(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152513
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】積層型コンタクトプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/06 20060101AFI20170619BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20170619BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
G01R1/06 D
G01R1/067 C
G01R1/073 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-137299(P2015-137299)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-9569(P2017-9569A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514244734
【氏名又は名称】インクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤本 英樹
【審査官】
永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/133089(WO,A1)
【文献】
特開2010−122057(JP,A)
【文献】
特開2012−58223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
H01R 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板のプローブを厚み方向に複数枚積層してなるコンタクトプローブであって、前記プローブの上端に外部リード線が接続されるターミナルを形成するとともに、下端に電子部品の電子回路面に接触するニードルを形成し、このニードルが前記電子回路面に対して、垂直方向に上下動するように前記プローブをホルダーに支持し、
前記プローブの両側縁に切欠きを形成し、この切欠きのそれぞれに弾性部材を嵌込み、前記ニードルを前記弾性部材により垂直方向に付勢できるようにしたことを特徴とする積層型コンタクトプローブ。
【請求項2】
前記ホルダーの左右に、前記プローブの積層によりなる間隔を確保するスペーサーを配置し、このスペーサーを前記ホルダーに固定することを特徴とする請求項1に記載の積層型コンタクトプローブ。
【請求項3】
前記プローブの上端と下端との中間に長軸が上下方向となる長円孔を穿設し、この長円孔に前記ホルダーに横架されるガイドピンを挿入することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層型コンタクトプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、大電流を要する印加や電気的特性検査に用いる積層型プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置において、特に大電流を要する印加や電気的特性検査を行う際、半導体装置にコンタクトプローブを接触させて電流・電圧の印加や電気的特性検査を行っている。
【0003】
一般に、コンタクトプローブとして、スプリング型コンタクトプローブもしくは、積層型コンタクトプローブが用いられる。スプリング型コンタクトプローブは、ばねで上下に伸縮可能な金属ピンを半導体装置に接触させて、半導体装置との電気的接続を行うコンタクトプローブである。
【0004】
また、積層型コンタクトプローブは、厚み方向に積層した金属薄板を半導体装置に押し当てることにより、電気的接続を行うプローブである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3797399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来のスプリング型コンタクトプローブでは、半導体装置などの検査対象の被測定物との接点数が少ないため、通電電流に制限があり、大電流を要する電気的特性試験に適さない問題があった。また、コンタクトプローブの形状による自己のインダクタンス成分により、本来必要とする試験条件を満足できないことがあった。
【0007】
そこで、
図7に示すような超微小なピッチ間隔の電子回路面を有する半導体装置の検査などに対応する特許文献1の積層プローブが提案さている。
この積層プローブは、一枚毎のL字形プローブ20の円滑な作動を確保する必要があり、このL字形プローブ20の形状が複雑化し、しかも、前記L字形プローブ20の弾性ニードル20aが片持ち構造なのでワイピング状態の接触になり、検査対象の被測定物に線状傷ができるなどの問題があった。
