(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
間欠塗工を行なう際には、スロットダイの吐出口と基材との間隔を精度よく維持することが重要となる。吐出口が基材に対して変動すると、所望の形状で精度よく塗工領域を形成できないからである。
【0007】
さて間欠塗工は例えば三方弁により経路を繰り返し切り替えることにより行なわれるところ、経路の切替は機械的な動作(配管の開閉)を伴うので、当該切替に応じて三方弁には振動が生じる。そして、この振動が吐出口へと伝達されると、吐出口と基材との間隔に変動が生じえる。これは上述のとおり好ましくない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、切替手段からノズルへと伝達される振動を低減できる間欠塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ノズルから基材に向けて塗工液を間欠的に塗工する間欠塗工装置であって、ノズルと、前記ノズルに接続され、塗工液が前記ノズルに向かって流れる供給配管と、前記供給配管の開閉を繰り返し切り替えることで、前記ノズルから前記基材に向けて前記塗工液を間欠的に吐出させる切替手段と、前記ノズルが載置されるノズルベースと、前記ノズルベースと別体であって、前記切替手段が載置される切替手段ベースと、
前記ノズルベースを移動させて前記ノズルの前記基材に対する位置を調整するノズル移動手段と、前記ノズル移動手段による前記ノズルベースの移動方向と同じ方向に前記切替手段を移動させて前記ノズルの移動に追随して前記切替手段を移動させる切替移動手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項
2の発明は、請求項
1記載の間欠塗工装置において、前記ノズル移動手段は前記ノズルベースを水平方向に移動させ、前記切替移動手段は、任意の水平方向に前記切替手段を自由に移動可能であり、前記ノズルの移動が前記供給配管を介して伝達されることで、前記移動方向と同じ方向に前記切替手段を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項
3の発明は、請求項1
または請求項2に記載の間欠塗工装置において、前記切替手段ベースに設けられ、前記切替手段から前記ノズルへの振動伝達を抑制する振動抑制手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項
4の発明は、請求項1から請求項
3のいずれか一つに記載された間欠塗工装置と、前記間欠塗工装置によって前記塗工液が塗布された前記基材に対して加熱処理を行なって前記塗工液を乾燥させる乾燥手段と、前記基材を前記間欠塗工装置および前記乾燥手段へと順に搬送する搬送手段と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
間欠塗工装置においては、ノズルと切替手段との間の供給配管が短く設定される。これは、切替手段による供給配管の開閉の切替を、ノズルでの間欠的な吐出(つまり吐出/停止)に速やかに反映させるためである。そして互いに近距離に配置される部材は通常は同一体のベース状に載置される。
【0015】
一方で請求項1,
4の発明によれば、このように近距離に配置されるノズルと切替手段とが別体のノズルベースと切替手段ベースとにそれぞれ載置される。切替手段による供給配管の開閉の切替は機械的変化を伴うので振動が生じるところ、この振動がベースを介してノズルに伝達されにくい。ノズルの振動は間欠塗工の精度を悪化させるところ、このような間欠塗工の精度悪化を抑制することができる。
【0016】
請求項
1の発明ではノズルと切替手段との位置関係が変化しにくいので、供給配管に生じる応力を低減することができる。特に、間欠塗工装置においてはノズルと切替手段との間の距離が短い。よって仮に切替手段の位置が固定されていれば、ノズルの移動に伴って比較的大きい供給配管に応力が生じる。したがって、応力を低減できる請求項
1の発明は間欠塗工装置において特に好適となるのである。
【0017】
一方で請求項
