特許第6153325号(P6153325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153325自転車のボトムブラケットアセンブリおよびボトムブラケットアセンブリに用いられる左側のクランクアームアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153325
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】自転車のボトムブラケットアセンブリおよびボトムブラケットアセンブリに用いられる左側のクランクアームアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B62M 3/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   B62M3/00 D
   B62M3/00 E
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-4205(P2013-4205)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2013-144541(P2013-144541A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】12000207.6
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ダル・プラ・ジュセッペ
(72)【発明者】
【氏名】スグレヴァ・ニコラ
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−153334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0137425(US,A1)
【文献】 特開2007−238083(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01736403(EP,A1)
【文献】 特開2003−205881(JP,A)
【文献】 米国特許第06899402(US,B2)
【文献】 仏国特許発明第1252564(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のボトムブラケットアセンブリであって、
長手方向に沿って延びる軸心(X−X)を有するシャフト(2)と、
自転車のフレームに設けられた、当該ボトムブラケットアセンブリ(1)を収容するハウジングボックス(10)に対し、前記シャフト(2)を回転可能に支持する一対の軸受(31,41)と、
前記シャフト(2)の第一の端部(4)に結合した左側のクランクアーム(40)と、
前記シャフト(2)の第二の端部(3)に結合した右側のクランクアーム(30)と、
前記長手方向に沿って延在し、かつ、一切の障害物がなく前記左側のクランクアーム(40)、前記シャフト(2)および前記右側のクランクアーム(30)を完全に通り抜ける貫通空洞(2a)と、
前記左側のクランクアーム(40)の、前記一対の軸受(31,41)に対する軸方向位置を調節する調節手段(8)と、
備え、
前記調節手段(8)が、軸方向において、前記左側のクランクアーム(40)と、前記一対の軸受(31,41)のうちの対応する軸受との間に設けられている、
自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、さらに、
前記シャフト(2)の径方向外側位置に設けられ、前記左側のクランクアーム(40)と前記シャフト(2)とを結合する第一結合手段(400)、
を備える、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、さらに、
前記シャフト(2)の径方向外側位置に設けられ、前記右側のクランクアーム(30)と前記シャフト(2)とを結合する第二結合手段(300)、
を備える、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記貫通空洞(2a)が、第一の直径(D1)を有する円筒状中央部(5a)、および前記第一の直径(D1)と異なる少なくとも1つの第二の直径(D2)を有する第一軸方向端部(5b)を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項5】
請求項4に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第一軸方向端部(5b)が、第一丸み面(5c)を介して前記円筒状中央部(5a)と連なっている、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第一軸方向端部(5b)が、前記円筒状中央部(5a)に近い側の位置に、複数の第一横断部位を有しており、前記第一横断部位の直径が、前記第一の直径(D1)よりも小さい、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第一軸方向端部(5b)が、前記円筒状中央部(5a)から遠い側の位置に、複数の第二横断部位を有しており、前記第二横断部位の直径が、前記円筒状中央部(5a)から遠ざかるにつれて徐々に増加する、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記貫通空洞(2a)が、前記円筒状中央部(5a)を挟んだ前記第一軸方向端部(5b)の反対側に、前記第一の直径(D1)と異なる少なくとも1つの第三の直径(D3)を有する第二軸方向端部(5f)を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第二軸方向端部(5f)が、第二丸み面(5g)を介して前記円筒状中央部(5a)と連なっている、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて
、前記第一軸方向端部(5b)が、前記左側のクランクアーム(40)の位置に形成されている、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記シャフト(2)の前記第一の端部(4)が溝付きの外表面(4a)を有し、前記左側のクランクアーム(40)が貫通孔(45)を有しており、この貫通孔(45)の少なくとも一部に、前記溝付きの外表面(4a)と摺接結合する溝が形成されている、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記シャフト(2)の第一の端部(4)が、前記溝付きの外表面(4a)から軸方向の最外側の位置に、雄ねじ部位(4b)を有し、
当該ボトムブラケットアセンブリ(1)が、さらに、
前記雄ねじ部位(4b)に螺合して前記左側のクランクアーム(40)に対して軸方向に突き合わせられた、雌ねじ付きのリングナット(6)、
を備える、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記リングナット(6)が、前記左側のクランクアーム(40)に形成された円周状の台座部(7)に収容され、前記左側のクランクアーム(40)から軸方向に突出していない、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項14】
