特許第6153189号(P6153189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153189廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153189
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-259382(P2012-259382)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104426(P2014-104426A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−233558(JP,A)
【文献】 特開2010−222874(JP,A)
【文献】 特開2000−325907(JP,A)
【文献】 特開平4−146319(JP,A)
【文献】 特開2009−35885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00
E02B 7/02
E02B 3/04
E02B 3/16
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を埋設処理する廃棄物処分施設で、廃棄物の上下にそれぞれ、粘性土とベントナイトを用いた各種の遮水材からなる低透水層を形成することにより、前記廃棄物処分施設での水の浸透や水の前記廃棄物処分施設外への漏洩を抑制する廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法において、
前記低透水層の下層を粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成し、
前記遮水材にベントナイト粉体を水に溶かしスラリー状にしてなるベントナイト溶液を採用して、前記ベントナイト溶液を前記低透水層の下層の上面に塗布し、この過程で、当該上面の空隙に浸み込ませ、
この上に前記低透水層の上層を、粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成して、この過程で、前記低透水層の下層の上面の前記ベントナイト溶液を前記低透水層の上層の下面の空隙に浸み込ませ、
前記低透水層の下層と上層の中間で前記ベントナイト粉体をその膨潤作用により膨潤させて、前記低透水層の下層と上層の中間にベントナイト目止め層を積層形成し、前記下層の上面及び前記上層の下面を前記ベントナイト目止め層で目止めする、
ことを特徴とする廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法。
【請求項2】
ベントナイト粉体にベントナイトの吸水膨潤作用を遅延する材料を含有し、前記ベントナイト粉体の吸水膨張作用を制御する請求項1に記載の廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の廃棄物処分場や低レベル放射性廃棄物処分場で廃棄物を埋設処理する場合、廃棄物の下及び上にそれぞれ低透水層を形成し、降雨の処分場への浸透や浸透水(汚染水)の場外への漏出を抑制している。
これらの廃棄物処分施設では、これまで、降水の浸透を防止し、浸透水の場外への漏洩を防止するために、高密度ポリエチレンシートなどの遮水シート、ベントナイト混合土などの低透水性の粘土、毛管力の働きを利用したキャピラリーバリアなどが研究され、これらを用いた遮水工が採られている。
【0003】
近年、この種の低透水層構造ではベントナイトを利用した遮水材が多用されている。このような遮水材としてはジオシンセティッククレイライナー(GCL)が周知であり、例えば特許文献1、2などに開示されている。これらの文献1、2に記載のとおり、GCLはベントナイトを主成分とする遮水材の遮水面となる上下両面に不織布や織布などのジオテキスタイルを積層したもので、上下のジオテキスタイルの間でベントナイトがその吸水性により膨潤して透水性を低減し、高い遮水作用を発揮する。
図5にこのGCLを用いた低透水層構造を例示している。図5に示すように、この低透水層構造は、GCL52と、粘性土又はベントナイト混合土51、53の積層構造からなり、現場での施工では、処分場の整地後の基盤上に粘性土又はベントナイト混合土51、GCL52を順次敷き、このGCL52上に粘性土又はベントナイト混合土53を敷設することによって構築する。このようにしてGCL52の高い遮水性能により処分場での降水の浸透、浸透水の場外への漏洩を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003− 24894公報
【特許文献2】特開2010−143793公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の廃棄物処分施設の低透水層構造では、GCL、及びベントナイト混合土について、次のような問題がある。
(1)GCLは、ベントナイトを保護するために、既述のとおり、ベントナイトの遮水面側の2面を不織布や織布などのジオテキスタイルで被覆する構造になっているので、ベントナイトは天然の粘土鉱物で長期的かつ安定的にその性能を維持することができるものの、他面で、不織布や織布などのジオテキスタイルが人工材料でその耐久性に限りがある。廃棄物処分施設での廃棄物の処分が長期に亘り、特に低レベル放射性廃棄物処分場にあっては廃棄物の処置が数百年に及ぶことから、廃棄物処分施設の低透水層構造には、長期的な耐久性を考えた場合に、天然の材料のみ又はその組み合わせからなることが望ましい。
