【実施例1】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。なお、放射線の一例としてX線を用いて説明する。
【0027】
<全体構成の説明>
実施例1に係る放射線撮像装置1は
図1に示すように、天板3と、X線管5と、FPD7と、X線照射制御部9と、FPD制御部11と、信号処理部13と、表示部15と、温度センサ17と、主制御部19を備えている。
【0028】
天板3は水平姿勢をとる被検体Mを載置させる。X線管5とFPD7は、天板3を挟んで対向配置されている。X線管5は被検体Mに対してX線を照射する。FPD7は被検体Mを透過したX線を検出し、検出されたX線を電荷信号に変換させる。X線照射制御部9はX線管5に接続されており、X線管5から照射させるX線量、およびX線を照射させるタイミングなどを制御する。FPD制御部11はFPD7に接続されており、FPD7において変換された電荷信号、すなわちX線検出信号を読み出す動作を制御する。
【0029】
信号処理部13はFPD7から読み出されたX線検出信号を処理して画像出力信号を出力させる。表示部15は信号処理部13の後段に設けられており、信号処理部13から出力された画像出力信号を放射線透過画像として表示する。温度センサ17はFPD7に接続されており、FPD7の温度を測定する。X線照射制御部9、FPD制御部11、信号処理部13、および表示部15の各々の動作は主制御部19によって統括制御される。なお、X線管5は本発明における放射線源に相当し、FPD7は本発明における放射線検出部に相当する。温度センサ17は本発明における温度測定部に相当する。
【0030】
FPD7はさらに
図2に示されるように、アクティブマトリクス基板21と、ゲートドライバ23と、アンプ25と、AD変換器27とを備えている。アクティブマトリクス基板21は、ゲートドライバ23およびアンプ25に接続されている。また、アクティブマトリクス基板21には複数の検出素子Aが二次元マトリクス状に配列されている。実施例1において、検出素子Aは縦4,096×横4,096程度の二次元マトリクス状に配列されている。但し、
図2においては、簡略化して検出素子Aが縦3×横3の二次元マトリクス状に配列されたものを図示している。
【0031】
検出素子Aは照射されたX線を電荷に変換し、電荷情報として蓄積する。ゲートドライバ23は検出素子Aに接続されており、検出素子Aに蓄積された電荷情報を読み出させる。アンプ25はAD変換器27に接続されており、検出素子Aから読み出された電荷情報を増幅してAD変換器27に出力する。AD変換器27は入力された電荷情報について、アナログ信号からデジタル信号に変換し、検出素子Aの出力データとして信号処理部13に出力する。なおゲートドライバ23、アンプ25、およびAD変換器27の各々の動作はFPD制御部11によって統括制御される。
【0032】
信号処理部13は
図1に示すように、さらにオフセット値取得部29と、線形近似曲線算出部31と、補正用データ取得部33と、オフセット補正部35と、再補正部37とを備えている。オフセット値取得部29はAD変換器27と接続されており、X線非照射時の検出素子Aの出力データはオフセット値取得部29へ入力される。オフセット値取得部29は、X線非照射時の検出素子Aの出力データに基づいてオフセット値を取得する。
【0033】
線形近似曲線算出部31はオフセット値取得部29の後段に設けられており、温度センサ17と接続されている。線形近似曲線算出部31はオフセット値取得部29が取得したオフセット値と、温度センサ17が測定したFPD7の温度に基づいて線形近似曲線を算出する。補正用データ取得部33は線形近似曲線算出部31の後段に設けられている。補正用データ取得部33は算出された線形近似曲線に基づいて、任意の温度におけるオフセット値を算出し、オフセット補正用データとして記憶する。
【0034】
オフセット補正部35はAD変換器27および補正用データ取得部33と接続されており、X線照射時の検出素子Aの出力データはオフセット補正部35へ入力される。オフセット補正部35は補正用データ取得部33が取得したオフセット補正用データを用いて、検出素子Aの出力データに対してオフセット補正を行う。再補正部37はオフセット補正部35の後段に設けられており、オフセット補正が行われた検出素子Aの出力データに対して、画像の劣化を補うための再補正を行う。検出素子Aの出力データはオフセット補正と再補正を経て画像出力信号として表示部15へ出力される。なお、再補正部37は本発明における画像処理部に相当する。
【0035】
<動作の説明>
次に実施例1に係る放射線撮像装置の動作について説明する。