請求項12または13に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記リングナット(6)が、前記リングナット(6)の軸方向の外側面に、取付け工具を結合させるための少なくとも1つの孔(6a)を有する、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記シャフト(2)の前記第二の端部(3)がねじ付きの外表面(3a)を有し、前記右側のクランクアーム(30)が、前記ねじ付きの外表面(3a)に螺合するねじ孔(30c)を有している、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記調節手段(8)が、
前記一対の軸受(31,41)のうちの前記対応する軸受に対して軸方向に突き合わせられた第一サービスリングナット(8a)と、
前記第一サービスリングナット(8a)に結合し、前記左側のクランクアーム(40)に対して軸方向に突き合わせられた第二サービスリングナット(8b)と、
前記第一サービスリングナット(8a)に対する前記第二サービスリングナット(8b)の軸方向位置を固定する固定手段(8c)と、
を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項17】
請求項16に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第一サービスリングナット(8a)が雄ねじ部位(8a1)を有し、前記第二サービスリングナット(8b)が前記雄ねじ部位(8a1)に螺合する雌ねじ部位(8b1)を有し、前記固定手段(8c)が、前記第二サービスリングナット(8b)に形成された径方向に延びる径方向孔(8e)を通って前記第一サービスリングナット(8a)に作用する差し込み固定部材(8d)を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、
前記右側のクランクアーム(30)の、前記一対の軸受(31,41)に対する軸方向位置を調節する右側の調節手段(8)がさらに設けられており、
該右側の調節手段(8)が、軸方向において、前記右側のクランクアーム(30)と、
前記一対の軸受(31,41)のうちの対応する軸受との間に設けられている、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項19】
請求項18に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記右側の調節手段(8)が、
前記一対の軸受(31,41)のうちの前記対応する軸受に対して軸方向に突き合わせられた第一サービスリングナット(8a)と、
前記第一サービスリングナット(8a)に結合し、前記右側のクランクアーム(30)に対して軸方向に突き合わせられた第二サービスリングナット(8b)と、
前記第一サービスリングナット(8a)に対する前記第二サービスリングナット(8b)の軸方向位置を固定する固定手段(8c)と、
を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載の自転車のボトムブラケットアセンブリにおいて、前記第一サービスリングナット(8a)が雄ねじ部位(8a1)を有し、前記第二サービスリングナット(8b)が前記雄ねじ部位(8a1)に螺合する雌ねじ部位(8b1)を有し、前記固定手段(8c)が、前記第二サービスリングナット(8b)に形成された径方向に延びる径方向孔(8e)を通って前記第一サービスリングナット(8a)に作用する差し込み固定部材(8d)を含む、自転車のボトムブラケットアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のボトムブラケットアセンブリに関する。好ましくは、そのような自転車は競走用の自転車である。
【0002】
本発明は、さらに、そのようなボトムブラケットアセンブリに用いられる左側のクランクアームアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
公知のとおり、自転車のボトムブランケットアセンブリは、シャフトと、このシャフトの各端部に結合した2つのクランクアーム(左側のクランクアームおよび右側のクランクアーム)とを備える。シャフトには、2つのクランクアームと別体のものや、2つのクランクアームのうちの一方のクランクアームとの一体品のものがある。その他にも、2つ以上の部品(シャフト部材)を適切な結合手段で結合して得られたシャフトがある。その場合、各シャフト部材は、対応するクランクアームとの一体品であるか、または対応するクランクアームと別体の部品とされる。
【0004】
説明を分かり易くするために、本明細書および添付の特許請求の範囲では、特記しない限り、ワンピース構造(一体物)のシャフトを取り扱う。ただし、その説明内容は、複数のシャフト部材で構成されたシャフトにも当てはまる。
【0005】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲では、自転車のボトムブラケットアセンブリのうち、シャフト(またはシャフト部材)と、このシャフトに結合した左側のクランクアームアセンブリとを含むアセンブリのことを、「左側のクランクアームアセンブリ」と称する。
【0006】
自転車へのボトムブラケットアセンブリの装着は、シャフトを、自転車のフレームに適宜設けられたハウジングボックス内に収めることによって行われる。シャフトには、一対の転がり軸受が取り付けられる。これにより、シャフトは、自転車のフレームに対して回転自在となる。詳細には、各軸受の典型的な取付位置は、シャフトの各端部においてクランクアームの近傍となる位置である。したがって、自転車のフレームに装着された状態のボトムブラケットアセンブリでは、各軸受が、シャフトと自転車のフレームに設けられたハウジングボックスとの間に動作可能に配置されている。
【0007】
既知のボトムブラケットアセンブリとして、自転車の総重量を最小限に抑えたいという自転車部品(特に、競走用の自転車部品)製造者の常日頃の要望に応えるべく、中空のシャフトを備えたボトムブラケットアセンブリがある。
【0008】
例えば、本願の出願人による特許文献1には、中空のシャフトを備えたボトムブラケットアセンブリであって、右側のクランクアームおよび左側のクランクアームが、それぞれの前側の歯部により、回転可能に前記中空のシャフトに結合しており、かつ、それらの各クランクアームが、前記シャフトの径方向内側の位置に配置されたねじにより、前記シャフトに軸方向に固定されたボトムブラケットアセンブリが記載されている。
【0009】
同じく本願の出願人による特許文献2には、中空のシャフトを備えたボトムブラケットアセンブリであって、右側のクランクアームおよび左側のクランクアームの各クランクアームが、前記シャフトまたはシャフト部材の径方向内側の位置に配置されたねじにより、前記シャフトに軸方向に固定されたボトムブラケットアセンブリが記載されている。また、同特許文献の一実施形態では、2つの中空のシャフト部材が、これら2つのシャフト部材の径方向内側の位置に配置された別のねじにより、前側で互いに結合されている。
【0010】