【0008】
この発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、簡単な構造で、プローブのニードルの接触による電子回路面の線状傷をなくし、精度のよいプローブの作動ストロークを確保できる大電流の通電可能な積層型コンタクトプローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0010】
請求項1に記載の発明は、金属薄板のプローブを厚み方向に複数枚積層してなるコンタクトプローブであって、前記プローブの上端に外部リード線が接続されるターミナルを形成するとともに、下端に電子部品の電子回路面に接触するニードルを形成し、このニードルが前記電子回路面に対して、垂直方向に上下動するように前記プローブをホルダーに支持
し、
前記プローブの両側縁に切欠きを形成し、この切欠きのそれぞれに弾性部材を嵌込み、前記ニードルを前記弾性部材により垂直方向に付勢できるようにしたことを特徴とする積層型コンタクトプローブである。【0011】
請求項2に記載の発明は、前記ホルダーの左右に、前記プローブの積層によりなる間隔を確保するスペーサーを配置し、このスペーサーを前記ホルダーに固定することを特徴とする
請求項1に記載の積層型コンタクトプローブである。【0012】
請求項3に記載の発明は、前記プローブの上端と下端との中間に長軸が上下方向となる長円孔を穿設し、この長円孔に前記ホルダーに横架されるガイドピンを挿入することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の積層型コンタクトプローブである。
【発明の効果】
【0014】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0015】
請求項1に記載の発明では、金属薄板のプローブを厚み方向に複数枚積層してなるコンタクトプローブであって、前記プローブの上端に外部リード線が接続されるターミナルを形成するとともに、下端に電子部品の電子回路面に接触するニードルを形成し、このニードルが前記電子回路面に対して、垂直方向に上下動するように前記プローブをホルダーに支持
し、
前記プローブの両側縁に切欠きを形成し、この切欠きのそれぞれに弾性部材を嵌込み、前記ニードルを前記弾性部材により垂直方向に付勢できるようにしたので、前記プローブの前記ニードルが前記電子部品の前記電子回路面に垂直方向より接触し、ワイピング作動が生じることはなく、しかも、外部リード線に接続される前記プローブの上端から前記電子回路面に接触する前記ニードルの下端まで直線的な電流となり、前記ターミナルから前記ニードルの接触する前記電子回路面までの距離が短くなり、抵抗値を少なくすることができ、電圧、電流の印加が確実になるとともに、前記電気部品の電気的特性検査の精度が向上する。また、前記弾性部材の垂直方向の付勢力により、前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に密接でき、しかも、前記弾性部材の付勢力は前記プローブに左右均等に作用し、複数枚の前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に均一に接触させることができ、印加および検査を正確に実施することができる。【0016】
請求項2に記載の発明では、前記ホルダーの左右に、前記プローブの積層によりなる間隔を確保するスペーサーを配置し、このスペーサーを前記ホルダーに固定する
とともに、前記プローブの両側縁に切欠きを形成し、この切欠きのそれぞれに弾性部材を嵌込み、前記ニードルを前記弾性部材により垂直方向に付勢できるようにしたので、各々の前記プローブが圧接されることがなく、一枚毎にプローブが上下動することになり、前記ニードルが個別に変形して、前記電子回路面の形状に沿った形状となり、前記電子回路面に多くの接触点ができ、前記外部リード線のより前記プローブを通して電気的に接続され、前記電子回路部への電流・電圧の印加や電気的特性の検査がされるとともに、前記弾性部材の垂直方向の付勢力により、前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に密接でき、しかも、前記弾性部材の付勢力は前記プローブに左右均等に作用し、複数枚の前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に均一に接触させることができ、印加および検査を正確に実施することができる。【0017】
請求項3に記載の発明では、前記プローブの上端と下端との中間に長軸が上下方向となる長円孔を穿設し、この長円孔に前記ホルダーに横架されるガイドピンを挿入する