図3は実施例1に係る放射線撮像装置の動作を説明するフローチャートである。なお、各々の検出素子Aを区別して呼ぶ場合は列数g、行数hを付して検出素子Aghと記載する。
【0036】
ステップS1(オフセット値の取得)
まず、放射線撮像装置の電源を投入した後、オフセット値の取得を行う。すなわちX線管5からX線を照射させない状態で、FPD制御部11からゲートドライバ23に対してゲート動作信号が、アンプ25に対してアンプ動作信号が、AD変換器27に対してAD変換信号が出力される。
【0037】
ゲートドライバ23はゲート動作信号に基づいて、各々の検出素子Aに蓄積された電荷情報を読み出させる。このとき読み出される電荷情報は、ノイズ成分や、検出器の暗電流等に起因する電荷情報である。そして、各々の検出素子Aから読み出された電荷情報はアンプ25に送信される。アンプ25はアンプ動作信号に基づいて、送信された電荷情報を増幅してAD変換器27に出力する。AD変換器27はAD変換信号に基づいて、入力された電荷情報をアナログ信号からデジタル信号に変換する。変換された電荷情報は、各々の検出素子Aの出力データとしてオフセット値取得部29に送信される。
【0038】
オフセット値取得部29は送信された出力データを検出素子Aのオフセット値として取得する。そして、オフセット値取得部29は各々の検出素子Aについてオフセット値を取得し、各々の検出素子Aについて取得された一連のオフセット値(オフセット値プロファイル)を記憶する。
【0039】
また、温度センサ17は検出素子Aから電荷情報が読み出された時点におけるFPD7の温度を計測する。そして計測されたFPD7の温度データは、温度センサ17からオフセット値取得部29へ送信される。オフセット値取得部29は送信されたFPD7の温度データについて、取得されたオフセット値に対応するFPD7の温度データとして取得し、記憶する。なお、オフセット値を実測したときのFPD7の温度(実測温度)がt℃であるときに、検出素子Aghについて取得されたオフセット値について、以下Ft(g,h)とする。
【0040】
そして、オフセット値およびFPD7の温度データの取得を繰り返す。実施例1では取得回数は4回であるが、適宜取得回数を変更してもよい。すなわち実施例1では4通りの、FPD7の温度データとFPD7の温度に対応するオフセット値との組み合わせが取得される。FPD7の温度データと、対応するオフセット値プロファイルの組み合わせが適宜得られた時点でステップS1に係る工程は終了する。
【0041】
ステップS2(線形近似曲線の算出)
ステップS1に係る工程が終了した後、線形近似曲線の算出を行う。すなわち、オフセット値取得部29が取得した各々のオフセット値、およびFPD7の温度データを、線形近似曲線算出部31へ送信させる。線形近似曲線算出部31は複数取得されたオフセット値とこれに対応するFPD7の温度データとの組み合わせに基づいて、温度とオフセット値の相関を示す線形近似曲線を検出素子Aの各々について算出する。線形近似曲線において、温度xおよびオフセット値yは、以下の(1)で示される一次関数によって表される。
y=ax+b(a、bは定数)…(1)
そして線形近似曲線算出部31は各々の検出素子Aについて、オフセット値と温度との相関を示す線形近似曲線の算出を行う。
【0042】
ステップS3(オフセット補正用データの取得)
各々の検出素子Aについて線形近似曲線が算出された後、オフセット補正用データの算出を行う。すなわち、線形近似曲線算出部31が算出した各々の線形近似曲線は補正用データ取得部33へ送信される。補正用データ取得部33は、送信された各々の線形近似曲線に基づいて、オフセット値を取得した際のFPD7の温度(以下、実測温度とする)より低い温度t
lowにおけるオフセット値を算出する。
【0043】
t
lowは、実測温度より低い任意の温度であるが、FPD7が稼働できる最低の温度(以下、最低稼働温度とする)であることがより望ましい。実施例1において、補正用データ取得部33は最低稼働温度におけるオフセット値を算出するものとする。また、実施例1において最低稼働温度は10℃であるが、最低稼働温度は適宜変更してもよい。すなわち実測温度tにおけるオフセット値Ft(g,h)と、検出素子Aghについて算出された線形近似曲線に基づいて、最低稼働温度におけるオフセット値F
10(g,h)が算出される。
【0044】
ここで最低稼働温度におけるオフセット値F
10(g,h)を算出する一例について
図4を用いて説明する。
図4は検出素子Aghにおけるオフセット値と、FPD7の温度との相関を示すグラフ図である。
【0045】
