特許第6153191号(P6153191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153191
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】観察用具及び観察装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20170619BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170619BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M1/34 A
   G02B21/34
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-40111(P2013-40111)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166171(P2014-166171A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513050279
【氏名又は名称】株式会社イントロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100183058
【弁理士】
【氏名又は名称】李 京佳
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】根本 知己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−113092(JP,A)
【文献】 特開2001−141735(JP,A)
【文献】 特開2003−029157(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082279(WO,A1)
【文献】 特開2009−055816(JP,A)
【文献】 特開2008−086264(JP,A)
【文献】 特開2006−050975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
G02B 21/34
G02B 21/26
G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察用具であって、
台座及びチップを含み、
前記台座は、前記チップを配置するチップ配置領域を有し、
前記チップは、培養室、培養液導入流路及び培養液導出流路を含み、
前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導入流路の各上部は開口しており、
前記培養室に、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路が連通し、
前記培養室は外部から観察可能であり、
前記台座のチップ配置領域の前記チップの前記培養室に相当する位置に貫通孔が形成され、
前記台座は、前記チップ配置領域に前記チップを着脱可能に固定するためのチップ固定手段を含む、
ことを特徴とする観察用具。
【請求項2】
さらに、繊維材を含み、
前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の少なくとも一方に、前記繊維材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の観察用具。
【請求項3】
前記チップ固定手段が、前記チップ配置領域における前記貫通孔を含む領域に形成された凹部であり、前記凹部の内形状と前記チップの外形状とが略同じであることを特徴とする請求項1又は2記載の観察用具。
【請求項4】
さらに、培養液導入管を固定する培養液導入管固定手段及び培養液導出管を固定する培養液導出管固定手段を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の観察用具。
【請求項5】
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察装置であって、
顕微鏡及び観察用具を含み、
前記顕微鏡下に前記観察用具が配置され、
前記観察用具が請求項1から4のいずれか一項に記載の観察用具であることを特徴とする観察装置。
【請求項6】
さらに、培養液を循環させる培養液循環手段を含み、
前記チップにおいて、前記培養液循環手段により、前記培養液導入流路から前記培養室に前記培養液が導入され、前記細培養室から前記培養液導出路に前記培養液が導出されることを特徴とする請求項5記載の観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察用具及びそれを含む観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡による生細胞、組織等の観察において、前記生細胞等の活動は、温度等の培養条件の変化に伴いすぐ変化する。このため、安定した条件での観察を行うことが重要である。従来、前記条件を達成するために、温度維持装置、ガス供給装置、培養液導入出装置等と顕微鏡とを組合せた複雑な装置が必要であった(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
また、前記装置を用いる場合、前記装置内に前記培養ディッシュを設置し、さらに、前記装置を設置するという複雑な操作が必要であった。そして、前記顕微鏡観察中に前記生細胞等に薬剤処理等を行う場合、前記装置から前記培養ディッシュを取り出し、前記薬剤等の処理後に、再度、前記装置内に設置するという煩雑な操作が必要であった。
【0004】
さらに、正立顕微鏡では、前記装置を用いる場合の操作の複雑さに加え、前記培養ディッシュ中の培養液交換が不安定であるという問題があり、培養条件の安定化が困難であった。この結果、前記生細胞等の顕微鏡観察は、倒立顕微鏡を用いて主に行われ、より詳細な観察が可能な多光子顕微鏡等を含む正立顕微鏡を用いることが困難であった。
