特許第6153105号(P6153105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153105
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-13688(P2013-13688)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-134528(P2014-134528A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長野 雅実
(72)【発明者】
【氏名】山岡 亮介
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】宇山 喜一郎
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−220982(JP,A)
【文献】 特開2008−188279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0074136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、前記放射線源からの放射線光軸を中心とする放射線ビームを空間分解能をもって検出する放射線検出器と、前記放射線ビーム内で被検体を相対回転させる回転テーブルを有し、前記回転テーブルによる回転中に前記放射線検出器で前記被検体の複数方向からの透過像を得るCT撮影を行い、得られた透過像から前記被検体のCT撮影領域内の3次元データを再構成するCT装置であって、
前記放射線源と前記放射線検出器及び前記被検体とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段による1つの移動位置においてCT撮影されて再構成された3次元データを基に作成した少なくとも1方向からの投影像を位置指定用画像として画像表示を行い、前記位置指定用画像中の所定の領域が目的CT撮影領域として入力されることにより、前記目的CT撮影領域を設定するROI設定部と、
前記設定された目的CT撮影領域がCT撮影されるような前記移動手段による移動量を計算する移動量計算部とを備えるCT装置。
【請求項2】
放射線源と、前記放射線源からの放射線光軸を中心とする放射線ビームを空間分解能をもって検出する放射線検出器と、前記放射線ビーム内で被検体を相対回転させる回転テーブルを有し、前記回転テーブルによる回転中に前記放射線検出器で前記被検体の複数方向からの透過像を得るCT撮影を行い、得られた透過像から前記被検体のCT撮影領域内の3次元データを再構成するCT装置であって、
前記放射線源と前記放射線検出器及び前記被検体とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段による1つの移動位置においてCT撮影されて再構成された3次元データを基に作成した少なくとも1方向からの投影像を位置指定用画像として画像表示を行い、前記位置指定用画像中の所定の領域が目的CT撮影領域として入力されることにより、前記目的CT撮影領域を設定するROI設定部と、
前記設定された目的CT撮影領域と、前記移動手段による前記放射線源、前記放射線検出器、前記被検体の移動位置の関係に基づいて、当該目的CT撮影領域を、前記放射線検出器によって得られる透過像の上に重畳して画像表示を行うROI重畳透過像表示部とを備えるCT装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記被検体を前記回転テーブル上で回転軸に直交する面に沿って移動させるXY機構と、前記回転テーブルを前記放射線光軸に沿って移動させるシフト機構とを有する請求項1または請求項2に記載のCT装置。
【請求項4】
前記位置指定用画像は、少なくとも、第1の方向からの投影像と、前記第1の方向と直交する第2の方向からの投影像あるいは前記第2の方向と直交する断面像である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のCT装置。
【請求項5】
前記位置指定用画像は、さらに、前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する第3の方向からの投影像あるいは前記第3の方向に直交する断面像を含む請求項4に記載のCT装置。
