(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるダイクッション位置制御器を備え、
前記加圧制御器は、前記ダイクッション位置制御器により前記クッションパッドが前記ダイクッション待機位置に移動すると、前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止し、前記作動液の流出を阻止した状態で前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給する請求項1から3のいずれか1項に記載のダイクッション装置。
前記加圧制御器により加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力である請求項1から4のいずれか1項に記載のダイクッション装置。
前記加圧制御器により加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記クッションパッドを前記ダイクッション待機位置に移動させたときの圧力よりも高く、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力よりも低い圧力である請求項4に記載のダイクッション装置。
前記加圧制御器は、ダイクッション力制御開始前に前記電動モータのトルクを制御し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に供給する液圧を制御する請求項7に記載のダイクッション装置。
クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にダイクッション力を発生させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止し、又は前記ロッド側液圧室への作動液の流入を可能にする液圧回路と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、
ダイクッション力制御開始前に前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止するステップと、
前記作動液の流出を阻止した状態で前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室を加圧するステップと、
を含むダイクッション装置の制御方法。
ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるステップを備え、
前記作動液の流出を阻止するステップは、前記クッションパッドが前記ダイクッション待機位置に移動すると、前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止する請求項10に記載のダイクッション装置の制御方法。
前記加圧するステップにより加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力である請求項10又は11に記載のダイクッション装置の制御方法。
前記加圧するステップにより加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記クッションパッドを前記ダイクッション待機位置に移動させたときの圧力よりも高く、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力よりも低い圧力である請求項11に記載のダイクッション装置の制御方法。
前記ダイクッション装置は、ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるダイクッション位置制御器を備え、
前記スライドの下降によるプレス成形中及び前記クッションパッドの位置制御中に前記液圧回路を制御し、前記プレス成形中に前記液圧シリンダのロッド側液圧室への作動液の流入を可能にするとともに、前記位置制御中に前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を可能にするステップを含む請求項10又は11に記載のダイクッション装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2に記載のダイクッション装置では、プレス機械のスライドの下降時にスライドがクッションパッドに衝突(スライドに装着された上型が、材料、ブランクホルダ及びクッションピンを介して油圧シリンダにより支持されたクッションパッドに衝突)してからダイクッション力が予め設定値に上昇するまでに応答遅れ時間が発生し、また、この応答遅れ時間経過の間に、スライドが衝突したクッションパッドの初期位置(金型毎に設定されるダイクッション待機位置)よりも下降してしまうという問題がある。
【0010】
また、特許文献1、2に記載のダイクッション装置は、油圧シリンダのヘッド側油圧室の油圧を制御することによりダイクッション力を発生させているが、この機構ではスライドとクッションパッドとが衝突する前に油圧シリンダのヘッド側油圧室の圧力を制御することができない。
【0011】
また、特許文献3〜6に記載の装置は、ダイクッション力を高い応答性で発生させるが、特許文献1、2に記載のダイクッション装置と同様にスライドとクッションパッドとが衝突する前に油圧シリンダのヘッド側油圧室の圧力を制御することができない。
【0012】
一方、クッションパッドをダイクッション待機位置よりも一定量だけ上昇した位置に待機させ、クッションパッドがダイクッション待機位置に下降した時点にダイクッション力を設定値に上昇させる技術の場合、クッションパッドをダイクッション待機位置よりも一定量だけ上昇させる必要があり、それにより金型構造(金型ストローク上限位置など)に大きな制約を受け、実用性に乏しかった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ダイクッション力作用の応答性を高めることができ、特にクッションパッドがダイクッション待機位置に位置するときに所望のダイクッション力を発生させることができ、かつ金型構造に大きな制約がないダイクッション装置及びダイクッション装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の一の態様に係るダイクッション装置は、クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にダイクッション力を発生させる液圧シリンダを備えたダイクッション装置において、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止し、又は前記ロッド側液圧室への作動液の流入を可能にする液圧回路と、ダイクッション力制御開始前に前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止し、前記作動液の流出を阻止した状態で前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給し、前記ヘッド側液圧室を加圧する加圧制御器と、を備える。
【0015】
本発明の一の態様によれば、前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止できるようにしたため、ダイクッション力制御開始前であっても前記作動液の流出を阻止し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給することで、前記ヘッド側液圧室を加圧することができる。そして、ダイクッション力制御開始前に液圧シリンダのヘッド側液圧室を昇圧させことで、ダイクッション力作用の応答性を高めることができる。尚、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室が加圧されることにより、前記作動液の流出が阻止された前記液圧シリンダのロッド側液圧室も加圧されることになるが、このロッド側液圧室の加圧による容積圧縮量に対応する前記クッションパッドの上昇量は僅かであるため、金型構造に大きな制約を受けるという問題は発生しない。
【0016】
本発明の他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧回路は、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止する逆止弁と、前記逆止弁と並列に設けられた脱圧弁とを有し、前記加圧制御器は、前記ダイクッション力制御開始前に前記脱圧弁が閉じるように制御し、前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止する。
【0017】
