(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、1光子及び多光子照射テストにおいて、光開裂性化合物又はその塩及び光開裂性化合物から発生する生物学的に活性な化合物を無効にするための試薬が併用される。
【0010】
本発明の有利な1具体例によれば、光開裂性化合物は、生物活性化合物として、アミノ酸、向神経活性アミン、神経伝達物質、ホルモン、DNA、RNA、又はDNA又はRNAのフラグメント、ペプチド、脂質、2次シグナル物質、薬剤活性成分又はその候補を放出する。
【0011】
神経伝達物質は、例えば、グリシン、アスパラギン酸(L−Asp)、グルタミン酸(L−Glu)、γ−アミノ酪酸(GABA)、ヒスタミン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニン等である。
【0012】
薬剤活性成分の候補は、生物学的に活性な化合物であろうと考えられ、その化合物の活性が本発明によるプロセスでテストされるような化合物である。このような化合物は、例えば、中枢神経系に作用する化合物である。
【0013】
本発明の有利な1具体例は、モノ光子又は多光子照射実験における、一般式(I)
【化1】
(ここで、
R
1は、水素原子、又は電子求引性基、好ましくは、シアノ、ニトロ、カルボキシル又はホルミル基又はハロゲン原子を表し;
R
2は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、好ましくは臭素原子;又は未置換の、直鎖又は分枝状、飽和又は不飽和アルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、C
1〜C
6アルコキシ基;又は直鎖又は分枝状の置換アルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、1又は同一又は異なる2の未置換C
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基、又は未置換アミノ基又は置換アミノ基(好ましくは、ジメチルアミノ−C
1〜C
6アルコキシ基)を有するC
1〜C
6アルコキシ基;又は直鎖又は分子状炭素鎖の置換飽和又は不飽和アルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、1以上のカルボキシル基(好ましくは、マロニルオキシ基)、又は未置換のアミノ基又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基によって置換されたアミノ基によって置換されたC
1〜C
6アルコキシ基を表し;
R
3は、水素原子、又は置換又は未置換のアルキル基を表し、又はR
2及びR
3は、一緒に、未置換のシクロアルキル基を表し;
R
4は、水素原子、又は置換又は未置換のアルキル基を表し、又はR
3及びR
4は、一緒に、未置換のシクロアルキル基を表し;
R
5は、インドリン環の窒素原子に共有結合する生物学的に活性な化合物を表す)で表される化合物又は有機酸又は無機酸とで形成されるその塩と、一般式(I)の化合物の自発的分解のために発生する生物学的に活性な化合物を無効にする試薬との併用である。
【0014】
化合物の酸付加塩も使用できる。無機酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、臭化水素酸、ホスホン酸;有機酸、例えば、飽和又は不飽和、置換又は未置換の脂肪族カルボン酸[例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、及びステアリン酸、デカン酸、セバシン酸、オロチン酸、パルミチン酸、パモン酸、置換カルボン酸(例えば、ハロゲン化カルボン酸(例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)又はオキシカルボン酸(例えば、2−オキソ−グルタル酸、ピルビン酸)]、脂肪族ジカルボン酸又は多カルボン酸(例えば、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、4−アミノサリチル酸)、脂肪族又は芳香族スルホン酸[例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシ−エタンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸(シクラミン酸)、ドデシルスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸]、カルボキシル官能基を有する炭水化物(例えば、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルクロン酸)、ヒドロキシ酸(例えば、アスコルビン酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、リンゴ酸)、アミノ酸(例えば、L−アスパラギン酸)]とで形成される塩、好ましくは、未置換のC
