(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153279
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】コンクリート用混和剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20170619BHJP
C08F 246/00 20060101ALI20170619BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C08F246/00
C04B103:30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-532654(P2016-532654)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】JP2015077935
(87)【国際公開番号】WO2016067826
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-222117(P2014-222117)
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】梶原 教裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 順司
(72)【発明者】
【氏名】有賀 静佳
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−322391(JP,A)
【文献】
特開2007−119337(JP,A)
【文献】
特開2011−026167(JP,A)
【文献】
特開昭63−156049(JP,A)
【文献】
特開2009−263181(JP,A)
【文献】
特開2001−220194(JP,A)
【文献】
特開2009−173527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 24/26
C08F 246/00
C04B 103/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加して該コンクリートの流動性を保持するコンクリート
用混和剤であって、全構成単位中に、80〜99.5質量%の下記の構成単位Aと、0.5〜20質量%の下記の構成単位Bと、0〜10質量%の下記の構成単位Cとから構成された共重合体の一つ又は二つ以上から成り、且つ全体の酢酸換算含有割合が0.1〜4.0質量%であるものから成ることを特徴とするコンクリート
用混和剤。
構成単位A:下記の化1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位B:(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸及びそれらの塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位C:(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数3〜4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A:炭素数2〜4のオキシアルキレン基で構成された平均付加モル数1〜300個の(ポリ)オキシアルキレン基)
【請求項2】
共重合体が、構成単位Aと構成単位Bとから構成されたものである請求項1記載のコンクリート用混和剤。
【請求項3】
全体の酢酸換算含有割合が、0.1〜3.0質量%であるものから成る請求項1又は2記載のコンクリート用混和剤。
【請求項4】
構成単位Aが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから形成された構成単位及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから形成された構成単位を含むものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載のコンクリート用混和剤。
【請求項5】
構成単位Aが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから形成された構成単位及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから形成された構成単位を3〜30質量%含むものである請求項4記載のコンクリート用混和剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート用混和剤に関する。各種材料を練り混ぜてコンクリートを調製し、調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して、運搬したコンクリートを使用する場合、例えば運搬に長時間を要し、調製したコンクリートの流動性が低下して、使用し難くなることがある。このような場合、運搬途中や運搬後で使用前の状態にある調製したまだ固まっていないコンクリートに混和剤を添加して、コンクリートの流動性を保持することが行なわれる。本発明は、運搬途中や運搬後で使用前の状態にある調製したまだ固まっていないコンクリートに添加することによって、コンクリートの流動性を、添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの流動性や流動保持性を向上するため、その調製時に、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系又はポリカルボン酸系等の各種の混和剤が使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これら従来の混和剤には、これらを前記したような運搬途中や運搬後で使用前の状態にあるコンクリートに添加する混和剤として使用すると、コンクリートの流動性が高くなり過ぎたり、その割には流動保持性が低いという問題がある。混和剤の添加によりコンクリートの流動性が高くなり過ぎると、コンクリートが材料分離を引き起こし、品質が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−119337号公報
