(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153090
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
F23G5/50 RZAB
F23G5/50 Q
F23G5/50 C
F23G5/50 G
F23G5/50 L
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-109817(P2014-109817)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-224822(P2015-224822A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】植竹 規人
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 江梨
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−69630(JP,A)
【文献】
特開平11−101421(JP,A)
【文献】
特開昭63−113215(JP,A)
【文献】
特開平1−114610(JP,A)
【文献】
特開2006−64300(JP,A)
【文献】
特開2004−239509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に廃棄物が投入されるホッパと、
上記ホッパから供給された廃棄物を燃焼するための燃焼室と、
該燃焼室内へ燃焼用空気を供給する空気供給手段と、
燃焼室からの排ガスを受け該排ガスとの熱交換により蒸気を発生させるボイラと、
燃焼室内での廃棄物の燃焼状態量としての焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を制御する燃焼制御手段とを備える廃棄物焼却炉において、
上記燃焼制御手段は、
廃棄物焼却炉での入出熱についての入出熱情報と燃焼室内での廃棄物の焼却状況を監視するための焼却状況監視情報とを上記焼却プロセス情報として取得する焼却プロセス情報取得部と、
前回投入された廃棄物の燃焼について焼却プロセス情報取得部により取得された上記入出熱情報及び該廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出し、該発熱量基準値と予め設定されたボイラでの目標蒸発量とに基いて廃棄物の目標焼却量を算出する目標焼却量算出部と、
燃焼室内への廃棄物供給量及び空気供給量の少なくとも一方を制御量として、上記目標蒸発量に基いて制御量基準値を算出する制御量基準値算出部と、
今回投入された廃棄物の燃焼中に焼却プロセス情報取得部により取得される焼却状況監視情報に基いて上記制御量基準値を補正する制御量基準値補正部と、
補正された制御量基準値に基いて操作端の操作量を算出する操作量算出部と、
ホッパ内での廃棄物の表面の高さ及びホッパヘ投入された廃棄物の投入量に基いて廃棄物の嵩密度を算出し、今回投入された廃棄物の嵩密度について前回の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出する廃棄物の質変化検出部とを備え、
上記目標焼却量算出部は、上記廃棄物の質変化検出部で廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値を補正することを特徴とする廃棄物焼却炉。
【請求項2】
廃棄物焼却炉は、燃焼室内で廃棄物を移動させる操作端としての火格子を備えており、燃焼制御手段は、火格子送り速度を操作量として、制御量としての廃棄物供給量を制御することとする請求項1に記載の廃棄物焼却炉。
【請求項3】
廃棄物焼却炉は、燃焼室内へ廃棄物を供給する操作端としての押出機を有しており、燃焼制御手段は、該押出機の移動速度を操作量として、制御量としての廃棄物供給量を制御することとする請求項1または請求項2に記載の廃棄物焼却炉。
【請求項4】
廃棄物焼却炉は、燃焼室内への燃焼用空気の供給量を調整する操作端としてのダンパを有しており、燃焼制御手段は、該ダンパの開度を操作量として、制御量としての空気供給量を制御することとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の廃棄物焼却炉。
