(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152305
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置及び粒状食品用加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
A23N 12/10 20060101AFI20170612BHJP
F22G 3/00 20060101ALI20170612BHJP
F22G 1/16 20060101ALI20170612BHJP
A47J 27/16 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
A23N12/10 Z
F22G3/00 Z
F22G1/16
A47J27/16 H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-125644(P2013-125644)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-22(P2015-22A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 正
(72)【発明者】
【氏名】松浦 義久
(72)【発明者】
【氏名】荒川 政法
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−158689(JP,U)
【文献】
特開平03−290164(JP,A)
【文献】
特開平11−223476(JP,A)
【文献】
特開2003−148868(JP,A)
【文献】
特開2011−191042(JP,A)
【文献】
実公昭43−017741(JP,Y1)
【文献】
米国特許第06263785(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/10
A47J 27/16
F22G 1/16
F22G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にスクリューコンベヤを回転可能に支持するとともに、ケーシング内に過熱水蒸気を供給し、ケーシング内に投入された粒状食品を過熱水蒸気で加熱処理する粒状食品用加熱処理装置であって、
前記スクリューコンベヤはスクリュー軸とその外周面に螺旋状に形成されたスクリュー羽根とにより構成され、スクリュー羽根間には粒状食品を掬い上げて粒状食品の撹拌を補助する補助撹拌羽根がスクリュー軸の軸線方向に延びるように架設されているとともに、前記スクリュー軸は筒体により構成され、該筒体内には過熱水蒸気生成機構が設けられ、該過熱水蒸気生成機構で生成される過熱水蒸気がケーシングとスクリュー軸との間の加熱処理空間部に噴出されるように構成され、前記過熱水蒸気生成機構は、電気ヒータが収容された複数の加熱管が前記スクリュー軸内に並行して配置され、かつ異なる軸上に離間して配置され、複数の加熱管は直列接続され、前記加熱管内に飽和水蒸気が供給されて加熱管内を移動する間に過熱水蒸気が生成されるように構成されていることを特徴とする過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置。
【請求項2】
前記補助撹拌羽根は板状に形成され、スクリュー羽根の外周位置において架設されていることを特徴とする請求項1に記載の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置。
【請求項3】
前記補助撹拌羽根は、スクリュー軸の半径方向に対して内周側が外周側よりスクリュー軸の回転方向の後方に位置するように傾斜配置されていることを特徴とする請求項2に記載の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置。
【請求項4】
前記補助撹拌羽根は、スクリュー羽根の周方向に等間隔をおいて複数列設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置。
【請求項5】
前記ケーシングには、過熱水蒸気又は過熱水蒸気と熱風を補助撹拌羽根に向けて供給するための過熱水蒸気供給孔が開口されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の粒状食品用加熱処理装置を用いた粒状食品用加熱処理方法であって、
