【文献】
ROAD-PETERSEN, J. et al.,Contact dermatitis from antioxidants,British Journal of Dermatology,1976年,Vol.94,p.233-241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘着剤層中の不揮発性炭化水素油の含有量が、熱可塑性エラストマー100重量部に対して、150重量部を超え、250重量部以下である、請求項1または2に記載の貼付剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の貼付剤(第1態様の貼付剤)は、支持体上に薬物を保持する粘着剤層が形成されてなり、前記粘着剤層は熱可塑性エラストマー、該エラストマー100重量部に対して50重量部を超え、800重量部以下の不揮発性炭化水素油、およびリバスチグミンまたはその塩を含み、かつ粘着付与剤を含んでいてもよく、その粘着剤層中における含有量は10重量%以下である。
【0017】
本発明の貼付剤は、経皮吸収させる有効成分として、リバスチグミンまたはその塩を粘着剤層中に含む。
【0018】
リバスチグミンの塩としては、具体的には、リバスチグミンと酢酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸等のジカルボン酸;ヒドロキシ酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸;炭酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸;グルタミン酸等のアミノ酸などの有機酸との酸付加塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸との酸付加塩を挙げることができる。その中でも、入手のしやすさおよび粘着剤層における分散性等の観点から、酒石酸リバスチグミンが好ましい。
【0019】
本発明においては、上記したリバスチグミンおよびその塩からなる群より1種または2種以上を選択して用いることができる。なお、粘着剤層中での分散性および経皮吸収性の観点からは、遊離(塩基)型のリバスチグミンを用いることが好ましい。
【0020】
貼付剤におけるリバスチグミンの含有量は、特に限定されないが、粘着剤層における分散性や経皮吸収性を考慮すると、粘着剤層中において好ましくは1重量%〜30重量%、さらに好ましくは2.5重量%〜25重量%、最も好ましくは4重量%〜20重量%である。また、入浴時の貼付剤の耐剥離性等を考慮した場合、15重量%以下が好ましい。
【0021】
本発明において用いる「熱可塑性エラストマー」とは、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却すればゴム状弾性体に戻る熱可塑性を示すエラストマーであり、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、オレフィン系など、各種の熱可塑性エラストマーが挙げられる。特に、本発明の目的である十分な皮膚粘着性と低皮膚刺激性を両立させる観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー、特に、スチレン系ブロック共重合体が好ましく用いられる。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしてのスチレン系ブロック共重合体として、具体的には、スチレン‐ブタジエンブロック共重合体、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体、スチレン‐イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン‐エチレン/ブチレンブロック共重合体、スチレン‐エチレン/ブチレン‐スチレンブロック共重合体、スチレン‐エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン‐エチレン/プロピレン‐スチレンブロック共重合体、スチレン‐イソブチレンブロック共重合体、スチレン‐イソブチレン‐スチレンブロック共重合体などが挙げられる。なお、前記において、「エチレン/ブチレン」はエチレンおよびブチレンの共重合体ブロックを示し、「エチレン/プロピレン」はエチレンおよびプロピレンの共重合体ブロックを示す。これらスチレン系ブロック共重合体は、1種のみを用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0023】
上記スチレン系ブロック共重合体のうち、十分な皮膚粘着性および低皮膚刺激性の両立のほか、貼付剤用製品の入手性や取り扱い性の観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン‐イソプレンブロック共重合体からなる群より選択される1種または2種以上が好ましく用いられる。特に、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン‐イソプレンブロック共重合体の混合物を用いることが、粘着性の観点から好ましい。なお、スチレン‐イソプレンブロック共重合体の混合比率が低すぎると皮膚粘着性が低下する傾向となり、高すぎると粘着剤層の形状維持性が低下する傾向となり、皮膚に貼付した際、剥離後皮膚に糊残りが生じるなどの、不具合が生じる可能性がある。このため、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン‐イソプレンブロック共重合体の混合比率は、重量比で、10/90〜82/18が好ましく、20/80〜75/25がより好ましく、30/70〜70/30がさらに好ましい。
【0024】
本発明の目的には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、共重合体におけるスチレン含有量が5重量%〜60重量%であるものが好ましく、10重量%〜50重量%であるものがより好ましい。また、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が20,000〜500,000であるものが好ましく、30,000〜300,000であるものがより好ましい。また、スチレン‐イソプレンブロック共重合体としては、共重合体におけるスチレン含有量が5重量%〜50重量%であるものが好ましく、10重量%〜40重量%であるものがより好ましい。また、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が10,000〜500,000であるものが好ましく、20,000〜300,000であるものがより好ましい。なお、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン‐イソプレンブロック共重合体の混合物は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が20,000〜500,000であるものが好ましく、30,000〜300,000であるものがより好ましい。