【特許文献2】特開2011−026167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加することによって、該コンクリートの流動性を、添加直前の状態に長時間にわたって保持することができるコンクリート用混和剤を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、前記のようなコンクリート用混和剤としては、分子中に特定の構成単位を有する共重合体の一つ又は二つ以上からなる特定のものが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加して該コンクリートの流動性を保持するコンクリート用混和剤であって、全構成単位中に、80〜99.5質量%の下記の構成単位Aと、0.5〜20質量%の下記の構成単位Bと、0〜10質量%の下記の構成単位Cとから構成された共重合体の一つ又は二つ以上から成り、且つ全体の酢酸換算含有割合が0.1〜4.0質量%であるものから成ることを特徴とするコンクリート用混和剤に係る。
【0007】
構成単位A:下記の化1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0008】
構成単位B:(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸及びそれらの塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0009】
構成単位C:(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0010】
【化1】
【0011】
化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A:炭素数2〜4のオキシアルキレン基で構成された平均付加モル数1〜300個の(ポリ)オキシアルキレン基
【0012】
本発明に係るコンクリート用混和剤(以下、単に本発明の混和剤という)は、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加するもので、全構成単位中に、80〜99.5質量%の前記の構成単位Aと、0.5〜20質量%の前記の構成単位Bと、0〜10質量%の前記の構成単位Cとから構成された共重合体の一つ又は二つ以上から成るものである。
【0013】
構成単位Aを形成することとなる化1で示される単量体において、化1中のR
1としては、1)ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基、2)アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素数3〜4の不飽和アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
1としては、アリル基、メタリル基、3−メチル−1−ブテニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0014】
化1中のR
2としては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、2−メチル−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、2−プロピル−ヘプチル基、2−ブチル−オクチル基、2−ペンチル−ノニル基、2−ヘキシル−デシル基、2−ヘプチル−ウンデシル基、2−オクチル−ドデシル基、2−ノニル−トリデシル基、2−デシル−テトラデシル基、2−ウンデシル−ペンタデシル基、2−ドデシル−ヘキサデシル基等の炭素数1〜22のアルキル基、3)ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、ヘキサデセノイル基、エイコセノイル基、オクタデセノイル基等の炭素数1〜22の脂肪族アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
2としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の脂肪族アシル基が好ましい。
【0015】
化1中のAとしては、1)炭素数2〜4のオキシアルキレン基、2)合計2〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでも化1中のAとしては、合計1〜160個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基が好ましい。
【0016】
以上説明した化1で示される単量体の具体例としては、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、−メタリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等が挙げられる。
【0017】
化1で示される単量体としては、以上例示した単量体の一つ又は二つ以上を用いることができるが、なかでもヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを含むものを用いるのが好ましく、化1で示される単量体中にヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを3〜30質量%含むものがより好ましい。
【0018】
構成単位Bを形成することとなる単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸及びそれらの塩が挙げられる。なかでも構成単位Bを形成することとなる単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸塩、マレイン酸塩が好ましい。
【0019】
構成単位Bを形成することとなる単量体の塩としては、特に制限するものではないが、これには例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0020】
構成単位Cを形成することとなる単量体は、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルである。
【0021】