(2)ベントナイト混合土はベントナイトそれ自体が高価なので、ベントナイトの混合比率を高くすると、材料費が高額となる。また、ベントナイトは原料土によって均質に混合することが難しく、このため、ベントナイトと原料土との混合に多くの手間と費用が必要になる。したがって、廃棄物処分施設の低透水層構造において、ベントナイトの使用量を増加させると、コスト全体が大きく増大する。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、この種の廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法において、天然の材料の組み合わせにより長期的に亘り従来の遮水性能と略同等又はそれ以上の遮水性能を発揮すること、材料費を低く抑えて安価に施工することなど、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
廃棄物を埋設処理する廃棄物処分施設で、廃棄物の上下にそれぞれ、粘性土とベントナイトを用いた各種の遮水材からなる低透水層を形成することにより、前記廃棄物処分施設での水の浸透や水の前記廃棄物処分施設外への漏洩を抑制する廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法において、
前記低透水層の下層を粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成し、
前記遮水材にベントナイト粉体を水に溶かしスラリー状にしてなるベントナイト溶液を採用して、前記ベントナイト溶液を前記低透水層の下層の上面に塗布し、この過程で、当該上面の空隙に浸み込ませ、
この上に前記低透水層の上層を、粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成して、この過程で、前記低透水層の下層の上面の前記ベントナイト溶液を前記低透水層の上層の下面の空隙に浸み込ませ、
前記低透水層の下層と上層の中間で前記ベントナイト粉体をその膨潤作用により膨潤させて、前記低透水層の下層と上層の中間にベントナイト目止め層を積層形成し、前記下層の上面及び前記上層の下面を前記ベントナイト目止め層で目止めする、
ことを要旨とする。
この場合、ベントナイト粉体にベントナイトの吸水膨潤作用を遅延する材料を含有し、前記ベントナイト粉体の吸水膨張作用を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の廃棄物処分施設の低透水層構造の施工方法によれば、低透水層の下層を粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成し、ベントナイト粉体を水に溶かしスラリー状にしてなるベントナイト溶液を低透水層の下層の上面に塗布し、当該上面の空隙に浸み込ませ、この上に低透水層の上層を、粘性土又はベントナイト混合土を重機により撒き出し、敷き均し、転圧して締め固めることにより形成して、この過程で、低透水層の下層の上面のベントナイト溶液を低透水層の上層の下面の空隙に浸み込ませ、低透水層の下層と上層の中間でベントナイト粉体をその膨潤作用により膨潤させて、低透水層の下層と上層の中間にベントナイト目止め層を積層形成し、下層の上面及び上層の下面をベントナイト目止め層で目止めするので、天然の材料の組み合わせにより長期的に亘り従来の遮水性能と略同等又はそれ以上の遮水性能を発揮することができ、しかも材料費を低く抑えて安価に施工することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態における廃棄物処分施設の低透水層構造を示す図
図2】同低透水層構造の施工方法を示す図
図3】同低透水層構造の室内透水試験とその結果を示す図
図4】本発明の他の実施の形態における廃棄物処分施設の低透水層構造及びその施工方法を示す図
図5】従来の廃棄物処分施設の低透水層構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に廃棄物処分施設の低透水層構造を示している。図1に示すように、この低透水層構造は、粘性土層(ベントナイト混合土層を含む。)1、3とベントナイトを用いた遮水材21が積層されて形成される。特に、この構造では、遮水材21にベントナイト粉体が採用され、ベントナイト粉体21が粘性土層1、3の遮水側の面の粘性土粒子間の空隙10、30に充填されてなり、ベントナイト粉体21の吸水膨潤作用により、粘性土層1、3の遮水側の面間にベントナイト目止め層2を積層形成する。
この場合、この構造は下層、中間層、上層の3層構造からなる。上下の層はそれぞれ粘性土層1、3で、これらの粘性土層1、3は一般に廃棄物処分場で積層される低透水層相当になっている。中間層はベントナイト粉体21の層で、ベントナイト粉体21が含水状態で下層の粘性土層1の遮水側の面である上面と上層の粘性土層3の遮水側の面である下面との間に当該各面の粘性土粒子間の空隙10、30に浸み込んだ状態となるように積層される。このようにしてベントナイト粉体21の膨潤作用により、下層の粘性土層1の上面(遮水面)及び上層の粘性土層3の下面(遮水面)がベントナイト粉体21からなるベントナイト目止め層2で目止め(遮水面の粘性土粒子間の空隙10、30が水密に閉塞)される。
【0011】
図2にこの低透水層構造の施工方法を示している。この施工方法では、粘性土層1、3とベントナイト粉体2を次のように積層して形成する。
まず、下層を一般に廃棄物処分場で形成される低透水層相当の粘性土層(ベントナイトをまったく含有していないもの)又はベントナイト混合土層(ベントナイトを低い割合で混合したもの)1として形成する。この場合、粘性土又はベントナイト混合土を油圧ショベルやブルドーザーなどによって撒き出し、敷き均す。そして、この粘性土又はベントナイト混合土全体を転圧ローラーなどを用いて均一に転圧し締め固める。なお、この層の厚みは数cm〜数十cm程度を考える。
