(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153273
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20170619BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20170619BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W48/16 110
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-543754(P2015-543754)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2014073923
(87)【国際公開番号】WO2015060033
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-219078(P2013-219078)
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】竹川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 慶
(72)【発明者】
【氏名】トウ キャートベン
【審査官】
齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/116240(WO,A1)
【文献】
特開2012−039613(JP,A)
【文献】
特開2013−187604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次利用者にライセンスされた周波数のうち使用されていないホワイトスペースを二次利用して基地局と端末局との間で無線通信を行う無線通信システムであって、
ホワイトスペースの情報を管理する管理装置を備え、
前記基地局には、自局が前記一次利用者の無線通信に干渉を与えないことが保証された所定の周波数の情報が予め設定してあり、
前記基地局は、自局で使用可能なホワイトスペースの情報を前記管理装置から取得するために、通信可能な距離内の端末局と、前記所定の周波数を用いて無線通信を行い、当該所定の周波数を用いた無線通信を介して前記管理装置にアクセスし、自局で使用可能なホワイトスペースの情報を取得した後は、当該ホワイトスペースを用いて自セル内の端末局との無線通信を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記端末局は、該端末局をセル内に有する基地局が前記一次利用者の無線通信に干渉を与えないことが保証された前記所定の周波数の情報を、予め記憶し或いは前記管理装置から取得し、
前記端末局は、該基地局と無線通信によって接続されていない間は、前記所定の周波数において基地局のサーチを行い、該所定の周波数で発見した基地局へ優先的に接続することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記端末局は、前記管理装置に或いはインターネットにアクセスすることが可能な場合には、前記所定の周波数において基地局のサーチを行い、該アクセスが可能でない場合には、周波数に制限を設けずに基地局のサーチを行うことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線アクセス方式を利用して中継動作を行う、ホワイトスペースを使用した無線通信システムであって、
ホワイトスペースの情報を管理する管理装置にアクセスするために自セル内の端末局との無線通信を介する必要がない第1の基地局と、
前記管理装置にアクセスするために自セル内の端末局との無線通信を介する必要がある第2の基地局と、
前記第1の基地局と前記第2の基地局との間の通信を中継する中継局と、を備え、
前記第1の基地局と前記第2の基地局は、同一のTDD無線アクセス方式を用い、互いに同期したフレームタイミングで動作し、
前記中継局は、前記第1の基地局のセル内の第1の端末局と、前記第2の基地局のセル内の第2の端末局とを有線接続して構成されており、
前記第2の基地局は、自局で使用可能なホワイトスペースの情報を前記管理装置から取得するために前記所定の周波数を用いて前記第2の端末局との無線通信を行い、当該無線通信を介して前記管理装置にアクセスして自局で使用可能なホワイトスペースの情報を取得した後は、当該ホワイトスペースを用いて第2の端末局及び自セル内の他の端末局との無線通信を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
前記中継局を構成する前記第2の基地局のセル内のいずれかの端末局は、該端末局をセル内に有する基地局が前記一次利用者の無線通信に干渉を与えないことが保証された前記所定の周波数の情報を、予め記憶し或いは前記管理装置から取得し、