1の発明では、切替手段が移動する。よって切替手段の上流側(ノズルとは反対側)の部材、例えば塗工液を貯留する貯留手段と、切替手段との間の相対位置が変化しえる。しかるに間欠塗工の精度向上という観点で、切替手段の上流側の配管長を短く設定する必要性は低い。よって当該配管長を長く設定することができる。このように配管長を長く設定すれば、切替手段の移動に伴う配管の応力は小さく、問題になりにくい。
【0018】
請求項
2の発明によれば、切替移動手段が任意の水平方向に切替手段を自由に移動可能であるので、ノズル移動手段に対して切替移動手段の位置あわせを不要にできる。
【0019】
またノズルの位置が固定されて間欠塗工が行なわれた際に、切替手段は、自身の切替動作に起因して水平方向に移動できるので、切替手段ベースを介したノズルへの振動が伝達されにくい。
【0020】
請求項
3の発明によれば、振動の伝達を更に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
<塗膜形成システムの全体構成>
図1は、本発明に係る間欠塗工装置を組み込んだ塗膜形成システム1の全体構成を示す図である。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0024】
この塗膜形成システム1は、基材としての金属箔の上に電極材料である活物質の塗工液を塗工し、その塗工液の乾燥処理を行ってリチウムイオン二次電池の電極製造を行う装置である。塗膜形成システム1は、間欠塗工装置10、乾燥部70および搬送機構80を備える。また、塗膜形成システム1は、システム全体を管理する制御部90を備える。
【0025】
基材5は、リチウムイオン二次電池の集電体として機能する金属箔である。塗膜形成システム1にてリチウムイオン二次電池の正極を製造する場合には、基材5として例えばアルミニウム箔(Al)を用いることができる。また、塗膜形成システム1にて負極を製造する場合には、基材5として例えば銅箔(Cu)を用いることができる。基材5は長尺のシート状の金属箔であり、その幅および厚さについては特に限定されるものではないが、例えば幅600mm〜700mm、厚さ10μm〜20μmとすることができる。
【0026】
長尺の基材5は、巻き出しローラ81から送り出されて巻き取りローラ82によって巻き取られることにより、間欠塗工装置10、乾燥部70の順に搬送される。搬送機構80は、これら巻き出しローラ81および巻き取りローラ82と複数の補助ローラ83とを備えて構成される。なお、補助ローラ83の個数および配置位置については、
図1の例に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に増減することができる。
【0027】
乾燥部70は、間欠塗工装置10にて基材5の上に形成された塗工液の塗膜の乾燥処理を行う。乾燥部70は、搬送機構80によって搬送される基材5を加熱することによって、塗工液から溶剤を蒸発させて乾燥処理を行う。乾燥部70は、例えば、塗工液の塗膜を緩やかに昇温させる予熱部、塗膜を所定温度にまで昇温して主たる加熱を行うメイン乾燥部、塗膜をより高温に加熱して膜中の歪みや残留応力を除去するアニール部、加熱された塗膜を冷却する冷却部などを備えていても良い。
【0028】
<塗工装置>
図2は、本発明に係る間欠塗工装置10の概略構成を示す図である。間欠塗工装置10は、主たる要素として塗工ノズル11、貯留タンク20、供給配管30,37および循環配管40を備える。貯留タンク20は、リチウムイオン二次電池の電極材料である活物質の溶液を塗工液として貯留する。塗膜形成システム1にて正極を製造する場合には、正極材料の塗工液として、例えば正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO
2)、導電助剤であるカーボン(C)、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の混合液を貯留する。コバルト酸リチウムに代えて、正極活物質としてニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、燐酸鉄リチウム(LiFePO
4)などを用いることもできる。
【0029】