1〜C
4カルボン酸(例えば、酢酸)又は1以上のハロゲン置換基を有する置換C
1〜C
4カルボン酸(例えば、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)とで形成される塩、最も好ましくは、トリフルオロ酢酸とで形成される塩が酸付加塩として使用される。
【0015】
テストでは、本発明による一般式(I)で表される化合物の置換基R
5として、すなわち、インドリン環の窒素原子に共有結合する生物学的に活性な化合物として、DNA、RNA又はそのフラグメント、ホルモン、神経伝達物質、アミノ酸、ペプチド、脂質又は向神経活性アミン、薬剤活性成分又はその候補が使用され、このようにして、一般式(I)で表される化合物の自発的加水分解によって形成される生物学的に活性な化合物を無効にできる試薬も使用される。
【0016】
本発明によれば、試薬は、使用する「ケージド」化合物の自発的加水分解によって形成される生物学的に活性な化合物を、これら化合物が反応混合物中に蓄積しないように、物理的、化学的又は生物学的方法で分解又は吸収する、「生物学的に活性な化合物を無効にすることができる」試薬と定義される。このような化合物は、例えば、酵素(アミノ酸を、発生される際に、生物学的に不活性な化合物に転化する)、又はアミノ酸を消化する細胞培養物であり、又はイオン性化合物が形成される場合には、自発的に形成される生物学的に活性な化合物の吸収のためにイオン交換樹脂が使用される。生物学的に活性な化合物を「無効にできる」好適な試薬の選択は、「ケージド」化合物の自発的加水分解された化合物の性質に左右される。
【0017】
「同時投与」とは、本発明によれば、テストの間に、「ケージド」化合物及び反応混合物において一般的に使用される更なる成分に加えて、使用したケージド化合物の自発的分解によって形成された生物学的に活性な化合物を無効にする試薬も、テスト混合物中に、好ましくは、溶解又は懸濁した形又は固状の形で存在することを意味する。
【0018】
有利な1具体例によれば、一般式(I)で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩が、1光子又は多光子照射実験、好ましくは、2光子照射実験において、一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又は直鎖又は分枝状、置換又は未置換のアルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、未置換アミノ基、又はC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基で置換されたアミノ基によって置換されたC
1〜C
6アルコキシ基、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、アミノ酸の酸残基又は一般式(II)
【化2】
(ここで、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、神経伝達物質のアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物の自発的分解によって形成されるアミノ酸を無効にする試薬、好ましくは、アミノ酸分解酵素又は物理的、化学的又は生物学的方法でアミノ酸を吸収できる試薬、好ましくは、イオン交換樹脂、神経細胞と同時投与として使用される。
【0019】
最も有利な1具体例によれば、一般式(I)で表される化合物のトリフルオロ酢酸との塩が、1光子又は多光子照射実験、好ましくは、2光子照射実験において、一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又はジメチルアミノ−エトキシ基、ジメチルアミノ−プロポキシ基、ジメチルアミノ−イソプロポキシ基の異性体(−O−CH(CH
3)CH
2−N(CH
3)
2及びO−CH
2−CH(CH
3)−N(CH
3)
2基)、ジメチルアミノ−イソブトキシ基(O−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−N(CH
3)
2)、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、L−グルタミン酸、GABA又はグリシンの酸残基又は一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、L−グルタミン酸、GABA又はグリシンのアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物の自発的分解によって形成されるアミノ酸を無効にする試薬、好ましくは、アミノ酸分解酵素又は物理的、化学的又は生物学的方法でアミノ酸を吸収できる試薬、好ましくは、イオン交換樹脂、神経細胞と同時投与として使用される。
【0020】
