(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153018
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ラミネート物のカール取り機構及びそれを用いた情報通信体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 15/02 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
B42D15/02 501B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-215115(P2012-215115)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51086(P2014-51086A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105280
【氏名又は名称】ケイディケイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 義和
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅人
【審査官】
▲吉▼川 康史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−236939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱・加圧処理を施されたラミネート物を排出する一本或いは一対の排出ローラと、前記排出ローラの下流側であって前記排出ローラの上流側のラミネート物の搬送ラインに対して下方へ角度を持ってラミネート物が排出されるように少なくとも一対のニップローラが設けられていることを特徴としたラミネート物のカール取り機構。
【請求項2】
対向面間に疑似接着フィルムシートを介在した情報通信体用用紙に加熱・加圧処理を施して全体として剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法において、情報通信体に加熱・加圧処理を施して排出する排出ローラの下流側に前記排出ローラの上流側の情報通信体の搬送ラインに対して下方へ角度を持って情報通信体が排出されるように少なくとも一対のニップローラが設けられていることを特徴としたラミネート物のカール取機構を用いた情報通信体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポスターやパンフレット等の印刷物表面に加熱・加圧処理を施してフィルムシートを被覆するラミネータや、同様の処理で一体化処理を施す、複数の葉片が剥離可能に折り畳まれ或いは切り重ねられた情報通信体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポスターやパンフレットでは、その美観向上や耐久性付加のため、従来印刷物表面を透明或いは半透明のフィルムシートで被覆するラミネート処理が行われる。前記ラミネート処理では、溶剤を使用することがなく、予め感熱接着剤が形成されたフィルムシートを印刷物の対象面に整合して、ヒートロー
ラ等により加熱・加圧処理を施すことにより、フィルムシートと印刷物の対象面を強固に接着するサーマルラミネート法が近年多く採用されている。また最近、見掛けは一枚の葉書や封書であるにも関わらず、複数の紙片が剥離可能に積層された情報通信体が見られるようになったが、このような情報通信体の製造方法においても前記サーマルラミネート法による一体化工程が採用されている。
【0003】
ところで加熱・加圧処理を施された印刷物等は特にフィルムシートが被覆された面側へ反る傾向にある。これは異なる材質の紙とフィルムシートを加熱や加圧処理で接着しているための結果であるが、対向面間に例えば疑似接着フィルムシート等の疑似接着媒体を介在させて、同様の処理を施すことで剥離可能に一体化される情報通信体の製造方法においても同様の傾向が見られる。
【0004】
前記カールの対処法として一般的なラミネートでは、例えば特開平10−315424号公報に見られるようなカール修正部を設けることで、被覆後の印刷物に発生するカールを取り除く手段か講じられている。しかし情報通信体の製造方法においては、カールに対処する具体的な手段は現状考えられておらず、せいぜい特開2007−144971号公報に見られるように、一体化工程からカール状態で排出された情報通信体に冷却送風を行うことで荒熱を取り去り、カール状態からの回復時間を縮める程度のものである。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−315424号公報
