(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0021】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して燃料電池セル収容容器8が配置されている。この燃料電池セル収容容器8内の内部には発電室10が構成され、この発電室10の中には複数の燃料電池セル16が同心円状に配置されており、これらの燃料電池セル16により、燃料ガスと酸化剤ガスである空気の発電反応が行われる。
【0022】
各燃料電池セル16の上端部には、排気集約室18が取り付けられている。各燃料電池セル16において発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)は、上端部に取り付けられた排気集約室18に集められ、この排気集約室18の天井面に設けられた複数の噴出口から流出される。流出した燃料は、発電室10内で発電に使用されずに残った空気により燃焼され、排気ガスが生成されるようになっている。
【0023】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された炭化水素系の原燃料ガスの流量を調整する燃料供給装置である燃料ブロア38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
【0024】
なお、燃料ブロア38を通過した原燃料ガスは、燃料電池モジュール2内に配置された脱硫器36と、熱交換器34、電磁弁35を介して燃料電池セル収容容器8の内部に導入される。脱硫器36は、燃料電池セル収容容器8の周囲に環状に配置されており、原燃料ガスから硫黄を除去するようになっている。また、熱交換器34は、脱硫器36において温度上昇した高温の原燃料ガスが直接電磁弁35に流入し、電磁弁35が劣化されるのを防止するために設けられている。電磁弁35は、燃料電池セル収容容器8内への原燃料ガスの供給を停止するために設けられている。
【0025】
補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気の流量を調整する酸化剤ガス供給装置である空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)を備えている。
【0026】
さらに、補機ユニット4には、燃料電池モジュール2からの排気ガスの熱を回収するための温水製造装置50が備えられている。この温水製造装置50には、水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0027】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)の燃料電池モジュールに内蔵された燃料電池セル収容容器の内部構造を説明する。
図2は燃料電池セル収容容器の断面図であり、
図3は燃料電池セル収容容器の主な部材を分解して示した断面図である。
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8内の空間には、複数の燃料電池セル16が同心円状に配列され、その周囲を取り囲むように燃料流路である燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、酸化剤ガス供給流路22が順に同心円状に形成されている。ここで、排ガス排出流路21及び酸化剤ガス供給流路22は、酸化剤ガスを供給/排出する酸化剤ガス流路として機能する。
【0028】
まず、
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8は、概ね円筒状の密閉容器であり、その側面には、発電用の空気を供給する酸化剤ガス流入口である酸化剤ガス導入パイプ56、及び排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58が接続されている。さらに、燃料電池セル収容容器8の上端面からは、排気集約室18から流出した残余燃料に点火するための点火ヒーター62が突出している。
【0029】
図2及び
図3に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、燃料電池セル16の周囲を取り囲むように、内側から順に、発電室構成部材である内側円筒部材64、外側円筒部材66、内側円筒容器68、外側円筒容器70が配置されている。上述した燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、及び酸化剤ガス供給流路22は、これらの円筒部材及び円筒容器の間に夫々構成される流路であり、隣り合う流路の間で熱交換が行われる。即ち、排ガス排出流路21は燃料ガス供給流路20を取り囲むように配置され、酸化剤ガス供給流路22は排ガス排出流路21を取り囲むように配置されている。また、燃料電池セル収容容器8の下端側の開放空間は、燃料を各燃料電池セル16に分散させる燃料ガス分散室76の底面を構成する概ね円形の分散室底部材72により塞がれている。
【0030】
内側円筒部材64は、概ね円筒状の中空体であり、その上端及び下端は開放されている。また、内側円筒部材64の内壁面には、分散室形成板である円形の第1固定部材63が気密的に溶接されている。この第1固定部材63の下面と、内側円筒部材64の内壁面と、分散室底部材72の上面により、燃料ガス分散室76が画定される。また、第1固定部材63には、各々燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴63aが形成されており、各燃料電池セル16は、各挿通穴63aに挿通された状態で、セラミック接着剤により第1固定部材63に接着されている。このように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池モジュール2を構成する部材間相互の接合部には、セラミック接着剤が充填され、硬化されることにより、各部材が相互に気密的に接合されている。
【0031】