本発明の混和剤として用いる共重合体は、構成単位Aと構成単位Bを必須の構成単位とし、構成単位Cを任意の構成単位とするものである。かかる共重合体における構成単位Aの含有割合は全構成単位中に80〜99.5質量%とし、また構成単位Bの含有割合は全構成単位中に0.5〜20質量%とし、構成単位Cの含有割合は全構成単位中に0〜10質量%とする。
【0022】
本発明の混和剤は以上説明した共重合体の一つ又は二つ以上から成るものであるが、全体の酢酸換算含有割合が0.1〜4.0質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%の共重合体から成るものである。本発明において、酢酸換算含有割合は、本発明の混和剤を構成する共重合体に含まれるカルボキシル基及びその塩を電位差滴定して酢酸に換算したときの質量%であり、具体的には、共重合体の40質量%水溶液をイオン交換水で20倍に希釈した2質量%水溶液に塩酸水溶液を加えてpH2としたものを電位差滴定装置に供し、これを濃度0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定したときの、第1当量点と第2当量点との間に消費された水酸化カリウムと同モルの酢酸の質量を求め、求めた酢酸の質量の元の共重合体の質量に対する割合を算出した値(質量%)である。本発明において、全体の酢酸換算含有割合は、本発明の混和剤が一つの共重合体から成るものである場合には、該一つの共重合体の酢酸換算含有割合であり、また本発明の混和剤が二つ以上の共重合体から成るものである場合には、該二つ以上の共重合体における各共重合体の酢酸換算含有割合の加重平均値である。
【0023】
本発明の混和剤に用いる共重合体それ自体は、公知の方法で製造することができる。これには、溶媒に水を用いたラジカル重合、溶媒に有機溶媒を用いたラジカル重合、無溶媒のラジカル重合がある。ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルのように、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであればその種類は特に制限されない。得られる共重合体の質量平均分子量を所望の範囲とするため、連鎖移動剤を使用することもできる。
【0024】
本発明の混和剤の使用に際しては、得られた共重合体を単独で使用することもできるし、異なる共重合体の二つ以上を混合して使用することもできる。共重合体の二つ以上を混合して使用する場合には、少なくとも一つの共重合体がヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを含む化1で示される単量体から形成された構成単位Aを有することが好ましい。また本発明の混和剤の使用に際しては、本発明の効果を損なわない範囲内で、凝結遅延剤、凝結促進剤、防錆剤、AE剤、消泡剤等を併用することもできる。
【0025】
本発明の混和剤は、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加するものである。かかるコンクリートの構成材料に特に制限はなく、例えば結合材としては、1)普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、2)高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメント、3)アルミナセメント等が挙げられる。また水/結合材比も特に制限はないが、水/結合材比は30〜70%のものが好ましく、35〜65%のものがより好ましい。更にかかるコンクリートの調製に使用する分散剤の種類にも特に制限はないが、分散剤としてはオキシカルボン酸やその塩、ポリカルボン酸系、リグニンスルホン酸系のものから選ばれる一つ又は二つ以上が好ましい。
【0026】
本発明の混和剤の使用量は、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリート中の結合材100質量部に対し、固形分換算で、通常は0.01〜1.0質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、より好ましくは0.02〜0.5質量部とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加することによって、コンクリートの流動性を、増大させることなく、添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の混和剤等を添加したときのコンクリートのスランプの変化を例示するグラフ。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0030】
試験区分1(共重合体の合成)
・共重合体(S−1)の合成
イオン交換水76.6g及びα−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=115、nはオキシエチレン単位の数、以下同じ)オキシエチレン156.4gを、温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器(以下、同様のものを使用した)に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。次に1%過酸化水素水8.8gを3時間かけて滴下し、またそれと同時に、イオン交換水39.1gにヒドロキシエチルアクリレート15.6gとアクリル酸3.9gとアクリル酸メチル19.5gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水7.0gにL−アスコルビン酸0.8gとチオグリコール酸1.0gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後65℃で2時間保持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S−1)の40%水溶液を得た。
【0031】
・共重合体(S−2)の合成