前記逆止弁は、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止するが、前記ロッド側液圧室への作動液の流入を可能にするため、前記スライドが前記クッションパッドに衝突してクッションパッドが下降(液圧シリンダのピストンロッドが下降)を開始すると、直ちに前記ロッド側液圧室に作動液を流入させることができる。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧回路は、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止するパイロット駆動式逆止弁を有し、前記加圧制御器は、前記ダイクッション力制御開始前に前記パイロット駆動式逆止弁が閉じるようにパイロット圧を制御し、前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止する。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるダイクッション位置制御器を備え、前記加圧制御器は、前記ダイクッション位置制御器により前記クッションパッドが前記ダイクッション待機位置に移動すると、前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止し、前記作動液の流出を阻止した状態で前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給することが好ましい。
【0020】
前記ダイクッション位置制御器により前記クッションパッドをダイクッション待機位置に移動させる期間(位置制御期間)は、前記クッションパッドを上昇させる(液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給する)必要があるため、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液を流出可能にし、前記クッションパッドが前記ダイクッション待機位置に移動すると、前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力を制御できるようする(圧力制御に切り換える)。
【0021】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記加圧制御器により加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力であることが好ましい。
【0022】
即ち、前記加圧制御器により前記液圧シリンダのヘッド側液圧室が前記圧力になるように加圧すると、作動液の流出が阻止された前記液圧シリンダのロッド側液圧室も加圧され、このロッド側液圧室の加圧による容積圧縮量に対応してクッションパッドがダイクッション待機位置から僅かに上昇する。その後、スライドの下降によりスライドがクッションパッドに衝突し、クッションパッドがスライドとともに下降すると、前記液圧シリンダのロッド側液圧室の圧力が減圧され、ダイクッション力が上昇する。そして、前記クッションパッドがダイクッション待機位置に達すると(即ち、前記加圧制御器での加圧による上昇量分だけ下降し、前記液圧シリンダのロッド側液圧室の圧力がダイクッション待機位置状態の圧力まで減圧されると)、前記液圧シリンダは予め設定されたダイクッション力を発生することになる。
【0023】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記加圧制御器により加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記クッションパッドを前記ダイクッション待機位置に移動させたときの圧力よりも高く、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力よりも低い圧力であることが好ましい。
【0024】
これによれば、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力を、予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力にする場合の前記クッションパッドの上昇量に比べて上昇量を小さくすることができ、また、スライドがクッションパッドに衝突してから前記クッションパッド待機位置に下降するまでの間に、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力まで上昇させることにより、クッションパッド待機位置にて予め設定されたダイクッション力を発生させることができる。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力を検出する圧力検出器と、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に配管を介して吐出口が接続された液圧ポンプ/モータと、前記液圧ポンプ/モータの回転軸に接続された電動モータと、予め設定されたダイクッション圧力指令を出力するダイクッション圧力指令器と、前記ダイクッション圧力指令と前記圧力検出器によって検出された圧力とに基づいてダイクッション圧力が前記ダイクッション圧力指令に対応する圧力になるように前記電動モータのトルクを制御するダイクッション力制御器と、を備えることが好ましい。
【0026】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記加圧制御器は、ダイクッション力制御開始前に前記電動モータのトルクを制御し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に供給する液圧を制御することが好ましい。
【0027】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に接続された配管に設けられた比例流量制御弁と、前記比例流量制御弁の開度を制御することにより前記液圧シリンダのヘッド側液圧室から吐き出される流量を制御し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力を制御するダイクッション力制御器と、を備えることが好ましい。
【0028】
更に他の態様に係る発明は、クッションパッドを支持し、プレス機械のスライドの下降時にダイクッション力を発生させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を阻止し、又は前記ロッド側液圧室への作動液の流入を可能にする液圧回路と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、ダイクッション力制御開始前に前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止するステップと、前記作動液の流出を阻止した状態で前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に圧液を供給し、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室を加圧するステップと、を含む。
【0029】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置の制御方法において、ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるステップを備え、前記作動液の流出を阻止するステップは、前記クッションパッドが前記ダイクッション待機位置に移動すると、前記液圧回路を制御して前記液圧シリンダのロッド側液圧室からの作動液の流出を阻止することが好ましい。これにより、前記クッションパッドがダイクッション待機位置に移動した後に、前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力制御を可能にしている。
【0030】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置の制御方法において、前記加圧するステップにより加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力であることが好ましい。
【0031】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置の制御方法において、前記加圧するステップにより加圧される前記液圧シリンダのヘッド側液圧室の圧力は、前記クッションパッドを前記ダイクッション待機位置に移動させたときの圧力よりも高く、前記液圧シリンダが予め設定されたダイクッション力を発生するときの圧力よりも低い圧力であることが好ましい。
