(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152761
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】膜付部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20170619BHJP
C03C 17/245 20060101ALI20170619BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20170619BHJP
C03C 17/42 20060101ALI20170619BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20170619BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20170619BHJP
B32B 7/02 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C03C17/245 A
C23C14/08 N
C03C17/42
C03C17/34 Z
C01G25/02
!B32B7/02 103
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-193053(P2013-193053)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-58605(P2015-58605A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】今村 努
(72)【発明者】
【氏名】金井 敏正
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−007144(JP,A)
【文献】
特開2004−143584(JP,A)
【文献】
特開2005−176433(JP,A)
【文献】
特開2009−272642(JP,A)
【文献】
特開2005−011737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C01G 25/02
C03C 17/245
C03C 17/34
C03C 17/42
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上に設けられた膜と、
前記膜の上に設けられた別の膜と、
を備え、
前記膜は、前記膜の表層を構成している酸化ジルコニウム膜を有し、
前記酸化ジルコニウム膜は、酸化ジルコニウム結晶を含み、X線回折測定において、前記酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察され、
前記別の膜は、動摩擦抵抗を低減する膜である、膜付部材。
【請求項2】
基材と、
前記基材の上に設けられた膜と、
を備え、
前記膜は、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された多層膜により構成されており、
前記膜の最表層が、酸化ジルコニウム膜により構成されており、
前記酸化ジルコニウム膜は、酸化ジルコニウム結晶を含み、X線回折測定において、前記酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察される、膜付部材。
【請求項3】
前記多層膜は、表面反射率が低くなるように構成された反射抑制膜である、請求項2に記載の膜付部材。
【請求項4】
前記多層膜は、表面反射率が高くなるように構成された反射膜である、請求項2に記載の膜付部材。
【請求項5】
前記酸化ジルコニウム膜は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜付部材。
【請求項6】
前記酸化ジルコニウム膜は、多結晶膜である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜付部材。
【請求項7】
前記酸化ジルコニウム膜の膜密度が、5.96g/cm3以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜付部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、反射防止膜、反射膜、保護膜等の膜が表面上に設けられた膜付部材が種々用いられている。例えば、特許文献1には、ディスプレイガラス基材の表面の上に、保護膜としてジルコニア膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ディスプレイやタッチパネル等の保護部材の表面の上に設けられた膜などには、耐擦傷性に優れることが要求される場合がある。
【0005】
本発明の主な目的は、優れた耐擦傷性を有する膜付部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膜付部材は、基材と、膜とを備える。膜は、基材の上に設けられている。膜は、膜の表層を構成している酸化ジルコニウム膜を有する。酸化ジルコニウム膜は、酸化ジルコニウム結晶を含み、X線回折において、酸化ジルコニウム膜結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察される。
【0007】