一方、塗膜形成システム1にて負極を製造する場合には、負極材料の塗工液として、例えば負極活物質である黒鉛(グラファイト)、結着剤であるPVDF、溶剤であるNMPの混合液を貯留タンク20に貯留する。黒鉛に代えて、負極活物質としてハードカーボン、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、シリコン合金、スズ合金などを用いることもできる。また、正極材料および負極材料の双方において、結着剤としてPVDFに代えてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを使用することができ、溶剤としてNMPに代えて水(H
2O)などを使用することができる。さらに、結着剤としてSBR、溶剤として水を用いる場合には、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用することもできる。これら正極材料および負極材料の塗工液は固体(微粒子)が分散されたスラリーであってその粘度はいずれも1Pa・s(パスカル秒)以上であり、一般的にチクソトロピー性を有する。
【0030】
貯留タンク20には、攪拌機およびエア加圧ユニットなどが付設されていても良い。攪拌機は、貯留タンク20に貯留されている塗工液を攪拌して濃度分布を均一にする。エア加圧ユニットは、高圧の空気を貯留タンク20内の気相部分に送り込んで貯留されている塗工液の液面を加圧する。
【0031】
貯留タンク20と塗工ノズル11とは供給配管30,37によって連通接続されている。供給配管37は、貯留タンク20に貯留されている塗工液を供給バルブ32に向けて供給する。供給配管30は、供給バルブ32からの塗工液を塗工ノズル11に向けて供給する。供給配管30,37としては、ステンレス管または樹脂管(フレキシブル配管を含む、以下同様)を用いることができる。供給配管37の経路途中にはポンプ31が介挿され、供給配管30の経路途中にはフィルタ33およびシリンジ36が介挿されている。また、供給配管37の経路途中から分岐して循環配管40が設けられている。循環配管40の基端側は、ポンプ31よりも下流側(塗工ノズル11に近い側)の位置で供給配管37に接続され、先端側は貯留タンク20に接続されている。
【0032】
ポンプ31は、循環配管40の接続部位よりも上流側(貯留タンク20に近い側)に設けられており、制御部90によって制御されて、貯留タンク20に貯留されている電極材料の塗工液を供給配管37に圧送する。供給バルブ32は、制御部90によって制御されて、供給配管30の流路を繰り返し開閉する。これにより、塗工ノズル11への塗工液の供給/停止が繰り返し切り替えられる。フィルタ33は、供給バルブ32と、供給配管30の経路における循環配管40との接続部位との間に介挿され、供給配管30を塗工ノズル11に向けて流れる塗工液から異物を取り除く。シリンジ36は供給バルブ32と塗工ノズル11との間に設けられている。シリンジ36は、制御部90によって制御され、供給バルブ32を閉止するときに供給配管30から塗工液を引き込む。これにより、塗工ノズル11からの塗工液の吐出を速やかに停止させることができる。
【0033】
塗工ノズル11は、基材5の幅方向に沿ってスリット状の吐出口11aを設けたスリットノズルである。塗工ノズル11は、供給配管37,30を経由して送給された塗工液をバックアップローラ12に押圧支持された状態で走行する基材5の表面に吐出口11aから塗工する。塗工ノズル11には、バックアップローラ12と吐出口11aとの間隔を調整するノズル用移動機構51および姿勢を規定する姿勢調整機構(図示省略)が設けられている。
【0034】
供給配管37の経路途中から分岐して設けられた循環配管40の先端側は貯留タンク20に接続されている。供給配管30,37と同じく、循環配管40としてもステンレス管または樹脂管を用いることができる。循環配管40は、貯留タンク20から送出されて供給配管30から流れ込んだ塗工液を貯留タンク20に還流させる。循環配管40には、循環バルブ41およびフィルタ43が介挿されている。循環バルブ41は、制御部90によって制御されて、循環配管40の流路を開閉する。フィルタ43は、循環バルブ41と貯留タンク20との間に設けられており、循環配管40を貯留タンク20へと向けて流れる塗工液から異物を取り除く。
【0035】