外側円筒部材66は、内側円筒部材64の周囲に配置される円筒状の管であり、内側円筒部材64との間に円環状の流路が形成されるように、内側円筒部材64と概ね相似形に形成されている。さらに、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間には中間円筒部材65が配置されている。中間円筒部材65は、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間に配置された円筒状の管であり、内側円筒部材64の外周面と中間円筒部材65の内周面の間には改質部94が構成されている。また、中間円筒部材65の外周面と、外側円筒部材66の内周面の間の円環状の空間は、燃料ガス供給流路20として機能する。このため、改質部94及び燃料ガス供給流路20は、燃料電池セル16における発熱及び排気集約室18上端における残余燃料の燃焼により熱を受ける。また、内側円筒部材64の上端部と外側円筒部材66の上端部は溶接により気密的に接合されており、燃料ガス供給流路20の上端は閉鎖されている。さらに、中間円筒部材65の下端と、内側円筒部材64の外周面は、溶接により気密的に接合されている。
【0032】
内側円筒容器68は、外側円筒部材66の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、外側円筒部材66との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が外側円筒部材66と概ね相似形に形成されている。この内側円筒容器68は、内側円筒部材64の上端の開放部を覆うように配置される。外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間は、排ガス排出流路21(
図2)として機能する。この排ガス排出流路21は、内側円筒部材64の上端部に設けられた複数の小穴64aを介して内側円筒部材64の内側の空間と連通している。また、内側円筒容器68の下部側面には、排ガス流出口である排ガス排出パイプ58が接続されており、排ガス排出流路21が排ガス排出パイプ58に連通される。
【0033】
排ガス排出流路21の下部には、燃焼触媒60及びこれを加熱するためのシースヒーター61が配置されている。
燃焼触媒60は、排ガス排出パイプ58よりも上方に、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間に充填された触媒である。排ガス排出流路21を下降した排気ガスは、燃焼触媒60を通過することにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58から排出される。
シースヒーター61は、燃焼触媒60の下方の、外側円筒部材66の外周面を取り囲むように取り付けられた電気ヒーターである。固体酸化物型燃料電池装置1の起動時において、シースヒーター61に通電することにより、燃焼触媒60が活性温度まで加熱される。
【0034】
外側円筒容器70は、内側円筒容器68の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、内側円筒容器68との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が内側円筒容器68と概ね相似形に形成されている。内側円筒容器68の外周面と、外側円筒容器70の内周面の間の円環状の空間は、酸化剤ガス供給流路22として機能する。また、外側円筒容器70の下部側面には、酸化剤ガス導入パイプ56が接続されており、酸化剤ガス供給流路22が酸化剤ガス導入パイプ56に連通される。
【0035】
分散室底部材72は、概ね円形の皿状の部材であり、内側円筒部材64の内壁面にセラミック接着剤により気密的に固定される。これにより、第1固定部材63と分散室底部材72の間に、燃料ガス分散室76が構成される。また、分散室底部材72の中央には、バスバー80(
図2)を挿通させるための挿通管72aが設けられている。各燃料電池セル16に電気的に接続されたバスバー80は、この挿通管72aを通して燃料電池セル収容容器8の外部に引き出される。また、挿通管72aには、セラミック接着剤が充填され、燃料ガス分散室76の気密性が確保されている。さらに、挿通管72aの周囲には、断熱材72b(
図2)が配置されている。
【0036】
内側円筒容器68の天井面から垂下するように、発電用の空気を噴射するための、円形断面の酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。この酸化剤ガス噴射用パイプ74は、内側円筒容器68の中心軸線上を鉛直方向に延び、その周囲の同心円上に各燃料電池セル16が配置される。酸化剤ガス噴射用パイプ74の上端が内側円筒容器68の天井面に取り付けられることにより、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間に形成されている酸化剤ガス供給流路22と酸化剤ガス噴射用パイプ74が連通される。酸化剤ガス供給流路22を介して供給された空気は、酸化剤ガス噴射用パイプ74の先端から下方に噴射され、第1固定部材63の上面に当たって、発電室10内全体に広がる。
【0037】
燃料ガス分散室76は、第1固定部材63と分散室底部材72の間に構成される円筒形の気密性のあるチャンバーであり、その上面に各燃料電池セル16が林立されている。第1固定部材63の上面に取り付けられた各燃料電池セル16は、その内側の燃料極が、燃料ガス分散室76の内部と連通されている。各燃料電池セル16の下端部は、第1固定部材63の挿通穴63aを貫通して燃料ガス分散室76の内部に突出し、各燃料電池セル16は第1固定部材63に、接着により固定されている。
【0038】