【請求項6】
前記ROI設定部は、前記目的CT撮影領域が設定された後にCT撮影して再構成した3次元データの少なくとも1方向からの投影像を、新たな位置指定用画像として表示することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非破壊検査装置の内のコンピュータ断層撮影装置(以下CT装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、小型電子部品等を高分解能で検査するための産業用の高分解能型CT装置が広く使用されている。
【0003】
図6に従来の高分解能型CT装置の構成を示す(例えば、特許文献1参照。)。X線管101と、ここから発生するコーン状のX線ビーム102を2次元の分解能で検出する検出器103が対向して配置され、このX線ビーム102中の被検体104の透過像を得るようにされている。断面像を撮影する場合は、回転テーブル105上の被検体を回転・昇降機構106により1回転させながら多数の透過像を得る(スキャンあるいはCT撮影と言う)。この多数の透過像をデータ処理部109で処理して被検体の撮影面119位置の断面像(1枚ないし多数枚)を得、表示部110に表示する。回転テーブル105および検出器103はシフト機構107によりX線管101に近づけたり遠ざけたりされ、撮影距離FCDと検出距離FDDが変更でき、目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変える。
【0004】
被検体の撮影位置の変更は被検体を回転軸118方向に昇降させて行なうが、1回の回転で撮影面を中心とした広い領域の断面像(3次元像)を得るボリュームスキャンが知られている。また、回転テーブル105を同時に回転および昇降させて、1回の撮影でさらに広い領域の断面像(3次元像)を得るヘリカルスキャンもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−62268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボリュームスキャンの断面像視野(CT撮影領域)は1回転の間に常に測定されるX線ビーム102に包含されている領域である。ヘリカルスキャンの場合は複雑であるので省略するが、断面像視野は存在する。
【0007】
この従来の高分解能型CTスキャナでは、断面像視野内に被検体104が収まるよう回転テーブル105上に目測で被検体104を固定していたが、断面像視野が小さいため被検体104を視野内に収めることが難しかった。特に被検体104の注目領域のみを断面像視野内に収めて良質の画像を得るROI(関心領域)スキャンにおいては被検体の固定は困難で、何度も固定の修正が必要であった。
【0008】
また、分解能の良い断面像を得るには断面像視野いっぱいに拡大して被検体の断面全体、あるいは注目箇所を撮影するのが良いが、こうするためには、断面像を撮りながら何度も固定の修正が必要であった。
【0009】
本発明の実施形態は、被検体の全部あるいはその着目する一部を容易に断面像視野内に収めることが可能なCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、実施形態のCT装置は、放射線源と、前記放射線源からの放射線光軸を中心とする放射線ビームを空間分解能をもって検出する放射線検出器と、前記放射線ビーム内で被検体を相対回転させる回転テーブルを有し、前記回転テーブルによる回転中に前記放射線検出器で前記被検体の複数方向からの透過像を得るCT撮影を行い、得られた透過像から前記被検体のCT撮影領域内の3次元データを再構成するCT装置であって、前記放射線源と前記放射線検出器及び前記被検体とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段による1つの移動位置においてCT撮影されて再構成された3次元データを基に作成した少なくとも1方向からの投影像を位置指定用画像として画像表示を行い、前記位置指定用画像中の所定の領域が目的CT撮影領域として入力されることにより、前記目的CT撮影領域を設定するROI設定部と、前記設定された目的CT撮影領域がCT撮影されるような前記移動手段による移動量を計算する移動量計算部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この構成で、仮撮影としての1回目のCT撮影で得られた3次元データを基に作成した位置指定用画像上で目的CT撮影領域を設定することのみで、自動的に被検体の任意の目的CT撮影領域を正確にCT撮影領域に合わせられるので、任意の部分の拡大像を容易に高分解能で得ることができる。