自転車のフレームに設けられたハウジングボックス内へのボトムブラケットアセンブリの取付け、例えば、上述の特許文献に記載されたボトムブラケットアセンブリの取付けは、まず、2つのクランクアームのうちの一方のクランクアームを、シャフトの一端部に結合し、そのシャフトを、ハウジングボックス内に挿入することによって行われる。そして、この一方のクランクアームを、他方のクランクアームを正確に位置決めするための実質的な基準として利用する。その後、他方のクランクアームを、シャフトの径方向内側の位置に配置したねじにより、シャフトの他端部に結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1792820号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2067693号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願の出願人は、クランクアームをシャフトに固定するために用いるねじ、または2つのシャフト部材を互いに固定するために用いるねじが、中空のシャフト内部の不可避の障害物となって泥および/または腐食性物質が付着し、そのような泥および/または腐食性物質が、ねじおよび/またはシャフトの経時的な損傷を引き起こすことに気づいた。
【0013】
本発明の根底をなす技術的課題は、シャフト内部における泥および/または腐食性物質の蓄積を最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上を踏まえて、本発明の第一構成は、自転車のボトムブラケットアセンブリに関する。この自転車のボトムブラケットアセンブリは、長手方向に沿って延びる軸心を有するシャフトと、前記シャフトの第一の端部に結合した左側のクランクアームと、前記シャフトの第二の端部に結合した右側のクランクアームと、を備え、前記長手方向に沿って延在し、かつ、一切の障害物がなく前記左側のクランクアーム、前記シャフトおよび前記右側のクランクアームを完全に通り抜ける貫通空洞を有することを特徴とする。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲をとおして、1つまたは複数の構成品(例えば、自転車のボトムブラケットアセンブリの左側のクランクアームおよび/または右側のクランクアームおよび/またはシャフト等)における「貫通空洞」とは、いずれの部位における横断面も大幅なまたは急激な直径変化のない面で画成され、かつ、両端部が開いた空洞のことを言う。換言すれば、そのような貫通空洞を画成する面は、どのような直径の部位においても、鋭いエッジ部やアンダーカット部のない丸み部(丸み付けされた部分)となっている。
【0016】
つまり、この定義に準ずると、前記貫通空洞は、左側のクランクアームおよび右側のクランクアームのうちの一方のクランクアームの外側面(すなわち、シャフトと反対側の方向に向いた表面、または装着時に自転車のフレームと反対側の方向に向く表面)から他方のクランクアームの外側面まで(すなわち、左側のクランクアームの左側外表面から右側のクランクアームの右側外表面まで)、一切の途切れまたは障害物を有さずに延在する。したがって、前記貫通空洞の、前記ボトムブラケットアセンブリの長手方向に沿った広がりは、当該ボトムブラケットアセンブリの同じ長手方向に沿った広がりにほぼ等しい。
【0017】
有利なことに、上述したような貫通空洞を設けることにより、シャフト内部における泥および/または腐食性物質の付着を劇的に減少させることができる。事実、一方の端部からシャフト空洞に侵入した泥および/または腐食性物質は、走行時のシャフトの高速回転により、それらが侵入した端部から(場合によっては、反対側の端部から)簡単に排出することができる。また、貫通空洞なので、簡単に清浄にすることができる。
【0018】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリは、前記貫通空洞の径方向外側位置に設けられ、前記左側のクランクアームと前記シャフトとを結合する第一結合手段、を備える。
【0019】
より好ましくは、前記第一結合手段は、前記シャフトの径方向外側位置に設けられている。
【0020】
これにより、左側のクランクアームには、シャフト内部に侵入した泥および/または腐食性物質の排出を邪魔する障害物が存在しない。
【0021】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリは、前記貫通空洞の径方向外側位置に設けられ、前記右側のクランクアームと前記シャフトとを結合する第二結合手段、を備える。
【0022】
より好ましくは、前記第二結合手段は、前記シャフトの径方向外側位置に設けられている。
【0023】
これにより、右側のクランクアームには、シャフト内部に侵入した泥および/または腐食性物質の排出を邪魔する障害物が存在しない。
【0024】
好ましくは、前記貫通空洞は、第一の直径を有する円筒状中央部、および前記第一の直径と異なる少なくとも1つの第二の直径を有する第一軸方向端部を含む。
【0025】
より好ましくは、前記第一軸方向端部は、第一丸み面を介して前記円筒状中央部と連なっている。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲をとおして、「丸み面」とは、鋭いエッジ部やアンダーカット部のない湾曲面のことを指す。
【0027】
これにより、シャフト内部には、泥および/または腐食性物質が前記貫通空洞の端部に向かって滑る間、その滑りに対する大きな邪魔となる部分が存在しないので、当該貫通空洞に侵入した泥および/または腐食性物質を、より簡単に排出することができる。
【0028】
好ましくは、前記第一軸方向端部は、前記円筒状中央部に近い側の位置に、複数の第一横断部位を有しており、前記第一横断部位の直径は、前記第一の直径よりも小さい。
【0029】
より好ましくは、前記第一横断部位は、円筒状面を形成している。
【0030】
さらに好ましくは、前記第一軸方向端部は、前記円筒状中央部から遠い側の位置に、複数の第二横断部位を有しており、前記第二横断部位の直径は、前記円筒状中央部から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0031】
これにより、前記第二横断部位は、円錐状の面を形成する。この構成により、前記貫通空洞に侵入した泥および/または腐食性物質を、さらに簡単に排出することができる。
【0032】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリのシャフトは金属製であり、より好ましくは軽合金製であり、例えば、アルミニウム合金製である。
【0033】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの円筒状中央部は、直径が約25mm(ミリメートル)である。
【0034】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリのシャフトは、前記円筒状中央部における外径が約30mmである。
【0035】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第一横断部位は、直径が約20mmである。
【0036】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二横断部位は円錐状面を形成しており、より好ましくは直線の母線を有する円錐状面を形成している。