該基地局と無線通信によって接続されていない間は、前記所定の周波数において基地局のサーチを行い、該所定の周波数で発見した基地局へ優先的に接続することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトスペースを利用する無線通信システムに関し、特に、無線通信装置が利用する周波数の割当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の進展は実に目覚しく、多くの情報通信機器やサービスにおける通信方法として、有線通信のほかに、無線通信が利用されることも多くなっている。これに伴い、有限な資源である無線周波数の需要も増加の一途をたどっており、割当て可能な周波数の枯渇が世界各国で大きな問題となってきている。一般に、周波数は国がライセンス管理を行い、ライセンスを割当てられた者だけが、特定の場所および時間において、厳格な管理の下、その周波数を利用することができる。しかし、今後も増え続けるであろう周波数需要に対応するためには、これまでの利用方法にとらわれない、新しい周波数の利用方法が求められている。
【0003】
そこで近年、周波数の枯渇問題を解決するための新たな周波数の利用方法として、既に割当てられているにも関わらず、空間的、時間的に使用されない周波数帯(ホワイトスペース)を利用する方法が研究されている。例えば、ライセンスを受けている利用者(以下、「一次利用者」という)の既存システムの周波数使用への影響(干渉)を十分回避しつつ、ライセンスを受けていない利用者(以下、「二次利用者」という)が柔軟にホワイトスペースの電波を利用するコグニティブ無線通信システムなどの研究開発や標準化が行われている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
一例として、IEEE 802.22で標準化が行われている、ホワイトスペースを利用する広域無線通信(WRAN:Wireless Regional Area Network)システムでは、各無線局は、IPネットワーク上のホワイトスペースデータベースや共存マネージャ(以下、「データベース等」という)にアクセスすることで、自局の位置情報に基づく送信可能周波数リスト(一次利用者に干渉を与えることなく無線通信を行うことができる周波数のリスト)と最大許容送信電力とを取得する。送信可能周波数リストは、戸別に設置される子局等の端末局(CPE:Customer Premises Equipment)が接続する基地局(BS:Base St ation)内のスペクトルマネージャ(SM:Spectrum Manager)によって、随時更新をしながら一括管理されている。そして、BSはこの送信可能周波数リストに基づき、自局の運用周波数を決定する。
【0005】
また、各無線局(BSおよびCPE、以下同様)はスペクトルセンシング機能を具備していることもある。各無線局は、スペクトルセンシングによって、決定された使用周波数が既存システム(一次利用者のシステム)によって使用されていることを検出すると、その情報をSMに通知する。すると、SMは送信可能周波数リストからこの周波数を除外する。ホワイトスペースを利用する無線通信システムは、このようにして時々刻々と更新される情報に基づきダイナミックなスペクトルアクセスを行うことで、一次利用者の周波数使用への影響を回避すると同時に、二次利用者の通信も実現する。
【0006】
ホワイトスペースを利用する無線通信システムに関し、これまでに種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、第1の基地局は、第2の基地局に、共有チャネルを使用して、第1のバックホール情報を提供することができ、共有チャネルは、ホワイトスペースチャネル、認可共有マルチユーザ(ASM)チャネル、または、計測、化学、測定用(ISM)チャネルであることができ、第1の基地局はさらに、レガシーバックホールチャネルを使用して、第2のバックホール情報を提供することができる、ワイヤレス通信の方法が開示されている。
【0007】
例えば、特許文献2には、第1のチャネル上で第1の信号を受信することと、第1の信号に基づいて第2のチャネルを決定することと、第2のチャネル上で第2の信号を受信することと、第2の信号の品質に基づいて、第2のチャネル上でワイヤレスデバイスと通信することとを含む、ワイヤレス通信の方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2013−523024号公報
【特許文献2】特表2013−529047号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE Std 802.22-2011, 1 July 2011, Part 22: Cognitive Wireless RAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications: Policies and Procedures for Operation in the TV Bands
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通り、IEEE 802.22は、各無線局がデータベース等から取得した送信可能周波数リストや、スペクトラムセンシング機能によって、一次利用者への干渉を回避しつつ、周波数の二次利用を実現するシステムである。
ここで、
図7に示すように、IEEE 802.22無線リンクを用いた中継通信システムを構成することを考える。同図の中継通信システムは、インターネットにバックホール回線を介して接続された第1の基地局(BS1)と、BS1と周波数f1で無線通信する第1の端末局(CPE1)と、CPE1と有線接続された第2の基地局(BS2)と、BS2と周波数f2で無線通信する第2の端末局(CPE2)と、を有している。同図のBS2およびCPE1は、中継局として機能する。
