部、両性PAM系乾燥紙力剤(荒川化学工業社製:ポリストロン851)1.5部、湿潤紙力剤(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂)1部、硫酸アルミニウム2部、アルミン酸ナトリウム0.5部、硝酸カルシウム2.2部を添加し、調成した紙料を長網抄紙機にて坪量60g/m
2となるように抄造した。JIS P 8251に準じて測定した灰分量は、16%であった。
【0071】
抄造原紙に含浸樹脂としてアクリル酸エステルエマルジョン(DIC社製:ボンコートAN−730)100部、アニオン系界面活性剤としてアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(花王ケミカル社製:ペレックスNBL)3部からなる含浸液をサイズプレス方式にて含浸樹脂の含有量が抄造原紙中に8%となるよう含浸した。シリンダードライヤーにて乾燥後、界面活性剤(日信化学工業社製:オルフィンE1010)を0.01g/m
2となるように界面活性剤を含有する塗布液をグラビア塗工方式にて、含浸樹脂を含浸・乾燥した抄造原紙の片面に塗布・乾燥して、比較例6の化粧シート用原紙を作製した。
【0072】
上記実施例1〜15および比較例1〜6の化粧シート用原紙について、次に記載した方法で評価を行い、結果を表1に示した。
【0073】
<コッブ吸水度>
化粧シート用原紙の塗布面について、JIS P 8140に準じて、接触時間30秒におけるコッブ吸水度を測定した。
【0074】
<インクジェット印刷適性>
セイコーエプソン社製ワイドフォーマットプリンターSureColorPX−H9000にて、化粧シート用原紙の塗布面に木目柄の印刷を行い、インク吸収性の点から状態観察し、以下の基準で評価した。本発明において、3以上の評価であればインクジェット印刷適性に優れるとする。
4:良好である。
3:若干画像の滲みがあるが、実用上問題なし。
2:画像に滲みあり、実用上問題となる。
1:画像の滲みが著しい。
【0075】
<耐セロハンテープ剥離性>
化粧シート用原紙を試験片250mm×100mmの大きさに裁断した。試験片の塗布面とは反対側の面に、酢酸ビニル系接着剤(中央理化工業社製:リカボンドAC−500)を用いてパーティクルボードに貼り合わせた。貼り合わせた状態で、化粧シート用原紙の塗布面にセロハンテープ(積水化学工業社製:セキスイセロテープ(登録商標)No.252、幅24mm)を貼り、試験片を40℃の乾燥機で48時間保存した。保存後、パーティクルボードに対し垂直方向へ一定の力でセロハンテープを剥がし、試験片の剥げ具合を以下の基準で評価した。本発明において、3以上の評価であれば高い表面強度であるとする。
4:セロハンテープに、紙粉がほとんど付着していない。
3:セロハンテープに、極僅かに紙粉が付着している。
2:セロハンテープに、明らかに紙粉または小紙片が付着している。
1:セロハンテープに、紙片が付着している。
【0076】
<層間剥離強度>
化粧シート用原紙をMD方向に15mm幅で裁断し試験片を作製した。JIS P 8139に準じて、剥離強度を測定した。本発明において、剥離強度が130N/m以上であれば高い剥離強度であるとする。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より、本発明に相当する実施例1〜15は、優れたインクジェット印刷適性を有し、高い表面強度を有することが分かる。また実施例1〜4および11と実施例5〜8および12との対比から、含浸樹脂が(メタ)アクリル酸系樹脂である方が、高い層間剥離強度が得られると分かる。またコッブ吸水度が15g/m
2以上30g/m
2以下の範囲が好ましいと分かる。
【0079】
カチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩から選ばれる少なくとも1種を主成分とする塗布液を塗布していない比較例1並びに含浸樹脂の含有量が本発明の範囲に該当しない比較例2および3は、本発明にかかる効果を得ることができないと分かる。
また、含浸樹脂を含浸・乾燥するより先に抄造原紙にカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩から選ばれる少なくとも1種を主成分とする塗布液を塗布してなる比較例4および5並びにカチオン性樹脂および水溶性多価陽イオン塩から選ばれる少なくとも1種を抄造原紙の紙料に含有させた比較例6は、本発明にかかる効果を得ることができないと分かる。
【0080】
<化粧板の作製および物理的な強度試験>
実施例1〜8および比較例2の化粧シート用原紙の塗布面に、セイコーエプソン社製ワイドフォーマットプリンターSureColorPX−H9000を用いて木目柄の印刷を行い、さらにウレタン樹脂液(大日精化工業製、PCT U−26)を塗工し60℃で3日間熱処理して化粧シートを作製した。パーティクルボードに酢酸ビニル系エマルジョン接着剤(中央理化工業製、リカボンドAC−500)を70g/m
2塗布し、これに化粧シートをロールラミネートにより貼着して化粧板を作製した。
【0081】
実施例1〜8および比較例2の化粧シート用原紙を用いて製造される化粧板を、表面にカッターで傷付けてから成人男性によって100回剪断応力がかかるように蹴るという試験を行った。結果、実施例1〜8の化粧シート用原紙を用いて製造される化粧板は物理的な強度に優れることが分かった。特に、実施例2〜4の化粧シート用原紙を用いて製造される化粧板は優れていた。比較例2の化粧シート用原紙を用いて製造される化粧板は、化粧シート用原紙から剥がれ、物理的な強度に劣るものであった。