【0037】
好ましくは、前記直線の母線は、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの軸心に対して約5°から約7°傾いており、より好ましくは約6.7°傾いている。
【0038】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの複数の第二横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位は、直径が約20mmを超えており、より好ましくは約20.8mmである。
【0039】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第一丸み面は、凹面および凸面を含む。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲をとおして、「凹面」とは、凹みがボトムブラケットアセンブリの軸心側に向いた湾曲面のことを言う。「凸面」とは、それとは反対で、凹みがボトムブラケットアセンブリの軸心と反対側に向いた湾曲面のことを言う。
【0041】
好ましくは、前記第一丸み面の前記凹面の曲率半径は、前記凸面の曲率半径よりも大きい。より好ましくは、前記凹面の曲率半径は約7mmであり、前記凸面の曲率半径は約5mmである。
【0042】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの貫通空洞は、前記円筒状中央部を挟んだ前記第一軸方向端部の反対側に、前記第一の直径と異なる少なくとも1つの第三の直径を有する第二軸方向端部を含む。
【0043】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、第二丸み面を介して前記円筒状中央部と連なっている。
【0044】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、前記円筒状中央部に近い側の位置に、複数の第三横断部位を有しており、当該第三横断部位の直径は、前記第一の直径よりも小さい。
【0045】
好ましくは、前記第三横断部位は、円筒状面を形成している。
【0046】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、前記円筒状中央部から遠い側の位置に、複数の第四横断部位を有しており、当該第四横断部位の直径は、前記円筒状中央部から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0047】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第三横断部位は、直径が約20mmを超えており、より好ましくは約21mmである。
【0048】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの複数の第四横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位は、直径が約25mmを超えており、より好ましくは約28mmである。
【0049】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二丸み面は、凹面および凸面を含む。
【0050】
好ましくは、前記第二丸み面の前記凹面の曲率半径は、前記第二丸み面の前記凸面の曲率半径よりも大きい。より好ましくは、前記第二丸み面の前記凹面の曲率半径は約7mmであり、前記第二丸み面の前記凸面の曲率半径は約5mmである。
【0051】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第一軸方向端部は、前記左側のクランクアームの位置に形成されている。
【0052】
好ましくは、前記左側のクランクアームは複合材料製であり、より好ましくは炭素繊維複合材料製である。あるいは、前記左側のクランクアームは金属製であってもよく、より好ましくは軽合金製であってもよく、例えば、アルミニウム合金製であってもよい。
【0053】
前記左側のクランクアームが複合材料製である場合、好ましくは、当該左側のクランクアームの複合材料ボディが、環状の金属製インサートの径方向外表面に結合(より好ましくは螺合)しており、かつ、当該金属製インサートが、前記シャフトの前記第一軸方向端部に結合している。この場合の左側のクランクアームは、本明細書および添付の特許請求の範囲をとおして、前記複合材料ボディおよび前記金属製インサートを含むアセンブリの形態を取る。
【0054】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、当該ボトムブラケットアセンブリの前記右側のクランクアームの位置に形成されている。
【0055】
好ましくは、前記右側のクランクアームは金属製であり、より好ましくは軽合金製であり、例えば、アルミニウム合金製である。
【0056】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリのシャフトの前記第一の端部が溝付きの外表面を有し、前記左側のクランクアームが貫通孔を有しており、当該貫通孔の少なくとも一部に、前記溝付きの外表面と摺接結合する溝が形成されている。
【0057】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリのシャフトの第一の端部が、前記溝付きの外表面よりも軸方向の最外側の位置に、雄ねじ部位を有しており、かつ、当該ボトムブラケットアセンブリが、さらに、前記雄ねじ部位に螺合して前記左側のクランクアームに対して軸方向に突き合わせられた、雌ねじ付きのリングナット、を備える。
【0058】
好ましくは、前記リングナットは、前記左側のクランクアームに形成された円周状の台座部に収容され、前記左側のクランクアームから軸方向に突出していない。
【0059】
好ましくは、前記リングナットは、前記リングナットの軸方向の外側面(外側の端面)に、取付け工具を結合させるための少なくとも1つの孔を有する。より好ましくは、前記リングナットは、周方向に互いに等間隔に離間した4つの孔を有する。
【0060】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリのシャフトの前記第二の端部が溝付きの外表面を有し、前記右側のクランクアームが、前記溝付きの外表面に螺合するねじ付きの孔を有している。
【0061】
好ましくは、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリは、さらに、自転車のフレームに設けられたハウジングボックスに対し、前記シャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、前記左側のクランクアームおよび前記右側のクランクアームのうちの少なくとも一方のクランクアームの、前記一対の軸受に対する軸方向位置を調節する調節手段と、を備えており、前記調節手段が、軸方向において、前記左側のクランクアームおよび前記右側のクランクアームのうちの前記少なくとも一方のクランクアームと、前記一対の軸受のうちの対応する軸受との間に設けられている。
【0062】
