(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、トラック、バスなどの大型車両においては、エアコンプレッサにより所定圧力(例えば、10kgf/cm
2程度)に圧縮した空気をエアタンクに貯留しておき、この圧縮空気(サービスエア)を作動動力源の一部として利用するといったサービスブレーキシステムや、コイルスプリングや板バネの代わりに圧縮空気を利用したエアサスペンションシステムなどが採用されている。
【0003】
ここで、エアコンプレッサにより圧縮された空気は、通常圧力の大気圧状態に比べて含有する水蒸気の凝結により水を発生しやすい状態にある。
また、エンジンにより回転駆動されるクランク機構やピストンを含んで構成されるエアコンプレッサを潤滑するための潤滑油が圧縮空気中に混在するといった場合も想定される。
【0004】
このため、エアコンプレッサにより圧縮した空気を、そのままエアタンクに貯留しておいて圧縮空気を、サービスブレーキシステム等の各種エアシステムに供給してしまうと、圧縮空気が触れる部分に腐食や汚損などを発生させ、延いては各種エアシステムに機能障害などを生じさせるおそれがあるなど、システムの信頼性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
このようなことから、エアコンプレッサにより圧縮した空気を、エアタンクに貯留する前に、エアドライヤ装置によって乾燥させ油分を除去して浄化することなどが行われている。
【0006】
かかるエアドライヤ装置の一例として、例えば特許文献1に記載されているようなものがある。
このものは、
図7に示すように、ロード状態(負荷状態)において、コンプレッサ11により圧縮される圧縮空気は、
図7において実線の矢印で示すように、管路14を通って乾燥装置13の入口25から入り、乾燥剤収容室21内を通過する。この乾燥剤収容室21には、油分や異物等を捕集するフィルタ及び水分を吸着する乾燥剤が収容され、当該乾燥剤収容室21を通過することで圧縮空気から油分や異物等を除去すると共に除湿するようになっている。
【0007】
その後、圧縮空気は、蓋40に設けられた図示しない逆止弁を経てパージ室22に入り出口26に至る。出口26に到達した清浄な圧縮空気は、再び管路14を実線矢印で示すように通り、逆止弁16を経てエアタンク12に貯蔵されることになる。
【0008】
そして、エアタンク12の圧力が規定の圧力に達すると、圧力調整器17はその圧力を入力管17aを介して検知し、圧力調整器17が作動して、コンプレッサ11をアンロード状態(無負荷状態)にして、管路14への圧縮空気の送出を停止する。
同時に、圧力調整器17は圧力調整用配管58にアンロード信号のエアを破線矢印で示すように供給する。
【0009】
このようなアンロード状態では、
図7において破線の矢印で示すように、エア導入口28に流入したアンロード信号のエアは弁体29の上部に導かれ、このエアにより弁体29は下降し、ドレインバルブ27は開かれることになる。
【0010】
ドレインバルブ27が開くと、乾燥装置13内部の圧縮空気が急激に大気に放出され、これに伴い乾燥装置13内部が急激に減圧され、パージ室22内の乾燥した空気が乾燥剤収容室21に至り、そこで膨張しながら外部(大気中)へ排出されるといった所謂パージ処理が実行される。
【0011】
なお、かかるパージ処理により、乾燥装置13内の水分(乾燥剤に吸着された水分や底部に溜まった水分など)、油分や塵挨(フィルタに捕集された油分や塵挨等、及び底部に溜まった油分や塵挨など)が外部へ排出され、乾燥装置13内の乾燥剤やフィルタの再生がなされる。
【0012】
その後、エアタンク12の圧力が規定圧以下になると、圧力調整器17はその圧力を入力管17aを介して検知し、圧力調整器17が復帰動作する。圧力調整器17はコンプレッサ11をロード状態にして管路14への圧縮空気の送出を再開させると同時に、圧力調整用配管58へのアンロード信号のエアの送出を停止する。
【0013】
このようにして、従来のエアドライヤ装置では、上記のようなロード状態(エアタンク12へのチャージ)、アンロード状態の切り替えが、エアタンク12内のエアの消費に応じて繰り返し行われ、アンロード状態となったときにその都度パージ処理が行われるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、パージ処理は、エア消費量にもよるが数分毎に繰り返される場合もあり、車両走行中であればパージエアが噴出されたときに衝突する位置も経時と共に変化するためあまり問題とはならないが、例えば客先などにおいて納品のために同じ位置に停車しているような状態にあっては、同一位置にて複数回パージ処理が連続的に行われるおそれもあり、かかる場合にはパージエアと伴に噴出される水分や油分等によって付近の壁や地面を汚損してしまうおそれがある。