【0025】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン‐イソプレンブロック共重合体は、それぞれ、自体公知の方法により製造した共重合体を用いることができる。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン‐イソプレンブロック共重合体は、それぞれ、上記の特性を満たす市販の製品を使用することがきる。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン‐イソプレンブロック共重合体の混合物も市販されており、上記の特性を満たすスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン‐イソプレンブロック共重合体とが上記の混合比率で混合された混合物の市販品を好適に使用することができる。
市販品としては、たとえば、KRATON POLYMERS社製の「KRATON D1161」、「KRATON D1163」、「KRATON D1113」、「KRATON D1119」、JSR社製の「JSR SIS5229」、「JSR SIS5403」、「JSR SIS5505」等が挙げられる。
【0026】
粘着剤層における熱可塑性エラストマーの含有量が少な過ぎると、粘着剤層の形状維持性が低下する傾向となり、多過ぎると皮膚粘着性が不十分な傾向となる。従って、本発明の貼付剤の粘着剤層中における熱可塑性エラストマー含有量は、8重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、より一層好ましくは12重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、さらに一層好ましくは18重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、特に一層好ましくは24重量%以上、最も好ましくは28重量%以上である。また、66重量%以下が好ましく、より好ましくは65重量%以下、より一層好ましくは64重量%以下、さらに好ましくは49重量%以下、さらに一層好ましくは39重量%以下である。
【0027】
なお、より具体的な好適態様として、粘着剤層中における熱可塑性エラストマー含有量は、8重量%〜66重量%を挙げることができ、より好ましくは10重量%〜64重量%、特に好ましくは12重量%〜49重量%、最も好ましくは15重量%〜38重量%である。
【0028】
本発明の貼付剤において、粘着剤層は不揮発性炭化水素油を含有する。
【0029】
不揮発性炭化水素油としては、炭素数が20〜40程度の鎖式飽和炭化水素または炭素数20〜40程度の鎖式不飽和炭化水素が好ましく、たとえば、流動パラフィン、スクアレン、スクアラン、プリスタン等が挙げられる。なかでも入手のしやすさの観点において、流動パラフィンがより好ましい。流動パラフィンは、無色無臭の液状の炭素数20以上のアルカンの混合物であるが、本発明においては、日本薬局方、米国薬局方等に規定する規格に適合するもの等を好ましく用いることができる。不揮発性炭化水素油は粘度の高いものが好ましく、特に粘度の高い流動パラフィンを用いることが、粘着性の観点から好ましい。
【0030】
具体的には、不揮発性炭化水素油は40℃における動粘度が60mm
2/s以上であるものが好ましく、さらに好ましくは70mm
2/s以上、特に好ましくは80mm
2/s以上である。なお、動粘度の上限は特に限定されないが、例えば、取扱いのしやすさや、入手のしやすさ等の観点から、500mm
2/s以下が好ましく、250mm
2/s以下がより好ましい。
【0031】
本発明の貼付剤は、上記した不揮発性炭化水素油を、熱可塑性エラストマー100重量部に対して、50重量部を超えて800重量部以下の重量比で含有する。熱可塑性エラストマー100重量部に対する不揮発性炭化水素油の含有量が800重量部より多くなると、粘着剤層の形状の維持が困難となる。一方、不揮発性炭化水素油の含有量が50重量部以下であると、粘着剤が硬くなりすぎることにより十分な皮膚粘着性が得られない傾向があり、特に、貼付時の皮膚の動きに対する追随性が悪くなり、貼付中に脱落する場合がある。このような観点から、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、熱可塑性エラストマー100重量部に対し、51重量部〜800重量部が好ましく、さらに好ましくは60重量部〜600重量部、特に好ましくは70重量部〜500重量部である。また、この範囲内においても、不揮発性炭化水素油の含量が多いと、粘着性能のうち、剥離応力が低くなる傾向があり、かつ、保存時や貼付時の粘着剤のはみ出しが見られ、包材や衣服に付着する不具合が出やすい傾向にある。一方、不揮発性炭化水素油の含量が少ないと、特に、発汗時や入浴時の皮膚粘着性が低下し、貼付剤が脱落してしまう可能性がある。このような観点から、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、熱可塑性エラストマー100重量部に対し、80重量部〜400重量部が好ましく、さらに好ましくは90重量部〜350重量部、特に好ましくは100重量部〜300重量部である。さらに、不揮発性炭化水素油として、40℃における動粘度が80mm
2/s未満の流動パラフィンを使用する場合、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、熱可塑性エラストマー100重量部に対し150重量部〜250重量部が好ましく、より好ましくは151重量部〜250重量部、特に好ましくは153重量部〜248重量部、最も好ましくは155重量部〜245重量部である。
【0032】
また、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、23.5重量%以上が好ましく、より好ましくは25重量%以上、より一層好ましくは26.5重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上、さらに一層好ましくは45重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。また、88重量%以下が好ましく、より好ましくは85重量%以下、より一層好ましくは83重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、さらに一層好ましく68重量%以下である。