【0012】
また、少なくとも1方向からの投影像である位置指定用画像上で目的CT撮影領域を設定するので、被検体全体の形状を直感的に把握しつつ、目的CT撮影領域を設定することができる。
【0013】
また、実施形態のCT装置は、放射線源と、前記放射線源からの放射線光軸を中心とする放射線ビームを空間分解能をもって検出する放射線検出器と、前記放射線ビーム内で被検体を相対回転させる回転テーブルを有し、前記回転テーブルによる回転中に前記放射線検出器で前記被検体の複数方向からの透過像を得るCT撮影を行い、得られた透過像から前記被検体のCT撮影領域内の3次元データを再構成するCT装置であって、前記放射線源と前記放射線検出器及び前記被検体とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段による1つの移動位置においてCT撮影されて再構成された3次元データを基に作成した少なくとも1方向からの投影像を位置指定用画像として画像表示を行い、前記位置指定用画像の所定の領域が目的CT撮影領域として入力されることにより、前記目的CT撮影領域を設定するROI設定部と、前記設定された目的CT撮影領域と、前記移動手段による前記放射線源、前記放射線検出器、前記被検体の位置関係に基づいて、当該目的CT撮影領域を、前記放射線検出器によって得られる透過像の上に重畳して画像表示を行うROI重畳透過像表示部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成で、仮撮影である1回目のCT撮影で得られた3次元データを基に作成した位置指定用画像上で設定した目的CT撮影領域が、放射線源、放射線検出器及び被検体の位置関係に基づき、表示している透過像上における目的CT撮影領域に変換され、重畳表示される。また、放射線源、放射線検出器及び被検体の位置関係を移動するごとに透過像上の目的CT撮影領域を更新表示することで、操作者は、目的CT撮影領域の位置を直感的に把握しながら移動の位置合わせができ、容易に任意の目的CT撮影領域をCT撮影領域に合わせられるので、任意の部分の拡大像を容易に高分解能で得ることができる。
【0015】
また、実施形態のCT装置において、前記移動手段は、前記被検体を前記回転テーブル上で回転軸に直交する面に沿って移動させるXY機構と、前記回転テーブルを前記放射線光軸に沿って移動させるシフト機構とを有してもよい。
【0016】
また、実施形態のCT装置において、前記位置指定用画像は、少なくとも、第1の方向からの投影像と、前記第1の方向と直交する第2の方向からの投影像あるいは前記第2の方向と直交する断面像としてもよい。
【0017】
この構成で、位置指定用画像を直交2方向からの二面図として、投影像により被検体全体の形状を把握しつつ、断面像により部分的な詳細構造を把握しつつ、目的CT撮影領域を3次元的に設定することができる。
【0018】
また、実施形態のCT装置において、さらに、前記位置指定用画像は、前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する第3の方向からの投影像あるいは前記第3の方向に直交する断面像を含むようにしてもよい。
【0019】
この構成で、位置指定用画像を直交3方向からの三面図として、被検体の全体の形状を直感的に把握しつつ、目的CT撮影領域を3次元的に設定することができる。
【0020】
さらに、実施形態のCT装置において、前記ROI設定部は、前記目的CT撮影領域が設定された後にCT撮影して再構成した3次元データの少なくとも1方向からの投影像を、新たな位置指定用画像として表示してもよい。
【0021】
この構成により、被検体に対し、順次、CT撮影領域を絞り込んで行くことが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、被検体の全部あるいはその着目する一部を容易に断面像視野内に収めることが可能なCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一の実施の形態における構成図である。