図2に示すように、内側円筒部材64には、第1固定部材63よりも下方に複数の小穴64bが設けられている。内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間は、複数の小穴64bを介して燃料ガス分散室76内に連通されている。供給された燃料は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の空間を一旦上昇した後、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間を下降し、複数の小穴64bを通って燃料ガス分散室76内に流入する。燃料ガス分散室76に流入した燃料は、燃料ガス分散室76の天井面(第1固定部材63)に取り付けられた各燃料電池セル16の燃料極に分配される。
【0039】
さらに、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16の下端部は、燃料ガス分散室76内でバスバー80に電気的に接続され、挿通管72aを通して電力が外部に引き出される。バスバー80は、各燃料電池セル16により生成された電力を、燃料電池セル収容容器8の外部へ取り出すための細長い金属導体であり、碍子78を介して分散室底部材72の挿通管72aに固定されている。バスバー80は、燃料ガス分散室76の内部において、各燃料電池セル16に取り付けられた集電体82と電気的に接続されている。また、バスバー80は、燃料電池セル収容容器8の外部において、インバータ54(
図1)に接続される。なお、集電体82は、排気集約室18内に突出している各燃料電池セル16の上端部にも取り付けられている(
図4)。これら上端部及び下端部の集電体82により、複数の燃料電池セル16が電気的に並列に接続されると共に、並列に接続された複数組の燃料電池セル16が電気的に直列に接続され、この直列接続の両端が夫々バスバー80に接続される。
【0040】
次に、
図4及び
図5を参照して、排気集約室の構成を説明する。
図4は排気集約室の部分を拡大して示す断面図であり、
図5は、
図2におけるV−V断面である。
図4に示すように、排気集約室18は、各燃料電池セル16の上端部に取り付けられたドーナツ型断面のチャンバーであり、この排気集約室18の中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74が貫通して延びている。
【0041】
図5に示すように、内側円筒部材64の内壁面には、排気集約室18支持用の3つのステー64cが等間隔に取り付けられている。
図4に示すように、各ステー64cは金属製の薄板を折り曲げた小片であり、排気集約室18を各ステー64cの上に載置することにより、排気集約室18は内側円筒部材64と同心円上に位置決めされる。これにより、排気集約室18の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間、及び排気集約室18の内周面と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面との間の隙間は、全周で均一になる(
図5)。
【0042】
排気集約室18は、集約室上部材18a及び集約室下部材18bが気密的に接合されることにより構成されている。
集約室下部材18bは、上方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための円筒部が設けられている。
集約室上部材18aは、下方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための開口部が設けられている。集約室上部材18aは、集約室下部材18bの上方に開口したドーナツ型断面の領域に嵌め込まれる形状に構成されている。
【0043】
集約室下部材18bの周囲の壁の内周面と集約室上部材18aの外周面の間の隙間にはセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、大径シールリング19aが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。大径シールリング19aは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
【0044】
一方、集約室下部材18b中央の円筒部の外周面と、集約室上部材18a中央の開口部の縁の間にもセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、小径シールリング19bが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。小径シールリング19bは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
【0045】
集約室下部材18bの底面には複数の円形の挿通穴18cが設けられている。各挿通穴18cには燃料電池セル16の上端部が夫々挿通され、各燃料電池セル16は各挿通穴18cを貫通して延びている。各燃料電池セル16が貫通している集約室下部材18bの底面上にはセラミック接着剤が流し込まれ、これが硬化されることにより、各燃料電池セル16の外周と各挿通穴18cの間の隙間が気密的に充填されると共に、各燃料電池セル16が集約室下部材18bに固定されている。
【0046】
さらに、集約室下部材18bの底面上に流し込まれたセラミック接着剤の上には、円形薄板状のカバー部材19cが配置され、セラミック接着剤の硬化により集約室下部材18bに固定されている。カバー部材19cには、集約室下部材18bの各挿通穴18cと同様の位置に複数の挿通穴が設けられており、各燃料電池セル16の上端部はセラミック接着剤の層及びカバー部材19cを貫通して延びている。
【0047】
一方、排気集約室18の天井面には、集約された燃料ガスを噴出させるための複数の噴出口18dが設けられている(
図5)。各噴出口18dは、集約室上部材18aに、円周上に配置されている。発電に使用されずに残った燃料は、各燃料電池セル16の上端から排気集約室18内に流出し、排気集約室18内で集約された燃料は各噴出口18dから流出し、そこで燃焼される。
【0048】
次に、
図2を参照して、燃料供給源30から供給される原燃料ガスを改質するための構成について説明する。
