特許第6153089号(P6153089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153089廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
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  • 特許6153089-廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153089
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20170619BHJP
   F23G 5/24 20060101ALI20170619BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20170619BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   F23G5/50 FZAB
   F23G5/24 B
   F23L7/00 B
   F23N1/00 113Z
   F23G5/50 H
   F23G5/50 J
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-74876(P2014-74876)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-197240(P2015-197240A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】下村 昭夫
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−249279(JP,A)
【文献】 特開2005−274122(JP,A)
【文献】 特開2005−249310(JP,A)
【文献】 特開2006−207911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23G 5/24
F23L 7/00
F23N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉にバイオマスを供給するバイオマス供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
石炭コークス供給装置からの石炭コークス供給量、バイオマス供給装置からのバイオマス供給量及び吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
燃料供給制御装置は、バイオマス及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係になるように、バイオマス供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給するバイオマス供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークス以外の塊状燃料を供給する塊状燃料供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
塊状燃料供給装置からの塊状燃料供給量と吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、
燃料供給制御装置は、吹込み燃料の供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、吹込み燃料供給量を制御し、供給する吹込み燃料供給量に応じて塊状燃料供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項3】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉に低強度塊状燃料を供給する低強度塊状燃料供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
石炭コークス供給装置からの石炭コークス供給量、低強度塊状燃料供給装置からの低強度塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
低強度塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満、かつ最短径が20mm以上であり、
燃料供給制御装置は、低強度塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、低強度塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、相当する石炭コークス供給量を減ずることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項4】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともにバイオマスを供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹き込み、
バイオマス及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、バイオマス供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給するバイオマス供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項5】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークス以外の塊状燃料を供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹き込み、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、
吹込み燃料の供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、吹込み燃料供給量を制御し、供給する吹込み燃料供給量に応じて塊状燃料供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【請求項6】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに石炭コークス以外の塊状燃料を供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込み、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満、かつ最短径が20mm以上であり、
塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給する塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をシャフト炉式のガス化溶融炉内で熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼して、残留する灰分を溶融しスラグにして排出する廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその熱量を回収することができるとともに、灰分を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
このシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉下部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス床上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに残留する灰分を溶融してスラグにする処理を行なう炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の内部が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉下部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれでは酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。炉下部における高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、酸素富化空気が吹き込まれ、高温燃焼帯では投入されて堆積されたコークス床のコークスが燃焼して、灰分を溶融する溶融熱源となっている。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解及び部分酸化及びガス化させる。また、フリーボード部には三段羽口が設けられ、空気が吹き込まれ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持する。
【0007】
このようにシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解、ガス化され、ガスと灰分が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の灰分が溶融されスラグとメタルとして排出される。コークス床はコークス同士間に生ずる空隙で、主羽口からの酸素富化空気やコークス燃焼により発生した高温ガスを通ガスさせるとともに、溶融したスラグとメタルを通液させる高温火格子としても機能している。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解、ガス化され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出口より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出された排ガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に使用されるコークスとしては、例えば製鉄用コークスや鋳物用コークスに使用される緻密堅牢で高温強度が大きく、低反応性であり高温下でも塊状を保持する石炭コークスが、コークス同士の間隙を維持するため高温火格子として好適であり使用されている。
【0009】
このような廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して灰分の溶融熱源となっているが、近年、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することが要望されている。
【0010】
そこで、コークスの一部の代替として天然ガス、プロパンガス、廃棄物ガス化溶融炉にて熱分解により発生する可燃ガス等の燃料ガスを利用することが検討され、例えば、特許文献2では、コークス床へ酸素富化空気を吹き込む送風羽口から酸素富化空気とともに燃料ガスを吹き込み羽口先で燃焼させることが提案されている。
【0011】
また、石炭コークスの代替として建築廃材のおがくず等のバイオマスを加熱圧縮成形し炭化したバイオマス炭化物や木炭などの塊状バイオマス(両者をまとめてバイオマスという)を利用して、コークス使用量を削減する廃棄物溶融方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2001−090923
【特許文献3】特開2005−249310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
二酸化炭素排出量を削減することを目的として、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減するべく、特許文献2のようにコークスの一部の代替として燃料ガスを羽口から炉内へ吹き込むとしても、次のような問題がある。
【0014】
熱分解残渣の溶融熱源として、コークスが燃焼して供給する熱量の一部を燃料ガスの燃焼により代替しようとして羽口から燃料ガスを吹き込んでも、燃料ガスの一部が燃焼領域をすり抜けて燃焼せず上昇してしまい、熱源としての燃焼熱を確実に提供できないことがあり、燃料ガスの供給量をむやみに多くしても、コークスの使用量を低減する効果を高めることができない。また、羽口から炉内へ吹き込む燃料ガスの供給量の制御方法について十分な検討がなされていない。さらには、羽口から炉内へ吹き込む燃料として、燃料ガス以外に吹き込み可能な燃料についても、そしてその供給量の制御方法についても十分な検討がなされていない。
【0015】
また、二酸化炭素排出量を削減することを目的として、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減するべく、特許文献3のようにコークスの代替としてバイオマスを利用するとしても、次のような問題がある。すなわち、バイオマスは石炭コークスに比べて高温強度が低いため、炉内の高温下で細粒化してしまい炉下部の空隙を閉塞し、コークスにより得られる高温火格子としての機能が損なわれ、酸素富化空気と燃焼ガスの通気と、溶融スラグの通液の確保ができず、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の操業に支障を及ぼす事態がおこるという問題がある。
【0016】
また、廃棄物ガス化溶融炉の運転費削減を目的として、廃棄物ガス化溶融炉における高価な石炭コークスの使用量を低減するべく、石炭コークスの代替として石油コークス等の安価な塊状燃料を利用するとしても、次のような問題がある。すなわち、石炭コークスに比べて高温強度が低い塊状燃料を用いると、炉内の高温下で細粒化してしまい炉下部の空隙を閉塞し、コークスにより得られる高温火格子としての機能が損なわれ、酸素富化空気と燃焼ガスの通気と、溶融スラグの通液の確保ができず、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の操業に支障を及ぼす事態がおこるという問題がある。
【0017】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、代替燃料としてバイオマスや安価な塊状燃料を使用することや、羽口から燃料を炉内に吹き込むことにより、廃棄物ガス化溶融炉における石炭コークスの使用量を低減して、二酸化炭素排出量を削減する廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を実現するために、炉下部の空隙の閉塞を防止し、形成される高温火格子の機能が損なわれず安定した操業ができ、羽口から炉内へ吹き込む吹込み燃料及び炉上部から炉内へ投入する塊状燃料の供給を適正に制御することができる廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法は、次のように構成され、その作用効果は、下述する通りである。
【0019】
I.<廃棄物ガス化溶融装置>
I.(1)石炭コークスと共にバイオマスを用いる装置
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉にバイオマスを供給するバイオマス供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