循環バルブ41を閉止しつつ供給バルブ32を開放すると、貯留タンク20から送出された塗工液は供給配管37,30の全体にわたって流れ、塗工ノズル11へと供給される。
【0036】
一方、供給バルブ32を閉止しつつ循環バルブ41を開放すると、貯留タンク20から送出された塗工液は供給配管37の途中まで流れて循環配管40に流入し、再び貯留タンク20へと還流される。すなわち、供給バルブ32は、貯留手段から送入される塗工液の、供給配管30を介した塗工ノズル11への送出/停止を繰り返し切り替えることで、塗工液を塗工ノズル11から間欠的に吐出させる切替手段として機能する。
【0037】
また供給バルブ32の閉止に伴って、シリンジ36が供給配管30から塗工液を引き抜く。これにより、吐出口11aの塗工液が供給バルブ32側に吸引されて、塗工液が垂れることを抑制する。
【0038】
供給バルブ32および循環バルブ41の開閉のタイミングは制御部90によって適宜に制御され、この開閉を繰り返し切り替えることで、基材5の所定位置に所定幅で塗工液が間欠的に塗布される。
【0039】
また、
図2の例示では、圧力計35が付設されている。圧力計35は例えば、循環配管40との接続部位とポンプ31との間の位置で供給配管37に設けられる。圧力計35が計測する測定値は制御部90に出力される。制御部90は例えば当該圧力が所望の値となるようにポンプ31の駆動速度(回転速度)を制御することができる。
【0040】
さて間欠塗工装置においては、上述の通り、供給配管30の基端に設けられる供給バルブ32を開閉制御することで、供給配管30の先端に設けられる塗工ノズル11からの間欠塗工を制御する。また、供給バルブ32が閉じるときには、シリンジ36が供給配管30から塗工液を引き込むことで、塗工ノズル11からの吐出を速やかに停止する。
【0041】
よって供給配管30の配管長が間欠塗工の応答性に影響を与える。ここでいう応答性とは、供給バルブ32の開/閉から塗工液の塗工ノズル11からの吐出/停止までの時間的な応答性をいう。この応答性は配管長が長いほど低くなる。より詳細にその理由について説明すると、供給配管30を流れる塗工液には微小気泡が含まれており、この微小気泡はクッションの役割を果たすことになり、塗工ノズル11から垂れる塗工液を引き込みにくくする。そして配管長が長いほど微小気泡が多く含まれるので、より塗工液が引き込みにくくなるのである。したがって、供給バルブ32が閉止するときにシリンジ36が塗工液を引き込んだとしても、配管長が長い場合には塗工ノズル11から塗工液が垂れる可能性があるのである。これにより、応答性が劣化する。
【0042】
また、供給配管30の基端に設けられる供給バルブ32の開閉に伴う塗工液の圧力変化が、供給配管30の先端に設けられる塗工ノズル11まで伝達されるのに時間がかかることも応答性劣化の要因として考察することができる。この観点でも供給配管30が長いほど応答性が劣化する。
【0043】
そして、間欠塗工装置では、塗工ノズル11からの塗工液の吐出/停止のタイミングが塗膜の形成位置および形状に影響するので、応答性が高いことが望ましい。したがって、間欠塗工装置においては、供給バルブ32と塗工ノズル11との間の距離は短く設定される。
【0044】
以上のように、間欠塗工装置では供給バルブ32と塗工ノズル11との間の距離が短く設定されるので、通常は、供給バルブ32と塗工ノズル11とは同一のベースに載置される。
【0045】
図3は間欠塗工装置の一部の一例を示す模式的な斜視図である。
図3では、図を見やすくするために、貯留タンク20、ポンプ31、フィルタ33,43、圧力計35、シリンジ36および移動機構51,61を省略している。
【0046】
本実施の形態では上述の事情にもかかわらず、
図3に示すように、供給バルブ32と塗工ノズル11とが別体のバルブベース60とノズルベース50とにそれぞれ載置されている。ノズルベース50とバルブベース60とは互いに離間している。
【0047】
さて供給バルブ32の開閉は機械的な動作を伴うので、供給バルブ32は繰り返しの開閉動作に起因して振動を発生する。この開閉の切替は例えば1秒間に数回以上行なわれるので、数Hz以上の振動が発生する。
【0048】