酸化ジルコニウム膜は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶を含むことが好ましい。
【0008】
酸化ジルコニウム膜は、多結晶膜であることが好ましい。
【0009】
酸化ジルコニウム膜の膜密度が、5.96g/cm
3以上であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る膜付部材は、膜の上に設けられた別の膜をさらに備えていてもよい。別の膜は、動摩擦抵抗を低減する膜であってもよい。
【0011】
膜は、相対的に屈折率が高い高屈折率膜と、相対的に屈折率が低い低屈折率膜とが交互に積層された多層膜により構成されており、膜の最表層が、酸化ジルコニウム膜により構成されていてもよい。多層膜は、表面反射率が低くなるように構成された反射抑制膜であってもよい。多層膜は、表面反射率が高くなるように構成された反射膜であってもよい。
【0012】
本発明に係る第1の膜付部材の製造方法は、基材と、基材の上に設けられた膜とを備え、膜が、膜の表層を構成している酸化ジルコニウム膜を有する膜付部材の製造方法である。本発明に係る第1の膜付部材の製造方法では、圧力が0.2Pa以下であるチャンバ中においてスパッタリング法によりジルコニウム膜を形成した後に、ジルコニウム膜を酸化させることにより酸化ジルコニウム膜を形成する。
【0013】
本発明に係る第2の膜付部材の製造方法は、基材と、基材の上に設けられた膜とを備え、膜が、膜の表層を構成している酸化ジルコニウム膜を有する膜付部材の製造方法である。本発明に係る第2の膜付部材の製造方法では、圧力が0.2Pa以下であるチャンバ中においてスパッタリング法により酸化ジルコニウム膜を形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた耐擦傷性を有する膜付部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る膜付部材の模式的断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る膜付部材の一部分の模式的断面図である。
【
図3】第3の実施形態に係る膜付部材の一部分の模式的断面図である。
【
図4】実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜のX線回折チャートである。
【
図5】比較例1において形成した酸化ジルコニウム膜のX線回折チャートである。
【
図6】実施例3における反射率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0017】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る膜付部材の模式的断面図である。
【0019】
図1に示される膜付部材1は、例えばディスプレイやタッチパネルのカバー部材、パチンコ台の前面に設けられた前面板等を構成していてもよい。
【0020】
膜付部材1は、基材10と、膜11とを有する。
【0021】
基材10の材質は、特に限定されない。基材10は、例えば、ガラス、セラミック、金属、樹脂等により構成されていてもよい。
【0022】
基材10の形状寸法も特に限定されない。基材10は、例えば、板状であってもよいし、柱状であってもよいし、プリズム状であってもよい。
【0023】
膜11は、基材10の上に設けられている。膜11は、膜11の表層を構成している酸化ジルコニウム膜を有する。本実施形態では、具体的には、膜11は、酸化ジルコニウム膜のみにより構成されている。酸化ジルコニウム膜は、多結晶膜であることが好ましい。酸化ジルコニウム膜は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶を含むことが好ましい。酸化ジルコニウム膜は、ジルコニウムに加え、他の金属を含んでいてもよい。酸化ジルコニウム膜において、総金属原子の数量に対する、ジルコニウム原子の数量の比((ジルコニウム原子の数量)/(総金属原子の数量))は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
【0024】
なお、膜11の厚みは、特に限定されない。膜11の厚みは、例えば、5nm〜1000nm程度であることが好ましく、100nm〜800nm程度であることがより好ましく、300nm〜500nm程度であることがさらに好ましい。
【0025】
膜11を構成している酸化ジルコニウム膜は、酸化ジルコニウム結晶を含み、X線回折測定において、酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが、主ピークとして観察される。なお、主ピークとは、最も強度の高い回折ピークのことである。このため、以下の実施例及び比較例の結果からも分かるように、酸化ジルコニウム膜は、耐擦傷性に優れている。
【0026】
より優れた耐擦傷性を得る観点からは、酸化ジルコニウム膜の膜密度は、5.96g/cm
3以上であることが好ましく、6g/cm
3以上であることがより好ましい。
【0027】
ところで、成膜チャンバの圧力が低すぎると、安定して成膜することが困難となる。このため、通常は、成膜チャンバの圧力は0.3Pa以上とされている。本実施形態では、成膜チャンバの圧力を通常よりもあえて低くすることにより、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが、主ピークとして観察される酸化ジルコニウム膜を形成することができる。
