(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信装置の構成図である。本実施形態の無線通信装置10は、TDMA/TDD方式の可搬型無線通信装置であり、制御部11と、音声入出力部12と、操作表示部13と、記憶部14と、送信部20と、受信部30と、アンテナスイッチ41と、送受信アンテナ42と、電池51と、ET電源部60と、送信電源部52と、制御電源部53と、電力スイッチ56と、TCXO(temperature compensated crystal oscillator:温度補償水晶発振器)43とを含むように構成される。
【0015】
TDD方式であるので、無線通信装置10は、無線通信装置10が無線信号を送信する期間である送信期間Tsと、無線通信装置10が無線信号を受信する期間である受信期間Trとを繰り返す。つまり、送信期間Tsと受信期間Trとが、時間的に重ならないよう互いに分離して設定されている。
【0016】
また、本実施形態では、送信期間Tsと受信期間Trとの間に、ギャップタイム(隙間期間)Tgが設けられる。ギャップタイムTgは、送信期間Tsと受信期間Trを切り換える準備を行うための時間である。例えば、送信期間Tsと受信期間TrとギャップタイムTgは、それぞれ10msに設定される。
【0017】
音声入出力部12は、入力される音声を電気信号に変換するマイクや、電気信号を音声として出力するスピーカ等を含むように構成される。
【0018】
操作表示部13は、操作者からの指示入力を受け付ける操作部と、各種データを表示する表示部とを含むように構成される。操作部は、例えば、PTT(Push To Talk)ボタンや、数字キーを有するキーパッドを含むように構成される。表示部は、例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)を含むように構成される。操作表示部13を、操作部と表示部とが一体となったタッチパネル等で構成してもよい。
【0019】
記憶部14は、半導体メモリ(フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(read only memory)等)や磁気ディスク等により構成され、種々のデータ等を記憶する。
【0020】
制御部11は、例えば、音声入出力部12のマイクから入力された音声信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号の音声符号化処理を行う。そして、音声符号化処理した音声信号をデジタル変調(IQ変調)し、I信号とQ信号を生成する。生成されたI信号とQ信号は、アナログ変換された後、変調信号11s1として送信部20へ出力される。このように、変調信号11s1は、音声信号等の送信信号をIQ変調したものである。
【0021】
また、制御部11は、受信部30から出力された復調信号34sをデジタル変換した後、音声復号化等の処理を行う。そして、音声復号化処理した音声信号を、アナログ変換した後、音声入出力部12のスピーカへ出力する。
【0022】
また、制御部11は、送信期間Tsであることを示すスイッチ制御信号11s2を出力する。例えば、スイッチ制御信号11s2は、送信期間Tsでは“1”となり、送信期間Ts以外では“0”となる。このように、スイッチ制御信号11s2は、送信期間Tsであるか否かを示す識別信号である。
【0023】
また、制御部11は、例えば送信期間Ts直前のギャップタイムTgにおいて、上述のI信号とQ信号から、I信号とQ信号の包絡線(エンビロープ)を計算し、送信期間Tsにおいて、包絡線信号11s3を生成し、対応するI信号及びQ信号と同期させて、ET電源部60へ出力する。包絡線信号11s3は、変調信号11s1の包絡線を示すものであり、((I信号の振幅)
2+(Q信号の振幅)
2)
1/2 で求めることができる。
【0024】
また、制御部11は、受信期間Trにおいて、ET電源部60の出力60aを所定値の電圧とするための、定電圧生成用パルス信号11s4を生成し、ET電源部60へ出力する。定電圧生成用パルス信号11s4は、受信部30へ出力される定電圧を生成するためのパルス信号である。定電圧生成用パルス信号11s4のパルス幅と周期は、ET電源部60の出力60aが、所定値の定電圧となるように、予め調べられ設定される。
【0025】