しかるに本実施の形態では、供給バルブ32が載置されるバルブベース60は、塗工ノズル11が載置されるノズルベース50とは別体である。したがって、供給バルブ32と塗工ノズル11とが同じベースに載置される構造に比して、供給バルブ32からベースを介して塗工ノズル11へと伝達される振動を抑制することができる。
【0049】
仮に塗工ノズル11が振動すれば、塗工膜(塗膜とも言う)の形状についての精度を低下させるところ、本実施の形態では塗工ノズル11の振動を抑制できるので、当該精度の低下を抑制することができる。言い換えれば、塗工膜の形状の精度を向上するために、供給バルブ32として振動しにくいバルブを採用する必要性を低下することができ、より安価なバルブを採用することができる。
【0050】
なお循環バルブ41は上述のように供給バルブ32が開放するときに閉止し、供給バルブ32が閉止するときに開放するので、循環バルブ41も供給バルブ32と同様の振動を発生する。したがって
図3に示すように、循環バルブ41もノズルベース50とは別体のベースに載置されることが望ましい。これにより、供給バルブ32および循環バルブ41からの振動が塗工ノズル11へと伝達されることを抑制できる。
図3の例示では、供給バルブ32と循環バルブ41とが同じバルブベース60に載置されている。
【0051】
またノズルベース50およびバルブベース60は共通の基台に取り付けられても構わないし、それぞれ別体の基台に取り付けられても構わない。前者であっても、ノズルベース50と基台とは別体であり、バルブベース60と基台とが別体であるので、これらが一体である場合に比べれば、供給バルブ32、あるいは更に循環バルブ41から塗工ノズル11へと伝わる振動を抑制することができる。
【0052】
またシリンジ36はノズルベース50およびバルブベース60のどちらに設けられても構わない。応答性という観点では、シリンジ36は塗工ノズル11の近くに設けられることが望ましいので、ノズルベース50に設けられることが望ましい。他方、シリンジ36による塗工液の引き込みも機械的な動作を伴うので、振動抑制という観点では、シリンジ36はバルブベース60に設けられても良い。
【0053】
<移動機構>
上述したとおり、塗工ノズル11には、バックアップローラ12に対する位置調整を行なうためのノズル用移動機構51が設けられる(
図2参照)。ノズル用移動機構51としては、例えば二軸移動可能で能動的に制御される公知の移動機構を採用できる。ノズル用移動機構51はノズルベース50に取り付けられて、ノズルベース50を移動させる。これにより、ノズルベース50に対して位置固定された塗工ノズル11も移動することとなる。例えば塗工ノズル11をバックアップローラ12から遠ざけることで、これらの間の空間を広げ、塗工ノズル11のメンテナンスを行なう。
【0054】
間欠塗工装置において応答性を向上させるためには、供給バルブ32と塗工ノズルとの間の距離を短く設定する必要がある。つまり、供給配管30の配管長は短く設定される。しかしながら、供給バルブ32の位置が固定された状態で塗工ノズル11を柔軟に移動可能とするためには、供給配管30としてフレキシブル配管が考えられるものの、配管長が短いフレキシブル配管は一般的に可撓性が低い。そのため、供給配管30として採用可能な配管の種類を狭めることになりコスト増を招く。
【0055】
図4は、間欠塗工装置の一部の一例を示す斜視図である。
図4では、
図3と同様に図を見やすくすべく、適宜に各構成を省略している。本実施の形態では、
図1,4に例示するように、供給バルブ32を移動するためのバルブ用移動機構61が設けられることが望ましい。バルブ用移動機構61は例えばバルブベース60に取り付けられて、バルブベース60を移動可能とする。これにより、バルブベース60に対して位置固定された供給バルブ32も移動可能となる。
【0056】
またバルブ用移動機構61は、ノズル用移動機構51の移動方向と同じ方向に供給バルブ32を移動させる。換言すれば、バルブ用移動機構61は、塗工ノズル11の移動に追随して供給バルブ32が移動させる。これにより、塗工ノズル11と供給バルブ32との相対位置の変動を抑制しながら、塗工ノズル11を移動させることができる。したがって塗工ノズル11の移動に伴って生じる供給配管30の曲げ応力を抑制することができる。
【0057】
