【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(NMR分析)
1H−NMRは下記の条件にて測定した。
【0045】
装置:日本電子製 JNM−EX270
試料調製:試料(約10mg〜30mg)をCDCl
3/ヘキサフルオロベンゼン混合溶媒(約0.5mL)に溶解させた後、直径5mmのNMR試料管に入れた。
【0046】
測定温度:室温
基準物質:溶媒に添加されたテトラメチルシランのシグナルを基準とした。
(潤滑剤層の膜厚測定)
潤滑剤層の膜厚は赤外吸収スペクトルのC−F結合の伸縮振動エネルギーに相当する吸収ピークの強度より求めた。それぞれの潤滑剤層について4点ずつ測定し、その平均値を膜厚とした。
【0047】
装置:Thermo Fisher Scientific社製 Nicolet iS50
測定方法:高感度反射法
(潤滑剤層の繰り返し摩擦時の平滑性評価)
潤滑剤層の繰り返し摩擦時の平滑性評価は、クボタ社製のSAFテスターを用いて行った。すなわち、潤滑剤を塗布したハードディスクを12000rpmで回転させながら、ヘッドをディスク表面の同一半径上の箇所へのロードおよび引き続くアンロードを1回/3秒の速度で20000回繰り返した後、光学顕微鏡でディスクの表面を観察し、ヘッドの通過痕の有無を確認した。
(潤滑剤塗布膜の光学表面検査における平滑性の評価)
光学表面検査機を用いて、表面の膜厚分布を観察した。
(合成例1)
【0048】
【数1】
化合物1(C1)の合成:
フッ素化トリエチレングリコールモノブチルエーテル(Exfluor社製、13g、24mmol)、ピリジン(2.3g、29mmol)をジクロロメタン(120mL)に加え、得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(8.2g、29mmol)のジクロロメタン(120mL)溶液を滴下した。室温で16時間攪拌した後、反応混合物を純水(100mL)と飽和炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で一度ずつ洗浄した。得られた有機層を濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、フッ素化トリエチレングリコールモノブチルエーテルトリフルオロメタンスルホン酸エステル(化合物1)(15g、22mmol、収率92%)を淡黄色油状物質として得た。この粗生成物は精製を行わずに引き続く反応に使用した。
(合成例2)
【0049】
【数2】
化合物2(C2)の合成:
合成例1で得た化合物1(4.5g、6.6mmol)と2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.41g、3.0mmol)とをN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(2.9g、9.0mmol)を加えた。70℃で1時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(3.8g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、2,4−ジアルコキシベンズアルデヒド(化合物2)を淡黄色油状物質(3.4g、2.8mmol、収率95%)として得た。
(合成例3)
【0050】
【数3】
化合物3(C3)の合成:
合成例2で得た化合物2(3.4g、2.8mmol)とN−メチルグリシン(2.2g、25mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(30mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(1.0g、1.4mol)のオルトジクロロベンゼン(60mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、160℃に設定した湯浴で加熱し、3時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(4.0g)を得た。
【0051】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を9〜12MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上で3個以上のピロリジン環を形成した副生成物を抽出して除いた。その後圧力を20MPaに上げ、茶褐色固体(化合物3)3.4gを抽出した。この条件でピロリジン環を1個もつ誘導体は抽出されなかった。この固体は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0052】
1H−NMR δ(ppm):2.93(brs、6H)、4.44(br、14H)、6.52−6.66(m、2H)、6.69−6.85(m、4H)。
(合成例4)
【0053】
【数4】
化合物4(C4)の合成:
合成例1で得た化合物1(4.5g、6.6mmol)と2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.41g、3.0mmol)とをN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(2.9g、9.0mmol)を加えた。70度で1時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(3.1g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、2,5−ジアルコキシベンズアルデヒド(化合物4)を淡黄色固体(2.3g、1.9mmol、収率65%)として得た。
(合成例5)
【0054】
【数5】
化合物5(C5)の合成:
合成例4で得た化合物4(2.3g、1.9mmol)とN−メチルグリシン(1.6g、18mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(30mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(0.75g、1.0mmol)のオルトジクロロベンゼン(60mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、160℃に設定した湯浴で加熱し、3時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(1.8g)を得た。