前記ケーシング内に粒状食品を投入し、該粒状食品を過熱水蒸気の存在下にスクリューコンベヤのスクリュー羽根によって移動させながら加熱処理するとともに、粒状食品を補助撹拌羽根で掬い上げて撹拌しながら加熱処理することを特徴とする過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場等においてコーヒー豆等の粒状食品を、過熱水蒸気により焼きむらが抑制された状態で加熱処理し、粒状食品の品質を向上させることができる過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置及び粒状食品用加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粒状食品を熱風や過熱水蒸気で加熱処理することにより、粒状食品の表面に焦げ目を付けたり、味を向上させたり、また粒状食品中の水分を低減させて香ばしい風味を付けたり、消化しやすい性質に変えたりすることができる。例えば、コーヒー豆を加熱処理すると、コーヒーの甘味、苦味、酸味に加えて独特の香りが生み出される。
【0003】
この種の加熱処理装置に関連する有機物の炭化処理装置が特許文献1に開示されている。すなわち、この炭化処理装置は、被処理材の投入口及び排出口を有する処理筒と、その処理筒内で被処理材を搬送する搬送手段と、300〜500℃の乾き蒸気を処理筒内に供給する蒸気供給装置と、処理筒を加熱する外部加熱装置とを有している。この炭化処理装置によれば、有機物を1段階の処理により、短時間で良質の活性炭にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−223476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載されている従来構成の炭化処理装置においては、投入口から処理筒内に投入された有機物は搬送手段としてのフィードスクリューに案内されて排出口へと移動する。このとき、有機物はフィードスクリューによって撹拌されながら移動するが、有機物は重力により処理筒内の下部に溜まった状態でフィードスクリューによって前進移動することから、処理筒内における有機物の撹拌が十分に行われない。従って、乾き蒸気による有機物の炭化処理が均一に行われ難く、有機物の炭化にむらが生じ易く、炭化処理の効率が悪いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、粒状食品の加熱処理の均一性を高めることができ、粒状食品の加熱処理の品質を向上させることができるとともに、加熱処理を効率良く遂行することができる過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置及び粒状食品用加熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置は、ケーシング内にスクリューコンベヤを回転可能に支持するとともに、ケーシング内に過熱水蒸気を供給し、ケーシング内に投入された粒状食品を過熱水蒸気で加熱処理する粒状食品用加熱処理装置であって、前記スクリューコンベヤはスクリュー軸とその外周面に螺旋状に形成されたスクリュー羽根とにより構成され、スクリュー羽根間には粒状食品を掬い上げて粒状食品の撹拌を補助する補助撹拌羽根がスクリュー軸の軸線方向に延びるように架設されている
とともに、前記スクリュー軸は筒体により構成され、該筒体内には過熱水蒸気生成機構が設けられ、該過熱水蒸気生成機構で生成される過熱水蒸気がケーシングとスクリュー軸との間の加熱処理空間部に噴出されるように構成され、前記過熱水蒸気生成機構は、電気ヒータが収容された複数の加熱管が前記スクリュー軸内に並行して配置され、かつ異なる軸上に離間して配置され、複数の加熱管は直列接続され、前記加熱管内に飽和水蒸気が供給されて加熱管内を移動する間に過熱水蒸気が生成されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置は、請求項1に係る発明において、前記補助撹拌羽根は板状に形成され、スクリュー羽根の外周位置において架設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置は、請求項2に係る発明において、前記補助撹拌羽根は、スクリュー軸の半径方向に対して内周側が外周側よりスクリュー軸の回転方向の後方に位置するように傾斜配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置は、請求項2又は請求項3に係る発明において、前記補助撹拌羽根は、スクリュー羽根の周方向に等間隔をおいて複数列設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項
5に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置は、請求項1から請求項