【0033】
なお、より具体的な好適態様として、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、26.5重量%〜83重量%を挙げることができ、さらに好ましくは35重量%〜80重量%、特に好ましくは50重量%〜70重量%である。
【0034】
本発明においては、皮膚刺激性低減の観点から、粘着剤層には、抗酸化剤を含まないことが好ましい。ここでいう抗酸化剤とは、薬物の酸化劣化を防止する目的で添加するものであり、たとえば、ジブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、トコフェロール、酢酸トコフェロール等のトコフェロールエステル誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、2−メルカプトベンズイミダゾール、アントシアニン、カテキンなどが挙げられる。
【0035】
本発明の貼付剤において、粘着剤層中におけるリバスチグミンの分散性や経皮吸収性を高める観点から、粘着剤層はさらにアルコール系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、液状の有機酸、カルボン酸塩、ラクトン、および界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0036】
アルコール系溶媒としては、たとえば、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール等の炭素数12〜20程度の常温で液状の高級飽和脂肪族アルコール;オレイルアルコール等の炭素数12〜20程度の常温で液状の高級不飽和脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、分子量100〜600程度のポリエチレングリコール等の常温で液状の多価アルコールなどが挙げられる。なお、本明細書中の「常温」とは、日本薬局方の通則における15〜25℃の範囲である。
【0037】
なかでも、リバスチグミンの溶解性を向上させる観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の常温で液状の多価アルコールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、分子量100〜600程度のポリエチレングリコール等の常温で液状のジオールがより好ましい。
【0038】
アミド系溶媒としては、たとえばN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン;クロタミトン等のN−置換トルイジン;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド等のアルカンアミドなどが挙げられる。
【0039】
上記アミド系溶媒のうち、リバスチグミンの溶解性、分散性および経皮吸収性を向上させる観点から、N−メチル−2−ピロリドン、クロタミトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、クロタミトンがより好ましい。
【0040】
エステル系溶媒としては、たとえば長鎖脂肪酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、多価カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル、炭酸エステル等が挙げられる。
【0041】
長鎖脂肪酸と一価の脂肪族アルコールとのエステルとしては、炭素数12〜20の長鎖飽和脂肪酸と炭素数1〜20の一価の脂肪族アルコールとの常温で液状のエステルが好ましく、たとえばミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等の常温で液状のミリスチン酸エステル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル等の常温で液状のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソプロピル等の常温で液状のステアリン酸エステルなどが挙げられる。また、炭素数12〜20の長鎖不飽和脂肪酸と炭素数1〜20の一価の脂肪族アルコールとのエステルも好ましく用いることができ、たとえばオレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル等の常温で液状のオレイン酸エステル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル等の常温で液状のリノール酸エステルなどを挙げることができる。
【0042】
中鎖脂肪酸トリグリセリドは、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等の炭素数6〜12程度の脂肪酸と、グリセリンよりなるトリグリセリドであり、本発明においては、常温で液状のカプリル酸トリグリセリド、カプリル酸およびカプリン酸のトリグリセリド混合物、カプリル酸、カプリン酸およびラウリン酸のトリグリセリド混合物等を用いることができる。また、これらを多く含む常温で液状の油脂を用いることもできる。かかる油脂としては、落花生油、オリーブ油、ヒマシ油等を挙げることができる。
【0043】
なお、本発明においては、常温で液状の中鎖脂肪酸トリグリセリド、または常温で液状の中鎖脂肪酸トリグリセリド含有油脂として、医薬品用として市販されている製品を用いることもできる。
【0044】
多価カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステルとしては、たとえば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル等の常温で液状のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチルドデシル等の常温で液状のセバシン酸ジエステルなど、炭素数2〜12のジカルボン酸と、炭素数1〜20の一価の脂肪族アルコールとの常温で液状のジエステルを挙げることができる。
【0045】
炭酸エステルとしては、炭酸と炭素数2〜10のジオールとの環状炭酸エステル、たとえば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン等が挙げられ、炭酸プロピレンが好ましい。