【0005】
このため、より簡便に培養試料の交換ができ、かつ、培養条件が一定化でき、さらに、正立顕微鏡及び倒立顕微鏡のいずれにおいても使用可能な観察手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4562165号
【特許文献2】特表2003−528637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、観察対象の培養試料の交換が簡便であり、前記培養試料の培養条件が容易に一定化でき、また、正立顕微鏡及び倒立顕微鏡の両者において使用可能な観察用具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の課題を解決するために、本発明の観察用具は、
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察用具であって、
台座及びチップを含み、
前記台座は、前記チップを配置するチップ配置領域を有し、
前記チップは、培養室、培養液導入流路及び培養液導出流路を含み、
前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導入流路の各上部は開口しており、
前記培養室に、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路が連通し、
前記培養室は外部から観察可能であり、
前記台座のチップ配置領域の前記チップの前記培養室に相当する位置に貫通孔が形成され、
前記台座は、前記チップ配置領域に前記チップを着脱可能に固定するためのチップ固定手段を含む、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の観察装置は、
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察装置であって、
顕微鏡及び観察用具を含み、
前記顕微鏡下に前記観察用具が配置され、
前記観察用具が本発明の観察用具であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の観察用具によれば、観察対象の培養試料(例えば、培養細胞、培養組織)を乗せたチップを、台座に固定するだけで観察ができ、また、前記チップを前記台座から取り外し可能であるため、前記観察対象の培養試料を簡便に交換することができる。また、本発明の観察用具によれば、培養液の導入出の制御が容易であるため、前記培養試料を一定の条件下で簡単に観察できる。さらに、本発明の観察用具によれば、観察用具の上部及び下部の両方向から培養試料を観察できるため、正立顕微鏡及び倒立顕微鏡の両者において使用可能である。このため、本発明は、生命科学分野等における、ライブイメージング等の顕微鏡観察等に極めて有用なツールとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の観察用具の一例を示す模式平面図及び模式断面図である。
図2図2は、本発明の観察用具のその他の例を示す模式平面図及び模式断面図である。
図3図3は、本発明の観察用具のその他の例を示す模式平面図及び模式断面図である。
図4図4は、本発明の観察装置の一例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の観察用具において、
さらに、繊維材を含み、
前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の少なくとも一方に、前記繊維材が配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明の観察用具において、
前記チップ固定手段が、前記チップ配置領域における前記貫通孔を含む領域に形成された凹部であり、前記凹部の内形状と前記チップの外形状とが略同じであることが好ましい。
【0014】
本発明の観察用具において、
さらに、培養液導入管を固定する培養液導入管固定手段及び培養液導出管を固定する培養液導出管固定手段を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の観察装置において、
さらに、培養液を循環させる培養液循環手段を含み、
前記チップにおいて、前記培養液循環手段により、前記培養液導入流路から前記培養室に前記培養液が導入され、前記培養室から前記培養液導出路に前記培養液が導出されることが好ましい。
【0016】
以下、本発明の観察用具及び観察装置について、図面を参照して、例をあげて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定されない。なお、以下の図1から図4において、同一部分には、同一符号を付している。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。
【0017】
以下の説明において、「上」は、本発明の観察用具において、台座に対してチップが固定される側の方向を示し、「下」は、前記台座に対して前記チップが固定される側の反対方向を示す。また、「深さ」は、前記チップの上面側からの距離を示す。
【0018】
[観察用具]
本発明の観察用具は、
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察用具であって、
台座及びチップを含み、
前記台座は、前記チップを配置するチップ配置領域を有し、
前記チップは、培養室、培養液導入流路及び培養液導出流路を含み、
前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導入流路の各上部は開口しており、
前記培養室に、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路が連通し、
前記培養室は外部から観察可能であり、
前記台座のチップ配置領域の前記チップの前記培養室に相当する位置に貫通孔が形成され、
前記台座は、前記チップ配置領域に前記チップを着脱可能に固定するためのチップ固定手段を含む、