【請求項5】
目標焼却量算出部は、前回の燃焼時に焼却プロセス情報取得部により取得された入出熱情報を用いて燃焼室とボイラにおける熱収支計算を行い、該熱収支計算の結果値及び前回の燃焼時の廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出することとする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の廃棄物焼却炉。
【請求項6】
制御量基準値補正部は、焼却プロセス情報取得部により取得された今回の燃焼時における、ボイラで得られる蒸発量、燃焼室内の温度、排ガス中の酸素濃度、排ガス中の一酸化炭素濃度及び排ガス中の窒素酸化物濃度のうちの少なくとも一つを焼却状況監視情報として、制御量基準値を補正することとする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の廃棄物焼却炉。
【請求項7】
燃焼制御手段は、燃焼室へ供給された廃棄物が主燃焼領域に到達したときに、補正された制御量基準値に基いた操作量に応じて操作端の制御を開始することとする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の廃棄物焼却炉。
【請求項8】
ホッパに投入された廃棄物を燃焼室で燃焼しボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法であって、
間欠的に外部から廃棄物をホッパに投入する廃棄物投入工程と、
上記ホッパから燃焼室へ廃棄物を供給するとともに、該燃焼室内へ燃焼用空気を供給して、該燃焼室内で廃棄物を燃焼させる廃棄物燃焼工程と、
燃焼室からの排ガスとの熱交換によりボイラで蒸気を発生させる蒸気発生工程と、
燃焼室内での廃棄物の燃焼状態量としての焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を制御する燃焼制御工程とを備える廃棄物焼却方法において、
上記燃焼制御工程は、
廃棄物焼却炉での入出熱についての入出熱情報と燃焼室内での廃棄物の焼却状況を監視するための焼却状況監視情報とを上記焼却プロセス情報として取得する焼却プロセス情報取得工程と、
前回投入された廃棄物の燃焼について焼却プロセス情報工程で取得された上記入出熱情報及び該廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出し、該発熱量基準値と予め設定されたボイラでの目標蒸発量とに基いて廃棄物の目標焼却量を算出する目標焼却量算出工程と、
燃焼室内への廃棄物供給量及び空気供給量の少なくとも一方を制御量として、上記目標蒸発量に基いて制御量基準値を算出する制御量基準値算出工程と、
今回投入された廃棄物の燃焼中に焼却プロセス情報取得工程で取得される焼却状況監視情報に基いて上記制御量基準値を補正する制御量基準値補正工程と、
補正された制御量基準値に基いて操作端の操作量を算出する操作量算出工程と、
ホッパ内での廃棄物の表面の高さ及びホッパヘ投入された廃棄物の投入量に基いて廃棄物の嵩密度を算出し、今回投入された廃棄物の嵩密度について前回の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出する廃棄物の質変化検出工程とを備え、
上記目標焼却量算出工程は、上記廃棄物の質変化検出工程で廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値を補正することを特徴とする廃棄物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパに投入された廃棄物を燃焼室で燃焼し、燃焼熱によりボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却炉及び該廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる廃棄物焼却炉では、低空気比で安定した燃焼が行われることが強く要求される。例えば、特許文献1には、廃棄物焼却炉の燃焼室内に高温ガスを吹き込むことにより、低空気比の下で安定燃焼を行うことが開示されている。
【0003】