【0016】
特に、食品関係その他のクリーン環境が要求されるような場所では、このようなパージエアと伴に噴出される水分や油分等の排出を回避することが望まれる。
【0017】
ここにおいて、パージ処理の際に、ドレインバルブ27より下流側にオイルキャッチタンクなどを介装して水分や油分等を捕集することも想定されるが、要求を満たすようなキャッチタンクの実現は、コストなどの面もあって技術的になかなか難しいのが実情である。
【0018】
このようなことから、特許文献2に記載されているエアドライヤでは、
図7に示すように、コンプレッサ1がロード状態からアンロード状態へ移行してパージ処理が実行される条件下となっても、車両停止中にはパージ処理をさせないように、コントロールライン9の途中に介装された電磁弁25を閉弁し、コントロールライン9からパージバルブ10を開弁させないようにしている。
【0019】
また、特許文献3にも、スイッチ8をオンして、ソレノイドバルブ5を閉じておくことで、プレッシャガバナ6からのパージ信号(アンロード信号;エア圧)がエアドライヤ1に到達しないようにすることで、運転者が任意にパージ処理を停止させることができるようにした技術が記載されている(特許文献3の
図1参照)。
【0020】
しかしながら、エアドライヤにパージエアを供給してパージ処理を実行させるプレッシャガバナが内蔵されている場合には、特許文献2や特許文献3に記載されているもののように、外部からエアドライヤへ送られるパージエア(アンロード信号;エア圧)を制御することができないといった実情がある。
【0021】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、エアドライヤにパージエアを供給してパージ処理を実行させるプレッシャガバナが内蔵されている場合であっても、運転者等の操作者の意思に従ってパージ処理の実行を停止或いは禁止することができるようにして、不用意にパージエアに伴って水分や油分・塵挨等が排出されることを回避可能なエア供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このため、本発明に係るエア供給システムは、
圧縮したエアをエアタンクに貯留して利用するエア供給システムであって、
エアタンクの内圧が第1所定圧力以上になったときに、エアコンプレッサをアンロードすると共にエアドライヤ装置のパージバルブを開弁させてパージ処理を実行するために利用されるアンロード信号用エアを送出する圧力調整器が備えられると共に、
圧力調整器からエアコンプレッサへ前記アンロード信号用エアを導くアンロード用通路と、
エアタンクに貯留されているエアをパージ処理停止信号用エアとして導くパージ処理停止信号通路と、
パージ処理停止信号通路に介装されて該パージ処理停止信号通路を開閉路する電磁弁と、
該電磁弁のパージ処理停止信号通路下流側に設けられ、パージ処理停止信号用エアの圧力が所定以上のときに下流側にパージ処理停止信号用エアを送出するプレッシャガバナと、
該プレッシャガバナのパージ処理停止信号通路下流側に設けられ、第1入口に前記プレッシャガバナからのパージ処理停止信号通路が接続され、第2入口に上流側のアンロード用通路が接続され、出口に下流側のアンロード用通路に接続される通路切替装置が備えられ、
前記電磁弁が開弁されたときに、
パージ処理停止信号用エアが、第1所定圧力以下の値である第2所定圧力以上の場合に、プレッシャガバナは下流側にパージ処理停止信号用エアを送出し、
前記通路切替装置は、第2所定圧力以上のパージ処理停止信号用エアを第1入口から取り入れて、出口に接続される下流側のアンロード用通路に送り出すことで、
エアコンプレッサをアンロードしてパージ処理実行停止状態とすることを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記電磁弁は、運転者のマニュアル操作により開閉弁可能に構成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、エアドライヤにパージエアを供給してパージ処理を実行させるプレッシャガバナが内蔵されている場合であっても、運転者等の操作者の意思に従ってパージ処理の実行を禁止することができるようにして、不用意にパージエアに伴って水分や油分・塵挨等が排出されることを回避可能なエア供給システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の一実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0027】
本実施形態に係るエア供給システム100は、