【0046】
上記のエステル系溶媒のなかでも、ミリスチン酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド混合物、セバシン酸ジエステル、炭酸エステルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸およびカプリン酸のトリグリセリド混合物、セバシン酸ジエチル、炭酸プロピレンがより好ましい。
【0047】
本発明においては、上記アルコール系溶媒、アミド系溶媒およびエステル系溶媒は、必要に応じてこれらより1種または2種以上を選択して用いることができる。これら溶媒の含有量としては、粘着剤層全量に対し好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.5重量%〜15重量%である。
【0048】
液状の有機酸としては、たとえば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸、ペラルゴン酸(ノナン酸)等の脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸;乳酸(DL−乳酸、もしくは、L−乳酸および/またはD−乳酸と無水乳酸の混合物)等のヒドロキシカルボン酸;メトキシ酢酸等のアルコキシ基で置換された液状のカルボン酸;メタンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。
【0049】
これらの液状の有機酸は、リバスチグミンの溶解を補助する機能を有し、その結果、低溶解性であるリバスチグミンを粘着剤層中において高濃度に含有させることができるとともに、分散性も向上させることができ、さらに経皮吸収性を向上させる効果を有する。このような観点から、これら液状の有機酸のうち、日本薬局方乳酸、オレイン酸が好ましく用いられ、日本薬局方乳酸が特に好ましく用いられる。
【0050】
本発明においては、必要に応じて上記液状の有機酸から1種または2種以上を選択して含有させることができる。液状の有機酸の含有量としては、粘着剤層全量に対し好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.5重量%〜15重量%である。
【0051】
カルボン酸塩としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等の塩が挙げられる。
【0052】
脂肪族モノカルボン酸としては、たとえば酢酸、酪酸、ヘキサン酸等の炭素数が2〜7の短鎖脂肪酸、たとえばオクタン酸、デカン酸等の炭素数8〜11の中鎖脂肪酸、たとえばミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の炭素数12以上の長鎖脂肪酸、たとえばグリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、マンデル酸等のヒドロキシモノカルボン酸、たとえばメトキシ酢酸等のアルコキシ基で置換されたモノカルボン酸、たとえばレブリン酸等のケトモノカルボン酸などを挙げることができる。
【0053】
脂環式モノカルボン酸としては、たとえばシクロヘキサンカルボン酸等の炭素数が6〜8の脂環式モノカルボン酸を挙げることができる。
【0054】
脂肪族ジカルボン酸としては、たとえばセバシン酸、アジピン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。
【0055】
好ましいカルボン酸としては、炭素数12以上の長鎖脂肪酸、ヒドロキシモノカルボン酸を挙げることができ、たとえば、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、乳酸を挙げることができる。より好ましくはオレイン酸、乳酸である。
【0056】
上記カルボン酸の塩としては、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩や、アミン塩が挙げられるが、入手のしやすさ、安定性および経皮吸収性の向上効果の観点から、ナトリウム塩が好ましく用いられる。
【0057】
また、ラクトンとしては、たとえばアスコルビン酸、イソアスコルビン酸等の5員環ラクトン等を挙げることができる。
【0058】
本発明の貼付剤においては、薬剤の安定性向上効果、または経皮吸収性向上効果を考慮すると、カルボン酸塩またはラクトンとしては、オレイン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸またはイソアスコルビン酸が好ましく用いられる。
【0059】
本発明の貼付剤にカルボン酸塩またはラクトンを含有させる場合の粘着剤層における含有量としては、特に限定されないが、リバスチグミン1モルに対し、好ましくは0.1モル以上5モル以下、さらに好ましくは0.2モル以上3モル以下である。リバスチグミン1モルに対する添加量が0.1モルより少ない場合には、十分な経皮吸収性向上効果が得られないことがあり、リバスチグミン1モルに対する添加量が5モルより多い場合には、粘着特性等の製剤物性が悪化することがある。
【0060】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノラウレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノオレエート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン高級脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プルロニックL−31、プルロニックL−44等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体などの非イオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム類などの陰イオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0061】
上記界面活性剤のうち、経皮吸収性を高める上で、常温で液状の非イオン性界面活性剤が好ましく、常温で液状のソルビタン脂肪酸エステルがより好ましく、ソルビタンモノラウレートが特に好ましい。
【0062】
本発明の貼付剤において、界面活性剤を含有させる場合の粘着剤層中における含有量としては、好ましくは0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%である。
【0063】