とともに、前記プローブの両側縁に切欠きを形成し、この切欠きのそれぞれに弾性部材を嵌込み、前記ニードルを前記弾性部材により垂直方向に付勢できるようにしたので、前記プローグの前記ニードルの作動ストロークは長軸の範囲に限られることになり、作動距離の変化がなく、作動ストロークの精度が確保でき、常時一定の接触圧を得ることになり、前記コンタクトプローブの押し下げによる電子回路面に対するニードルの接触のバラツキをなく、しかも、前記弾性部材の垂直方向の付勢力により、前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に密接できるとともに、前記弾性部材の付勢力は前記プローブに左右均等に作用し、複数枚の前記プローブの前記ニードルを前記電子回路面に均一に接触させることができ、印加および検査を正確に実施することができる。【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明における積層型コンタクトプローブを示す斜視図である。
【
図2】この発明における積層型コンタクトプローブを示す正面図である。
【
図5】動作を説明する
図3のB−B線に沿う断面図である。
【
図6】積層型コンタクトプローブにおける絶縁部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明における積層型コンタクトプローブの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明にこれは限定されない。
【0022】
この発明の実施の態様を
図1および
図6に基づいて説明する。符号1は前後のホルダー10、10により挟持されるコンタクトプローブで、このコンタクトプローブ1は、金属薄板の前記プローブ2を厚み方向に複数枚積層してなり、各金属薄板の厚みはほぼ等しく、例えば、板厚を100μmとし、積層数は、10〜100程度にする。
【0023】
前記プローブ2の上端2aには、外部リード線Rが接続されるターミナル3が形成され、下端2bには、電子部品Wの電子回路面Fに接触するニードル4が形成される。なお、前記プローブ2は、例えば、ベリリウム銅、黄銅などに金メッキを被覆した導電性材料よりなる。
【0024】
前記ホルダー10、10の左右には、前記プローブ2の積層枚数に応じて間隔を確保するスペーサー11、11を配置し、このスペーサー11、11を貫通する複数の連結ピン12により、前記ホルダー10、10に前記スペーサー11、11を支持するとともに、複数の締結ネジ13により前記スペーサー11、11を前記ホルダー10、10に固定する。
【0025】
前記プローブ2の上端2aと下端2bとの中間には、長軸が上下方向となる長円孔5を穿設し、この長円孔5には前記ホルダー10、10に横架するガイドピン9を嵌合する。この嵌合により、前記ガイドピン9は前記長円孔5の上縁5aと下縁5bまで垂直方向に上下動する。
【0026】
前記長円孔5は前記プローブ2の上端2aと下端2b間の上下に一対設置し、これらの長円孔5には、それぞれ前記ガイドピン9が嵌合され、前記プローブ2の左右方向のはみ出しを規制する。なお、前記ガイドピン9の両端は左右の前記ホルダー10、10に穿設した支持孔10a、10aに挿入される。
【0027】
符号9は断面U字状の一対の弾性部材7、7で、この弾性部材7、7の先端7a、7aを前記プローブ2の両側縁2c、2cに形成した切欠き6、6に嵌込み、これにより、前記弾性部材7、7の先端7a、7aの付勢力は前記プローブ2に左右均等に作用する。
【0028】
前記弾性部材7、7の基端7b、7bは、前記スペーサー11、11の下端に設けた窪み11a、11aに嵌め込まれ、さらに、前記弾性部材7、7の両端は前記ホルダー10、10の凹部10b、10bにて支持される。なお、前記弾性部材7、7の表面にはフッ素樹脂よりなる絶縁フィルム8、8を被覆したが、表面に絶縁コーティングを施してもよい。
【0029】
前記弾性部材7、7の前記先端7a、7aが変形して発生する付勢力により、前記電子回路面Fに接触した前記プローブ2の前記ニードル4を、前記電子回路面Fに密接させる。また、前記弾性部材7、7の前記先端7a、7aは、前記コンタクトプローブ1が上方へ移動すると、変形前の形状に戻るようになる。
【0030】
前記プローブ2の間には、前記電子回路面Fに接触する前記ニードル4を除いた形状のフッ素樹脂よりなる絶縁部材14が介在されており、これにより、前記ニードル4同志の接触をなくするとともに、前記絶縁部材14の厚さを変えることにより、前記ニードル4のピッチを調整でき、特に狭ピッチの電極を多数有する前記電子回路面Fに対応することができる。
【0031】
前記ホルダー10、10の内側面と前記プローブ2との間は前記ニードル4同志の接触がないので、前記絶縁部材14の厚さを薄くし、前記コンタクトプローブ1をコンパクト化し、狭ピッチの電極を多数有する電子回路面Fに対し、一度に印加や電気特性検査を行うことができる。
【0032】