図1に示すように、内燃機関等の駆動源により回転駆動されて内装するピストンを介してエアを圧縮するエアコンプレッサ111と、エアを貯留するエアタンク112と、の間にエアドライヤ(エアドライヤ装置)113が設けられている。
【0028】
エアコンプレッサ111のエア吐出側は管路(圧縮空気供給通路)114を介してエアドライヤ113が接続され、エアドライヤ113には逆止弁116を介してエアタンク112が接続されている。エアコンプレッサ111により圧縮されたエアを貯留するエアタンク112は、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナ(圧力調整器)によって第1所定圧力(例えば、880〜980kPa程度)に維持されるようになっている。
【0029】
エアタンク112には、図示しないがサービスブレーキ、エアサス等のエア機器が接続され、エアタンク112に貯蔵される圧縮空気を利用して作動するようになっている。
【0030】
エアドライヤ113は、乾燥剤収容室121と、パージ室122と、を備えて構成されている。乾燥剤収容室121及びパージ室122の下部にはベース119が設けられ、ベース119の外周側面にはエアコンプレッサ111からの圧縮空気を取り入れる入口125とエアタンク112へ送り出す出口126が接続されている。
【0031】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、ベース119の中央下部には、パージバルブ(ドレインバルブ)127が取り付けられる。
【0032】
パージバルブ127には、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナから、エアタンク112が第1所定圧力以上となると送られてくるパージ信号(エア圧)が導入されるパージ信号室128と弁体129とリターンスプリング137が設けられている。
【0033】
なお、乾燥剤収容室121には、通過する圧縮空気からオイルや塵埃などを捕集するためのフィルタ(図示せず)が収容されると共に、その下流側には通過する圧縮空気の水分を吸着するための乾燥剤(図示せず)が収容されている。また、乾燥剤収容室121の上部には蓋140が取り付けられ、蓋140には逆止弁とオリフィス(図示せず)が設けられている。
【0034】
上述したように、本実施の形態に係るエアドライヤ113においては、パージバルブ127を開閉制御するパージ信号室128には、ベース119の内部などに形成されている通路等を介して、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナから、エアタンク112が第1所定圧力以上となると送られてくるパージ信号(エア圧)が導入される構成となっている。パージ信号は、第1所定圧力と同じ、例えば、880〜980kPaの範囲の圧力を持っている。
【0035】
また、本実施の形態では、エアコンプレッサ111と、エアドライヤ113と、の間の管路114に、オイルミストセパレータ130が介装され、ここで、エアコンプレッサ111により圧縮されたエアから、フィルタ要素131を介して、オイルやダストなどを捕集できる構成となっている。
【0036】
そして、このオイルミストセパレータ130においては、アンロード用配管(アンロード用通路)117を介して、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナからエアタンク112が第1所定圧力以上となると送られてくるパージ信号(パージエア)が導かれるようになっており、このパージ信号(パージエア)により、エアタンク112が第1所定圧力以上となり、エアコンプレッサ111がアンロードとされると、フィルタ要素131がパージ処理されるように構成されている。
【0037】
ここで、本実施の形態に係るアンロード用配管117は、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナからエアタンク112が第1所定圧力以上となると送られてくるパージ信号(エア圧、アンロード信号)をエアコンプレッサ111のアンロード弁(図示せず)に送って、エアコンプレッサ111のシリンダを強制開放することで、エアコンプレッサ111をアンロード状態(無負荷状態)にして、管路114への圧縮空気の送出を停止するように構成されている。
【0038】
また、本実施の形態では、アンロード用配管117には、三方弁であるダブルチェックバルブ200が介装されていて、
図1、
図2に示すように、アンロード用配管117の上流側は、ダブルチェックバルブ200の第2入口B(に接続され、アンロード用配管117の下流側は、ダブルチェックバルブ200の出口Cに接続されている。ダブルチェックバルブ200は、本発明に係る通路切替装置の一例に相当する。
【0039】