【0032】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置の制御方法において、前記ダイクッション装置は、ダイクッション力制御終了後に前記液圧シリンダのヘッド側液圧室に作動液を供給し、前記クッションパッドを上昇させ、該クッションパッドを所定のダイクッション待機位置に移動させるダイクッション位置制御器を備え、前記スライドの下降によるプレス成形中及び前記クッションパッドの位置制御中に前記液圧回路を制御し、前記プレス成形中に前記液圧シリンダのロッド側液圧室への作動液の流入を可能にするとともに、前記位置制御中に前記液圧シリンダのロッド側液圧室から作動液の流出を可能にするステップを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ダイクッション力制御開始前にダイクッション力を発生させる液圧シリンダのヘッド側(ダイクッション圧力発生側)液圧室の圧力を制御可能にし、これによりダイクッション力作用の応答性を高めることができ、かつクッションパッドを通常のダイクッション待機位置に対して大きく上昇させないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下添付図面に従って本発明に係るダイクッション装置及びダイクッション装置の制御方法の好ましい実施形態について詳説する。
【0036】
[ダイクッション装置の第1の実施形態]
図1は本発明に係るダイクッション装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0037】
図1において、ダイクッション装置100が適用されるプレス機械10は、ベッド11、コラム12及びクラウン(図示せず)でフレームが構成され、スライド14は、コラム12に設けられたガイド部15により鉛直方向に移動自在に案内されている。スライド14は、スライド駆動部(図示せず)により駆動力が伝達され、
図1上で上下方向に移動させられる。
【0038】
スライド14には上型20が装着され、ベッド11のボルスタ18上には下型22が装着されている。
【0039】
上型20と下型22の間には、ブランクホルダ(皺押え板)102が配置され、下側が複数のクッションピン104を介してクッションパッド110で支持され、上側には材料30がセットされる(接触する)。
【0040】
プレス機械10は、スライド14を下降させることにより、上型20と下型22との間で材料30をプレス成形する。ダイクッション装置100は、プレス成形される材料30の周縁を下側から押圧するものである。
【0041】
<ダイクッション装置の構造>
ダイクッション装置100は、主としてブランクホルダ102と、ブランクホルダ102を複数のクッションピン104を介して支持するクッションパッド110と、クッションパッド110を支持し、クッションパッド110にダイクッション力を発生させる油圧シリンダ(液圧シリンダ)120と、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室(ヘッド側液圧室)120aに接続された第1の油圧回路130と、油圧シリンダ120のロッド側油圧室(ロッド側液圧室)120bに接続された第2の油圧回路140と、指令器150と、制御器160とから構成されている。
【0042】
このダイクッション装置100は、クッションパッド110に発生するダイクッション力を制御するダイクッション力制御機能と、クッションパッド110の位置を制御するダイクッション位置制御機能とを有し、ダイクッション力制御は、主としてプレス機械10のスライド14の下降時にスライド14がクッションパッド110に衝突(スライド14に装着された上型20が、材料30、ブランクホルダ102及びクッションピン104を介して油圧シリンダ120により支持されたクッションパッド110に衝突)してからスライド14が下死点に達するまでのダイクッション力発生期間(プレス成形中)に行われ、ダイクッション位置制御は、クッションパッド110を下死点に対応する位置から金型に応じて設定された待機位置(ダイクッション待機位置)までクッションパッド110を上昇させる期間に行われる。
【0043】
油圧シリンダ120及び第1の油圧回路130は、クッションパッド110にダイクッション力を発生させるダイクッション力発生器として機能するとともに、クッションパッド110を昇降動作させるクッションパッド昇降器として機能する。
【0044】
また、
図1において、112は、油圧シリンダ120のピストンロッド120cの伸縮方向の位置を、クッションパッド110の昇降方向の位置として検出するダイクッション位置検出器112であり、122は、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室(ダイクッション圧力発生側油圧室)120aの圧力を検出するダイクッション圧力検出器である。
【0045】
指令器150は、ダイクッション力(圧力)指令器とダイクッション位置指令器とを含み、ダイクッション力制御時には制御目標値であるダイクッション力又はダイクッション力に対応するダイクッション圧力を示す指令値を出力し、ダイクッション位置制御時には制御目標値であるダイクッション位置を示す指令値を出力する。
【0046】
制御器160は、ダイクッション力(圧力)制御器とダイクッション位置制御器とを含み、ダイクッション力制御時には指令器150から入力する指令値(ダイクッション圧力を示す指令値)とダイクッション圧力検出器122により検出される圧力とに基づいて、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力が指令値になるように制御信号を第1の油圧回路130に出力し、一方、ダイクッション位置制御時には指令器150から入力する指令値(ダイクッション位置を示す指令値)とダイクッション位置検出器112により検出されるダイクッション位置に基づいて、クッションパッド110の位置が指令値になるように制御信号を第1の油圧回路130に出力する。
【0047】
第1の油圧回路130は、制御器160から入力する指令信号に基づいてダイクッション力制御時には、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aから流出する油圧を制御し、クッションパッド110に所望のダイクッション力を発生させ、ダイクッション位置制御時には、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに流入する油量を制御し、クッションパッド110をダイクッション待機位置まで上昇させる。
【0048】
尚、第1の油圧回路130及び制御器160は、ダイクッション力制御開始前に油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに圧油(圧液)を供給し、ヘッド側油圧室120aを加圧する加圧制御器としても機能するが、その詳細については後述する。
【0049】
第2の油圧回路140(液圧回路)は、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油(作動液)の流出を阻止し、又はロッド側油圧室120bへの作動油の流入を可能にする油圧回路であり、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油の流出を阻止する逆止弁142と、逆止弁142と並列に設けられた脱圧弁144と、リリーフ弁146と、タンク148とから構成されている。
【0050】
脱圧弁144は、制御器160により開閉制御され、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油の流出を阻止し、又は油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油の流出を可能にする。
【0051】
リリーフ弁146は、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bに異常圧力が発生時(圧力制御が不能で、突発的に異常圧力が発生した時)に圧油を流出させ、油圧機器破損防止用途に使用される。
【0052】
[ダイクッション装置の制御方法]
次に、上記構成のダイクッション装置100の制御方法について説明する。
【0053】
図2は本発明に係るダイクッション装置の制御方法を示すフローチャートであり、特に第1の実施形態のダイクッション装置100の制御方法を示す図である。
【0054】
ダイクッション装置100は、プレス機械10のスライド14が下死点に到達(プレス成形が終了)し、スライド14が上昇すると、その後、ダイクッション力制御状態からダイクッション位置制御状態に遷移し、予め設定したダイクッション待機位置にクッションパッド110を移動(上昇)させる。
【0055】
