特許第6153124号(P6153124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153124
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20170619BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20170619BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20170619BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20170619BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20170619BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170619BHJP
   H01M 4/137 20100101ALI20170619BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M10/058
   H01M4/60
   H01M4/62 Z
   H01M4/137
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-272378(P2012-272378)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-120227(P2014-120227A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】武 弘義
(72)【発明者】
【氏名】加治佐 由姫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正男
(72)【発明者】
【氏名】植谷 慶裕
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−289757(JP,A)
【文献】 特開2000−082496(JP,A)
【文献】 特開2008−251523(JP,A)
【文献】 特開2007−294374(JP,A)
【文献】 特開2012−186011(JP,A)
【文献】 特開2004−095426(JP,A)
【文献】 特開2012−074167(JP,A)
【文献】 特開2013−145712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/137
H01M 4/60
H01M 4/62
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極と、上記正極と上記負極の間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する支持塩を含む電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が導電性ポリマーとポリカルボン酸金属塩(a)とを含有する正極活物質含有層を有する複合体を含み、上記正極を構成する導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリピロール、およびポリピロール誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記ポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方であり、上記ポリカルボン酸金属塩(a)が導電性ポリマー100重量部に対して1〜100重量部であり、上記負極がリチウムイオンを挿入・脱離しうる炭素質材料を含み、上記電解液が負極被膜形成剤を含むことを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
上記電解液が、支持塩として六フッ化リン酸リチウムを含有する請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
上記導電性ポリマーが分子構造中に窒素原子を含有する、または正極が、さらに窒素源となるものを有する請求項1または2記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
上記電解液中の負極被膜形成剤が、下記式(1)で表されるビニレンカーボネートおよび下記式(2)で表されるフルオロエチレンカーボネートの少なくとも一方である請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【化1】
【化2】
【請求項5】
上記電解液中の負極被膜形成剤の含有割合が、電解液100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
上記(a)ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアスパラギン酸、およびポリグルタミン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池の製造方法であって、下記(I)〜(III)の工程を備えることを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
(I)正極と負極とを準備し、両者の間に、セパレータを配置し、正極、セパレータおよび負極からなる積層体を作製する工程。
(II)電池容器内に上記積層体を少なくとも一つ収容する工程。
(III)上記電池容器内に、電解液を注入する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池およびその製造方法に関し、詳しくは重量エネルギー密度に優れるとともに、電池性能の劣化を効果的に抑制する非水電解液二次電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等における電子技術の進歩、発展に伴い、これら電子機器の蓄電デバイスとして、繰り返し充放電することができる二次電池等が広く用いられている。
【0003】
