【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0026】
1.高保水性ブロックの製造
[使用材料]
高保水性ブロックを製造するために、以下に示す材料を準備した。
(1)セメント
・普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm
3,宇部三菱セメント株式会社製)
・早強ポルトランドセメント,密度3.14g/cm
3,宇部三菱セメント株式会社製)
(2)混和材
・高強度混和材,デンカΣ2000(無水石膏−シリカフューム系,密度2.49g/cm
3,電気化学工業株式会社製)
・高強度混和材,デンカΣ1000(無水石膏系,密度2.79g/cm
3,電気化学工業株式会社製)
・天然無水石膏(密度2.90g/cm
3,常陸化工株式会社製)
(3)細骨材
細骨材としては、軟質高炉スラグ細骨材を使用した。表1に軟質高炉スラグ細骨材の粒度、粗粒率、表乾密度、吸水率を示す。なお、粒度及び粗粒率は、JIS A 1102:2006の「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定した。また、表乾密度及び吸水率は、JIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて測定した。
【0027】
【表1】
【0028】
(4)化学混和剤
・商品名:マイテイ21WH、ポリエーテル系、花王株式会社製
(5)練混ぜ水
・上水道水
【0029】
[コンクリートの配合]
上述のセメント、軟質高炉スラグ細骨材、化学混和剤及び水を、必要に応じて混和材を所定の比率で配合して、配合No.1〜10のコンクリートを調製した。それぞれのコンクリートの配合を表2に示す。表2の配合はコンクリート中の空隙容積量から細骨材の空隙容積量を差し引いた空隙容積量を330L/m
3とした場合の単位量である。
【0030】
[コンクリートの練混ぜ]
表2に示した配合No.1〜9のコンクリートの練り混ぜは次の手順で行った。すなわち、パドルミキサ内に、軟質高炉スラグ細骨材及びセメント、必要に応じて混和材を投入して30秒間空練りした後、水及び化学混和剤を加えて2分間練り混ぜた。
【0031】
[供試体の成形]
練り混ぜたコンクリートを以下の方法によって成形し、成形体を作製した。
(1)加圧振動成形機による成形
ILB成形機(株式会社タイガーマシン製作所製)を使用して以下の要領で供試体(成形体)を作製した。供試体寸法は、100×200×80mmとした。型枠内に一定量(設定充填率に相当する容積分)の試料を投入して上面を平坦に均した後、加圧振動成形した。加圧振動条件は、圧力5N/mm
2、振動数3600vpm、振動時間15秒間とした。
【0032】
[供試体の養生]
コンクリート供試体の養生は、所定の温度で蒸気養生し、材齢1日以降は20℃の恒温室で気中保管した。また、比較として、20℃の恒温室で材齢1日までシート養生し、材齢1日以降は気中保管した。
【0033】
以上で説明したように、表2に示す配合No.1〜9のコンクリートを用いて、実施例1〜5及び比較例1〜4の高保水性ブロックをそれぞれ製造した。
【0034】
2.高保水性ブロックの試験及び評価
【0035】
[保水性試験]
保水性試験は、材齢7日においてJIS A 5371:2010「プレキャスト無筋コンクリート製品」の保水性試験方法に準じて行い、保水量を求めた。
[吸水性試験]
吸水性試験は、材齢7日においてJIS A 5371:2010「プレキャスト無筋コンクリート製品」の吸水性試験方法に準じて行い、吸水率を求めた。
[曲げ強度試験]
曲げ強度試験は、ILB供試体から得られた高保水性ブロックについて実施した。材齢7日において、JIS A 5371:2010「プレキャスト無筋コンクリート製品(推奨仕様B−3 インターロッキングブロック)」の曲げ強度試験方法に準じて行った。
[コンクリートの空隙容積量−細骨材の空隙容積量]
「コンクリートの空隙容積量−細骨材の空隙容積量」は、式(1)により求めた。即ち、一般に使用される、細骨材の空隙量を考慮しないコンクリートの空隙容積量と同義である。
1000−(コンクリートの単位容積質量/空隙がないと仮定した場合のコンクリートの単位容積質量)×1000 (L/m
3)・・・(1)
ここに、
コンクリートの単位容積質量:コンクリートの質量/コンクリートの容積(kg/m
3)
空隙がないと仮定した場合のコンクリートの単位容積質量:コンクリート中に空隙がないと仮定した場合のコンクリート1m
3あたりのコンクリートの質量(kg/m
3)
[細骨材中の空隙容積量]
細骨材中の空隙容積量は、式(2)により求めた。
単位細骨材量×細骨材の吸水率/100 (L/m
3)・・・(2)
ここに、
単位細骨材量:コンクリート1m
3に含まれる細骨材質量(kg/m
3)
細骨材の吸水率:JIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて求めた。
[コンクリートの空隙容積量]
「コンクリートの空隙容積量−細骨材の空隙容積量」と細骨材の空隙容積量の和とした。即ち、一般に使用される細骨材の空隙量を考慮しないコンクリートの空隙容積量とは異なる。
【0036】
[試験結果]
コンクリートの配合および試験結果を表2に示す。
比較例1および実施例1は,セメントとして普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートについて,材齢1日までの養生を変えたものである。比較例2,実施例2および比較例3は,セメントとして早強ポルトランドセメントを使用したコンクリートについて,材齢1日までの養生を変えたものである。
実施例3および比較例4は,セメントとして早強ポルトランドセメント,混和材として無水石膏−シリカフューム系のデンカΣ2000を使用したコンクリートについて,材齢1日までの養生を変えたものである。実施例4は,セメントとして早強ポルトランドセメント,混和材として無水石膏系のデンカΣ1000を使用したコンクリートについて,材齢1日まで40℃で蒸気養生したものである。実施例5は,実施例4の混和材を天然無水石膏としたものである。なお、表中のセメント種別で、Nとは普通ポルトランドセメント、Hとは早強ポルトランドセメントを示す。
【0037】
[評価]
表2に示す実施例及び比較例の結果から、コンクリートの空隙容積量が300〜420L/m
3であり、コンクリートの水/セメント比が10〜30%であるコンクリートを使用すれば、従来の標準的な高保水性ブロックよりも保水量が大きく、また、曲げ強度も十分にあるブロックが得られることが確認された。
【0038】
【表2】