好ましくは、前記調節手段は、前記一対の軸受のうちの対応する軸受に対して軸方向に突き合わせられた第一サービスリングナットと、前記第一サービスリングナットに結合し、前記左側のクランクアームおよび前記右側のクランクアームのうちの前記少なくとも一方のクランクアームに対して軸方向に突き合わせられた第二サービスリングナットと、前記第一サービスリングナットに対する前記第二サービスリングナットの軸方向位置を固定する固定手段と、を含む。
【0063】
好ましくは、前記第一サービスリングナットが雄ねじ部位を有し、前記第二サービスリングナットが前記雄ねじ部位に螺合する雌ねじ部位を有しており、かつ、前記固定手段が、前記第二サービスリングナットに形成された径方向に延びる径方向孔を通って前記第一サービスリングナットに作用する差し込み固定部材を含む。好ましくは、前記差し込み固定部材は、雄ねじ部位を有しており、前記径方向孔のねじ部位に螺合する。
【0064】
本発明の第二構成は、自転車の左側のクランクアームアセンブリに関する。この左側のクランクアームアセンブリは、長手方向に沿って延びる軸心を有するシャフトと、前記シャフトの第一の端部に結合した左側のクランクアームと、を備え、前記左側のクランクアームが、前記シャフトの前記第一の端部に形成された雄ねじ部位に螺合して当該左側のクランクアームに対して突き合わせられたリングナットにより、前記シャフトの前記第一の端部に対して軸方向に固定されている。
【0065】
好ましくは、前記自転車の左側のクランクアームアセンブリは、本発明の第一構成である自転車のボトムブラケットアセンブリに関連して既述した、シャフトの構造的な特徴および機能的な特徴、ならびに左側のクランクアームの構造的な特徴および機能的な特徴を、単独でまたは組合せで有する。すなわち、前記自転車の左側のクランクアームアセンブリは、本発明の第一構成である自転車のボトムブラケットアセンブリに関連して既述した、あらゆる利点を有する。
【0066】
本発明の第三構成は、自転車のボトムブラケットアセンブリに関する。このボトムブラケットアセンブリは、長手方向に沿って延びる軸心を有するシャフトと、前記シャフトの対応する端部にそれぞれ結合した、一対のクランクアームと、自転車のフレームに設けられた、当該ボトムブラケットアセンブリを収容するハウジングボックスに対し、前記シャフトを回転可能に支持する一対の軸受と、前記一対のクランクアームのうちの少なくとも一方のクランクアームの、前記一対の軸受に対する軸方向位置を調節する調節手段であって、軸方向において、前記少なくとも一方のクランクアームと、前記一対の軸受のうちの対応する軸受との間に設けられた調節手段と、を備え、前記調節手段が、前記対応する軸受に対して軸方向に突き合わせられた第一サービスリングナットと、前記第一サービスリングナットに結合し、前記少なくとも一方のクランクアームに対して軸方向に突き合わせられた第二サービスリングナットと、前記第一サービスリングナットに対する前記第二サービスリングナットの軸方向位置を固定する固定手段と、を含むことを特徴とする。
【0067】
有利なことに、前記調節手段により、前記軸受に対する前記クランクアームの軸方向位置の微調節が可能となり、結果として、自転車のフレームに設けられた、ボトムブラケットアセンブリを収容するハウジングボックスに対する、前記クランクアームの軸方向位置の微調節が可能になる。
【0068】
これにより、使用するハウジングボックスの軸方向寸法(場合によっては、ハウジングボックスの軸方向寸法およびアダプタ部材の軸方向寸法)が、標準仕様のものと異なる場合であっても、クランクアームをハウジングボックスに対して所望の軸方向位置に位置決めすることができる。つまり、使用するハウジングボックス(場合によっては、ハウジングボックスおよびアダプタ部材)の、設計寸法および/または寸法公差からのずれを、実質上補償することができる。これにより、狭い寸法公差が要求されずに済むので、ハウジングボックス(場合によっては、ハウジングボックスおよびアダプタ部材)の加工コストが安価になる。
【0069】
好ましくは、前記第一サービスリングナットが雄ねじ部位を有し、前記第二サービスリングナットが前記雄ねじ部位に螺合する雌ねじ部位を有しており、かつ、前記固定手段が、前記第二サービスリングナットに形成された径方向に延びる径方向孔を通って前記第一サービスリングナットに作用する差し込み固定部材を含む。好ましくは、前記差し込み固定部材は、雄ねじ部位を有しており、前記径方向孔のねじ部位に螺合する。
【0070】
好ましくは、本発明の第三構成である自転車のボトムブラケットアセンブリは、本発明の第一構成である自転車のボトムブラケットアセンブリに関連して既述した構造的な特徴および機能的な特徴を、単独でまたは組合せで有する。すなわち、本発明の第三構成である自転車のボトムブラケットアセンブリは、本発明の第一構成である自転車のボトムブラケットアセンブリに関連して既述した、あらゆる利点を有する。
【0071】
なお、以下の説明における自転車のボトムブラケットアセンブリとは、本発明の第三構成である自転車のボトムブラケットアセンブリのことを指す。
【0072】
好ましくは、本発明の第三構成である自転車のボトムブラケットアセンブリは、前記長手方向に沿って延在する貫通空洞であって、一切の障害物がなく前記一対のクランクアームおよび前記シャフトを完全に通り抜ける貫通空洞を有する。
【0073】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリは、前記貫通空洞の径方向外側位置に設けられ、左側のクランクアームと前記シャフトとを結合する第一結合手段、を備える。
【0074】
より好ましくは、前記第一結合手段は、前記シャフトの径方向外側位置に設けられている。
【0075】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリは、前記貫通空洞の径方向外側位置に設けられ、右側のクランクアームと前記シャフトとを結合する第二結合手段、を備える。
【0076】
より好ましくは、前記第二結合手段は、前記シャフトの径方向外側位置に設けられている。
【0077】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの前記貫通空洞は、第一の直径を有する円筒状中央部、および前記第一の直径と異なる少なくとも1つの第二の直径を有する第一軸方向端部を含む。
【0078】
より好ましくは、前記第一軸方向端部は、第一丸み面を介して前記円筒状中央部と連なっている。
【0079】
好ましくは、前記第一軸方向端部は、前記円筒状中央部に近い側の位置に、複数の第一横断部位を有しており、前記第一横断部位の直径は、前記第一の直径よりも小さい。
【0080】
より好ましくは、前記第一横断部位は、円筒状面を形成している。
【0081】
さらに好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリは、前記円筒状中央部から遠い側の位置に、複数の第二横断部位を有しており、前記第二横断部位の直径は、前記円筒状中央部から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0082】
これにより、前記第二横断部位は、円錐状の面を形成する。
【0083】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリのシャフトは金属製であり、より好ましくは軽合金製であり、例えば、アルミニウム合金製である。