二次電池のなかでも、電極活物質として正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムのようなリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素質材料を用いる二次電池は、その充放電時に電解液中のリチウムイオン濃度が実質的に変化しない所謂ロッキングチェア型のリチウムイオン二次電池として、広く用いられている。このロッキングチェア型の二次電池は、所謂リザーブ型の二次電池に比べて、電解液量を低減することができることから小型化が可能になり、また小型でありながらも高エネルギー密度を有することから、上述した電子機器の蓄電デバイスとして広く用いられているのである。
【0004】
しかし、上記リチウムイオン二次電池は、電気化学反応によって電気エネルギーを得る二次電池であって、上記電気化学反応の速度が小さいために、出力密度が低いという欠点がある。さらに、二次電池の内部抵抗が高いため、急速な放電は困難であるとともに、急速な充電も困難となっている。また、充放電に伴う電気化学反応によって電極や電解液が劣化するため、一般に寿命、すなわち、サイクル特性もよくない。
【0005】
そこで、上記の問題を改善するため、ドーパントを有するポリアニリンのような導電性ポリマーを正極活物質に用いる非水電解液二次電池も知られている(特許文献1)。しかしながら、一般に、導電性ポリマーを正極活物質として有する二次電池は、充電時には正極のポリマーにアニオンがドープされ、放電時にはそのアニオンが正極のポリマーから脱ドープされるアニオン移動型であるため、前述したようなロッキングチェア型の二次電池を構成することができない。したがって、導電性ポリマーを正極活物質に用いた非水電解液二次電池は、基本的に多量の電解液を必要とし、結果、電池の小型化に寄与することができないという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、正極に、ポリビニルスルホン酸のようなポリマーアニオンをドーパントとして有する導電性ポリマーを用いて、カチオン移動型とし、電解液中のイオン濃度が実質的に変化しないようにした二次電池も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−129679号公報
【特許文献2】特開平1−132052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2の二次電池は、負極にリチウム等の金属を用いている。一般に、リチウムイオン二次電池においては、安全性やサイクル特性の観点から、負極にリチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素質材料を用いることが望ましいと考えられており、このことは、正極に導電性ポリマーを用いた非水電解液二次電池の場合も同様であることから、上記特許文献2の二次電池においてはこの点が問題視されている。
【0009】
そこで、本発明者らは、正極に導電性ポリマーを用い、負極に炭素質材料を用いた非水電解液二次電池に関する各種研究・実験を予てから行っており、その過程において、上記構造の非水電解液二次電池において問題となっている電池性能の劣化の改善に努めた。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、正極に導電性ポリマーを用い、負極に炭素質材料を用いた非水電解液二次電池であって、重量エネルギー密度に優れるとともに、電池性能の劣化を効果的に抑制することができる非水電解液二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、正極と負極と、上記正極と上記負極の間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する支持塩を含む電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が導電性ポリマーとポリカルボン酸金属塩(a)とを含有する正極活物質含有層を有する複合体を含み、上記正極を構成する導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリピロール、およびポリピロール誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記ポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方であり、上記ポリカルボン酸金属塩(a)が導電性ポリマー100重量部に対して1〜100重量部であり、上記負極がリチウムイオンを挿入・脱離しうる炭素質材料を含み、上記電解液が負極被膜形成剤を含む非水電解液二次電池を第一の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、上記第一の要旨である非水電解液二次電池の製造方法であって、下記(I)〜(III)の工程を備える非水電解液二次電池の製造方法を第二の要旨とする。(I)正極と負極とを準備し、両者の間に、セパレータを配置し、正極、セパレータおよび負極からなる積層体を作製する工程。
(II)電池容器内に上記積層体を少なくとも一つ収容する工程。
(III)上記電池容器内に、電解液を注入する工程。
【0013】
すなわち、導電性ポリマーを含む高分子正極は、出力密度に優れるなどの特徴を有するが、導電性ポリマーの種類によっては、電解液中の酸を捕捉する性質を示すため、長い間放置しておくと、その副反応により、炭素質材料からなる負極が浸食され、結果、電池性能の劣化が生じる。各種実験によりこのような知見を得た本発明者らは、上記構成の非水電解液二次電池において、その電池性能の劣化を解決するため鋭意研究を重ねた結果、電解液中に負極被膜形成剤を含有させると、初期の充放電時に、その負極被膜形成剤の作用によって負極側に安定した被膜が形成されることから、その被膜により、負極側で起きる副反応を効果的に抑制することができ、放電状態における自己放電を抑制して、電池性能の劣化を防止できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の非水電解液二次電池は、正極と負極と、上記正極と上記負極の間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する支持塩を含む電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が導電性ポリマーとポリカルボン酸金属塩(a)とを含有する正極活物質含有層を有する複合体を含み、上記正極を構成する導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリピロール、およびポリピロール誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記ポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方であり、上記ポリカルボン酸金属塩(a)が導電性ポリマー100重量部に対して1〜100重量部であり、上記負極がリチウムイオンを挿入・脱離しうる炭素質材料を含み、上記電解液が負極被膜形成剤を含む。したがって、重量エネルギー密度に優れるとともに、電池性能の劣化を効果的に抑制することができる。