石炭コークス供給装置からの石炭コークス供給量、バイオマス供給装置からのバイオマス供給量及び吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
燃料供給制御装置は、バイオマス及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係になるように、バイオマス供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給するバイオマス供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【0020】
本発明において、燃料供給制御装置が、さらに、吹込み燃料供給量、石炭コークス供給量及びバイオマス供給量を、主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御するようになっていることが好ましい。
【0021】
I.(2)石炭コークス以外の塊状燃料を用いる装置
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークス以外の塊状燃料を供給する塊状燃料供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
塊状燃料供給装置からの塊状燃料供給量と吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、
燃料供給制御装置は、吹込み燃料の供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、吹込み燃料供給量を制御し、供給する吹込み燃料供給量に応じて塊状燃料供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【0022】
本発明において、燃料供給制御装置が、さらに、吹込み燃料供給量と塊状燃料供給量を、主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御するようになっていることが好ましい。
【0023】
I.(3)石炭コークスと共に低強度塊状燃料と吹込み燃料を用いる装置
炉内の高温下で細粒化し炉下部の空隙を閉塞させるような塊状燃料は、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満の塊状燃料であり、このような低強度塊状燃料を用いる場合は、閉塞への対策が必要であることを見出した。また、もともと小さい塊状燃料は炉下部の空隙を閉塞させるため、塊状燃料のうち最短径が20mm未満、より好ましくは30mm未満の小粒径のものを除去した後に廃棄物ガス化溶融炉に投入することが好ましいことを見出した。また、除去した小粒径の塊状燃料を粉砕して粉体状とし吹込み粉体燃料として利用することが好ましい。
【0024】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融装置において、
廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給する石炭コークス供給装置と、石炭コークス以外の塊状燃料を供給する塊状燃料供給装置と、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込む吹込み燃料供給装置と、
石炭コークス供給装置からの石炭コークス供給量、塊状燃料供給装置からの塊状燃料供給量、吹込み燃料供給装置からの吹込み燃料供給量を制御する燃料供給制御装置とを備え、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満、かつ最短径が20mm以上であり、
燃料供給制御装置は、塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給する塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【0025】
本発明において、燃料供給制御装置が、さらに、吹込み燃料供給量、石炭コークス供給量及び塊状燃料供給量を、主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御するようになっていることが好ましい。
【0026】
II.<廃棄物ガス化溶融方法>
II.(1)石炭コークスと共にバイオマスを用いる方法
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともにバイオマスを供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹き込み、
バイオマス及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、バイオマス供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給するバイオマス供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【0027】
本発明において、さらに、石炭コークス供給量、バイオマス供給量及び主羽口への吹込み燃料供給量を主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御することが好ましい。
【0028】
II.(2)石炭コークス以外の塊状燃料を用いる方法
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークス以外の塊状燃料を供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹き込み、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であり、
吹込み燃料の供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、吹込み燃料供給量を制御し、供給する吹込み燃料供給量に応じて塊状燃料供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【0029】
本発明において、さらに、塊状燃料供給量と吹込み燃料供給量を、主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御することが好ましい。
【0030】
II.(3)石炭コークスと共に低強度塊状燃料と吹込み燃料を用いる方法
炉内の高温下で細粒化し炉下部の空隙を閉塞させるような塊状燃料は、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満の塊状燃料であり、このような低強度塊状燃料を用いる場合は、閉塞への対策が必要であることを見出した。また、もともと小さい塊状燃料は炉下部の空隙を閉塞させるため、塊状燃料のうち最短径が20mm未満、より好ましくは30mm未満の小粒径のものを除去した後に廃棄物ガス化溶融炉に投入することが好ましいことを見出した。また、除去した小粒径の塊状燃料を粉砕して粉体状とし吹込み粉体燃料として利用することが好ましい。
【0031】
シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、ガス化、燃焼し、残留する灰分を溶融する廃棄物ガス化溶融方法において、廃棄物ガス化溶融炉に石炭コークスを供給するとともに石炭コークス以外の塊状燃料を供給し、廃棄物ガス化溶融炉の下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹込み、
