(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のブース型クリーンユニットでは、層流ユニットから下方に向かって供給された浄化空気が無影灯に当たるため、この無影灯の下方では負圧状態になる。よって、無影灯の下方では、周囲の空気を無影灯の下方に向かって引き寄せる空気の流れが形成される。したがって、引き寄せられた空気に細菌類が含まれている場合には、無影灯の下方に設けられた手術台の上に横たわる患者の手術部分に細菌類が付着してしまうという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細菌類の空気感染を防止することができる手術室用照明装置及びこれを備えた手術室を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る手術室用照明装置は、軸線方向に延びる支持軸と、該支持軸に沿って設けられ
、LEDを光源とした直径100mm以下の中心照明体と、前記支持軸から径方向外側に向かって延びる支持フレーム体と、該支持フレーム体に設けられ
、LEDを光源とした直径100mm以下の周囲照明体と、前記支持軸、前記中心照明体、前記支持フレーム体及び前記周囲照明体の間に形成され、上方から吹き降ろされた清浄空気を通過させる間隙部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された手術室用照明装置では、例えば手術室用照明装置の上方から吹き降ろされた清浄空気が供給されると、この清浄空気は手術室用照明装置の支持軸、中心照明体、支持フレーム及び周囲照明体の間に形成された間隙部を通過する。この際、間隙部を上方から下方に向かって流れる清浄空気の流れ(風量、流速)を確実に確保することができる。よって、手術用照明装置の下方ではこの清浄空気の流れが形成されているため、これと逆らうように汚染空気が手術用照明装置の下方に流入することはない。したがって、細菌類の空気感染を防止することができる。
また、LEDは一般的なハロゲンランプ等より発熱しにくいため、ハロゲンランプを使用した場合よりも上昇気流の発生を抑制して、乱流の発生を抑制することができる。よって、上方から下方に向かう清浄空気の流れを確実に形成することができる。
【0009】
また、本発明に係る手術室用照明装置は、前記支持フレーム体は、前記支持軸から前記径方向に延びる複数の支持フレームを有し、前記周囲照明体は、複数の前記支持フレームにそれぞれ設けられ、複数の前記支持フレームは、周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0010】
このように構成された手術室用照明装置では、清浄空気は、支持軸から径方向に延びる複数の支持フレームに沿って流れつつ、複数の支持フレーム間に形成された間隙部を通過して下方に向かって流れる。また、複数の支持フレームは、周方向に等間隔に配置されているため、清浄空気は周方向にわたって均等に流れる。
【0011】
また、本発明に係る手術室用照明装置は、
軸線方向に延びる支持軸と、該支持軸に沿って設けられた中心照明体と、前記支持軸から径方向外側に向かって延びる支持フレーム体と、該支持フレーム体に設けられた周囲照明体と、前記支持軸、前記中心照明体、前記支持フレーム体及び前記周囲照明体の間に形成され、上方から吹き降ろされた清浄空気を通過させる間隙部とを備え、前記中心照明体及び前記周囲照明体は、照明ユニットを複数有し、前記中心照明体の複数の前記照明ユニットのうち、上側に配置された上側ユニットは、該上側ユニットの下方に配置された下側ユニットよりも、前記径方向外側に配置され、前記上側ユニットと前記下側ユニットとの間には、上方から下方に向かうにしたがって前記径方向外側に向かって延びる空気流路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成された手術室用照明装置では
、例えば手術室用照明装置の上方から吹き降ろされた清浄空気が供給されると、この清浄空気は手術室用照明装置の支持軸、中心照明体、支持フレーム及び周囲照明体の間に形成された間隙部を通過する。この際、間隙部を上方から下方に向かって流れる清浄空気の流れ(風量、流速)を確実に確保することができる。よって、手術用照明装置の下方ではこの清浄空気の流れが形成されているため、これと逆らうように汚染空気が手術用照明装置の下方に流入することはない。したがって、細菌類の空気感染を防止することができる。
また、空気流路に沿って、上方から下方に向かうにしたがって径方向外側に向かう清浄空気の流れを形成することができる。
【0017】
また、本発明に係る手術室は、上記のいずれか一に記載の手術用照明装置と、該手術用照明装置の上方に設けられ、清浄空気を供給する空気清浄装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