【0015】
特に、上記電解液が、支持塩として六フッ化リン酸リチウムを含有すると、負極被膜形成剤による被膜に加え、それとは異なる被膜が更に負極表面上に形成されるため、電池性能の劣化を一層抑制できるようになる。
【0016】
また、上記導電性ポリマーが分子構造中に窒素原子を含有する、または正極が、さらに窒素源となるものを有すると、電解液中に生成する酸などを吸着するため、電池性能の劣化を一層抑制できるようになる。
【0017】
また、上記電解液中の負極被膜形成剤が、下記式(1)で表されるビニレンカーボネートおよび下記式(2)で表されるフルオロエチレンカーボネートの少なくとも一方であると、より電池性能の劣化を抑制できるようになる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
また、上記(a)ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアスパラギン酸、およびポリグルタミン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つであると、より一層の重量エネルギー密度の向上が得られるようになる。
【0021】
そして、上記非水電解液二次電池の製造方法であって、下記(I)〜(III)の工程を備える製造方法であると、優れた重量エネルギー密度を有するとともに、電池性能の劣化が少ない非水電解液二次電池が得られるようになる。
(I)正極と負極とを準備し、両者の間に、セパレータを配置して、正極、セパレータおよび負極からなる積層体を作製する工程。
(II)電池容器内に上記積層体を少なくとも一つ収容する工程。
(III)上記電池容器内に、電解液を注入する工程。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】参考例1および比較例1の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
図2】参考例2および比較例2の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
図3】実施例1〜5および比較例3の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
図4】実施例6〜8および比較例3の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
図5】実施例9〜13および比較例4の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
図6】実施例14および比較例5の各非水電解液二次電池において、縦軸を電圧(V)および横軸を時間(hrs.)とした場合の自己放電性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は、以下の内容に限定されない。
【0024】
本発明の非水電解液二次電池は、正極と負極と、上記正極と上記負極の間に配置されたセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する支持塩を含む電解液とを備えた非水電解液二次電池であって、上記正極が導電性ポリマーとポリカルボン酸金属塩(a)とを含有する正極活物質含有層を有する複合体を含み、上記正極を構成する導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリピロール、およびポリピロール誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一つであり、上記ポリカルボン酸金属塩が、ポリカルボン酸アルカリ金属塩およびポリカルボン酸アルカリ土類金属塩の少なくとも一方であり、上記ポリカルボン酸金属塩(a)が導電性ポリマー100重量部に対して1〜100重量部であり、上記負極がリチウムイオンを挿入・脱離しうる炭素質材料を含み、上記電解液が負極被膜形成剤を含むことを特徴とする。ここで、本発明において、「負極被膜形成剤」とは、初期充電時に負極の表面に被膜を形成するように作用する物質のことをいう。なかでも、一般的に用いられる電解液溶媒よりも先に初期充電時に反応し、形成する被膜の特性が優れたものが好ましく用いられる。
【0025】
以下、上記各部材および使用材料等について順を追って説明する。
【0026】
<正極について>
〔導電性ポリマー〕
上記のように、本発明の非水電解液二次電池の正極は、導電性ポリマーを含有する。本発明における導電性ポリマーとは、ポリマー主鎖の酸化反応または還元反応によって生成し、または消失する電荷の変化を補償するために、イオン種がポリマーに挿入し、またはポリマーから脱離することによって、ポリマー自身の導電性が変化する一群のポリマーをいう。
【0027】
このようなポリマーにおいて、導電性が高い状態をドープ状態といい、低い状態を脱ドープ状態という。導電性を有するポリマーが酸化反応または還元反応によって導電性を失い、絶縁性(すなわち、脱ドープ状態)となっても、そのようなポリマーは、酸化還元反応によって再度、可逆的に導電性を有することができるので、このように脱ドープ状態にある絶縁性のポリマーも、本発明においては、導電性ポリマーの範疇に入れることとする。
【0028】
また、好ましい本発明の導電性ポリマーの1つとしては、無機酸アニオン、脂肪酸スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、ポリマースルホン酸アニオンおよびポリビニル硫酸アニオンからなる群から選ばれた少なくとも1つのプロトン酸アニオンをドーパントとして有するポリマーである。また、本発明において好ましい別の導電性ポリマーとしては、上記導電性ポリマーを脱ドープした脱ドープ状態のポリマーである。