さらに、本発明は、改善された1光子又は多光子照射プロセスであって、光開裂可能な化合物を、自発的分解によって発生する生物学的に活性な化合物を無効にする試薬と併用する(同時投与する)プロセスにも関する。
【0021】
本発明は、また、一般式(I)で表される化合物及び一般式(I)で表される化合物の分解によって形成される生物学的に活性な化合物を無効にする試薬、及び必要であれば他の補助剤を含んでなる組成物にも関する。
【0022】
本発明の更なる具体例は、1光子又は多光子照射実験において使用される、一般式(I)[ここで、R
1はニトロ基を表し;R
2は水素又は臭素原子、又は直鎖又は分枝状、置換又は未置換のアルコキシ又はシクロアルコキシ基、好ましくは、未置換のアミノ基又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基にて置換されたアミノ基によって置換されたC
1〜C
6アルコキシ基、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、アミノ酸の酸残基、又は一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、アミノ酸のアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩及びその製法にある。
【0023】
さらに、本発明の最も有利な1具体例は、一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又はジメチルアミノ−エトキシ基、ジメチルアミノ−プロポキシ基、ジメチルアミノ−イソプロポキシ基の異性体(−O−CH(CH
3)CH
2−N(CH
3)
2及びO−CH
2−CH(CH
3)−N(CH
3)
2基)、ジメチルアミノ−イソブトキシ基(O−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−N(CH
3)
2)、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、L−グルタミン酸、GABA又はグリシンの酸残基、又は一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、L−グルタミン酸、GABA又はグリシンのアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩及びその製法に関する。
【0024】
有利な具体例によれば、一般式(I)で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩において、R
5はアミノ酸の酸残基であるか、又はR
5は、一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、神経伝達物質又は神経伝達物質とみなされる化合物のアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基である。
【0025】
発明者らは、驚くべきことには、一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又は直鎖又は分枝状、置換又は未置換のアルコキシ又はシクロアルコキシ、好ましくは、未置換のアミノ基、又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基にて置換されたアミノ基によって置換されたC
1〜C
6アルコキシ基、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、アミノ酸の酸残基又は一般式(II)(ここで、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、神経伝達物質又は神経伝達物質とみなされる化合物のアミン残基を表し、Xは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩が、例えば、MNI−Glu又はそのトリフルオロ酢酸(以下、「TFA」)との酸付加塩(MNI−Glu・TFA)よりも、かなり高い量子収率で使用されるとの知見を得た。これらの化合物はより高い量子収率を有するが、実験条件下において、自発的に容易に分解する。驚くべきことには、発生されるアミノ酸又は神経伝達物質は、好適な試薬の添加により、化学的プロセスにおいて無効にされるか、又はイオン交換樹脂を使用することにより、物理的−化学的プロセスにおいて、測定のために使用された媒体から除去される。自発的分解によって形成される化合物も、物理プロセスにより、除去される。
【0026】
化合物DNI−Glu・TFAから放出されたL−グルタミン酸は、好ましくは、酵素グルタミン酸デヒドロゲナーゼ又はグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの添加によって無効にされる。試薬の存在にもかかわらず、測定シグナルは、試薬自体が生理学的効果を持たないため減少せず、シグナル/ノイズの比はかなり良好となる。また、DNI−Glu塩基を使用する場合、興奮性シナプス後電位(以下、EPSP)のレベルは、いわゆる「ケージド試薬」以外に、自発的に放出されるグルタミン酸を無効にする試薬も使用されている場合には、コントロールレベルにリセットされる。