図2】第一及び第二の実施の形態における位置指定用画像である。
図3】第一及び第二の実施の形態に係るROIを重畳表示した位置指定用画像である。
図4】第二の実施の形態に係るROIを重畳表示した透過像である。
図5】第一及び第二の実施の形態に係る本撮影で得られた3次元データのMPR表示である。
図6】従来の高分解能型CT装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の実施の形態の構成)
図1は第一の実施の形態における構成図である。
【0025】
X線管(放射線源)1と、X線管1の焦点Fから放射されたX線の一部であるX線光軸(放射線光軸)Lを中心とする角錐状のX線ビーム(放射線ビーム)2を2次元の空間分解能をもって検出する検出器(放射線検出器)3とが対向して配置され、検出器3は、X線ビーム2の中に置かれた被検体4を透過したX線ビーム2を検出し、透過像(透過データ)として出力する。X線管1および検出器3は対向してシフト機構7より支持されている。被検体4は回転テーブル5上にXY機構8を介して載置され、回転・昇降機構6でX線ビーム2内でX線光軸Lを含む面である撮影面19に直交する回転軸18に対して回転されるとともに撮影面19に直角に昇降される。また被検体4は回転テーブル5上でXY機構8で撮影面19に沿って2方向に動かされ、回転軸18に対して位置を変えることができる。回転テーブル5は被検体4とともに、シフト機構7によりX線管1と検出器3の間をX線光軸Lに沿って移動され、撮影距離(焦点−回転軸間距離)FCDが変更される。検出器3はシフト機構7によりX線光軸Lに沿って移動され、検出距離(焦点−検出器間距離)FDDが変更される。これにより撮影倍率FDD/FCDが変更される。
【0026】
X線管1は発生するX線ビーム2の焦点Fの大きさがμmのオーダーであるマイクロフォーカスX線管を用い、検出器3にはX線I.I.(像増強管)とテレビカメラのもの、あるいは、FPD(Flat Panel Detector)を用いている。
【0027】
検出器3からの透過像はデータ処理部9に送られ、処理結果等は表示部10に表示される。機構制御部11は機構部(回転・昇降機構6、シフト機構7、XY機構8)及びデータ処理部9に接続され、データ処理部9からの指令で機構部6、7、8を制御するとともにFCD値やFDD値等の機構部6、7、8のステータス信号をデータ処理部9に送る。機構制御部11はスリップリング13を通して回転テーブル5上のXY機構8に信号を送ってこれを駆動するので回転は同じ方向に何回でも回転できる。
【0028】
なお、機構制御部11及び機構部6、7、8は請求項の移動手段に相当する。
【0029】
CT撮影は、X線ビーム2内で被検体4を回転させ、検出器3で被検体4の複数方向の透過像を得る撮影であり、CT撮影で得られた透過像からデータ処理部9によりCT撮影領域(断面像視野)内の複数の断面像が再構成される。ここで、CT撮影領域は、通常のボリュームスキャンの場合、被検体4に対して、1回転の間に常に測定されるX線ビーム2に包含される領域である。
【0030】
データ処理部9と表示部10は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発メモリ)、入力部(キーボードやマウス)、インターフェース、等より成り、CT撮影のシーケンスやデータから断面像を再構成するソフトウエア等を記憶している。操作者はデータ処理部9と表示部10を用いて、メニュー選択や条件設定、機構部手動操作、透過像の動画表示、CT撮影の開始、装置のステータス読取、断面像の表示、断面像の解析、投影像の表示などを行なう。表示部10にはFCD、FDD値の表示も行われる。
【0031】
データ処理部9はCPUが実施する機能ブロックとして、CT撮影のスキャン制御部9a、断面像を作成する再構成部9bなどに加え、ROI設定部9c、移動量計算部9d等を有する。
【0032】
構成要素として、他に、X線管1の管電圧、管電流を制御するX線制御部12、図では省略されている高電圧発生器、X線の遮蔽箱などがある。
【0033】
(第一の実施の形態の作用)