【0011】
IEEE 802.22は、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式であり、システム内のBSは、干渉を軽減するために、GPS時計などを利用してスーパーフレームやフレームのタイミングを同期させることが基本である。従って、
図7のような中継通信を行う場合に、中継局として近接して配置されたBS2およびCPE1の送受信タイミングは、
図8に示すような関係となる。
すなわち、下り信号(上位装置から下位装置への信号)を伝送するタイミングでは、CPE1がBS1から周波数f1の下り信号を受信するとともに、BS2がCPE2へ周波数f2の下り信号を送信する。この結果、BS2から送信される周波数f2の下り信号が高い電力でCPE1に飛び込んで妨害となる。
また、上り信号(下位装置から上位装置への信号)を伝送するタイミングでは、CPE1がBS1へ周波数f1の上り信号を送信するとともに、BS2がCPE2から周波数f2の上り信号を受信する。この結果、CPE1から送信される周波数f2の下り信号が高い電力でBS2に飛び込んで妨害となる。
【0012】
このため、基地局(BS2)と端末局(CPE1)の2つの無線局で構成された中継局では、一方の無線局が発射する電波が高いレベルのまま他方の無線局に受信されることによるブロッキングの発生、一方の無線局が発射する電波に含まれる帯域外漏洩成分が高いレベルのまま他方の無線局に入り込むことによる信号対雑音比の劣化など、中継局を構成する各無線局の受信動作に妨害が発生するという問題がある。
【0013】
この問題を解決するために、
図9に示すような中継構成をとることがある。同図の中継通信システムは、インターネットにバックホール回線を介して接続された第1の基地局であるBS1と、BS1と周波数f1で無線通信する第1の端末局であるCPE1と、CPE1と有線接続された第2の端末局であるCPE2と、CPE2と周波数f2で無線通信する第2の基地局であるBS2と、を有している。同図のCPE1およびCPE2は、協働して中継局として機能する。
【0014】
図9のような中継通信を行う場合に、中継局として近接して配置されたCPE1とCPE2の送受信タイミングは、
図10に示すような関係となる。
すなわち、下り信号を伝送するタイミングでは、CPE1がBS1から周波数f1の下り信号を受信するとともに、CPE2がBS2から周波数f2の下り信号を受信する。
また、上り信号を伝送するタイミングでは、CPE1がBS1へ周波数f1の上り信号を送信するとともに、CPE2がBS2へ周波数f2の上り信号を送信する。
【0015】
このような中継構成では、近接して配置されたCPE1とCPE2で送信と受信のタイミングが一致するので、互いに妨害とならない。
つまり、中継局を構成する2つの無線局をともに端末局(CPE1とCPE2)とすることで、送受信タイミングが
図10のような関係となり、一方の無線局が受信しているときに他方の無線局が送信しているという状況を回避することができる。また、このような中継局をあるBSの通信エリアの辺縁に配置する方法は、2つのエリアの辺縁同士を連結するので、エリア配置の効率も良い。
【0016】
ここで、
図9の中継構成におけるBS2は、CPE2との無線リンクを確立していない状況ではインターネットに接続されずに孤立しており、以下では、このようなBSを孤立BSと呼ぶこととする。
孤立BSであるBS2が2ホップ目の無線リンクを確立するために新たなホワイトスペースを利用した無線通信を開始しようとする際には、CPE2との無線リンクが確立されていないことから、自局の位置情報に基づいてインターネット上のデータベース等が提供する送信可能周波数リストを取得することができない。つまり、BS2は自局位置での送信可能周波数を知ることなく電波を発射する必要があり、BS2がスペクトラムセンシング機能を具備しない場合には、一次利用者へ干渉を与える危険性が高くなる。
【0017】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、上記の状況、すなわち孤立BSの位置情報に基づいてデータベース等からホワイトスペースの情報(例えば、送信可能周波数リスト)を取得する以前に、一次利用者へ干渉を与える可能性がある周波数の電波を発射することなく当該孤立BSが無線通信を開始することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明では無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、本発明は、一次利用者にライセンスされた周波数のうち使用されていないホワイトスペースを二次利用して基地局と端末局との間で無線通信を行う無線通信システムであって、ホワイトスペースの情報を管理する管理装置を備え、前記基地局には、自局が前記一次利用者の無線通信に干渉を与えないことが保証された所定の周波数の情報が予め設定してあり、前記基地局は、自局で使用可能なホワイトスペースの情報を前記管理装置から取得するために自セル内の端末局との無線通信を介して前記管理装置にアクセスする必要がある場合に、前記所定の周波数を用いて自セル内の端末局との無線通信を行い、当該無線通信を介して前記管理装置にアクセスして自局で使用可能なホワイトスペースの情報を取得した後