4のいずれか一項に係る発明において、前記ケーシングには、過熱水蒸気又は過熱水蒸気と熱風を補助撹拌羽根に向けて供給するための過熱水蒸気供給孔が開口されていることを特徴とする。
【0014】
請求項
6に記載の発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理方法は、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の粒状食品用加熱処理装置を用いた粒状食品用加熱処理方法であって、前記ケーシング内に粒状食品を投入し、該粒状食品を過熱水蒸気の存在下にスクリューコンベヤのスクリュー羽根によって移動させながら加熱処理するとともに、粒状食品を補助撹拌羽根で掬い上げて撹拌しながら加熱処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置においては、ケーシング内にスクリューコンベヤが回転可能に支持され、ケーシング内に過熱水蒸気が供給され、ケーシング内に投入された粒状食品が過熱水蒸気で加熱処理される。前記スクリューコンベヤのスクリュー羽根間には、粒状食品の撹拌を補助する補助撹拌羽根がスクリュー軸の軸線方向に延びるように架設されている。
【0016】
このため、ケーシング内に投入された粒状食品はスクリュー羽根の回転に伴って移動するとともに、ケーシング内の下部に溜まった粒状食品は補助撹拌羽根で掬い上げられる。掬い上げられた粒状食品は補助撹拌羽根上に載った状態で回転され、補助撹拌羽根が上部に到ると落下することから、粒状食品の撹拌が強制的に行われる。このような粒状食品の強制的な撹拌はスクリュー羽根間の補助撹拌羽根で繰返し行われるため、粒状食品の撹拌が有効に継続される。従って、粒状食品に対する加熱処理の均一性が高められ、加熱処理された粒状食品の品質を良好にすることができる。
【0017】
よって、本発明の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置によれば、粒状食品の加熱処理の均一性を高めることができ、粒状食品の加熱処理の品質を向上させることができるとともに、加熱処理を効率良く遂行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態における過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置の全体を示す概略断面図。
【
図2】過熱水蒸気生成機構を説明するための加熱処理装置の分解斜視図。
【
図3】(a)は過熱水蒸気生成機構を構成するスクリュー軸の左側面図及び(b)はスクリュー軸の右側面図。
【
図4】(a)はスクリュー軸の支持壁を示す側面図及び(b)はスクリュー軸の端壁及び支承壁を示す側面図。
【
図5】ケーシング内に配置されたスクリューコンベヤのスクリュー羽根に設けられた複数の補助撹拌羽根を示すための断面図。
【
図6】粒状食品がスクリューコンベヤのスクリュー羽根に架設された補助撹拌羽根によって掬い上げられた状態を示す部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図6に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、粒状食品用加熱処理装置10を構成するケーシング11内のスクリューコンベヤ12は、その両端部において複数の支持部材13により支持されている。該スクリューコンベヤ12は、その中心に位置するスクリュー軸14と、そのスクリュー軸14の外周面に螺旋状に形成されたスクリュー羽根15とにより構成されている。前記スクリュー軸14は、図示しない回転駆動源により回転可能になっている。前記ケーシング11の基端側(
図1の右端側)における上部には粒状食品16をケーシング11内に投入する投入管17が接続されるとともに、ケーシング11の先端側における下部には加熱処理された粒状食品16を排出する排出管18が接続されている。粒状食品16としては、例えばコーヒー豆、玄米、ナッツ等が用いられる。
【0020】
図1及び
図5に示すように、螺旋状に形成されたスクリュー羽根15間の外周位置には、板状の補助撹拌羽根20がスクリュー軸14の軸線方向に延びるように架設されている。この補助撹拌羽根20はスクリュー羽根15と同一の金属により形成され、スクリュー羽根15の周方向に等間隔をおいて複数列(この実施形態では8列)設けられている。各補助撹拌羽根20は、スクリュー軸14の半径方向に対して内周側が外周側よりスクリュー軸14の回転方向(