【0029】
上記導電性ポリマーの具体例としては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアズレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等や、これらの種々の誘導体があげられる。なかでも、電気化学的容量の大きなポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリピロール、およびポリピロール誘導体が用いられ、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体がさらに好ましく用いられる。
【0030】
本発明において、上記ポリアニリンとは、アニリンを電解重合させ、または化学酸化重合させて得られるポリマーをいい、ポリアニリンの誘導体とは、例えば、アニリンの誘導体を電解重合させ、または化学酸化重合させて得られるポリマーをいう。
【0031】
ここでアニリンの誘導体としてより詳しくは、アニリンの4位以外の位置にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基等の置換基を少なくとも1つ有するものを例示することができる。好ましい具体例としては、例えば、o−メチルアニリン、o−エチルアニリン、o−フェニルアニリン、o−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン等のo−置換アニリン、m−メチルアニリン、m−エチルアニリン、m−メトキシアニリン、m−エトキシアニリン、m−フェニルアニリン等のm−置換アニリンがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また本発明においては、4位に置換基を有するものでも、p−フェニルアミノアニリンは、酸化重合によってポリアニリンが得られるので、アニリン誘導体として好適に用いることができる。
【0032】
以下、本発明において、「アニリンまたはその誘導体」を単に「アニリン」ということがあり、また、「ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体の少なくとも一方」を単に「ポリアニリン」ということがある。したがって、導電性ポリマーを構成するポリマーがアニリン誘導体から得られる場合であっても、「導電性ポリアニリン」ということがある。
【0033】
また、本発明の非水電解液二次電池に係る正極では、上記導電性ポリマーに加え、さらに窒素を有することが好ましい。ここで、「窒素を有する」とは、導電性ポリマーの分子構造中にN原子を備えている場合だけでなく、別途、窒素源となるものを材料中に加える場合も含む意味である。上記のように、正極材料に窒素を含有することにより、電解液中に生成する酸などを正極材料がより効果的に吸着するようになる。また一方、正極では、さらにポリカルボン酸金属塩(a)を有する。
【0034】
〔ポリカルボン酸金属塩(a)について〕
本発明において、上記ポリカルボン酸金属塩(a)ポリカルボン酸としては、分子中にカルボキシル基を有するポリマーをいう。上記ポリカルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニル安息香酸、ポリアリル安息香酸、ポリメタリル安息香酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアスパラギン酸、およびポリグルタミン酸が好ましく用いられ、なかでもポリアクリル酸およびポリメタクリル酸がより好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
そして、上記ポリカルボン酸金属塩(a)としては、例えば、上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。アルカリ金属塩は、好ましくは、リチウム塩やナトリウム塩であり、上記アルカリ土類金属塩は、好ましくは、マグネシウム塩やカルシウム塩である。
【0036】
〔正極の外形について〕
本発明の非水電解液二次電池に係る正極は、少なくとも上記導電性ポリマーと、前記(a)成分とからなる複合体からなり、好ましくは多孔質シートに形成される。通常正極の厚みは、1〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがさらに好ましい。
【0037】
上記正極の厚みは、正極を先端形状が直径5mmの平板であるダイヤルゲージ(矢崎製作所社製)を用いて測定し、電極の面に対して10点の測定値の平均をもとめることにより得られる。集電体上に正極(多孔質層)が設けられ複合化している場合には、その複合化物の厚みを、上記と同様に測定し、測定値の平均をもとめ、集電体の厚みを差し引いて計算することにより正極の厚みが得られる。
【0038】
〔正極の作製について〕
本発明の非水電解液二次電池に係る正極は、例えば、つぎのようにして作製される。例えば、前記(a)成分を水に溶解させ、または分散させ、これに導電性ポリマー粉末と、必要に応じて、導電性カーボンブラックのような導電助剤を加え、これを充分に分散させて、溶液粘度が0.1〜50Pa・s程度であるペーストを調製する。これを集電体上に塗布した後、水を蒸発させることによって、集電体上に上記導電性ポリマーと、前記(a)成分と、必要に応じて導電助剤を含有する正極活物質含有層を有する複合体(多孔質シート)としてシート電極を得ることができる。
【0039】
上記導電助剤は、導電性に優れるとともに、電池の活物質間の電気抵抗を低減するために有効であり、さらに、電池の放電時に印加する電位によって性状の変化しない導電性材料であることが望ましい。通常、導電性カーボンブラック、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等や、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素材料が用いられる。
【0040】
