特許第6152307号(P6152307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152307
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20170612BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20170612BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20170612BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20170612BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H02J50/10
   H01F27/30
   H01F27/24 P
   H01F27/36 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-128350(P2013-128350)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-5547(P2015-5547A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 圭介
(72)【発明者】
【氏名】那須 巧
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−172084(JP,A)
【文献】 特表2006−527148(JP,A)
【文献】 特開2010−245323(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0253153(US,A1)
【文献】 特開平05−090039(JP,A)
【文献】 特開昭48−042322(JP,A)
【文献】 特開2005−109173(JP,A)
【文献】 実開昭59−083014(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/24
H01F 27/30
H01F 27/36
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される他のコイルユニットと非接触で電力伝送可能なコイルユニットであって、
軟磁性体を含んで形成された平板状のコアと、
金属を含んで形成され、前記コアを支持する支持部材と、
前記コア及び支持部材の周りに巻き回されたコイルと、
を備え、
前記支持部材は、前記コアの一方の面側に配置されている
ことを特徴とするコイルユニット。
【請求項2】
前記軟磁性体はフェライトであることを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記支持部材は前記コアと接触していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
当該コイルユニットは、前記一方の面側に、当該コイルユニットの動作時に発生する電磁波を遮断する遮蔽板を更に備え、
前記支持部材は、前記遮蔽板に接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば対象物に非接触で給電を行う非接触給電装置等に搭載されるコイルユニットの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコイルユニットとして、例えば方形のフェライトコアの周りに導線が巻回されたコイルユニット(所謂角型コイル)が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−172084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば電気自動車等に搭載されたバッテリを非接触給電により充電するような非接触給電装置等に搭載されるコイルユニットは比較的大型になる。他方で、コイルユニットのコアの材料として利用されることが多いフェライトでは、大型のコアを製造することが困難である。加えて、フェライトコアは、衝撃に比較的弱く割れやすい。
【0005】
このため、複数のフェライトコアを相互に貼り合わせることにより大型のコアが製造されることが多い。そして、フェライトコアの形状の維持及び保護の観点から、フェライトコアが、樹脂製のボビンケース内に格納されることが多い。該樹脂製のボビンケースは、実用的な機械的強度を得るために、比較的樹脂層の厚さは比較的厚い。
【0006】
このような、樹脂製のボビンケース内に格納されたフェライトコアを有するコイルユニットは、該コイルユニットを備える装置の動作時にフェライトコアの熱を効率的に放熱することが困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、機械的強度を高めつつ、効率的に放熱することができるコイルユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイルユニットは、上記課題を解決するために、対向配置される他のコイルユニットと非接触で電力伝送可能なコイルユニットであって、軟磁性体を含んで形成された平板状のコアと、金属を含んで形成され、前記コアを支持する支持部材と、前記コア及び支持部材の周りに巻き回されたコイルと、を備え、前記支持部材は、前記コアの一方の面側に配置されている。