制御部11は、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と制御部11の動作プログラム等を格納するメモリとを備えている。CPUは、TCXO43からの基準クロック信号により、CPU内の処理用クロック信号を生成してもよい。そして、該生成した処理用クロック信号を用いて、上記動作プログラムに従って動作する。なお、制御部11は、CPUの処理を補助するためのDSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)を備えるよう構成してもよい。
【0026】
送信部20は、直交変調部(MOD)21と、送信用ミキサ(MIX)22と、プリアンプ(AMP)23と、送信電力増幅部(PA)24と、アイソレータ(ISO)25と、送信用フィルタ(FIL)26と、送信用PLL(phase locked loop:位相同期回路)27と、送信用VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)28とを含むようによう構成される。
【0027】
直交変調部21は、制御部11でIQ変調されて出力された送信信号である変調信号11s1(アナログ変換されたI信号とQ信号)をアナログ直交変調し、該直交変調された送信信号を、送信用ミキサ22へ出力する。変調信号11s1は、例えば、上述したように、音声入出力部12のマイクから入力された音声信号に基づき生成される。
【0028】
送信用ミキサ22は、送信用VCO28から出力された搬送波信号と、直交変調部21から出力された変調信号とを混合(つまり乗算)し、該混合された送信信号を、プリアンプ23へ出力する。プリアンプ23は、送信用ミキサ22から出力された送信信号を増幅する。
【0029】
送信用VCO28は、送信用PLL27の制御を受けて、所定周波数の搬送波信号を生成する。送信用PLL27は、制御部11から指示された周波数に基づき、送信用VCO28の出力が所定周波数となるように、送信用VCO28を制御する。
【0030】
送信電力増幅部24は、プリアンプ23から出力された送信信号23sを、電力増幅する。このとき、送信電力増幅部24は、ET電源部60から電力を供給される。詳しくは、送信期間Tsの間のみ、ET電源部60から、電力スイッチ(P.SW)56を介して、送信電力増幅部24の電源が供給される。なお、送信電力増幅部24以外の送信部20は、送信期間Tsにおいて、送信電源部52から電源が供給される。
【0031】
アイソレータ25は、送信電力増幅部24から出力された送信信号24sが、逆方向に進行しないようにする。送信用フィルタ26は、アイソレータ25から出力された送信信号25sから、不要な周波数成分を除去する。こうして、送信用フィルタ26から出力された送信信号26sは、アンテナスイッチ41を介して、送受信アンテナ42から無線信号(電波)として空中へ放射される。
【0032】
送受信アンテナ42は、他の無線通信装置や基地局装置との間で無線信号を送受信するためのアンテナ(空中線)である。アンテナスイッチ41は、送信期間Tsと受信期間Trで送受信アンテナ42を切り換え接続するアンテナスイッチである。アンテナスイッチ41は、制御部11から出力されたスイッチ制御信号11s2に基づき、送受信アンテナ42を、送信用と受信用とに切り換える。
【0033】
具体的には、アンテナスイッチ41は、送信期間Tsでは、送信用フィルタ26の出力と送受信アンテナ42とを接続し、受信期間Trでは、後述する受信用フィルタ31の入力と送受信アンテナ42とを接続する。
【0034】
受信部30は、受信用フィルタ(FIL)31と、受信電力増幅部(LNA)32と、受信用ミキサ(MIX)33と、復調部(DEMO)34と、受信用PLL35と、受信用VCO36とを含むようによう構成される。
【0035】
送受信アンテナ42は、他の無線通信装置や基地局装置からの無線信号を受信し、該受信信号をアンテナスイッチ41を介して、受信用フィルタ31へ出力する。受信用フィルタ31は、送受信アンテナ42で受信した受信信号から、不要な周波数成分を除去する。受信電力増幅部32は、受信用フィルタ31から出力された受信信号31sを増幅する。
【0036】
受信用ミキサ33は、受信用VCO36から出力された搬送波周波数の信号と、受信電力増幅部32から出力された受信信号32sとを混合(つまり乗算)し、受信信号32sから搬送波を除去する。そして、搬送波を除去した受信信号33sを、復調部34へ出力する。
【0037】
受信用VCO36は、受信用PLL35の制御を受けて、搬送波と同じ周波数の信号を生成する。受信用PLL35は、制御部11から指示された周波数に基づき、受信用VCO36の出力が所定周波数となるように、受信用VCO36を制御する。
【0038】