そして、ダブルチェックバルブ200の第1入口Aには、パージ処理停止或いは禁止のためのパージ処理停止信号(或いはパージ処理禁止信号)(エア圧)が供給されるパージ処理停止信号通路210が接続されている。
【0040】
パージ処理停止信号通路210はその最上流側がメインタンク112に接続されているが、その途中には、上流側から電磁弁400が介装され、その下流側に、プレッシャガバナ300が介装されている。
【0041】
電磁弁400は、VCU(車両制御装置)500からの駆動信号により開閉駆動される構成となっている。
【0042】
VCU(車両制御装置)500は、運転席付近に設けられ、運転者がパージ処理を行わせたくないときにオン操作するパージ処理停止スイッチ600のオン信号を検知すると、開弁駆動信号を送出して通電することで電磁弁400を開弁させる一方、パージ処理停止スイッチ600がオフされると、開弁駆動信号の送出を停止して非通電とすることで電磁弁400を閉弁させるように構成されている。
【0043】
このような構成を有する本実施の形態の係るエア供給システム100では、以下のように動作する。
(1)エアコンプレッサのロード状態(空気圧縮仕事をする時)
ロード状態(負荷状態)においては、エアコンプレッサ111に内装されエンジン等により駆動されるピストンにより圧縮された圧縮空気は、
図1において大矢印で示すように、管路114を通ってオイルミストセパレータ130を通過して油分が除去された後、エアドライヤ113の入口125から入り、乾燥剤収容室121内を通過する。この乾燥剤収容室121には、油分や異物等を捕集するフィルタ及び水分を吸着する乾燥剤が収容されているので、当該乾燥剤収容室121を通過することで圧縮空気から油分や異物等を除去すると共に水分が除去されるようになっている。
【0044】
この後、圧縮空気は、蓋140に設けられた逆止弁等を経てパージ室122に入り出口126に至る。出口126に到達した清浄な圧縮空気は、管路114に導かれ、逆止弁116を経てエアタンク112に貯蔵されることになる。
【0045】
(2)パージ処理実行許可時及びエアコンプレッサのアンロード時
上記(1)の状態から、エアタンク112の圧力が所定圧力に達すると、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナはその圧力を検知し、第1所定圧力に達した圧縮空気をパージ信号室128に送り、リターンスプリング137に抗して弁体129を下方に移動させて、パージバルブ127を開弁する。
【0046】
このようにして、パージバルブ127が開弁されると、エアドライヤ113内部の圧縮空気(パージエア)が急激に大気に放出され、これに伴いエアドライヤ113内部が急激に減圧され、パージ室122内の乾燥した空気が乾燥剤収容室121に至り、そこで膨張しながら外部(大気中)へ排出されるといった所謂パージ処理が実行される。
【0047】
なお、かかるパージ処理により、エアドライヤ113内の水分(乾燥剤に吸着された水分や底部に溜まった水分など)、油分や塵挨(フィルタに捕集された油分や塵挨等、及び底部に溜まった油分や塵挨など)が外部へ排出され、エアドライヤ113内の乾燥剤やフィルタの再生がなされる。
【0048】
また、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナからは、第1所定圧力に達した圧縮空気(アンロード信号)がアンロード用配管117に送られ、これによりオイルミストセパレータ130のパージ処理を行わせると共に、ダブルチェックバルブ200へアンロード信号が供給される。
【0049】
この状態において、ダブルチェックバルブ200では、
図2に示すように、パージ処理停止信号(エア圧)PAが供給されていないので、アンロード信号(エア圧)PBが、ピストン201を
図2中上方に移動させて、ダブルチェックバルブ200上流側のアンロード用配管117(
図2のB)と、ダブルチェックバルブ200下流側のアンロード用配管117(
図2のC)と、を連通させる。
【0050】
これにより、アンロード信号(エア圧)がエアコンプレッサ111のアンロード弁(図示せず)に送られることとなって、エアコンプレッサ111のシリンダを強制開放することで、エアコンプレッサ111をアンロード状態(無負荷状態)にして、管路114への圧縮空気の送出を停止する。
【0051】
その後、サービスブレーキ、エアサス等のエア機器がエアを消費して、エアタンク112のタンク内圧が第1所定圧力より低くなると、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナはその圧力を検知し、復帰動作してアンロード用配管117へのアンロード信号(エア圧)の送出を停止し、エアコンプレッサ111をロード状態にして管路114への圧縮空気の送出を再開させる。