【0009】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係るコイルユニットの構成を示す図である。
図2】実施例に係るコイルユニットが非接触の電力伝送に用いられる場合の配置を示す図である。
図3】実施例に係るコイルユニットの周囲の磁束の一例を示す図である。
図4】シミュレーション結果の一例である。
図5】実施例に係るコイルユニットの製品としての構成の一例を示す図である。
図6】比較例に係るコイルユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコイルユニットに係る実施形態について説明する。
【0012】
実施形態に係るコイルユニットは、当該コイルユニットと対向配置される他のコイルユニットと非接触で電力伝送可能に構成されている。ここで、当該コイルユニットは、非接触で電力伝送が可能であればよく、「送電側」及び「受電側」のいずれ側であってもよい。つまり、当該コイルユニットは、他のコイルユニットに対して電力を送電するためのコイルユニットであってもよいし、他のコイルユニットからの電力を受電するためのコイルユニットであってもよい。
【0013】
当該コイルユニットは、コア、支持部材及びコイルを備えて構成されている。
【0014】
コアは、例えばフェライト等の軟磁性体を含んで形成されている。該コアは、平板状である。尚、コアは、一枚板でなくてよく、軟磁性体を含んで形成された複数の板状部材が組み合わされることにより構成されていてよい。
【0015】
支持部材は、金属を含んで形成されている。本実施形態では特に、支持部材は、平板状のコアの一方の面側に配置されている。尚、金属としては、例えばアルミニウム、銅等の電気抵抗率の低いものが望ましい。本実施形態では、典型的には、支持部材とコアとが、例えば接着剤や両面テープ等により相互に貼り合わされている。支持部材とコアとの間に、他の部材が介在していてもよい。
【0016】
コイルは、コア及び支持部材の周りに導線が巻き回されることにより形成される。つまり、本実施形態に係るコイルユニットは、所謂角型コイルである。このように構成すれば、所謂円盤型コイルに比べて、本実施形態に係るコイルユニットと、当該コイルユニットに対向して配置されるコイルユニットとの間の位置ずれを許容することができる。
【0017】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、例えば電気自動車等に搭載されたバッテリを充電するために、非接触で電力伝送可能に構成された装置では、コイルユニットに、100kHz程度の高周波電力が供給される。コイルユニットのコアとして使用可能な磁性体に、機械的強度の比較的高いアモルファス磁性合金がある。しかしながら、アモルファス磁性合金は、100kHz程度の高周波電力を用いる装置では十分な性能を得ることが難しい。他方で、フェライト等の軟磁性体は、100kHz程度の高周波電力を用いる装置におけるコイルユニットのコアとして適切であるが、機械的強度が比較的低いので、大型化が困難である。フェライト等の軟磁性体により形成されているコアの機械的強度を補うために、該コアが樹脂製のボビンケース内に格納されることが多い。
【0018】
ところで、コイルユニットを備える装置の動作時には、コアが発熱する。樹脂製のボビンケースにコアが格納されている場合、コアの熱を効率的に放熱することは困難である。樹脂製のボビンケースに代えて、熱伝導率の比較的良い金属を用いた場合、該金属がコイルユニット周囲の磁界に影響を及ぼしてしまう。
【0019】
そこで本実施形態では、平板状のコアの一方の面側にのみ、金属を含んで形成された支持部材を配置している。このように構成すれば、支持部材が、コアの一方の面とは反対側の他方の面側の磁界に与える影響を抑制することができる。加えて、支持部材が金属であるのでコアの熱を効率的に放熱することができる。更に、樹脂を用いるよりも支持部材の厚さを抑えることができるので、当該コイルユニットの薄型化を図ることができる。
【0020】
このように、本実施形態に係るコイルユニットによれば、機械的強度を高めつつ、効率的に放熱することができる。尚、コアと支持部材とを貼り合わせる接着剤又は両面テープには、熱伝導の比較的良いシリコン系の接着剤又は両面テープが用いられることが望ましい。
【0021】
実施形態に係るコイルユニットの一態様では、前記軟磁性体はフェライトである。
【0022】
このように構成すれば、当該コイルユニットを搭載する非接触電力伝送装置の電力伝送効率の低下を防止することができる、或いは、電力伝送効率の向上を図ることができる。
【0023】
実施形態に係るコイルユニットの他の態様では、前記支持部材は前記コアと接触している。
【0024】
このように構成すれば、コアの熱を効率的に放熱することができ、実用上非常に有利である。
【0025】
実施形態に係るコイルユニットの他の態様では、当該コイルユニットは、前記一方の面側に、当該コイルユニットの動作時に発生する電磁波を遮断する遮蔽板を更に備え、前記支持部材は、前記遮蔽板に接続されている。
【0026】
このように構成すれば、当該コイルユニットを備える装置の動作時に、コイルユニット周辺への電磁波の影響を抑制することができ、実用上非常に有利である。
【実施例】
【0027】