復調部34は、受信用ミキサ33から出力された受信信号33sを復調し、該復調された復調信号(アナログのI信号とQ信号)34sを、制御部11へ出力する。制御部11は、復調部34から出力された復調信号34sをデジタル変換した後、音声復号して音声信号へ変換し、さらにアナログ変換した後、音声入出力部12のスピーカへ出力する。
【0039】
電池51は、無線通信装置10が動作するための電力を、無線通信装置10へ供給する電源装置であり、例えば、リチウムイオン電池で構成される。電池51は、ET電源部60と送信電源部52と制御電源部53とに対し、例えば、DC(直流)12ボルトの電圧で、電力を供給する。
【0040】
ET電源部60は、電池51から供給された12ボルトの電力を、電圧を変換して、ET電源部出力60aとして出力する電源装置である。ET電源部出力60aは、電力増幅部24と受信部30の電源となる。
【0041】
詳しくは、上述したように、ET電源部60は、送信期間Tsのみ、電力スイッチ56を介して送信電力増幅部24へ、変調信号11s1の包絡線に応じて変動するET(包絡線追跡)電圧を出力する。つまり、送信期間Tsのみ、ET電源部出力60aは、送信電力増幅部24の電源となる。こうして、送信期間Tsにおいて、送信電力増幅部24の電源は、変調信号11s1の包絡線に応じた電圧、つまり、送信電力増幅部24の使用電力に応じた電圧となる。
【0042】
また、ET電源部60は、受信期間Trの間は、電力スイッチ56を介して受信部30へ、固定値の定電圧(例えば5ボルト)を出力する。つまり、受信期間Trの間、ET電源部出力60aは、受信部30の電源となる。詳しくは、ET電源部60は、受信期間Trの間、電力を消費する構成部である、受信電力増幅部32と受信用ミキサ33と復調部34とに対し、電源を供給する。受信用フィルタ31は、電力を消費しない。受信用PLL35と受信用VCO36に対しては、後述するように、制御電源部53から電源を供給する。
【0043】
電力スイッチ56は、ET電源部出力60aを、送信期間Tsでは(つまり、スイッチ制御信号11s2が“1”の場合)、送信電力増幅部(PA)24へ出力し、受信期間Trでは(つまり、スイッチ制御信号11s2が“0”の場合)、受信部30(詳しくは、受信電力増幅部32と受信用ミキサ33と復調部34)へ出力する。なお、電力スイッチ56をET電源部60に含めるように構成してもよい。
【0044】
また、ET電源部60は、送信期間Ts直後のギャップタイムTgにおいて、ET電源部出力60aを、送信期間Ts用のET電圧から、受信期間Tr用の定電圧へ切り換える。また、ET電源部60は、受信期間Tr直後のギャップタイムTgにおいて、ET電源部出力60aを、受信期間Tr用の定電圧から送信期間Ts用のET電圧へ切り換える。
【0045】
なお、ギャップタイムTgが長い場合、ET電源部60が、一旦、電源供給を停止するよう構成してもよい。この場合、そのギャップタイムTgの次の送信期間Ts又は受信期間Trに間に合うように、電源供給を再開する必要がある。
【0046】
送信電源部52は、電池51から供給されたDC12ボルトの電力を、例えば、DC5ボルトに変換する。そして、上述したように、送信期間Tsにおいて、送信電力増幅部24以外の送信部20へ電源を供給する。詳しくは、送信電源部52は、送信期間Tsの間、電力を消費する構成部である、直交変調部21と送信用ミキサ22とプリアンプ23とに対し、出力52aにより電源を供給する。アイソレータ25と送信用フィルタ26は、電力を消費しない。送信用PLL27と送信用VCO28に対しては、後述するように、制御電源部53から電源を供給する。
【0047】
本実施形態では、送信期間Tsのみ、直交変調部21と送信用ミキサ22とプリアンプ23とに対し、送信電源部52から電源を供給するよう構成した。このようにすると、送信電源部52の消費電力を抑制することができる。しかし、送信期間Ts以外の期間における送信電源部52の消費電力は小さいので、例えば受信期間Trにおいても送信電源部52から電源を供給、あるいは、常時、送信電源部52から電源を供給するよう構成することも可能である。
【0048】
制御電源部53は、電池51から供給されたDC12ボルトの電力を、例えば、DC3.3ボルトに変換する。そして、制御電源部53は、制御部11と音声入出力部12と操作表示部13と記憶部14とに対し、出力53aにより、常時、DC3.3ボルトの電源を供給する。
【0049】
