(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄片化された黒鉛(炭素同素体の一種)は放熱材及び導電材として利用できる。このような炭素同素体は、放熱材又は導電材として用いられる場合、合成樹脂と混合される。合成樹脂と混合されるので、このような炭素同素体は、その合成樹脂と混合された状態で高い熱伝導性又は電気伝導性が求められる。本発明は、このような問題を解決するためのものである。本発明の目的は、合成樹脂に混入された状態で高い熱伝導性又は電気伝導性を発揮する炭素同素体の製造方法、炭素同素体、および、素形材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点に対して鋭意検討した結果、所定の要件を満たす炭素同素体が上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の通りである。
【0007】
本発明のある局面に従うと、炭素同素体の製造方法は、接触工程と、気化工程とを備える。接触工程は、黒鉛へ超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントを接触させる工程である。気化工程は、黒鉛がインターカラントと接触した後にそのインターカラントを気化させる工程である。炭素同素体の製造方法は、加熱工程をさらに備える。加熱工程は、黒鉛を加熱する工程である。
黒鉛が膨張黒鉛を含む。
【0008】
また、上述した加熱工程が、接触工程の前に黒鉛を加熱する工程を有することが望ましい。
【0009】
もしくは、上述した炭素同素体の製造方法が、再加熱工程をさらに備えることが望ましい。再加熱工程は、接触工程の後に黒鉛を再加熱する工程である。
【0010】
もしくは、上述した再加熱工程が、黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有することが望ましい。
【0011】
また、上述した加熱工程が、接触工程の後に黒鉛を加熱する工程を有することが望ましい。
【0012】
もしくは、上述した加熱工程が、黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有することが望ましい。
【0013】
【0014】
また、上述したインターカラントが二酸化炭素を含むことが望ましい。
【0015】
【0016】
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、合成樹脂に混入された状態で高い熱伝導性又は電気伝導性を発揮できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
[構成の説明]
本発明にかかる
炭素同素体を含む素形材は、炭素同素体粒子と、合成樹脂とを含む。本発明にかかる
炭素同素体を含む素形材において、炭素同素体粒子の重量パーセントと合成樹脂の重量パーセントとの和は100重量パーセント以下である。
【0021】
上述した炭素同位体は、グラフェンの層を有する。本発明にかかる炭素同素体の表面積は1.2平方メートル毎グラム以上14.0平方メートル毎グラム以下であることが望ましい。表面積は8.0平方メートル毎グラム以上14.0平方メートル毎グラム以下であることが特に望ましい。本発明にかかる炭素同素体の密度が0.004グラム毎立方センチメートル以上0.008グラム毎立方センチメートル以下であることが望ましい。
【0022】
本発明にかかる
炭素同素体を含む素形材が含む合成樹脂の種類は特に限定されない。その例には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、ポリエチレンテレフタレート樹脂がある。
【0023】
本発明にかかる
炭素同素体を含む素形材の、炭素同素体粒子及び合成樹脂以外の成分は、特に限定されない。例えば本発明にかかる素形材は顔料を含んでいてもよい。
【0024】
[製造方法の説明]
本発明にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程と、接触工程と、気化工程とを備える。加熱工程は、黒鉛を加熱する工程である。
この黒鉛は、インターカレーションが起きた黒鉛である膨張黒鉛を含む。加熱工程においてその黒鉛が加熱されると、その黒鉛は膨張する。この膨張により、黒鉛の層間において剥離が起きる。接触工程は、黒鉛へ超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントを接触させる工程である。この接触により、超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントが黒鉛の層間に進入する。気化工程は、黒鉛がインターカラントと接触した後にそのインターカラントを気化させる工程である。黒鉛の層間に進入した超臨界状態のインターカラントが気化すると、黒鉛の層間において剥離が起きる。これらの工程を経ることにより、黒鉛は、複数のグラフェンを有する炭素同素体の粉末となる。なお、本発明において、加熱工程と接触工程との繰り返し回数は特に限定されない。これらは何度繰返されてもよい。
【0025】
黒鉛には任意の前処理が施されていてもよい。前処理の例には、酸処理(黒鉛を酸に接触させる処理)がある。酸処理により黒鉛へのインターカレーションが起こる
。
【0026】
接触工程において黒鉛へ接触するインターカラントは特に限定されない。この場合、「インターカラント」とは、黒鉛の層間に進入する分子を意味する。インターカラントの例には、二酸化炭素、水、酸素、メチルアルコール、アンモニアがある。インターカランとしては、常温常圧(この場合、温度が273.15ケルビン以上313.15ケルビン以下で気圧が870ヘクトパスカル以上1083ヘクトパスカル以下)において気体であるものが好ましい。常温常圧において気体であるインターカラントの例には二酸化炭素がある。