このような廃棄物焼却炉では、通常、次に述べるような燃焼制御が行われている。焼却炉へ廃棄物を供給するホッパへ廃棄物を投入するタイミング毎に燃焼制御が行われていて、まず、燃焼制御しようとする投入タイミング(今回のタイミング)に先立つ前回のタイミングについて、ホッパに前回のタイミングに投入された廃棄物を焼却した際の実際の焼却処理量(廃棄物焼却量)と、該廃棄物を焼却した際に得られた廃棄物焼却炉における入出熱情報とに基いて発熱量基準値を算出する。次に、オペレータにより予め設定されたボイラでの目標蒸発量(蒸気量)と上記発熱量基準値とに基いて、今回のタイミングにホッパに投入された廃棄物の目標焼却量を算出する。
【0004】
次に、算出した目標焼却量を達成するために必要な制御量の基準値、例えば、燃焼室への廃棄物の供給量や空気の供給量についての基準値を算出する。算出された制御量基準値は、燃焼室内での燃焼状態を監視するために得られる焼却状況監視情報(例えば、炉内温度や排ガス中の酸素濃度等)に基いて短時間毎に補正される。そして、補正された制御量基準値に基いて操作端(例えば、燃焼室内で廃棄物を移動させる火格子や燃焼室への空気供給量を調整するためのダンパ等)を制御する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−239509
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
投入される廃棄物の質(廃棄物の種類、水分率、発熱量)が変動した場合には、この変動により焼却状況の変化が現れ、その結果炉内温度、排ガス酸素濃度が変化する。上述したような制御ロジックでは、炉内温度、排ガス酸素濃度の変化が検知されて初めて廃棄物の質の変動が検知され、この変動に応じた燃焼制御が開始される。したがって、廃棄物の質の変動に対して速やかに対処できず、この変動により燃焼状態が一時的に悪化してしまう。この悪化した燃焼状態を回復させるためには概ね1時間程度かかり、その間、排ガスに含まれている一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)等の有害物の排出量が増加するという問題が生じる。
【0007】
本発明では、このような事情に鑑みて、投入される廃棄物の質が変動した場合であっても、その変動に応じた燃焼制御を速やかに行うことにより安定した燃焼状態を良好に維持できる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、廃棄物焼却炉に関しては次の第一発明、廃棄物焼却方法に関しては次の第二発明により解決される。
【0009】
<第一発明>
第一発明に係る廃棄物焼却炉は、間欠的に廃棄物が投入されるホッパと、上記ホッパから供給された廃棄物を燃焼するための燃焼室と、該燃焼室内へ燃焼用空気を供給する空気供給手段と、燃焼室からの排ガスを受け該排ガスとの熱交換により蒸気を発生させるボイラと、燃焼室内での廃棄物の燃焼状態量としての焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を制御する燃焼制御手段とを備える。
【0010】
かかる廃棄物焼却炉において、本発明では、上記燃焼制御手段は、廃棄物焼却炉での入出熱についての入出熱情報と燃焼室内での廃棄物の焼却状況を監視するための焼却状況監視情報とを上記焼却プロセス情報として取得する焼却プロセス情報取得部と、前回投入された廃棄物の燃焼について焼却プロセス情報取得部により取得された上記入出熱情報及び該廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出し、該発熱量基準値と予め設定されたボイラでの目標蒸発量とに基いて廃棄物の目標焼却量を算出する目標焼却量算出部と、燃焼室内への廃棄物供給量及び空気供給量の少なくとも一方を制御量として、上記目標蒸発量に基いて制御量基準値を算出する制御量基準値算出部と、今回投入された廃棄物の燃焼中に焼却プロセス情報取得部により取得される焼却状況監視情報に基いて上記制御量基準値を補正する制御量基準値補正部と、補正された制御量基準値に基いて操作端の操作量を算出する操作量算出部と、ホッパ内での廃棄物の表面の高さ及びホッパヘ投入された廃棄物の投入量に基いて廃棄物の嵩密度を算出し、今回投入された廃棄物の嵩密度について前回の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出する廃棄物の質変化検出部とを備え、上記目標焼却量算出部は、上記廃棄物の質変化検出部で廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値を補正することを特徴としている。