このように構成された手術室では、上方から下方に向かって流れる清浄空気の流れ(風量、流速)を確実に確保することができる。よって、手術用照明装置の下方ではこの清浄空気の流れが形成されているため、これと逆らうように汚染空気が手術用照明装置の下方に流入することはない。したがって、細菌類の空気感染を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る手術室用照明装置及びこれを備えた手術室によれば、細菌類の空気感染を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る手術室について説明する。
図1に示すように、手術室1は、平面視略長方形状に形成され、床部11と、床部11に上下方向に延びるように設けられた4枚の壁部12と、4枚の壁部12の上端を連結するように形成された天井部13とを有している。
【0022】
4枚の壁部12は、手術室1の長手方向に沿って延びるとともに互いに対向する一対の壁部12A,12Aと、手術室1の短手方向に沿って延びるとともに互いに対向する一対の壁部12B,12Bとで構成されている。
【0023】
壁部12及び天井部13には、手術室1内の空気を手術室1外に排出する貫通孔である排気口16A,16Bがそれぞれ設けられている。排気口16Aは、壁部12の下側に、長手方向に沿って7個設けられている。また、排気口16Bは、天井部13における壁部12A近傍に長手方向に沿って5個設けられている。
【0024】
また、天井部13には、手術室1内に清浄空気を供給する空気清浄装置2が設けられている。
空気清浄装置2は、清浄空気を供給するファン(不図示)と、ファンから送られた空気を濾過するフィルタ21と、清浄空気を手術室1内に吹出す吹出口22と、吹出口22に設けられた複数の案内羽根23とを有している。
【0025】
この案内羽根23は、上方から下方に向かうにしたがって、中心から外側に向かうように傾斜している。
【0026】
この空気清浄装置2の下方には、手術用照明装置10(以下、単に「照明装置10」と称する。)が設けられている。また、照明装置10の下方には、手術台5が設けられている。
【0027】
図2に示すように、照明装置10は、天井部13(
図1参照、以下同じ。)等に支持されたアーム100と、アーム100に連結され軸線方向O(上下方向)に延びる支持軸110と、支持軸110に沿って設けられた中心照明体120と、支持軸110から径方向R外側に向かって設けられた支持フレーム体130と、支持フレーム体130に設けられた複数の周囲照明体140,140…とを備えている。
【0028】
アーム100は、上下方向又は水平方向に延びる複数の部材(不図示)が連結されて構成され、上端が天井部13における空気清浄装置2(
図1参照、以下同じ。)が設けられてない部分(不図示)に固定され、下端が支持軸110に固定されている。
【0029】
支持軸110は、アーム100から下方に向かって延びている。この支持軸110の下端には、下方に向かって延びる軸ハンドル111が設けられている。この軸ハンドル111を操作することで、照明装置10の高さ及び向きを変更することができる。
【0030】
図2および
図3に示すように、中心照明体120は、6個の縦継手型LEDユニット201,201…(照明ユニット、下側ユニット)と、6個の横継手型LEDユニット202,202…(照明ユニット、上側ユニット)とを有している。
【0031】
なお、本実施形態では、中心照明体120の縦継手型LEDユニット201は、横継手型LEDユニット202よりも下方に配置された下側ユニットを構成している。また、中心照明体120の横継手型LEDユニット202は、上側ユニットを構成している。
【0032】
6個の縦継手型LEDユニット201,201…は、支持軸110の周方向Tに沿って等間隔に配置されている。また、6個の横継手型LEDユニット202,202…も、支持軸110の周方向Tに沿って等間隔に配置されている。
【0033】
横継手型LEDユニット202は、縦継手型LEDユニット201よりも径方向R外側且つ上方に配置されている。本実施形態では、横継手型LEDユニット202は、隣接する縦継手型LEDユニット201の境界線上の径方向R外側に配置されている。これにより、横継手型LEDユニット202と隣接する縦継手型LEDユニット201との間には、上方から下方に向かうにしたがって径方向R外側に延びる空気流路Sが形成されている。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、縦継手型LEDユニット201は、平面視略円形状に形成され、LED211が実装されたLED基板212と、LED基板212に沿って設けられた光透過体213と、LED基板212及び光透過体213を覆うように設けられた蓋214とを有している。さらに、縦継手型LEDユニット201は、蓋214に設けられた縦継手215と、蓋214の内部に設けられた反射板216と、LED基板212に接続された電源線218とを有している。