まず、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間の空間で構成されている燃料ガス供給流路20の下部には、水蒸気改質用の水を蒸発させるための蒸発部86が設けられている。蒸発部86は、外側円筒部材66の下部内周に取り付けられたリング状の傾斜板86a及び水供給パイプ88から構成されている。また、蒸発部86は、発電用の空気を導入するための酸化剤ガス導入パイプ56よりも下方で、排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58よりも上方に配置されている。傾斜板86aは、リング状に形成された金属の薄板であり、その外周縁が外側円筒部材66の内壁面に取り付けられる。一方、傾斜板86aの内周縁は外周縁よりも上方に位置し、傾斜板86aの内周縁と、内側円筒部材64の外壁面との間には隙間が設けられている。
【0049】
水供給パイプ88は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプであり、水流量調整ユニット28から供給された水蒸気改質用の水が、水供給パイプ88を介して蒸発部86に供給される。水供給パイプ88の上端は、傾斜板86aを貫通して傾斜板86aの上面側まで延び、傾斜板86aの上面側に供給された水は、傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面の間に留まる。傾斜板86aの上面側に供給された水は、そこで蒸発され水蒸気が生成される。
【0050】
また、蒸発部86の下方には、原燃料ガスを燃料ガス供給流路20内に導入するための燃料ガス導入部が設けられている。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、燃料ガス供給パイプ90を介して燃料ガス供給流路20に導入される。燃料ガス供給パイプ90は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプである。また、燃料ガス供給パイプ90の上端は、傾斜板86aよりも下方に位置している。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、傾斜板86aの下側に導入され、傾斜板86aの傾斜により流路を絞られながら傾斜板86aの上側へ上昇する。傾斜板86aの上側へ上昇した原燃料ガスは、蒸発部86で生成された水蒸気と共に上昇する。
【0051】
燃料ガス供給流路20内の蒸発部86上方には、燃料ガス供給流路隔壁92が設けられている。燃料ガス供給流路隔壁92は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の円環状の空間を上下に隔てるように設けられた円環状の金属板である。この燃料ガス供給流路隔壁92の円周上には等間隔に複数の噴射口92aが設けられており、これらの噴射口92aにより燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間と下側の空間が連通されている。燃料ガス供給パイプ90から導入された原燃料ガス及び蒸発部86で生成された水蒸気は、一旦、燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留した後、各噴射口92aを通って燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間に噴射される。各噴射口92aから燃料ガス供給流路隔壁92の上側の広い空間に噴射されると、原燃料ガス及び水蒸気は急激に減速され、ここで十分に混合される。
【0052】
さらに、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の、円環状の空間の上部には、改質部94が設けられている。改質部94は、各燃料電池セル16の上部と、その上方の排気集約室18の周囲を取り囲むように配置されている。改質部94は、内側円筒部材64の外壁面に取り付けられた触媒保持板(図示せず)と、これにより保持された改質触媒96によって構成されている。
【0053】
このように、改質部94内に充填された改質触媒96に、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間で混合された原燃料ガス及び水蒸気が接触すると、改質部94内においては、式(1)に示す水蒸気改質反応SRが進行する。
C
mH
n+xH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (1)
【0054】
改質部94において改質された燃料ガスは、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の空間を下方に流れ、燃料ガス分散室76に流入して、各燃料電池セル16に供給される。水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるが、反応に要する熱は、排気集約室18から流出するオフガスの燃焼熱、及び各燃料電池セル16において発生する発熱により供給される。
【0055】
次に、
図6を参照して、燃料電池セル16について説明する。
本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池セル16として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル16上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル16が構成されている。各燃料電池セル16は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル16のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
【0056】
図6(a)は、下端がカソードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図であり、