【0055】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を9〜12MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上で3個以上のピロリジン環を形成した副生成物を抽出して除いた。その後圧力を20MPaに上げ、茶褐色固体(化合物5)1.6gを抽出した。この条件でピロリジン環を1個もつ誘導体は抽出されなかった。この固体は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0056】
1H−NMR δ(ppm):2.75(brs、6H)、4.36(br、14H)、6.52−6.63(m、2H)、6.72−6.85(m、4H)。
(合成例6)
【0057】
【数6】
化合物6(C6)の合成:
合成例1で得た化合物1(6.5g、10mmol)、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド(0.47g、3.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(60mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(4.4g、14mmol)を加えた。70℃で2時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(30mL)とAK―225(30mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(5.2g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、2,4,6−トリアルコキシベンズアルデヒド(化合物6)を淡黄色油状物質(4.4g、2.5mmol、収率83%)として得た。
(合成例7)
【0058】
【数7】
化合物7(C7)の合成:
合成例6で得た化合物6(4.4g、2.5mmol)とN−メチルグリシン(2.0g、23mmol)をヘキサフルオロテトラクロロブタン(20mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(1.9g、2.6mmol)のオルトジクロロベンゼン(40mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、160℃に設定した湯浴で加熱し、4時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(5.4g)を得た。
【0059】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を15〜20MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上で2個以上のピロリジン環を形成した副生成物を抽出して除いた。その後圧力を22MPaに上げ、茶褐色固体(化合物7)1.4gを抽出した。この固体は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0060】
1H−NMR δ(ppm):2.85(s、3H)、4.20(d、1H)、4.44(t、4H)、4.62(t、2H)、5.01(d、1H)、5.76(s、1H)、6.39(s、2H)。
(合成例8)
【0061】
【数8】
化合物8(C8)の合成:
合成例6で得た化合物6(1.7g、1.0mmol)とN−メチルグリシン(0.80g、9.0mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(20mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(0.36g、0.50mmol)のオルトジクロロベンゼン(100mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、160℃に設定した湯浴で加熱し、20時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(2.1g)を得た。
【0062】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を9〜12MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上で3個以上のピロリジン環を形成した副生成物を抽出して除いた。その後圧力を15MPaに上げ、黒色油状物質(化合物8)1.3gを抽出した。この条件でピロリジン環を1個もつ誘導体は抽出されなかった。この物質は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0063】
1H−NMR δ(ppm):2.79(brs、6H)、4.39(br、18H)、6.22(brs、4H)。
(合成例9)
【0064】
【数9】
化合物9(C9)の合成:
数平均分子量(Mn)約1300のフォンブリンZdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、7.8g、6mmol)、ヨウ化銅(I)(0.18g、0.95mmol)、2−シクロヘキサノンカルボン酸エチル(0.31g、1.8mmol)、1−ヨードナフタレン(2.3g、9.0mmol)を混合し、溶媒を加えずに攪拌しながら炭酸セシウム(4.9g、15mmol)を加えた。100℃で20時間攪拌した後、反応混合物を希塩酸(50mL)とAK225(50mL)で分液し、水層をさらにAK225(50mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、粗生成物(8.1g)を黄褐色油状物質として得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(9:1〜3:1))で精製することで、片方の末端部にナフチルエーテル構造を持つフォンブリン(化合物9)を無色油状物質(3.0g、2.1mmol、収率35%)として得た。
(合成例10)
【0065】
【数10】
化合物10(C10)の合成:
合成例9で得た化合物9(2.6g、1.9mmol)、ピリジン(0.22g、2.7mmol)をAK225(20mL)に加え、得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.8g、2.8mmol)のAK225(20mL)溶液を滴下した。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を純水(100mL)と飽和炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で一度ずつ洗浄した。得られた有機層を濾過した後、フォンブリン構造を持つトリフルオロメタンスルホン酸エステル(化合物10)(2.5g、1.6mmol、収率84%)を無色油状物質として得た。この粗生成物は精製を行わずに引き続く反応に使用した。