図5の矢印に示す時計方向)の後方に位置するように傾斜配置されている。この実施形態では、補助撹拌羽根20の傾斜角度αは45度に設定されている。そして、スクリュー軸14の回転に伴って、スクリュー羽根15が粒状食品16を前進移動させるとともに、補助撹拌羽根20が粒状食品16を掬い上げて粒状食品16を撹拌するようになっている。
【0021】
なお、
図5に示すように、ケーシング11は一対の半円筒状をなす上部分割体11aと下部分割体11bとにより構成され、上部分割体11a及び下部分割体11bの両側部において突出形成された上部連結片19aと下部連結片19bとがボルト21により連結されている。
【0022】
図1に示すように、前記スクリュー軸14は筒体により構成され、該スクリュー軸14内には過熱水蒸気生成機構22が設けられている。この過熱水蒸気生成機構22について説明する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、前記スクリュー軸14の基端部(
図2の右端部)には端部壁23とその内側の支持壁24とが重合されるとともに、スクリュー軸14の先端部には端壁25とその内側の支承壁26とが重合されている。
図3(a)及び
図4(a)に示すように、前記端壁25には飽和水蒸気導入管27が挿通される第1貫通孔28が設けられている。さらに、この第1貫通孔28から周方向に90度回転した位置に第2貫通孔29、その第2貫通孔29から周方向に90度回転した位置に第4貫通孔31、その第4貫通孔31から周方向に90度回転した位置に第3貫通孔30が形成されている。
【0024】
図2、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、前記支承壁26には、第2貫通孔29に対向する位置に第2挿通孔32、第3貫通孔30に対向する位置に第3挿通孔33、第4貫通孔31に対向する位置に第4挿通孔34が形成されている。また、支承壁26には、前記第1貫通孔28に対向する位置と第2挿通孔32との間に第1連通路35が形成され、第3挿通孔33と第4挿通孔34との間には第2連通路36が設けられている。前記第1連通路35には、第1貫通孔28に挿通された飽和水蒸気導入管27が接続される。
【0025】
図2、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、前記支持壁24には、支承壁26の第2挿通孔32に対向する位置に第2挿通孔部37、第3挿通孔33に対向する位置に第3挿通孔部38及び第4挿通孔34に対向する位置に第4挿通孔部39が形成されている。また、支持壁24の第2挿通孔部37と第3挿通孔部38との間には第1連通部40がくの字状に形成され、第4挿通孔部39と支持壁24の中心部との間には第2連通部41が形成されている。また、前記端部壁23の中心部には、前記支持壁24の第2連通部41に連通する中心穴43が設けられ、その中心穴43から周方向に90度間隔で4つの放出孔44が放射状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、前記支承壁26の第2挿通孔32及び支持壁24の第2挿通孔部37を連結するように第2加熱管45が配設されている。また、支承壁26の第3挿通孔33及び支持壁24の第3挿通孔部38を連結するように第3加熱管46が配設されている。さらに、支承壁26の第4挿通孔34及び支持壁24の第4挿通孔部39を連結するように第4加熱管47が配設されている。これらの第2加熱管45、第3加熱管46及び第4加熱管47は、スクリュー軸14の軸線方向に並行して配置されている。各第2加熱管45、第3加熱管46及び第4加熱管47内には、それぞれ外周面に螺旋状の熱交換用フィン49aを有する棒状の電気ヒータ49が挿入されている。
【0027】
そして、飽和水蒸気導入管27から導入される飽和水蒸気は、第1連通路35から第2挿通孔32を介して第2加熱管45へ流れて加熱され、第2挿通孔部37から第1連通部40を介して第3加熱管46へ流れてさらに加熱される。続いて、第3挿通孔33から第2連通路36を経て第4挿通孔34から第4加熱管47へ流れて一層加熱され、過熱水蒸気が生成される。すなわち、第2加熱管45、第3加熱管46及び第4加熱管47は直列接続され、飽和水蒸気が電気ヒータ49で高温に加熱されて過熱水蒸気が生成されるようになっている。生成した過熱水蒸気は、第4挿通孔部39から第2連通部41を経て、端部壁23の中心穴43から4つの放出孔44へと流れる。
【0028】
前記スクリュー軸14の周壁には過熱水蒸気の噴出孔51がスクリュー軸14の軸線方向に一定間隔をおいて、かつ周方向に等間隔をおいて8列となるように設けられている。そして、前記放出孔44から放出された過熱水蒸気はスクリュー軸14の内側空間を経て噴出孔51からケーシング11とスクリュー軸14との間の加熱処理空間部48に噴出されるように構成されている。この過熱水蒸気の温度は、好ましくは150〜400℃の範囲で、例えば330℃に設定される。