図1を参照して、操作者は、まず、以下のように仮撮影としての1回目のスキャン(CT撮影)を行う。操作者は被検体4をXY機構8にのせ、X線をONし、被検体4の透過像を表示部10にリアルタイム動画表示させ、これを観察しながら回転・昇降機構6で被検体を昇降させて被検体を撮影面19に合わせ、さらに、管電圧、管電流、積分時間、ビュー数を設定する。ここで、積分時間は1透過像を検出する時間で、ビュー数は回転中の透過像の収集数である。1回目のスキャンは仮撮影であるので積分時間、ビュー数は小さく設定して撮影時間を短くする。また被検体が確実に断面像視野に入るよう撮影倍率(=FDD/FCD)は小さ目に設定する。
【0034】
操作者がスキャンを開始させるとデータ処理部9(のスキャン制御部9a)により回転テーブル5が回転され、1回転の間に透過像が収集され1回目のスキャンが完了する。1回目のスキャンにより360°方向で得られたビュー数分の透過像から(再構成部9bにより)X線ビーム2に包含される領域(CT撮影領域)が再構成され、記憶される。
【0035】
このとき、再構成部9bは回転軸18に直交し、回転軸18方向に等間隔で連続的にならんだ複数の断面像を再構成し、この複数の断面像は3次元データを形成する。1回目のスキャンで得られた3次元データはMPR(Multi−planer Reconstruction)表示等で表示部10に表示され得る。
【0036】
次に、操作者は、以下のように、仮撮影で得られた3次元データを利用して被検体の撮影部位を正確にCT撮影領域に合わせてから本撮影としての2回目のスキャンを行う。
【0037】
操作者は、ROI設定部9cにより、1回目のスキャンで得られた3次元データを用いて作成した位置指定用画像を表示部10に表示させる。
【0038】
図2は、第一の実施の形態における位置指定用画像である。位置指定用画像20はz方向の投影像20a、x方向の投影像20b、y方向の投影像20cの3つの投影像をならべた画像である。ROI設定部9cは3次元データを各方向に加算して投影像を作る。ここで、回転軸18の方向をz、X線光軸の方向をxとし、直交3軸x、y、zを設定している(図1参照)。
【0039】
なお、図2で、被検体4は、撮影倍率を小さくして撮影したので断面像視野21に比べて小さく、一般に中心(=回転中心)からずれている。
【0040】
操作者は、表示した位置指定用画像20に重畳させて、(ROI設定部9cにより)ROI(Region of Interest)22を重畳表示させ、マウスを使って、ROI22のサイズを変えるとともに移動させて被検体の着目箇所(目的CT撮影領域)に合わせる。ROI22の設定が終わると、ROI22が目的CT撮影領域を表し、目的CT撮影領域の設定が完了する。
【0041】
図3は、第一の実施の形態に係るROIを重畳表示した位置指定用画像である。図3は、被検体全体を着目箇所としてROIを設定した場合を示すが、ROIは被検体の一部でもよい。
【0042】
次に、操作者はX線をONし、被検体4の透過像を表示部10にリアルタイム動画表示させ、これを観察しながら、本撮影の位置決めを行うが、このとき「自動移動」を入力すると、データ処理部9(の移動量計算部9d)は、設定されたROI及び1回目のCT撮影を行ったときのX線管1、検出器3、被検体4の位置関係(FCDとFDD)に基づき、被検体4のROI(目的CT撮影領域)22がCT撮影されるような移動手段(11、6、7、8)の移動量を計算する。
【0043】
具体的には、移動量計算部9dは、まず、1回目のCT撮影時のFCD、FDD値から位置指定用画像20の画素サイズを求める。次に、移動量計算部9dは、ROI22位置の中央を回転中心C(回転軸18と撮影面19の交点)へ移動するための実空間でのx、y、zの移動量を位置指定用画像20の画素サイズに基づき計算して、XY機構8の移動量X、Y及び回転・昇降機構6の移動量Zを求める。さらに、移動量計算部9dは被検体4のROI22部の実空間でのサイズを位置指定用画像20の画素サイズに基づき計算してROI22部がCT撮影領域にちょうどおさまる撮影倍率となるFCD(またはFCD及びFDD)を計算する。
【0044】
次に、移動量計算部9dは、計算した移動量X、Y、Z、及びFCD(またはFCDとFDD)を機構制御部11に送信し、機構制御部11は受信した移動量に基づき、XY機構8、回転・昇降機構6、シフト機構7を制御して被検体4を移動させる。これにより、被検体4のROI22位置の中心が回転中心Cに合い、さらに、ROI(目的CT撮影領域)22が、スキャン中に常にX線ビーム2におさまる領域であるCT撮影領域にちょうどおさまる。
【0045】
ここで、機構制御部11及びXY機構8、回転・昇降機構6、シフト機構7が請求項の移動手段に相当する。
【0046】