(合成例11)
【0066】
【数11】
化合物11(C11)の合成:
合成例10で得た化合物10(2.2g、1.4mmol)、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド(89mg、0.58mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)に加え、得られた溶液に炭酸セシウム(0.66g、2.0mmol)を加えた。70℃で2時間攪拌した後、反応混合物を室温まで冷やし、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた混合物を純水(20mL)とAK―225(20mL)を用いて分液し、さらに水層をAK―225(20mL)で二度抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、赤褐色油状の粗生成物(2.9g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン―酢酸エチル(17:3))で精製することで、2,4,6−トリアルコキシベンズアルデヒド(化合物11)を無色油状物質(1.5g、0.35mmol、収率61%)として得た。
(合成例12)
【0067】
【数12】
化合物12(C12)の合成:
合成例11で得た化合物11(1.5g、0.35mmol)とN−メチルグリシン(0.30g、3.3mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(15mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(0.25g、0.34mmol)のオルトジクロロベンゼン(30mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、180℃に設定した湯浴で加熱し、3時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(0.45g)を得た。
【0068】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を9〜19MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格上で3個以上のピロリジン環を形成した副生成物を抽出して除いた。その後圧力を24MPaに上げ、黒色油状物質(化合物12)0.20gを抽出した。この条件でピロリジン環を1個もつ誘導体は抽出されなかった。この物質は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0069】
1H−NMR δ(ppm):2.76(brs、6H)、4.32(brq、12H)、4.46(brq、12H)、6.20(brd、6H)、6.67(brd、6H)、7.17(brd、6H)、7.49(brs、12H)、7.93(brd、6H)、8.25(brd、6H)。
(合成例13)
【0070】
【数13】
化合物13(C13)の合成:
合成例11で得た化合物11(1.0g、0.24mmol)とN−メチルグリシン(0.20g、2.2mmol)とをヘキサフルオロテトラクロロブタン(15mL)に加え、得られた混合物にC
60フラーレン(0.06g、0.08mmol)のオルトジクロロベンゼン(30mL)溶液を速やかに加えた。ジムロート冷却管を取り付け、180℃に設定した湯浴で加熱し、5時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のAK―225に溶解させ濾過した。得られた溶液を純水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥した。濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(0.32g)を得た。
【0071】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を9〜12MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格持たない抽出可能な不純物を除いた。その後圧力を28MPaに上げ、黒色油状物質(化合物13)0.18gを抽出した。
(合成例14)
【0072】
【数14】
化合物14(C14)の合成:
4−ホルミル−1,2,5ベンゼントリカルボン酸トリメチルエステル(0.62g、2.2mmol)とN−メチルグリシン(0.98g、11mmol)の混合物に、C
60フラーレン(0.64g、0.89mmol)のオルトジクロロベンゼン(50mL)溶液を速やかに加え、150℃に設定した湯浴で加熱し、3時間攪拌した。室温まで冷やした反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮した後に、適量のトルエンに溶解させ濾過した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色固体状の粗生成物(2.4g)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン―酢酸エチル(9:1))で精製することで、3個のピロリジン環を持つフラーレン誘導体(化合物14)を黒色固体(0.34g、0.21mmol、収率23%)として得た。
(合成例15)
【0073】
【数15】
化合物15(C15)の合成:
合成例14で得た化合物14(0.19g、0.11mmol)のオルトジクロロベンゼン(60mL)溶液に数平均分子量(Mn)約2000のフォンブリンZdol(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、3.8g、1.9mmol)のヘキサフルオロテトラクロロブタン(60mL)溶液を加えた。得られた混合物にトリフルオロメタンスルホン酸(1mL)を滴下した後、モレキュラーシーブス4Aが入ったソックスレー抽出器とジムロート冷却管を取り付け、190℃に設定した湯浴で加熱し、5時間攪拌しながら還流した。室温まで冷やした反応混合物にアンモニア水(10mL)を加えて中和した後に、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油状物質を適量のAK―225に溶解させ濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(3.3g)を得た。