よって、供給配管30として例えば形状が固定された配管(例えばステンレス鋼の配管)を採用することができる。またフレキシブル配管でも、配管長が短く比較的曲げにくいものを採用することができる。つまり採用可能な配管の種類を増大することができる。
【0058】
なお例えば
図4の例示では、供給配管30が略直角に曲がっている。本間欠塗工装置では塗工ノズル11と供給バルブ32との間の距離が短いので、供給配管30は非常に小さい曲率半径で曲げる必要がある。このように小さい曲率半径でフレキシブル配管を曲げることは、一般に流通するフレキシブル配管では難しい。よってこの場合は、例えばステンレス鋼など、形状が固定された配管であって、予め曲げた形状に製造される配管を採用することが望ましい。換言すれば、バルブ用移動機構61を用いることで、供給配管30としてその形状が固定された配管を採用することができ、これにより、フレキシブル配管を採用する場合に比して、供給バルブ32と塗工ノズル11との設置自由度を高めることができる。
【0059】
また本実施の形態では供給バルブ32が移動するので、供給配管30の上流側の要素(例えば貯留タンク20或いはポンプ31等)と、供給バルブ32との位置関係が変動する。よって当該要素と供給バルブ32との間の配管においてフレキシブル配管を採用することが望ましい。しかるに、供給バルブ32よりも上流側では、間欠塗工における応答性を向上するという観点で、配管の長さを制限する必要性は小さい。したがって、供給バルブ32よりも上流側で採用するフレキシブル配管の長さを十分に長く設定することができる。このように初期状態の配管長を長く設定できるので、供給バルブ32が移動しても当該フレキシブル配管に生じる曲げ応力は小さい。したがって、この要素の位置を固定しても問題は生じない。
【0060】
<バルブ用移動機構の具体例>
バルブ用移動機構61はノズル用移動機構51の移動に追随する追随機能を果たす任意の移動機構を採用すればよい。例えばノズル用移動機構51およびバルブ用移動機構61が制御部90によって制御される公知の移動機構である場合には、バルブ用移動機構61の追随機能は制御部90によって実現されてもよい。或いは、ノズル用移動機構51およびバルブ用移動機構61が機械的に連動することで、バルブ用移動機構61が実現されてもよい。
【0061】
ただし、ノズル用移動機構51は水平方向にノズルベース50を移動させ、バルブ用移動機構61は任意の水平方向に供給バルブ32を自由に移動可能であることが望ましい。このようなバルブ用移動機構51によれば、塗工ノズル11の移動が供給配管30を介して供給バルブ32に伝達されることで、供給バルブ32は塗工ノズル11の移動方向と同じ方向に移動することとなる。
【0062】
バルブ用移動機構61としては、ローラ構造を採用することができる。かかるローラ構造は所定の転動体(例えば球体など)を有し、この転動体がバルブベース60と基台63との間に設けられる。またこの転動体はバルブベース60に対して回転可能に固定され、この転動体が転がることで、バルブベース60が基台63に対して任意の水平方向に自由に移動可能となる。なお転動体は基台63に対して回転可能に固定されていてもよい。
【0063】
このようなバルブ用移動機構61を採用すれば、間欠塗工を行なう際に、供給バルブ32は自身の開閉動作に伴って水平方向に自由に移動する。よって供給バルブ32の開閉に伴う振動エネルギーが供給バルブ32の水平運動として費やされるので、供給配管30側へと伝達される振動も抑制される。さて、供給配管30を介した振動伝達抑制という観点ではフレキシブル配管を採用してもよいところ、ここでは上述のように供給配管30へと伝わる振動が抑制されるので、より剛性の高い、例えばステンレスなどによって形成される配管を採用しても構わない。
【0064】
また供給バルブ32が水平方向に自由に移動するので、供給バルブ32が固定された場合に比べて、供給バルブ32からバルブベース60側(ひいては基台63側)へと伝達される振動も抑制される。したがって基台63を介して塗工ノズル11へと振動が伝達されることを更に低減することができる。また、ノズルベース50とバルブベース60との間を、可撓性を有するサポート部材で連結接続する構成を加えてもよい。
【0065】