次に、操作者は、本撮影用に管電圧、管電流、積分時間、ビュー数を設定し、スキャンを開始させる。スキャン制御部9aはスキャンを制御し、回転させながら透過像が収集される。1回目スキャンと同様に、再構成部9bにより、CT撮影領域内に設定した再構成領域内の3次元データが得られ、記憶される。この3次元データは、1回目のスキャンと同様にMPR表示等で表示部10に表示される。
【0047】
図5は、本撮影で得られた3次元データのMPR表示である。これは3方向の断面像をならべた表示で、左上が水平(xy面)断面、左下及び右上はz軸方向に沿った任意の方向の縦断面である。
【0048】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施の形態によれば、1回目のスキャンで得られた3次元データを基に作成した位置指定用画像20上でROI(目的CT撮影領域)22を設定することのみで、自動的に被検体4の任意の目的CT撮影領域を正確に断面像視野(CT撮影領域)に合わせられるので、任意の部分の拡大像を容易に高分解能で得ることができる。
【0049】
また、直交3方向からの投影像である位置指定用画像上でROI設定するので、投影三面図として被検体全体の形状を直感的に把握しつつ、目的CT撮影領域を3次元的に設定することができる。
【0050】
(第二の実施の形態の構成)
第二の実施の形態の構成は、図1に示す第一の実施の形態の構成から移動量計算部9dを省き、代わりに、ROI重畳透過像表示部9eを追加した構成である。ROI重畳透過像表示部9eは、データ処理部9内の構成で、CPUが実施する機能ブロックの1つである。
【0051】
(第二の実施の形態の作用)
第二の実施の形態においては、まず、第一の実施の形態と同様に、仮撮影としての1回目のスキャンを行い、3次元データを作成する。1回目のスキャンで得られた3次元データはMPR(Multi−planer Reconstruction)表示等で表示部10に表示され得る。
【0052】
次に、操作者は、以下のように、仮撮影で得られた3次元データを利用して被検体の撮影部位を正確にCT撮影領域に合わせてから本撮影としての2回目のスキャンを行う。
【0053】
操作者は、第一の実施の形態と同様に、ROI設定部9cにより、1回目のスキャンで得られた3次元データを用いて作成された位置指定用画像20を表示部10に表示させ(図2参照)、さらに、ROI設定部9cにより、表示した位置指定用画像20に重畳させて、ROI22を表示させ、マウスを使って、ROIサイズを変えるとともに移動させて被検体の着目箇所(目的CT撮影領域)に合わせ、ROI22を設定することで、目的CT撮影領域を設定する(図3参照)。
【0054】
図3では、被検体全体を着目箇所としてROIを設定した場合を示すが、第一の実施の形態と同様に、ROIは被検体の一部でもよい。
【0055】
次に、操作者はX線をONし、被検体4の透過像を表示部10にリアルタイム動画表示させ、これを観察しながら、本撮影の位置決めを行うが、このとき「透過像へのROI表示」を入力すると、データ処理部9(のROI重畳透過像表示部9e)は、設定したROI(目的CT撮影領域)22と、移動手段(機構部制御11と機構部6、7、8)によるX線管1、検出器3、被検体4の移動位置の関係に基づいてROI(目的CT撮影領域)をリアルタイム動画表示している透過像に重畳して表示する。
【0056】
具体的には、ROI重畳透過像表示部9eは、まず、仮撮影時のFCD、FDD値から位置指定用画像20の画素サイズを求める。次に、ROI重畳透過像表示部9eは、設定したROI22と、位置指定用画像20の画素サイズに基づき、仮撮影時のROI22の実空間での位置とサイズを求める。さらに、ROI重畳透過像表示部9eは、仮撮影時のROI22の実空間での位置とサイズ及び仮撮影時の(シフト機構7による)FCD、FDD、(XY機構8による)X、Y及び(回転・昇降機構6による)Zの各値と、現在のFCD、FDD、X、Y、Z(及び回転・昇降機構6による回転角φ)の各値に基づき、被検体4のROI22をリアルタイム動画表示している透過像上におけるROI30の位置とサイズに変換し、この変換により求めたROI(目的CT撮影領域)30を、リアルタイム動画表示している透過像31上に重畳して表示する。
【0057】
図4は、第二の実施の形態に係るROIを重畳表示した透過像である。ここでROI30は設定した目的CT撮影領域を表す。