【0011】
本発明に係る廃棄物焼却炉では、廃棄物の質変化検出部によって廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値が予め補正される、いわゆるフィードフォワード制御が行われるので、廃棄物の質の変化量に応じた燃焼制御を速やかに行うことができる。したがって、廃棄物の質の急激な変動により供給空気量が不足し燃焼が不活性となりCOの排出が増加したり、供給空気量が過剰となり燃焼が過活性となりNOxの排出が増加したりすることを、時間遅れが生じることなく抑制ことができ、安定した燃焼状態を良好に維持することができる。
【0012】
第一発明において、廃棄物焼却炉は、燃焼室内で廃棄物を移動させる操作端としての火格子を備えており、燃焼制御手段は、火格子送り速度を操作量として、制御量としての廃棄物供給量を制御することとしてもよい。
【0013】
第一発明において、廃棄物焼却炉は、燃焼室内へ廃棄物を供給する操作端としての押出機を有しており、燃焼制御手段は、該押出機の移動速度を操作量として、制御量としての廃棄物供給量を制御することとしてもよい。
【0014】
第一発明において、廃棄物焼却炉は、燃焼室内への燃焼用空気の供給量を調整する操作端としてのダンパを有しており、燃焼制御手段は、該ダンパの開度を操作量として、制御量としての空気供給量を制御することとしてもよい。
【0015】
第一発明において、目標焼却量算出部は、前回の燃焼時に焼却プロセス情報取得部により取得された入出熱情報を用いて燃焼室とボイラにおける熱収支計算を行い、該熱収支計算の結果値及び前回の燃焼時の廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出することとしてもよい。
【0016】
第一発明において、制御量基準値補正部は、焼却プロセス情報取得部により取得された今回の燃焼時における、ボイラで得られる蒸発量、燃焼室内の温度、排ガス中の酸素濃度、排ガス中の一酸化炭素濃度及び排ガス中の窒素酸化物濃度のうちの少なくとも一つを焼却状況監視情報として、制御量基準値を補正することとしてもよい。
【0017】
第一発明において、燃焼制御手段は、燃焼室へ供給された廃棄物が主燃焼領域に到達したときに、補正された制御量基準値に基いた操作量に応じて操作端の制御を開始することとしてもよい。このように上記操作端の制御を、廃棄物が主燃焼領域に到達したとき、すなわち廃棄物が燃焼に至るタイミングで開始することにより、廃棄物の質に応じた燃焼制御をより正確に行うことができる。また、燃焼室への空気供給量を操作量としている場合には、燃焼室に供給した燃焼用一時空気のうち燃焼に寄与しない余剰酸素量を低減して低空気比燃焼を実現することができる。
【0018】
<第二発明>
第二発明に係る廃棄物焼却方法は、ホッパに投入された廃棄物を燃焼室で燃焼しボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法であって、間欠的に外部から廃棄物をホッパに投入する廃棄物投入工程と、上記ホッパから燃焼室へ廃棄物を供給するとともに、該燃焼室内へ燃焼用空気を供給して、該燃焼室内で廃棄物を燃焼させる廃棄物燃焼工程と、燃焼室からの排ガスとの熱交換によりボイラで蒸気を発生させる蒸気発生工程と、燃焼室内での廃棄物の燃焼状態量としての焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を制御する燃焼制御工程とを備える。
【0019】