【0052】
このようにして、本実施の形態に係るエア供給システム100では、通常時(通常状態)には、上記のようなロード状態、アンロード状態の切り替えが、エアタンク112内のエアの消費に応じて繰り返し行われ、アンロード状態への移行時にはパージ処理が自動的に実行されるようになっている。
【0053】
一方、本実施の形態では、運転者の意思に応じて、パージ処理が行われないように構成されていて、本実施の形態に係るエア供給システム100は、以下のように構成され、動作されるようになっている。
【0054】
すなわち、運転者が、パージ処理停止スイッチ600をオンすると、VCU500は、電磁弁400を開弁する。
【0055】
これにより、メインタンク112内に貯留されている圧縮空気が、パージ処理停止信号通路210を介して、パージ処理停止信号(エア圧)としてプレッシャガバナ300へ送られる。
【0056】
プレッシャガバナ300は、
図3に示すような構成を有しており、パージ処理停止信号(エア圧)が送られてくると、通常時(パージ処理停止信号が供給されないとき)はスプリング302により閉弁付勢されているピストン301が、第2所定圧力以上のパージ処理停止信号(エア圧)により図中上方に押し上げられて、上流側のパージ処理停止信号通路210と、下流側のパージ処理停止信号通路210と、を連通させるようになる。
【0057】
なお、第2所定圧力は、第1所定圧力より低い値で、例えば、780〜880kPaの範囲に設定されることができる。
【0058】
これにより、下流側のパージ処理停止信号通路210から、これに接続されているダブルチェックバルブ200の第1入口A(
図2のA)へパージ処理停止信号(エア圧)が送られる。
【0059】
ダブルチェックバルブ200は、
図2に示すような三方弁の構成を有しており、パージ処理停止信号通路210が接続される第1入口A(
図2のA)からパージ処理停止信号(エア圧)が供給されるとピストン201を、図中下方へ移動させて、第1入口A(
図2のA)と、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図2のC)と、が連通され、パージ処理停止信号(エア圧)はアンロード信号(エア圧)として、エアコンプレッサ111をアンロード状態(無負荷状態)にして、管路114への圧縮空気の送出を停止する。
【0060】
なお、ダブルチェックバルブ200は、
図2に示すように、パージ処理停止信号通路210からのパージ処理停止信号(エア圧)PAと、上流側のアンロード用配管117からのアンロード信号(エア圧)PBと、の偏差に応じて、ピストン201が図中上下方向に移動される構成となっていて、圧力の大きい側の通路が接続される第1入口A或いは第2入口B(
図2のA或いはB)を、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図2のC)に連通させる構成となっている。
【0061】
このようにすると、エアタンク112が第1所定圧力以上となることがないため、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナはパージ信号(エア圧)を発生させることがないので、エアドライヤ113ではパージ処理は行われないことになる。
【0062】
すなわち、本実施の形態に係るエア供給システム100によれば、運転者の意思に従ったパージ処理停止スイッチ600のオン操作に応じて、パージ処理の実行を停止或いは禁止することができる。従って、運転者は、パージ処理が実行されてしまうと汚損などの心配がある場合に、パージ処理停止スイッチ600をオン操作することで、そのような汚損のおそれを回避することができる。
【0063】
なお、サービスブレーキ、エアサス等のエア機器がエアを消費して、エアタンク112のタンク内圧が第2所定圧力より低くなると、パージ処理停止信号通路210に介装されているプレッシャガバナ300では、その圧力低下に応じて、ピストン301が押し下げられるようになるため、ダブルチェックバルブ200の第1入口Aへのパージ処理停止信号(エア圧)の送出が停止されることとなって、(アンロード信号が第2入口Bに供給されている場合を除いて、)エアコンプレッサ111はロード状態に移行され管路114への圧縮空気の送出が再開されることになる。
【0064】
また、汚損などの心配の無い場所に車両が移動した場合などにおいては、運転者はパージ処理停止スイッチ600をオフすることで、電磁弁500が閉弁され、パージ処理停止信号通路210(ダブルチェックバルブ200の第1入口A)へのパージ処理停止信号(エア圧)の送出が停止されるようになる。これにより、エア供給システム100は、上述の(1)、(2)で説明した通常の動作がなされるようになって、エアタンク112へ圧縮空気を送出すると共にエアタンク112が第1所定圧力以上となるとパージ処理が実行されることになる。