本発明の非水電解液二次電池に係る正極の形成材料において、前記(a)成分は、導電性ポリマー100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは、2〜70重量部、最も好ましくは、5〜40重量部の範囲で用いられる。すなわち、上記導電性ポリマーに対する前記(a)成分の量が少な過ぎると、重量エネルギー密度に優れる非水電解液二次電池を得ることができない傾向にあり、逆に、前記(a)成分の量が多過ぎると、正極活物質以外の部材重量が増大することによる正極重量の増大によって、電池全体の重量を考慮した時、高エネルギー密度の非水電解液二次電池を得ることができない傾向にあるからである。
【0041】
<負極について>
本発明の非水電解液二次電池に係る負極としては、イオンを挿入・脱離しうる炭素質材料を含む材料から構成され、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられている公知の炭素質材料を使用できる。具体的には、コークス、ピッチ、フェノール樹脂、ポリイミド、セルロース等の焼成体、人造黒鉛、天然黒鉛等があげられ、なかでも好ましくは、人造黒鉛、天然黒鉛があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0042】
また、上記炭素質材料は、負極材料の主成分として用いられることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の過半を示す成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
【0043】
<集電体>
上記集電体の材料としては、例えば、ニッケル、アルミ、ステンレス、銅等の金属箔や、メッシュ等があげられる。なお、正極集電体と負極集電体とは、同じ材料で構成されていても、異なる材料で構成されていても差し支えない。
【0044】
<電解液について>
上記電解液は、電解質(支持塩)と溶媒とを含有するものから構成される。そして、本発明において、上記電解液中には、負極被膜形成剤が含有される。
【0045】
上記負極被膜形成剤とは、先にも述べたように、初期充電時に負極の表面に被膜を形成するように作用する物質のことをいい、なかでも、一般的に用いられる電解液溶媒よりも先に初期充電時に反応し、形成する被膜の特性が優れたものが好ましく用いられる。具体的には、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,3−プロパンサルトン、プロピレンサルファイト、エチレンサルファイト、ビニルアセテート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルサルファイト、フェニルエチレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、フルオロ−γ−ブチロラクトン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートは、負極に対する被膜形成性がより高いことから、より電池性能の劣化を抑制できるようになり、好ましい。
【0046】
そして、上記電解液中の負極被膜形成剤の含有割合は、電解液100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜20重量部の範囲である。すなわち、負極被膜形成剤の含有割合が上記範囲未満であると、有効な被膜形成がなされない傾向にあり、逆に、上記範囲を超えると、電池内での負極の被膜を形成するのに必要な量よりも過剰に存在することになり、電極上で副反応を起こして、容量低下やガス発生の原因となりうるためである。
【0047】
また、上記電解液を構成する電解質としては、例えば、リチウムイオンなどの金属イオンとこれに対する適宜のカウンターイオン、例えば、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ハロゲンイオン等を組み合わせてなるものが好ましく用いられる。従って、このような電解質の具体例としては、LiCF3SO3、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCl等をあげることができ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、上記電解液が、支持塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を含有すると、電池性能の劣化を一層抑制できるようになるため好ましい。
【0048】
ここで、六フッ化リン酸リチウムは、電解液中において分解し、フッ酸などの酸を生成することが知られている。本発明者らが確認したところ、電解液中に僅かに存在する上記フッ酸が、負極被膜形成剤による被膜とは異なる被膜を形成したことから、上記電解液に六フッ化リン酸リチウムを含有したことにより、負極である炭素質材料の電気化学的安定性と効率がより改善されたと考えられる。
【0049】
電解液を構成する溶媒としては、例えば、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、エーテル類等の少なくとも1種の非水溶媒、すなわち、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン等をあげることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0050】
上記電解液中の電解質の含有量としては、非水電解液二次電池の電解質含有量として通常の量が用いられる。すなわち、上記電解液中の電解質の含有量は、通常、上記電解液中に0.1〜2.5mol/Lの濃度範囲で用いられ、好ましくは0.5〜1.5mol/Lで用いられる。上記電解質が少なすぎると、重量エネルギー密度に優れる非水電解液二次電池を得られない傾向にあり、他方、電解質が多すぎると、イオンの挿入・剥離が上手く機能しないことから、やはり重量エネルギー密度に優れる非水電解液二次電池が得られない傾向にある。
【0051】
また、本発明の非水電解液二次電池においてセパレータを用いる場合、セパレータは、これを挟んで対向して配設される正極と負極の間の電気的な短絡を防ぐことができ、さらに、電気化学的に安定であり、イオン透過性が大きく、ある程度の機械強度を有する絶縁性の多孔質シートであればよい。したがって、例えば、紙、不織布や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂からなる多孔性のフィルムが好ましく用いられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0052】