【特許文献2】特開2007−144971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1のラミネータでは、被覆後の印刷物に発生するカールを取り除く手段として、カール修正部材41、角度調整ローラ42、アイドルローラ43を備えたカール修正部40が設置されている。しかしそのような工程を追加するスペースが必要となり、当然システムの拡大を余儀なくされる。特に角度調整ローラ42は用紙の状況により上下方向に大きく移動させる必要があるため前後のみならず上下方向のスペース確保も必要となる。また各種部材が新たに必要となり従ってシステム自体の価格に跳ね返ることになる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、ラミネートに際して発生するカールを、スペースを取らない簡易な構造で取り除く
と共に、情報通信体の製造方法にも応用可能な
カール取機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のラミネート物のカール取り機構は、加熱・加圧処理を施されたラミネート物を排出する一本或いは一対の
排出ローラと、前記
排出ローラの下流側であって前記
排出ローラの上流側のラミネート物の搬送ラインに対して
下方へ角度を持ってラミネート物が排出されるように少なくとも一対
のニップローラが設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明のラミネート物のカール取り機構を用いた情報通信体の製造方法は、対向面間に疑似接着フィルムシートを介在した情報通信体用用紙に加熱・加圧処理を施して全体として剥離可能に一体化する情報通信体の製造方法において、情報通信体に加熱・加圧処理を施して排出する排出ローラの下流側に
前記排出ローラの上流側の情報通信体の搬送ラインに対して
下方へ角度を持って情報通信体が排出されるように少なくとも一対のニップローラが設けられていることを特徴としている。
【0010】
前記加熱・加圧処理の具体的な手段として、例えば一対のヒートローラ、或いはヒートローラとゴムライニングされたバックアップローラの組み合わせからなるものにより実施されても構わず、或いはヒータパネル等により加熱処理を施した後に一対の加圧ローラにより実施されるようにしても構わない。そして排出に当たり加熱・加圧処理が可能なヒートローラや、通常のニップローラ等が排出ローラとして配置される。
【0011】
前記一対のニップローラの配
置が前記ラミネート物の通過ラインと同じ高さの場合、通過するラミネート物が一対のニップローラから排出される際に
、下方に角度を持って排出されるよ
う両ローラの接触点の位置に傾きを付けて設定する。その角度が水平から大きく傾くにつれてカールに対する修正度合いが増す。従ってラミネート物の種類(用紙であれば上質、マット、コート等種類)や厚み(用紙であれば斤量)、場合によっては同じ種類であっても銘柄等により前記角度が調整できるように自由度を持たせることが好ましい。
【0012】
また前記一対のニップロー
ラを排出ローラまでのラミネート物の通過ラインより下方
に配置することにより、ラミネート物は前記通過ラインに対して下方へ誘導され角度を持って排出されることになるが、前記通過ラインから大きく下方に
誘導されるにつれてカールに対する修正度合いが増す。従ってラミネート物の種類(用紙であれば上質、マット、コート等種類)や厚み(用紙であれば斤量)、場合によっては同じ種類であっても銘柄等により前記角度が調整できるように自由度を持たせることが好ましい。
【0013】
また前記一対のニップローラは複数対配置されていても構わず、段階的にカールが強制されるように配置
されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のラミネート物のカール取り機構を使用したラミネート工程を説明する要部概略図である。
【
図2】ラミネート物のカール取り機構の要部概略図である。
【
図3】(A)及び(B)は二つ折り葉書用用紙が印刷された長尺状シートS1の表面図及び裏面図である。
【
図4】疑似接着フィルムシートG1を挿入し折り畳まれた二つ折り葉書用用紙t1の断面図である。
【
図5】(A)及び(B)は二つ折り葉書用用紙t2が印刷された枚葉状シートS2の表面図及び裏面図である。
【
図6】疑似接着フィルムシートG2を被覆し折り畳まれた二つ折り葉書用用紙t2の断面図である。
【
図8】(A)、(B)、(C)及び(D)はラミネート物のカール取り機構の異なる態様を示す要部概略図である。
【
図9】ラミネート物のカール取り機構の異なる態様を示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
[実施例1:ラミネート物のカール取り機構]