図6(b)は、下端がアノードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図である。
【0057】
図6に示すように、燃料電池セル16は、細長い円筒状の多孔質支持体97と、この多孔質支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。多孔質支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料ガス分散室76を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル16の多孔質支持体97の内部を流れ、酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル16上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル16上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
【0058】
図6(a)に示すように、燃料電池セル16のカソード側端部には、多孔質支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
【0059】
図6(b)に示すように、燃料電池セル16のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
【0060】
図6(a)(b)においては、各燃料電池セル16の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル16の上端部における構成も同様である。なお、上端部においては、各燃料電池セル16は、排気集約室18の集約室下部材18bに固定されているが、固定部分の構成は下端部における第1固定部材63に対する固定と同様である。
【0061】
次に、多孔質支持体97及び各層の構成を説明する。
多孔質支持体97は、本実施形態においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。
燃料極層98は、本実施形態においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y
2O
3−90mol%ZrO
2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
【0062】
反応抑制層99は、本実施形態においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa
2O
3−60mol%のCeO
2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。
固体電解質層100は、本実施形態においては、La
0.9Sr
0.1Ga
0.8Mg
0.2O
3の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
【0063】
空気極層101は、本実施形態においては、La
0.6Sr
0.4Co
0.8Fe
0.2O
3の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。
インターコネクタ層102は、本実施形態においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル16上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。
電極層103a、103bは、本実施形態においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。
リード膜層104a、104bは、本実施形態においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
【0064】
次に、
図1及び
図2を参照して、固体酸化物型燃料電池装置1の作用を説明する。
まず、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程において、燃料ブロア38が起動され、燃料の供給が開始されると共に、シースヒーター61への通電が開始される。シースヒーター61への通電が開始されることにより、その上方に配置された燃焼触媒60が加熱されると共に、内側に配置された蒸発部86も加熱される。燃料ブロア38により供給された燃料は、脱硫器36、熱交換器34、電磁弁35を介して、燃料ガス供給パイプ90から燃料電池セル収容容器8の内部に流入する。流入した燃料は、燃料ガス供給流路20内を上端まで上昇した後、改質部94内を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、改質部94内の改質触媒96の温度が十分に上昇していないため、燃料の改質は行われない。
【0065】
燃料ガス分散室76に流入した燃料ガスは、燃料ガス分散室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇しておらず、また、インバータ54への電力の取り出しも行われていないため、発電反応は発生しない。
【0066】
排気集約室18に流入した燃料は、排気集約室18の噴出口18dから噴出される。噴出口18dから噴出された燃料は、点火ヒーター62により点火され、そこで燃焼される。この燃焼により、排気集約室18の周囲に配置された改質部94が加熱される。また、燃焼により生成された排気ガスは、内側円筒部材64の上部に設けられた小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。高温の排気ガスは、排ガス排出流路21内を下降し、その内側に設けられた燃料ガス供給流路20を流れる燃料、外側に設けられた酸化剤ガス供給流路22内を流れる発電用の空気を加熱する。さらに、排気ガスは、排ガス排出流路21内に配置された燃焼触媒60を通ることにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58を通って燃料電池セル収容容器8から排出される。