本発明の貼付剤においては、上記のような含有量および含有量比にて熱可塑性エラストマーと不揮発性炭化水素油を含有させて粘着剤層とすることにより、良好な皮膚粘着性を発揮させることができるが、粘着剤層には、必要に応じて粘着付与剤を含有させてもよい。
【0064】
ここで粘着付与剤とは、通常貼付剤の分野で皮膚粘着性を付与するために汎用される樹脂であって、たとえばロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン‐インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン‐フェノール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0065】
しかし、粘着剤層に粘着付与剤を含有させる場合、皮膚刺激性の低減等の観点から、粘着剤層中における粘着付与剤の含有量は、10重量%以下とする。該含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であり、粘着付与剤を含まないことが最も好ましい。すなわち、貼付剤の皮膚粘着性との関連から、粘着付与剤の含有量は、熱可塑性エラストマーおよび不揮発性炭化水素油の種類、含有量、およびその含有量比に応じて調製され、粘着付与剤を含有させることなく、十分な皮膚粘着性が得られる場合、粘着付与剤は不要である。
【0066】
本発明の貼付剤を形成する粘着剤層においては、本発明の特徴を損なわない範囲で、任意成分として、賦形剤、分散剤、安定化剤、粘稠剤、軟化剤、着香剤、着色剤等、製剤学上一般的な添加剤を含有させてもよい。
【0067】
本発明において用いられる賦形剤としては、たとえば、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、含水ケイ酸等のケイ素化合物;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子;乾燥水酸化アルミニウムゲル、含水ケイ酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;カオリン、酸化チタン等の顔料などが挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0068】
本発明において用いられる分散剤としては、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、レシチン等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0069】
本発明において用いられる安定化剤としては、ステアリン酸亜鉛、ゼラチン、デキストラン、ポビドン等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0070】
本発明において用いられる粘稠剤としては、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、トラガント、ローカストビーンガム等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0071】
本発明において用いられる軟化剤としては、たとえば、アルモンド油、ナタネ油、綿実油・大豆油混合物、プロセス油、牛脂等の油脂類;精製ラノリン等のロウ類;乳酸セチル等の常温で固形状のエステル類;ポリイソプレンゴム、ポリブテン、生ゴム等のゴム類;結晶セルロース等の高分子;アラントイン等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0072】
本発明において用いられる着香剤としては、d−カンフル、dl−カンフル、d−ボルネオール、dl−ボルネオール、シンナムアルデヒド、ハッカ油、dl−メントール、l−メントール等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0073】
本発明において用いられる着色剤としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、上記したものから1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0074】
本発明の貼付剤は、上記の構成からなる粘着剤層を支持体上に展延して調製される。
【0075】
本発明において「支持体」としては特に限定されず、貼付剤用として汎用されるものを使用することができる。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の伸縮性または非伸縮性の織布、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等のフィルム、あるいはウレタン、ポリウレタン等の発泡性支持体が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、複数種が積層されたものを使用してもよい。さらに、支持体に静電気が蓄積することを防止するため、支持体を構成する前記織布、不織布、フィルム等に帯電防止剤を含有させてもよい。また、粘着剤層との良好な投錨性を得るため、支持体として不織布もしくは織布、またはこれらとフィルムの積層体を用いることができる。支持体の厚さは、フィルムについては通常10μm〜100μm、好ましくは15μm〜50μmであり、織布、不織布、発泡性支持体等の多孔性シートについては通常50μm〜2,000μm、好ましくは100μm〜1,000μmである。
【0076】
また、本発明の貼付剤は、貼付剤の分野において一般的な剥離ライナーを備えることもできる。剥離ライナーとしては、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレンなどの樹脂フィルム、アルミフィルム、発泡ポリエチレンフィルムまたは発泡ポリプロピレンフィルム等、もしくは前記のうち2種以上の積層物を用いることができ、さらにこれらにシリコーン加工したものやフッ素樹脂加工したもの、エンボス加工、親水性加工、疎水性加工等を施したものなどを用いることもできる。該剥離ライナーの厚さは、通常10μm〜200μm、好ましくは15μm〜150μmである。
【0077】
本発明の貼付剤は、たとえば、熱可塑性エラストマーおよびリバスチグミンまたはその塩をそれぞれ不揮発性炭化水素油に溶解して、トルエン等の溶媒に溶解または分散させて、粘着剤層形成用の塗液を調製し、得られた塗液を支持体に塗布し、次いで乾燥させることによって製造することができる。剥離ライナーを用いる場合には、粘着剤層に剥離ライナーを圧着して、積層することができる。あるいは、前記塗液を剥離ライナー上に塗布し、乾燥して剥離ライナーの表面に粘着剤層を形成させ、その後支持体を粘着剤層上に圧着して貼り合わせてもよい。粘着剤層形成用の塗液の塗布は、たとえば、ロールコーター、ダイコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。また、前記塗液の乾燥は加熱下、たとえば40℃〜150℃程度の温度で行うことが好ましい。乾燥後のリバスチグミンを含有する粘着剤層は、好ましくは10g/m