図1に示すように、本発明のラミネート物のカール取り機構を備えたラミネータは、例えば複数積載された枚葉状の印刷物Sの最上部分の印刷物Sが、吸着パッドP等の用紙繰り出し機構により、等間隔や端部を突き合わせて或いは端部を重ね合わせながら右側の搬送テーブルへ順次繰り出される。そして前記繰り出された印刷物Sは右側に配置されたニップローラ1a、1bに前端部を銜え込まれ、さらに右側の一対のヒートローラ2a、2bとからなるラミネート装置へ送りこまれる。
【0016】
前記ラミネート装置では通過する印刷物の被覆予定面と、上方に待機しているロールから繰り出されるフィルムシートFが整合され、前記フィルムシートFに予め形成されている感熱接着剤層を介して、ヒートローラ2a、2b等のラミネート装置により加熱・加圧処理が施されることにより両者は強固に接着される。
【0017】
その後右側に配置された
排出ローラ4a、4bまでの間に、例えば前後の端部を重ね合わせながら搬送される印刷物Sに連続的にフィルムシートFが被覆される。そして前記フィルムシートFにより連続状態の印刷物Sの重なり合う端部において、被覆しているフィルムシートFをカッタ3等による公知の切断手段により分離することにより、当初の個別の印刷物S毎に仕上げ
られる。
【0018】
そして前記分離された印刷物Sは、
図2に示すように、ガイド板5によりさらに右側に低い位置に配置されたニップローラ6a、6bへ誘導され、その後斜め下方へ向かうパスラインに沿って送り出される。
【0019】
通常フィルムシートFが被覆された印刷物Sは、フィルムシートFが被覆されている側へカールを起こす。即ち本実施例では上側にカールする。然るにニップローラ4a、4bから排出された後に下方へ向かい進行する印刷物Sは、前記ニップローラ4a、4bにより扱かれることになり、既述の処理により上側へカールする傾向が相殺されてほぼ平面に矯正されるのである。
【0020】
かくして前記のようにカールが矯正された印刷物Sは、ニップローラ6a、6bの右側に配置された図示されない用紙積載台に積載されるか、或いは下流に配置された次の工程へと送り出されるのである。
【0021】
[実施例2:
ラミネート物のカール取り機構を
用いた情報通信体の製造方法]
既述のカール取り機構を使用するラミネート物は、印刷物等の被覆予定面にフィルムシートFを被覆する形態である。そのような形態の他に複数の紙片が剥離可能に積層された情報通信体の製造においても同様のカールが発生する。前記情報通信体は対向する疑似接着予定面を疑似接着フィルムシートを介して剥離可能に一体化するもので、受取人が開封すると疑似接着フィルムシートの疑似接着部分から剥離され、剥離後展開される両疑似接着面が、分離した疑似接着フィルムシートにより被覆された状態となる。
【0022】
以下本発明の
ラミネート物のカール取り機構を用いた情報通信体の製造方法の実施の形態を、基本的な二つ折り葉書に基づいて具体的に説明する。
(1:長尺状シートS1から二つ折り葉書用用紙t1を仕上げる方法)
図3は輪転印刷やビジネスフォーム印刷で使用する、長尺状シートS1に二つ折り葉書用用紙t1が印刷されたものである。このものは例えば同図(A)に示すように、第一紙片11と第二紙片12が折り線13を介して横方向に連接された二つ折り葉書用紙t1が、天地方向の切取線14を介して縦方向に連接されたものである。そして第一紙片11及び第二紙片12の外側には切取線15を介してマージナル孔16が設けられたマージナル部分17が連接されている。
【0023】
そして第一紙片11表面には、例えば郵便切手欄、郵便番号欄、受取人の住所氏名等が記載されている。また第二紙片12表面には広告宣伝等一般情報18が記載されている。
【0024】
同様に
図3(B)に示すように、第一紙片11及び第二紙片12裏面には、受取人の個人情報19等(一般情報等でも構わない)が記載されている。そして前記各裏面側が疑似接着予定面となり、最終的には折り線13から折り畳まれて疑似接着フィルムシートG1を介して剥離可能に一体化される。
【0025】
前記長尺状シートS1
は折り線13から第一紙片11及び第二紙片12が対向するように連続的に折り畳まれる。それと同時に例えばポリエチレンテレフタレートや二軸延伸ポリプロピレン等の基材の一方の面に熱可塑性樹脂を剥離可能に積層したものの両外側に、公知の感熱接着剤層を形成した4層構成の疑似接着フィルムシートG1(図中2層で表している)を前記対向面間に挿入
され、その後両マージナル部分を切除すると共に天地方向の切取線14で断裁して
図4に示すような個別の二つ折り葉書用用紙t1に仕上げられる。
【0026】
個別に仕上がった二つ折り葉書用用紙t1(対向紙片間に疑似接着フィルムシートG1を挟んでいる)は続く一体化工程で全体として剥離可能に一体化されるのであるが。その説明の前に個別の単位シート
を仕上げる異なる
態様を以下に記す。
【0027】
(2:枚葉状シートS2から二つ折り葉書用用紙t2を仕上げる方法)