【0027】
EPSPの特性を保持することは、EPSPの周波数が増大する場合には、細胞の基本的活動性が正常レベルから逸脱し、細胞死を招くため、非常に重要である。電位固定法を使用して測定した、細胞の自発的活動性の変化を
図1Aに示す(図において、曲線a)はコントロール(正常な活動性)を示し、b)は、添加した「ケージド」化合物の自発的分解によって生じた条件を示し、曲線c)は、酵素の添加によって条件がコントロールレベルに維持されることを示している)。いくつかの並列実験の結果を
図1Bに示す(図において、垂直のスケールバーはEPSPの周波数を示す)。示した実験の場合、潅流溶液へのDNI−Gluの添加のため、EPSPの周波数が増大し、ついで、酵素グルタミン酸デヒドロゲナーゼの添加後、元に戻る。酵素グルタミン酸デカルボキシラーゼを使用する場合も、結果は同様である。実施例17では、並列サンプル8個の実験を行う場合、測定に供されるDNI−Gluが顕著に周波数を増大させるとの事実にもかかわらず、酵素の添加が電位変化の頻度をコントロールレベルに戻すとの知見が示されている。酵素の添加によって、EPSPの周波数はコントロールレベルに戻され、実験のシグナル/ノイズ比が増大される。実験が正常な細胞機能を持つ生理学的条件に保持され、このようにして、実験は、より良好にコントロールされ、より良好な再現性を提供する。使用する酵素は細胞機能を変化させず、従って、測定を妨げない。
【0028】
下記の表において、例として、いくつかの生物学的に活性な化合物、神経伝達物質及び向神経活性アミンが放出される場合に、いずれの酵素が使用できるかを要約する。
【表1】
【0029】
当業者であれば、一般的知識及び使用した実験環境に基づき、市販の酵素組成物から好適な酵素を選択することができる。好適な試薬、好ましくは、酵素の選択は、放出される生物学的に活性な物質についての認識を有する当業者の一般的知識の一部である。当業者は、実験に供する細胞、例えば、ニューロンに対して危険でない及びそれらの生理学的状態を変更させない様な試薬を選択する。DNI−Gluを使用する場合には、このような試薬は、酵素グルタミン酸デヒドロゲナーゼ又はグルタミン酸デカルボキシラーゼである。
【0030】
DNA、RNA又はそのフラグメントが放出される場合、放出された生物学的に活性な化合物は、酵素ヌクレアーゼ(DNAヌクレアーゼ又はRNAヌクレアーゼ)の使用により無効にされる。生物学的に活性な化合物として脂質ホルモンを使用する場合、自発的分解により放出される化合物は、例えば、酵素脂肪酸デヒドロゲナーゼ(FAD)の使用により又は脂肪酸を水和する酵素NAD
+キナーゼ、酵素チオリシスCoAにより無効にされる。
【0031】
ペプチドが放出される場合、ペプチド分解酵素も使用される。2次シグナル化合物が放出される部位には、光開裂性化合物の自発的加水分解の間に発生されるCa
2+イオンはCa
2+キレート化剤の使用によって無効にされる。
【0032】
或いは、自発的加水分解により放出される生物学的に活性な物質を、物理的又は化学的プロセスによって、部分的に又は完全に吸着する吸着剤を、測定液体中又はその循環系内に配置することができる。
【0033】
アミノ酸のようなイオン性化合物が放出される場合には、陰イオン又は陽イオン交換樹脂を測定流体中に配置でき、或いは、アミノ酸を吸収するために、流体を、イオン交換樹脂を充填したカラム内を通過させることができる。陰イオン交換樹脂を使用する場合、アミノ酸及び神経伝達物質も吸収される。アミン及びアミノ酸の吸収用には、好ましくは、スルホン酸基を含有する酸性イオン交換樹脂が使用され、一方、カルボキシル基を含有する化合物の吸収には、塩基性イオン交換樹脂が使用される。好適なイオン交換樹脂の選択は、分離される化合物の特性に左右されるが、選択は、当業者の知識の一部である。同様に、固相抽出も使用できる。固相抽出用の吸着剤は、イオン交換樹脂の使用と同様に使用されるが、これらの吸着剤の中から、ステロイドのような無極性化合物の吸着用に好適なタイプを見出すことができる。
【0034】
自発的に放出される生物学的に活性な成分は、生物学的プロセスによって、測定媒体から除去される。生物学的に活性な化合物を同化できる細胞又はその組織が試薬として使用され、測定流体の流れ中に又は測定セル内に配置される場合には、自発的に放出される生物学的に活性な化合物の濃度の増大を回避できる。例えば、海馬細胞が検討され、グルタミン酸が放出される場合、測定流体を、測定セルの入口以前に、海馬細胞集団を通過させ、これにより、これら細胞が測定流体中で形成されたグルタミン酸を吸収及び同化する。このようにして、測定流体において、グルタミン酸の量は増大されない。活性化合物の同化を助けるタンパク質をますます発現する一般的に変性された細胞株が配置される場合には、効果が改善される。