【0067】
排気ガス及びシースヒーター61により蒸発部86が加熱されると、蒸発部86に供給された水蒸気改質用の水が蒸発され、水蒸気が生成される。水蒸気改質用の水は、水流量調整ユニット28により、水供給パイプ88を介して燃料電池セル収容容器8内の蒸発部86に供給される。蒸発部86で生成された水蒸気と、燃料ガス供給パイプ90を介して供給された燃料は、一旦、燃料ガス供給流路20内の燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留し、燃料ガス供給流路隔壁92に設けられた複数の噴射口92aから噴射される。噴射口92aから勢いよく噴射された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間内で減速されることにより、十分に混合される。
【0068】
混合された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路20内を上昇し、改質部94に流入する。改質部94の改質触媒96が改質可能な温度まで上昇している状態においては、燃料及び水蒸気の混合ガスが改質部94を通過する際、水蒸気改質反応が発生し、混合ガスが水素を多く含む燃料に改質される。改質された燃料は、小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。小穴64bは燃料ガス分散室76の周囲に多数設けられ、燃料ガス分散室76として十分な容積が確保されているため、改質された燃料は、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16に均等に流入する。
【0069】
一方、空気流量調整ユニット45により供給された酸化剤ガスである空気は、酸化剤ガス導入パイプ56を介して酸化剤ガス供給流路22に流入する。酸化剤ガス供給流路22に流入した空気は、内側を流れる排気ガスにより加熱されながら酸化剤ガス供給流路22内を上昇する。酸化剤ガス供給流路22内を上昇した空気は、燃料電池セル収容容器8内の上端部で中央に集められ、酸化剤ガス供給流路22に連通された酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入する。酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入した空気は下端から発電室10内に噴射され、噴射された空気は第1固定部材63の上面に当たって発電室10内全体に広がる。発電室10内に流入した空気は、排気集約室18の外周壁と内側円筒部材64の内周壁の間の隙間、及び排気集約室18の内周壁と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面の間の隙間を通って上昇する。
【0070】
この際、各燃料電池セル16の外側(空気極側)を通って流れる空気の一部は発電反応に利用される。また、排気集約室18の上方に上昇した空気の一部は、排気集約室18の噴出口18dから噴出する燃料の燃焼に利用される。燃焼により生成された排気ガス、及び発電、燃焼に利用されずに残った空気は、小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。排ガス排出流路21に流入した排気ガス及び空気は、燃焼触媒60により一酸化炭素が除去された後、排出される。
【0071】
このように、各燃料電池セル16が発電可能な温度である650℃程度まで上昇し、各燃料電池セル16の内側(燃料極側)に改質された燃料が流れ、外側(空気極側)に空気が流れると、化学反応により起電力が発生する。この状態において、燃料電池セル収容容器8から引き出されているバスバー80にインバータ54が接続されると、各燃料電池セル16から電力が取り出され、発電が行われる。
【0072】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、発電用の空気は、発電室10の中央に配置された酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射され、発電室10内を排気集約室18と内側円筒部材64の間の均等な隙間及び排気集約室18と酸化剤ガス噴射用パイプ74の間の均等な隙間を通って上昇する。このため、発電室10内の空気の流れは、ほぼ完全に軸対称の流れとなり、各燃料電池セル16の周囲には、ムラなく空気が流れる。これにより、各燃料電池セル16間の温度差が抑制され、各燃料電池セル16で均等な起電力を発生することができる。
【0073】
次に、
図7を参照して、固体酸化物型燃料電池装置1の燃料電池セル16と改質部94の配置関係について詳細に説明する。
図7は、固体酸化物型燃料電池装置1の燃料電池セル16と改質部94の配置関係を示す断面図である。環状部材である内側円筒部材64内に形成された発電室10は、略円筒形状の上下方向に延びる複数の燃料電池セル16を収容している。内側円筒部材64の外側には、同心円状に流路形成部材である中間円筒部材65及び外側円筒部材66が内側から順に配置され、これら流路形成部材の間に円環状の燃料ガス供給流路20が形成されている。燃料ガス供給流路20の流路方向は、中間円筒部材65と外側円筒部材66の間では下側から上側に向かい、上端部で折り返して、内側円筒部材64と中間円筒部材65の間では上側から下側に向かっている。
【0074】
改質部94は、内側円筒部材64と中間円筒部材65の間に設けられており、上下方向に延びるように円環状に改質触媒96を保持している。原燃料ガスと水蒸気の混合ガスは、改質部94を上側から下側へ通過し、通過時に改質触媒96によって改質される。
改質触媒96は、燃料電池セル16の中央部付近から排気集約室18のやや上方までの高さ方向の範囲に対応して、上下方向に延びるよう配置されている。改質触媒96の第1部分が、上下方向に延びる燃料電池セル16のうち、その中央部と上端部に位置し、改質触媒96の第2部分が、排気集約室18の側方及び斜め上方に位置する。改質触媒96は、発電室の10の下方に位置する燃料電池セル16の下端部の側方には配置されていない。