【0028】
この酸化ジルコニウム膜は、例えば、圧力が0.2Pa以下であるチャンバ内においてスパッタリング法によりジルコニウム膜を形成した後に、そのジルコニウム膜を酸化させることにより形成することができる。この酸化ジルコニウム膜は、例えば、圧力が0.2Pa以下であるチャンバ内においてスパッタリング法(例えば反応性スパッタリング法)により成膜することによっても形成することができる。
【0029】
スパッタリング法による成膜を行うチャンバ内の圧力は、0.15Pa以下であることが好ましく、0.1Pa以下であることがより好ましい。もっとも、スパッタリング法による成膜を行うチャンバ内の圧力が低すぎると、酸化ジルコニウム膜を安定して形成することが困難となる。従って、スパッタリング法による成膜を行うチャンバ内の圧力は、0.01Pa以上であることが好ましく、0.05Pa以上であることがより好ましい。
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0031】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る膜付部材の一部分の模式的断面図である。
【0032】
第1の実施形態では、膜11が酸化ジルコニウム膜により構成されている例について説明した。一方、本実施形態では、膜11は、相対的に屈折率が高い高屈折率膜11Hと、相対的に屈折率が低い低屈折率膜11Lとが交互に積層された多層膜により構成されている。膜11を構成している多層膜の最外層は、高屈折率膜11H1により構成されている。高屈折率膜11H1は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察される酸化ジルコニウム膜により構成されている。この場合であっても、優れた耐擦傷性を実現することができる。
【0033】
高屈折率膜11Hのうち、高屈折率膜11H1以外の膜は、酸化ジルコニウム膜により構成されていてもよいし、他の組成の膜により構成されていてもよい。高屈折率膜11Hのうち、高屈折率膜11H1以外の膜は、例えば、チタン、ニオブ、ランタン、イットリウム、タングステン等の金属のうちの少なくとも一種を含む金属酸化物により構成されていてもよい。
【0034】
低屈折率膜11Lは、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等により構成することができる。
【0035】
多層膜を構成する高屈折率膜11H及び低屈折率膜11Lの膜数は、多層膜に要求される特性等に応じて適宜決定することができる。通常、多層膜を構成する高屈折率膜11H及び低屈折率膜11Lの膜数の合計は、2〜100程度である。
【0036】
多層膜は、例えば、表面反射率が低くなるように構成された反射抑制膜であってもよい。また、多層膜は、例えば、表面反射率が高くなるように構成された反射膜であってもよい。
【0037】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る膜付部材の一部分の模式的断面図である。
【0038】
第1及び第2の実施形態では、膜11が膜付部材の最表層を構成している例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。
【0039】
例えば、
図3に示されるように、膜付部材1aは、膜11の上に設けられた別の膜12をさらに備えていてもよい。
【0040】
膜12は、例えば、動摩擦係数を低減する膜であってもよい。そのような膜12を設けることにより、耐擦傷性をさらに向上することができる。
【0041】
膜12の具体例としては、フッ素系撥水撥油剤、シリコーン系撥水剤等からなる膜が挙げられる。
【0042】
膜12の厚みは、1nm〜200nmであることが好ましく、3nm〜100nmであることがより好ましい。
【0043】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0044】
(実施例1)
カルーセル型のスパッタ装置により、チャンバ内を回転する無アルカリガラス基板(日本電気硝子株式会社社製OA−10G基板)の上に、ジルコニウムの金属ターゲットを用いて、ジルコニウム膜を形成するスパッタ領域と、そのジルコニウム膜を酸素ラジカルを用いて酸化する酸化領域とを交互に通過させる、いわゆるRAS法により、厚さが500nmである酸化ジルコニウム膜を下記の成膜条件で形成した。
【0045】
(ジルコニウム膜の形成条件)
チャンバ内の圧力:0.12Pa
供給ガス:アルゴンガス(流量:100cc/分)
成膜時の電力:5.5kW
(ジルコニウム膜の酸化条件)
供給ガス:酸素ガス(流量:40cc/分)
酸化時の電力:4.5kW
図4に、実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜のX線回折チャートを示す。
図4に示されるX線回折チャートから、実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶を主として含有していることが分かる。また、実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜においては、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察されることが分かる。
