(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例による半導体発光装置(LED)の構成について説明する。
【0011】
図1A〜
図1Cは、実施例によるLED100を示す断面図および平面図である。
図1Aは、
図1BにおけるIA−IA断面を示す。なお、図中に示す各構成の相対的なサイズは、実際のものと異なっている。
【0012】
実施例によるLED100は、主に、支持基板12上に形成されるp側電極30、p側電極上に形成される光半導体積層20、および、光半導体積層20上に部分的に形成されるn側電極60、を含む構成である。
【0013】
光半導体積層20は、
図1Aに示すように、主に、p型半導体層28、活性層(発光層)26、電流拡散層24およびn型半導体層23を含む構成である。p型半導体層28は、たとえば、p型不純物が添加されたGaN(p型GaN)より構成され、層厚が0.1μm程度である。活性層26は、たとえば、GaNからなる障壁層およびInGaNからなる井戸層を含む多重量子井戸構造を有し、障壁層および井戸層の層厚がそれぞれ3nm程度である。n型半導体層23は、たとえばn型不純物が添加されたGaN(n型GaN)より構成され、層厚が3μm程度である。
【0014】
電流拡散層24は、不純物が添加されていないGaN(i型GaN)からなるアンドープ層およびn型GaNからなるドープ層が交互積層する半導体多層構造を有する。たとえば、第1アンドープ層24ia、第1ドープ層24na、第2アンドープ層24ib、第2ドープ層24nbおよび第3アンドープ層24icを含む5層構造を有する。第1,第2アンドープ層24ia,24ibの層厚は、それぞれ10nm〜500nm程度である。第1,第2ドープ層24na,24nbの層厚は、それぞれ10nm〜200nm程度である。第3アンドープ層24icの層厚は、1nm〜300nm程度である。
【0015】
なお、p型半導体層28と活性層26との間に、クラッド層27を設けてもかまわない。クラッド層27は、たとえばp型AlGaNより構成される。また、活性層26と電流拡散層24との間に、歪緩和層25を設けてもかまわない。歪緩和層25は、たとえば、GaN層とInGaN層とが交互積層する超格子構造を有する。また、n型半導体層23の、n側電極60が形成される表面に、微細凹凸構造層、いわゆるマイクロコーン構造層(MC層)23mcを形成してもかまわない。n型半導体層23表面にマイクロコーン構造層23mcを形成することにより、光取り出し効率(=LEDから出射される光強度/活性層により発光する光強度)が向上する。
【0016】
p側電極30は、
図1Aに示すように、支持基板12と光半導体積層20との間に形成される。また、光半導体積層20(p型半導体層28)に密着し、融着層40を介して支持基板12に支持される。p側電極30は、高い光反射率を有する部材を含み、たとえばAgを含む。
【0017】
n側電極60は、
図1Aに示すように、光半導体積層20表面(n型半導体層23ないしMC層23mc)に部分的に形成される。たとえば、
図1Bに示すように、n側電極60の平面形状は、パッド部60aを含む梯子状である。n側電極60は、たとえばTi層やPt層などが積層する金属多層構造を有する。なお、n側電極60の平面形状は、
図1Cに示すように、櫛歯状であってもかまわなし、また、格子状などであってもかまわない。少なくともストライプ状に成形される部分を有していることが好ましいであろう。
【0018】
支持基板12は、窒化物系半導体の成長基板として一般に用いられるサファイア基板(熱伝導率:約42W/m・K)よりも熱伝導率が高い部材(つまり放熱性に優れた部材)、たとえばSi(熱伝導率:約149W/m・K)から構成される。支持基板12は、熱伝導率が高い部材から構成されることが好ましく、たとえば熱伝導率が100W/m・K以上である部材から構成されることが好ましい。なお、支持基板12表面にコンタクト電極70を設けてもかまわない。
【0019】
電源80を、n側電極60のパット部60aおよびコンタクト電極70(ないしp側電極30)に接続し、光半導体積層20に電流を供給する。p側電極30から供給される正孔とn側電極60から供給される電子とが、活性層26において再結合し、その再結合にかかるエネルギが光(および熱)として放出される。活性層26において放出される光の一部は、直接、n型半導体層23表面のn側電極60が配置されていない領域から出射される。その他の一部は、高い光反射率を有するp側電極30に反射されて、n型半導体層23表面のn側電極60が配置されていない領域から出射される。
【0020】
以下、
図2A〜