塊状燃料は熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満、かつ最短径が20mm以上であり、
塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御し、供給する塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量に応じて石炭コークス供給量を減じるように制御することを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【0032】
本発明において、さらに、吹込み燃料供給量、石炭コークス供給量及び塊状燃料供給量を、主羽口への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御することが好ましい。
【0033】
上述のI.(1)およびI.(3)の装置そしてII.(1)およびII.(3)の方法の場合、石炭コークスは、燃料となると同時に高温火格子形成としての機能をも有しており、高温火格子形成に必要な分だけについて石炭コークスを供給し、不足する燃料分については石炭コークスに代えてバイオマスまたは低強度塊状燃料を供給する。すなわち、バイオマスまたは低強度塊状燃料を石炭コークスの一部の代替として用いることにより、二酸化炭素排出量の削減または燃料コストの削減が可能である。しかし、特許文献3について前述したように、バイオマスまたは低強度塊状燃料は石炭コークスに比べて高温強度が低く、炉内で細粒化し易くコークス塊の間隙を閉塞して通気抵抗を増大させるため、単に石炭コークスの一部をバイオマスまたは低強度塊状燃料に置き換えただけでは酸素富化空気と燃焼ガスの通気性、溶融スラグの通液性を損ない、操業に支障を及ぼす場合が生じる。そこで本発明では、炉下部に酸素富化空気を吹き込む主羽口から吹込み燃料を吹き込む吹込み燃料供給装置を備え、炉下部にて石炭コークス、バイオマスまたは低強度塊状燃料とともに吹込み燃料を燃焼することとしている。
【0034】
吹込み燃料は気体燃料、液体燃料及び粉体燃料のうちの少なくとも一つが主羽口に吹き込む酸素富化空気と混合されて、炉内へ吹き込まれる。
【0035】
バイオマスはFAO(国際食料農業機関)によって分類されており、バイオマスとして、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材等の木質系バイオマス、稲わら、籾殻、草本系バイオマス、さらに、製紙系バイオマス、農業残渣、家畜糞尿、食品廃棄物等の未利用バイオマス資源等を挙げることができる。本発明では、これらのバイオマス、これらのバイオマスを原料として成形した成形物、これらのバイオマスを原料として乾留した炭化物をまとめてバイオマスという。
【0036】
本発明にて、石炭コークス、バイオマスまたは低強度塊状燃料と共に吹込み燃料を供給すると、次のように作用する。
【0037】
(i)炉頂から投入する石炭コークスの一部をバイオマスまたは低強度塊状燃料に置換すると、バイオマスまたは低強度塊状燃料が炉内で崩壊して細粒となりコークス塊の間隙を閉塞させる現象が生じるため、この閉塞が生じないようにするにはバイオマスまたは低強度塊状燃料の投入量をむやみに多くしないようにする必要があり、すなわち、これらの投入量に上限がある。炉頂から投入するバイオマスまたは低強度塊状燃料の投入量が上限となった場合、羽口から吹込み燃料を吹込めば、石炭コークスの供給量をさらに削減することができる。炉下部で石炭コークス、バイオマスまたは低強度塊状燃料とともに吹込み燃料を燃焼することにより、三者の燃焼による燃焼熱を溶融熱源として使用できる。その結果、コークス床でバイオマスまたは低強度塊状燃料の細粒物がコークス塊の間隙を閉塞することを防ぎ通気抵抗の増大を抑制する。これにより、炉下部での通気性と通液性が確保されコークス床が高温火格子として十分に機能することになる。
【0038】
(ii)炉下部での通気抵抗の増大を抑制することにより、主羽口から供給される酸素富化空気が炉下部内に十分に行き渡り、石炭コークス、バイオマスまたは低強度塊状燃料の燃焼が確実に行われ、炉下部内が均一に高温に維持される。また、石炭コークスとバイオマスまたは低強度塊状燃料と吹込み燃料が主羽口からの酸素富化空気により燃焼してその燃焼ガスと酸素富化空気が高温火格子を良好に上昇通気して、局所的な偏りを生じさせることなく均一に廃棄物を加熱して熱分解、燃焼させる。そして、石炭コークスとバイオマスまたは低強度塊状燃料と吹込み燃料の燃焼により、炉下部内が均一に高温に維持され、灰分を高温に加熱し溶融し、溶融物が良好に上記高温火格子を降下通液し炉底部に滴下する。
【0039】
このような構成における本発明によると高温火格子を形成する石炭コークスは元来有しているその塊状形状により、コークス塊同士間に生ずる空隙で通気確保と通液確保とが確実に行われる高温火格子とする機能と、灰分を溶融するためと廃棄物を熱分解するための熱源としての機能とをもつ。一方、バイオマスまたは低強度塊状燃料は、炉内で速やかに燃焼・ガス化されるため高温火格子を形成する機能は持たないが、一定の大きさを持ち最小限の崩壊で炉下部に到達するものは石炭コークスの熱量を補足する熱源としての機能をもつ。したがって、石炭コークスは高温火格子を形成するに必要な最小限の量で足り、熱源として不足する分はバイオマスまたは低強度塊状燃料と吹込み燃料で補うことができ、三者で十分な熱源を確保しつつ、最少量の石炭コークスで高温火格子層の形成を可能とする。
【0040】
本発明において、石炭コークスの炉内への投入量は、少なくとも高温火格子を形成することに必要な量とし、灰分を溶融するためと廃棄物を熱分解するための熱源として必要な熱量をバイオマスまたは低強度塊状燃料と吹込み燃料により補うこととすることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明において、燃料供給制御装置は、バイオマスまたは低強度塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、バイオマスまたは低強度塊状燃料及び吹込み燃料供給量を制御する。
【0042】
このようにすることにより、主羽口から吹込む酸素富化空気の酸素量に対して適正な供給量でバイオマスまたは低強度塊状燃料及び吹込み燃料を供給することができ、過剰に供給して燃料が燃焼せずに炉外に排出されることを防止でき、運転費用を低減できる。石炭コークスは、燃料として供給したバイオマスまたは低強度塊状燃料及び吹込み燃料が代替する分を減じて投入すればよい。
【0043】
さらに、本発明において、燃料供給制御装置により、石炭コークス、バイオマスまたは低強度塊状燃料及び吹込み燃料の供給について、主羽口送風圧に基づく制御そして排ガスの組成成分濃度に基づく制御が次のように行われる。
【0044】
(a)主羽口送風圧に基づく制御
炉下部内での間隙が閉塞され通気性が低下し通気抵抗が増加すると、主羽口から吹き込む酸素富化空気の送風圧力が増加する。炉下部内の通気性を監視するために主羽口送風圧力を計測しながら、適正な炉内通気性を確保して操業に支障を及ぼさないように、炉内の通気性が低下した場合に、それを検知し、適正な炉内通気性を確保するように、吹込み燃料、バイオマスまたは低強度塊状燃料、石炭コークスの供給量を制御する。
【0045】
(b)排ガスの組成成分濃度に基づく制御
炉下部内の通気性が低下し廃棄物の熱分解が安定して行われなくなったり、廃棄物の熱分解が炉内で不均一になると、排ガスの組成成分の濃度が変動する。廃棄物の熱分解が不安定になったり不均一になると、排ガス中の酸素濃度が増減し、CO濃度が増加する。これらの変動を検知して、炉下部内の通気状態を把握し、その状態に対応して適正な炉内通気性を確保するように、吹込み燃料、バイオマスまたは低強度塊状燃料、石炭コークスの供給量を制御する。