また、制御電源部53は、送信用PLL27と送信用VCO28と受信用PLL35と受信用VCO36とTCXO43とに対し、常時、DC3.3ボルトの電源を供給する。送信用PLL27と送信用VCO28は、送信期間Ts以外においても、動作させておく必要があり、受信用PLL35と受信用VCO36は、受信期間Tr以外においても、動作させておく必要があるからである。
【0050】
なお、制御部11と音声入出力部12と操作表示部13と記憶部14とに対し電源を供給する電源部とは別に、送信用PLL27と送信用VCO28と受信用PLL35と受信用VCO36とTCXO43とに対し電源を供給する電源部を設けるように構成することもできる。
【0051】
ちなみに、各電源部の消費電力の比率は、例えば、制御電源部53において40%、送信電源部52において10%、送信時のET電源部60において50%、受信時のET電源部60において10%である。
【0052】
図2は、本発明の実施形態に係るET電源部の出力波形の概念図である。縦軸は、ET電源部出力60aの大きさ(電圧値)、横軸は時間である。
図2では、送信期間Tsから受信期間Trを経て、再び送信期間Tsへ移る場合のET電源部出力60aが示されている。また、送信期間Tsと受信期間Trとの間には、ギャップタイムTgが設けられている。
【0053】
上述したように、送信期間Tsでは、ET電源部出力60aは、包絡線信号11s3に応じた波形となる。すなわち、送信期間Tsは、ET(包絡線追跡)電圧出力区間である。
図2の例では、送信期間Tsにおいて、ET電源部出力60aは、約12ボルトと約2ボルトの間で変動している。送信電力増幅部24の電源電圧が、包絡線信号11s3に応じた波形になることにより、送信電力増幅部24の効率を向上させ、電力のロスを低減することが可能となる。
【0054】
送信期間TsにおけるET電源部出力60aであるET電圧は、包絡線信号11s3と相似する波形だけでなく、包絡線信号11s3に近似する波形の電圧も含むものである。すなわち、包絡線信号11s3に応じた電圧とは、包絡線信号11s3に相似する電圧だけでなく、近似する電圧をも含む。
【0055】
ET電圧は、包絡線信号11s3と相似形であることが好ましいが、相似形に限られるものではない。相似とまで言えないが包絡線信号11s3に近似していれば、ある程度、送信電力増幅部24の効率を向上させ、電力のロスを低減することが可能となる。ET電源部出力60aが包絡線信号11s3に近似しているとは、包絡線信号11s3が山のときはET電源部出力60aも山となり、包絡線信号11s3が谷のときはET電源部出力60aも谷となる状態である。少なくとも、送信期間TsのET電源部出力60aが、受信期間TrのET電源部出力60a(定電圧)よりも、包絡線信号11s3に近似していれば、一定程度、電力のロスを低減することが可能となる。
【0056】
受信期間Trでは、ET電源部出力60aは、ほぼ固定された電圧値を示す。
図2の例では、ET電源部出力60aは、約5ボルトの定電圧である。すなわち、受信期間Trは、定電圧出力区間である。この定電圧は、受信部30が正常動作する範囲内での、小さい電圧変動を含むものである。
【0057】
ギャップタイムTgにおいて、ET電源部出力60aは、送信期間Ts用のET電圧から、受信期間Tr用の定電圧へ、又は、受信期間Tr用の定電圧から送信期間Ts用のET電圧へ切り換えられる。この切り換えに要する時間は極めて短い(少なくともギャップタイムTgより短い)ので、切り換え時において、
図2に示すように、ET電源部出力60aは連続波形となる。
【0058】
ここで、従来は、送信部の電力増幅器に対してのみET電源部から電力を供給していたので、送信部をTDD動作(つまり間欠動作)させた場合、ET電源部からみた負荷(電力増幅器の入力インピーダンス)が急激に変動する。そのため、ET電源部から安定した電圧を供給することが困難となる、つまり、電力増幅器の効率向上が困難となる。
【0059】
図7は、従来技術に係るET電源部の出力波形の一例である。
図7の縦軸は電圧、横軸は時間である。71は、実際のET電源部の出力である。72は、本来あるべきET電源部の出力である。なお、72は、立ち上がり部分が71と重なるため、時間軸を右方に少しシフトさせ、見易くしている。
【0060】
図7に示すように、従来技術に係るET電源部は、送信期間Tsのみ、送信部の電力増幅器に対して電力を供給している。したがって、受信期間Trから送信期間Tsへ遷移するとき、送信期間Tsの開始時刻t0において、ET電源部の出力71が0ボルトから所定の電圧値(例えば5ボルト)に向けて立ち上がる。このとき、出力71は、ET電源部内のインダクタンスの影響により、オーバーシュートして、本来あるべき出力72を上回る。そして、ある程度の時間が経過した後、所定の電圧値に収束する。このため、適切な大きさの安定した電圧を、ET電源部から供給することが困難となる、つまり、電力増幅器の効率向上が困難となる。