図2Lを参照して、実施例によるLED100の製造方法について説明する。最初に、成長基板11上に光半導体積層20が成長する半導体ウエハを製造する。
【0021】
C面サファイア基板からなる成長基板11を準備し、その成長基板11をサーマルクリーニングする。なお、成長基板11には、サファイア以外に、スピネル、ZnO等を用いることができる。
【0022】
その後、
図2Aに示すように、有機金属化学気相成長(MOCVD)法により、成長基板11上に窒化物系半導体からなる光半導体積層20を成長する。
【0023】
まず、成長基板11上に、低温バッファ層21および下地層22を成長する。具体的には、成長基板11の温度を550℃とし、TMG(トリメチルガリウム)ガス(流量:20μmol/min)、および、アンモニア(NH
3)ガス(流量:2L/min)を供給して、GaNからなるバッファ層21(層厚:20nm)を成長する。続いて、成長基板11の温度を1050℃とし、TMGガス(流量:40μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、GaNからなる下地層22(層厚:1μm)を成長する。
【0024】
その後、n型半導体層23を成長する。具体的には、成長基板11の温度を1050℃に保持したまま、TMGガス(流量:40μmol/min)、NH
3ガス(流量:4L/min)、および、シラン(SiH
4)ガスを供給して、Siがドープされたn型GaN(不純物濃度1×10
18〜1×10
21atoms/cm
3)からなるn型半導体層23(層厚:3μm)を成長する。
【0025】
その後、5層構造からなる電流拡散層24を成長する。具体的には、成長基板11の温度を1050℃に保持したまま、TMGガス(流量:40μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、i型GaNからなる第1アンドープ層24iaを成長する。続いて、TMGガス(流量:40μmol/min)、NH
3ガス(流量:4L/min)、および、SiH
4ガスを供給して、Siがドープされたn型GaN(不純物濃度約2×10
18atoms/cm
3)からなる第1ドープ層24naを成長する。同様の工程を交互に繰り返し、第2アンドープ層24ib,第2ドープ層24nbおよび第3アンドープ層24icを順次成長する。
【0026】
その後、超格子構造を有する歪緩和層25を成長する。具体的には、成長基板11の温度を850℃とし、TEG(トリエチルガリウム)ガス(流量:5.5μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、GaN層(層厚:3nm)を成長する。続いて、TEGガス(流量:5.5μmol/min)、TMI(トリメチルインジウム)ガス(流量:4μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、InGaN層(層厚:3nm)を成長する。同様の工程を交互に繰り返し、たとえば20層構造を有する歪緩和層25を成長する。
【0027】
その後、多重量子井戸構造を有する活性層(発光層)26を成長する。具体的には、成長基板11の温度を800℃とし、TEGガス(流量:5.5μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、GaN層(障壁層,層厚:6nm)を成長する。続いて、TEGガス(流量:5.5μmol/min)、TMIガス(流量:6.5μmol/min)、および、NH
3ガス(流量:4L/min)を供給して、InGaN層(井戸層,層厚:3nm)を成長する。同様の工程を交互に繰り返し、たとえば6層構造を有する活性層26を成長する。
【0028】
その後、クラッド層27を成長する。具体的には、成長基板11の温度を950℃とし、TMGガス(流量:3.5μmol/min)、TMA(トリメチルアルミニウム)ガス(流量:0.4μmol/min)、NH
3ガス(流量:4L/min)、および、CP2Mg(ビスシクロペンタジエニエルマグネシウム)ガスを供給して、Mgがドープされたp型AlGaN(不純物濃度1×10
20atoms/cm
3)からなるクラッド層27(層厚:20nm)を成長する。
【0029】
最後に、不純物濃度が異なる2層構造からなるp型半導体層28を成長する。具体的には、成長基板11の温度を950℃に保持したまま、TMGガス(流量:12μmol/min)、NH
3ガス(流量:4L/min)、および、CP2Mgガスを供給して、Mgがドープされた第1p型GaN層(層厚:0.1μm,不純物濃度5×10
19atoms/cm
3)、および、Mgがドープされた第2p型GaN層(層厚:5nm,不純物濃度2×10