図2に示すステップS10は、クッションパッド110が、ダイクッション待機位置に待機(位置)しているダイクション位置制御状態を示している。
【0056】
クッションパッド110がダイクッション待機位置に位置すると、ダイクッション装置100は、ダイクッション位置制御状態からダイクッション力制御状態に遷移し、加圧制御器として機能する制御器160は、まず脱圧弁144が閉じるように制御する(ステップS12)。これにより、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bからの作動油の流出が阻止される。
【0057】
続いて、制御器160は、第1の油圧回路130を制御し、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに圧油を供給し、ヘッド側油圧室120aが予め設定された圧力に達するまで加圧する(ステップS14)。ここで、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bからは作動油の流出が阻止されているため、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aが予め設定された圧力に達するまで加圧することができる。尚、予め設定された圧力は、本例では油圧シリンダ120が予め設定されたダイクッション力を発生するときにヘッド側油圧室120aに加わる圧力である。
【0058】
また、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を予め設定された圧力になるまで加圧すると、作動油の流出が阻止された油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bも加圧され、このロッド側油圧室120bの加圧による容積圧縮量に対応してクッションパッド110(ピストンロッド120c)は上昇するが、容積圧縮量に対応するクッションパッド110の上昇量は僅かであるため、クッションパッド110は、通常のダイクッション待機位置に対して大きく上昇することはない。
【0059】
その後、プレス機械10のスライド14が、クッションパッド待機位置よりも僅かに上昇した位置まで下降すると、クッションパッド110に衝突する(ステップS16)。
【0060】
スライド14がクッションパッド110に衝突すると、クッションパッド110は、スライド14とともに下降するが、制御器160は、第1の油圧回路130を通じて油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を、予め設定された圧力に維持するように制御する。一方、スライド14とクッションパッド110との衝突後、クッションパッド110(ピストンロッド120c)が下降すると、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力(事前に加圧された圧力)が減圧され、その結果、油圧シリンダ120は、ヘッド側油圧室120aとロッド側油圧室120bとの圧力差に応じたダイクッション力を発生する。そして、クッションパッド110が上昇以前の高さ(ダイクッション待機位置)まで押し下げられた時(ロッド側油圧室120bの圧力がダイクッション待機位置の圧力(本例ではタンク148の圧力)まで減圧された時)、油圧シリンダ120は、予め設定されたダイクッション力を発生する(ステップS18)。
【0061】
これにより、クッションパッド110は、クッションパッド110がダイクッション待機位置に位置する時点(プレス成形が開始される時点)から予め設定されたダイクッション力を発生することができ、ダイクッション力作用の応答性を高めることができる。
【0062】
スライド14が更に下降すると、材料にダイクッション力を作用させつつ、上型20と下型22とにより材料の成形が行われるが、制御器160は、この成形中に脱圧弁144を開くように制御する(ステップS20)。尚、クッションパッド110の下降時には、逆止弁142からも油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bに作動油が流入可能であるため、クッションパッド110の位置制御(上昇)を開始するまでの間に脱圧弁144を開くように制御すればよい。
【0063】
スライド14が下死点を達すると、成形が完了し、その後、スライド14は上昇し始める(ステップS22)。スライド14が上昇し始めると、ダイクッション装置100は、ダイクッション力制御状態からダイクッション位置制御状態に遷移し、クッションパッド110を上昇させ、クッションパッド待機位置に移動させる(ステップS24)。即ち、制御器160は、ダイクッション位置制御時に指令器150から入力するダイクッション位置を示す指令値とダイクッション位置検出器112により検出されるダイクッション位置とに基づいてクッションパッド110の位置を制御する制御信号を第1の油圧回路130に出力し、第1の油圧回路130は、制御器160から加えられる制御信号に応じて油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに作動油を供給し、クッションパッド110を上昇させ、クッションパッド待機位置に移動させる。このとき、脱圧弁144は、ステップS20により開いているため、クッションパッド110(ピストンロッド120c)の上昇時にロッド側油圧室120bの作動油をタンク148に流すことができる。
【0064】
そして、プレス機械10の1サイクル期間に上記ステップS10〜ステップS24の処理が行われる。
【0065】
<ダイクッション装置の作用>
次に、ダイクッション装置100の作用について説明する。
【0066】
図3(A)〜(D)は、それぞれクッションパッドがダイクッション待機位置に位置している状態から予め設定されたダイクッション力を発生するまでの油圧シリンダ120の推移を示す図である。
【0067】
図3(A)は、ダイクッション位置制御によりクッションパッド110がダイクッション待機位置に位置(待機)している状態の油圧シリンダ120に関して示している。
【0068】
このダイクッション待機位置にて脱圧弁144を閉じるため、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの作動油は、ロッド側油圧室120bからの流出が阻止され、封じ込まれた状態となっている。
【0069】
この時のロッド側油圧室120bの圧力をPR0とし、ロッド側油圧室120bの伸縮方向の寸法(長さ)をLとする。
【0070】
図3(B)に示すように、
図3(A)の状態から油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに圧油を供給し、ヘッド側油圧室120aが予め設定された圧力PHdcに達するまで加圧する。
【0071】
油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの封じ込め圧力PR0は、ヘッド側油圧室120aが圧力PHdcに加圧されることにより、次式に示すようにヘッド側油圧室120aの圧力PHdcと釣り合う圧力PR1になる。
【0072】
[数1]
PR1=PHdc*AH/AR
但し、
AH:油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの断面積
AR:油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの断面積
である。
【0073】
尚、本例では、説明を簡単にするために、封じ込められた作動油の容積は、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの容積のみとし、ロッド側油圧室120bに接続される配管内の容積は省略する。また、クッションパッド110等の重量も省略する。
【0074】
図3(A)及び(B)に示すように、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aが圧力PHdcに加圧されることにより、ダイクッション待機位置でのロッド側油圧室120bの作動油の容積は圧縮され、その結果、油圧シリンダ120のピストンロッド120c(クッションパッド110)は、ダイクッション待機位置から上昇量xだけ上昇して釣り合う。
【0075】
ここで、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bにおいて、ヘッド側油圧室120aを加圧することにより、ロッド側油圧室120bの容積が変化した後のロッド側油圧室120bの圧力と容積の関係は、次式で表すことができる。
【0076】
[数2]
P=P’+kΔV/V
但し、
P:容積変化後の油圧室圧力
P’:容積変化前の油圧室圧力
V:容積変化前の油圧室容積