【0061】
これに対して、本実施形態に係るET電源部60は、受信期間Tr、及び、通信開始前の待ち受け状態のとき(後述する
図6のステップS1)は、定電圧の電力を受信部30に供給しており、送信期間Tsの開始時に0ボルトから立ち上げることがない。そのため、本実施形態に係るET電源部60は従来技術に比べて、送信期間Tsの開始時のオーバーシュートを大幅に減らすことができ、その結果、送信期間Tsの特に初期期間の電力増幅効率を向上することができる。
【0062】
図3は、本実施形態の第1実施例に係るET電源部の構成図である。
図3に示すように、第1実施例のET電源部160は、
図1のET電源部60に対応するもので、変動電圧生成用パルス信号生成部(PWM部)161と、パルススイッチ部(PWMスイッチ部)162と、スイッチングアンプ163とを含むように構成される。
図1と同じ構成や信号には同符号を付し、説明を省略する。なお、PWMは、Pulse Width Modulation(パルス幅変調)を意味する。
【0063】
ET電源部160は、制御部11から、スイッチ制御信号11s2と包絡線信号11s3と定電圧生成用パルス信号11s4とを取得する。定電圧生成用パルス信号11s4は、
図3の例では制御部11から取得するが、制御部11以外から取得してもよく、例えば、ET電源部160内で生成してもよい。
【0064】
スイッチングアンプ163は、パルス信号が入力されると、該入力されたパルス信号のパルス幅に応じた電圧を生成し出力する。変動電圧生成用パルス信号生成部161は、スイッチングアンプ163でET電圧(変調信号11s1の包絡線に応じた変動電圧)を生成するための変動電圧生成用パルス信号161sを、包絡線信号11s3に基づき生成し出力する。この変動電圧生成用パルス信号161sは、変調信号11s1の包絡線に応じたパルス信号、詳しくは、変調信号11s1の包絡線の大きさに応じたパルス幅のパルス信号である。パルススイッチ部162は、スイッチ制御信号11s2に基づき、定電圧生成用パルス信号11s4と変動電圧生成用パルス信号161sの内、いずれか一方をスイッチングアンプ163へ出力する。
【0065】
具体的には、送信期間Tsでは、パルススイッチ部162が、変動電圧生成用パルス信号生成部161の出力(変動電圧生成用パルス信号161s)を、スイッチングアンプ163へ出力する。変動電圧生成用パルス信号161sは、ET電圧生成用のパルス信号である。また、受信期間Trでは、パルススイッチ部162が、定電圧生成用の定電圧生成用パルス信号11s4を、スイッチングアンプ163へ出力する。
【0066】
詳しくは、送信期間Tsでは、スイッチ制御信号11s2が“1”になる。スイッチ制御信号11s2が“1”の場合、パルススイッチ部162は、変動電圧生成用パルス信号161sを出力する。受信期間Trでは、スイッチ制御信号11s2が“0”になる。スイッチ制御信号11s2が“0”の場合、パルススイッチ部162は、定電圧生成用パルス信号11s4を出力する。このように、パルススイッチ部162は、ET電圧生成用のパルス信号と定電圧生成用のパルス信号とを、スイッチ制御信号11s2に応じて選択し、スイッチングアンプ163へ出力する。
【0067】
スイッチングアンプ163には、電池51から定電圧の電源が供給されている。スイッチングアンプ163は、変動電圧生成用パルス信号161sが入力されると、包絡線信号11s3に追従したET電圧を生成し出力する。また、スイッチングアンプ163は、定電圧生成用パルス信号11s4が入力されると、所定値の定電圧を生成し出力する。前述したように、定電圧生成用パルス信号11s4のパルス幅と周期は、定電圧生成用パルス信号11s4が入力されたスイッチングアンプ163が、所定値の定電圧を生成するように、予め調べられ、制御部11で設定される。そして、スイッチングアンプ163の出力は、ET電源部出力160aとして、電力スイッチ56へ出力される。
【0068】
前述したように、電力スイッチ56は、ET電源部出力160aを、送信期間Tsでは(つまり、スイッチ制御信号11s2が“1”の場合)、送信電力増幅部(PA)24へ出力し、受信期間Trでは(つまり、スイッチ制御信号11s2が“0”の場合)、受信部30(詳しくは、受信電力増幅部32と受信用ミキサ33と復調部34)へ出力する。
【0069】
変動電圧生成用パルス信号生成部161について詳しく説明する。