<非水電解液二次電池の製造方法について>
上記材料を用いた本発明の非水電解液二次電池の製造方法としては、下記(I)〜(III)の工程を備えることを特徴とする。以下、この製造方法について詳述する。
(I)正極と負極とを準備し、両者の間に、セパレータを配置して、正極、セパレータおよび負極からなる積層体を作製する工程。
(II)電池容器内に上記積層体を少なくとも一つ収容する工程。
(III)上記電池容器内に、電解液を注入する工程。
【0053】
具体的には、上述した正極と負極との間にセパレータが配置されるように積層し、積層体を作製する。つぎに、この積層体をアルミニウムラミネートパッケージ等の電池容器内に入れた後、真空乾燥する。ついで、真空乾燥した電池容器内に電解液を注入する。最後に、電池容器であるパッケージを封口して、本発明の非水電解液二次電池が完成する。
【0054】
<非水電解液二次電池について>
本発明の非水電解液二次電池は、上記ラミネートセル以外に、フィルム型、シート型、角型、円筒型、ボタン型等種々の形状に形成される。
【実施例】
【0055】
つぎに、実施例について、参考例および比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0056】
まず、実施例,参考例,比較例となる非水電解液二次電池の作製に先立ち、以下に示す材料および構成部材の、調製・作製・準備を行った。
【0057】
[導電性ポリマー1の調製]
導電性ポリマー1として、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン粉末を下記のように調製した。
【0058】
すなわち、まず、イオン交換水138gを入れた300mL容量のガラス製ビーカーに、42重量%濃度のテトラフルオロホウ酸水溶液(和光純薬工業社製、試薬特級)84.0g(0.402mol)を加え、磁気スターラーにて撹拌しながら、これにアニリン10.0g(0.107mol)を加えた。テトラフルオロホウ酸水溶液にアニリンを加えた当初は、アニリンは、テトラフルオロホウ酸水溶液に油状の液滴として分散していたが、その後、数分以内に水に溶解し、均一で透明なアニリン水溶液になった。このようにして得られたアニリン水溶液を、低温恒温槽を用いて−4℃以下に冷却した。
【0059】
つぎに、酸化剤として二酸化マンガン粉末(和光純薬工業社製、試薬1級)11.63g(0.134mol)を、上記アニリン水溶液中に少量ずつ加えて、ビーカー内の混合物の温度が−1℃を超えないようにした。このようにして、アニリン水溶液に酸化剤を加えることによって、アニリン水溶液は直ちに黒緑色に変化した。その後、しばらく撹拌を続けたとき、黒緑色の固体が生成し始めた。
【0060】
このようにして、80分間かけて酸化剤を加えた後、生成した反応生成物を含む反応混合物を冷却しながら、さらに、100分間、撹拌した。その後、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて、得られた固体をNo.2濾紙にて吸引濾過して、粉末を得た。この粉末を約2mol/Lのテトラフルオロホウ酸水溶液中にて磁気スターラーを用いて撹拌洗浄した。ついで、アセトンにて数回、撹拌洗浄し、これを減圧濾過した。得られた粉末を室温(25℃)で10時間真空乾燥することにより、テトラフルオロホウ酸をドーパントとする導電性ポリアニリン(導電性ポリマー1)12.5gを得た。この導電性ポリアニリンは鮮やかな緑色粉末であった。
【0061】
(導電性ポリマー1の電導度)
上記導電性ポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、直径13mm、厚み720μmの導電性ポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、19.5S/cmであった。
【0062】
(脱ドープ状態の導電性ポリマー1の調製)
上記により得られたドープ状態である導電性ポリアニリン粉末を、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に入れ、3Lセパラブルフラスコ中にて30分間撹拌し、中和反応によりドーパントのテトラフルオロホウ酸を脱ドープした。濾液が中性になるまで脱ドープしたポリアニリンを水洗した後、アセトン中で撹拌洗浄し、ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、No.2濾紙上に、脱ドープしたポリアニリン粉末を得た。これを室温下、10時間真空乾燥して、茶色の脱ドープ状態のポリアニリン粉末を得た。
【0063】
(還元脱ドープ状態の導電性ポリマー1の調製)
つぎに、フェニルヒドラジンのメタノール水溶液中に、この脱ドープ状態のポリアニリン粉末を入れ、撹拌下30分間還元処理を行った。ポリアニリン粉末の色は、還元により、茶色から灰色に変化した。反応後、メタノール洗浄、アセトン洗浄し、濾別後、室温下真空乾燥し、還元脱ドープ状態のポリアニリンを得た。
【0064】
(還元脱ドープ状態の導電性ポリマー1の電導度)
上記還元脱ドープ状態のポリアニリン粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、厚み720μmの還元脱ドープ状態のポリアニリンのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、5.8×10-3S/cmであった。これより、ポリアニリン化合物は、イオンの挿入・脱離により導電性の変化する活物質化合物であるといえる。
【0065】
[導電性ポリマー2の調製]
導電性ポリマーとして、アントラキノン−2−スルホン酸をドーパントとする導電性ポリピロール粉末を下記のように調製した。
【0066】
すなわち、まず、ピロール25g(0.373mol)をイオン交換水430gに撹拌して溶解し、5.5重量%水溶液を作製した。ここへ、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム1水和物を30.5g(0.093mol)溶解した。さらに、ここへ、室温下、35重量%のペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液243gを2時間かけて少しずつ滴下した。ブフナー漏斗と吸引瓶を用いて減圧濾過し、黒色のポリピロール粉末を得た。水洗、アセトン洗浄した後、デシケータ中、室温下、10時間真空乾燥し、粉末状の導電性ポリピロール(導電性ポリマー2)25.5gを得た。