20atoms/cm
3)を成長する。
【0030】
以上により、成長基板11上に、窒化物系半導体からなる光半導体積層20が成長される。なお、光半導体積層20各層の組成比・不純物濃度や層厚などは、各種原料ガスの流量や供給時間などを調整することにより制御することが可能である。
【0031】
次に、
図2Bに示すように、電子ビーム蒸着法により光半導体積層20表面(p型半導体層28表面)に、Ni層およびAg層を積層し、リフトオフ法等によりパターニングして、所望の平面形状を有するp側電極30を形成する。p側電極30は、高い光反射率を有する部材を含み、Ni、Ag、Pt、Al、Pdおよびこれらの合金を含むことが好ましい。なお、p側電極30と光半導体積層20表面との間に、インジウム錫酸化物(ITO)などのオーミック接合層を形成してもよい。
【0032】
次に、
図2Cに示すように、スパッタ法によりp側電極30を覆うAu層を形成し、リフトオフ法等によりパターニングして、第1接着層41を形成する。なお、p側電極30を覆って拡散防止層等を形成した後に、第1接着層41を形成しても良い。拡散防止層はp側電極30に用いられる部材の拡散を防止する。p側電極30がAgを含む場合には、Ti、W、Pt、Pd、Mo、Ru、Ir、Au及びこれらの合金を用いることができる。
【0033】
次に、
図2Dに示すように、第1接着層41を覆うフォトレジストパターン51を形成し、塩素ガスを用いたドライエッチング法により、光半導体積層20を複数の素子(発光積層体29)に分割する。発光積層体29の平面形状は、たとえば1辺が1mmである正方形状である。なお、フォトレジストパターン51は、光半導体積層20を分割した後に除去される。以上により、半導体ウエハが完成する。
【0034】
次に、
図2Eに示すように、所望の平面形状を有する第2接着層42が表面に形成された支持基板12を準備する。支持基板12には、熱膨張係数がサファイア(7.5×10
−6/K)やGaN(5.6×10
−6/K)に近く、熱伝導率が高い部材を用いることが好ましい。例えば、Si、Cu、Mo、W、CuW、AlN等を用いることができる。第2接着層42は、たとえばTi/Ni/Au/Pt/AuSn(Sn:20wt%)からなる金属積層を含む。なお、第1接着層41(
図2C参照)および第2接着層42(金属積層の最上層)に用いられる部材は、融着接合が可能な、Au−Sn、Au−In、Pd−In、Cu−In、Cu−Sn、Ag−Sn、Ag−In、Ni−Sn等を含む金属や、拡散接合が可能なAuを含む金属を用いることができる。
【0035】
次に、
図2Fに示すように、先に製造した半導体ウエハと支持基板12とを、第1接着層41と第2接着層42とが接触するように対向配置し、3MPaで加圧しながら300℃に加熱した状態で、10分間保持する。その後、室温まで冷却して、第1,第2接着層41,42を融着接合する。
【0036】
第1,第2接着層41,42が融着した層を融着層40と呼ぶこととする。成長基板11と支持基板12とが、光半導体積層20を狭持する構造体をサンドウィッチ構造体と呼ぶこととする。
【0037】
次に、
図2Gに示すように、レーザリフトオフ法により、サンドウィッチ構造体から成長基板11を除去する。具体的には、成長基板11側から光半導体積層20に、KrFエキシマレーザ光(波長:248nm,照射エネルギ密度:800〜900mJ/cm
2)を照射し、成長基板11に接する光半導体積層20の界面(バッファ層21および下地層22の一部,
図2A参照)を熱分解する。これにより、成長基板11と光半導体積層20とが分離する。
【0038】
次に、
図2Hに示すように、レーザリフトオフ法による光半導体積層20(GaNからなるバッファ層21および下地層22,
図2A参照)の熱分解で発生したGaを熱水などで除去し、その後塩酸や水酸化ナトリウムなどで表面エッチングする。これにより、光半導体積層20のn型半導体層23(
図2A参照)が露出する。なお、Arプラズマないし塩素系プラズマを用いたドライエッチングや研磨などで、光半導体積層20のn型半導体層23を露出させてもよい。
【0039】
次に、
図2Iに示すように、露出したn型半導体層表面にMC層23mcを形成する。具体的には、n型半導体層表面を、TMAH(水酸化フェニルトリメチルアンモニウム)水溶液(温度約70℃,濃度約25%)などによりウエットエッチングする。これにより、n型半導体層表面に、六角錐状のマイクロコーンが複数形成される。なお、MC層23mcは、Arプラズマや塩素系プラズマなどによるドライエッチングを用いても形成することができる。
【0040】
次に、