【0027】
加熱工程において黒鉛を加熱するための具体的工程は特に限定されない。例えば、加熱工程は炉内で黒鉛を加熱する工程を有していてもよい。加熱工程は黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有していてもよい。黒鉛へマイクロ波が照射される場合、黒鉛へ照射されるマイクロ波のエネルギは、500ワット以上700ワット以下であることが好ましい。ただし、このエネルギの大きさも特に限定されない。なお、加熱工程において、黒鉛の加熱に先立ち、黒鉛が収容されている空間を減圧しておく(ひいては、黒鉛が減圧された環境のもとで加熱される)と、その減圧をしない場合に比べ、できあがった炭素同素体の電気抵抗率が低くなる。
【0028】
接触工程における、超臨界状態のインターカラントを接触させるための具体的な方法は特に限定されない。例えば、その方法には、以下において説明される装置を用いる方法がある。
【0029】
図1は、接触工程に用いられ得る化学反応装置の一例の構成を示す図である。
図1を参照しつつ、その化学反応装置の構成を説明する。その化学反応装置は、貯留ボンベ10と、開閉弁12と、加圧ポンプ14と、加熱部16と、反応容器18と、開閉弁20と、貯留槽22とを備える。
【0030】
貯留ボンベ10は流体を蓄える。開閉弁12は、貯留ボンベ10から加圧ポンプ14へ至る流路を開閉する。加圧ポンプ14は流体を加圧する。加熱部16は流体を加熱する。反応容器18は反応中の流体を蓄える。反応容器18の中で新しい物質が生成する。開閉弁20は、反応容器18から貯留槽22へ至る流路を開閉する。貯留槽22は反応容器18から排出された物を蓄える。
【0031】
上述された化学反応装置が用いられる場合、接触工程の手順は次の通りである。まず、作業者は、反応容器18に黒鉛を入れる。黒鉛が入れられると、作業者は、加圧ポンプ14と加熱部16とを起動する。加圧ポンプ14と加熱部16とが起動されると、作業者は開閉弁12を操作する。これにより、貯留ボンベ10(この場合、貯留ボンベ10にはインターカラントが蓄えられている)から加圧ポンプ14へ至る流路が開く。その流路が開くことにより、加圧ポンプ14にインターカラントが供給される。加圧ポンプ14はインターカラントを加圧する。加圧されたインターカラントは加熱部16に流れる。加熱部16へ供給されたインターカラントは加熱される。これにより、インターカラントは超臨界状態となる。超臨界状態のインターカラントは、反応容器18に流入する。反応容器18の中で、超臨界状態のインターカラントは黒鉛と混ざる。黒鉛と混ざったインターカラントは黒鉛の層間に進入する。その後所定の時間(以下の説明ではこの時間を「反応時間」と称する)が経過するまで待つ。以上が、上述された化学反応装置が用いられる場合の接触工程の手順である。超臨界状態ではなく亜臨界状態となるようにインターカラントを加熱してもよい。超臨界状態ではなく亜臨界状態となるようにインターカラントを加圧してもよい。超臨界状態とは、臨界点における温度(臨界温度)以上の温度かつ臨界点における圧力(臨界圧力)以上の圧力である状態をいう。亜臨界状態とは、臨界点近傍の、臨界温度よりもやや温度が低い状態又は臨界圧力よりもやや圧力が低い状態をいう。特に、次に述べられる3つの状態は、亜臨界状態である。第1の状態は、インターカラントの温度とその臨界温度との比(単位はケルビンである)が0.9以上1.0未満であり、かつ、インターカラントの圧力がその臨界圧力以上という状態である。第2の状態は、インターカラントの温度がその臨界温度以上であり、かつ、インターカラントの圧力とその臨界圧力との比(単位はパスカルである)が0.9以上1.0未満という状態である。第3の状態は、インターカラントの温度とその臨界温度との比(単位はケルビンである)が0.9以上1.0未満であり、かつ、インターカラントの圧力とその臨界圧力との比(単位はパスカルである)が0.9以上1.0未満という状態である。反応容器18の中の物を排出するためには、開閉弁20が操作される。これにより、反応容器18から貯留槽22へ至る流路が開く。反応容器18内の混合物(黒鉛とインターカラントとの混合物)はその流路を通って貯留槽22へ流出する。
【0032】
気化工程においてインターカラントを気化させるための具体的な方法は特に限定されない。例えば、インターカラントにかかる圧力を軽減するのはその方法の一つである。常温常圧において気体であるインターカラント(例えば二酸化炭素)が用いられると、そのインターカラントは大気中へ放出することで容易に気化する。
【0033】
本発明にかかる炭素同素体の製造方法は、再加熱工程をさらに備えてもよい。再加熱工程は、接触工程の後に黒鉛を再加熱する工程である。この場合、接触工程の前に加熱工程が実施されている。加熱工程と接触工程とが複数回繰返される場合、再加熱工程とは、最後の接触工程の後に黒鉛を再加熱する工程である。再加熱のための具体的な手段は特に限定されない。例えば、黒鉛にマイクロ波を再照射するという手段でもよい。この場合、再加熱工程は、接触工程の後に黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有することとなる。
【0034】
本発明にかかる
炭素同素体を含む素形材の製造方法は、本発明にかかる炭素同素体を用いることのほかは、合成樹脂を材料とする周知の素形材の製造方法と同一である。したがって、その詳細な説明は繰返されない。
【0035】
[変形例の説明]
上述した素形材と炭素同素体と炭素同素体の製造方法とは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した素形材と炭素同素体と炭素同素体の製造方法とは、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0036】
[実施例の説明]