【0029】
図1に示すように、前記ケーシング11には、過熱水蒸気を補助撹拌羽根20に向けて供給するための過熱水蒸気供給孔50が、スクリュー軸14の軸線方向に一定間隔をおいて複数開口されている。この過熱水蒸気供給孔50から供給される過熱水蒸気の温度は、好ましくは150〜400℃の範囲で例えば350℃に設定される。なお、過熱水蒸気供給孔50から過熱水蒸気と熱風との混合物を供給することもできる。この場合、熱風の温度は過熱水蒸気の温度範囲に設定される。
【0030】
次に、前記のように構成された粒状食品用加熱処理装置10を用いた加熱処理方法を作用とともに説明する。
図1に示すように、コーヒー豆等の粒状食品16を過熱水蒸気によって加熱処理する場合には、スクリューコンベヤ12のスクリュー軸14を回転駆動させるとともに、過熱水蒸気生成機構22を稼働させる。その状態で粒状食品16を投入管17からケーシング11内へ投入する。投入された粒状食品16は、スクリュー軸14の外周面を伝って加熱処理空間部48の下方へ落ちるとともに、螺旋状に形成されたスクリュー羽根15の回転によって加熱されながら前進移動する。
【0031】
このとき、
図6に示すように、スクリュー羽根15間には補助撹拌羽根20がスクリュー軸14の軸線方向に延びるように架設されていることから、加熱処理空間部48の下部に溜まった粒状食品16はスクリュー羽根15の回転に伴って補助撹拌羽根20により掬い上げられて撹拌される。
【0032】
図5に示すように、この補助撹拌羽根20は、スクリュー軸14の半径方向に対して内周側が外周側よりスクリュー軸14の回転方向の後方に位置するように傾斜し、その傾斜角度αが45度に設定されていることから、粒状食品16が補助撹拌羽根20上に載りやすく、粒状食品16の掬い上げが有効に行われる。さらに、補助撹拌羽根20は、スクリュー羽根15の周方向に等間隔をおいて8列設けられていることから、加熱処理空間部48の下部に溜まった粒状食品16は次々に掬い上げられ、粒状食品16の撹拌が繰り返して行われる。従って、粒状食品16の撹拌が一定間隔をおいて間欠的に、効率良く行われる。
【0033】
また、ケーシング11に開口された複数の過熱水蒸気供給孔50から過熱水蒸気又は過熱水蒸気と熱風が特に上部に位置する補助撹拌羽根20に向けて吹き付けられる。そのため、粒状食品16を掬い上げて上部に到った補助撹拌羽根20に吹き付けられる過熱水蒸気又は過熱水蒸気と熱風により、補助撹拌羽根20上の粒状食品16が吹き飛ばされて補助撹拌羽根20上から落下し、粒状食品16の撹拌が促される。
【0034】
さらに、過熱水蒸気生成機構22により生成された過熱水蒸気は、スクリュー軸14の周方向に90度間隔で設けられた端部壁23の放出孔44から噴出孔51を介して加熱処理空間部48へ放出される。このため、加熱処理空間部48を前進移動する粒状食品16は撹拌されながら、過熱水蒸気に晒される。
【0035】
そして、粒状食品16の表面温度が100℃に到るまでは、過熱水蒸気が粒状食品16に接触し、凝縮潜熱を放出しながら水蒸気が粒状食品16の表面に凝縮し、粒状食品16が急速加熱される。粒状食品16の表面温度が100℃以上に達すると、粒状食品16の表面に付着した水が蒸発した後に粒状食品16の温度はさらに上昇する。従って、粒状食品16は撹拌されながら過熱水蒸気により均一に加熱処理されて焼きむらが抑制され、加熱処理された粒状食品16の品質を良好にすることができる。
【0036】
以上の実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の過熱水蒸気を用いた粒状食品用加熱処理装置10においては、ケーシング11内にスクリューコンベヤ12が回転可能に支持され、ケーシング11内に過熱水蒸気が供給され、ケーシング11内に投入された粒状食品16が過熱水蒸気で加熱処理される。前記スクリューコンベヤ12のスクリュー羽根15間には、粒状食品16の撹拌を補助する補助撹拌羽根20がスクリュー軸14の軸線方向に延びるように架設されている。
【0037】
このため、ケーシング11内に投入された粒状食品16は、スクリュー羽根15間に架設された補助撹拌羽根20により強制的に撹拌される。このような粒状食品16の強制的な撹拌は補助撹拌羽根20で繰返し行われるため、粒状食品16の撹拌が有効に継続される。従って、粒状食品16に対する加熱処理の均一性が高められ、加熱処理された粒状食品16の味、香り、外観等の品質を良好にすることができる。