ことを特徴とする。
【0019】
<チップ>
チップの形状は、特に制限されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形状、円形状、楕円形状、流線形状等、任意の形状とすればよい。前記チップの高さは、特に制限されず、例えば、使用する培養試料、観察装置等に応じて適宜設定できる。
【0020】
前記チップの素材は、特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス等が挙げられる。前記プラスチックは、特に制限されず、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート等があげられる。前記金属は、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮等が挙げられる。前記チップは、単一の素材から成形されてもよいし、複数の素材から成形されてもよい。後者の場合、例えば、培養室、培養液導入流路、培養液導出流路及びその他のチップ領域で、2以上の異なる素材を使用する場合が挙げられる。前記2つ以上の異なる素材を用いる場合、前記培養室は、透明な素材であることが好ましい。前記透明な素材は、特に制限されず、例えば、前述のガラス及びプラスチックの例示を援用できる。
【0021】
前記培養室の形状は、特に制限されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形状、円形状、楕円形状、流線形状等、任意の形状とすればよいが、培養液交換の安定性から、円形状または流線形状が好ましい。前記培養室の深さは、特に制限されないが、例えば、前記培養液導入流路または前記培養液導出流路との連通部分において、前記培養室の深さと前記培養液導入流路または前記培養液導出流路の深さとが、それぞれ略同一の深さであることが好ましい。
【0022】
前記培養室は、さらに、細胞等の足場となるタンパク質等で処理してもよい。前記タンパク質等は、特に制限されず、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ポリエルリジン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。後述する培養試料を、例えば、前記培養室上で直接培養する場合、前記処理を行うことが好ましい。
【0023】
前記培養試料は、特に制限されず、例えば、組織、培養細胞、生体から採取した細胞、初代培養細胞等が挙げられる。前記培養試料を前記培養室で培養する場合、前記培養試料は、前記培養室上で直接培養してもよいし、培養器具上で培養した前記培養試料を、培養器具を含んだ状態で前記培養室に設置し、培養してもよい。
【0024】
前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の形状は、特に制限されない。前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の形状は、同一形状でもよいし、異なる形状でもよい。前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の深さは、特に制限されず、例えば、前記培養室と同一の深さでもよいし、異なる深さでもよい。また、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の深さは、流路中で一定でもよいし、異なってもよい。前記チップは、このような前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路を形成することで、前記培養室内の培養液を安定的に交換でき、培養条件を安定化することができる。
【0025】
前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の配置は、特に制限されず、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路と、前記培養室とが連通していればよい。
【0026】
前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路は、例えば、前記素材のチップの基板に対し、切削等によって加工することで、形成できる。前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路は、上部が開口している。
【0027】
前記チップは、さらに、繊維材を、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路に配置することが好ましい。前記繊維材の配置は、特に制限されず、例えば、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の一方だけに配置してよいし、両方でもよいが、好ましくは両方である。前記流路内での前記繊維材の配置箇所は、特に制限されず、前記流路の一部に配置してもよく、全体に配置してもよいが、全体に配置することが好ましい。前記繊維材を前記流路内に配置することで、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路内の培養液の導入出が、より安定化でき、前記培養室の培養条件をより安定化できる。
【0028】
前記繊維材の素材は、特に制限されず、例えば、グラスウール、脱脂綿、ガーゼ等が挙げられ、好ましくは、グラスウールである。
【0029】
<台座>
前記台座の形状は、特に制限されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形状、円形状、楕円形状、流線形状等、任意の形状とすればよい。前記台座の素材は、特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス等が挙げられる。前記プラスチックは、例えば、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート等があげられる。前記金属は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮等が挙げられる。