【0035】
当業者であれば、上述の方法及び公知の試薬から、自発的分解の生物学的に活性な化合物を無効にするための公的な方法及び好適な補助剤を容易に選択できる。
【0036】
特に、本発明によれば、一般式(I)で表される化合物において、電子吸引基とは、シアノ、ニトロ、カルボキシル、ホルミル基又はハロゲン原子であり;飽和アルキル基とは、直鎖又は分枝状のC
1〜C
6アルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル又は3級ブチル基である。不飽和アルキル基とは、1以上の孤立した又は共役した二重又は三重結合を含有する直鎖又は分枝状、置換又は未置換の炭素鎖である。アルキル基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、1級、2級又は3級アミノ基のような置換基を有することができる。ハロゲン原子は、例えば、ヨウ素、塩素、臭素又はフッ素原子である。アルコキシ基としては、式
アルキル−O−
(ここで、アルキルは上記の定義のとおりである)で表される基である。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、2−オキシマロン酸、3−ジメチルアミノプロポキシ、2−ジメチルアミノエトキシ、2−ジメチルアミノ−1−メチル−エトキシ、4−ジメチルアミノブトキシ、3−ジメチルアミノ−1−メチル−プロポキシ基である。本発明によれば、シクロアルキル基は、非芳香族環又はシクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基のような環を形成する炭素原子である。シクロアルコキシ基は、シクロアルキル基がエーテルタイプの酸素原子により化合物の他の部分に結合しているような基である。シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基は、例えば、ハロゲン原子(例えば、I、Cl、Br、F)、シアノ基、置換又は未置換のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシにて、又は1〜3のヘテロ原子(ヘテロ原子は、独立して、酸素、イオウ又は窒素である)を含む5〜7員の複素環にて置換される。好ましくは、複素環は飽和であり、2のヘテロ原子を含み、さらに好ましくは、複素環化合物は、モルホリニル又はピペラジニル基である。化合物が置換アミノ基を含有する場合、これらの置換基は、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルコキシ基である。本発明によれば、アリール基は、フェニル、ナフタレニルのような単環式又は多環式芳香族基であり、ヘテロアリール基は、ピリジニル基のようなヘテロ原子を含有する孤立した又は共役した環状芳香族基である。本発明によれば、アミノ酸残基としては、天然のアミノ酸又はその誘導体の酸残基である。好ましくは、天然のアミノ酸は、リシン、アラニン、プロリンのような必須アミノ酸及びヒトの器官において又は動物において、例えば、伝導において、役割を有する他のアミノ酸、例えば、γ−アミノ酪酸又はその誘導体である。好適な具体例では、アミノ酸残基は、光照射により光開裂性化合物から分裂する向神経活性アミノ酸の酸残基である。このような化合物は、グルタミン酸の酸残基、4−アミノ−4−カルボキシ−1−オキソ−ブチ−1−イル基、又γ−アミノ酪酸(GABA)の酸残基、1−オキソ−4−アミノ−ブチル基である。
【0037】
神経伝達物質のアミン残基は、神経伝達物質のアミノ基の水素原子の1を除去することによって誘導される。例えば、ドーパミンのアミン残基は、2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−エチル−アミノ基であり、アドレナリン及びノルアドレナリンのアミン残基は、(R)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−エチル−アミノ基であり、ヒスタミンのアミン残基は、2−(1H−イミダゾール−4−イル)−エチルアミノ基である。
【0038】
神経伝達物質とみなされる化合物は、向神経活性効果を有することが期待される少なくとも1のアミノ基を含有する新規又は公知の化合物である。このような化合物は、本発明による方法により、薬剤研究の特定の段階においてテストされる。
【0039】
本発明の有利な1具体例によれば、ジニトロ化合物のトリフルオロ酢酸塩が使用される。ジニトロ化合物又は塩の使用は、発明者らの実験(実施例18)の結果に従って、
図2に示すように、DNI−Gluを使用する場合、照射によって生ずる興奮性シナプス後電位(以下、EPSP)が、MNI−Gluを使用する場合よりも有意に高いため、試験の観点から、より好ましい。これらのテスト結果を
図2Aに示す(図において、水平のスケールバーは時間単位50分を表し、垂直のスケールバーは電位2mVを表す)。
図2Bは、光開裂の応答としてのCa