【0046】
このような本発明では、石炭コークスに代え塊状燃料を供給することも可能である。既述したように、石炭コークスは燃料として使用されると同時に高温火格子形成の機能を得ることを目的としているので、石炭コークスによらずとも燃料であり高温火格子を形成するような塊状燃料であればよい。使用可能な塊状燃料としてはバイオマス炭化物、木炭等が挙げられる。好ましくは、塊状燃料の熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上とするのがよい。
【0047】
次に、塊状燃料として要求される性状である上記熱間反応強度指標(CSR)について説明する。
【0048】
この熱間反応強度指標について具体的に説明する。熱間反応後強度指標(CSR)は、一般にコークス品質の指標の一つとして用いられる。
【0049】
炉内に装入後のコークスの挙動を考慮し、反応性を含めた強度を評価する方法として、熱間反応後強度(CO反応後強度、CSR)がある。これは、規定の条件下でCOと反応させた後の強度を測定するものであり、コークス品質の重要な指標であるとされている。
【0050】
この熱間反応後強度CSRの測定方法は、所定の粒度範囲に調整されたコークス試料を1100℃の温度でCOガスと一定時間反応させ、反応後のコークス試料を特定の試験装置に装入し、一定回転数(例えば、600回転)回転させた後、目開き10mmの篩により篩い分け、篩上に残るコークス重量の、試験装置に投入した反応後のコークス試料の重量に対する割合を上記熱間反応後強度(CO反応後強度、CSR)としているものである。すなわち、熱間反応後強度CSRは、CO2ガスと反応させた後のコークスが、特定の試験装置での回転によっても破壊されることなく残留している割合を示しており、CO2反応後のコークス強度を示す指標とされている。このCSRが高いほどコークス強度が大きいこと、換言すれば、熱間反応後強度指標(CSR)が低い場合は、CO反応後にコークスが破壊され粉状になる量が多くなることを意味する。
【0051】
このような熱間反応後強度指標(CSR)により、塊状燃料の熱間強度を下記のように評価する。
【0052】
塊状燃料を1100℃の温度でCOガスと2時間反応させ、20mmに整粒した後、I型ドラム試験装置で600回回転させた後、目開き10mmの篩により篩い分け、篩上に残る分の重量の、試験装置に投入した試料の重量に対する割合を熱間反応後強度指標CSR(10mm)とした。熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上となる強度を有する塊状燃料は、炉内に投入されて崩壊することなく炉下部に到達し、高温火格子を維持することができる。熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%未満の塊状燃料は、高温火格子の機能を持たないため、灰分を溶融するためと廃棄物を熱分解するための熱源として必要な熱量を補う燃料として利用するのがよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、以上のように、シャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉で廃棄物を熱分解し、熱分解残渣を溶融処理する際に、石炭コークスとバイオマスまたは低強度塊状燃料とを廃棄物ガス化溶融炉へ投入し、吹込み燃料を主羽口から吹き込むこととしたので、炉内では石炭コークスにより高温火格子が形成されるとともに、バイオマスまたは低強度塊状燃料を用いる場合のバイオマスまたは低強度塊状燃料の細粒物によりコークス間隙が閉塞され通気性と通液性に支障が生じるため、コークス使用量の削減に限界が生じるという問題を、吹込み燃料の燃焼による熱量を溶融熱源の一部として用いてさらにコークス使用量の削減を進めることにより、燃焼ガスと酸素富化空気の上昇通気、溶融物の降下通流が良好に保たれた状態で、高温火格子形成に必要な最小限量の石炭コークスと、これを補うバイオマスまたは低強度塊状燃料と吹込み燃料で、灰分の溶融と廃棄物の熱分解のための熱源を確保でき、石炭コークスの使用量を低減して、二酸化炭素排出量や燃料費を削減することができ、安定した操業ができる廃棄物ガス化溶融処理装置、ガス化溶融処理方法を提供することができる、という効果を得る。また、石炭コークスに代え塊状燃料を用いても、同様の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の一実施形態装置の概要構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置は、炉上部から石炭コークスと、バイオマスまたは石油コークスなどの低強度塊状燃料を燃料として供給し、主羽口から炉下部内へ酸素富化空気とともに吹込み燃料を吹き込むシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉と、その周辺装置とを備えているが、この廃棄物ガス化溶融装置についての説明に先立ち、これに用いられるシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成を説明する。また、以下の説明では、低強度塊状燃料を用いる場合について説明するが、バイオマスを用いる場合も同様の内容である。
【0056】
<シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成>
図1に示される本発明の一実施形態のシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉には、該廃棄物ガス化溶融炉1の炉上部に、処理対象物としての廃棄物、燃料としての石炭コークス及び低強度塊状燃料、生成されるスラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、廃棄物ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0057】
廃棄物ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、石炭コークス、低強度塊状燃料、石灰石をそれぞれ供給する廃棄物供給装置20、石炭コークス供給装置21、低強度塊状燃料供給装置22、石灰石供給装置23が配設されており、それぞれの供給装置21〜23から供給された石炭コークス、低強度塊状燃料、石灰石は搬送コンベアにより搬送され、廃棄物供給装置20からの廃棄物とともに炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。さらに、後述する主羽口から吹込み燃料を吹き込むための吹込み燃料供給装置24が配設されている。
【0058】
ガス排出口3には二次燃焼室10が接続して設けられており、廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを燃焼する。該二次燃焼室10は、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、この二次燃焼室10には、該二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が隣接して設けられている。
【0059】
このようなシャフト炉式の廃棄物ガス化溶融炉1では、炉内の内部空間が縦方向で四つの領域に区分されていて、下方から、コークス充填層A、移動層B、ガス化層C、フリーボード部Dが形成される。
【0060】