かかる廃棄物焼却方法において、本発明では、上記燃焼制御工程は、廃棄物焼却炉での入出熱についての入出熱情報と燃焼室内での廃棄物の焼却状況を監視するための焼却状況監視情報とを上記焼却プロセス情報として取得する焼却プロセス情報取得工程と、前回投入された廃棄物の燃焼について焼却プロセス情報工程で取得された上記入出熱情報及び該廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出し、該発熱量基準値と予め設定されたボイラでの目標蒸発量とに基いて廃棄物の目標焼却量を算出する目標焼却量算出工程と、燃焼室内への廃棄物供給量及び空気供給量の少なくとも一方を制御量として、上記目標蒸発量に基いて制御量基準値を算出する制御量基準値算出工程と、今回投入された廃棄物の燃焼中に焼却プロセス情報取得工程で取得される焼却状況監視情報に基いて上記制御量基準値を補正する制御量基準値補正工程と、補正された制御量基準値に基いて操作端の操作量を算出する操作量算出工程と、ホッパ内での廃棄物の表面の高さ及びホッパヘ投入された廃棄物の投入量に基いて廃棄物の嵩密度を算出し、今回投入された廃棄物の嵩密度について前回の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出する廃棄物の質変化検出工程とを備え、上記目標焼却量算出工程は、上記廃棄物の質変化検出工程で廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、ホッパに投入される廃棄物の嵩密度を算出し、今回投入された廃棄物の嵩密度について前回の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出し、該廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値を補正するようにした。したがって、このように発熱量基準値を実際に廃棄物の焼却が行われる前に補正しておくことにより、廃棄物の質の変化量に応じた燃焼制御を速やかに行うことができるので、安定した燃焼状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る廃棄物燃焼炉を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態における燃焼制御の流れを示すブロック図である。
【
図3】実施形態における燃焼制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る廃棄物燃焼炉を示す概略構成図である。本実施形態に係る廃棄物燃焼炉は、火格子を有する全連型(24時間連続運転)の火格子式廃棄物焼却炉であり、間欠的に外部から廃棄物が投入されるホッパ1と、該ホッパ1から供給された廃棄物を燃焼するための燃焼室2と、該燃焼室2内へ下方から燃焼用一次空気を供給する燃焼用一次空気供給手段3と、燃焼室2の後流側の二次燃焼領域に二次燃焼用空気を供給する二次燃焼用空気供給手段4と、燃焼室2からの排ガスを受け該排ガスとの熱交換により蒸気を発生させるボイラ5と、燃焼室2内での廃棄物の燃焼状態量としての後述の焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を制御する燃焼制御手段6とを備えている。ボイラ5の入口近傍が二次燃焼領域に相当する。
【0024】
ホッパ1は、クレーン(図示せず)によって投入された廃棄物を受ける。該ホッパ1の下部には、廃棄物を押し出して燃焼室2内へ供給する往復動可能な押出機7が設けられている。本実施形態では、該押出機7の移動速度によって燃焼室2内への廃棄物供給量が調整されるようになっている。また、ホッパ1の上部には、ホッパ1内での廃棄物の表面の高さ(レベル)を計測するための廃棄物レベル計8が設けられている。
【0025】
燃焼室2の下部には、燃焼室2内の廃棄物を下流側への移動させる火格子9a,9b,9c,9dが設けられている。該火格子9a〜9dは往復動することにより廃棄物を移動させるとともに、廃棄物の撹拌をも行う。以下、説明の便宜上、必要に応じて火格子9a〜9dを「火格子9」と総称する。また、燃焼室2には、該燃焼室2の側壁の略中央位置に燃焼室2内の温度を計測するための炉内温度計10が設けられている。
【0026】
燃焼用一次空気供給手段3は、火格子9a,9b,9c,9dの下方にそれぞれ風箱11a,11b,11c,11dを有しており、燃焼室2内へ下方から燃焼用一次空気を供給する。火格子9上のごみは、火格子9上を移動しながら、燃焼用一次空気により乾燥、燃焼、後燃焼が行われた後に灰となり、灰落下口16から外部に排出される。燃焼用一次空気は、燃焼用一次空気ブロア12により各風箱11a〜11dを介して火格子9a〜9dの下方から燃焼室2内に供給される。また、一次燃焼用空気の量は、一次燃焼用空気を供給する配管に設けられたダンパ13により調整される。また、各風箱11a〜11dのそれぞれに供給される一次燃焼用空気の量は、各風箱11a,11b,11c,11dに燃焼用一次空気を供給する各配管に設けられたダンパ13a,13b,13c,13dにより調整される。