前記絶縁部材14の上下の中間には、前記ガイドピン9が嵌合する一対の丸孔15と、両側縁に前記弾性部材7、7の前記先端7a、7aが嵌込まれる下部切欠き16とを形成する。前記絶縁部材14は、前記ガイドピン9の上下動に一致して移動する。
【0033】
上記の構成の前記コンタクトプローブ1を用いて前記電子部品Wに対する印加や電気的特性検査をする手順を以下に説明する。まず、
図4に示すような前記コンタクトプローブ1の前記プローブ2の初期位置から前記電子回路面Fに向かい垂直方向の下方に移動させると、前記プローブ2の前記ニードル4を前記電子回路面Fに接触する。
【0034】
さらに、前記コンタクトプローブ1を押下げると、
図5に示すように前記ガイドピン9が前記長円孔5の前記上縁5aより前記下縁5bに位置した状態となり、前記弾性部材7、7の前記先端7aが変形し、前記弾性部材7、7の付勢力により前記ニードル4を前記電子回路面Fに圧接させる。
【0035】
そして、前記電子回路面Fの電流・電圧の印加や電気的特性検査が終了し、前記コンタクトプローブ1を上方へ移動させると、前記ガイドピン9が上方の位置になり、さらに、前記プローブ2も上方に移動し、前記弾性部材7、7の前記先端7a、7aの変形は元の形状に戻り、
図4に示すように前記ガイドピン5が前記長円孔4aの前記上縁5aに当接する初期位置となる。
【0036】
以上の実施の態様における前記コンタクトプローブ1によれば、前記コンタクトプローブ1の前記プローブ2の前記下端2bに前記電子回路面Fに接触する前記ニードル4を形成し、このニードル4が前記電子回路面Fに対して、垂直方向に上下動するように前記プローブ2を前記ホルダー10に支持するので、前記プローブ2の前記ニードル4が前記電子回路面Fに垂直方向より接触し、ワイピング状態が生じることはなく、前記電子回路面Fに接触の線状傷は付かなくなる。
【0037】
しかも、前記外部リード線Rに接続される前記ターミナル3から前記電子回路面Fに接触する前記ニードル4まで直線的に電気が流れ、前記ターミナル3から前記ニードル4の接触する前記電子回路面Fまでの距離が短くなり、抵抗値を少なくすることができるとともに、前記外部リード線Rに接続される前記プローブ3は上下に移動するのみなので、接続箇所に無理な力が作用せず前記外部リード線Rが破損し断線するとかがなくなり、従来よりも著しく使用寿命が向上するという絶大な効果を奏する。
【0038】
前記ホルダー10の左右に、前記プローブ2の積層によりなる間隔を確保するスペーサー11を配置し、このスペーサー11を前記ホルダー10に固定するので、各々の前記プローブ2が圧接されることがなく、一枚毎に前記プローブ2が上下動することになり、前記ニードル4が個別に変形して、前記電子回路面Fの形状に沿った形状となり、前記電子回路面Fに多くの接触点に対して非接触しない箇所がなく、前記外部リード線Rより前記プローブ2を通して電気的に確実に接続され、前記電子回路部Fへの電流・電圧の印加や電気的特性の検査がされる。
【0039】
さらに、前記プローブ2の上端2aと下端2bとの中間に長軸が上下方向となる前記長円孔5を穿設し、この長円孔5に前記ホルダー10に横架する前記ガイドピン9を挿入するので、前記プローグ2の前記ニードル4の作動ストロークは、前記長円孔5の長軸の範囲になり、作動距離が変わらなく、作動ストロークの精度が確保でき、常時ほぼ一定の接触圧を得ることになり、前記コンタクトプローブ1の押し下げによる前記電子回路面Fに対する前記ニードル4の接触のバラツキをなくする。
【0040】
また、前記プローブ2の両側縁2c、2cに前記切欠き6、6を形成し、この切欠き6、6のそれぞれに前記弾性部材7、7の前記先端7a、7aを嵌込み、前記ニードル4を前記弾性部材7、7により垂直方向に付勢するので、前記弾性部材7,7の先端7a、7aの付勢力は前記プローブ2に左右均等に作用し、複数枚の前記プローブ2の前記ニードル4を前記電子回路面Fに均一に密接させることができ、印加および検査を正確に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明における積層型コンタクトプローブは、電気機器および半導体、プリント基板などの電子部品における電流・電圧の印加または導通状態などの電気特性検査を行うのに適しており、特に狭ピッチの電極を多数有する電子回路面に対する印加や電気特性検査を行うのに好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 コンタクトプローブ
2 プローブ
2a 上端
2b 下端
2c 側縁
3 ターミナル
4 ニードル
5 長円孔
5a 上縁
5b 下縁
6 切欠き
7 弾性部材
7a 先端
7b 基端
8 絶縁フィルム
9 ガイドピン
10 ホルダー
10a 支持孔
10b 凹部
11 スペーサー
11a 窪み
12 連結ピン
13 締結ネジ
14 絶縁部材
14a 側縁
15 丸孔
16 下部切欠き
20 L字形プローブ
20a 弾性ニードル
W 電子部品
F 電子回路面
R 外部リード線