は、当該ホワイトスペースを用いて自セル内の端末局との無線通信を行う、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、一構成例として、前記端末局には、自局をセル内に有する基地局が前記一次利用者の無線通信に干渉を与えないことが保証された前記所定の周波数の情報が予め設定してあり、前記端末局は、自局が前記管理装置にアクセスすることが可能な場合には、前記所定の周波数の情報に基づいて基地局のサーチを行い、自局が前記管理装置にアクセスすることが可能でない場合には、周波数に制限を設けずに基地局のサーチを行う、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、一構成例として、前記管理装置にアクセスするために自セル内の端末局との無線通信を介する必要がない第1の基地局と、前記管理装置にアクセスするために自セル内の端末局との無線通信を介する必要がある第2の基地局と、前記第1の基地局と前記第2の基地局との間の通信を中継する中継局と、を備え、前記中継局は、前記第1の基地局のセル内のいずれかの端末局と、前記第2の基地局のセル内のいずれかの端末局とを有線接続して構成されており、前記第2の基地局は、自局で使用可能なホワイトスペースの情報を前記管理装置から取得するために前記所定の周波数を用いて前記中継局を構成する自セル内の端末局との無線通信を行い、当該無線通信を介して前記管理装置にアクセスして自局で使用可能なホワイトスペースの情報を取得した後は、当該ホワイトスペースを用いて自セル内の端末局との無線通信を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、端末局を経由しなければホワイトスペースの情報(例えば、送信可能周波数リスト)を取得できない基地局を用いてマルチホップ無線通信システムを構成する場合であっても、当該基地局がホワイトスペースの情報を取得する以前でありながら、一次利用者へ干渉を与える可能性がある周波数の電波を発射することなく無線通信を開始することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成の例を示す図。
【
図4】BS20が孤立している状態における周波数の使用状況の例を示す図。
【
図5】CPE21がBS20に無線接続した直後における周波数の使用状況の例を示す図。
【
図6】BS22がCPE21を介してインターネットに接続された状態における周波数の使用状況の例を示す図。
【
図7】IEEE802.22無線リンクを用いた中継通信システムのシステム構成の例を示す図。
【
図8】
図7の中継通信システムにおいて中継局を構成するCPE1とBS2の送受信タイミングの例を示す図。
【
図9】IEEE802.22無線リンクを用いた中継通信システムのシステム構成の他の例を示す図。
【
図10】
図9の中継通信システムにおいて中継局を構成するCPE1とCPE2の送受信タイミングの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[実施形態の概要]
本発明の一実施形態に係る無線通信システムは、無線通信を行う無線通信装置である基地局と端末局とを含んで構成され、ホワイトスペースを利用してマルチホップ無線通信を行う無線通信システムであり、概略的に、以下のような構成となっている。
すなわち、基地局は、自局がネットワーク的に孤立しており、無線通信以外の手段で自局の送信可能周波数リストを取得する手段がない場合において、当該無線通信システムが無線通信を行うホワイトスペースの周波数以外に、自局の送信可能周波数リストを取得するために必要な無線通信に使用するために、自局が送信可能であることを保証されている所定の使用可能周波数の電波を用いて無線通信を行う手段を備え、自局の送信可能周波数リストを取得するまでは、所定の使用可能周波数を使用して、送信周波数リストを取得するために必要な情報及びそれ以外の情報を送受信するものであり、基地局が、自局の送信可能周波数でない可能性のある周波数の電波を発射することなく、自局の位置情報に基づいた送信周波数可能リストに含まれる周波数を使用することを可能にしている。
【0024】
[無線通信システムの概要]
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体構成の例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システム1は、ホワイトスペースを利用してマルチホップ無線通信を行う。
【0025】
図1に示されるように、無線通信システム1は、端末局であるCPE11,CPE21およびCPE22と、これらの端末局が接続する基地局であるBS10およびBS20と、BS10のバックホール回線30と、インターネット40と、ホワイトスペースデータベース(DB)(以下、「データベース」という)50と、ホワイトスペース共存マネージャ(CM)(以下、「共存マネージャ」という)60とを含んで構成される。なお、本実施形態では、データベース50と共存マネージャ60が、本発明に係る管理装置に相当する。特に断らない限り、本例のBSやCPEは、IEEE802.22においてそれらに求められる機能を全て有しているものとする。
【0026】