以下、本発明の実施例及び比較例が説明される。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0037】
<実施例1>
加熱工程において、作業者は、膨張黒鉛にマイクロ波を照射した。マイクロ波の照射には、株式会社ミュージーコーポレーションのSERIO(登録商標)電子レンジMWO−17J−6(W)が用いられた。マイクロ波の周波数は2450メガヘルツであった。マイクロ波のエネルギは700ワットであった。照射時間は1分間であった。マイクロ波が照射されると膨張黒鉛は赤熱しガスを排出し膨張し火花を散らした。本実施例では、加熱工程の後に接触工程が実施された。接触工程において、作業者は、
図1に示された化学反応装置を用い、上述した手順に従って炭素同素体の粉末を製造した。インターカラントは二酸化炭素であった。このため、貯留ボンベ10には液化炭酸ガスが蓄えられた。加圧ポンプ14が液化炭酸ガスに加えた圧力は30メガパスカルであった。加熱部16において液化炭酸ガスの温度は摂氏80度(353.15ケルビン)であった。これにより、液化炭酸ガスは超臨界状態の二酸化炭素となった。反応時間は1時間であった。反応時間経過後、作業者は、反応容器18内の混合物(黒鉛と超臨界状態の二酸化炭素との混合物)を貯留槽22へ流出させた。その際、作業者は、貯留槽22を密閉しなかった。貯留槽22へ流出した二酸化炭素は直ちに気化して貯留槽22から流出した。貯留槽22には炭素同素体が残った。これにより、反応容器18内の混合物を貯留槽22へ流出させることが気化工程の作業となった。作業者は、貯留槽22内の炭素同素体の密度と比表面積とを測定した。比表面積はBET法により測定された。密度は0.0063グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は9.2平方メートル毎グラムであった。一方、作業者は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂と硬化剤とを混合した。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、三菱化学株式会社製のJER(登録商標)807であった。硬化剤は、ハンツマンペトロケミカルコーポレーションのJEFFAMINE(登録商標)EDR148であった。混合には、株式会社シンキーのあわとり練太郎(登録商標)ARE250が用いられた。これらの混合後、作業者は、その混合物中へ、上述の炭素同素体を添加した。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、炭素同素体2グラムにつき、6.45グラム使用された。硬化剤は、炭素同素体2グラムにつき、1.55グラム使用された。これにより、混合物に占める炭素同素体の重量%は20重量%となった。炭素同素体の添加後、作業者は、炭素同素体が添加されたその混合物をさらに混合した。混合後、作業者は、その混合物を容器に流し込んだ。その容器の中で、混合物に含まれるビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が硬化することにより、混合物は平板状の素形材となった。作業者は、その素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。電気抵抗率の測定には株式会社三菱化学アナリテックのMCP−T600が用いられた。熱伝導率はレーザーフラッシュ法が用いられた。熱伝導率の測定には株式会社アルバック理工の全自動レーザーフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000が用いられた。電気抵抗率は0.101Ω・センチメートルであった。熱伝導度は7.56ワット毎メートルケルビンであった。また、作業者は、本実施例で得られた炭素同素体を顕微鏡で観察した。観察には株式会社日立製作所のHD−2700が用いられた。
図2には、本実施例で得られた炭素同素体の顕微鏡画像が示される。
図2には、本実施例で得られた炭素同素体が有するグラフェンの層が表れている。
【0038】
<実施例2>
本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程と接触工程とに加え、再加熱工程を備えている。本実施例の場合、再加熱工程において、作業者は、炭素同素体にマイクロ波を照射した。マイクロ波の照射には、加熱工程と同一の電子レンジが用いられた。マイクロ波の周波数は2450メガヘルツであった。マイクロ波のエネルギは700ワットであった。照射時間は1分間であった。再加熱工程が実施された点を除き、本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1と同一である。本実施例にかかる素形材の製造方法は実施例1と同一である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.0055グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は13.2平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.0642Ω・センチメートルであった。熱伝導度は7.47ワット毎メートルケルビンであった。
【0039】
<実施例3>
本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程に先立ち接触工程が実施された(すなわち、加熱工程と接触工程との実施順序が逆だった)点を除けば、実施例1と同様である。本実施例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.014グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は1.2平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.0753Ω・センチメートルであった。熱伝導度は6.64ワット毎メートルケルビンであった。