また、排気集約室18の天面及び複数の噴出口18dは、未反応の燃料ガスを燃焼させるオフガス燃焼部として機能する。改質触媒96の第2部分は、このオフガス燃焼部の側方にも位置する。
【0075】
次に、
図8〜
図10を参照して、改質部94による燃料電池セル16の温度低減作用について説明する。
図8は改質部94による温度低減作用がない場合の燃料電池セル16の温度分布の時間変化を示すグラフ、
図9は改質部94の温度分布の時間変化を示すグラフ、
図10は改質部94による温度低減作用がある場合の燃料電池セル16の温度分布の時間変化を示すグラフである。
【0076】
燃料電池セル16は、複数の円筒型の単セル16aが実質的に上下方向に連結されると共に、電気的に直列に接続されたものである。作動時に各単セル16aで発電反応が起こると発電熱が発生し、各単セル16aは高温状態に保持される。外部から発電室10内に供給された空気は発電熱により加熱され、発電室10内の上部に溜り易く、また、加熱された空気は排気集約室18の側方を通過して発電室10の上部から外部へ排出される。このため、発電室10は、下部よりも上部の方が高温雰囲気となる。
また、燃料電池セル16の内部の燃料ガス用通路を改質ガスが下方から上方へ向けて流れ、一方、燃料電池セル16の外部では酸化剤ガス(空気)が概ね下方から上方へ向けて流れるようになっている。つまり、改質ガスと空気とが同一方向へ流れる。したがって、燃料電池セル16における反応熱は、改質ガスと空気へ熱伝達された後、改質ガスと空気によって上方へ伝達されるため、燃料電池セル16の上部は高温になり易い。
さらに、オフガス燃焼部でのオフガスの燃焼熱が、排気集約室18を介して燃料電池セル16の上端部に伝達され、上端部付近の単セル16aが局所的に加熱され易い。
【0077】
このため、
図8に示すように、燃料電池セル16は、下側部分の単セル16aの温度よりも上側部分の単セル16aの温度の方が高くなる。
図8の破線a,b,cは、それぞれ燃料電池装置1の製品寿命の初期,中期,後期における代表的な燃料電池セル16の温度分布を示している。
図8では、各曲線において、燃料電池セル16の最下端部の単セル16aの温度よりも最上端部の単セル16aの温度が、60℃以上高くなっている。
【0078】
燃料電池セル16は、使用と共に発電性能が劣化していく。発電性能が劣化した燃料電池セル16で、劣化が進行していない使用開始当初と同一の発電量を維持するには、燃料電池セル16の温度を高めにして作動させなければならない。したがって、
図8では、使用期間が経過するに連れて燃料電池セル16の温度分布曲線が高温側へシフトしている。例えば、燃料電池セル16の上端付近の温度は、曲線aでは760℃であり、曲線cでは805℃であり、製品寿命の初期から後期にかけて45℃の温度上昇が生じる。
このように温度上昇が生じると、上側部分の単セル16aの劣化がさらに進行し易くなり、遂には最上端部の単セル16aが破損してしまう。
【0079】
一方、
図9に示すように、上下方向に延びる改質触媒96の温度分布は、極小部を有する曲線となる。
図9の曲線a,b,cは、
図8と同様に、それぞれ燃料電池装置1の製品寿命の初期,中期,後期における改質触媒94の温度分布を示している。改質部94は、排ガス排出流路21を通る排気ガス、発電室10からの伝導熱、オフガス燃焼部の燃焼熱によって、活性温度まで昇温される。しかしながら、改質触媒96における水蒸気改質反応が吸熱反応であるため、水蒸気改質反応が生じる部分で温度低下が生じる。
【0080】
改質部94の上下方向位置において、製品寿命の初期,中期,後期に、それぞれ上端部L1,中央部L2,下端部L3で水蒸気改質反応が主に生じる。上端部L1及び中央部L2が改質触媒96の第2部分であり、下端部L3が第1部分に相当する。すなわち、原燃料と水蒸気の混合ガスが改質部94に導入されると、使用初期には、混合ガスが上端部L1の改質触媒96と接触して改質され、改質された混合ガスは、中央部L2及び下端部L3の改質触媒96とほとんど反応せずに通り抜ける。したがって、使用初期には、主として上端部L1で改質反応が起こり、中央部L2及び下端部L3ではあまり改質反応が起こらない。
【0081】
一方、使用期間の経過に伴って、上端部L1の改質触媒96は徐々に劣化していく。このため、使用初期から使用中期に掛けて、混合ガスは、上端部L1で改質され難くなり、中央部L2で主として改質されるようになる。さらに、使用中期から使用後期に掛けて、混合ガスは、上端部L1及び中央部L2で改質され難くなり、下端部L3で主として改質されるようになる。このように、使用期間の経過に伴って、改質触媒96の反応する部位(すなわち、吸熱位置)が徐々に下方へ移動していく。換言すると、製品寿命の長さに対応させて、改質触媒96の上下方向長さが規定されており、使用初期から使用後期に掛けて吸熱位置が、改質部94の上端付近から下端付近へ徐々に移動するように設定されている。
図9では、曲線aでは吸熱位置(極小位置)が上端部L1に存在し、400〜500℃まで温度低下している。曲線bでは吸熱位置が中央部L2に存在し、曲線cでは吸熱位置が下端部L3に存在する。
【0082】
本実施形態では、改質触媒96を燃料電池セル16の側方に配置している。このため、温度低下した吸熱位置の改質触媒96は、燃料電池セル16の温度を低減するように作用する。
図10は、この改質触媒96の吸熱反応により温度が低減された燃料電池セル16の温度分布が示されている。曲線A,B,Cは、それぞれ製品寿命の初期,中期,後期における燃料電池セル16の温度分布である。なお、
図10には、
図8に示した破線a,b,cも併せて示されている。
【0083】