2〜1,000g/m
2であり、より好ましくは20g/m
2〜800g/m
2である。
【0078】
本発明の貼付剤は、薬物を保持する粘着剤層に代えて、薬物を保持する貯蔵層および粘着剤層を支持体上に形成した形態の貼付剤(第2態様の貼付剤)であってもよい。
かかる貼付剤では、薬物を保持する貯蔵層(以下、「薬物貯蔵層」とも略称する)がリバスチグミンまたはその塩を含み、粘着剤層が、熱可塑性エラストマーおよび該エラストマー100重量部に対して50重量部を超え、800重量部以下の不揮発性炭化水素油を含む。また、粘着剤層は粘着付与剤を含んでいてもよく、該粘着付与剤の粘着剤層中の含有量が10重量%以下である。
【0079】
薬物貯蔵層を構成する成分としては、特に限定するものではないが、例えば、特許文献2に記載の成分が挙げられる。なお、粘着剤層に使用する「熱可塑性エラストマー」および「不揮発性炭化水素油」は薬物貯蔵層の構成成分として使用できる。
【0080】
リバスチグミンの塩の具体例としては、前述の第1態様の貼付剤において例示したものと同じである。なお、薬物貯蔵層中での分散性および経皮吸収性の観点からは、遊離(塩基)型のリバスチグミンを用いることが好ましい。
【0081】
貼付剤における薬物の含有量は、特に限定されないが、薬物貯蔵層における分散性や経皮吸収性を考慮すると、薬物貯蔵層中において好ましくは1重量%〜30重量%、さらに好ましくは2.5重量%〜25重量%、最も好ましくは4重量%〜20重量%である。
【0082】
粘着剤層において用いる「熱可塑性エラストマー」は、前述の第1態様の貼付剤の「薬物を保持する粘着剤層」における「熱可塑性エラストマー」と同義であり、その好適態様も踏襲される。粘着剤層中における熱可塑性エラストマー含有量は、好ましくは8重量%〜66重量%であり、より好ましくは10重量%〜65重量%、特に好ましくは12重量%〜64重量%である。
【0083】
粘着剤層が含有する「不揮発性炭化水素油」は、前述の第1態様の貼付剤の「薬物を保持する粘着剤層」における「不揮発性炭化水素油」と同義であり、その好適態様も踏襲される。粘着剤層は、不揮発性炭化水素油を、熱可塑性エラストマー100重量部に対して、50重量部を超えて800重量部以下の重量比で含有する。熱可塑性エラストマー100重量部に対する不揮発性炭化水素油の含有量が800重量部より多くなると、粘着剤層の形状の維持が困難となる。一方、不揮発性炭化水素油の含有量が50重量部以下であると、粘着剤が硬くなりすぎることにより十分な皮膚粘着性が得られない傾向があり、特に、貼付時の皮膚の動きに対する追随性が悪くなり、貼付中に脱落する場合がある。このような観点から、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、好ましくは熱可塑性エラストマー100重量部に対し、51重量部〜800重量部、さらに好ましくは60重量部〜600重量部、最も好ましくは70重量部〜500重量部である。
【0084】
また、粘着剤層中における不揮発性炭化水素油の含有量は、好ましくは23.5重量%〜88重量%、さらに好ましくは25重量%〜85重量%、最も好ましくは26.5重量%〜83重量%である。
【0085】
薬物貯蔵層に「熱可塑性エラストマー」および「不揮発性炭化水素油」を適用する場合、熱可塑性エラストマーと不揮発性炭化水素油は、好ましくは熱可塑性エラストマー100重量部に対し不揮発性炭化水素油を10〜1200重量部の割合で使用するのが好ましく、50〜800重量部の割合で使用するのがより好ましい。
【0086】
薬物貯蔵層中におけるリバスチグミンの分散性や経皮吸収性を高める観点から、薬物貯蔵層はさらにアルコール系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、液状の有機酸、カルボン酸塩、ラクトン、および界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上を含んでいてもよい。
【0087】
かかるアルコール系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、液状の有機酸、カルボン酸塩、ラクトン、および界面活性剤のそれぞれの好適態様および薬物貯蔵層中の含有量は、前述の第1態様の貼付剤の「薬物を保持する粘着剤層」におけるそれが踏襲される。
【0088】
上記のような含有量および含有量比にて熱可塑性エラストマーと不揮発性炭化水素油を含有させて粘着剤層とすることにより、良好な皮膚粘着性を発揮させることができるが、粘着剤層には、必要に応じて粘着付与剤を含有させてもよい。
【0089】
ここでいう「粘着付与剤」は、前述の第1態様の貼付剤の「薬物を保持する粘着剤層」における「粘着付与剤」と同義であり、その好適態様も踏襲される。粘着剤層中における粘着付与剤の含有量は、10重量%以下とする。該含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であり、粘着付与剤を含まないことが最も好ましい。なお、貼付剤の皮膚粘着性との関連から、粘着付与剤の含有量は、熱可塑性エラストマーおよび不揮発性炭化水素油の種類、含有量、およびその含有量比に応じて調製される。
【0090】
当該第2態様の貼付剤における薬物貯蔵層および粘着剤層においては、本発明の特徴を損なわない範囲で、任意成分として、賦形剤、分散剤、安定化剤、粘稠剤、抗酸化剤、軟化剤、着香剤、着色剤等、製剤学上一般的な添加剤を含有させてもよい。かかる、各添加剤の好適態様は前述の第1態様の貼付剤のそれが踏襲される。
【0091】
当該第2態様の貼付剤は上記の構成からなる薬物貯蔵層および粘着剤層を支持体上に展延して調製される。ここでいう「支持体」は、前述の第1態様の貼付剤の「支持体」と同義であり、その好適態様も踏襲される。
【0092】
また、当該第2態様の貼付剤は、貼付剤の分野において一般的な剥離ライナーを備えることもできる。ここでいう「剥離ライナー」は、前述の第1態様の貼付剤の「剥離ライナー」と同義であり、その好適態様も踏襲される。
【0093】