2+過渡信号も、DNI−Gluを使用する場合、MNI−Gluを使用する場合よりも有意に高いことを示している。ジニトロ化合物を使用することによる他の利点は、これらが、使用する光の波長とは無関係に、対応するモノニトロ誘導体よりも高いEPSP及びCa
2+過渡信号を与えることである。使用する光の波長に応じた信号の大きさを
図3に示す(
図3A−EPSP;
図3B−Ca
2+過渡信号)。
【0040】
一般式(I)で表される化合物をトリフルオロ酢酸塩の形で使用できるとの事実は、当業者であれば、塩の形からトリフルオロ酢酸のような酸化合物の放出はテストを妨げることが予測されるため、驚くべきことである。
【0041】
本発明の最も有利な具体例によれば、DNI誘導体のTFA塩を、自発的に放出される生物学的に活性な化合物を無効にする試薬とともに、測定流体に添加するようにして、「ケージド」化合物として使用する。
【0042】
本発明の他の態様は、1光子又は多光子テスト、好ましくは、2光子照射テスト法であって、光開裂性化合物、好ましくは、一般式(I)による化合物を測定流体に溶解し、自発的分解から生ずる生物学的に活性な化合物を無効にする試薬を添加し、ついで、サンプルの天然の流体をこの溶液に変更し、このサンプルを使用して、現状水準の装置を使用する公知の方法に従ってテストを行うことを特徴とする方法にある。
【0043】
測定流体としては、リンゲル溶液又はACSF(人工脳脊髄液)、又は好適な組成を有する他の溶液が使用される。測定流体の選択は、当業者の知識の一部である。
【0044】
特に、神経細胞及び形成される生物活性アミノ酸の観察の場合には、一般式(I)で表される化合物又はその塩を、人工脳脊髄液(ACSF)及び自発的分解によって形成されるアミノ酸を無効にする算定された量の試薬に溶解する。試薬は、好ましくは、酵素である。
【0045】
必要な試薬の量は、光開裂性化合物に応じて容易に算定され、試薬は下記のとおりである。
【0046】
光開裂性化合物を、テストにおいて使用される量で、人工脳脊髄液(ACSF)に溶解する。ACSFの組成は下記のとおりである。
【表2】
【0047】
得られた溶液を、開始時及び48時間後の時点でサンプリングする。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、例えば、DNI誘導体の場合には、DNI誘導体の分解生成物である4−メトキシ−5,7−ジニトロインドリンの増加から、活性成分の量を測定する。発明者らは、通常の1光子又は多光子テストの間のアミノ酸放出の量を算定し、ついで、酵素生成物の活性度を知った後、このような自発的分解によって形成されるアミノ酸を脱活性化できる量の酵素を測定流体に添加する。
【0048】
本発明の更なる態様は、一般式(I)で表される化合物又はその塩及び一般式(I)で表される化合物の自発的分解による生物学的に活性な化合物を無効にする試薬、及びさらに、必要であれば、補助剤を含んでなる組成物である。有用な補助剤は、医薬品工業において一般的に使用されるような不活性化合物である。これら補助剤のタイプ、特性及び使用は、特に、Handbook of Pharmaceutical Excipients(5版、Raymond C Rowe、Paul J Sheskey及びSian C Owen編、2006年発行)に示されている。
【0049】
当業者は、医薬品工業において一般的に使用される方法に従って、この組成物を調製できる。このような方法は、特に、PHARMACEUTICAL MANUFACTURING HANDBOOK(SHAYNE COX GAD,PH.D.,D.A.B.T.;2008年、John Wiley & Sons,Inc.発行)に示されている。
【0050】
発明者らは、成分を、プレミックスとして、測定媒体、特に人工脳脊髄液(ACSF)の溶液に溶解する場合には、テストを有意により容易に実施できるとの知見を得た。この場合、測定時間は、2つの化合物を測定及び溶解することが必要でないため、短くなる。さらに、プレミックスの使用の利点は、「ケージド」化合物及び試薬の割合が一定であり、従って、並列テストの偏差が低減されることである。さらに、より多くの量が測定されるため、テストの精度が増大する。上述のように、テストの間に発生する生物学的に活性な化合物を無効にする試薬の不存在は、テスト結果を歪め、感作又は細胞死さえ生じ、このようにして、テストが不可能になる。
【0051】
本発明によれば、用語「プレミックス」は、光化学的に開裂可能な成分及びその自発的分解によって形成される生物学的に活性な化合物を無効にする試薬を一緒に又は別個に含有する混合物(混合物は、他の補助剤と混合して使用される)を意味する。プレミックスは、ケージド化合物のみ又はその分解によって形成される生物学的に活性な化合物を無効にする試薬のみと補助剤との混合物であるか、又は光化学的に活性な化合物を試薬と一緒に含有する混合物のいずれかである。プレミックスは、固状又は液状、好ましくは、固状で調製される。プレミックスは、光化学的に開裂可能な化合物及び自発的分解によって形成される生物学的に活性な化合物、例えば、アミノ酸を無効にする試薬以外に、追加の、ただし、少なくとも1の補助剤を含有する粉末状の混合物でもよい。このような補助剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、グルコール、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)二ナトリウム塩のような有機又は無機の化合物である。