【0067】
(導電性ポリマー2の電導度)
上記導電性ポリピロール粉末130mgを瑪瑙製乳鉢で粉砕した後、赤外スペクトル測定用KBr錠剤成形器を用い、75MPaの圧力下に10分間真空加圧成形して、直径13mm、厚み700μmの導電性ポリピロールのディスクを得た。ファン・デル・ポー法による4端子法電導度測定にて測定した上記ディスクの電導度は、10S/cmであった。
【0068】
[ポリカルボン酸金属塩(a)の準備]
ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、重量平均分子量100万)4.4gをイオン交換水95.6gに加え、一夜静置して膨潤させた。この後、超音波式ホモジナイザーを用いて1分間処理して溶解させ、4.4重量%濃度の粘稠なポリアクリル酸水溶液100gを得た。ついで、得られたポリアクリル酸水溶液100gに、ポリアクリル酸の有するカルボキシル基の量の半分をリチウム塩化する量の水酸化リチウム粉末0.73gを加えて、ポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液を調製し、準備した。
【0069】
[正極Iの作製](参考例用)
濃度48重量%のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)エマルジョン(JSR社製、TRD2001)0.37gと、濃度19.8重量%のポリビニルピロリドン(PVP)水溶液(日本触媒社製、K−90W)2.12gを混合して、バインダー溶液を調製した。
【0070】
上記還元脱ドープ状態の導電性ポリマー1粉末4gと導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)粉末0.6gとを混合した後、これを上記バインダー溶液に加え、さらにイオン交換水6.9gを加えて、スパチュラでよく練った。これを、超音波式ホモジナイザーにて1分間超音波処理を施した後、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて高剪断力を加えてマイルド分散させ、流動性を有するペーストを得た。このペーストをさらに真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
【0071】
卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレ−ド式アプリケータによって、溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒にて、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉社製、30CB)上に塗布した。ついで、室温(25℃)で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥した。この後、真空プレス機(北川精機社製、KVHC)を用いて、15cm角のステンレス板に挟んで、温度140℃、圧力1.5MPaで5分間プレスして、多孔質のポリアニリンシート電極(正極I)を作製した。
【0072】
[正極IIの作製](参考例用)
濃度48重量%のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)エマルジョン(JSR社製、TRD2001)0.42gと、濃度19.8重量%のポリビニルピロリドン(PVP)水溶液(日本触媒社製、K−90W)2.45gを混合して、バインダー溶液を調製した。
【0073】
前記調製した導電性ポリマー2粉末3gと、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)粉末0.365gとを混合した後、これを上記バインダー溶液に加え、さらにイオン交換水5gを加えて、スパチュラでよく練った。これを、超音波式ホモジナイザーにて1分間超音波処理を施した後、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて、高剪断力を加えてマイルド分散させ、流動性を有するペーストを得た。このペーストをさらに真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
【0074】
卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレ−ド式アプリケータによって、溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒にて、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉社製、30CB)上に塗布した。ついで、室温(25℃)で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥し、多孔質のポリピロールシート電極(正極II)を作製した。
【0075】
[正極IIIの作製](実施例用)
前記調製した還元脱ドープ状態の導電性ポリマー1粉末4gと導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)粉末0.5gとを混合した後、これを前記4.4重量%濃度のポリアクリル酸の半リチウム塩水溶液20.4g中に加え、スパチュラでよく練った。これを、超音波式ホモジナイザーにて1分間超音波処理を施した後、フィルミックス40−40型(プライミックス社製)を用いて高剪断力を加えてマイルド分散させ、流動性を有するペーストを得た。このペーストをさらに真空吸引鐘とロータリーポンプを用いて脱泡した。
【0076】
卓上型自動塗工装置(テスター産業社製)を用い、マイクロメーター付きドクターブレ−ド式アプリケータによって、溶液塗工厚みを360μmに調整し、塗布速度10mm/秒にて、上記脱泡ペーストを電気二重層キャパシタ用エッチングアルミニウム箔(宝泉社製、30CB)上に塗布した。ついで、室温(25℃)で45分間放置した後、温度100℃のホットプレート上で乾燥した。この後、真空プレス機(北川精機社製、KVHC)を用いて、15cm角のステンレス板に挟んで、温度140℃、圧力1.5MPaで5分間プレスして、多孔質のポリアニリンシート電極(正極III)を作製した。