【0038】
よって、本実施形態の粒状食品用加熱処理装置10によれば、粒状食品16の加熱処理の均一性を高めることができ、粒状食品16の加熱処理の品質を向上させることができるとともに、加熱処理を効率良く遂行することができるという優れた効果を奏する。
(2)前記補助撹拌羽根20は板状に形成され、スクリュー羽根15の外周位置において架設されている。このため、加熱処理空間部48の下部に溜まった粒状食品16を補助撹拌羽根20で容易に掬い上げることができ、粒状食品16の撹拌効率を高めることができる。
(3)前記補助撹拌羽根20は、スクリュー軸14の半径方向に対して内周側が外周側よりスクリュー軸14の回転方向の後方に位置するように傾斜配置されている。従って、補助撹拌羽根20が加熱処理空間部48の下部に到ったとき、粒状食品16を補助撹拌羽根20上に載せ易くすることができ、補助撹拌羽根20による粒状食品16の撹拌効率を向上させることができる。
(4)前記補助撹拌羽根20は、スクリュー羽根15の周方向に等間隔をおいて8列設けられている。そのため、加熱処理空間部48の下部に溜まった粒状食品16を一定間隔で間欠的に掬い上げることができ、粒状食品16の撹拌を均一かつ良好に行うことができる。
(5)前記スクリュー軸14は筒体により構成され、該スクリュー軸14内には過熱水蒸気生成機構22が設けられるとともに、該過熱水蒸気生成機構22で生成される過熱水蒸気がケーシング11とスクリュー軸14との間の加熱処理空間部48に噴出されるように構成されている。このため、スクリュー軸14を利用して過熱水蒸気生成機構22を小型化できるとともに、回転するスクリュー羽根15により移動する粒状食品16に対して過熱水蒸気を円滑に供給することができる。
(6)前記過熱水蒸気生成機構22は、電気ヒータ49が収容された3本の加熱管45、46、47がスクリュー軸14内に並行して配置されるとともに、3本の加熱管45、46、47は直列接続され、それらの加熱管45、46、47内に飽和水蒸気が供給されて加熱管45、46、47内を移動する間に過熱水蒸気が生成されるように構成されている。従って、加熱管45、46、47を並行配置して直列接続することにより、一定長さのスクリュー軸14内で過熱水蒸気を効率良く生成させることができるとともに、加熱管45、46、47全体の均一な温度上昇を図ることができる。その結果、粒状食品16の加熱処理をむらなく、均一に行うことが可能となる。
(7)前記ケーシング11には、複数の過熱水蒸気供給孔50が開口されている。そのため、過熱水蒸気又は過熱水蒸気と熱風を過熱水蒸気供給孔50から補助撹拌羽根20に向けて吹き付けることができ、粒状食品16の撹拌を一層有効に行うことができる。
(8)前記粒状食品用加熱処理装置10を用いた粒状食品用加熱処理方法は、ケーシング11内に粒状食品16を投入し、粒状食品16を過熱水蒸気の存在下にスクリューコンベヤ12のスクリュー羽根15によって移動させながら加熱処理するとともに、粒状食品16を補助撹拌羽根20で掬い上げて撹拌しながら加熱処理するものである。このため、粒状食品16の加熱処理の均一性を高めることができ、粒状食品16の加熱処理の品質を向上させることができるとともに、加熱処理を効率良く行うことができる。
【0039】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記補助撹拌羽根20の傾斜角度αを、粒状食品16の大きさ、形状等に応じて50度、60度等に変更してもよい。
【0040】
・ 前記補助撹拌羽根20を断面円弧状に形成したり、断面くの字状に形成したりしてもよい。
・ 前記補助撹拌羽根20の材質、幅、厚さ等を、粒状食品16の種類、大きさ、形状等に応じて適宜変更してもよい。また、スクリュー羽根15の周方向における補助撹拌羽根20の列数を4列、12列等に適宜変更してもよい。
【0041】
・ 前記補助撹拌羽根20よりスクリュー羽根15の内周側に一定間隔をおいて、さらに補助撹拌羽根20を配設することも可能である。
・ 前記過熱水蒸気生成機構22において、加熱管45、46、47を2本で構成したり、4本以上で構成したりしてもよい。
【0042】
・ 前記ケーシング11に開口された過熱水蒸気供給孔50を、スクリュー軸14の周方向に複数列設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…粒状食品用加熱処理装置、11…ケーシング、12…スクリューコンベヤ、14…スクリュー軸、15…スクリュー羽根、16…粒状食品、20…補助撹拌羽根、22…過熱水蒸気生成機構、45…第2加熱管、46…第3加熱管、47…第4加熱管、48…加熱処理空間部、49…電気ヒータ、50…過熱水蒸気供給孔。