変動電圧生成用パルス信号生成部161は、DAC161aと、三角波発生回路161bと、コンパレータ161cとを備える。DAC161aは、デジタルアナログコンバータであり、制御部11から取得した包絡線信号11s3をアナログ信号に変換し、コンパレータ161cへ出力する。三角波発生回路161bは、一定振幅の三角波を周期的に生成し、繰り返し出力する。コンパレータ161cは、DAC161aからのアナログ変換された包絡線信号11s3と、三角波発生回路161bからの三角波信号とに基づき、変動電圧生成用パルス信号161sを生成し、パルススイッチ部162へ出力する。
【0070】
変動電圧生成用パルス信号161sは、三角波信号と同周期の繰り返しの矩形パルスであり、DAC161aの出力レベルが高いほど、つまり、包絡線信号11s3が大きいほど、パルス幅が大きくなる。
【0071】
スイッチングアンプ163は、例えば、公知のD級アンプの出力にキャパシタを付加し、平滑な出力が得られるように構成されている。スイッチングアンプ163は、入力信号のパルス幅の大きさに応じて、その出力レベルが変動する。つまり、入力信号のパルス幅が大きくなると、その出力レベルが大きくなり、入力信号のパルス幅が小さくなると、その出力レベルが小さくなる。こうして、スイッチングアンプ163は、包絡線信号11s3に追従した出力、つまり、包絡線信号11s3に応じた大きさの出力(ET電源部出力160a)を得ることができる。
【0072】
図4は、本実施形態の第2実施例に係るET電源部の構成図である。
図4に示すように、第2実施例のET電源部260は、
図1のET電源部60に対応するもので、スイッチングアンプ163を含むように構成される。つまり、第2実施例のET電源部260は、第1実施例のET電源部160から、変動電圧生成用パルス信号生成部161とパルススイッチ部162とを除いた構成となっている。そして、第1実施例の変動電圧生成用パルス信号生成部161とパルススイッチ部162の機能が、第2実施例の制御部211に含まれる構成となっている。つまり、第2実施例の制御部211は、第1実施例の制御部11に、第1実施例の変動電圧生成用パルス信号生成部161とパルススイッチ部162の機能を追加した構成となっている。
図1及び
図3と同じ構成や信号には同符号を付し、説明を省略する。
【0073】
ET電源部260は、制御部211から、スイッチ制御信号11s2と変動電圧生成用パルス信号161sと定電圧生成用パルス信号11s4とを取得する。第1実施例で説明したように、変動電圧生成用パルス信号161sは、送信期間Tsで用いるET電圧生成用のパルス信号である。定電圧生成用パルス信号11s4は、受信期間Tr用いる定電圧生成用のパルス信号である。
【0074】
制御部211は、送信期間Tsでは、定電圧生成用パルス信号11s4を出力せず、変動電圧生成用パルス信号161sを、スイッチングアンプ163へ出力する。また、受信期間Trでは、変動電圧生成用パルス信号161sを出力せず、定電圧生成用パルス信号11s4を、スイッチングアンプ163へ出力する。
【0075】
第1実施例と同様に、送信期間Tsでは、包絡線信号11s3に追従したET電圧が、ET電源部出力260aとして出力され、受信期間Trでは、所定値の定電圧が、ET電源部出力260aとして出力される。
【0076】
こうして、第2実施例のET電源部260においても、第1実施例のET電源部160と同様の出力がなされる。第2実施例では、第1実施例の変動電圧生成用パルス信号生成部161とパルススイッチ部162を省くことができるので、制御部211をLSI(Large Scale Integration)やFPGAで構成した場合、第1実施例よりもハード構成を小型化できる。
【0077】
図5は、本実施形態の第3実施例に係るET電源部の構成図である。
図5に示すように、第3実施例のET電源部360は、
図1のET電源部60に対応するもので、変動電圧生成用パルス信号生成部161とスイッチングアンプ163とスイッチ部361とを含むように構成される。つまり、第3実施例のET電源部360は、第1実施例のET電源部160から、パルススイッチ部162を除き、スイッチ部361を追加した構成となっている。そして、スイッチ部361は、スイッチングアンプ163の出力160aと、電池51の出力とを、切り換えて出力する構成となっている。
図1及び
図3と同じ構成や信号には同符号を付し、説明を省略する。
【0078】
