(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153402
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】フットウェアの製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 1/22 20060101AFI20170619BHJP
A43B 23/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
D04B1/22
A43B23/02 101B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-140090(P2013-140090)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-14058(P2015-14058A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】寺井 健太
(72)【発明者】
【氏名】小藪 好春
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/078623(WO,A1)
【文献】
特表2012−512698(JP,A)
【文献】
特開2011−058111(JP,A)
【文献】
特表2001−501681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B1/00−23/30
A43C1/00−19/00
A43D1/00−999/00
B29D35/00−35/14
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後一対の針床を有する横編機を用いて、着用者の足裏を覆うソールカバー部と、着用者の足裏以外の部分を覆うインステップカバー部と、を備え、前記インステップカバー部に履き口が形成されたフットウェアを製造するフットウェアの製造方法において、
前記インステップカバー部のうち、着用者の踵からアキレス腱に至る部分をヒール部、このヒール部を除く部分をフロントサイド部としたとき、
一方の針床で前記フロントサイド部を爪先側から編出すと共に、他方の針床で前記ソールカバー部を爪先側から編出す工程αと、
前記工程αで形成した編出し部に続いて、前記フロントサイド部と前記ソールカバー部とを繋げた状態で編成する工程βと、
前記ソールカバー部のウエール方向終端部に続いて、前記ヒール部を編成すると共に、前記ヒール部の編幅方向の両端部と、前記フロントサイド部のウエール方向終端部と、を前記他方の針床上で接続する工程γと、
を備え、
前記工程βでは、着用者の甲部の傾斜に合わせて前記フロントサイド部の編幅を前記一方の針床上で増加させ、かつ編幅を増加させた前記フロントサイド部の編幅方向両端部の編目を前記他方の針床に回し込むことを特徴とするフットウェアの製造方法。
【請求項2】
前記工程βにおける前記フロントサイド部の編成では、前記履き口を完成させずに前記フロントサイド部を編終り、
前記工程γにおける前記ヒール部の編成では、前記ヒール部のウエール方向終端部によって前記履き口の縁部を形成することで前記履き口を完成させることを特徴とする請求項1に記載のフットウェアの製造方法。
【請求項3】
前記工程βにおいて、前記フットウェアの爪先側に、編幅方向に並ぶ複数の指袋を編成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフットウェアの製造方法。
【請求項4】
前記フットウェアの少なくとも一部を、熱融着糸を含む融着編糸で編成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフットウェアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足の形状にフィットする立体的なフットウェアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機を用いて靴下やシューズアッパーなどのフットウェアを製造することが行なわれている。例えば、特許文献1には、針床上で靴下を横向きに編成する技術、即ち靴下の右側部分と左側部分とをそれぞれ前後の針床で編成する技術が開示されている。さらに、特許文献1では、着用者の踵に対応する部分を立体的に編成する技術が開示されている。また、特許文献2には、針床上で靴下を正面向きに編成する技術、即ち靴下の正面側部分と背面側部分とをそれぞれ前後の針床で編成する技術が開示されている。いずれの編成においても、靴下のウエール方向端部に開口部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/078623号