またノズル用移動機構51とバルブ用移動機構61との位置あわせを不要にできる。より詳しく説明すべく、例えば一方向に移動させることが可能な移動機構をノズル用移動機構51とバルブ用移動機構61として採用することを考える。このとき、塗工ノズル11と供給バルブ32との相対位置を変動させずに塗工ノズル11を移動させるには、ノズル用移動機構51とバルブ用移動機構61を精度よく平行に配置する必要がある。しかるに
図4の例示では、バルブ用移動機構61が任意の水平方向に自由に移動可能である。よって位置あわせをしなくても、塗工ノズル11を移動させれば、その移動力が供給配管30を介して供給バルブ32に伝達され、供給バルブ32は塗工ノズル11と同じ方向に移動することとなる。よってバルブ用移動機構61を取り付ける際の作業性を向上できる。
【0066】
なお
図4の例示では、バルブ用移動機構61は3つ設けられており、この3つのバルブ用移動機構61がそれぞれ3箇所でバルブベース60を支持している。仮に、4箇所以上でバルブベース60を支持すれば、バルブ用移動機構61の高さのばらつきに起因してバルブベース60ががたつくところ、ここでは3箇所で支持しているので、このがたつきを回避できる。
【0067】
またバルブ用移動機構61はローラ構造に限らず、水平方向に横滑り可能な一対の板部材を有していてもよい。例えば一対の板部材の合わせ面が低い摩擦係数で接触することで、一対の板部材は相対的に横滑りすることができる。この板部材の一方はバルブベース60の下面と固定され、他方は基台63の上面に固定される。これにより、バルブベース60が基台63に対して任意の水平方向に自由に移動できることとなる。
【0068】
ただしローラ構造を採用すれば、転動体とバルブベース60或いは基台63との接触面積が小さいので、これらが磨耗しにくい。よって寿命が比較的長い。
【0069】
<振動抑制部材>
供給バルブ32から塗工ノズル11への振動伝達を抑制する振動抑制部材が設けられても良い。例えば振動抑制部材64としては、ゴム、ゲル状素材、または発砲スチロールなどによって形成されて、振動を吸収する部材を用いることができる。
図5は、供給バルブ32を支持する部分の概略構成を簡略的に示す図である。
図5の例示では、振動抑制部材64は板状の形状を有し、供給バルブ32とバルブベース60との間に介挿される。これにより、供給バルブ32からバルブベース60へと振動が伝達することが抑制され、ひいては供給バルブ32から塗工ノズル11への振動伝達を更に抑制できる。或いは、振動抑制部材は、バルブベース60と基台63との間(バルブベース60とバルブ用移動機構61との間、或いは、バルブ用移動機構61と基台63との間)に設けられてもよい。これによっても振動を抑制できる。
【0070】
なお
図4,5に示す任意の水平方向に自由移動可能なバルブ用移動機構61は、振動伝達を抑制することから、振動抑制部材の1種と把握することもできる。
【0071】
また
図4の例示では、供給配管30は複数の配管によって構成されている。これらの配管の継ぎ手には、例えばゴム、ゲル状素材、または発泡スチロールなどで形成されて振動を吸収する振動抑制部材が介挿されていてもよい。これにより、供給バルブ32の振動が供給配管30を介して塗工ノズル11へと伝達されることを抑制できる。
【0072】
また、配管におけるフィルタの設置位置は上記実施形態の例に限定されるものではなく、供給配管30の経路における循環配管40の接続部位とポンプ31との間や、供給バルブ32と塗工ノズル11との間であっても良い。さらには、フィルタは必須のものではなく、設けていなくても良い。
【0073】
また、塗工ノズル11は1本のスリット状の吐出口11aを有するスリットノズルに限定されるものではなく、複数本のスリットを有するものであっても良いし、略円形の吐出口から塗布液を吐出するノズルであっても良い。
【0074】
また、本発明に係る技術を用いて塗工処理を行う対象となる塗工液はリチウムイオン二次電池の電極材料に限定されるものではなく、例えば太陽電池材料(電極材、封止材)の塗工液または電子材料の絶縁膜や保護膜の塗工液、燃料電池用の触媒を含む塗工液であっても良い。比較的粘度の高い塗工液を基材に塗工するのに本発明に係る技術を好適に適用することができる。よって、顔料や接着剤の塗工液を塗布するのに、本発明に係る技術を用いるようにしても良い。