イオン交換水78.0gを反応容器に仕込み、攪拌しながら雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。イオン交換水141.7g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(n=9)オキシエチレン147.8g、ヒドロキシエチルアクリレート45.3g、メタクリル酸3.9g及びメルカプトエタノール1.4gを均一に溶解させた水溶液を2時間かけて滴下すると共に、10%過硫酸アンモニウム28.6gを3時間かけて滴下した。その後65℃で1時間保持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体1(S−2)の40%水溶液を得た。
【0032】
・共重合体(S−3)の合成
イオン交換水28.1g、α−(メタリル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=53)オキシエチレン156.3gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に5%過酸化水素水溶液6.9gを3時間かけて滴下し、またそれと同時に、イオン交換水156.3gにヒドロキシエチルアクリレート37.9gとアクリル酸1.2gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、イオン交換水5.5gにL−アスコルビン酸0.8gと3−メルカプトプロピオン酸0.6gを溶解させた水溶液を3時間かけて滴下した。その後70℃で1時間維持し、重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S−3)の40%水溶液で得た。
【0033】
・共重合体(S−4)の合成
イオン交換水214.0g、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=21)オキシエチレンポリ(m=2、mはオキシプロピレン単位の数、以下同じ)オキシプロピレン147.1g、メタクリル酸34.4g、アクリル酸ブチル9.6g及び3−メルカプトプロピオン酸1.5gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、10%過硫酸ナトリウム水溶液27.7gを4時間かけて投入した。更に60℃で2時間保持して、重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S−4)の40%水性液を得た。
【0034】
・共重合体(S−5)の合成
イオン交換水215.4g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(n=9)オキシエチレン166.9g、メタクリル酸24.9g及び3−メルカプトプロピオン酸1.9gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、10%過硫酸ナトリウム水溶液22.3gを投入した。60℃で3時間保持した後、10%過硫酸ナトリウム水溶液5.6gを加えた。更に60℃で2時間保持して、重合反応を終了した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH6に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S−5)の40%水性液を得た。
【0035】
・共重合体(S−6)の合成
無水マレイン酸147g及びα−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=50)オキシエチレン1527gを反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル10.0gを投入して、ラジカル共重合反応を開始した。1時間後、更にアゾビスイソブチロニトリル5.0gを投入し、その1時間後、更にアゾビスイソブチロニトリル5.0gを投入して、5時間ラジカル共重合反応を行なった後、反応系にイオン交換水300gを加えてラジカル共重合反応を停止した。その後、30%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH5に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S−6)の40%水溶液を得た。
【0036】
・共重合体(S−7)の合成
特開2007―119337号公報の段落「0067」に記載された製造例1の方法で製造を行い、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S―7)の40%水溶液を得た。
【0037】
・共重合体(S−8)の合成
特開2011―026167号公報の段落「0025」に記載された方法で製造を行い、イオン交換水にて濃度を40%に調整して、共重合体(S―8)の40%水溶液を得た。
【0038】
製造した各共重合体の質量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定すると共に、酢酸換算含有割合を前記の方法にて測定した。各共重合体の内容及び測定結果を表1にまとめて示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1において、
A−1:α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=115)オキシエチレンから形成された構成単位
A−2:α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(n=9)オキシエチレンから形成された構成単位
A−3:α−メタリル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=53)オキシエチレンから形成された構成単位
A−4:α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=21)オキシエチレンポリ(m=2、mはオキシプロピレン単位の数、以下同じ)オキシプロピレンから形成された構成単位
A−5:α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=50)オキシエチレンから形成された構成単位
A−6:ヒドロキシエチルアクリレートから形成された構成単位
A−7:α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(n=50)オキシエチレンから形成された構成単位