次に、ベントナイト粉体21を水に溶かしスラリー状にした液(ベントナイト溶液)を下層の粘性土層又はベントナイト混合土層1の表面に塗布し、この過程で、ベントナイト溶液を粘性土層又はベントナイト混合土層1の表面の空隙10に浸み込ませていく。
そして、このベントナイト粉体21の中間層の上に、上層を、下層と同様に、一般に廃棄物処分場で形成される低透水層相当の粘性土層又はベントナイト混合土層3として形成する。ベントナイト混合土層3を形成する際には、転圧ローラーや振動ローラーを用いることによりベントナイト粉体(あるいはベントナイト溶液)をベントナイト混合土層1や3の空隙により効果的に浸透させることができる。
このようにして吸水状態のベントナイト粉体21を粘性土層又はベントナイト混合土層1、3に充填し、膨潤させて、下層の粘性土層1の上面(遮水面)及び上層の粘性土層3の下面(遮水面)をベントナイト目止め層2で目止めする。
【0012】
このような施工により、上下各層の粘性土層又はベントナイト混合土層3、1は下面、上面がそれぞれ粘性土粒子間の空隙30、10にベントナイト溶液が浸み込み膨潤することで水密に閉塞され、これによりこれら粘性土層又はベントナイト混合土層3、1の透水係数がさらに低下して、止水性が高められる。
【0013】
本願発明者は、この低透水層構造の止水効果を確認するために、室内透水試験を実施した。図3(右側)に示すように、従来の粘性土層としてクニボンド(ベントナイトの一種)を混合した粘性土を用い、その中間にスラリー状のベントナイトペーストを塗布した供試体と、ベントナイトペーストを塗布していない供試体を作成し、透水試験を行って、透水性の比較を行った。
試験結果を図3(左側)に示す。
この結果から、ベントナイトを塗布していない供試体に比べ、ベントナイトを塗布した供試体は透水係数が1桁以上低下し透水性が低くなっており、止水性能が高められていることが確認された。
【0014】
以上説明したように、この廃棄物処分施設の低透水層構造及びその施工方法によれば、遮水材にベントナイト粉体21を採用し、ベントナイト粉体21の溶液を粘性土層(ベントナイト混合土を含む。)1、3の遮水側の面に塗布して当該面の粘性土粒子間の空隙10、30に充填し、ベントナイト溶液の膨潤作用により、粘性土層1、3の遮水側の面を目止めするようにしたので、次のような効果を奏する。
(1)粘性土層1、3の遮水面のベントナイトによる目止めにより、従来の低透水層に比較して透水係数を1桁以上低下させるまでに止水作用を向上させることができる。
(2)粘性土とベントナイトの天然の材料の組み合わせにより、長期的かつ安定的に遮水性能を維持することができる。
(3)所定の低透水性の遮水層が求められる場合でも、トータルとしてベントナイトの使用料を低減して、低コストの低透水層を構築することができる。また、GCLなど他の工法に比べて、安価に施工することができる。
【0015】
なお、上記実施の形態では、廃棄物処分施設の低透水層構造及びその施工方法に関して、ベントナイト粉体21を含水状態で粘性土層(ベントナイト混合土を含む。)1、3の遮水側の面の粘性土粒子間の空隙10、30に充填するものとしたが、ベントナイト粉体21を粘性土層1、3の遮水側の面に充填した状態から吸水するようにしてもよい。
この場合、図4に示すように、まず、下層を一般に廃棄物処分場で形成される低透水層相当の粘性土層又はベントナイト混合土層1として形成した後、この粘性土層又はベントナイト混合土層1の遮水側の面となる上面にベントナイト粉体21を噴霧若しくは撒布することにより当該面の粘性土粒子間の空隙10に充填する。続いて、このベントナイト粉体21の中間層の上に、上層を、下層と同様に、一般に廃棄物処分場で形成される低透水層相当の粘性土層又はベントナイト混合土層3として形成する。この過程で、下層の粘性土層又はベントナイト混合土層1上に載っているベントナイト粉体21が、振動などにより、上層の粘性土層又はベントナイト混合土層3の遮水側の面となる下面の粘性土粒子間の空隙30にも充填されながら、上下の粘性土層又はベントナイト混合土層1、3間に介挿される。そして、充填後のベントナイト粉体21に降雨などにより吸水させるようにすればよい。雨が降ると、雨水は上層の粘性土層又はベントナイト混合土層3から中間層のベントナイト粉体21に浸透して容易に含水状態となり、ベントナイトの粉末がスラリー状に変化して、上下各層の粘性土層又はベントナイト混合土層3、1の遮水面の粘性土粒子間の空隙30、10に浸み込んでいく。このようにしてこのベントナイトの吸水膨潤作用により、上下各層の粘性土層又はベントナイト混合土層3、1の遮水面を目止めする。このようにしても上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、ベントナイト粉体21を含水状態で粘性土層1、3の遮水側の面の粘性土粒子間の空隙10、30に充填する場合に、施工上の必要により、ベントナイト粉体21にベントナイトの吸水膨潤作用を遅延する材料を含有して、ベントナイトの止水効果を遅延させるように制御してもよい。この場合、ベントナイト粉体21を水に代えて塩水やエタノールなどのベントナイトの膨潤性を抑える液体に溶かして、このスラリー状のベントナイト溶液を粘性土層1、3の空隙10、30に浸入させておき、雨水などの淡水が粘性土層1、3のベントナイト溶液に浸透して塩分を洗い流す時点でベントナイト溶液を膨潤させて、止水効果を発揮するようにすればよい。
【符号の説明】
【0016】
1 粘性土層(ベントナイト混合土層を含む。)
10 空隙
2 ベントナイト目止め層
21 遮水材(ベントナイト粉体)
3 粘性土層(ベントナイト混合土層を含む。)
30 空隙
図1
図2
図3
図4
図5