なお、縦継手215の内部に上下方向に貫通孔(不図示)が形成され、この貫通孔に電源線218が挿通され、縦継手215の上端から電源線218が取り出される構成であってもよい。
【0035】
LED基板212には、本実施形態では平面視略円形状に形成され、1個のLED211が実装されている。光透過体213は、平面視略環状の部材であって、LED基板212の外周側に設けられている。本実施形態では、縦継手型LEDユニット201の光束は85ルーメンであり、1mの距離で光輪郭の直径100mmであり、中心照度5,400lxである。
【0036】
蓋214は、光透過体213の外縁から立設された立設壁部214Aと、この立設壁部214Aの上端からLED基板212の平面視中心側に向かうにしたがって上方に向かうように形成された上壁部214Bとを有している。
【0037】
縦継手215は、蓋214の上壁部214Bの上端から上方に向かって延び、先端が略球体状をなしている。この縦継手215の先端は、支持フレーム体130に形成された図示しない凹部等に回転可能に挿入固定されている。これにより、縦継手215の凹部に対する角度を調整することで、縦継手型LEDユニット201を支持フレーム体130に対して所望の角度に傾斜させて取り付けることができる。
【0038】
反射板216は、平面視略円形状に形成されて、蓋214の内周面に沿って設けられている。この反射板216は、平面視中心側に向かうにしたがって上方に向かうように、上側に凸の曲面状に形成されている。この構成により、LED211から発せられる光線が反射板216で、光角度2.6°の下向きの平行光線として発散される。
【0039】
この蓋214の外面は、流線型で形成されている。これにより、気流の乱れの発生が防止される。
【0040】
また、本実施形態では、縦継手型LEDユニット201は、直径100mm以下のサイズである。また、縦継手型LEDユニット201の光面サイズは、直径50〜60mmであることが望ましい。
【0041】
横継手型LEDユニット202は、横継手225が立設壁部214Aに設けられている点を除いて、縦継手型LEDユニット201と構成が同じであるため、説明を省略する。
【0042】
図2及び
図4に示すように、支持フレーム体130は、支持軸110から径方向R外側に向かって放射状に延びる6本の中空パイプ(支持フレーム)131,131…を有している。これら6本の中空パイプ131,131…は、周方向Tに等間隔に配置されている。また、中空パイプ131の径方向R外側に端部は、それぞれ環状のパイプリング132で互いに連結されている。
【0043】
この中空パイプ131の径方向R途中部分には、垂下する回転支持材133が設けられている。また、中空パイプ131の径方向R外側に端部には、垂下する外側支持材134が設けられている。
【0044】
パイプリング132には、径方向R外側に補助ハンドル135が設けられている。この補助ハンドル135を、支持軸110に設けられた軸ハンドル111とともに操作することで、照明装置10の高さ及び向きを変更することができる。
また、パイプリング132には、径方向R外側に可変用ハンドル136が設けられている。
【0045】
本実施形態では、中空パイプ131は直径20mmのアルミ製の直管パイプであり、パイプリング132は直径30mmのアルミ製の環状パイプである。中空パイプ131は、一端が支持軸110に溶接で固定されるとともに、他端がパイプリング132に溶接で固定されている。
【0046】
これら中空パイプ131及びパイプリング132は、パイプで形成されているため、内部が空洞とされている。この内部は、電源線218(
図3参照)や周囲照明体140に接続された可変用ワイヤ等の線状部材を収容可能な収容空間部139とされている。
【0047】
周囲照明体140,140…は、6本の中空パイプ131,131…にそれぞれ設けられている。本実施形態では、周囲照明体140は、中空パイプ131から垂下する回転支持材133に接続され、径方向Rに向かって延びる横支持材160に設けられた5個の横継手型LEDユニット202を有している。
【0048】
5個の横継手型LEDユニット202は、平面視で互い離れて、例えばこれら5個の横継手型LEDユニット202を頂点として略正五角形を形成するように配置されている。これにより、隣り合う横継手型LEDユニット202,202…の間には、間隙が設けられている。
【0049】