【0052】
プレミックスは、上述の測定及び算定に基づく割合で、光化学的に活性な成分及び試薬を補助剤と混合し、混合物を均質化することによって調製される。混合は、必要であれば、窒素雰囲気下において、乾燥した場所で行われる。混合物を、必要であれば、−20℃において凍結保存する。
【0053】
プレミックスが粉末状混合物である場合、プレミックスは錠剤として圧縮されるか、又はカプセルに充填され、或いは各種の形状の単位用量として製剤される。光化学的に活性な化合物及び試薬を別個に処方し、得られた粉末状の混合物を単位用量に製剤できる。
【0054】
本発明の他の態様は、光化学的に活性な成分及び試薬を別個に処方し、共通の包装ニットに入れたキットである。
【0055】
本発明の他の具体例は、1光子又は多光子照射実験において使用される一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又は直鎖又は分枝状、置換又は未置換のアルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、未置換のアミノ基又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基にて置換されたアミノ基によって置換されたC
1〜C
6アルコキシ基、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、アミノ酸の酸残基又は一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、アミノ酸のアミン残基を表し及びXは酸素又はイオウ原子を表す)の基である]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩である。
【0056】
これらの化合物の各々は、2光子照射プロセスにおいて開裂可能である。2光子照射プロセスは、神経伝達物質が、非常に小さい体積においても、受容体の近傍でフリーであることを許容するため、1光子プロセスに対して利点を有する。小さい励起体積の他の利点は、レーザービームが、樹状突起を破壊しないか、破壊しても非常にわずかであることである。他の利点は、2光子プロセスの場合、使用するレーザービームの周波数は、1光子励起(照射のために紫外線範囲の光を使用する)に対して、赤外線範囲に近いことにある。2光子励起と2光子画像プロセスとを組み合わせることにより、いくつかの脳プロセスが、最も少ない副作用で、組織の深部においてモデル化される。
【0057】
2光子照射プロセスを使用する場合、測定の間、励起の位置が非常に正確にセットされ、このようにして、ニューロンの神経生物学的実験が可能になる。
図5Aに示す実験準備の場合、樹状突起に沿って20の照射ポイントを配置し、ついで、実施例16に記載するプロセスに従って(ただし、「ケージド」化合物として、iDMPO−DNI−GABA・2TFA塩(2.5mM)を使用した)実験を行った。各ポイントにおける刺激によって生じた応答を測定し、それらを、いくつかの実例曲線で示した。これらの曲線は
図5Bに見ることができる。これらの実験を数回繰り返すことによって、受容体密度が細胞体に沿って異なっていることが示された。いくつかの実験の刺激の結果として、信号の平均は、
図5Cに証明されているように、差異を示す。驚くべきことには、「ケージド」化合物のTFA塩を使用することにより、受容体密度及びニューロンの神経生物学的構造の実験が可能になる。
【0058】
本発明の最も有利な具体例は、一般式(I)[ここで、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又はジメチルアミノ−エトキシ基、ジメチルアミノ−プロポキシ、ジメチルアミノイソプロポキシ基の異性体(−O−CH(CH
3)CH
2−N(CH
3)
2基及びO−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−N(CH
3)
2基)、ジメチルアミノイソブトキシ基(O−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−N(CH
3)
2)、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、L−グルタル酸、GABA又はグリシンの酸残基、又は一般式(II)(ここで、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、L−グルタミン酸、GABA又はグリシンのアミン残基を表し、及びXは酸素又はイオウ原子を表す)の基を表す]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩及びその製法に係る。