まず、オフセット値取得部29は、オフセット値プロファイルを4回取得する。そして線形近似曲線算出部31は、オフセット値取得部29が取得したオフセット値プロファイルと、FPD7の温度データとに基づいて、検出素子Aの各々について線形近似曲線を算出する。
図4に示される例では、検出素子Aghについて、FPD7の温度x℃、オフセット値yとの相関を示す線形近似曲線Lはy=166.56x+2479.3の一次関数で表される。すなわち、最低稼働温度におけるオフセット値F
10(g,h)は、x=10を代入した場合のyの値である4144.9となる。
【0046】
補正用データ取得部33は、全ての検出素子Aについて同様の計算方法で最低稼働温度におけるオフセット値を算出する。その結果、最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルが取得される。そして補正用データ取得部33は、最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルをオフセット補正用データとして取得し、記憶する。
【0047】
オフセット値はFPD7の温度によって変動する。すなわちFPD7の温度が高くなるとオフセット値が高くなり、温度が低くなるとオフセット値は低くなる。従って、オフセット補正用データを構成するオフセット値F
10(g,h)とは、検出素子Aghが取り得るオフセット値の最低値である。すなわち実測温度である、t℃におけるオフセット値プロファイル(
図5に符号PAで示す)および線形近似曲線に基づいて、最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルが算出される(
図5に符号PBで示す)。そして最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルは、実測温度tにおいて取得されるオフセット値プロファイルよりも低い値となる。
【0048】
補正用データ取得部33がオフセット補正用データを取得し、記憶することによって、ステップS3に係る工程は終了する。なお、ステップS1からステップS3に係る工程は、放射線撮像装置に電源を投入してから、X線撮影の準備が完了してX線照射が可能となるまでの間に行われる。
【0049】
ステップS4(X線の照射、電荷情報の読み出し)
オフセット補正用データが取得され、放射線撮像装置においてX線撮影の準備が完了した後、X線を照射する。X線管5から被検体Mに対して照射されたX線は被検体Mを透過し、FPD7を構成する各々の検出素子Aに入射される。各々の検出素子Aは入射されたX線を電荷に変換し、電荷情報として蓄積する。
【0050】
そして、FPD制御部11からゲートドライバ23、アンプ25、およびAD変換器27に対して信号を出力させる。ゲートドライバ23、アンプ25、およびAD変換器27は出力された信号に基づいて、各々の検出素子Aに蓄積された電荷情報を読み出す。読み出された電荷情報は、各々の検出素子Aの出力データとしてオフセット補正部35へ送信される。なお、X線照射時において読み出される検出素子Aghの出力データをE(g,h)とする。
【0051】
ステップS5(オフセット補正)
電荷情報の読み出しが行われた後、補正用データ取得部33は最低稼働温度におけるオフセット値プロファイル、すなわちオフセット補正用データをオフセット補正部35へ送信する。そしてオフセット補正部35は、送信された各々の検出素子Aの出力データに対してオフセット補正を行い、オフセット補正値を算出する。すなわち、検出素子Aghにおけるオフセット補正値G(g,h)は以下の(2)で示される計算式によって求められる。
G(g,h)=E(g,h)−F
10(g,h)…(2)
オフセット補正部35は(2)で示される計算式に従って、各々の検出素子Aについてオフセット補正値を算出する。算出されたオフセット補正値は再補正部37へ送信される。
【0052】
ステップS3において述べたように、オフセット補正用データを構成するオフセット値F
10(g,h)とは、オフセット値Ft(g,h)が取り得る最低の値である。すなわち、検出素子Aghの出力データに実際に包含されているオフセット値は、オフセット補正に用いられるオフセット値F
10(g,h)と比べて必ず高くなる。そのため、実施例1に係るオフセット補正によって、過剰補正に起因する画像成分の欠落は確実に回避される。
【0053】
ステップS6(再補正)
再補正部37は送信されたオフセット補正値に基づいて画像を形成する。ステップS5において減算されるオフセット値F
10(g,h)は低い値であるので、ステップS5に係るオフセット補正のみでは、検出素子Aの出力データから、暗電流などに起因する成分を完全に除去できない。そのためオフセット補正値を用いて形成される画像において、画像の劣化が発生する場合が多い。