【0030】
前記チップ配置領域の形状は、特に制限されず、例えば、前記チップの形状に応じて適宜設計できる。
【0031】
前記貫通孔の形状は、特に制限されず、下側から前記培養室が観察可能な形状であればよい。前記貫通孔の配置は、特に制限されず、前記チップ配置領域の前記チップの前記培養室に相当する位置に形成されていればよい。前記台座は、このような前記貫通孔を有することで、上側からだけでなく、下側からも観察可能となり、正立顕微鏡だけでなく、倒立顕微鏡でも観察可能となる。
【0032】
前記チップ固定手段は、特に制限されず、例えば、バネ、留め具、ゴム等を用いる方法、もしくは、凹部や壁部を形成し、固定する方法が挙げられる。前記バネは、特に制限されず、例えば、板バネ、コイルバネ等が挙げられる。前記留め具は、特に制限されず、例えば、ネジ、マグネット等があげられる。前記留め具を用いる場合、例えば、上方または側方から板等により押さえつけ、ネジ、マグネット等で固定することができる。
【0033】
前記チップ固定手段を凹部や壁部にする場合、前記凹部の深さや壁部の高さは、特に制限されず、例えば、前記チップの高さと同じでもよいし、高くてもよいし、低くてもよい。
【0034】
前記チップ固定手段の配置は、特に制限されず、例えば、前記チップ配置領域の境界に前記チップ固定手段を、配置してもよく、前記チップ配置領域の内側に前記チップ固定手段を配置してもよく、前記チップ配置領域の外側に前記チップ固定手段を配置してもよい。
【0035】
前記台座は、さらに、培養液導入管固定手段及び培養液導出管固定手段を含んでもよい。前記培養液導入管固定手段及び前記培養液導出管固定手段は、特に制限されず、例えば、バネ、嵌め具、ゴム等が挙げられる。前記バネは、特に制限されず、例えば、板バネ、コイルバネ等が挙げられる。前記バネを用いる場合、例えば、後述する培養液導入管及び培養液導出管を押さえつけることで固定可能である。前記嵌め具は、特に制限されず、例えば、前記培養液導入管及び前記培養液導出管の外径と略同一の内径を有する孔を有し、前記培養液導入管及び前記培養液導出管とそれぞれ嵌合するよう形成したものが挙げられる。前記ゴムを用いる場合、例えば、後述する培養液導入管及び培養液導出管を、前記ゴムを通すことで固定可能である。
【0036】
前記培養液導入管固定手段及び前記培養液導出管固定手段の配置は、特に制限されず、前記培養液導入管の導入口の先端を、前記培養液導入流路の上部開口から、前記培養液導入流路の内部に差し込めるように配置でき、また、前記培養液導出管の導出口の先端を、前記培養液導出流路の上部開口から、前記培養液導出流路の内部に差し込めるように配置できればよい。
【0037】
<観察用具>
本発明の観察用具は、前記培養室、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路の培養液を循環させる場合、さらに、培養液導入管及び培養液導出管を設置してもよい。前記培養液導入管及び前記培養液導出管は、任意の構成部材であり、あってもよいし、無くてもよい。前記培養液導入管及び前記培養液導出管は、特に制限されず、例えば、ニードル、胃ゾンデ等の公知のものを使用できる。前記培養液導入管及び前記培養液導出管を設置する場合、例えば、前記培養液導入管の導入口の先端を、前記培養液導入流路の上部開口から、前記培養液導入流路の内部に差し込むように配置し、また、前記培養液導出管の導出口の先端を、前記培養液導出流路の上部開口から、前記培養液導出流路の内部に差し込むように配置する。
【0038】
本発明の観察用具は、前記チップを前記台座に固定するだけで使用でき、また、前記チップは、前記台座から取り外し可能であることから、観察対象の前記培養試料を簡便に交換することができる。
【0039】
次に、本発明の観察用具の一例について説明する。
【0040】
図1に、本発明の観察用具の構成の一例を示す。図1(a)は、観察用具100の模式平面図であり、図1(b)は、A−A’方向に見た断面の模式断面図である。図1(a)に示すように、観察用具100は、チップ11と台座21とを主要な構成要素として含み、チップ11は、培養室12、培養液導入流路13及び培養導出流路14を含み、台座21は、チップ配置領域22、貫通孔23及びチップ固定手段24を含む。チップ11は、チップ配置領域22において貫通孔23を含む領域に、チップ11の外形状と内形状が略同じである凹部として形成されたチップ固定手段24を介して、台座21に固定されている。図1では、チップ11は、台座21に固定されているが、チップ11は、台座21から取り外し可能である。培養液を導入出する場合、図示していないが、培養液導入管の導入口の先端を、培養液導入流路13の上部開口から、培養液導入流路13の内部に差し込んで配置し、培養液導出管の導出口先端を、培養液導出流路14の上部開口から、培養液導出流路14の内部に差し込んで配置する。この場合、図1において、培養液は、前記培養液導入管から培養液導入流路13を介して培養室12に導入され、また、培養室12から培養液導出流路14を介して前記培養液導出管へ導出される。
【0041】
本発明の観察用具は、さらに、繊維材を含んでもよい。前記繊維材を含む観察用具の構成を、図2に示す。図2において、図1と同一部分には、同一の符号を付している。図2(a)は、観察用具110の模式平面図であり、図2(b)は、B−B’方向に見た断面の模式断面図である。図2(a)及び(b)に示すように、観察用具110は、培養液導入流路13と培養導出流路14との流路内全体に、斜線で示した繊維材15を含む。この点を除いて、図2に示す観察用具は、図1に示す観察用具100と同様の構成を有する。本発明の観察用具は、繊維材15を前記流路に配置することで、培養液の導入出時に、培養室12の培養液の交換が、より安定的に行われる。
【0042】