本発明のコイルユニットに係る実施例を、図面に基づいて説明する。尚、以下の図では、部材を認識し易いように、部材ごとに縮尺を変更している。
【0028】
先ず、実施例に係るコイルユニットの構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施例に係るコイルユニットの構成を示す図である。尚、図1には、コイルユニットの上方から平面的に見た平面図と、該コイルユニットの側面図とが記載されている。
【0029】
図1において、コイルユニット100は、コイル10、コア20、支持部材30及び遮蔽板40を備えて構成されている。
【0030】
コア20は、例えばフェライト等の軟磁性体を含んで構成されている。尚、当該コイルユニット100が、例えば電気自動車等の車両に搭載されたバッテリの充電のための非接触の電力伝送装置に搭載される場合、当該コイルユニット100の大きさが比較的大きくなるので、コア20は、例えば、複数のフェライトの板状部材が相互に組み合わされることで(具体的には例えば、接着剤で貼り合わされることで)構成されてもよい。
【0031】
支持部材30は、例えばアルミニウムや銅等の、電気抵抗率が比較的低く、且つ熱伝導率の比較的高い金属を含んで構成されている。支持部材30は、例えば接着剤や両面テープ等により、コア20の一方の面に貼りつけられている。尚、接着剤や両面テープは、熱伝導の比較的良いシリコン系のものが望ましい。
【0032】
コイル10は、コア20及び支持部材30の巻き回された導線により構成されている。当該コイルユニット100のような所謂角型コイルは、非接触の電力伝送時に、当該コイルユニット100と対向配置される他のコイルユニットとの間の位置ずれの影響を受けにくいという効果を奏する。
【0033】
遮蔽板40は、例えばアルミニウム等の金属からなり、当該コイルユニット100に電力が供給された際に、該コイルユニット100の周囲に発生する磁界を遮蔽する。
【0034】
ここで、当該コイルユニット100が、送電側及び受電側各々に用いられる場合、送電側のコイルユニット100と、受電側のコイルユニット100とは、図2に示すように、互いに対向して配置される。
【0035】
図2に示すように、送電側のコイルユニット100の支持部材30は、コア20の受電側のコイルユニット100に対向する面とは反対側の面側に配置されている。同様に、受電側のコイルユニット100の支持部材30は、コア20の送電側のコイルユニット100に対向する面とは反対側の面側に配置されている。
【0036】
このように、金属を含んでなる支持部材30をコア20の一方の面側のみに配置することにより、図3に示すように、送電側のコイルユニット100に電力が供給されることにより発生する磁束のうち、受電側のコイルユニット100には、支持部材30の影響はほとんど或いは全く及ばない。
【0037】
実施例に係るコイルユニット100の効果を検証するために、本願発明者は、金属製の支持部材を有しないコイルユニット(図4(a)参照)、実施例に係るコイルユニット100(図4(b)参照)、及び、コアの他のコイルユニットと対向する側に金属製の支持部材が配置されているコイルユニット(図4(c)参照)各々について、シミュレーションによりQ値と結合係数とを演算した。
【0038】
尚、コイルユニットは、40cm角の角型コイルであり、送電側のコイルユニット及び受電側のコイルユニット間のギャップは、50mmであるとする。
【0039】
図4下段に示すように、実施例に係るコイルユニット100のQ値及び結合係数各々は、「182」、「0.40」である。金属製の支持部材を有しないコイルユニット(図4(a)参照)のQ値及び結合係数各々は、「195」、「0.40」である。
【0040】
このように、実施例に係るコイルユニット100は、金属製の支持部材を有しないコイルユニットに比べてQ値が多少劣るものの、結合係数は同等である。つまり、支持部材30に起因して、コイルユニット100の電力伝送効率が大幅に低下することはないといえる。
【0041】
これに対して、図4(c)に示すコイルユニットのQ値及び結合係数各々は、「94」、「0.20」であり、電力伝送効率が大幅に低下していることがわかる。
【0042】
ところで、実施例に係るコイルユニット100が製品として製造される際には、図5に示すように、樹脂等により形成されたケース50内に、コイル10、コア20及び支持部材30が格納される。また、支持部材30は、遮蔽板40に接続される。
【0043】
他方、金属製の支持部材を有しないコイルユニット200(図6参照)では、フェライトコアを支持するために樹脂製のボビンケースが用いられることが多い。このようなボビンケースが用いられる場合、コイルユニットを備える装置の動作時にフェライトコアに発生する熱を効率的に放出することが困難である。
【0044】
しかるに実施例に係るコイルユニット100では、上述の如く、支持部材30が金属を含んで構成されている。このため、コイルユニット100を備える装置の動作時にコア20に発生する熱を効率的に放出することができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うコイルユニットもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
10…コイル、20…コア、30…支持部材、40…遮蔽板、50…ケース、100…コイルユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6