ΔV:容積圧縮量
k:作動油の体積弾性係数
である。
【0077】
また、[数2]式は、PR1、PR0、L、AR、AH、及び上昇量xを用いて、次式に書き替えることができる。
【0078】
[数3]
PR1=PR0+k*AR*x/(AR*L)
また、[数1]式及び[数3]式により、
PHdc*AH/AR=PR0+k*x/L
となり、上昇量xは、次式で表すことができる。
【0079】
[数4]
x=(PHdc*AH/AR−PR0)*L/k
したがって、設計上必要な位置で必要なダイクッション力Fを得るためにヘッド側油圧室120aの圧力をPHdcとした場合の上昇量xも、[数4]式により算出することが出来る。
【0080】
図3(B)に示した状態からスライド14の下降によりスライド14がクッションパッド110に衝突し、スライド14とともにクッションパッド110が下降すると、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力が圧力PR1から徐々に減少する。このとき、ヘッド側油圧室120aの圧力は、圧力PHdcに保持されるように制御される。これにより、油圧シリンダ120は、ロッド側油圧室120bの圧力が徐々に減少するにつれて徐々に大きくなるダイクッション力を発生する。
【0081】
そして、
図3(D)に示すようにクッションパッド110が上昇量xだけ押し下げられると(クッションパッド110がダイクッション待機位置に達すると)、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力PRdcは、
図3(A)の状態の圧力PR0に戻り(PRdc=PR0)、油圧シリンダ120は、必要なダイクッション力Fを発生する。
【0082】
ここで、必要なダイクッション力Fを得るために必要な油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力PHdcは、次式により算出することができる。
【0083】
[数5]
PHdc=(F+PRdc*AR)/AH
但し、油圧シリンダ120が必要なダイクッション力Fを発生しているときの油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力PRdcは、PR0と等しい圧力である(PRdc=PR0)。
【0084】
いま、油圧シリンダ120のシリンダ内径を230mm、ピストンロッド120cのロッド径を180mm,シリンダストロークを400mm、所望のダイクッション力Fを500kN、ダイクッション力Fを得たいシリンダ位置(クッションパッド待機位置に対応するシリンダ位置)をストローク下限から350mm、ロッド側油圧室120bの初期圧力PR0を0.7MPa、作動油の体積弾性係数kを1000N/m
2とすると、
AR=π*{(230/2)
2−(180/2)
2)}≒16100mm
2
AH=π*(230/2)
2≒41548mm
2
となり、これらの既知の値を、[数4]式に代入すると、圧力HPdcは、
PHdc=(500000+0.7*16100)/41548≒12.3MPa
となる。
【0085】
また、上記既知の値及び算出したPHdcを、[数1]式に代入すると、圧力PR1は、
PR1=12.3*41548/16100≒31.7MPa
となる。
【0086】
更に、
図3(A)に示したLは、L=300−250=50mmであり、既知の値及び算出したPHdcを、[数4]式に代入して算出される上昇量xは、
x=(12.3*41548/16100−0.7)*50/1000≒1.55mm
となる。
【0087】
このようにダイクッション力制御開始前に油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力が、圧力PHdc(上記の例では、12.3MPa)になるように加圧すると、クッションパッド110は、上昇量x(約1.55mm)だけ上昇し、一方、スライド14がクッションパッド110に衝突し、クッションパッド110が上昇量x分だけ下降すると(ダイクッション待機位置に達すると)、油圧シリンダ120は、必要なダイクッション力F(=500kN)を発生することができる。
【0088】
即ち、ダイクッション力制御開始前に油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aを加圧してもクッションパッド110(油圧シリンダ120)の上昇量は僅かであり、一方、ダイクッション待機位置にて必要なダイクッション力を発生させることができ、ダイクッション力作用の応答性を高めることができる。
【0089】
また、ダイクッション力制御開始前に加圧されるヘッド側油圧室120aの圧力は、ダイクッション待機位置に移動させたときの圧力よりも高く、圧力PHdcよりも低い圧力でもよい。条件により油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの強度や金型構造上などの制約があって、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を圧力PHdcまで上げられない(あるいは上昇量xを確保できない)場合でも、圧力PHdcを抑え(上昇量xを少なくし)、スライド14とクッションパッド110とが衝突した時点、又は遅くともクッションパッド110が上昇量xだけ下降するまでの時点にヘッド側油圧室120aを圧力PHdcになるように制御すれば、上昇量xを減少させつつ、高い応答性を実現することができる。
【0090】
[ダイクッション装置の第2の実施形態]
図4は本発明に係るダイクッション装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【0091】
図4に示す第2の実施形態のダイクッション装置100’は、
図1に示した第1の実施形態のダイクッション装置100の第2の油圧回路140の代わりに、第2の油圧回路140’を適用している点で相違する。尚、
図4において、
図1に示した第1の実施形態のダイクッション装置100と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図4に示す第2の油圧回路140’は、
図1に示した第2の油圧回路140の逆止弁142及び脱圧弁144の代わりに、パイロット駆動式逆止弁141及びパイロット圧力発生装置143を備えている。
【0093】
パイロット圧力発生装置143は、パイロット駆動式逆止弁141の開閉を制御するパイロット圧力を発生させるもので、主としてパイロット圧力の作動油を蓄圧するアキュムレータ143A、パイロット圧力を発生させるための油圧ポンプ143B、パイロット操作用の電磁切換弁(3ポート2位置電磁弁)143C等から構成されている。
【0094】
油圧ポンプ143Bは、電動モータ143Dにより駆動され、圧油を逆止弁143Eを介してアキュムレータ143Aに供給する。尚、油圧ポンプ143Bは、アキュムレータ143Aの蓄圧された作動油の圧力が所定のパイロット圧力よりも低下するときのみ駆動される。尚、143Fは、パイロット圧力が異常圧力になったときに圧油を流出させ、油圧機器破損防止用途に使用されるリリーフ弁であり、143Gは、パイロット圧力を脱圧するときに使用される脱圧弁143Gであり、通常、脱圧弁143Gは閉じている。
【0095】
電磁切換弁143Cは、制御器160から加えられる切替信号により制御(方向切替制御)され、切替信号により電磁切換弁143Cのソレノイドが励磁されると、
図4に示した位置から切り替わり、パイロット圧力をパイロット駆動式逆止弁141に印加する。これにより、パイロット駆動式逆止弁141は開き、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの作動油は、ロッド側油圧室120bからパイロット駆動式逆止弁141を介してタンク148に流出可能になる。
【0096】
一方、電磁切換弁143Cは、制御器160から加えられる切替信号により電磁切換弁143Cのソレノイドが消磁されると、
図4に示した位置に切り替わり、パイロット駆動式逆止弁141に印加されたパイロット圧力を低下させ、パイロット駆動式逆止弁141を閉じる。これにより、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bからの作動油の流出が阻止される。
【0097】
上記構成の第2の油圧回路140’は、
図1に示した第2の油圧回路140とは構成が異なるが、第2の油圧回路140と同様に制御器160からの切替信号により油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油の流出を阻止し、又は油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bから作動油の流出を可能にすることができる。