【0084】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの円筒状中央部は、直径が約25mmである。
【0085】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリのシャフトは、前記円筒状中央部における外径が約30mmである。
【0086】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第一横断部位は、直径が約20mmである。
【0087】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二横断部位は円錐状面を形成しており、より好ましくは直線の母線を有する円錐状面を形成している。
【0088】
好ましくは、前記直線の母線は、前記ボトムブラケットアセンブリの軸心に対して約5°から約7°傾いており、より好ましくは約6.7°傾いている。
【0089】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの複数の第二横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位は、直径が約20mmを超えており、より好ましくは約20.8mmである。
【0090】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第一丸み面は、凹面および凸面を含む。
【0091】
好ましくは、前記第一丸み面の前記凹面の曲率半径は、前記凸面の曲率半径よりも大きい。より好ましくは、前記凹面の曲率半径は約7mmであり、前記凸面の曲率半径は約5mmである。
【0092】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの貫通空洞は、前記円筒状中央部を挟んだ前記第一軸方向端部の反対側に、前記第一の直径と異なる少なくとも1つの第三の直径を有する第二軸方向端部を含む。
【0093】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、第二丸み面を介して前記円筒状中央部と連なっている。
【0094】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、前記円筒状中央部に近い側の位置に、複数の第三横断部位を有しており、前記第三横断部位の直径は、前記第一の直径よりも小さい。
【0095】
好ましくは、前記第三横断部位は、円筒状面を形成している。
【0096】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、前記円筒状中央部から遠い側の位置に、複数の第四横断部位を有しており、前記第四横断部位の直径は、前記円筒状中央部から遠ざかるにつれて徐々に増加する。
【0097】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第三横断部位は、直径が約20mmを超えており、より好ましくは約21mmである。
【0098】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの複数の第四横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位は、直径が約25mmを超えており、より好ましくは約28mmである。
【0099】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二丸み面は、凹面および凸面を含む。
【0100】
好ましくは、前記第二丸み面の前記凹面の曲率半径は、前記第二丸み面の前記凸面の曲率半径よりも大きい。より好ましくは、前記第二丸み面の前記凹面の曲率半径は約7mmであり、前記第二丸み面の前記凸面の曲率半径は約5mmである。
【0101】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第一軸方向端部は、前記左側のクランクアームの位置に形成されている。
【0102】
好ましくは、前記左側のクランクアームは複合材料製であり、より好ましくは炭素繊維複合材料製である。あるいは、前記左側のクランクアームは金属製であってもよく、より好ましくは軽合金製であってもよく、例えば、アルミニウム合金製であってもよい。
【0103】
前記左側のクランクアームが複合材料製である場合、当該左側のクランクアームの複合材料ボディは、環状の金属製インサートの径方向外表面に結合(より好ましくは螺合)しており、かつ、当該金属製インサートが、前記シャフトの前記第一軸方向端部に結合可能とされている。
【0104】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリの第二軸方向端部は、前記右側のクランクアームの位置に形成されている。
【0105】
好ましくは、前記右側のクランクアームは金属製であり、より好ましくは軽合金製であり、例えば、アルミニウム合金製である。
【0106】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリのシャフトの第一の端部が溝付きの外表面を有し、前記左側のクランクアームが貫通孔を有しており、当該貫通孔の少なくとも一部に、前記溝付きの外表面と摺接結合する溝が形成されている。
【0107】
好ましくは、前記ボトムブラケットアセンブリのシャフトの第一の端部が、前記溝付きの外表面よりも軸方向の最外側の位置に、雄ねじ部位を有し、前記ボトムブラケットアセンブリが、さらに、前記雄ねじ部位に螺合して前記左側のクランクアームに対して軸方向に突き合わせられた、雌ねじ付きのリングナット、を備える。
【0108】
好ましくは、前記リングナットは、前記左側のクランクアームに形成された円周状の台座部に収容され、前記左側のクランクアームから軸方向に突出していない。
【0109】
好ましくは、前記リングナットは、前記リングナットの軸方向の外側面(外側の端面)に、取付け工具を結合させるための少なくとも1つの孔を有する。より好ましくは、前記リングナットは、周方向に互いに等間隔に離間した4つの孔を有する。
【0110】
好ましくは、前記シャフトの第二の端部が溝付きの外表面を有し、前記右側のクランクアームが、前記溝付きの外表面に螺合するねじ付きの孔を有している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。なお、後述する実施形態は、あくまでも例示であり、本発明を限定するものではない。
図1】本発明にかかる自転車のボトムブラケットアセンブリの長手方向断面概略図と、その一点鎖線で囲まれた部分の拡大詳細図である。
図2】自転車のフレームに設けられたハウジングボックス内に取り付けられた状態の、図1の自転車のボトムブラケットアセンブリの、概略分解斜視図である。
図3図2の自転車のボトムブラケットアセンブリの、一点鎖線で長方形状に囲まれた部分の拡大詳細図である。
図4図1の自転車のボトムブラケットアセンブリを、左側のクランクアームの側からみた概略側面図である。
図5図1の自転車のボトムブラケットアセンブリを、右側のクランクアームの側からみた概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図面の符号1は、本発明にかかる自転車のボトムブラケットアセンブリを指す。