【0027】
二次燃焼用空気供給手段4は、燃焼室2の後流側であるボイラ5の入口近傍の二次燃焼領域に二次燃焼用空気を供給する。該二次燃焼用空気は、燃焼用二次空気ブロア14により二次燃焼領域に供給される。二次燃焼用空気の量は、二次燃焼領域へ二次燃焼用空気を供給する配管に設けられたダンパ15により調整される。二次燃焼用空気が二次燃焼領域に供給されることにより、該燃焼室2内で燃焼しきれなかった燃焼ガス中の可燃性ガスが完全に燃焼される。
【0028】
二次燃焼した後の排ガスは、下流側のボイラ5での熱交換により熱エネルギーを回収され、さらに排ガス処理を施された後に、煙突17を通じて外部に排出される。本実施形態の廃棄物燃焼炉には、ボイラ5で発生した蒸気量を計測するための流量計18が設けられている。また、ボイラ5の出口部には排ガスに含まれる酸素(O
2)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO
X)のそれぞれの濃度を計測するための濃度計19が設けられている。
【0029】
燃焼制御手段6は、焼却プロセス情報に基づき各操作端の操作量を、例えばPID制御により制御する。本実施形態における燃焼制御においては、燃焼室内への廃棄物供給量及び空気供給量が制御量として設定されている。また、上記廃棄物供給量に対応する操作端は押出機7及び火格子9a〜9dであり、上記空気供給量に対応する操作端はダンパ13である。つまり、上記廃棄物供給量に対応する操作端の操作量は押出機7の移動速度及び火格子9a〜9dの送り速度であり、上記空気供給量に対応する操作端の操作量はダンパ13の開度である。
図1に見られるように、操作端としての押出機7、火格子9a〜9d及びダンパ13はそれぞれ燃焼制御手段6の後述の制御部23により制御されるようになっている。
【0030】
燃焼制御手段6は、後述の焼却プロセス情報を取得する焼却プロセス情報取得部20と、ホッパ1に投入された廃棄物の質の変化を検出する廃棄物の質変化検出部21と、焼却プロセス情報取得部20で取得された焼却プロセス情報及び廃棄物の質変化検出部21で算出された廃棄物嵩密度変化量に基いて操作端の操作量を算出する演算部22と、該演算部22で算出された操作量に基いて各操作端を制御する制御部23とを有している。
【0031】
また、演算部22は、廃棄物の燃焼についての発熱量(Hu)の基準値を算出し更に廃棄物の目標焼却量を算出する目標焼却量算出部24と、該目標蒸発量に基いて後述の制御量基準値を算出する制御量基準値算出部25と、該制御量基準値を補正する制御量基準値補正部26と、補正された制御量基準値に基いて各操作端の操作量を算出する操作量算出部27とを有している。
【0032】
焼却プロセス情報取得部20は、燃焼室2内での廃棄物の燃焼状態量としての焼却プロセス情報を取得する。該焼却プロセス情報としては、例えば、廃棄物焼却炉における入出熱についての入出熱情報、燃焼室2内での廃棄物の焼却状況を監視するための焼却状況監視情報が挙げられる。
【0033】
上記入出熱情報は、炉内へ持ち込まれる又は炉内で発生する熱エネルギーに関する入熱情報と、炉外へ持ち出される熱エネルギーに関する出熱情報とを含んでいる。入熱情報としては、例えば、廃棄物の燃焼による発熱量、廃棄物の顕熱、燃焼用空気の顕熱、炉内温度調整用空気の顕熱、炉内噴霧水の顕熱等が挙げられる。また、出熱情報としては、例えば、理論燃焼ガスの顕熱、過剰空気の顕熱、灰分による損失熱、未燃分による損失熱、燃焼室2及びボイラ5の放散熱量、ボイラ蒸気の顕熱等が挙げられる。また、上記焼却状況監視情報としては、例えば、ボイラでの蒸発量、燃焼室2内の温度(炉内温度)、排ガスO
2濃度、排ガスCO濃度、排ガスNO
X濃度等が挙げられる。この蒸発量、炉内温度、排ガスO
2濃度、排ガスCO濃度、排ガスNO
X濃度は、それぞれ流量計18、炉内温度計10そして濃度計19での計測値として得られる。
【0034】
以下、