BS10は、バックホール回線30を通してインターネット40に接続され、インターネット上に存在するデータベース50、共存マネージャ60へのアクセスを行う。BS10は、その無線通信エリア内に存在するCPE11とともに、セル1を構成している。BS20は、その無線通信エリア内に存在するCPE21、CPE22とともに、セル2を構成している。CPE11とCPE21は有線接続されることで、中継局として機能する。BS20およびCPE22は、BS10とCPE11との間の無線リンク(1ホップ目の無線リンク)およびCPE21とBS20との間の無線リンク(2ホップ目の無線リンク)を介してインターネット40に接続される。この中継構成により、BS10からの電波が届かないエリアに存在するCPE22にも、BS20を介したインターネット接続が提供される。
【0027】
また、周波数使用のライセンスを受けている一次利用者の通信システム(以下、「既存システム」という)2は、送信局70と受信局80とを含んで構成されており、周波数f1およびf2のライセンスを受けて使用しているものとする。以下の説明においては、周波数f1およびf2の使用ライセンスを受けていない二次利用者が、周波数f1およびf2をホワイトスペースとして利用するものとする。
【0028】
ここで、
図1に示されるように、既存システム2が周波数f1およびf2を使用して通信を行っているときでも、既存システム2のサービスエリアから地理的に十分な距離をおいて無線通信システム1のサービスエリアを配置し、かつ無線通信システム1を構成する無線局の送信電力を十分小さくすれば、無線通信システム1が周波数f1やf2を用いて送信を行っても、既存システム2に干渉を与えることなく通信を行うことが可能である。本構成例では、このように、空間的・時間的に一時利用システムへ影響を与えずに無線通信に使用可能な周波数(送信可能周波数)の情報を提供するのがデータベース50の役割である。
【0029】
更に、無線通信システム1を構成するBS10およびBS20は、それぞれ異なる周波数を二次利用(例えば、BS10が周波数f1を、BS20が周波数f2をそれぞれ利用)して無線通信を行うことができる。本構成例では、このように、周波数を二次利用する無線通信システムが複数存在している場合に、二次利用システム間の干渉を避けて適切に無線通信が行われるよう、各無線局の送信可能周波数リストを再構築するのが共存マネージャ60の役割である。
このように、ホワイトスペース利用無線システムは、空間的に使用可能な周波数資源を有効利用できる。
【0030】
ここで、BS10が二次利用する周波数は、BS10がインターネット40上に存在するデータベース50や共存マネージャ60へアクセスすることによって得られるものとする。すなわち、BS10は、まずデータベース50へアクセスし、自局の位置情報等を渡して、自局の設置位置における送信可能周波数リスト及びその周波数に対応する最大許容送信電力の情報を取得する。次に、共存マネージャ60へ自局の設置位置、送信可能周波数リスト、最大送信可能電力の情報を通知する。共存マネージャ60は、BS10の送信可能周波数リスト及びBS10の周辺に存在している別の二次利用システムの運用チャネル情報等から、BS10の送信可能周波数リストを再構築し、BS10へ再構築後の送信可能周波数リストを回答する。BS10は、再構築後の送信可能周波数リストから運用チャネルを選択し、共存マネージャ60へ自局の運用チャネルを通知する。これにより、共存マネージャ60は、BS10が現在二次利用している周波数を把握する。
【0031】
一方、BS20は、初期化された直後(CPE21との無線リンクが確立される前)にはインターネット40に接続されていないため、無線通信に使用する周波数として、自局が送信可能であることを保証されている周波数f10を用いて、電波の送受信を行う。BS20は、CPS21との無線リンクが確立してネットワークエントリが完了した後に、CPE21、CPE11、BS10を経由してインターネット40上のデータベース50へアクセスし、自局の位置情報等を送信して、自局の設置位置における送信可能周波数リスト及びその周波数に対応する最大許容電力の情報を取得する。次に、共存マネージャ60へ自局の設置位置、送信可能周波数リスト、最大送信可能電力の情報を通知する。共存マネージャ60は、BS20の送信可能周波数リスト及びBS20の周辺に存在している別の二次利用システムの運用チャネル情報等から、BS20の送信可能周波数リストを再構築し、BS20へ再構築後の送信可能周波数リストを回答する。BS20は、再構築後の送信可能周波数リストから運用チャネルを選択し、共存マネージャ60へ自局の運用チャネルを通知する。これにより、共存マネージャ60は、BS20が現在二次利用している周波数を把握する。
【0032】
このとき、BS20の位置情報に基づいた送信可能周波数リストを取得するための無線通信に使用する周波数f10は、一次利用者へ干渉を与えないことが保証された周波数である。BSやCPEがこのような周波数を使用するには、例えば、UHF帯のチャネルのうち、特定の位置情報の範囲内に設置された無線局が送信可能であることを保証する周波数を予め定め、BSにデバイスの初期化情報として保持しておき、当該周波数をBSが選択して使用し、また、CPEにおいてもデバイスの初期化情報として当該周波数を保持しておき、電源投入直後にはその周波数においてBSをサーチする等の構成とすることができる。
また、他の構成としてもよく、例えば、BS20を周波数f10の一次利用者として割り当てる等の構成によっても実現が可能である。
【0033】