【0113】
ボトムブラケットアセンブリ1は、所定の長手方向に沿って延びる軸心X−Xを有するシャフト2を備える。シャフト2は、右側と左側とからなる両側の端部3,4を有する。右側の端部3には、右側のクランクアーム30が結合しており、左側の端部4には、左側のクランクアーム40が結合している。
【0114】
シャフト2は、長手方向の貫通空洞2aを有する。また、シャフト2は、自転車のフレームに適宜設けられたハウジングボックス10に対し、右側のラジアル軸受31および左側のラジアル軸受41の中間部を通って回転可能に支持されている。軸受31,41は、シャフト2の前記端部3,4、つまり、端部3,4においてクランクアーム30,40の近傍となる位置に、それぞれ適切に取り付けられている。詳細には、右側のラジアル軸受31は、シャフト2の端部3に形成されたショルダ部(肩部)に対して突き合わせられている。
【0115】
右側のラジアル軸受31とシャフト2の端部3の前記ショルダ部との間には、当該右側のラジアル軸受31を保護する保護シールド9aが軸方向に設けられている。
【0116】
ハウジングボックス10は、略円筒の形状をした(円筒状の)、所定の軸方向長さおよび所定の内径を有する中空ボディ10aによって形成されている。ボディ10aは長手軸心に沿って延び、この長手軸心は、シャフト2をハウジングボックス10内に収容した際の当該シャフト2の前記軸心X−Xと合致する。
【0117】
好ましくは、図示の実施形態のように、略環状の右側のアダプタ部材132および左側のアダプタ部材142が、それぞれ、軸受31とハウジングボックス10との間、軸受41とハウジングボックス10との間に設けられている。
【0118】
詳細には、軸受31は、右側のアダプタ部材132の台座部31aに対し、当該アダプタ部材132の径方向内面132aに形成されたショルダ部に当接するまで挿入される。軸受41は、左側のアダプタ部材142の台座部41aに対し、当該アダプタ部材142の径方向内面142aに形成されたショルダ部に当接するまで挿入される。
【0119】
他方、アダプタ部材132の径方向外面132bは、ハウジングボックス10のボディ10aの端部11に(例えば圧入結合、螺合等によって)結合している。アダプタ部材142の径方向外面142bは、ハウジングボックス10のボディ10aの端部12に(例えば圧入結合、螺合等によって)結合している。
【0120】
各軸受31,41の中央平面、すなわち、前記軸心X−Xに対して垂直な平面であって各軸受31,41の中央を通過する平面は、互いに所定の軸間距離で離間している。
【0121】
軸受31は、組付け形態において、内輪310がシャフト2の端部3に結合しており、外輪311が右側のアダプタ部材132の台座部31aに結合している。同様に、軸受41は、内輪410がシャフト2の端部4に結合しており、外輪411が左側のアダプタ部材142の台座部41aに結合している。
【0122】
クランクアーム30,40も、シャフト2と同じく、それぞれ、長手方向の貫通空洞30a,40aを有する。本発明にかかるボトムブラケットアセンブリ1は、組立て形態において、シャフト2の端部3が貫通空洞30aに挿入され、シャフト2の端部4が貫通空洞40aに挿入されている。つまり、本発明にかかるボトムブラケットアセンブリ1において、シャフト2の空洞2aは、所定の長手方向に沿って延在する貫通空洞であって、左側のクランクアーム40、シャフト2および右側のクランクアーム30を完全に通り抜ける貫通空洞を構成している。
【0123】
より具体的に述べると、貫通空洞2aは、左側のクランクアーム40の外側面40bから右側のクランクアーム30の外側面30bまで、一切の途切れまたは障害物を有さずに延在している。したがって、貫通空洞2aの、ボトムブラケットアセンブリ1の長手方向に沿った広がりは、当該ボトムブラケットアセンブリ1の同じ長手方向に沿った広がりにほぼ等しい。
【0124】
ボトムブラケットアセンブリ1は、さらに、左側のクランクアーム40とシャフト2とを結合する第一結合手段400、および右側のクランクアーム30とシャフト2とを結合する第二結合手段300を備える。
【0125】
第一結合手段400および第二結合手段300は、シャフト2の径方向外側位置に設けられているので、貫通空洞2a内の障害物にならない。
【0126】
図示の詳細な実施形態において、左側のクランクアーム40は、シャフト2の第一の端部4に対し、当該クランクアーム40がシャフト2に対して前記軸心X−Xと平行に摺動することができる形状結合によって結合している。
【0127】
より具体的に述べると、図2および図3に示すように、シャフト2の第一の端部4は、溝付きの外表面4aと、当該溝付きの外表面4aよりも軸方向の最外側の位置にある雄ねじ部位4bとを有している。
【0128】
左側のクランクアーム40は貫通孔45を有しており、この貫通孔45の長手方向部位45aの表面には、シャフト2の溝付きの外表面4aと摺接結合する溝面が形成されている。
【0129】
貫通孔45は、溝付きの長手方向部位45aから軸方向の最外側の位置に、溝なしの長手方向部位45bを有する。
【0130】
貫通孔45の溝付きの長手方向部位45aと溝なしの長手方向部位45bとの間に、略環状の突き合わせ面45cが形成されている。
【0131】
ボトムブラケットアセンブリ1は、さらに、左側のクランクアーム40の略環状の突き合せ面45cに対して軸方向に突き合うまで前記雄ねじ部位4bに螺合した、雌ねじ付きのリングナット6を備える。このようにして、雌ねじ付きのリングナット6は、左側のクランクアーム40を、シャフト2の第一の端部4に対して軸方向に固定する。
【0132】
軸方向において、リングナット6と左側のクランクアーム40の略環状の突き合せ面45cとの間に、ワッシャ6bが配置されている。
【0133】
好ましくは、リングナット6は、図1に示すように、左側のクランクアーム40の溝なしの長手方向部位45bに形成された円周状の台座部7に収容されている。貫通孔45の溝なしの長手方向部位45bの長手方向の広がりは、台座部7に収容されたリングナット6が左側のクランクアーム40の外側面40bから軸方向に突出しない寸法になっている。
【0134】
好ましくは、リングナット6は、図1図4に示すように、リングナット6の軸方向の外側面(外側の端面)に、取付け工具を結合させるための、周方向に互いに等間隔に離間した4つの孔6aを有する。
【0135】
シャフト2の第二の端部3はねじ付きの外表面3aを有し、右側のクランクアーム30はねじ付きの外表面3aに螺合するねじ孔30cを有している。
【0136】
図示の詳細な実施形態において、右側のクランクアーム30と、ねじ付きの外表面3aとは、第二の端部3のショルダ部(肩部)3bに軸方向に当接するまで螺合されている。ショルダ部3bは、第二の端部3の外表面における、ねじ付きの外表面3aよりも軸方向の最内側の位置に設けられている。
【0137】
ボトムブラケットアセンブリ1の貫通空洞2aは、第一の直径D1を有する円筒状中央部5a、および第一の直径D1と異なる少なくとも1つの第二の直径D2を有する第一軸方向端部5bを含む。
【0138】
第一軸方向端部5bは、第一丸み面(丸み付けされた面)5cを介して円筒状中央部5aと連なっている。第一丸み面5cは、凹面5c1および凸面5c2を含む。
【0139】