【0054】
そこで再補正部37は、オフセット補正値に基づいて形成された画像に対してコントラストを強調させるなどの画像処理を行う。画像処理によって、オフセット補正後の画像はコントラストの強調された品質の高い画像となる。画像処理が行われて画像の劣化が補われた画像は、再補正部37によって表示部19に送信される。表示部19は送信された画像をX線透過画像として表示する。
【0055】
このように、実施例1に係る放射線撮像装置によれば、線形近似曲線算出部31は各々の検出素子Aについて線形近似曲線の算出を行い、補正用データ取得部33は各々の線形近似曲線を用いて実測温度より低い温度におけるオフセット値プロファイルを算出する。算出された最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルは、オフセット補正用データとして記憶される。
【0056】
そしてオフセット補正部35はX線照射時における検出素子の出力データに対して、オフセット補正用データを用いてオフセット補正を行う。そしてオフセット補正の後、再補正部37によってコントラストを強調する画像処理を行う。実測温度より低い温度におけるオフセット値を用いることにより、オフセット補正の過剰による画像情報の欠落は確実に回避される。そしてオフセット補正の不足によるコントラストの低下は再補正部37による画像処理によって解消され、品質の高い画像が取得される。従って、実施例1に係る放射線撮像装置では画像情報の欠落がなく、かつ高品質なX線透過画像を取得することができる。
【0057】
また、オフセット補正用データの算出は、放射線撮像装置に電源を投入してからX線撮影の準備が完了するまでの間に行われる。そのためオフセット補正用データの算出によってX線撮影が妨げられることがない。そして、放射線撮像装置に電源を投入してからX線撮影の準備が完了するまでに、FPD7の温度は変動する。すなわちオフセット値取得部29は、広範囲にわたる複数の温度について、対応するオフセット値を取得する。その結果、線形近似曲線算出部31は正確な線形近似曲線を算出できるので、実測温度より低い温度におけるオフセット値として算出される数値は、より実測値に近い値となる。
【0058】
そして実施例1に係る放射線撮像装置ではFPD7の温度に関わらず、常に実測温度より低い温度におけるオフセット値をオフセット補正用データとして用いる。そのため、従来のようにFPD7の温度の変動に応じてオフセット補正用データを更新させる必要がない。その結果、X線透過画像の形成に要する時間を短縮できるので、実施例1に係る放射線撮像装置では、より効率的なX線撮影を行うことができる。
【実施例2】
【0059】
次に、図を参照して本発明の実施例2に係る放射線撮像装置の動作について説明する。なお、実施例2に係る放射線撮像装置の全体構成は実施例1に係る放射線撮像装置の全体構成と同様である。また、実施例1に係る放射線撮像装置の動作と共通している部分については詳細な説明を省略する。また、実施例2に係るフローチャートは実施例1と同様、
図3に示す通りである。
【0060】
ステップS1(オフセット値の取得)
まず、放射線撮像装置の電源を投入した後、オフセット値の取得を行う。すなわちX線管5からX線を照射させない状態で、オフセット値取得部29は実施例1と同様に4通りの、実測温度tと実測温度tにおけるオフセット値プロファイルとの組み合わせを取得する。
【0061】
ステップS2(線形近似曲線の算出)
線形近似曲線算出部31は、4通りの実測温度tの各々において、取得されたオフセット値プロファイルのうち2以上の代表的な検出素子Aについて、取得されたオフセット値の平均値を算出する。実測温度tにおいて算出された、オフセット値の平均値をFt(Ave)とする。そして線形近似曲線算出部31は算出された4通りの平均値Ft(Ave)と実測温度tとの組み合わせに基づいて、Ft(Ave)と実測温度tと相関を示す線形近似曲線f(t)を算出する。線形近似曲線f(t)以下の(3)で示される一次関数によって表される。
f(t)=ct+d(c、dは定数)…(3)
なお、実施例2において算出される線形近似曲線f(t)は、本発明における平均線形近似曲線に相当する。
【0062】
ステップS3(オフセット補正用データの取得)
線形近似曲線算出部31は算出された線形近似曲線f(t)を補正用データ取得部33へ送信する。補正用データ取得部33は送信された線形近似曲線f(t)に対して最低稼働温度における想定画素値Pを算出する。実施例2において、最低稼働温度は実施例1と同様に10℃としているので、想定画素値Pについて以下の(4)で示される計算式が成立する。