本発明の観察用具は、さらに、培養液導入管固定手段と培養液導出管固定手段とを含んでもよい。前記養液導入管固定手段と前記培養液導出管固定手段とを含む観察用具の構成を、図3に示す。図3において、図1と同一部分には、同一の符号を付している。図3(a)は、観察用具120の模式平面図であり、図3(b)は、C−C’方向に見た断面の模式断面図である。図3に示すように、観察用具120は、台座21に培養液導入管固定手段25と培養液導出管固定手段26とを含む。この点を除いて、図3に示す観察器具は、図1に示す観察器具100と同じ構成を有する。図3に示すように、本例の観察用具120では、培養液導入管27と培養液導出管28とが、培養液導入管固定手段25と培養液導出固定手段26とで、それぞれ固定されている。
【0043】
なお、繊維材15は、培養液導入管固定手段25及び培養液導出管固定手段26と組合せて使用することも可能である。
【0044】
[観察装置]
次に、本発明の観察装置について説明する。
【0045】
本発明の観察装置は、
顕微鏡下で培養試料を観察するための観察装置であって、
顕微鏡及び観察用具を含み、
前記顕微鏡下に前記観察用具が配置され、
前記観察用具が本発明の観察用具であることを特徴とする。本発明の観察装置は、本発明の観察用具を含むことを特徴とし、その他構成は、何ら制限されない。
【0046】
前記培養試料は、特に制限されず、例えば、前述の通りである。
【0047】
前記顕微鏡は、特に制限されず、例えば、正立顕微鏡及び倒立顕微鏡が挙げられる。
【0048】
前記観察用具は、例えば、前述の通りである。
【0049】
前記顕微鏡上での前記観察用具の配置方法は、特に制限されず、例えば、前記顕微鏡の観察台上に配置してもよいし、前記観察用具の配置箇所を有する前記観察台に、前記観察用具を配置してもよいし、前記観察台に代えて、前記観察用具を配置してもよい。
【0050】
前記観察装置は、さらに、培養液循環手段を含むことが好ましい。前記培養液循環手段は、特に制限されず、例えば、ポンプ、自然滴下等が挙げられる。前記ポンプは、特に制限されず、例えば、ペリスタポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、水流ポンプ、真空ポンプ等が挙げられる。
【0051】
前記培養液循環手段の配置は、特に制限されず、前記培養液循環手段は、前記観察用具の前記培養液導入流路から前記培養室に培養液を導入し、前記培養室から前記培養液導出流路に前記培養液を導出できるように配置されていればよい。本発明の観察装置は、前記培養液循環手段と、前記培養液導入流路及び前記培養液導出流路との間に、さらに、その他の部材を含んでもよい。前記その他の部材は、特に制限されず、例えば、前記培養液導入管、前記培養液導出管、チューブ、培養液濾過手段、培養液滅菌手段、培養液温度調整手段等が挙げられる。
【0052】
本発明の観察装置を用いて、観察を行う場合、前記培養室の開口部に、カバーをしてもよい。前記カバーは、特に制限されず、例えば、カバーグラス、シリコンゴムシート等が挙げられる。前記顕微鏡が、倒立顕微鏡である場合、前記カバーは、あることが好ましく、前記顕微鏡が、正立顕微鏡である場合、前記カバーは、ないことが好ましい。
【0053】
次に、本発明の観察装置の一例について説明する。
【0054】
図4に、顕微鏡として正立顕微鏡を用いた、本発明の観察装置の構成の一例を示す。図4は、観察装置400の模式斜視図である。図4において、図1〜3と同一部分には、同一の符号を付している。図4に示すように、観察装置400は、観察用具130、正立顕微鏡200及びポンプ300を主要な構成として含み、観察用具130は、正立顕微鏡200に直接配置されている。また、観察用具130は、繊維材15、培養液導入管固定手段25及び培養液導出管固定手段26を、チップ11に有する。図示のとおり、ポンプ300は、チューブ301または302を介して、それぞれ培養液導入管27と培養液導出管28とに接続され、培養液導入管27と培養液導出管28とは、それぞれ培養液導入管固定手段25と培養液導出管固定手段26とにより、チップ11の培養液導入流路13と培養液導出流路14との内部に、それぞれ導入口と導出口とが差し込まれるよう固定されている。図4において、ポンプ300から導入された培養液は、チューブ301、培養液導入管27から培養液導入流路13を介して培養室12に導入され、また、培養室12から培養液導出流路14、培養液導出管28、チューブ302を介して、ポンプ300へ導出される。なお、図4において、正立顕微鏡200のレンズは、培養室12の上方に位置しているが、観察時は、前記レンズを培養室12内の培養液に浸漬した状態で使用する。
【0055】
本例では、正立顕微鏡を用いる場合を挙げて説明したが、本発明の観察装置は、これに限られず、倒立顕微鏡を用いてもよい。前記倒立顕微鏡を用いる場合は、前記培養室の開口部に、前記カバーガラスでカバーをし、前記培養室を下から観察する点を除いては、図4の説明を援用できる。
【0056】
以上、図面を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の観察用具によれば、観察対象を乗せたチップを、台座に固定するだけで観察ができ、また、前記チップを台座から取り外し可能であるため、観察対象の培養試料を簡便に交換することができる。また、本発明の観察用具によれば、培養液の導入出の制御が容易であるため、培養試料を一定の条件下で簡単に観察できる。さらに、本発明の観察用具によれば、観察用具の上部及び下部の両方向から培養試料を観察できるため、正立顕微鏡及び倒立顕微鏡の両者において使用可能である。このため、本発明は、生命科学分野等における、ライブイメージング等の顕微鏡観察等に極めて有用なツールとなる。
【符号の説明】
【0058】
11 チップ
12 培養室
13 培養液導入流路
14 培養液導出流路
15 繊維材
21 台座
22 チップ配置領域
23 貫通孔
24 チップ固定手段
25 培養液導入管固定手段
26 培養液導出管固定手段
27 培養液導入管
28 培養液導出管
100、110、120、130 観察用具
200 正立顕微鏡
300 ポンプ
301、302 チューブ
400 観察装置
図1
図2
図3
図4