これら横継手型LEDユニット202を支持する横支持材160の端部には、可変用ワイヤ(不図示、以下同じ。)が外側支持材134の内部で接続されている。この可変用ワイヤは、外側支持材134及びパイプリング132の内部を通過して、可変用ハンドル136に接続されている。この構成により、パイプリング132に設けられた可変用ハンドル136を操作することで、操作力が可変用ワイヤを介して横継手型LEDユニット202に伝達される。これにより、周囲照明体140は、光輪郭サイズを直径120〜220mm調整することができる。
【0050】
支持軸110、中心照明体120、支持フレーム体130及び周囲照明体140の間には、間隙部150が形成されている。この間隙部150は、空気清浄装置2の吹出口22から吹き降ろされた清浄空気を下方に向かって通過させる。
【0051】
また、支持軸110、中心照明体120、支持フレーム体130及び周囲照明体140の外端輪郭線で囲まれた部分の水平面への投影面積に対する支持軸110、中心照明体120、支持フレーム体130及び周囲照明体140の間に形成される間隙部150の水平面への投影面積の割合(以下、「空隙率」とする)は、0.52以上、本実施形態では0.61とされている。
【0052】
このように構成された手術室1では、照明装置10の上方に設けられた空気清浄装置2の吹出口22から清浄空気が供給されると、照明装置10の中心部では、この清浄空気は、空気流路Sに沿って、上方から下方に向かうにしたがって径方向R外側に向かって流れる。また、照明装置10のその他の部分では、清浄空気は、間隙部150を上方から下方に向かって流れる。よって、照明装置10の下方ではこの清浄空気の流れが確実に確保されるため、照明装置10の下方に負圧の渦域が形成されることがない。したがって、汚染空気が照明装置10の下方に流入することはないため、照明装置10の下方に配置された手術台5への細菌類の空気感染を防止することができる。
【0053】
また、照明装置10の複数の中空パイプ131は、周方向Tに等間隔に配置されているため、清浄空気は周方向Tにわたって均等に流れる。よって、照明装置10の中心から径方向R外側且つ下方に向かって流れる清浄空気の流れが、周方向Tにわたって均等に形成される。よって、照明装置10の下方に配置された手術台5の周りのいずれの方向からも、手術台5に向かって細菌類が流入することを抑制することができる。
【0054】
また、LED211は一般的なハロゲンランプ等より発熱しにくいため、ハロゲンランプを備える照明装置よりも上昇気流の発生を抑制して、乱流の発生を抑制することができる。よって、上方から下方に向かう清浄空気の流れが、確実に形成される。
【0055】
また、例えば中心照明体120や周囲照明体140に接続された電源線218等は、支持フレーム体130内の収容空間部139に収容される。よって、露出した電源線218等により、清浄空気の流れが乱れることを防止することができる。
さらに、電源線218が、縦継手215に形成された貫通孔に挿通され、縦継手215の上端から取り出される構成の場合は、電源線218を照明装置10の内部に完全に収納することができ、清浄空気の流れが乱れを一層防止することができる。
【0056】
(実施例、比較例)
まず、空隙率と汚染範囲との関係を以下に示す。
図5に示すように、実施例として、上部にファンフィルタユニット300が設けられた垂直整流型クリーンルームを採用する。この垂直整流型クリーンルームでは、気流が流速0.35m/sとされ、直径600mmのアルミパイプリング内に直径60mmのアルミ板が敷き詰められた模擬灯体301を取り付ける。また、発塵点は、模擬灯体301の下方100mm且つ模擬灯体302から水平方向にDmm離間した位置としたA点、B点とした。A点はD=300であり、B点はD=100mmである。また、測定点Eは、模擬灯体の下方1000mmとした。
【0057】
上記の模擬灯体301では、空隙率を0%,41%,52,59%に変更させて、測定点Eにおける汚染結果を
図6に示す。
【0058】
図6によると、模擬灯体301の空隙率0%の場合には、汚染範囲Fが直径1200mmに及ぶことが分かる。また、この汚染範囲Fは、発塵点がA点である場合とB点である場合において相違はない。
【0059】
また、模擬灯体301の空隙率が41%〜59%の場合には、空隙率が大きくなるにしたがって汚染範囲Fが徐々に小さくなることが分かる。具体的には、発塵点がA点である場合、空隙率が41%の場合には汚染範囲Fは800×600mmであり、空隙率が52%の場合には汚染範囲Fは無いことが分かる。また、空隙率が59%の場合には、発塵点がA点であってもB点であっても、汚染範囲Fが最小となっていることが分かる。つまり、空隙率が52%では空隙率が41%よりも汚染範囲Fが顕著に小さくなっているため、空隙率が52%以上であることが好ましい。この場合には、模擬灯体301の下方に負圧の渦域が形成されていないことが分かる。