使用初期には、改質部94の上端部L1で改質反応が主に生じており、吸熱位置が上端部L1に存在する。上端部L1は、排気集約室18の上端部の側方位置及びそれよりも上方に位置しており、燃料電池セル16の側方位置には位置していない。このため、改質触媒96の上端部L1は、燃料電池セル16に対して吸熱作用をほとんど及ぼさない。したがって、曲線Aは、曲線aからほとんど変化が生じていない。すなわち、使用初期には、燃料電池セル16に対する改質触媒96による温度低減作用は機能しない。これにより、使用初期には、燃料電池セル16の温度を低下させることなく、燃料電池セル16で発電反応を生じさせている。
【0084】
一方、使用中期には、改質部94の中央部L2で改質反応が主に生じており、吸熱位置が中央部L2に存在する。中央部L2は排気集約室18の側部付近に位置している。このため、排気集約室18付近の温度を低下するように作用し、オフガス燃焼部から排気集約室18を介して燃料電池セル16の上端にオフガス燃焼熱が伝わり難くなる。したがって、燃料電池セル16の上端付近の単セル16aの温度が低下する。
【0085】
しかしながら、温度が低下した上端付近の単セル16aは、発電量が低下する。このため、制御装置(図示せず)は、燃料電池セル16全体による総発電量を維持するため、燃料電池セル16の温度又は発電室10の温度を高めに設定する。これにより、上端付近の単セル16aの温度は低下するが、他の単セル16aの温度は高くなる。すなわち、
図10の曲線Bでは、曲線bと比較して、上端部付近の温度が下がり、それよりも下方の部位の温度が僅かに上昇し、全体的に上下方向での温度差が小さくなっている。これにより、使用中期には、発電性能又は発電量を維持したまま、上端部付近の単セル16aの劣化促進を低減することができる。
【0086】
また、使用後期には、改質部94の下端部L3で改質反応が主に生じており、吸熱位置が下端部L3に存在する。下端部L3は燃料電池セル16の上端部の側部付近から中央部の側部付近に位置している。このため、燃料電池セル16の上端部から中央部の単セル16aの温度が低下する。
この温度低下により、上端部から中央部の単セル16aの発電量が低下するので、制御装置は、総発電量の維持のため、燃料電池セル16の温度又は発電室10の温度を高めに設定する。これにより、上端部から中央部の単セル16aの温度は低下するが、それよりも下方の単セル16aの温度は高くなる。すなわち、
図10の曲線Cでは、曲線cと比較して、上端部及び中央部付近の温度が下がり、下端部の温度が上昇している。これにより、使用後期においても、発電性能又は発電量を維持したまま、上端部付近の単セル16aの劣化促進を低減することができる。
【0087】
本実施形態では、改質器94の改質反応が吸熱反応であることを利用して、燃料電池セル16の上端部の温度上昇を抑制している。その際、改質部94の改質触媒96の劣化に伴って吸熱位置が移動していくことを利用し、劣化が最も進行し易い燃料電池セル16の上端部の温度上昇を効果的に抑制可能とするように、燃料電池セル16に対する改質部94の配置を最適化している。具体的には、上下方向に延びる改質部94は、燃料電池セル16の上側部分の側方に位置する第1部分と、第1部分の上側に位置し、燃料電池セル16の上端よりも上方に突出するように配置された第2部分とを有している。また、改質部94は、上側から下側に向けて(すなわち、第2部分から第1部分へ向けて)、原燃料と水蒸気の混合ガスが通過するように構成されている。
【0088】
本実施形態では、燃料電池セル16の上端よりも上方に第2部分を突出させ、使用初期には、この第2部分で改質触媒96に吸熱反応を生じさせることにより、改質部94の吸熱反応による温度低減作用が燃料電池セル16に大きく作用しないように構成されている。劣化が進行していない状態で燃料電池セル16の上端部の温度を低下させてしまうと、むしろ温度低下による破損のおそれがあるため、使用初期は改質部94によってセルユニット16が冷却され難くなるようにしている。
【0089】
一方、使用に伴って改質触媒96が劣化してくると吸熱位置が下方に移動してくるので、吸熱位置が燃料電池セル16の上端部の側方に近づき(すなわち、吸熱位置が第2部分の下側部分に移動)、又は、燃料電池セル16の上端部の側方に位置する(すなわち、吸熱位置が第1部分に移動)。これにより、劣化が進行しつつある燃料電池セル16の上端部の温度が低下し、上端部の劣化の進行を抑制することができる。なお、改質部94は、燃料電池セル16の上側部分より下方の部分の側方には配置されておらず、使用開始から製品寿命が終了するまでの間に吸熱位置が、燃料電池セル16の上側部分までしか移動せずに、使用中期から後期に掛けて、燃料電池セル16の上端部に対して温度低減作用を及ぼし続けるように設計されることが好ましい。このように、本実施形態では、燃料電池セル16の上端部の劣化進行を、燃料電池セル16に対する改質部94の配置の変更のみによって簡易に実現することができる。
【0090】
円筒型セル(横縞型セル)である単セル16aを上下方向に直列接続して構成した燃料電池セル16では、1つの単セル16aの電極破損が、燃料電池セル16全体の破損につながる。本実施形態では、上端部から中央部までの単セル16aの側方に改質部94を配置することにより、劣化が進行し易い部位に配置された単セル16aを効果的に冷却すると共に、下端部の単セル16aの過冷却を防止することができる。
【0091】
排気集約室18上面のオフガス燃焼部での燃料ガスの燃焼熱が、排気集約室18を介して燃料電池セル16の上端部へ伝わると、燃料電池セル16の上端部で部分的に過昇温が生じて、燃料電池セル16が破損するおそれがある。本実施形態によれば、排気集約室18の側方に改質部94の上側部分を位置させることにより、劣化が進行していない使用初期において、排気集約室18を伝わる燃焼熱を改質部94の吸熱反応で遮断することができる。これにより、使用初期において、燃焼熱によってセルユニット16の劣化が促進されることを防止することができる。
【0092】
本実施形態では、改質部94を燃料電池セル16の周囲を囲むように、環状の内側円筒部材64の全周にわたって配置することにより、燃料電池セル16の上端部を含む上側部分を周方向に均等に冷却することができる。これにより、燃料電池セル16の上端部付近における周方向の熱ムラを低減し、特定の燃料電池セル16に集中して劣化が進行することを防止することができる。