かかる廃棄物ガス化溶融炉1では、上記コークス充填層A及びガス化層Cのそれぞれで、羽口が設けられ酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。
【0061】
炉下部におけるコークス充填層Aには主羽口5が設けられていて、酸素富化空気が吹き込まれる。ガス化層Cには副羽口6が設けられ、空気が吹き込まれる。
【0062】
このような羽口を有する廃棄物ガス化溶融炉1内に石炭コークスと低強度塊状燃料が投入されると、この石炭コークスと低強度塊状燃料が炉下部に下降し、主羽口5から吹き込まれる酸素富化空気により石炭コークスと低強度塊状燃料が燃焼し、さらに、主羽口5から吹き込まれる吹込み燃料が燃焼し、三種の燃料が燃焼し発生する高温の燃焼ガスが廃棄物の熱分解の熱源となり、さらに、灰分を溶融する熱源となる。
【0063】
ガス化層Cには、副羽口6から空気が吹き込まれ、廃棄物を乾燥し、次いで熱分解及び部分酸化させ可燃分をガス化する。
【0064】
また、フリーボード部Dでは、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて炉内部を所定温度に維持する。
【0065】
<吹込み燃料供給装置、燃料供給制御装置>
このように構成され機能する廃棄物ガス化溶融炉1は石炭コークスとともに低強度塊状燃料そして燃焼ガスを適切に供給するための周辺装置として、次の吹込み燃料供給装置24と、燃料としての石炭コークス、低強度塊状燃料そして吹込み燃料の供給量を制御する燃料供給制御装置25とを備えている。
【0066】
吹込み燃料供給装置24は、主羽口5へ酸素富化空気と吹込み燃料の混合流体を炉内へ吹き込むために設けられた送気管に接続されており、該送気管には該吹込み燃料供給装置24に加え酸素富化空気供給装置(図示せず)が接続されている。
【0067】
酸素富化空気供給装置は、空気に酸素を混入して得られた酸素含有ガスとしての酸素富化空気を上記主羽口5の送気管に供給し、吹込み燃料供給装置24は、吹込み燃料を上記送気管に供給する。上記送気管内では、酸素富化空気と吹込み燃料とが混合されて混合流体が形成される。該送気管は、酸素富化空気と吹込み燃料とを羽口先から噴出する前に混合できる構成を有していればよく、例えば、単管、二重管、三重管等を用いることができる。
【0068】
吹込み燃料として天然ガス、プロパンガス、廃棄物ガス化溶融炉にて廃棄物の熱分解により発生する可燃性ガス等の燃料ガス、軽油、重油等の液体燃料及びバイオマス粉砕物、石油コークス粉、微粉炭等の粉体燃料を用いることができる。液体燃料、粉体燃料の場合、酸素富化空気流によく分散し混合流体となることが必要であり、粒径100μm以下であることが好ましい。
【0069】
また、低強度塊状燃料を供給する際には、目開き20mm、より好ましくは30mmの篩により分級し、篩上の大粒径分、すなわち、粒径が20mm以上、より好ましくは粒径が30mm以上の低強度塊状燃料の大粒径物を炉上部から低強度塊状燃料として供給し、篩下の小粒径分を粉砕した低強度塊状燃料の粉砕物を粉体燃料として主羽口5から供給するようにする。
【0070】
燃料供給制御装置25は、廃棄物ガス化溶融炉1に設けられたセンサからの信号にもとづき、石炭コークス供給装置21、低強度塊状燃料供給装置22、吹込み燃料供給装置24を制御すべくこれらの供給装置21,22,24に接続されている。上記センサとしては、主羽口5の送気管に設けられていて該主羽口5へ送気される酸素富化空気の送風圧を計測する圧力計26、ボイラ12の出口で排ガスの酸素濃度又はCO濃度を計測するガス濃度計27、主羽口5へ送気される酸素富化空気の流量を計測する流量計28が設けられている。
【0071】
このように、燃料供給制御装置25を設けることで、後に詳述するように、石炭コークス供給装置21からの石炭コークス供給量、低強度塊状燃料供給装置22からの低強度塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給装置24からの主羽口5への吹込み燃料供給量を、主羽口5へ送気される酸素富化空気の流量から算出した供給酸素量に基づき制御し、さらに、主羽口5への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御する。
【0072】
燃料供給制御装置25は、低強度塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、低強度塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御する。このようにすることにより、主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量に対して適正な供給量で低強度塊状燃料及び吹込み燃料を供給することができ、過剰に供給して燃焼せずに燃料が炉外に排出されることを防止でき、運転費用を低減できる。
【0073】
上記吹込み燃料供給装置24は、主羽口5への吹込み燃料供給量を調整するための吹込み燃料供給量調整装置(図示せず)を有している。該吹込み燃料供給量調整装置は、主羽口5への吹込み燃料の流量を調整するための流量調整バルブ又はダンパ(図示せず)を有していて、燃料供給制御装置25が、主羽口5における送風圧又は排ガスの組成成分濃度の計測値に応じて、吹込み燃料供給量調整装置の流量調整バルブ又はダンパの開度を調整することにより、吹込み燃料供給量を制御するようになっている。
【0074】
このように構成される本実施形態における廃棄物ガス化溶融炉装置では、廃棄物のガス化溶融処理は次の要領で行われる。その要領を、廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融と、周辺装置による燃料供給制御の順に説明する。
【0075】
<廃棄物ガス化溶融炉でのガス化溶融>
各供給装置20〜23からの廃棄物、石炭コークス、低強度塊状燃料及び石灰石が廃棄物ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5及び副羽口6から、それぞれ酸素富化空気と空気が炉内へ吹き込まれる。主羽口5からは、吹込み燃料供給装置24から供給される吹込み燃料と酸素富化空気との混合により得られた混合流体がコークス充填層Aに吹き込まれる。
【0076】
炉内に投入された石炭コークスと低強度塊状燃料は炉下部に下降し、石炭コークス、低強度塊状燃料、吹込み燃料が主羽口5から吹き込まれる酸素富化空気によって燃焼し、廃棄物の熱分解残渣を溶融する熱源を提供するとともに、発生した高温の燃焼ガスを上昇させ廃棄物の熱分解のために加熱する熱源を提供する。
【0077】
上記投入口2から投入された廃棄物は、炉内に堆積して廃棄物のガス化層Cを形成し、炉下部のコークス充填層Aから移動層Bを通過し上昇してくる高温の燃焼ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって加熱され、乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスを含む燃焼ガスは上昇し、可燃性ガスの一部がフリーボード部Dにて燃焼され、炉内部を所定温度に維持し、熱分解により発生した有害物とタール分を分解させる処理が施される。フリーボード部Dを通過したガスは炉上部に設けられた排出口より、炉外の二次燃焼室10へ排出される。ガスは可燃性ガスを多量に含んでいて二次燃焼室10で空気送風口11から空気を吹き込まれ燃焼され、ボイラ12で燃焼ガスから熱回収され蒸気を発生させ、その蒸気が発電等に用いられる。ボイラ12から排出されたガスは、サイクロン(図示せず)で比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置(図示せず)で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機(図示せず)で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突(図示せず)から大気に放散される。