A−8:α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(n=33)オキシエチレンから形成された構成単位
B−1:アクリル酸から形成された構成単位
B−2:メタクリル酸から形成された構成単位
B−3:マレイン酸から形成された構成単位
C−1:アクリル酸メチルから形成された構成単位
C−2:アクリル酸ブチルから形成された構成単位
【0041】
試験区分2(混和剤の調製)
・実施例1(混和剤(P−1)の調製)
前記の共重合体(S−3)をそのまま混和剤(P−1)とした。したがって全体の酢酸換算含有割合は0.7%である。使用に際しては、前記の共重合体(S−3)の水溶液を更にイオン交換水で希釈して20%水溶液とした。
【0042】
・実施例2(混和剤(P−2)の調製)
前記の共重合体(S−1)をそのまま混和剤(P−2)とした。したがって全体の酢酸換算含有割合は2.0%である。使用に際しては、前記の共重合体(S−1)の水溶液を更にイオン交換水で希釈して20%水溶液とした。
【0043】
・実施例3(混和剤(P−3)の調製)
前記の共重合体(S−2)が90部及び前記の共重合体(S−4)が10部の割合となるように均一混合したものを混和剤(P−3)とした。したがって全体の酢酸換算含有割合は2.5%である。使用に際しては、前記の双方の水溶液の混合液を更にイオン交換水で希釈して20%水溶液とした。
【0044】
・実施例4〜6(混和剤(P−4)〜(P−6)の調製)
実施例3の混和剤(P−3)の場合と同様にして、表2に記載の内容で、混和剤(P−4)〜(P−6)を調製した。
【0045】
・比較例1〜6(混和剤(R−1)〜(R−6)、(R−9)及び(R−10)の調製)
実施例1、2又は3の混和剤(P−1)、(P−2)又は(P−3)の場合と同様にして、表2に記載の内容で、混和剤(R−1)〜(R−6)、(R−9)、(R―10)を調製した。
【0046】
・比較例7(混和剤(R−7)の調製)
凝結遅延剤として市販されているポリヒドロキシカルボン酸複合体(竹本油脂社製の凝結遅延剤T−21)をそのまま混和剤(R−7)とした。使用に際してはイオン交換水で水希釈して20%水溶液とした。
【0047】
・比較例8(混和剤(R−8)の調製)
流動化剤として市販されているアルキルアリルスルホン酸塩高縮合物(竹本油脂社製の流動化剤ハイフルード)をそのまま混和剤(R−8)とした。使用に際してはイオン交換水で水希釈して20%水溶液とした。
【0048】
以上で調製した各例の混和剤(P−1)〜(P−6)及び(R−1)〜(R−8)の内容を表2にまとめて示した。
【0049】
【表2】
【0050】
表2において、
比較例7及び8:構成単位A及びBを有する構造のものではない。
【0051】
試験区分3(コンクリートの調製、後添加混和剤の後添加及び評価)
・コンクリートの調製
55Lの強制二軸ミキサーに、表3に記載の内容で、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、比重=3.16)、細骨材(大井川水系砂、比重=2.58)及び粗骨材(岡崎産砕石、比重=2.68)を順次投入して5秒間空練りした後、目標スランプフローが15±2.5cm及び空気量が4.5±0.5%の範囲となるよう、AE減水剤(竹本油脂社製の商品名チューポールEX20)をセメントに対し1%、AE剤(竹本油脂社製の商品名AE−300)をセメントに対し0.005%及び消泡剤(竹本油脂社製の商品名AFK−2)をセメントに対し0.001%となるよう練混ぜ水と共に投入し、90秒間練混ぜて、コンクリートを調製した。このコンクリートを用い、温度20±3℃、湿度60%の雰囲気下にて、以下のように試験を行なった。結果を表4及び表5にまとめて示した。
【0052】
【表3】
【0053】
練混ぜ直後から20分静置の時点で、コンクリートに混和剤(P−1)〜(P−6)及び(R−1)〜(R−10)を添加し(但し、試験例10は未添加のブランク)、30秒間練混ぜ、静置した。練混ぜ直後から30分間隔で、静置したコンクリートのスランプを測定し、また24時間静置後の硬化体のブリーディング率及び圧縮強度を次のように測定した。
【0054】
・スランプ:JIS−A1150に準拠して測定した。
・ブリーディング:JIS−A1123に準拠して測定した。
・圧縮強度:JIS−A1108に準拠し、供試体寸法を直径100mm×長さ200mmとし、材齢24時間で測定した。
【0055】
【表4】
【0056】
表4において、
添加量:セメントに対する混和剤の添加量(%)
*1:コンクリートの練混ぜ直後から20分、50分、80分経過の各時点で混和剤を0.1%ずつ添加し、合計0.3%添加した。
*2:コンクリートの練混ぜ直後から10分経過の時点で混和剤を0.3%添加した。
*3:混和剤の添加を行わなかった。
【0057】
【表5】
【0058】
表5において、
*4:硬化体が圧縮強度を測定できる強度に到達していなかった。
【0059】
図1は本発明の混和剤等を添加したコンクリートのスランプの変化を例示するグラフである。横軸に混和剤等を加えた直後からの時間(分)を目盛り、また縦軸にスランプ(cm)を目盛っている。
図1中、1は試験例1についてのスランプの変化を示す折れ線、10は試験例10についてのスランプの変化を示す折れ線(但し、試験例10は混和剤を未添加)、15は試験例15についてのスランプの変化を示す折れ線、19は試験例19についてのスランプの変化を示す折れ線である。
【0060】
表1〜表3に対応する表4及び表5の結果、更には
図1の結果からも明らかなように、本発明の混和剤によると、各種材料を練り混ぜて調製したコンクリートを実際の使用場所まで運搬して使用するときの運搬途中のコンクリート又は運搬後で使用前のコンクリートに添加することによって、得られる硬化体のブリーディング率や圧縮強度に悪影響を及ぼすことなく、コンクリートの流動性を、添加直前の状態に長時間にわたって保持することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 試験例1についてのスランプの変化を示す折れ線
10 試験例10についてのスランプの変化を示す折れ線
15 試験例15についてのスランプの変化を示す折れ線
19 試験例19についてのスランプの変化を示す折れ線