【0046】
(比較例1)
ジルコニウム膜の形成条件を以下の条件としたこと以外は、実施例1と同様にして膜付部材を作製した。
【0047】
(ジルコニウム膜の形成条件)
チャンバ内の圧力:0.3Pa
供給ガス:アルゴンガス(流量:300cc/分)
成膜時の電力:5.5kW
(ジルコニウム膜の酸化条件)
供給ガス:酸素ガス(流量:120cc/分)
酸化時の電力:4.5kW
図5に、比較例1において形成した酸化ジルコニウム膜のX線回折チャートを示す。なお、実施例1及び比較例1におけるX線回折測定は、X線回折装置((株)リガク製 SmartLab)を用いて行なった。光源としては、回転対陰極式X線源(Cu−Kα線,出力45kV−200mA)を用いた。光学系は人工格子放物面多層膜ミラーと平行スリットアナライザーを使用した平行ビーム光学系とした。走査範囲2θ=10〜80°、走査ステップ0.01°とし、2θ−ωスキャンモードにより測定した。
【0048】
図5に示されるX線回折チャートから、比較例1において形成した酸化ジルコニウム膜は、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶を主として含有していることが分かる。また、比較例1において形成した酸化ジルコニウム膜においては、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察されないことが分かる。
【0049】
実施例1のX線回折チャートと比較例1のX線回折チャートとを比較することにより、実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜の回折チャートの方が、PDFデータベース上の単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の回折パターンと類似度が高いことが分かる。このPDFデータベース上の単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶(Baddeleyite)の回折パターンは、粉末にして測定されたものであるため、実施例1において形成した酸化ジルコニウム膜の方が、比較例1において形成した酸化ジルコニウム膜よりも配向性が低いものと考えられる。
【0050】
(評価1)
上記X線回折測定と同様の条件で、鏡面反射X線強度を測定し、鏡面反射X線強度と入射X強度の比からX線反射率を求めてX線反射率曲線を得た。得られたX線反射率曲線を薄膜総合解析ソフトウェア ((株)リガク製 GlobalFit)で解析し、酸化ジルコニウム膜の膜厚、膜密度を求めた。結果を表1に示す。
【0052】
(評価2)
実施例1及び比較例1のそれぞれにおいて作製した酸化ジルコニウム膜を、2000gの加重を付与して、10mm□のボンスター スチールウール(#0000)を以下の条件で往復させた。所定回数往復させる毎に表面状態を光学顕微鏡で100倍に拡大して観察し、酸化ジルコニウム膜の表面に、擦傷痕が確認されたときの往復回数を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
(評価条件)
速度:40mm/分
ストローク:40mm
【0055】
(実施例2)
無アルカリガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10G基板)に代えて強化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製T2X−1基板)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして膜付部材を作製した。
【0056】
(比較例2)
無アルカリガラス基板(日本電気硝子株式会社社製OA−10G基板)に代えて強化ガラス基板(日本電気硝子株式会社製T2X−1基板)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして膜付部材を作製した。
【0057】
実施例2及び比較例2において作製した膜付部材に関しても上述の評価と同様の評価を行った。結果を、表3に示す。
【0059】
表2及び表3に示される結果から、単斜晶系の酸化ジルコニウム結晶の(1 1 −1)結晶面による回折ピークが主ピークとして観察される酸化ジルコニウム膜は、優れた耐擦傷性を有することが分かる。
【0060】
(実施例3)
ガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10G基板)の上に、実施例1と同様の成膜条件で、下記の表4に示す多層膜を形成した。なお、第2層及び第4層の酸化ケイ素膜は、ターゲットとしてシリコン(Si)を用いた。
図6に多層膜表面の反射率を示す。
【0062】
(比較例3)
実施例3で使用したガラス基板と実質的に同じガラス基板をそのままサンプルとして用いた。そのガラス基板の表面の波長550nmでの反射率は約4%であった。
【0063】
図6に示される結果から、実施例3において形成した、表層が酸化ジルコニウム膜により構成された多層膜により表面反射率が低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0064】
1,1a:膜付部材
10:基材
11:膜
11H:高屈折率膜
11H1:膜11の最外層を構成している高屈折率膜
11L:低屈折率膜
12:別の膜