ここで、上記に示す実施形態では、空隙率が61%であるため、周囲の汚染空気を誘引して中心部へ伝播するおそれはない。
【0060】
次に、照明装置と清浄度との関係を以下に示す。
図1に示す空気清浄装置2は、1時間当たり、手術室1の気積の約16倍以上の温湿度調整された清浄空気を、手術室1内に供給する。また、排気口16Aから排出される排気量と、排気口16Bから排出される排気量とは、略同量である。
【0061】
空気清浄装置2は、羽根の無い中央部吹出し風速は0.47m/sとし、案内羽根23間の吹出し風速は0.4〜0.7m/sとした。羽根角度を74〜86°として、執刀医の頭部付近を手術台5から外側へ向かう気流で覆うようにして、発塵を外側へ排除する気流とする。また、手術室1における換気回数は16回/hである。
【0062】
照明装置10は、手術台5の上方約1200mmに取り付けられている。また、実施例として、上記に示す実施形態で示された照明装置10を採用する。また、比較例として、直径600mmの円形の模擬一般灯を採用する。
【0063】
また、実施例、比較例では、それぞれ照明装置10、模擬一般灯を以下の二つの設置方法で設置して清浄度を測定する。実施例1として、照明装置10を、測定点X3の直上に設置する。実施例2として、照明装置10を2個、水平方向に230mm離間させるとともに、互いに水平方向に離間するにしたがって下方に向かって傾斜するように、天井面から20°傾斜するように設置する。また。比較例1として、模擬一般灯を、測定点X3の直上に設置する。比較例1として、模擬一般灯2個を、水平方向に230mm離間させるとともに、互いに水平方向に離間するにしたがって下方に向かって傾斜するように、天井面から20°傾斜するように設置する。この実施例1及び2、比較例1及び2において、清浄度を測定する。
【0064】
また、手術台5の直近に、執刀医Gを2名、麻酔医Hを1名配置する。そして、これら2名の執刀医G及び1名の麻酔医Hの頭部からの発塵を模擬した発塵源より発塵させた場合を、手術時発塵とする。さらに、手術台5周囲Iにおける作業等からの発塵を考慮した7人分の発塵させた場合を、手術台周囲発塵(周囲発塵)とする。また、測定点は、手術台5の上方150mmの位置とした。なお、発塵量はクリーンスーツ着衣者からの発塵量の最大値である400,000個/min・人(粒子径は0.5μm以上)とする。
【0065】
まず、周囲発塵における清浄度を測定した結果を、
図7に示す。
図7に示すように、照明器具なしでは測定点X3の値が144個/cfであった。また、比較例1では、測定点X3の値が505個/cfとなっている。つまり、模擬一般灯は、汚染空気を照明装置10の下方に吸引して、この汚染空気を手術部分に向かって再放出する源となる二次汚染源となっていることが分かる。
【0066】
一方、実施例1では、測定点X3の値が60個/cfであり、照明器具なしの場合よりも清浄になった。
【0067】
また、比較例2では、測定点X3の値が316個/cfとなり、比較例1よりも清浄になった。これは、模擬一般灯2個の間から吹き降ろされる清浄空気により模擬一般灯の下方の汚染空気が希釈されたためである。
【0068】
一方、実施例2では、測定点X3の値が16個/cfであり、最も清浄な状態となった。これは、照明装置10により、清浄空気の大半を下方へ通過させることと合わせて、照明装置10,10の間を通過した清浄空気が手術部分に供給されることにより達成されたものである。
【0069】
次に、周囲発塵に加えて手術時発塵が発生した場合における清浄度を測定した結果を、
図8に示す。
図8に示すように、照明器具なしでは測定点X3の値が116〜144個/cfであった。また、比較例1では、測定点X3の値が1,500個/cfとなっている。
【0070】
一方、実施例1では、測定点X3の値が52個/cfであり、照明器具なしの場合よりも清浄になった。これは、中心部を通過する清浄空気が外向きの流れとなり、周囲汚染空気を排除することにより清浄になったものである。
【0071】
また、比較例2では、測定点X3の値が839個/cfとなり、比較例1よりも清浄になった。これは、模擬一般灯2個の間から吹き降ろされる清浄空気により灯下の汚染空気が希釈されたためである。
【0072】
一方、実施例2では、測定点X3の値が27個/cfであり、最も清浄な状態となった。これは、照明装置10により、清浄空気の大半を下方へ通過させることと合わせて、照明装置10,10の間を通過した清浄空気が手術部分に供給されることにより達成されたものである。
【0073】
以上より、手術室1において、在室者10人が多量に発塵を起こす作業をした場合でも、実施例1,2に係る手術室1では、手術部分を清浄度クラス1000以下に保つことができる。
【0074】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。