ET電源部360は、制御部11から、スイッチ制御信号11s2と包絡線信号11s3とを取得する。スイッチ部361は、スイッチ制御信号11s2に応じて、入力aと入力bのいずれかを出力するように構成されている。具体的には、スイッチ制御信号11s2が“1”の場合(つまり送信期間Tsの場合)は、入力aを出力し、スイッチ制御信号11s2が“0”の場合(つまり受信期間Trの場合)は、入力bを出力する。
【0079】
すなわち、スイッチ部361は、送信期間Tsでは、ET電圧であるスイッチングアンプ163の出力160a(入力a)を、電力スイッチ56へ出力する。また、受信期間Trでは、定電圧である電池51の出力(入力b)を、電力スイッチ56へ出力する。
【0080】
こうして、第1実施例と同様に、送信期間Tsでは、包絡線信号11s3に追従したET電圧が、ET電源部出力360aとして出力され、受信期間Trでは、所定値の定電圧が、ET電源部出力360aとして出力される。
【0081】
ただし、受信期間Trで出力されるET電源部出力360aは、電圧値が、電池51の出力電圧となる。ET電源部出力360aは、電力スイッチ56を介して受信部30へ供給されるが、受信部30への供給電圧を電池51の出力電圧と異ならせたい場合は、電力スイッチ56から受信部30への電源供給ラインの途中で、電圧変換部を設ければよい。この電圧変換部は、例えば、公知のDC/DCコンバータ等で構成できる。あるいは、スイッチ部361の入力bに、電池51の出力でなく、所望の出力電圧値(つまり受信部30への供給電圧)を有する電源装置の出力を接続するように構成してもよい。
【0082】
図6は、本発明の実施形態に係る無線通信装置の処理フローチャートである。この処理フローにおいて、無線通信装置10の動作は制御部11により制御される。この処理では、ET電源部60として、第1実施例のET電源部160を用いている。この処理フローは、受信待ち受け状態で始まり、受信待ち受け状態から通信状態になると、送信状態と受信状態とを、通信終了まで繰り返す。受信待ち受け状態とは、他の無線通信装置や基地局装置からの無線信号受信を待ち受ける状態である。
【0083】
まず、受信待ち受け状態(
図6のステップS1)において、ET電源部160は、所定の固定電圧値を出力する(ステップS2)。このように、受信待ち受け状態では、ET電源部160は、受信期間Trと同様に動作し、ET電源部出力160aは、所定の固定電圧値となる。通信が開始されるまでの間(ステップS3でNo)、受信待ち受け状態が続き、ET電源部出力160aは、所定の固定電圧値である。
【0084】
その後、例えば、音声入出力部12のPTTボタンが押下されると、通信が開始され通信状態になる(ステップS3でYes)。通信状態では、まず、ギャップタイムTgになり、その後、送信期間Tsになると、音声等のデータ送信が開始される。ギャップタイムTgでは、送信準備が行われる(ステップS4)。
【0085】
このとき、送信準備の1つとして、送信データのI信号とQ信号に基づき、I信号とQ信号の包絡線(エンビロープ)が、制御部11で計算される(ステップS5)。そして、送信期間Tsになると、包絡線信号11s3が、制御部11からET電源部160へ出力される。すると、ET電源部160は、ET動作を行う(ステップS6)。すなわち、ET電源部160は、包絡線信号11s3に追従したET電圧を出力する。
【0086】
送信期間Tsが終了した後、ギャップタイムTgになると、受信準備が行われる(ステップS7)。このとき、受信準備の1つとして、ET電源部160の出力160aを、所定値の電圧とするための定電圧生成用パルス信号11s4を生成し、制御部11からET電源部160へ出力する。すると、ET電源部160は、所定の固定電圧を出力する。そして、ギャップタイムTgの終了後の受信期間Trにおいても、ET電源部160は、所定の固定電圧を出力する(ステップS8)。
【0087】
その後、通信終了しなかった場合は(ステップS9でNo)、ステップS4の送信準備に戻り、ギャップタイムTgにおいて、I信号とQ信号の包絡線(エンビロープ)が、制御部11で計算された(ステップS5)後、送信期間Tsになる(ステップS6)。通信終了した場合は(ステップS9でYes)、ステップS1の受信待ち受け状態に戻る。
【0088】
以上説明したように、
図6の例では、受信待ち受け状態から送信が開始されるまで、ET電源部出力160aは、所定の固定電圧値となる。次に、送信期間Tsになると、ET電源部出力160aは、包絡線信号11s3に追従するET電圧に変わる。次に、送信期間Tsが終了し、ギャップタイムTgになると、ET電源部出力160aは、所定の固定電圧値に変わる。その後、受信期間TrとギャップタイムTgを経て、送信期間Tsになると、ET電源部出力160aは、包絡線信号11s3に追従するET電圧に変わる。