【0058】
次に、操作者は、透過像上に重畳されたROI30を確認しながら、データ処理部9へ入力することで移動手段である機構制御部11、XY機構8、回転・昇降機構6、シフト機構7を手動操作し、所望の断面像を得るためのX線管1、検出器3及び被検体4間の相対的な位置決めを行う。このとき、ROI重畳透過像表示部9eは、透過像に重畳して表示したROI30を、X線管1、検出器3及び被検体4を相対的に移動(FCD、FDD、X、Y、Z、φを移動)させるごとに、そのサイズおよび位置を変換しなおして更新表示する。これにより、操作者がROI30が透過像表示画面をはみ出さないよう、ちょうどおさまるように移動の位置決めをすると、被検体4のROI(目的CT撮影領域)22が、スキャン中に常にX線ビーム2におさまる領域であるCT撮影領域にちょうどおさまる。
【0059】
次に、操作者は、本撮影用に管電圧、管電流、積分時間、ビュー数を設定し、スキャンを開始させる。スキャン制御部9aはスキャンを制御し、回転させながら透過像が収集される。1回目スキャンと同様に、再構成部9bにより、CT撮影領域内に設定した再構成領域内の3次元データが得られ、記憶される。この3次元データは、MPR表示等で表示部10に表示される。
【0060】
図5は、本撮影で得られた3次元データのMPR表示である。これは3方向の断面像をならべた表示で、左上が水平(xy面)断面、左下及び右上はz軸方向に沿った任意の方向の縦断面である。
【0061】
(第二の実施の形態の効果)
第二の実施の形態によれば、1回目のCT撮影で得られた3次元データを基に作成した位置指定用画像20上でROI(目的CT撮影領域)22を設定すると、設定した目的CT撮影領域がROI30としてリアルタイム動画表示している透過像に重畳表示される。また、X線管1、検出器3及び被検体4の位置関係を移動するごとに透過像上のROI30が更新表示されるので、操作者は、目的CT撮影領域の位置を直感的に把握しながら移動の位置合わせができ、容易に任意の目的CT撮影領域を断面像視野(CT撮影領域)に合わせられるので、任意の部分の拡大像を容易に高分解能で得ることができる。
【0062】
また、直交3方向からの投影像である位置指定用画像上でROI設定するので、投影三面図として被検体全体の形状を直感的に把握しつつ、目的CT撮影領域を3次元的に設定することができる。
【0063】
(第一および第二の実施形態の変形)
(変形1)第一及び第二の実施の形態の位置指定用画像20は直交3方向からの投影像をならべた画像であるが、任意の1方向あるいは任意の2方向については投影像のかわりに、その方向に直交する断面像を用いてもよい。
【0064】
この場合、投影像により、被検体4全体の形状を把握しつつ、断面像により部分的な詳細構造を把握しつつ、ROI設定することができる。
【0065】
(変形2)第一及び第二の実施の形態の位置指定用画像20は直交3方向からの投影像をならべた画像であるが、直交2方向からの投影像のみとしてもよい。たとえば回転軸18と直交するx方向及びy方向からの投影像を用いる。
【0066】
3次元的なROI設定は2方向あれば冗長なく設定できる(2方向でのROI設定が決まれば、残りの1方向のROI設定は自動的に決定される)ので、被検体4により、2方向で済ますことも可能で、効果としては3方向と同様である。
【0067】
また、この場合、2方向の投影像の一方を、この一方の方向に直交する断面像で置き換えてもよい。この場合、変形1と同様な効果を上げることができる。
【0068】
(変形3)第一及び第二の実施の形態の位置指定用画像20は直交3方向からの投影像をならべた画像であるが、1方向からの投影像のみとしてもよい。たとえば、回転軸18の方向(z方向)からの投影像のみとする。この場合は、ROI設定は2次元的に行う。
【0069】
これは、たとえば、投影する方向の寸法が小さく、あるいは観察したい位置が限定されていて位置合わせの必要がないような被検体4の場合に有効で、3方向の場合と同様な効果を上げることができる。
【0070】
(変形4)第一及び第二の実施の形態で、位置指定用画像20は直交3方向からの投影像をならべた画像であるが、必ずしも直交する必要はなく、また、3方向でなく、1,2方向あるいは4方向以上でもよい。また、投影像の任意の幾つかは、その方向と直交する断面像で置き換えてもよい。
【0071】
(変形5)第一及び第二の実施の形態における投影像は、3次元データを単純に1方向に加算した投影像でもよいが、他の処理を加えた投影像でもよい。