【特許文献2】特開2000−239950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、着用者の足の形状にフィットする立体的なフットウェアの製造方法が求められている。特に、編成によってシューズアッパーを製造することが検討されており、靴下に比べて伸縮性が抑えられたシューズアッパーでは、着用者の足全体の形状に沿った立体的な形状とすることが求められている。
【0005】
しかし、特許文献1では靴下を横向きに編成する際、靴下の踵部分を立体的に編成しているものの、特許文献1の靴下は、着用者の足全体の形状に沿った立体的な形状とは言い難い。足に対する靴下のフィット性は、靴下の伸縮性に負うところが大きい。一方、引用文献2では靴下を正面向きに編成する際、靴下を足全体の形状に沿った立体的な形状とする技術は開示されていない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、着用者の足の形状にフィットする立体的なフットウェアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも前後一対の針床を有する横編機を用いて、着用者の足裏を覆うソールカバー部と、着用者の足裏以外の部分を覆うインステップカバー部と、を備え、インステップカバー部に履き口が形成されたフットウェアを製造するフットウェアの製造方法にかかる。この本発明のフットウェアの製造方法は、インステップカバー部のうち、着用者の踵からアキレス腱に至る部分をヒール部、このヒール部を除く部分をフロントサイド部としたとき、以下の工程α〜γを備えることを特徴とする。
[工程α]…一方の針床でフロントサイド部を爪先側から編出すと共に、他方の針床でソールカバー部を爪先側から編出す。
[工程β]…工程αで形成した編出し部に続いて、フロントサイド部とソールカバー部とを繋げた状態で編成する。その際、着用者の甲部の傾斜に合わせてフロントサイド部の編幅を一方の針床上で増加させ、かつ編幅を増加させたフロントサイド部の編幅方向両端部の編目を他方の針床に回し込む。なお、『回し込み』については後述する実施形態で説明するが、公知の編成技術である(例えば、特許第4215719号公報を参照)。
[工程γ]…ソールカバー部のウエール方向終端部に続いて、ヒール部を編成すると共に、ヒール部の編幅方向の両端部と、フロントサイド部のウエール方向終端部と、を他方の針床上で接続する。
【0008】
本発明のフットウェアの製造方法として、工程βにおけるフロントサイド部の編成では、履き口を完成させずにフロントサイド部を編終り、工程γにおけるヒール部の編成では、ヒール部のウエール方向終端部によって履き口の縁部を形成することで履き口を完成させる形態を挙げることができる。
【0009】
本発明のフットウェアの製造方法として、工程βにおいて、フットウェアの爪先側に、編幅方向に並ぶ複数の指袋を編成する形態を挙げることができる。例えば、実施形態1,2に示すように、フットウェアの外観上から指袋が形成されていることが分かるように指袋を形成する。あるいは、特開2012−233269号公報や特開2007−113150号公報に記載されるように、フットウェアの内部に仕切りを設けることで、フットウェアの爪先側の内部に足指を収納する指袋となるスペースを形成しても良い。その場合、フットウェアの外観上から指袋が形成されていることは分からない。
【0010】
本発明のフットウェアの製造方法として、フットウェアの少なくとも一部を、熱融着糸を含む融着編糸で編成する形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフットウェアの製造方法によれば、横編機によって、着用者の足の形状にフィットするフットウェアを製造することができる。それは、フットウェアのインステップカバー部のフロントサイド部を編成した後、ヒール部を編成し、そのヒール部の編幅方向両端部をフロントサイド部のウエール方向終端部に繋げることで、立体的な形状のフットウェアとなるからである。
【0012】
フロントサイド部の編成において履き口を完成させず、ヒール部の完成の際に履き口が完成するようにフットウェアを編成することで、後述する実施形態1に示すように、ヒール部を所望の形状にすることが容易になる。例えば、着用者の踵の膨らみに合わせてヒール部の編幅を変化させれば、着用者の足の形状にフィットするフットウェアを製造することができる。
【0013】
フットウェアの爪先側に指袋を形成することで、後述する実施形態1,2に示すように、指袋を有する足袋状のフットウェアなどを製造することができる。
【0014】