【0098】
図5は上記第2の実施形態のダイクッション装置100’の制御方法を示すフローチャートである。尚、
図2に示したフローチャートと共通する部分には共通のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0099】
図5に示すフローチャートは、
図2に示したフローチャートのステップS12及びステップS20の代わりに、ステップS120及びステップS200の処理を行う点で相違する。
【0100】
即ち、
図2のステップS12が脱圧弁144を閉じるのに対し、ステップS120は、パイロット駆動式逆止弁141を閉じ、これにより油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bからの作動油の流出を阻止し、ヘッド側油圧室120aの加圧を可能にしている。
【0101】
また、
図2のステップS20が脱圧弁144を開くのに対し、ステップS200は、パイロット駆動式逆止弁141を開く。尚、クッションパッド110の下降時には、パイロット駆動式逆止弁141にパイロット圧力が印加されていても、パイロット駆動式逆止弁141から油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bに作動油が流入可能であるため、クッションパッド110の位置制御(上昇)を開始するまでの間にパイロット駆動式逆止弁141を開くように制御すればよい。
【0102】
[第1の油圧回路の第1の実施形態]
図6は、
図4に示した第2の実施形態のダイクッション装置100’に対応する構成図であり、特に
図1に示した第1の油圧回路130に対応する第1の実施形態の第1の油圧回路130−1を含む構成図である。尚、
図6に示すダイクッション装置100’は、
図4に示したタンク148の代わりに、低圧(例えば、0.7MPa)のガス圧がセットされ、タンクの役割を果たすアキュムレータ149が低圧ラインに接続されている。
【0103】
図6に示す第1の実施形態の第1の油圧回路130−1は、主として油圧ポンプ/モータ(液圧ポンプ/モータ)130A,油圧ポンプ/モータ130Aの回転軸に接続されたサーボモータ(電動モータ)130B、サーボモータ130Bの駆動軸の角速度(サーボモータ角速度ω)を検出する角速度検出器130C、パイロット駆動式逆止弁130D、電磁切換弁130E、及び安全弁として機能するリリーフ弁130Fから構成されている。
【0104】
油圧ポンプ/モータ130Aの一方のポート(吐出口)は、パイロット駆動式逆止弁130Dを介して油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに接続され、他方のポートはアキュムレータ149が接続されている低圧ラインに接続されている。
【0105】
油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに作用する圧力は、ダイクッション圧力検出器122により検出され、サーボモータ130Bの駆動軸の角速度は角速度検出器130Cにより検出される。
【0106】
ダイクッション力は、主として油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力とシリンダ面積の積で表すことができるため、ダイクッション力を制御することは、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を制御することを意味する。
【0107】
スライド14がクッションパッド110に衝突し、クッションパッド110を介して油圧シリンダ120に伝わった力は、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aを圧縮し、ダイクッション圧を発生させる。同時に、ダイクッション圧力によって油圧ポンプ/モータ130Aを油圧モータ作用させ、この油圧ポンプ/モータ130Aに発生する回転軸トルクがサーボモータ130Bの駆動トルクに抗じたところで、サーボモータ130Bを回転させ、圧力の上昇が抑制される。結局、ダイクッション力は、サーボモータ130Bの駆動トルクに応じて決定される。
【0108】
<ダイクッション力の制御>
ダイクッション力制御時には、指令器150は、必要なダイクッション力に対応する指令値を出力する。本例では、クッションパッド110が位置制御され、ダイクッション待機位置に達すると、予め設定された圧力PHdcを示す指令値を出力する。
【0109】
制御器160は、指令器150から加えられる指令値どおりに油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を制御するために、ダイクッション圧力検出器122により検出された油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を示すダイクッション圧力検出信号を入力している。また、制御器160は、ダイクッション力の動的安定性を確保するための角速度フィードバック信号として、角速度検出器130Cにより検出されるサーボモータ130Bの駆動軸の角速度(サーボモータ角速度(ω))を示すサーボモータ角速度信号を入力している。
【0110】
制御器160は、クッションパッド110がダイクッション待機位置に達し、ダイクッション位置制御状態からダイクッション力制御状態に制御が切り替えられると、ダイクッション力に対応する指令値、ダイクッション圧力検出信号、サーボモータ角速度信号を用いて演算したトルク指令を、図示しない増幅器を介してサーボモータ130Bに出力することでダイクッション力制御を行う。
【0111】
尚、スライド14がクッションパッド110に衝突する前(ダイクッション力制御開始前)は、
図3(B)に示したように油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力が指令値に対応する圧力PHdcに制御されても、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力が圧力PR1に上昇し、両者の圧力が釣り合った状態でクッションパッド110は静止するため、ダイクッション力は発生しない。
【0112】
また、電磁切換弁130Eによりパイロット駆動式逆止弁130Dが閉じるように制御し、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力が圧力PHdcに達すると、スライド14がクッションパッド110に衝突するまでの間、サーボモータ130Bを停止させるように制御することが好ましい。これにより、サーボモータ130Bによる消費電力の無駄を省くことができる。尚、サーボモータ130Bを停止させてもヘッド側油圧室120aの圧力PHdcは、パイロット駆動式逆止弁130Dにより保持することができる。
【0113】
スライド14が下降し、クッションパッド110に衝突すると、制御器160は、サーボモータ130Bのトルク制御を開始するとともに、電磁切換弁130Eを制御して(切り替えて)パイロット駆動式逆止弁130Dを開放させる。
【0114】
スライド14がクッションパッド110に衝突してから下死点に至るまでの下降時(成形時)は、サーボモータ130Bのトルク出力方向と発生速度が反対になる。即ち、スライド14からクッションパッド110が受ける動力によって油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aから圧油が、パイロット駆動式逆止弁130Dを介して油圧ポンプ/モータ130Aに流入し、油圧ポンプ/モータ130Aが油圧モータとして作用する。この油圧ポンプ/モータ130Aによってサーボモータ130Bが従動して発電機として作用するため、サーボモータ130Bによって発電された電力を回生することが好ましい。
【0115】
<ダイクッション位置の制御>
指令器150は、スライド14が下死点に到達し、ダイクッション力制御終了後に、製品ノックアウト動作を行うとともに、クッションパッド110をダイクッション待機位置に移動(上昇)させるために、クッションパッド110の位置を制御する指令値(位置指令値)を出力する。
【0116】
ダイクッション位置制御状態の場合、制御器160は、指令器150から入力する位置指令値とダイクッション位置検出器112により検出されるダイクッション位置検出信号とに基づいてサーボモータ130Bを制御し、油圧ポンプ/モータ130Aから油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに圧油を供給する。
【0117】
これにより、油圧シリンダ120のピストンロッド120cの伸縮方向の位置を制御することにより、クッションパッド110の昇降方向の位置(ダイクッション位置)を制御することができる。