【0074】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を10〜18MPaの範囲で変化させ、未反応のフォンブリンZdolなどの不純物を除いた。その後圧力を27MPaに上げ、黒色油状物質(化合物15)0.17gを抽出した。
(合成例16)
【0075】
【数16】
化合物16(C16)の合成:
合成例15で得た化合物15(0.17g、8.7umol)とトリエチルアミン(16mg、0.16mmol)をAK225(10mL)に加えた。得られた混合物を氷浴によって冷却した後、1−ナフトイルクロリド(20mg、0.10mmol)を加えた。混合物を室温に戻し、15時間攪拌した。反応混合物にアンモニア水(1mL)を加えた後に、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた白色の粉末を含む油状物質を適量のテトラデカフルオロヘキサンに溶解させ濾過した後、ロータリーエバポレーターで濃縮することで、黒色油状の粗生成物(0.10g)を得た。
【0076】
次に、入口および出口をもつ肉厚のステンレス容器(内径20mm×深さ200mm)に、粗生成物を入れ、容器内の温度を60℃に保ちながら、超臨界二酸化炭素送液ポンプ(日本分光製、PU2086−CO2)を用いて、超臨界二酸化炭素を液化二酸化炭素換算流量5mL/分を容器に送った。容器内の圧力を10〜16MPaの範囲で変化させ、フラーレン骨格を持たない抽出可能な不純物を除いた。その後圧力を27MPaに上げ、黒色油状物質(化合物16)73mgを抽出した。この物質は、下記に示したNMRの分析結果より、当該化合物であることが確認された。
【0077】
1H−NMR δ(ppm):2.74(brs、9H)、4.31(brs、36H)、7.47(brd、9H)、7.55(brd、9H)、7.64(brd、9H)、、7.90(brd、9H)、8.08(brd、9H)、8.25(brd、9H)、8.94(brd、9H)。
(実施例1)
化合物3に、フッ素系溶媒であるテトラデカフルオロヘキサン(スリーエム社製PF−5060)にそれぞれ0.005質量%の濃度になるように混合し、溶解したかどうかを目視で評価した。結果を表1に示す。
(実施例2〜7)
化合物3に代えて、化合物5、化合物7、化合物8、化合物12、化合物13、化合物16をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様に溶解性の評価を行った。結果を同様に表1に示す。
(比較例1)
化合物3に代えて、特許文献5(特許第5600202号公報)に記載されている下記フラーレン誘導体(化合物17(C17))を用いた以外は実施例1と同様にして溶解性の評価を行った。結果を同様に表1に示す。
【0078】
【化6】
【0079】
【表1】
以上のことから、本発明のフラーレン誘導体はテトラデカフルオロヘキサンにも良好な溶解性を示すことがわかる。
(実施例8)
Arガス雰囲気中で、カーボンをターゲットとして用いた高周波マグネトロンスパッタにより、磁気ディスク用2.5インチガラスプランク上にDLC(Diamond−Like Carbon)からなるカーボン保護膜を成膜し、模擬ディスクを作製した。
【0080】
次に、潤滑剤として化合物7をテトラデカフルオロヘキサンに溶解させ、表2の濃度の潤滑剤溶液を調製した。
【0081】
次に、ディップ法を用いて、以下に示す方法により潤滑剤溶液を、模擬ディスクの保護膜上に塗布した。すなわち、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑剤溶液中に、模擬ディスクを浸漬し、浸漬槽から模擬ディスクを引き上げることにより、潤滑剤溶液を模擬ディスクの保護膜上の表面に塗布した。その後、潤滑剤溶液の塗布された表面を乾燥させることにより、潤滑剤層を形成した。このようにして得られた潤滑剤層の膜厚を表2に示す。
【0082】
【表2】
(実施例9)
化合物8を実施例8と同様に評価した。潤滑剤層の膜厚を表3に示す。
【0083】
【表3】
(実施例10)
化合物12を実施例8と同様に評価した。潤滑剤層の膜厚を表4に示す。
【0084】
【表4】
以上より、本発明の潤滑剤はテトラデカフルオロヘキサンへの溶解性が良く、本発明の潤滑剤のテトラデカフルオロヘキサン溶液を用いてハードディスクの潤滑剤層を形成することができる。
(実施例11)
実施例9で作製したディスク(化合物8、潤滑剤溶液濃度0.005質量%)に対して繰り返し摩擦時の平滑性評価を行った。クボタ社製のSAFテスターを用いたロード/アンロード動作の後、ディスクの表面を光学顕微鏡で観察したところディスク表面の平滑性の乱れは観察されなかった。
(比較例2)
潤滑剤として特許文献5(特許第5600202号公報)に記載されている化合物17を化合物8の代わりに用いた以外は実施例9と同様にして潤滑剤層を形成しようとしたところ、化合物17はテトラデカフルオロヘキサンに溶けず、潤滑剤層を形成することができなかった。
(比較例3)
潤滑剤として特許文献5(特許第5600202号公報)に記載されている化合物12を化合物8の代わりに用い、溶媒として1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(三井デュポンフロロケミカル社製、バートレル(登録商標)XF)を用いた以外は実施例9と同様にして潤滑剤層を形成した。このようにして得られた潤滑剤層の膜厚は10.5Åであった。また、実施例11と同様に繰り返し摩擦時の平滑性評価を行った。その結果、ヘッドがロードされる円周上に凹凸が観察された。
【0085】
実施例11と比較例3の比較から、本発明の潤滑剤は特許文献5等に記載されている潤滑剤よりも、潤滑層表面の平滑性を保持することが分かった。
(実施例12)
実施例9と同様の方法で作製したディスクの表面を、光学表面検査機を用いて観察した。結果として十分均一に潤滑剤塗布膜が形成されていることが確認された。得られた塗布膜分布の画像を
図1に示す。なお、ディスク周囲の3点で塗布膜が不均一に見える部分があるが、これらはディスク支持部の痕跡なので塗布膜分布の評価には含めない。
(実施例13)
化合物8に代えて、化合物12を用いた以外は実施例9と同様の方法で作製したディスクの表面を、光学表面検査機を用いて観察した。結果として、実施例12よりもさらに均一に潤滑剤塗布膜が形成され、ディスク上に直線状の塗布膜ムラがまったく観察されなかった。得られた塗布膜分布の画像を
図2に示す。
【0086】
従来の化合物(化合物17)では溶解性が低く(表1)塗布することさえできないが、本発明の化合物を用いれば十分均一に潤滑剤塗布膜が得られる。