図2を参照しながら、燃焼制御手段6による燃焼制御の流れを説明する。廃棄物の質変化検出部21は、廃棄物がホッパ1に投入された際に、廃棄物レベル計8で計測されたホッパ1内での廃棄物の表面の高さの増加分に対してホッパ1の断面積(水平方向形状の面積)を乗じることにより、ホッパ1内へ投入された廃棄物の体積を算出する。次に、廃棄物投入量(重量)を廃棄物体積で除して廃棄物の嵩密度を算出する。ここで、廃棄物投入量は、例えば、ホッパ1への廃棄物の投入の際、クレーンに設けられた重量計(図示せず)により計測される。次に、今回投入された廃棄物の嵩密度について、前回投入された廃棄物の嵩密度からの変化量を算出し、該変化量が所定の閾値を超えているときに、廃棄物の質が変化したことを検出する。
【0035】
目標焼却量算出部24は、まず、前回投入された廃棄物の燃焼について焼却プロセス情報取得部20により取得された入出熱情報及び該廃棄物の焼却量に基づいて、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出する。具体的には、目標焼却量算出部24は、前回の燃焼時に焼却プロセス情報取得部20により取得された入出熱情報を用いて燃焼室2とボイラ5における熱収支計算を行う。すなわち、焼却炉とボイラにおける総入熱量と総出熱量が等しいという熱収支が成立していることから、廃棄物の燃焼による発熱量が、取得された出熱情報の総和から廃棄物の燃焼による発熱量を除くその他の入熱情報を差し引いた熱量として算出される。さらに、この算出された廃棄物の燃焼による発熱量算出値を、前回の燃焼時における廃棄物の実際の焼却量で除することにより、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出する。次に、該目標焼却量算出部24は、既述の廃棄物の質変化検出部21によって廃棄物の質が変化したことが検出された場合には、該廃棄物の質変化検出部21で算出された嵩密度の変化量に基いて、上記発熱量基準値を補正する。さらに、目標焼却量算出部24は、算出あるいは補正された発熱量基準値とオペレータにより予め設定されたボイラでの目標蒸発量とに基いて、今回投入された廃棄物の燃焼について、目標蒸発量を達成するために必要な廃棄物の目標焼却量を算出する。
【0036】
制御量基準値算出部25は、目標焼却量算出部24で算出した目標焼却量に基づき導いた燃焼室内への廃棄物供給量及び燃焼用一次空気供給量を制御量として、上記目標蒸発量を達成するための制御量の基準値を算出する。
【0037】
制御量基準値補正部26は、今回投入された廃棄物の燃焼中に焼却プロセス情報取得部20により取得された焼却状況監視情報(蒸発量、炉内温度、排ガスO
2濃度、排ガスCO濃度、排ガスNO
X濃度)に基いて、制御量基準値算出部25で算出された上記制御量基準値、すなわち廃棄物供給量基準値及び空気量基準値をそれぞれ補正する。この制御量基準値の補正は、今回投入された廃棄物の燃焼中において短時間毎(例えば10秒毎)に行われる。このように制御量基準値を実際の焼却状況に応じてリアルタイムに補正することにより、正確な補正された制御量基準値に基いた燃焼制御が可能となる。
【0038】
操作量算出部27は、制御量基準値補正部26で補正された制御量基準値に基いて各操作端の操作量、すなわち押出機7の移動速度、火格子9の送り速度及びダンパ13の開度を算出する。制御部23は、操作量算出部27で算出された操作量に基いて各操作端の操作量を制御する。該操作端の制御は、燃焼室2へ供給された廃棄物が主燃焼領域に到達したときに開始されるのが好ましい。ここで、「主燃焼領域」とは、廃棄物の熱分解、部分酸化が行われて可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼するとともに廃棄物の固形分が燃焼する燃焼領域をいう。このように上記操作端の制御を、廃棄物が主燃焼領域に到達したとき、すなわち廃棄物が燃焼に至るタイミングで開始することにより、廃棄物の質に応じた燃焼制御をより正確に行うことができる。また、燃焼室2に供給する燃焼用一時空気のうち燃焼に寄与しない余剰酸素量を低減して低空気比燃焼を実現することができる。
【0039】
燃焼制御手段6がPID制御により各操作端を制御している場合において、廃棄物嵩密度の変化量が所定の閾値を超えたときには、燃焼制御手段6は、該変化量に応じて比例ゲインを調整することとしてもよい。このように比例ゲインを調整することにより、廃棄物発熱量の瞬時値の影響を一次的に高めて、廃棄物の質の急激な変化に対してより良好に追従することができる。
【0040】
次に、