【0078】
ガス化層Cで廃棄物は熱分解されてガスが生成され、さらに、熱分解により生じた固定炭素や灰分は、石炭コークス、低強度塊状燃料及び石灰石とともに下降し移動層Bを形成する。移動層Bでは、コークス充填層Aから上昇してくる高温のガスにより下降する固体の昇温が行われると同時に、高温のCOガスにより廃棄物の熱分解により生じた固定炭素がガス化される。コークス充填層Aでは主羽口5から送風される酸素富化空気により石炭コークス、低強度塊状燃料、吹込み燃料とガス化されずに残った廃棄物の固定炭素が燃焼され、この燃焼熱により廃棄物の灰分が溶融され溶融スラグと溶融メタルが生成される。石灰石は灰分が溶融されたスラグの性状を好ましいものとする調整材として働く。さらに、発生した高温の燃焼ガスが上昇し廃棄物の熱分解のために加熱する熱源となる。
【0079】
主羽口5から下方の炉下部では、高温になりながらも燃え尽きていない石炭コークスがコークス塊同士の間隙を保持して充填された状態でコークス充填層Aを形成しており、溶融スラグと溶融メタルはコークス塊同士の間隙を滴下し炉底に達する。溶融スラグと溶融メタルは炉底に達するまでに均質化され性状が安定化され、炉底に設けられた出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。主羽口5から送風される酸素富化空気と、石炭コークス、バイオマスと吹込み燃料と固定炭素の燃焼により発生した高温の燃焼ガスとは、コークス充填層Aから移動層Bを通過しガス化層Cへ上昇して廃棄物を加熱し、ガス化層Cの廃棄物が副羽口6から供給される空気により部分酸化、熱分解、ガス化される。コークス充填層Aでは、石炭コークス、低強度塊状燃料と吹込み燃料が燃焼して灰分溶融と廃棄物熱分解の熱源となり、石炭コークスが塊同士の間隙を保持して酸素富化空気と高温の燃焼ガスとを通気させ、溶融スラグと溶融メタルとを通液させる高温火格子の機能を有している。
【0080】
このように、廃棄物ガス化溶融炉1に石炭コークスと低強度塊状燃料を投入し、廃棄物ガス化溶融炉1の炉下部に石炭コークスと低強度塊状燃料を下降させ、廃棄物の灰分、固定炭素とともに移動層Bを形成し、主羽口5から吹込み燃料を酸素富化空気と混合した混合流体を吹き込むので、石炭コークスと低強度塊状燃料と吹込み燃料が燃焼して、廃棄物灰分を溶融する熱源と、廃棄物を熱分解する熱源となる。
【0081】
このような廃棄物のガス化溶融処理過程において、燃料としての石炭コークスと低強度塊状燃料のうち、石炭コークスは炉内への投入当初から塊状をなしており、炉下部で、石炭コークス塊同士間での隙間により、通気と通液を確保して高温火格子を形成する。低強度塊状燃料は石炭コークスに比べて高温強度が低いため、炉内の高温下で細粒化し低強度塊状燃料細粒物が炉下部に石炭コークスとともに存在するようになるが、主羽口5から混合流体をコークス充填層Aに吹き込み、吹込み燃料を燃焼することにより、廃棄物灰分を溶融する熱源と、廃棄物を熱分解する熱源とするため、低強度塊状燃料細粒物が移動層Bとコークス充填層Aの間隙を閉塞させないような低強度塊状燃料の供給量の限界範囲の下で低強度塊状燃料を供給できるので、石炭コークスの使用量を高温火格子の形成に必要な最小量まで削減することができる。
【0082】
移動層Bとコークス充填層A内の通気抵抗の増大を抑制することにより、主羽口5から供給される酸素富化空気が移動層Bとコークス充填層A内に十分に行き渡り、石炭コークス、低強度塊状燃料の燃焼が確実に行われ、移動層Bとコークス充填層Aが均一に高温に維持される。石炭コークスと低強度塊状燃料と吹込み燃料が主羽口5からの酸素富化空気により燃焼してその燃焼ガスが良好に上昇通気して、局所的な偏りを生じさせることなく均一に廃棄物を加熱して熱分解、ガス化、燃焼させる。そして、石炭コークスと低強度塊状燃料と吹込み燃料の燃焼により、移動層Bとコークス充填層Aが均一に高温に維持され、灰分を高温に加熱し溶融し、溶融物が良好に上記高温火格子を降下通液し炉底部に滴下することとなる。
【0083】
このような構成における本発明によると、高温火格子を形成する石炭コークスは元来有しているその塊状形状により、コークス同士間に生ずる空隙で通気確保と通液確保とが確実に行われる高温火格子とする機能と、廃棄物の熱分解と熱分解残渣の溶融のための熱源としての機能とをもつ。一方、低強度塊状燃料は、その高温強度が低くて細粒物となっても、吹込み燃料を用いることにより、低強度塊状燃料細粒物が移動層Bとコークス充填層Aの間隙を閉塞することを防止しながらコークス使用量の削減を進めることができる。低強度塊状燃料は、石炭コークスの廃棄物熱分解と熱分解残渣溶融のための熱量を補足する熱分解熱源と溶融熱源としての機能をもつ。したがって、石炭コークスは高温火格子を形成するに必要な最小限の量で足り、熱分解熱源と溶融熱源として不足する分は低強度塊状燃料と吹込み燃料で補うことができ、三者で十分な熱分解熱源と溶融熱源を確保しつつ、最少量の石炭コークスで高温火格子層の形成を可能とする。
【0084】
かくして、石炭コークスの使用量を極力抑制することができ、一方、低強度塊状燃料に関しては、篩い分けをして大きなものは炉頂から、小さなものは粉砕して羽口から吹き込むことによりその高温強度、形状、寸法に係りなく投入することができ、低価格の低強度塊状燃料でも燃料として使用することができるようになる。このようにして、石炭コークスの使用量を低減して二酸化炭素の排出量を抑制でき、廃棄物溶融炉の運転費を低減することができ、安定した操業ができる廃棄物の溶融処理ができる。
【0085】
<燃料供給制御方法>
燃料供給制御装置25は、廃棄物ガス化溶融炉1に設けられたセンサからの信号にもとづき、石炭コークス供給装置21、低強度塊状燃料供給装置22、吹込み燃料供給装置24を制御すべくこれらの供給装置21,22,24に接続されている。上記センサとしては、主羽口5の送気管に設けられていて該主羽口5へ送気される酸素富化空気の送風圧を計測する圧力計26、ボイラ12の出口で排ガスの酸素濃度又はCO濃度を計測するガス濃度計27、主羽口5へ送気される酸素富化空気の流量を計測する流量計28が設けられている。
【0086】
上記燃料供給制御装置25は、低強度塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aと、主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量BとがA/B<1の関係となるように、低強度塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量を制御するようになっている。主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量Bは流量計28により計測された酸素富化空気の流量から算出され、低強度塊状燃料及び吹込み燃料のそれぞれの供給量に対して燃焼させるために必要な酸素量の総和Aは、供給装置22,24から供給されるそれぞれの供給量から算出される。
【0087】
このようにすることにより、主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量に対して適正な供給量で低強度塊状燃料及び吹込み燃料を供給することができ、過剰に供給して燃焼せずに燃料が炉外に排出されることを防止でき、運転費用を低減できる。また、石炭コークス供給量は、供給する塊状燃料供給量及び吹込み燃料供給量に応じて減じるように制御する。
【0088】