[BS10、BS20の具体的構成]
以下、
図2を参照しながら、BS10、BS20のより具体的な構成を説明する。
図2に示すように、BS10、BS20は、電波の送受信を行うアンテナ101と、データの送受信を行うデータ伝送部102と、運用チャネルや送信可能周波数の管理を行うスペクトルマネージャ(SM)103と、自局全体の制御を行う主制御部104と、バックホール回線30や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部105と、バックホール回線30や外部装置と接続するための端子106とを備える。
【0034】
データ伝送部102は、RF部111と、ベースバンド(BB)信号処理部112と、MAC処理部113とを備える。
RF部111は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
BB信号処理部112は、誤り訂正符号化・復号処理、および変復調処理などを行う。
MAC処理部113は、自局が使用する運用チャネルやデータ送受信タイミングの制御、通信パケットへの自局識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識などの処理を行う。
【0035】
SM103は、周波数情報通信部121と、周波数情報管理部122とを備える。
周波数情報通信部121は、データベース50へ自局の位置情報等を送信し、データベース50から自局の設置位置における送信可能周波数リスト及びその周波数に対応する最大許容電力を取得する。そして、共存マネージャ60へ自局の設置位置、送信可能周波数リスト、最大送信可能電力の情報を送信し、共存マネージャ60から再構築後の送信可能周波数リストを受信する。
【0036】
周波数情報管理部122は、自装置がインターフェース部105を通じてインターネット40に接続している場合(データベース50や共存マネージャ60にアクセス可能な場合)には、共存マネージャ60から受信した送信可能周波数リストの中から運用チャネルを選択し、自局が使用する周波数をデータ伝送部102へ通知するとともに、共存マネージャ60に対して自局の運用チャネルを通知する。自装置がインターフェース部105を通じてインターネット40に接続していない場合(データベース50や共存マネージャ60にアクセス可能でない場合)には、一次利用者が存在しないことが保証されている周波数f10をメモリ等から読み出し、当該周波数f10を自セルの運用周波数としてデータ伝送部102へ通知する。
【0037】
主制御部104は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することが可能である。また、BB信号処理部112、MAC処理部113、およびSM103における処理は、例えば、主制御部104のプロセッサがハードディスクやフラッシュメモリ等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0038】
[CPE11、CPE21、CPE22の具体的構成]
以下、
図3を参照しながら、CPE11、CPE21、CPE22のより具体的な構成を説明する。
図3に示すように、CPE11、CPE21、CPE22は、電波の送受信を行うアンテナ201と、データの送受信を行うデータ伝送部202と、自局の使用する周波数を制御する使用周波数制御部203と、自局全体の制御を行う主制御部204と、外部回線や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部205と、外部回線や外部装置と接続するための端子206とを備える。
【0039】
また、データ伝送部202は、RF部211と、ベースバンド(BB)信号処理部212と、MAC処理部213とを備える。
RF部211は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
BB信号処理部212は、誤り訂正符号化・復号処理、および変復調処理などを行う。
MAC処理部213は、自局が使用する運用チャネルやデータ送受信タイミングの制御、通信パケットへの自局識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識などの処理を行う。
【0040】
使用周波数制御部203は、自装置がインターフェース部205を通じてインターネット40に接続されている場合(データベース50や共存マネージャ60にアクセス可能な場合)には、一次利用者が存在しないことが保証されている周波数f10をメモリ等から読み出し、当該周波数f10を使用してBSのサーチを行う。一方、インターフェース部205を通じてインターネット40に接続されていない場合(データベース50や共存マネージャ60にアクセス可能でない場合)には、周波数に制限を設けずにBSをサーチするように制御を行う。
【0041】
なお、主制御部204は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することが可能である。また、BB信号処理部212、MAC処理部213における処理は、例えば、主制御部204のプロセッサがハードディスク等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0042】
[無線通信に使用する周波数の切り替えパターンの例]
以下、
図4、
図5、