フットウェアの編成に融着編糸を用いることで、フットウェアを立体形状に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は実施形態1に示すシューズアッパーの上方概略斜視図、(B)は(A)に示すシューズアッパーの下方概略斜視図である。
【
図2】実施形態1に示すシューズアッパーの編成手順を示す模式図である。
【
図3】(A)は実施形態2に示すシューズアッパーの上方概略斜視図、(B)は(A)に示すシューズアッパーの下方概略斜視図である。
【
図4】実施形態2に示すシューズアッパーの編成手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のフットウェアの製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。シューズアッパーの製造には、少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な2枚ベッド横編機を用いた。
【0017】
<実施形態1>
≪シューズアッパー≫
実施形態1では、フットウェアとしてシューズアッパー1を編成する例を説明する。
図1に示すシューズアッパー1は、親指を挿入する第一指袋F1と、親指以外の指を挿入する第二指袋F2と、を備える足袋状のシューズアッパー1である。このシューズアッパー1は、着用者の足裏の部分を覆うソールカバー部2と、着用者の足の甲側の部分を覆うインステップカバー部3と、に分けることができ、インステップカバー部3には、着用者が足を挿入する履き口4が形成されている。これらインステップカバー部3とソールカバー部2とは、無縫製で一体に編成されており、これらカバー部2,3で構成されるシューズアッパー1は、着用者の足の形状に沿った立体的な形状を有している。このシューズアッパー1をそのままシューズとして利用することもできるし、ソールカバー部2の外側に樹脂などでできたアウターソール(図示せず)を取り付けて、シューズとしても構わない。
【0018】
インステップカバー部3は、着用者の踵に対応するヒール部3hと、ヒール部3h以外のフロントサイド部3fと、に分けられる。このインステップカバー部3のフロントサイド部3fの編目の向きと、ソールカバー部2の編目の向きと、はシューズアッパー1の長さ方向における踵方向(太線矢印を参照)に向いている。一方、インステップカバー部3のヒール部3hは、ソールカバー部2のウエール方向終端部に続いて形成されており(特に、
図1(B)を参照)、ヒール部3hの編目の向きは、シューズアッパー1の高さ方向における上方(太線矢印を参照)に向いている。そして、そのヒール部3hの編幅方向両端部はそれぞれ、フロントサイド部3fのウエール方向終端部に接続されており、この接続によってシューズアッパー1が着用者の足にフィットする立体的な形状に保形されている。
【0019】
ここで、
図1において二点鎖線で示されるラインは、後述するフットウェアの製造方法において、一方の針床に係止される編地部と、他方の針床に係止される編地部と、の境界の位置を示す。従って、このラインの位置に繋ぎ目や縫い目はない。
【0020】
≪シューズアッパーの製造方法≫
図2は、シューズアッパー1の編成手順を示す模式図である。この編成手順では、模式図の紙面下側から上側に向かって編成を行なう。この模式図では、紙面手前側に一方の針床が配置され、紙面奥側に他方の針床が配置されていると考えて良く、紙面の左側と右側とで、一方の針床と他方の針床に係止される編地部同士が繋がっている。
【0021】
このシューズアッパー1は、便宜上、領域I〜IIIに分けて編成する(各領域I〜III間に縫い目はない)。領域Iはシューズアッパー1の爪先から履き口4の切込み端に至る領域、領域IIは履き口4の切込み端からヒール部3hを除く部分までの領域、領域IIIはヒール部3hの領域である。
【0022】
シューズアッパー1の編成の際に用意する編糸は、熱融着糸を含む融着編糸とすることが好ましい。融着編糸を用いてシューズアッパー1全体を編成しても良いし、シューズアッパー1の一部を融着編糸で編成し、残部を非融着編糸で編成しても良い。非融着編糸は、熱融着糸を含まない全ての編糸の総称である。本実施形態のシューズアッパー1は、一つの給糸口を用いて編成することができるが、複数の給糸口を用いて編成しても良い。
【0023】
[領域Iの編成]
領域Iの編成ではまず、一方の針床と他方の針床に交互に編糸を給糸するなどして、編出し部を編成する。そうすることで、一方の針床でフロントサイド部3fを爪先側から編出すと共に、他方の針床でソールカバー部2を爪先側から編出すことができる(本発明の工程α)。そして、一方の針床に係止されるフロントサイド部3fの編出し部と、他方の針床に係止されるソールカバー部2の編出し部に続いて、フロントサイド部3fとソールカバー部2とを繋げた状態で編成する(本発明の工程βの一部)。