図3に基いて、本実施形態における燃焼制御の動作を説明する。まず、オペレータが目標蒸発量を設定する(S1)。また、目標焼却量算出部24が、今回投入された廃棄物の燃焼についての発熱量基準値を算出する(S2)。このとき、廃棄物の質変化検出部21によって廃棄物の質の変化が検出され発熱量基準値の補正値が算出されている場合には、上記補正値に基いて上記発熱量基準値が補正される(S3)。
【0041】
次に、目標焼却量算出部24が、S1で設定された目標蒸発量とS2で算出されたあるいはS3で補正された発熱量基準値とに基いて、今回投入された廃棄物についての目標焼却量を算出する(S4)。次に、制御量基準値算出部25が、S4で算出された目標焼却量を達成するための制御量基準値を算出する(S5)。そして、今回投入された廃棄物の燃焼中、制御量基準値補正部26が、焼却状況監視情報に基づいて上記制御量基準値を補正する(S6)。
【0042】
次に、操作量算出部27が、S6で補正された制御量基準値に基いて各操作端の操作量を算出し、制御部23へ操作量を送信し(S7)、制御部23が、該操作量に基いて各操作端の操作量を制御する。次に、ホッパ1内へ新たに廃棄物が投入されたとき(S8のY)、廃棄物の質変化検出部21が、その新たに投入された廃棄物の嵩密度を算出する(S9)。一方、ホッパ1内へ新たに廃棄物が投入されていないときには(S8のN)、S6に戻り、制御量基準値の補正が継続される。
【0043】
S9にて廃棄物嵩密度が算出された後、廃棄物の質変化検出部21が、廃棄物嵩密度の変化量を算出する(S10)。そして、該変化量が所定の閾値を超えている場合、すなわち廃棄物の質の変化が検出された場合には(S11のY)、目標焼却量算出部24が、該変化量に応じて発熱量基準値の補正値を算出し(S12)、S2にて算出された発熱量基準値に対して、S3にて該補正値に基いて発熱量基準値を補正する。一方、該変化量が所定の閾値を超えていない場合、すなわち廃棄物の質の変化が検出されなかった場合には(S11のN)、目標焼却量算出部24は、発熱量基準値の補正値を算出しない。つまり、S2で算出された発熱量基準値は補正されない。
【0044】
本実施形態では、廃棄物の質変化検出部21によって廃棄物の質の変化が検出されたときに、算出された嵩密度の変化量に基いて発熱量基準値が実際に廃棄物の焼却が行われる前に補正される、いわゆるフィードフォワード制御が行われるので、廃棄物の質の変化量に応じた燃焼制御を速やかに行うことができる。したがって、廃棄物の質の急激な変動により供給空気量が不足し燃焼が不活性となりCOの排出が増加したり、供給空気量が過剰となり燃焼が過活性となりNOxの排出が増加したりすることを、時間遅れが生じることなく抑制することができ、安定した燃焼状態を良好に維持することができる。
【0045】
本実施形態では、各基準値や目標値は所定の値であることとしたが、これに代えて、所定の幅をもった基準範囲や目標範囲として設定してもよい。
【0046】
本実施形態では、廃棄物供給量及び一次燃焼用空気供給量の両方を制御量としたが、これに代えて、廃棄物供給量及び一次燃焼用空気供給量のいずれか一方を制御量としてもよい。
【0047】
本実施形態では、制御部23に制御される操作量が、押出機7の移動速度、火格子9の送り速度及びダンパ13の開度であることとしたが、これら全てが操作量であることは必須ではなく、これらのうち一部のみを操作量として設定してもよい。また、本実施形態では、制御量の一つである空気供給量について、ダンパ13の開度を制御することとしたが、これに代えてあるいはこれとともに、ダンパ13a、13b、13c、13dの開度を制御することとしてもよい。
【0048】
本実施形態では、焼却状況監視情報が、ボイラでの蒸発量、燃焼室2内の温度(炉内温度)、排ガスO
2濃度、排ガスCO濃度、排ガスNO
X濃度であることとしたが、これら全てが焼却状況監視情報として取得されることは必須ではなく、これらのうち一部のみが取得されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ホッパ
2 燃焼室
3 燃焼用一次空気供給手段
4 二次燃焼用空気供給手段
5 ボイラ
6 燃焼制御手段
7 押出機
9a,9b,9c,9d 火格子
13 ダンパ
20 焼却プロセス情報取得部
21 廃棄物の質変化検出部
24 目標焼却量算出部
25 制御量基準値算出部
26 制御量基準値補正部
27 操作量算出部