第一軸方向端部5bは、円筒状中央部5aに近い側の位置に、複数の横断部位を含む区画5b1を有しており、前記横断部位の直径は、前記第一の直径D1よりも小さい。図示の例において、このような横断部位は、前記第一の直径D1よりも小さい直径を有する横断面を含み、円筒状面5dを形成している。
【0140】
第一軸方向端部5bは、さらに、円筒状中央部5aから遠い側の位置に、複数の横断部位を含む区画5b2を有しており、前記横断部位の直径は、円筒状中央部5aから遠ざかるにつれて徐々に増加する。図示の例において、このような横断部位は、シャフト2の左側の端部に大径の底面を有するような、円錐状面5eを形成している。円錐状面5eは、直線の母線を有する。
【0141】
ボトムブラケットアセンブリ1の貫通空洞2aは、円筒状中央部5aを挟んだ第一軸方向端部5bの反対側に、第一の直径D1と異なる第三の直径D3を有する第二軸方向端部5fを含む。
【0142】
第二軸方向端部5fは、第二丸み面5gを介して円筒状中央部5aと連なっている。第二丸み面5gは、凹面5g1および凸面5g2を含む。
【0143】
第二軸方向端部5fは、円筒状中央部5aに近い側の位置に、複数の第三横断部位を含む区画5f1を有しており、前記第三横断部位の直径は、前記第一の直径D1よりも小さい。図示の例において、このような横断部位は、円筒状面5hを形成している。
【0144】
第二軸方向端部5fは、さらに、円筒状中央部5aから遠い側の位置に、複数の横断部位を含む区画5f2を有しており、前記横断部位の直径は、円筒状中央部5aから遠ざかるにつれて徐々に増加する。図示の例において、このような横断部位は、シャフト2の右側の端部に大径の底面を有するような、円錐状面5iを形成している。円錐状面5iは、曲線の母線を有する。
【0145】
上述した内容から分かるように、前記貫通空洞2aを画成する面の、どのような直径の部位においても、鋭いエッジ部やアンダーカット部のない丸み部(丸み付けされた部分)となっているので、泥および/または腐食性物質の蓄積する部分がない。また、シャフト2は、両側の各端部3,4において、断面力と大径とが両立できる開口を有している。貫通空洞2aの一方の端部から侵入した泥および/または腐食性物質は、それらが侵入した端部から(場合によっては、反対側の端部から)簡単に排出することができる。
【0146】
好ましくは、図示のボトムブラケットアセンブリ1は、寸法に関して以下の特徴を有する。円筒状中央部5aの直径が約25mm(ミリメートル)である。シャフト2の、円筒状中央部5aにおける外径が約30mmである。区画5b1の横断部位の直径が約20mmである。円錐状面5eの直線の母線は、前記軸心X−Xに対して約5°(度)から約7°傾いており、特には約6.7°傾いている。区画5b2の横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位の直径が約20mmを超えており、特には約20.8mmである。第一丸み面5cの凹面5c1の曲率半径は凸面5c2の曲率半径よりも大きく、特には、凹面5c1の曲率半径は約7mmであり、凸面5c2の曲率半径は約5mmである。区画5f1の横断部位の直径が約20mmを超えており、特には約21mmである。区画5f2の横断部位のうちの軸方向最外側の横断部位の直径が約25mmを超えており、特には約28mmである。第二丸み面5gの凹面5g1の曲率半径は凸面5g2の曲率半径よりも大きく、特には、凹面5g1の曲率半径は約7mmであり、凸面5g2の曲率半径は約5mmである。円錐状面5iの曲線の母線の曲率半径は約40mmである。
【0147】
好ましくは、左側のクランクアーム40は複合材料製であり、より好ましくは炭素繊維複合材料製である。あるいは、左側のクランクアーム40は金属製であってもよく、より好ましくは軽合金製であってもよく、例えば、アルミニウム合金製であってもよい。
【0148】
左側のクランクアーム40が複合材料製である場合、当該左側のクランクアーム40の複合材料ボディは、環状の金属製インサート42の径方向外表面42aに結合(図1の例では、複合材料ボディは螺合)している。金属製インサート42は、さらに、シャフト2の第一軸方向端部4に結合している。
【0149】
好ましくは、右側のクランクアーム30は複合材料製であり、より好ましくは炭素繊維複合材料製である。あるいは、右側のクランクアーム30は金属製であってもよく、より好ましくは軽合金製であってもよく、例えば、アルミニウム合金製であってもよい。
【0150】
右側のクランクアーム30が複合材料製である場合、当該右側のクランクアーム30の複合材料ボディは、シャフト2の軸方向端部3の径方向外表面に直接結合している。他方で、シャフト2の軸方向端部4と左側のクランクアーム40との結合は、上述したように金属製のインサート42を介して行われる。
【0151】
好ましくは、シャフト2は金属製であり、より好ましくは軽合金製であり、例えば、アルミニウム合金製である。
【0152】
ボトムブラケットボトムブラケット1は、さらに、左側のクランクアーム40の、一対の軸受41,31に対する軸方向位置を調節する調節手段8を備える。
【0153】
図示の例において、調節手段8は、軸方向において、左側のクランクアーム40と軸受41との間に設けられている。調節手段8は、軸受41の内輪410に対して軸方向に突き合わせられる第一サービスリングナット8aと、第一サービスリングナット8aに結合し左側のクランクアーム40に対して軸方向に突き合わせられる第二サービスリングナット8bと、第一サービスリングナット8aに対する第二サービスリングナット8bの軸方向位置を固定する固定手段8cとを含む。
【0154】
第一サービスリングナット8aは雄ねじ部位8a1を有し、第二サービスリングナット8bは前記雄ねじ部位8a1に螺合する雌ねじ部位8b1を有している。
【0155】
固定手段8cは、第二サービスリングナット8bに形成された径方向に延びる径方向孔8eを通って第一サービスリングナット8aに作用する差し込み固定部材8dを含む。差し込み固定部材8dは、雄ねじ部位を有しており、径方向に延びる径方向孔8eのねじ部位に螺合する。
【0156】
左側のラジアル軸受41と第一サービスリングナット8aとの間には、当該左側のラジアル軸受41を保護する保護シールド9bが軸方向に設けられている。
【0157】
上述した内容から分かるように、本発明にかかるボトムブラケット1では、自転車のフレームに設けられたハウジングボックス10に対する、左側のクランクアーム40の軸方向位置の微調節が可能である。これにより、使用するハウジングボックス10の軸方向寸法が標準仕様のものと異なる場合であっても、左側のクランクアーム40を正確に位置決めすることができる。
【0158】
説明を分かり易くするために、組み付けられた形態および/または自転車に装着された状態の、ボトムブラケットアセンブリおよび/または左側のクランクアームアセンブリについて言及し、また、そのような形態および/または状態のものを添付の特許請求の範囲に記載しているが、当然ながら、本発明の保護範囲は、未組み付け形態および/または自転車に未装着の状態の、ボトムブラケットアセンブリおよび/または左側のクランクアームアセンブリにも及ぶ。なお、未組み付け形態および/または自転車に未装着の状態の各部品または各構成品は、組み付けおよび/または自転車への装着がなされることにより、前述した組み付けられた形態および/または自転車に装着された状態となる。
図1
図2
図3
図4
図5