【0077】
[セパレータの準備]
セパレータとしては、厚さ25μm、空孔率38%、通気度620秒/100cm3のポリプロピレン多孔質膜(セルガード社製、Celgard2400)を用いた。
【0078】
[負極の準備]
炭素質材料を含む負極としては、活物質として天然球状グラファイトを含む負極シート(パイオトレック社製、0.8mAh/cm2)を用いた。
【0079】
[電解液iの準備]
電解液iとして、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の体積比で含む溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。
【0080】
[電解液iiの準備]
電解液iiとして、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の体積比で含む溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。
【0081】
[電解液iiiの準備]
電解液iiiとして、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1の体積比で含む溶媒に、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1mol/Lの濃度で溶解させたものを準備した。
【0082】
[電解液用添加剤(負極被膜形成剤)の準備]
電解液用添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を準備した。
【0083】
〔参考例1〕
<ラミネートセルの作製>
正極I、負極およびセパレータを用いて積層体を組み立てた。具体的には、上述した正極Iと負極の間にセパレータ2枚が配置されるように積層し、積層体を得た。積層体をアルミニウムラミネートパッケージに入れた後、真空乾燥機にて80℃で2時間、真空乾燥した。ついで、真空乾燥したパッケージに、電解液を注入した。上記電解液としては、前記準備した電解液i100重量部に対し、電解液用添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を2重量部の割合で添加したものを用いた。最後に、パッケージを封口して、参考例1の非水電解液二次電池を得た。なお、パッケージへの注液は、グローブボックス中、超高純度アルゴンガス雰囲気下にて行った。グローブボックス内の露点は−90℃以下であった。このようにして、ラミネートセル(非水電解液二次電池)を得た。
【0084】
〔参考例2、実施例1〜14、比較例1〜5〕
正極,電解液および電解液用添加剤の種類、並びに電解液用添加剤(負極被膜形成剤)の添加量を、後記の表1〜表5に示すものに代えた。それ以外は、参考例1と同様にして、ラミネートセル(非水電解液二次電池)を作製した。
【0085】
このようにして得られた実施例、参考例および比較例の非水電解液二次電池に関し、下記の基準に従い、重量エネルギー密度の測定を行った。その結果を後記の表1〜表5に併せて示す。
【0086】
≪重量エネルギー密度の測定≫
非水電解液二次電池を25℃の恒温槽内に静置し、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用いて、定電流一定電圧充電/定電流放電モードにて測定を行う。充電は、3.8Vに到達するまでは、0.05Cに相当する定電流で充電し、3.8Vに到達した後は、3.8V定電圧で電流値が0.05C相当の20%に減衰するまで充電を行って、これを1充電とし、ついで0.05Cに相当する電流値で電圧が2.0Vに到達するまで放電を行って、これらを1充放電サイクルとした。
ここで0.05Cとは、20時間率を示しており、20時間率とは、電池を充電あるいは放電するのに20時間を要する電流値という意味である。2サイクル目で得られた放電容量から、ポリアニリンの正味重量に対する重量エネルギー密度を測定する。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
上記各表における実施例と、参考例および比較例との対比より、負極被膜形成剤を含む電解液を用いた実施例の非水電解液二次電池は、負極被膜形成剤を含まない電解液を用いた比較例の非水電解液二次電池と同程度かそれ以上の高い重量エネルギー密度を示すことがわかる。
【0093】
≪自己放電性の測定≫
非水電解液二次電池において、前述した方法で2サイクルの充放電を行った後、電池充放電装置(北斗電工社製、SD8)を用い、開回路電圧測定モードにて、時間(hrs.)ごとの電圧(V)の変化を測定した。この結果を図1図6のグラフに示した。
【0094】
上記各グラフにおける実施例と、参考例および比較例との対比から明らかなように、実施例の非水電解液二次電池は経時による自己放電の割合が低い(グラフの曲線がなだらかである)のに対し、比較例の非水電解液二次電池は経時による自己放電の割合が高い(グラフの曲線が急激に下がっている)ことがわかる。
【0095】
そして、上記各表およびグラフの結果を総括すると、負極被膜形成剤を含む電解液を用いた非水電解液二次電池は、負極被膜形成剤を含まない電解液を用いた非水電解液二次電池と同程度かそれ以上の高い重量エネルギー密度を有し、かつ、負極被膜形成剤を含まない電解液を用いた非水電解液二次電池と比べて自己放電を抑制できることから、電池性能が高いことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の非水電解液二次電池は、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池として好適に使用できる。また、本発明の非水電解液二次電池は、従来の二次電池と同様の用途に使用でき、例えば、携帯型PC、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の携帯用電子機器や、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の駆動用電源に広く用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6