【0089】
本実施形態によれば、少なくとも次の効果を奏する。
(a)IQ変調された変調信号を直交変調する直交変調部と、直交変調された信号を電力増幅する送信電力増幅部とを含む送信部と、受信信号を復調して復調信号を出力する復調部を含む受信部と、送信電力増幅部と受信部の電源である第1の電源部と、直交変調部の電源である第2の電源部と、直交変調部へ変調信号を出力し、復調部からの復調信号が入力される制御部とを備える無線通信装置において、第1の電源部は、受信期間では、受信部へ定電圧を出力し、送信期間では、送信電力増幅部へ、変調信号の包絡線に応じた変動電圧を出力するよう構成したので、電源部の占めるスペースが大きくなることを抑制しつつ、無線通信装置の消費電力を小さくすることができる。
(b)第1の電源部が、入力されたパルス信号のパルス幅に応じた電圧を出力し、該出力により第1の電源部の出力を形成するスイッチングアンプを含み、送信期間では、変動電圧生成用パルス信号がスイッチングアンプへ入力され、スイッチングアンプから変動電圧を出力するよう構成したので、第1の電源部を容易に実現できる。
(c)第1の電源部が、変動電圧生成用パルス信号を生成し出力する変動電圧生成用パルス信号生成部を含むよう構成したので、第1の電源部以外の構成を簡素化できる。
(d)第1の電源部が、定電圧生成用パルス信号と変動電圧生成用パルス信号の内、いずれか一方をスイッチングアンプへ出力するパルススイッチ部を含み、パルススイッチ部は、送信期間では、変動電圧生成用パルス信号を出力し、受信期間では、定電圧生成用パルス信号を出力し、スイッチングアンプは、送信期間では、変動電圧を出力し、受信期間では、定電圧を出力するよう構成したので、第1の電源部を容易に実現できる。
(e)制御部が、送信期間であるか否かを示す識別信号を第1の電源部へ出力するとともに、送信期間では、包絡線信号を第1の電源部へ出力し、受信期間では、定電圧生成用パルス信号を第1の電源部へ出力し、変動電圧生成用パルス信号生成部は、包絡線信号に基づき、変動電圧生成用パルス信号を生成し、パルススイッチ部は、識別信号に基づき、送信期間では、変動電圧生成用パルス信号を出力し、受信期間では、定電圧生成用パルス信号を出力するよう構成したので、簡素な構成により無線通信装置を実現できる。
(f)送信期間と受信期間との間にギャップタイムが設けられ、第1の電源部は、送信期間直後のギャップタイムにおいて、その出力を、変動電圧から定電圧へ切り換え、受信期間直後のギャップタイムにおいて、その出力を、定電圧から変動電圧へ切り換えるように構成したので、変動電圧と定電圧の切り換えが容易になる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0091】
上記実施形態では、送信期間と受信期間とを交互に繰り返す無線通信装置の場合を説明したが、本発明は、そのような無線通信装置に限られるものではない。例えば、第1の期間と第2の期間とが重ならないように設定された装置において、その値が変動する変動信号と、第1の期間を示す切り換え信号とが入力され、前記切り換え信号に基づき、第1の期間では、前記変動信号に応じた変動電圧値を出力し、第2の期間では、定電圧値を出力するよう構成することもできる。
【0092】
また、上記実施形態では、ギャップタイムを設けるように構成したが、ギャップタイムを設けないように構成することも可能である。この場合、次の送信期間に用いる包絡線(エンビロープ)の計算は、その送信期間の直前の受信期間において行うようにすればよい。
【0093】
また、本発明は、その値が変動する変動信号と切り換え信号とが入力され、前記変動信号に応じてその値が変動する変動電圧と、定電圧とを、前記切り換え信号に基づき切り換えて出力する電源装置として把握することができる。
【0094】
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置としてだけでなく、方法として把握することができる。或いは、このような方法を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【0095】
また、本発明は、無線通信装置の構成上、各種の周波数に対応できる事から、TDDシステムであれば、ソフトウエアラジオ化におけるマルチバンド無線部のハードウエア・アーキテクチャとして使用できる。更に、近年注目されているホワイトスペース(2次利用)無線部のハードウエア・アーキテクチャとしても使用できる。