当該第2態様の貼付剤のうち、薬物貯蔵層は、たとえば、薬物およびポリマーを溶媒に溶解したのち、支持体上に塗布・乾燥して得ることができ、もしくは剥離ライナー上に塗布・乾燥して剥離ライナーの表面に薬物貯蔵層を形成させ、その後支持体を薬物貯蔵層上に圧着して貼り合わせてもよい。粘着剤層は、熱可塑性エラストマーおよび薬物またはその塩をそれぞれ不揮発性炭化水素油に溶解して、トルエン等の溶媒に溶解または分散させて、粘着剤層形成用の塗液を調製し、得られた塗液を、上記薬物貯蔵層上、もしくは剥離ライナー上に塗布し、次いで乾燥させることによって製造することができる。剥離ライナー上に粘着剤層を形成した場合は、その後薬物貯蔵層に圧着して貼りあわせることにより、貼付剤を得ることができる。薬物貯蔵層および粘着剤層形成用の塗液の塗布は、たとえば、ロールコーター、ダイコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。また、前記塗液の乾燥は加熱下、たとえば40℃〜150℃程度の温度で行うことが好ましい。乾燥後の薬物を含有する粘着剤層は、好ましくは10g/m
2〜1,000g/m
2であり、より好ましくは20g/m
2〜800g/m
2である。
【実施例】
【0094】
以下実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
[実施例1〜10]リバスチグミンを含有する貼付剤の調製
表1に示す処方に従って、粘着剤層を構成する各成分を秤取した。まず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)/スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)混合物(クレイトン社製「KRAYTON D1119」(重量平均分子量:207,500)、JSR社製「JSR SIS5505」、「JSR SIS5229」)を、当該混合物100重量部に対し、230重量部のトルエンに溶解した。前記溶解液に、流動パラフィン(ソネボーン社製の「KAYDOL」、「Hydrobrite 550PO」、「Hydrobrite HV」)、リバスチグミンを加えて混合撹拌し、粘着剤層形成用の塗液を調製した。
なお、上記塗液をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(剥離ライナー)に塗布し、乾燥後の粘着剤層中のリバスチグミン含有量が1.8mg/cm
2となるように調製した。80℃のオーブンにて1時間乾燥後、該粘着剤層の表面にPET製フィルム(支持体)をラミネートし、15cm×30cmの大きさに裁断して、目的の貼付剤を得た。なお、表中のSIS/SI比は重量比である。
【0096】
【表1】
【0097】
[比較例1]
表1の実施例1の処方において、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン-イソプレンブロック共重合体混合物に代えて、市販の熱硬化性感圧性アクリル系粘着剤(「Duro tak 87−2194」、ヘンケル社製、固形分含有量=40重量%)を、固形分含有量が表1の熱可塑性エラストマー含有量と同じになるように秤取して流動パラフィンを添加し、リバスチグミンを溶解して加えて混合撹拌し、粘着剤層形成用の塗液を調製した。
該塗液をシリコーン処理したPET製フィルム(剥離ライナー)に塗布し、乾燥後の粘着剤層重量が100g/m
2となるように調製し、80℃のオーブンにて60分乾燥したが硬化せず、貼付剤は得られなかった。
【0098】
[比較例2、3]
表2に示す処方に従って、粘着剤層を構成する各成分を秤取し、実施例1と同様に貼付剤を調整したが、比較例2に関しては、十分な粘着性が得られず、比較例3に関しては粘着剤層が維持できず、評価できなかった。
【0099】
【表2】
【0100】
[試験例1]粘着特性試験
<剥離強度>
25mm×300mmに裁断した貼付剤をステンレス(SUS304)板に貼付し、180°方向に300mm/minのスピードで剥離した際の応力を測定した。
<ボールタック>
100mm幅で裁断した貼付剤を貼付した傾斜角30°の斜面において、100mmの助走路を経て1/32インチ〜1インチのボールを転がして、貼付剤上で5秒以上留まった最大のボールの呼び径を測定した。
<保持力>
25mm×300mmに裁断した貼付剤をステンレス(SUS304)板に貼付し、90°方向に25gの荷重を60分間掛け、剥離した距離を測定した。
<はみ出し>
実施例および比較例で調整した貼付剤の端部を、支持体の上から指先で圧縮し、はみ出しの度合いを下記基準に従って評価した。
A:圧縮しても、粘着層は全くはみ出さない。
B:圧縮しても、粘着層がほとんどはみ出さない。
C:圧縮時、粘着層が変形して支持体からはみ出すが、圧縮を開放すると元に戻る。
D:圧縮時、粘着層が変形して支持体からはみ出し、圧縮を開放しても元に戻りにくい。
<入浴時剥離の程度>
実施例および比較例で調整した貼付剤を直径36mmの円形に打抜き、健常ボランティア5名の胸部に貼付し、入浴時の剥離の度合いを下記基準に従って評価した。
A:5名とも剥離しない。
B:1〜2名に端部の剥離が見られるものの、脱落はしない。
C:1〜2名で貼付剤が脱落。
D:3名以上で脱落。
【0101】
上記粘着特性試験において、測定結果を表3に示した。
【0102】
【表3】
【0103】
表3より、本発明の実施例の各貼付剤は、適度な剥離強度と十分なタックを示すことが明らかとなった。また、高粘度の流動パラフィンを用いた場合、剥離強度や保持力に優れ、また、流動パラフィン含有量の調整により、粘着層のはみ出しが少なく、入浴時の剥離も少ない製剤が得られた。
【0104】
[試験例2]in vitro皮膚透過性試験
国際公開第2006/093139号パンフレットに記載された方法に準じて、Wister系雄性ラット(5週齢)の腹部抽出皮膚を縦型フランツ拡散セルに装着した。実施例1〜3の各貼付剤および支持体上に薬物層および粘着剤層を形成してなる市販のリバスチグミン含有貼付剤(リバスチグミン含有量=1.8mg/cm
2)をそれぞれ面積1.0cm
2の円形に打ち抜いて試料とし、拡散セルのラット皮膚上に貼付した(n=3)。レセプター側には10体積%エタノール生理食塩水を用いて、経時的にレセプター溶液中のリバスチグミン含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。HPLCの測定条件を以下に示す。
<HPLC測定条件>
HPLCシステム:高速液体クロマトグラフ(LC2010C) 株式会社島津製作所製
カラム:ODS、4.6mmφ×15cm、5μm
カラム温度:25℃、
移動相:緩衝液/メタノール=50/50、
(緩衝液;5.0mM 1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム、1体積%リン酸)
検出波長:220nm、
流量:0.8mL/min.