図5はオフセット印刷等で使用する枚葉状シートS2で、1枚に二つ折り葉書用用紙t2が2丁印刷されたものである。このものは例えば同図(A)に示すように、第一紙片21と第二紙片22が折り線23を介して横方向に連接された二つ折り葉書用用紙t2が縦方向に並んで2丁印刷されている。
【0028】
そして第一紙片21表面には、例えば郵便切手欄、郵便番号欄、受取人の住所氏名等が記載されている。また第二紙片22表面には広告宣伝等一般情報18が記載されている。
【0029】
同様に
図5(B)に示すように、第一紙片21及び第二紙片22裏面には、受取人の個人情報19等(一般情報等でも構わない)が記載されている。そして前記各裏面側が疑似接着予定面となり、最終的には折り線23から折り畳まれて疑似接着フィルムシートG2を介して剥離可能に一体化される。
【0030】
前記枚葉状シートS2は裏面側の疑似接着予定面(第一紙片21及び第二紙片22の裏面)に、例えばポリエチレンテレフタレートや二軸延伸ポリプロピレン等からなる基材の一方の面に公知の感熱接着剤層を形成すると共に、残るもう一方の面に疑似接着層を形成したプリントラミネート用の疑似接着フィルムシートG2が、前記感熱接着剤層を介して被覆された後に、断裁及び折り工程を経て疑似接着予定面同士が対向するように折り畳まれ、
図6に示すように個別の二つ折り葉書用用紙t2に仕上げられる。
【0031】
(3:二つ折り葉書用用紙t1及びt2の一体化工程)
既述の通り個別に仕上げられた二つ折り葉書用用紙t1及びt2は、
図7に示す一体化工程へ送られる。一体化工程では一対の搬送ローラ31a、31bと一対のヒータパネル32a、32bが交互に配置されており、通過する二つ折り葉書用用紙t1及びt2に加熱処理を施すと共に、排出口に配置された排出ローラ33a、33bにより加圧処理を施す。
【0032】
前記加熱・加圧処理を施すと二つ折り葉書用用紙t1においては、疑似接着フィルムシートG1の感熱接着剤層が接着性を発揮して、対向する各紙片と疑似接着フィルムシートG1が接着して一体化される。また二つ折り葉書用用紙t2においては対向する疑似接着フィルムシートG2の疑似接着層同士が剥離可能に疑似接着され、全体として剥離可能に一体化されるのである。
【0033】
なお、前記排出ローラ33a、33bから排出される二つ折り葉書用用紙t1及びt2は、両者共上側にカールする傾向にある。これは一対のヒータパネル32a、32bで加熱する際に、両ヒータパネルの熱気が上方へ伝わり滞留するため、通過する二つ折り葉書用用紙の上側がより加熱されるためと考えられる。
【0034】
然るに本発明では、
図7に示すように排出ローラ33a、33bの右側に配置されているニップローラ35a、35bにより、二つ折り葉書用用紙t1及びt2が下方へ扱かれながら引き出される搬送経路を辿るため、上側にカールする傾向は相殺される。
【0035】
なお、本発明は前記実施例に限られるものではない。
例えば、既述の通り、加熱・加圧処理が施されて上側へカールする傾向の印刷物の搬送経路に対する、情報通信体を扱いて前記カールを相殺するための排出ローラ
と一対のニップローラの配置については、
図8(A)に示すように、同一搬送ライン上に各ローラを配置しても構わない。その場合一対のニップローラ42a、42bの配置は排出ローラ41a、41bからの搬送ラインに対して下方へ排出するように傾けて、通過する印刷物や情報通信体を下方側へ扱くようにする必要がある。
また同図(B)に示すように、搬送ラインに対して一対のニップローラ42a、42bを下方に配置して排出ローラ41a、41bにより下方側へ扱くようにしても構わない。
さらに同図(C)に示すように、ニップローラ42a、42bを搬送ラインの下方に配置して尚且つ傾きを与えることにより排出ローラ41a、41bとニップローラ42a、42bの両者で扱くようにしても構わない。
また同図(D)に示すように、複数の一対のニップローラ
42a、42b及び43a、43bを配置して
段階的に傾きを与えても構わない。
【0036】
また排出ローラについては、実施例中では一対のニップロー
ラを使用しているが、
図9に示すように下側のローラのみをサポートローラ41bとして単独で使用しても構わない。
【符号の説明】
【0037】
S 印刷物
S1 長尺状シート
S2 枚葉状シート
F フィルムシート
G1、G2 疑似接着フィルムシート
t1、t2 二つ折り葉書用用紙
P 吸着パッド
1a、1b、6a、6b、35a、35b、42a、42b、
43a、43b ニップローラ
2a、2b ヒートローラ
4a、4b、33a、33b、41a、41b 排出ローラ
3 カッタ
5、34 ガイド板
11、12、21、22 紙片
13、23 折り線
14、15、切取線
16 マージナル孔
17マージナル部分
18 一般情報
19 個人情報
31a、31b 搬送ローラ
32a、32b ヒータパネル
33a、33b、41a、41b 排出ローラ