図2Jに示すように、光半導体積層20表面(MC層23mc表面)にn側電極60を形成する。具体的には、電子ビーム蒸着法を用いてTi/Al/Ti/Pt/Auからなる金属積層を形成し、リフトオフ法等によりパターニングして、所望の平面形状を有するn側電極60を形成する。n側電極60の平面形状は、たとえば
図1Bないし
図1Cに示す形状である。
【0041】
次に、
図2Kに示すように、支持基板12を研削・研磨処理により、薄片化する。その後、薄片化した支持基板12にコンタクト電極70を形成する。コンタクト電極70は、例えば、電子ビーム真空蒸着法も用いて、Ti/Pt/Auを順次成膜することにより形成することができる。
【0042】
次に、
図2Lに示すように、支持基板12(およびコンタクト電極70)をレーザスクライブ又は、ダイシングにより分割する。以上により、実施例によるLED100が完成する。なお、GaNを含む青色LEDを白色化する場合には、当該LEDを封止充填する樹脂に黄色蛍光体を添加すればよい。
【0043】
本発明者は、上述したLEDの製造方法に基づいて、電流拡散層の構成が異なる複数のサンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2を作製した。そして、サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2のDroop特性を測定した。ここで、Droop特性とは、LED(特にその活性層)に流れる電流の電流密度に対するLEDの外部量子効率(発光効率)の低減特性を言う。また、外部量子効率とは、LEDの活性層に注入される電子数に対するLED外部に出射される光子数の割合を言う。
【0044】
第1のレファレンスR1は、電流拡散層が形成されていないLEDである。また、第2のレファレンスR2は、電流拡散層の替わりに、層厚が260nmである単一のアンドープ層を挿入したLEDである。
【0045】
第1のサンプルS1は、電流拡散層が、第1アンドープ層、第1ドープ層および第2アンドープ層からなる3層構造を有するLEDである。第1アンドープ層の層厚は130nmであり、第1ドープ層の層厚は25nmであり、第2アンドープ層の層厚は130nmである。
【0046】
第2のサンプルS2は、電流拡散層が5層構造を有するLEDである。第1アンドープ層の層厚は130nmであり、第1ドープ層の層厚は25nmであり、第2アンドープ層の層厚は130nm、第2ドープ層の層厚は50nmであり、第3アンドープ層の層厚は2nmである。
【0047】
第3のサンプルS3は、電流拡散層が5層構造を有し、電流拡散層のうち第3アンドープ層の層厚が最も厚いLEDである。第1アンドープ層の層厚は130nmであり、第1ドープ層の層厚は25nmであり、第2アンドープ層の層厚は130nm、第2ドープ層の層厚は50nmであり、第3アンドープ層の層厚は140nmである。
【0048】
第4のサンプルS4は、電流拡散層が5層構造を有し、電流拡散層のうち第1アンドープ層の層厚が最も厚いLEDである。第1アンドープ層の層厚は300nmであり、第1ドープ層の層厚は20nmであり、第2アンドープ層の層厚は100nm、第2ドープ層の層厚は40nmであり、第3アンドープ層の層厚は2nmである。
【0049】
図3Aおよび
図3Bは、サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2のDroop特性を示すグラフである。
図3Aおよび
図3Bに示すグラフの横軸は、サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2に供給した電流の電流密度(A/cm
2)を示し、縦軸は、サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2の外部量子効率(任意単位)を示す。サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2のDroop特性は、電流密度が20A/cm
2であるときの外部量子効率値(外部量子効率の最大値)において規格化されている。ここで、電流密度20A/cm
2の外部量子効率値に対する電流密度35A/cm
2の外部量子効率値の低減率をDroop率と呼ぶこととする。
【0050】
図3Aおよび
図3Bに示すグラフから、サンプルS1〜S4およびレファレンスR1,R2において、LEDに流れる電流の電流密度が小さい場合(具体的には電流密度が20A/cm
2より小さい場合)、LEDの外部量子効率(発光効率)はほぼ線形的に増加していることがわかる。一方、LEDに流れる電流の電流密度が大きい場合(具体的には電流密度が20A/cm
2以上である場合)、LEDの外部量子効率が徐々に低減していることがわかる。