【0065】
なお、車速が所定以上となったことが車速センサ等により検出された場合には、車速が比較的高くパージ処理による汚損等のおそれが少ないとして、VCU500は、自動的にパージ処理停止スイッチ600をオフして、上述の(1)、(2)で説明した通常の動作に移行させ、エアタンク112へ圧縮空気を送出すると共にエアタンク112が第1所定圧力以上となるとパージ処理を実行させるように構成することもできる。
【0066】
更には、車速が所定以下の車両停止状態であることを車速センサ等により検出された場合には、車速が比較的低くパージ処理による汚損等のおそれがあるとして、VCU500は、自動的にパージ処理停止スイッチ600をオンして、パージ処理の実行を停止或いは禁止するような構成とすることができる。従って、パージ処理が実行されてしまうと汚損などの心配がある場合に、自動的に、パージ処理停止スイッチ600をオン操作することで、そのような汚損のおそれを回避することができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態に係るエア供給システム100によれば、運転者の意思(マニュアル操作)に従ったパージ処理停止スイッチ600のオン操作に応じて、パージ処理の実行を停止或いは禁止することができる。
【0068】
このため、本実施の形態に係るエア供給システム100によれば、通常時(通常状態)には、運転者のスイッチ切り換え等の煩わしさを解消しつつアンロード時に自動的にパージ処理を実行させることができる一方で、パージ処理停止スイッチ600がオンとなっているパージ処理実行停止時(パージ処理実行禁止時)には、運転者の意思に従って、任意のタイミングでパージ処理の実行を停止或いは禁止することができる。
【0069】
従って、本実施の形態に係るエア供給システム100では、通常時(通常状態)には従来同様自動的にパージ処理を実行しつつ、例えば、客先などにおいて納品のために同じ位置に停車しているような状態では、パージ処理停止スイッチ600をオンしてパージ処理の実行を停止(禁止)して、パージエアと伴に噴出される水分や油分等によって付近の壁や地面を汚損してしまうことを回避することができる。そして、納品を終了した後走行が再開された場合には、運転者のマニュアル操作或いは車速を検出して自動的に、パージ処理停止スイッチ600をオフして通常制御に復帰させることができる。
【0070】
すなわち、本実施の形態によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、エアドライヤにパージエアを供給してパージ処理を実行させるプレッシャガバナが内蔵されている場合であっても、運転者等の操作者の意思に従ってパージ処理の実行を停止或いは禁止することができるようにして、不用意にパージエアに伴って水分や油分・塵挨等が排出されることを回避可能なエア供給システムを提供することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、
図4に示すように、エアドライヤ113と、エアタンク112と、の間の管路114に、圧縮空気の湿気を検出する湿度センサ700を配設し、VCU500では、湿度センサ700の検出出力をモニタして、エアドライヤ113から送られてくる圧縮空気の湿度が所定値(所定の閾値)を超えた場合には、エアドライヤ113の水分分離機能が低下している(水分を吸着する乾燥剤の水分吸着状態が高くパージ処理を実行すべき時期となっている)おそれがあるとして警報を発するように構成することができる。
【0072】
警報としては、運転席付近に設けた警告灯を点灯・点滅させたり、スピーカ等により音声にてその旨を報知させることなどが可能である。
【0073】
そして、このような場合には、運転者がパージ処理停止スイッチ600をオンしてパージ処理の実行を停止(禁止)してしまうと、湿度の高い圧縮空気をエアタンク112に貯留してしまうため、エアタンク112の内部やサービスブレーキシステム等の各種エアシステムに腐食や汚損などを発生させ、延いては各種エアシステムに機能障害などを生じさせるおそれがあるため、本実施の形態に係るVCU500は、エアドライヤ113から送られてくる圧縮空気の湿度が所定値(所定の閾値)を超えた場合には、警報を発すると共に、警報を発してもなお運転者がパージ処理停止スイッチ600をオン操作したような場合には、これをキャンセルして、システムの保護を優先させるような制御を行わせることができる。
【0074】