P=10c+d…(4)
【0063】
次に補正用データ取得部33はオフセット値の平均値Ft(Ave)と想定画素値Pの差分をとり、差分画素値Qを算出する。すなわち差分画素値Qについて、以下の(5)で示される計算式が成立する。
Q=Ft(Ave)−P=Ft(Ave)−(10c+d)…(5)
【0064】
そして、補正用データ取得部33は、実測温度tにおいて取得された検出素子Aのオフセット値から、差分画素値Qを差し引いた値を算出する。さらに補正用データ取得部33はオフセット値から差分画素値Qを差し引く計算を検出素子Aの全てについて行い、算出された各々の値を、最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルとして取得し、記憶する。
【0065】
ステップS4(X線の照射、電荷情報の読み出し)
オフセット補正用データが取得され、放射線撮像装置においてX線撮影の準備が完了した後、X線を照射する。各々の検出素子Aに蓄積された電荷情報は読み出されて、各々の検出素子Aの出力データとしてオフセット補正部35へ送信される。
【0066】
ステップS5(オフセット補正)
補正用データ取得部33に記憶された最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルは、オフセット補正用データとしてオフセット補正部35へ送信される。オフセット補正部35は、送信されたオフセット値プロファイルを用いて各々の検出素子Aについてオフセット補正値を算出する。算出されたオフセット補正値は再補正部37へ送信される。
【0067】
ステップS6(再補正)
オフセット補正値が再補正部37へ送信された後、再補正部37は実施例1と同様に、オフセット補正値に基づいて形成された画像に対して、コントラストを強調させる画像処理を行う。画像処理が行われた画像は、再補正部37によって表示部19に送信される。表示部19は送信された画像をX線透過画像として表示する。
【0068】
このような構成を有することにより、実施例2に係る放射線撮像装置において、オフセット補正用データを構成する全てのオフセット値は、同一の線形近似曲線に基づいて算出される。そのため、最低稼働温度におけるオフセット値を算出するために、各々の検出素子ごとに異なる線形近似曲線を算出し、これらを用いて計算を行う必要がない。その結果、より単純な構成で最低稼働温度におけるオフセット補正データを取得できる。すなわちオフセット補正用データをより容易かつ迅速に算出できるので、放射線撮影をより効率的に行うことが可能となる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0070】
(A)上述した各実施例では、ステップS1からステップS3に係る工程は放射線撮像装置に電源を投入してからX線撮影の準備が完了するまでに行ったが、これに限られない。すなわち、オフセット値の取得、線形近似曲線の算出、およびオフセット補正用データの取得の一部または全部を放射線撮像装置の出荷段階において予め行っておいてもよい。予め線形近似曲線やオフセット補正用データを算出しておくことにより、X線撮影に要する時間をより短縮させることができる。また、緊急にX線撮影を要する事態であっても、予め算出された線形近似曲線などを用いて、好適なX線透過画像を形成することが可能となる。
【0071】
(B)また上述した各実施例において、ステップS1からステップS3に係る工程を任意のタイミングで行う構成としてもよい。すなわちスイッチ、ボタンなどによって構成される算出指示部をさらに設け、算出指示部をオンの状態に操作することによってステップS1からステップS3に係る工程を行う構成としてもよい。この構成を有することにより、任意のタイミングにおいて最低稼働温度におけるオフセット値プロファイルを算出し、オフセット補正用データを取得することができる。そのため、X線撮影の準備が完了した後にFPD7の温度が急激に変化し、オフセット値が大きく変動した場合などであってもオフセット補正用データを再度算出することができる。従って、FPD7の温度が急激に変化した後であっても、より好適なX線透過画像を形成することが可能となる。
【0072】
(C)上述した各実施例では、放射線を直接電荷に変換させる直接変換型のFPDを用いたが、これに限られない。すなわち、放射線を光に変換し、さらに変換光を電荷に変換させる間接変換型のFPDを適用させることも可能である。
【0073】
(D)上述した各実施例では、医用の装置であったが、この発明は、工業用や原子力用の装置に適用することもできる。