上記燃料供給制御装置25による場合、まず、低強度塊状燃料の供給量を増加させながら主羽口送風圧力又は排ガス中の酸素濃度やCO濃度を計測して監視し、異常が生じない範囲の値に設定する。あらかじめ炉底に到達し熱源となる低強度塊状燃料の割合を把握しておき、相当する石炭コークス供給量を減ずる。次に吹込み燃料を増加させていき、予め定めた所定量として維持する。低強度塊状燃料及び吹込み燃料の供給量は、主羽口5から吹込む酸素富化空気の酸素量から算出される量を越えないように制御する。またあらかじめ羽口先で熱源として利用できる吹込み燃料の割合を把握しておき、相当する石炭コークス供給量を減ずる。炉内状況の変動は炉内通気性を指標とすることが好ましく、主羽口送風圧力又は排ガス中の酸素濃度やCO濃度を計測して監視する。主羽口送風圧力が低下せず、あるいは、排ガス中の酸素濃度が所定値以上にならず、又はCO濃度が所定値以下にならず、炉内通気性の悪化を解消できず、炉内状況を良好にできない場合には、低強度塊状燃料供給量を減少し石炭コークス供給量を増加するように制御し、低強度塊状燃料細粒物による閉塞を解消し通気性を回復させる。
【0089】
次に、石炭コークス供給量、低強度塊状燃料供給量及び主羽口5への吹込み燃料供給量を、炉内状況の変動を示す主羽口5への酸素富化空気の送風圧又は排ガスの組成成分濃度に応じて制御する燃料供給制御方法について詳しく説明する。
【0090】
(A)主羽口送風圧に基づく制御
炉下部の移動層Bとコークス充填層Aの通気性を監視するために主羽口送風圧力を計測しながら、適正な炉内通気性を確保して操業に支障を及ぼさないように、炉内の通気性が低下した場合に、それを検知し、適正な炉内通気性を確保するように、吹込み燃料、低強度塊状燃料、石炭コークスの供給量を制御する。
【0091】
主羽口送風圧力は、主羽口からコークス充填層Aに吹き込む酸素富化空気又は酸素富化空気と吹込み燃料との混合流体の送風圧力であり、主羽口5の送気管に設けられた圧力計26による計測値を用いる。
【0092】
この圧力計26により計測された主羽口送風圧の計測信号は燃料供給制御装置25に送られる。
【0093】
主羽口送風圧力を計測することにより、炉内通気性の良否を判定することができ、次のように制御する。なお、主羽口送風圧力は、短期的な変動の影響を避けるため、所定時間内における平均値を用いることが好ましい。
【0094】
主羽口送風圧力が所定値より増加している場合は、コークス充填層Aおよび移動層B内の通気抵抗が増加していることを示しているので炉内通気性が低下していると判定し、低強度塊状燃料供給量を減少し石炭コークス供給量を増加するように制御し、コークス充填層Aおよび移動層B内での低強度塊状燃料細粒物による閉塞を解消し、炉内通気性を回復させる。
【0095】
炉内通気性を回復させた後、吹込み燃料供給量を増加し、相当する石炭コークス供給量を減じてもよい。
【0096】
(B)排ガスの組成成分濃度に基づく制御
移動層Bとコークス充填層Aの通気性が低下し廃棄物の熱分解が安定して行われなくなったり、廃棄物の熱分解が炉内で不均一になると、排ガスの組成成分の濃度が変動する。廃棄物の熱分解が不安定になったり不均一になると、排ガス中の酸素濃度が増減し、CO濃度が増加する。これらの変動を検知して、移動層Bとコークス充填層Aの通気状態を把握し、その状態に対応して適正な炉内通気性を確保するように、吹込み燃料、低強度塊状燃料、石炭コークスの供給量を制御する。
【0097】
また、ボイラ出口又は煙突手前の排ガスの酸素濃度又はCO濃度をガス濃度計27で計測し、計測された濃度の計測信号は燃料供給制御装置25に送られる。ガス成分組成濃度を計測することにより、炉内通気性の良否を、次のように判定することができる。
【0098】
排ガスの酸素濃度が所定値より増加と減少を繰り返しながら変動している場合、又はCO濃度が所定値より増加している場合は、廃棄物の熱分解が十分に行われず不安定になっていることや、熱分解が不均一になっていることにより、二次燃焼が不安定になっていることを示しているので、炉内通気性が低下していると判定し、低強度塊状燃料供給量を減少し石炭コークス供給量を増加するように制御し、コークス充填層Aおよび移動層B内での低強度塊状燃料細粒物による閉塞を解消し、炉内通気性を回復させる。
【0099】
炉内通気性を回復させた後、吹込み燃料供給量を増加し、相当する石炭コークス供給量を減じてもよい。
【0100】
本発明では、既述したように、石炭コークスに代え熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上の塊状燃料を供給することも可能である。石炭コークスは燃料として使用されると同時に高温火格子形成の機能を得ることを目的としているので、石炭コークスによらずとも燃料であり高温火格子を形成するような塊状燃料であればよいということになる。使用可能な塊状燃料としてはバイオマス炭化物、木炭等が挙げられる。
【0101】
このような塊状燃料を石炭コークスに代えて用いると、炉下部の高温下で破砕せず塊形状を保ち高温火格子として機能でき、石炭コークスの代替として使用できるようになる。塊状燃料は、粒径が20mm以上、より好ましくは30mm以上であることが好ましい。その理由は、粒径が20mmより小さいと、炉内を下降する速度が遅く、炉下部に達する前に燃焼しガス化し消失してしまうからである。
【0102】
次に、一例として塊状燃料としてバイオマス炭化物を用いる場合について説明する。
【0103】
従来の石炭コークスのみを用いる運転の場合では、石炭コークスは炉下部での高温火格子形成と溶融熱源とに寄与している。石炭コークスの代替として塊状燃料を使用する場合、少なくとも高温火格子形成のための分の塊状燃料として、バイオマス炭化物を置き換えるためには、バイオマス炭化物は以下の性状のものを用いることが好ましい。すなわち、燃料比(固定炭素/揮発分)が10以上、望ましくは15以上、見掛密度0.9g/cm以上、望ましくは1.0g/cm以上、1個当りの重量が20g以上、望ましくは50g以上のバイオマス炭化物を用いることが好ましい。バイオマス炭化物の燃料比が10以上、望ましくは15以上であれば、固定炭素の比率が高く高温火格子を良好に形成できる。また、バイオマス炭化物の見掛密度が0.9g/cm以上、望ましくは1.0g/cm以上であれば、また、1個当りの重量が20g以上、望ましくは50g以上であれば、バイオマス炭化物は投入されてから炉内を速やかに下降し炉下部に到達し高温火格子を良好に形成できる。このようなバイオマス炭化物の形状は球状、円筒状、直方体状などいずれでもよい。炭化前のバイオマス原料は、バイオマスを適切な大きさに切断したものでも、破砕物を成形したものでも良い。なお、上記性状を持つバイオマス炭化物は、バイオマス原料に高温で長時間の管理された炭化処理を施し製造されたものであり、低温で短時間の条件下で生成する炭化物に比べて高密度で強度が高い。
【0104】
バイオマス炭化物の要求強度は、冷間強度としてドラム強度DI1530が50%以上で、熱間反応後強度指標CSR(10mm)が10%以上であればよい。このような強度を有するバイオマス炭化物は、炉内に投入されて崩壊することなく炉下部に到達し、高温火格子を維持することができる。
【0105】
ここで、ドラム強度については、JISK2151に規定があるコークスのドラム強度(DI)の試験方法で評価される。試料を規定のドラムに入れ、所定回転数で30回転させた後、15mmの篩上に残った重量%をドラム強度として表す。篩上が例えば60%残れば、DI1530=60と表記する。
【符号の説明】
【0106】
1 廃棄物ガス化溶融炉
5 主羽口
21 石炭コークス供給装置
22 低強度塊状燃料供給装置
24 吹込み燃料供給装置
25 燃料供給制御装置
A コークス充填層
図1