【0118】
[第1の油圧回路の第2の実施形態]
図7は、
図4に示した第2の実施形態のダイクッション装置100’に対応する構成図であり、特に第2の実施形態の第1の油圧回路130−2を含む構成図である。
【0119】
図6に示す第2の実施形態の第1の油圧回路130−2は、主として4ポート式2位置形比例流量制御弁(以下、単に「比例流量制御弁」という)131、電磁切換弁132、チェック弁133、アキュムレータ143Aを有する圧油供給源(油圧ポンプ143B、電動モータ143D、及びリリーフ弁143Fを含む)等から構成されている。
【0120】
油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに接続された流路には、ヘッド側油圧室120aの圧力を検出するダイクッション圧力検出器122が接続されるとともに、比例流量制御弁131のAポートが接続され、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bに接続された流路には、パイロット駆動式逆止弁141を介して比例流量制御弁131のBポートが接続されるとともに、チェック弁133を介してタンク148が接続されている。
【0121】
比例流量制御弁131の圧力供給ポート(Pポート)は、開閉可能な電磁切換弁132を介してアキュムレータ143Aを有する圧油供給源に接続され、比例流量制御弁131のTポートは、タンク148に接続されている。
【0122】
尚、アキュムレータ143Aは、高圧のガス圧がセットされ、高圧の圧油を保持しており、この高圧の圧油は、ダイクッション位置制御時に電磁切換弁132及び比例流量制御弁131を介して油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに供給されることにより、クッションパッド110を上昇させ、また、電磁切換弁143Cを介してパイロット駆動式逆止弁141のパイロット圧力として供給される。
【0123】
一方、プレス機械のスライド14には、スライド位置検出器32及びスライド速度検出器33が設置されている。
【0124】
スライド位置検出器32、スライド速度検出器33、ダイクッション位置検出器112、及びダイクッション圧力検出器122の各検出信号は、それぞれ制御器160’に取り込まれる。また、制御器160’には、指令器150からダイクッション力又はダイクッション力に対応するダイクッション圧力を示す指令値や、ノックアウト位置、ダイクッション待機位置等の位置(ダイクッション位置)を示す指令値が加えられるようになっている。
【0125】
制御器160’は、ダイクッション力制御とダイクッション位置制御とを行うためのもので、上記指令値及び検出信号に基づいて比例流量制御弁131制御する制御信号を出力するとともに、電磁切換弁132、143Cを切り替えるための切替信号を出力する。
【0126】
[ダイクッション力制御の原理]
ダイクッション力は、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力とシリンダ面積の積で表すことができるため、ダイクッション力を制御することは、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力を制御することを意味する。
【0127】
油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力Pは、次式で表すことができる。
【0128】
[数6]
P=(K/V)*q*(1/s)
上記[数6]式中の各記号の意味は、下記の通りである。
【0129】
K : 体積弾性係数
V :シリンダ下室の体積[cm
3]
q : シリンダ下室への流入出量[cm
3/s]
1/s: 積分
この[数6]式からヘッド側油圧室120aへの流入出量qが制御可能であれば、発生する圧力(ダイクッション力)を制御することができることが分かる。
【0130】
ベルヌーイの式を用いると、比例流量制御弁131を通過するヘッド側油圧室120aからの流出量Qは、比例流量制御弁131の開度に比例する弁係数Kvと、ヘッド側油圧室120aの圧力Pにより、次式で表すことができる。
【0131】
[数7]
Q= Kv√P
[数8]
Kv=Cd*π*d√(2/ρ)*x
=C*x(C:定数)
上記[数7]式、[数8]式中の各記号の意味は、下記の通りである。
【0132】
P: 圧力[kgf/cm
2]
Q:比例流量制御弁を通過する流量[cm
3/s]
ρ: 作動油密度[kgf s
2/cm
4]
Cd: 流量係数
d: 比例流量制御弁のスプール直径[cm]
x:比例流量制御弁131のスプール変位量[cm]
ヘッド側油圧室120aへの流入出量qは、流入量Qsから流出量Qを減算したものである(q=Qs−Q)。流入量Qsは、スライド速度(シリンダのピストンの下降速度)とシリンダ面積との積で決定されるため、ヘッド側油圧室120aからの流出量Qを制御することにより、ヘッド側油圧室120aの圧力を制御することができる。
【0133】
また、弁係数Kvは、[数8]式に示すように比例流量制御弁131のスプール変位量xに比例し、比例流量制御弁131は、比例流量制御弁指令に比例してスプール位置が変化するため、圧力差が一定であれば、比例流量制御弁指令に比例して作動油の通過流量が決定される。
【0134】
ここで、[数7]式は、次式、
[数9]
Kv=Q/√P
に変形することができる。ダイクッションの指令圧力をPr、スライド速度から求めた流量をQs として、[数9]式のQ ,Pに代入することにより、弁係数Kvを求めることができる。この弁係数Kvに対応するスプール変位量(開度)になるように比例流量制御弁131を制御することにより、ヘッド側油圧室120aの圧力Pを指令圧力Prになるように制御することができる。
【0135】
即ち、ヘッド側油圧室120aの圧力Pが指令圧力Prよりも低い時(P<Pr)、比例流量制御弁131を通過する流出量Qは、ヘッド側油圧室120aへの流入量Qsよりも少なくなる(Q<Qs)。この時、ヘッド側油圧室120aへの流入出量q(=Qs−Q)が増加し、ヘッド側油圧室120aの圧力Pも上昇する。ヘッド側油圧室120aの圧力Pが指令圧力Prと等しくなると(P=Pr) 、ヘッド側油圧室120aからの流出量Qも流入量Qsと等しくなり(Q=Qs)、シリンダ下室の圧力Pは、指令圧力Prに落ち着く。
【0136】
<ダイクッション力の制御>
ダイクッション力制御時には、指令器150は、必要なダイクッション力に対応する指令値を出力する。本例では、クッションパッド110が位置制御され、ダイクッション待機位置に達すると、予め設定された圧力PHdcを示す指令値を出力する。尚、アキュムレータ143Aを有する圧油供給源は、圧力PHdcの圧油を供給することが好ましいが、圧力PHdcよりも低くてもよい。
【0137】
制御器160’は、クッションパッド110がダイクッション待機位置に達し、ダイクッション位置制御状態からダイクッション力制御状態に制御が切り替えられると、電磁切換弁143Cのソレノイドを消磁する切替信号を出力し、パイロット駆動式逆止弁141にパイロット圧力が印加されないようにし、パイロット駆動式逆止弁141を閉じる。また、制御器160’は、電磁切換弁132及び比例流量制御弁131に制御信号を出力し、アキュムレータ143Aを有する圧油供給源から高圧の圧油を電磁切換弁132及び比例流量制御弁131を介して油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aに供給し、ヘッド側油圧室120aの圧力を、アキュムレータ143Aの圧力と同じ圧力になるように加圧する。
【0138】
尚、スライド14がクッションパッド110に衝突する前(ダイクッション力制御開始前)に、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力が加圧されても、ロッド側油圧室120bからの作動油の流出が阻止されているため、ロッド側油圧室120bの圧力が上昇し、両者の圧力が釣り合った状態でクッションパッド110は静止しており、ダイクッション力は発生しない。
【0139】
スライド14が下降し、スライド14がクッションパッド110に衝突してから下死点に至るまでの下降時(成形時)、制御器160’は、電磁切換弁132を閉じる切替信号を出力し、比例流量制御弁131のPポートを閉じた状態にするとともに、予め設定されたダイクッション力に対応する圧力指令とスライド速度とに基づいて算出した比例流量制御弁制御信号を比例流量制御弁131に出力し、比例流量制御弁131が適切な開度となるように制御する。これにより、比例流量制御弁131を通過する流量(油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aから流出する流量)が制御され、ヘッド側油圧室120aの圧力は、必要なダイクッション力を発生する圧力になるように制御される。