図6を参照して、BS10、BS20、CPE11、CPE21、CPE22が無線通信に使用する周波数の切り替えパターンの例について説明する。
【0043】
図4には、BS20が孤立している状態における周波数の使用状況の例を示してある。BS10、CPE11はインターネット40から自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストを取得し、その中に含まれる運用周波数f1を使用して無線通信を行っている。一方、BS20は、CPE21と無線接続する前は孤立しており、インターネット40に接続されていないため、自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストを取得することができず、一次利用者に干渉を与えないことが保証されている周波数f10を使用して無線通信を行っている。また、CPE22は、自装置がインターフェース部205を通じてインターネット40に接続されていないため、周波数に制限を設けずにBSをサーチし、その結果、周波数f10を送信しているBS20の電波が届いたために周波数f10を使用してBS20に接続している。
【0044】
図5には、CPE21がBS20に無線接続した直後における周波数の使用状況の例を示してある。CPE21は、自装置がインターフェース部205を通じてCPE11と接続され、更にCPE11とBS10との間の無線通信によりインターネット40に接続されている。この場合、CPE21は、一次利用者に干渉を与えないことが保証されている周波数f10でBSをサーチし、BS20に接続する。その結果、BS20は、CPE21と接続したことによりインターネット40へ接続され、データベース50や共存マネージャ60へアクセスすることで、自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストを取得できる。
【0045】
図6は、CPE21がBS20に接続されたことによりBS20がインターネット40に接続され、BS20がインターネット40上に存在するデータベース50等から自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストを取得できる状況となった後の状態である。BS20は、自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストの中から周波数f2を選択し、無線通信に使用する周波数を周波数f10から周波数f2に切り替える。これに対応して、CPE21、CPE22が無線通信に使用する周波数も周波数f10から周波数f2に切り替えられる。
【0046】
[まとめ]
以上のとおり、本実施形態によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、データベース等から送信可能周波数リストを取得する以前に端末局との無線通信を行う必要がある基地局が存在している場合でも、当該基地局が、自局が送信可能であることを保証されている所定の使用可能周波数の電波を用いた無線通信により送信周波数リストを取得することで、自局の送信可能周波数でない可能性のある電波を発射することなくホワイトスペースを使用した無線通信が可能となる。
【0047】
なお、基地局が、所定の使用可能周波数以外の周波数資源を利用するためにホワイトスペースを使用したい場合にも適用することができ、この場合にも、自局の送信可能周波数でない可能性のある電波を発射することなくホワイトスペースを使用した無線通信が可能となる。
ここで、所定の使用可能周波数以外の周波数資源を利用するためにホワイトスペースを使用したい場合の例としては、使用可能周波数が混雑しておりオフロードのためホワイトスペースを使用したい場合、中継システムを構成する際に使用可能周波数だけでは不足するため追加の周波数としてホワイトスペースを使用したい場合、使用可能周波数の帯域が狭帯域であり広帯域データ伝送に使用できないためデータ伝送用としてホワイトスペースを使用したい場合などが挙げられる。
【0048】
また、本発明は、IEEE802.22で規定されている無線通信システムに対して特に好適であるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと同様な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ホワイトスペースを利用して無線通信を行う種々の形式の無線通信システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:無線通信システム、 2:既存システム、 10:基地局(BS)、 11,21,22:無線通信端末(CPE)、 30:バックホール回線、 40:インターネット、 50:データベース(DB)、 60:共存マネージャ(CM)、 70:送信局、 80:受信局、
101:アンテナ、 102:データ伝送部、 103:スペクトルマネージャ(SM)、 104:主制御部、 105:インターフェース部、 106:端子、 111:RF部、 112:BB信号処理部、 113:MAC処理部、 121:周波数情報通信部、 122:周波数情報管理部、
201:アンテナ、 202:データ伝送部、 203:使用周波数制御部、 204:主制御部、 205:インターフェース部、 206:端子、 211:RF部、 212:BB信号処理部、 213:MAC処理部