【0059】
有利な具体例によれば、一般式(I)で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩において、R
5はアミノ酸の酸残基であるか、又はR
5は、一般式(II)(ここで、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、神経伝達物質又は神経伝達物質とみなされる化合物のアミン残基を表し及びXは酸素又はイオウ原子を表す)の基である。
【0060】
塩基及び他の塩基と比べて、これらトリフルオロ酢酸塩の利点は、これらは、より安定であり、光感受性及び吸湿性が低く、これらの調製及び精製が容易であることである。発明者らのテストでは、一般式(I)で表される化合物の塩は、塩基よりも吸湿性が低いことが証明された。発明者らは、25℃、相対湿度50%において、MNI−Glu塩基及びその塩酸及びトリフルオロ酢酸との塩について、質量増加を測定した。72時間の保存後、塩基の質量は20%増加し、HCl塩の質量は13.6%増加したのに対して、トリフルオロ酢酸塩の質量の増加はわずか4%であった。
【0061】
塩の更なる利点は、これらが調製及び精製が容易であり、塩基又は他の塩よりも安定であることである。
【0062】
本発明の最も有利な具体例によれば、ジニトロ−インドリン誘導体(ケージド化合物)の新規のTFA塩は、当分野で公知の同様の誘導体とは異なり、そのより良好な溶解性及び安定性のため、測定流体への好適な酵素の添加と共に、これら化合物が2光子照射実験において使用されることを可能にする。このようにして、有意により高い量子収率が発揮される(この特性はDNI誘導体を特徴付けるものである)。
【0063】
発明者らは、驚くべきことには、一般式(I)(ここで、R
1はニトロ基を表し;R
2は、未置換のアミノ基で、又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基で置換されたアミノ基で置換されたC
1〜C
6アルコキシ基を表す)で表される化合物が、非常に有利な特性を有するとの知見を得た。
【0064】
当分野で公知のジニトロ−インドリンタイプのケージド化合物とは異なり、これらの化合物は、驚くべきことには、これら化合物が測定流体に溶解性であるため、ケージド化合物の開裂後、溶液中に残る。この事実は、これら化合物が測定液体の変化によって完全に除去され、これによって、以降の測定を乱さないことを裏付けている。
【0065】
本発明の他の態様は、一般式(I)[式中、R
1はニトロ基を表し;R
2は、水素又は臭素原子、又は直鎖又は分枝状、置換又は未置換のアルコキシ、シクロアルコキシ、好ましくは、C
1〜C
6アルコキシ基(ここで、置換基は、未置換のアミノ基、又は1のC
1〜C
6アルキル基又はシクロアルキル基、又は2の同一又は異なるC
1〜C
6アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基で置換されたアミノ基である)、又は置換又は未置換のアリール基を表し;R
3及びR
4は水素原子を表し;R
5は、アミノ酸の酸残基又は一般式(II)(式中、窒素原子及び結合する置換基R
6及びR
7は、一緒に、アミノ酸のアミン残基を表し、及びXは酸素又はイオウ原子を表す)の基である]で表される化合物のトリフルオロ酢酸塩を調製する方法であって、トリフルオロ酢酸又はその溶液を、一般式(I)で表される化合物の溶液に添加し、形成された塩を分離することを含んでなる方法にある。本発明の好適な1具体例によれば、トリフルオロ酢酸又はその溶液を、一般式(I)で表される化合物の調製の反応混合物に添加し、この溶液から塩を分離する。塩の分離は、蒸発した反応混合物の濾過又は抽出によって行われる。混合物に塩を沈殿させるような溶液を添加して、塩を溶液から分離することができるが、混合物を冷却することによって生成物を分離することもできる。
【0066】
粗製の塩を、必要であれば、再結晶又は塩基形に転化できる。この製法の利点は、生成物の調製の間に、クロマトグラフィー精製が必要ないことである。
【0067】
本発明の利点は、1光子又は多光子励起テストの過程で、自発的に形成されるアミノ酸(テストを妨げる)を無効にできることである。
テスト対象の神経細胞が、加水分解生成物の濃度像体の誘拐な影響から保護される。
本発明による一般式(I)で表される化合物及び自発的に形成されるアミノ酸を無効にする試薬を含有する組成物は、より小さい偏差で一連のテストを行うことを可能にし、測定を容易にする。
【0068】
一般式(I)で表される化合物のトリフルオロ酢酸との塩は、容易に調製、精製され、対応する塩基又は多の塩よりも安定である。
【0069】
本発明を下記に実施例によって詳述するが、本発明の範囲は、これら実施例に限定されない。