【0105】
上記皮膚透過性試験において、試料貼付後24時間にラット皮膚を透過したリバスチグミン量を求め、表4に示した。
【0106】
【表4】
【0107】
表4より、本発明の実施例1〜3の各貼付剤は、単位面積当たりのリバスチグミン含有量が同量である市販のリバスチグミン含有貼付剤より多く、実施例4〜10においては同等程度であり、皮膚透過性が良好であることが示された。
【0108】
[試験例3]皮膚一次刺激性試験
貼付開始日の3日前にkbs:JW雌性家兎(17週齢)の背部被毛を電気バリカンで毛刈りし、実施例1の貼付剤と市販のリバスチグミン含有貼付剤をそれぞれ2.5cm角に裁断して皮膚に貼付した(n=3)。貼付場所を覆うように油紙を載せ、胸部から腹部全体にかけてアンダーラップテープ(ニチバン株式会社製)で覆うように巻き付け、さらに家兎用ジャケット(BJ03、バイオリサーチセンター株式会社製)を装着した。24時間固定後、試料を除去し、除去後1時間目、24時間目、48時間目、および72時間目にJ.Pharmacol.Exp.Ther.82,377−390(1944)に記載の方法に基づき、皮膚刺激反応の程度を評価した。
【0109】
すなわち、上記各時間において、紅斑および痂皮形成ならびに浮腫形成について下記評価基準に従って評価し、点数化した。各評価点の平均値を求め一次評価値を算出し、前記各時間の平均評価値について各家兎の平均値を求めて、一次刺激性指数P.I.I.(Primary Irritation Index)とした。P.I.I.値は最低0、最高8となり、表5に示す4つの皮膚一次刺激反応のカテゴリーに区分される。
【0110】
<皮膚刺激反応の評価基準>
[紅斑および痂皮の形成]
紅斑を認めない;0点
非常に軽度な(かろうじて識別できる程度の)紅斑を認める;1点
明確な紅斑を認める;2点
中等度ないし高度の紅斑を認める;3点
高度の紅斑から紅斑の採点を妨げる程度の痂皮の形成を認める;4点
[浮腫の形成]
浮腫を認めない;0点
非常に軽度な(かろうじて識別できる程度の)浮腫を認める;1点
軽度の浮腫を認める(はっきりした膨隆による明確な縁が識別できる);2点
中等度の浮腫(約1mmの膨隆)を認める;3点
高度の浮腫(1mm以上の膨隆と曝露範囲を超えた広がり)を認める;4点
【0111】
【表5】
【0112】
皮膚一次刺激性試験の結果を表6に示す。
【0113】
【表6】
【0114】
表6より、市販のリバスチグミン含有貼付剤は、P.I.I.値が2.92となり、中等度の刺激性を示した。これに対し、実施例の貼付剤はP.I.I.値が0で無刺激性と評価され、皮膚刺激性が低いことが示された。
【0115】
[試験例4]安定性試験
市販のリバスチグミン製剤と同じ包材中に、実施例1および9で得られた製剤を封入し、市販のリバスチグミン製剤とともに40℃、75%RHにて保管した。初期および保管後(1ヶ月後と3ヶ月後)の製剤から粘着剤層をTHFに溶解し、HPLCにてリバスチグミン含量を定量、初期値に対する保管後の薬物残存率を比較した
【0116】
上記安定性試験において、測定結果を表7に示した。
【0117】
【表7】
【0118】
表7より、本発明の実施例1および9は、市販のリバスチグミン貼付剤と同等程度の安定性を示した。
【0119】
[実施例11]リバスチグミンを含有する貼付剤の調製
表8に示す処方に従って、薬物貯蔵層を構成する各成分を秤取した。まず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)/スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)混合物(クレイトン社製「KRAYTON D1119」(重量平均分子量:207,500))を、当混合物100重量部に対し、230重量部のトルエンに溶解した。前記溶解液に、流動パラフィン(ソネボーン社製「Hydrobrite HV」)、リバスチグミンを加えて混合撹拌し、薬物貯蔵層形成用の塗液を調製した。
上記塗液をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(剥離ライナー)に塗布し、乾燥後の薬物貯蔵層中のリバスチグミン含有量が1.8mg/cm
2となるように調製した。80℃のオーブンにて1時間乾燥後、該薬物貯蔵層の表面にPET製フィルム(支持体)をラミネートし目的の薬物貯蔵層を得た。
一方、表8に示す処方に従って、粘着剤層を構成する各成分を秤取した。まず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)/スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)混合物(クレイトン社製「KRAYTON D1119」(重量平均分子量:207,500))を、当該混合物100重量部に対し、230重量部のトルエンに溶解した。前記溶解液に、流動パラフィン(ソネボーン社製「Hydrobrite HV」)を加えて混合撹拌し、粘着剤層形成用の塗液を調製した。
上記塗液をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(剥離ライナー)に塗布し、乾燥後の粘着剤層重量が100g/m
2となるように調製した。80℃のオーブンにて1時間乾燥後、該粘着剤層の表面に薬物貯蔵層をラミネートし、15cm×30cmの大きさに裁断して、目的の貼付剤を得た。
【0120】
【表8】
【0121】
実施例11の貼付剤を前述の試験例2(in vitro皮膚透過性試験)に供し、試料貼付後24時間にラット皮膚を透過したリバスチグミン量を求め、表9に示した。
【0122】
【表9】
【0123】
表9より、本発明の実施例1の貼付剤は、単位面積当たりのリバスチグミン含有量が同量である市販のリバスチグミン含有貼付剤と同等程度であり、皮膚透過性が良好であることが示された。
【0124】
実施例11の貼付剤を前述の試験例3(皮膚一次刺激性試験)に供し、皮膚刺激性を評価した。その結果を表10に示す。
【0125】
【表10】
【0126】
表10より、市販のリバスチグミン含有貼付剤は、P.I.I.値が2.92となり、中等度の刺激性を示した。これに対し、実施例11の貼付剤はP.I.I.値が0で無刺激性と評価され、皮膚刺激性が低いことが示された。