ところで、湿度センサ700に、アンロード用配管117を介して、エアドライヤ113が内蔵するプレッシャガバナからエアタンク112が第1所定圧力以上となると送られてくるパージ信号(パージエア)を導くようにして、このパージ信号(パージエア)により、エアタンク112が第1所定圧力以上となり、エアコンプレッサ111がアンロードとされると、湿度センサ700をパージ処理して水分を除去するように構成することができる。
【0075】
また、上述した実施の形態では、
図1に示したように、プレッシャガバナ300の下流側に、ダブルチェックバルブ200を設けた場合について説明したが、ダブルチェックバルブ200を採用した場合には、
図2において、パージ処理停止信号通路210からのパージ処理停止信号(エア圧)PAと、上流側のアンロード用配管117からのアンロード信号(エア圧)PBと、が、バラツキ等もあるため、同じような圧力となって偏差が小さく、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図2のC)と、これに連通させるべき通路(第1入口A或いは第2入口B)(
図2のA或いはB)と、を良好に連通させることができなくなるおそれも考えられる。
【0076】
このため、例えば、
図1のダブルチェックバルブ200を、
図5に示すように、カットバルブ800に置き換えた構成とすることができる。カットバルブ800は、本発明に係る通路切替装置の一例に相当する。
【0077】
カットバルブ800は、
図5に示すように、プレッシャガバナ300の下流側のパージ処理停止信号通路210が信号入口A1(
図6のA1)に接続されていると共に、プレッシャガバナ300の上流側でパージ処理停止信号通路210から分岐された分岐パージ処理停止信号通路211が第1入口A2(
図6のA2)に接続されている。
【0078】
また、カットバルブ800は、その第2入口B(
図6のB)には上流側のアンロード用配管117が接続され、出口C(
図6のC)には下流側のアンロード用配管117が接続されている。
【0079】
また、カットバルブ800では、上述した(1)、(2)などの通常時は、ピストン801はスプリング802により
図6上方に押し上げられていて、上流側のアンロード用配管117が接続される第2入口B(
図6のB)と、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図6のC)と、が接続された状態となっている。
【0080】
そして、運転者がパージ処理停止スイッチ600をオンして、VCU500が電磁弁400を開弁すると、パージ処理停止信号通路210からパージ処理停止信号(エア圧)がプレッシャガバナ300へ供給され、このプレッシャガバナ300を介してパージ処理停止信号(エア圧)PA1が、信号入口A1(
図6のA1)に供給されるようになる。
【0081】
すると、ピストン801はスプリング802の付勢力に抗して
図6下方に押し下げられ、これにより上流側のアンロード用配管117が接続される第2入口B(
図6のB)と下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図6のC)との連通を遮断すると共に、スプリング804の付勢力に抗してバルブ803を開弁することになる。
【0082】
バルブ803が開弁されると、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図6のC)と、分岐パージ処理停止信号通路211が接続される第1入口A2(
図6のA2)と、が連通され、分岐パージ処理停止信号通路211から供給されるパージ処理停止信号(エア圧)PA2が下流側のアンロード用配管117(
図6のC)へ供給されるようになる。
【0083】
かかる構成のカットバルブ800によれば、パージ処理停止信号通路210からのパージ処理停止信号(エア圧)と上流側のアンロード用配管117からのアンロード信号(エア圧)とが同じような圧力となっても、円滑、かつ、信頼性高く、下流側のアンロード用配管117が接続される出口C(
図6のC)と、これに連通させるべき通路(第1入口A或いは第2入口B)(
図6のA2或いはB)と、を連通させることができることになる。
【0084】
なお、本実施の形態では、エアドライヤ113がプレッシャガバナを内蔵する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プレッシャガバナがエアドライヤ113から独立して配設される場合にも適用可能である。
【0085】
また、本実施の形態では、オイルミストセパレータ130を備えて構成した場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、オイルミストセパレータ130を省略して構成することも可能である。
【0086】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。