【0040】
<実施例4>
本実施例にかかる素形材の製造方法は、次に述べられる点を除けば、実施例1と同様である。その点とは、炭素同素体が添加された混合物が容器の中へ流し込まれた後、その混合物へ力が加えられる点である。力の向きは、素形材の厚さ方向である。これにより、完成した素形材は、実施例1にかかる素形材に比べ、薄くなる。本実施例において使用された炭素同素体は、実施形1にかかる炭素同素体と同一物である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる素形材の面方向(厚さ方向に直交する方向)の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)を測定した。熱伝導度は27.36ワット毎メートルケルビンであった。
【0041】
<比較例1>
本比較例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1における加熱工程のみを備える。その加熱工程の具体的内容は実施例1と同様である。本比較例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本比較例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.009グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は15.0平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.113Ω・センチメートルであった。熱伝導度は5.71ワット毎メートルケルビンであった。
【0042】
<比較例2>
本比較例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1にかかる接触工程のみを備える。その接触工程の具体的内容は実施例1と同様である。本比較例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本比較例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.35グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は0.7平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は859000Ω・センチメートルであった。熱伝導度は1.05ワット毎メートルケルビンであった。
【0043】
[実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2とにかかる実験結果]
以下、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2とにかかる、熱伝導度と電気抵抗率との対比結果が説明される。
【0044】
図3は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との熱伝導度の対比結果を示す図である。
図3から明らかなように、実施例1乃至実施例3の熱伝導度は比較例1及び比較例2の熱伝導度に比べて高い。特に実施例1及び実施例2の熱伝導度は比較例2の熱伝導度の7.1倍以上ある。実施例1及び実施例2の熱伝導度は比較例1の熱伝導度の1.3倍以上ある。
【0045】
図4は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との電気抵抗率の対比結果を示す図である。
図4から明らかなように、実施例1乃至実施例3の電気抵抗率は比較例1及び比較例2の熱伝導度に比べて低い。特に実施例2及び実施例3の電気抵抗率は比較例2の電気抵抗率に比べるとほぼ無視できる値(88ppb以下)である。実施例2及び実施例3の電気抵抗率は比較例1の電気抵抗率の67パーセント以下である。
【0046】
図5は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との表面積が熱伝導度に及ぼす影響を示す図である。
図5において、丸い印は実施例にかかるデータである。四角い印は比較例にかかるデータである。
図6は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との密度が熱伝導度に及ぼす影響を示す図である。
図6においても、丸い印は実施例にかかるデータである。四角い印は比較例にかかるデータである。
図5と
図6と上述した各実施例にかかる熱伝導度と電気抵抗率とから明らかなように、表面積が1.2平方メートル毎グラム以上14.0平方メートル毎グラム以下である場合、熱伝導度は高くなる。表面積が8.0平方メートル毎グラム以上14.0平方メートル毎グラム以下であり、かつ、密度が0.004グラム毎立方センチメートル以上0.008グラム毎立方センチメートル以下である場合、熱伝導度は特に高くなる。
【0047】
図7は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との表面積が電気抵抗率に及ぼす影響を示す図である。
図7においても、丸い印は実施例にかかるデータである。四角い印は比較例にかかるデータである。
図8は、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2との密度が電気抵抗率に及ぼす影響を示す図である。
図8においても、丸い印は実施例にかかるデータである。四角い印は比較例にかかるデータである。
図7から明らかなように、表面積が1.2平方メートル毎グラム以上14.0平方メートル毎グラム以下である場合、電気抵抗率は高くなる。