【0140】
<ダイクッション位置の制御>
指令器150は、スライド14が下死点に到達し、ダイクッション力制御終了後に、製品ノックアウト動作を行うとともに、クッションパッド110をダイクッション待機位置に移動(上昇)させるために、クッションパッド110の位置を制御する指令値(位置指令値)を出力する。
【0141】
ダイクッション位置制御状態の場合、制御器160’は、電磁切換弁132を開く切替信号を出力し、比例流量制御弁131のPポートを開いた状態にするとともに、電磁切換弁143Cのソレノイドを励磁して電磁切換弁143Cを介してパイロット駆動式逆止弁141にパイロット圧力を印加し、パイロット駆動式逆止弁141を開き、ロッド側油圧室120bからの作動油の流出を可能にする。続いて、制御器160’は、指令器150からの位置指令値、ダイクッション位置検出器112からのダイクッション位置信号に基づいて比例流量制御弁131の開度を制御し、クッションパッド110をダイクッション待機位置に移動させる。
【0142】
[比較例]
次に、本発明に係るダイクッション装置と従来のダイクッション装置との構成及び作用効果を比較する。
【0143】
従来のダイクッション装置としては、ダイクッション力制御開始前にクッションパッドをクッションパッド待機位置から所定量上昇した位置で停止させ、その後、スライドがクッションパッドに衝突し、クッションパッドが上昇以前の高さまで押し下げられた時に、ダイクッション力が設定圧力になるように制御するものとする。また、クッションパッドがクッションパッド待機位置から所定量上昇した位置で停止している状態では、油圧シリンダのロッド側油圧室の作動油は、その流出入が自由になっており、油圧シリンダのヘッド側油圧室及びロッド側油圧室は、高圧に加圧されてない(加圧できない)状態になっている。
【0144】
図8(A)〜(D)は、従来のダイクッション装置のクッションパッド110がダイクッション待機位置に位置している状態から予め設定されたダイクッション力を発生するまでの油圧シリンダ120の推移を示す図である。
【0145】
図8(A)は、ダイクッション位置制御によりクッションパッド110がダイクッション待機位置に位置(待機)している状態の油圧シリンダ120に関して示している。
【0146】
この時のロッド側油圧室120bの圧力をPR0とし、ロッド側油圧室120bの伸縮方向の寸法(長さ)をL、ヘッド側油圧室120aの伸縮方向の寸法(長さ)をL2とする。
【0147】
図8(B)に示すように、
図8(A)の状態から更にクッションパッドの位置制御を行い、クッションパッド110(ピストンロッド120c)をクッションパッド待機位置から所定の上昇量x’だけ上昇した位置に移動させる。このとき、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力は圧力PH0、ロッド側油圧室120bの圧力は、圧力PR0となっているものとする。
【0148】
尚、説明を簡単にするために、封じ込められた作動油の容積は、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの容積のみとし、配管内の容積は省略する。また、ロッド側油圧室120bの容積は十分に大きいものとし、更にクッションパッド110等の重量は省略する。
【0149】
油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの封じ込め圧力PH0は、ロッド側油圧室120bの圧力を圧力PR0とすると、次式で表すことができる。
【0150】
[数10]
PH0=PR0*AR/AH
但し、
AH:油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの断面積
AR:油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの断面積
である。
【0151】
尚、本例では、説明を簡単にするために、封じ込められた作動油の容積は、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの容積のみとし、ロッド側油圧室120bに接続される配管内の容積は省略する。また、クッションパッド110等の重量も省略する。
【0152】
図8(B)に示した状態からスライド14の下降によりスライド14がクッションパッド110に衝突し、スライド14とともにクッションパッド110が下降すると、油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの圧力が圧力PR0から徐々に上昇する。
【0153】
そして、
図8(D)に示すようにクッションパッド110が上昇量x’だけ押し下げられると(クッションパッド110がダイクッション待機位置に達すると)、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力は、所定の圧力PHdcになり、油圧シリンダ120は、必要なダイクッション力Fを発生する。逆に、クッションパッド110の上昇量x’は、その上昇量x’分だけ押し下げられたときに、ヘッド側油圧室120aの容積変化によって容積変化前の圧力PH0が圧力PHdcになるように決定される。
【0154】
ここで、油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aにおいて、ヘッド側油圧室120aの容積が変化した後のヘッド側油圧室120aの圧力と容積の関係は、次式で表すことができる。
【0155】
[数11]
P=P’+kΔV/V
但し、
P:容積変化後の油圧室圧力
P’:容積変化前の油圧室圧力
V:容積変化前の油圧室容積
ΔV:容積圧縮量
k:作動油の体積弾性係数
である。
【0156】
また、[数11]式は、PHdc、PH0,L2、AR、AH、及び上昇量x’を用いて、次式に書き替えることができる。
【0157】
[数12]
PHdc=PH0+k*AH*x’/(AH*L2)
x’=(PHdc−PH0)*L2/k
また、必要なダイクッション力Fを得るために必要な油圧シリンダ120のヘッド側油圧室120aの圧力PHdcは、次式により算出することができる。
【0158】
[数13]
PHdc=(F+PR0*AR)/AH
したがって、[数12]式及び[数13]により、上昇量x’は、次式により表すことができる。
【0159】
[数14]
x’={(F+PR0*AR)/AH−PH0}*L2/k
したがって、設計上必要な位置で必要なダイクッション力Fを得るためにヘッド側油圧室120aの圧力をPHdcとした場合の上昇量x’も、[数14]式により算出することが出来る。
【0160】
いま、
図3を用いて説明した本発明に係るダイクッション装置に適用した既知の値と同じ値を使用して、PHdc,PH0を求めると、
PHdc=(500000+0.7*16100)/41548≒12.3MPa
PH0=0.7*16100/41548≒0.27MPa
となり、これらを[数12]式に代入して、上昇量x’を算出すると、上昇量x’は、
x’=(12.3−0.27)*350/1000≒4.21mm
となる。
【0161】
本発明に係るダイクッション装置のようにダイクッション力制御開始前に油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの作動油の流出を阻止してヘッド側油圧室120aの圧力をPHdcになるように加圧したときのクッションパッド110の上昇量x(約1.55mm)に対して、従来のダイクッション装置(油圧シリンダ120のロッド側油圧室120bの作動油の流出を阻止せずに)、ダイクッション待機位置にて必要なダイクッション力を得るためにクッションパッドを上昇させる上昇量x’(約4.21)は、3倍近い上昇量が必要になる。
【0162】
[その他]
クッションパッドに配設される油圧シリンダは、本実施形態の1箇所に限らず、例えば、クッションパッドの前後の2箇所、あるいは前後左右の4箇所に配置してもよく、また、油圧シリンダから必要なダイクッション力を発生させるための油圧回路及びその制御方法は、本実施形態に限らず、種々のものを適用することができる。
【0163】
また、本実施形態では、ダイクッション装置の作動液として油を使用した場合について説明したが、これに限らず、水やその他の液体を使用してもよい。即ち、本実施形態においては、油圧シリンダ、油圧回路を使用した形態で説明したが、これらに限定されるものではなく、水やその他の液体を使用した液圧シリンダ、液圧回路を本発明において使用できることは言うまでもない。
【0164】
更に、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいことは言うまでもない。