【0051】
レファレンスR1(電流拡散層が設けられていないLED)のDroop率は、約5%程度である。また、レファレンスR2(電流拡散層が単一のアンドープ層に代替されているLED)のDroop率は約2.5%であり、レファレンスR1のDroop率よりも顕著に良好であることがわかった。しかしながら、レファレンスR2の外部量子効率は、電流密度がたとえば50A/cm
2よりも高くなると、極端に悪化することがわかった。また、レファレンスR2の順方向電圧(駆動電圧)は、レファレンスR1の順方向電圧よりも約2倍程度大きくなることが確認された。順方向電圧の増大は、消費電力増大等の観点からあまり好ましいとは言えない。
【0052】
サンプルS1(電流拡散層が3層構造であるLED)のDroop率は約3.7%であり、レファレンスR1のDroop率よりも良好であることがわかった。また、サンプルS2(電流拡散層が5層構造であるLED)のDroop率は約3%であり、サンプルS1のDroop率よりも良好であることがわかった。
【0053】
さらに、サンプルS3(電流拡散層が5層構造であって、第3アンドープ層が最も厚膜であるLED)のDroop率は約2.5%であり、サンプルS2のDroop率よりも良好であることがわかった。しかしながら、サンプルS3の順方向電圧は、サンプルS2の順方向電圧よりも若干大きくなることが確認された。だたし、このサンプルS3における順方向電圧の増大は、許容できる範囲内であった。
【0054】
また、サンプルS4(電流拡散層が5層構造であって、第1アンドープ層が最も厚膜であるLED)のDroop率は約2.5%であり、サンプルS2のDroop率よりも良好であることがわかった。加えて、サンプルS3の順方向電圧は、サンプルS2の順方向電圧とほぼ同等であることがわかった。
【0055】
以上のDroop特性の測定結果から、LEDの光半導体積層に電流拡散層を挿入することにより、Droop特性が改善することが確認された。また、5層構造の電流拡散層を有するLEDの方が、3層構造の電流拡散層を有するLEDよりもDroop特性が改善することが確認された。さらに、5層構造の電流拡散層を有するLEDにおいて、最外層(第1アンドープ層ないし第3アンドープ層)の層厚を厚くすることにより、Droop特性がより改善することが確認された。
【0056】
以下、Droop特性の測定結果に基づいて、電流拡散層が果たす機能について考察する。
【0057】
図4Aは、電流拡散層が形成されていない参考例によるLED(レファレンスR1)において、n側電極の一部近傍を示す拡大断面図である。また、
図4Bは、実施例によるLED(サンプルS1〜S4)において、n側電極の一部近傍を示す拡大断面図である。
【0058】
電流拡散層が形成されていないLED(参考例によるLED)の場合、
図4Aに示すように、電子がn側電極60から活性層26まで到達する間に平面方向に拡散する拡散距離Leは、相対的に短くなると考えられる。電子の拡散距離Leが短い場合、活性層26におけるn側電極に対応する領域近傍に、電子が集中する(電流が集中的に流れる)ことになる。活性層26の特定の領域に供給される単位面積当たりの電子量が極端に多い(活性層26の特定の領域に流れる電流の電流密度が非常に大きい)場合、活性層26における電子および正孔の再結合が効率的に行われず、発光効率は飽和ないし低減すると考えられる。
【0059】
一方、電流拡散層24が形成されているLED(実施例によるLED)の場合、
図4Bに示すように、電子がn側電極60から活性層26まで到達する間に平面方向に拡散する拡散距離Leは、相対的に長くなると考えられる。これは、電流拡散層24における第1〜第3アンドープ層の抵抗成分が高いため、電流が厚み方向に相対的に流れにくく、平面方向に相対的に流れやすく(拡散しやすく)なるためだと考えられる。
【0060】
電子の拡散距離Leが長い場合、活性層26の広い領域に、電子が分散する(電流が分散的に流れる)ことになる。このため、活性層26の特定の領域に供給される単位面積当たりの電子量が相対的に少なくなり(活性層26の特定の領域に流れる電流の電流密度が相対的に小さくなり)、活性層26における電子および正孔の再結合が参考例によるLEDよりも効率的に行われると考えられる。したがって、参考例によるLEDよりも発光効率が改善すると考えられる。
【0061】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、電流拡散層は、5層構造に限られず、5層以上の多層構造であってもかまわない。その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。