【0072】
たとえば、最大値投影(MIP)像や最小値投影(MinIP)像でもよければ、3次元データに透明度を割り当ててから投影する半透明投影像でもよく、また、被検体の表面を陰影表示する表面投影像であってもよい。
【0073】
(変形6)第一及び第二の実施の形態で、本撮影(2回目のスキャン)で得られた3次元データを用いて、再度、位置指定用画像20を作成し、この位置指定用画像20を用いて位置設定して、次のCT撮影を行うことができ、さらに、これを繰り返すことができる。これにより、被検体4に対し、順次、CT撮影領域を絞り込んで行く使い方が可能である。
【0074】
(変形7)第一の実施の形態において、機械的干渉のためFCDが移動量計算部9dで計算したFCD位置まで短縮できない場合、できるだけ短縮した位置でスキャンすることで最善の画像が得られる。
【0075】
(変形8)第一及び第二の実施の形態では、1回目及び2回目のCT撮影として1回転の回転を行うボリュームスキャンを実施しているが、これに限られることはなく、他のCT撮影方法でもよい。たとえば、ヘリカルスキャンやハーフスキャンやオーバースキャンやオフセットスキャンでもよく、1回目と2回目のCT撮影方法が異なっていてもよい。ハーフスキャンとオーバースキャンはボリュームスキャンの回転角をそれぞれ1回転未満、1回転以上としたもので、CT撮影領域はボリュームスキャンと同じである。オフセットスキャンは、回転軸18をX線ビーム2の端部にオフセットした位置で1回転させるスキャンで、オフセットスキャンのCT撮影領域は、回転軸18を中心として、片側がX線ビーム2に包含される円柱状の領域である。
【0076】
(変形9)第一の実施の形態は、被検体4を固定してX線管1と検出器3が回転するCT装置に対しても適応可能である。この場合のFCD変更は被検体4を移動させてもX線管1と検出器3を移動させてもよい。
【0077】
また、この場合、XY機構8による被検体の移動は相対的でよく、X線管1と検出器3が移動してもよい。
【0078】
(変形10)第一及び第二の実施の形態で、機構部の動きは全て相対的でよい。すなわち、被検体4とX線ビーム2との間の相対的な動きが同じであるような動きであればよい。
【0079】
たとえば、回転・昇降機構6は被検体4を回転・昇降させるかわりにX線管1と検出器3を回転・昇降させてもよい。
【0080】
また、たとえばシフト機構7はFCDとFDDを任意に変えることができればよく、X線管1、回転軸18、検出器3のいずれかを動かしてもよい。
【0081】
また、たとえばXY機構8は回転軸18と被検体4の間の回転軸18と直交する2方向での位置関係を変えることができればよく、回転軸18と被検体4のどちらを動かしてもよい。
【0082】
(変形11)第一及び第二の実施の形態で、ROI設定部9cは、円柱状のROI22を設定しているが、ROIの形状はこれには限られない。例えば直方体あるいは球としてもよい。
【0083】
(変形12)第二の実施の形態で、移動量計算部9dを省いているが、省かなくてもよい。この場合は、本撮影を行う際に、操作者の選択により、「自動移動」と「透過像へのROI表示」の両方を実施できる。
【0084】
(変形13)第一及び第二の実施の形態では、放射線としてX線を用いているが、他の透過性の放射線を用いてもよい。例えば、γ線、超音波、マイクロ波などでもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…X線管、2…X線ビーム、3…検出器、4…被検体、5…回転テーブル、6…回転・昇降機構、7…シフト機構、8…XY機構、9…データ処理部、9a…スキャン制御部、9b…再構成部、9c…ROI設定部、9d…移動量計算部、9e…ROI重畳透過像表示部、10…表示部、11…機構制御部、12…X線制御部、13…スリップリング、18…回転軸、19…撮影面、20…位置指定用画像、20a…z方向の投影像、20b…x方向の投影像、20c…y方向の投影像、21…断面像視野、22…ROI、30…ROI、31…透過像、101…X線管、102…X線ビーム、103…検出器、104…被検体、105…回転テーブル、106…回転・昇降機構、107…シフト機構、109…データ処理部、110…表示部、111…機構制御部、112…X線制御部、118…回転軸、119…撮影面
図1
図2
図3
図4
図5
図6