【0024】
ここで、
図1のシューズアッパー1のように、その爪先に指袋F1,F2を編成する場合、それら指袋F1,F2のどちらかを完成させた後、残りを完成させる。例えば、第二指袋F2の編出し部を形成し、その編出し部に続いて筒状編成を行なって第二指袋F2を完成させる。次いで、第二指袋F2と重複しない位置で第一指袋F1の編出し部を形成し、その編出し部に続いて筒状編成を行なって第一指袋F1を完成させる。両指袋F1,F2が完成したら、いずれかの指袋を他方の指袋側に寄せ、指股部F3の位置で両指袋F1,F2を接合する(
図1を合わせて参照)。なお、特許文献1の技術のようにシューズアッパー1を横向きに編成する技術では、指袋F1,F2を有するシューズアッパー1を編成することはできない。シューズアッパー1を横向きに編成する場合、針床の対向方向に指袋F1,F2が重複することになるからである。
【0025】
指袋F1,F2の編成とその接合が終われば、フロントサイド部3fとソールカバー部2とを履き口4の切込み端(紙面下側の履き口4の端部)の位置まで筒状に編成する(本発明の工程βの一部)。その際、図中の一点鎖線で示す位置でフロントサイド部3fの編幅を内増やしによって増加させる。この編幅の増加は、着用者の甲部の傾斜に沿った立体形状をシューズアッパー1に形成するためのものである。
【0026】
ここで、一方の針床におけるフロントサイド部3fの編幅を内増やしによって増加させることで、一方の針床に係止される編地部の編幅は、他方の針床に係止される編地部の編幅よりも大きくなる。両編地部の編幅の差が大きくなると、両編地部を繋ぐ編糸が切れる恐れがある。そこで、一方の針床に係止される編目の数と、他方の針床に係止される編目の数と、がほぼ同数(同じか、もしくは1〜2目の差)となるように、一方の針床に係止される編地部の両端部の編目を、他方の針床に回し込む(図中の旋回矢印を参照)。この『回し込み』は公知の編成技術であって、針床のラッキングと編目の目移しを利用する編成技術である。例えば、本実施形態の場合、紙面奥側に配される他方の針床を
図2の右方向にラッキングさせ、紙面手前側に配される一方の針床に係止される編幅方向左端の編目を、他方の針床の空針に目移した後、他方の針床を左方向にラッキングさせ、一方の針床に係止される編幅方向右端の編目を、他方の針床の空針に目移しする。
【0027】
[領域IIの編成]
領域IIでは、フロントサイド部3fの編幅方向のほぼ中央の位置を折り返し端とするC字状編成などによって、フロントサイド部3fとソールカバー部2とを繋げた状態で編成すると共に、フロントサイド部3fに開口部4を形成する(本発明の工程βの一部)。但し、領域IIの編成を終了した時点では、開口部4の踵側(紙面上側)の部分を閉じず、開口部4を未完成の状態としておく。
【0028】
ここで、領域IIにおいても、内増やしと内減らしなどを用いて、フロントサイド部3fとソールカバー部2の少なくとも一方の編幅を増減しても良い。その際、一方の針床と他方の針床とで係止される編地部の編幅に大きな差が生じるようであれば、回し込みによって編幅の整合を取ると良い。
【0029】
[領域IIIの編成]
領域IIの編成が終了した時点で、一方の針床にはフロントサイド部3fの編幅方向の中間部分が係止された状態となっており、他方の針床にはソールカバー部2が係止されると共に、フロントサイド部3fの中間部分以外の部分が係止された状態となっている。この状態から領域IIIでは、ソールカバー部2のウエール方向終端部に続いて、ヒール部3hを編成すると共に、ヒール部3hの編幅方向の端部と、フロントサイド部3fのウエール方向終端部と、を他方の針床上で接続する(本発明の工程γ)。例えば、ヒール部3hを1〜2段分編成するごとに、図中の黒矢印で示すように、ヒール部3hの編幅方向左端部(右端部)の編目と、フロントサイド部3fの左側部分(右側部分)のウエール方向終端部の編目と、を他方の針床上で重ね合わせることを繰り返す。重ね目の形成後に、ヒール部3hを編成することで、重ね目が固定される。
【0030】
ヒール部3hの編幅は、ほぼ一定としても良いが、図示するように徐々に小さくすることが好ましい。そうすることで、
図1に示すようにシューズアッパー1の踵近傍の形状が着用者の踵の膨らみに沿った形状となるため、フィット性に優れるシューズアッパー1とすることができる。もちろん、さらに足の凹凸に沿ったシューズアッパー1とするために、ヒール部3hの編幅を必要に応じて増減しても良い。また、ヒール部3hとフロントサイド部3fとの接合が終わった後、ヒール部3hの編幅方向中間部で引き返し編成などを行なって、ヒール部3hをシューズアッパー1の高さ方向(
図1参照)に延ばすこともできる。このように、ヒール部3hの編幅とウエール方向の長さを自由に変化させることができるのは、領域IIの終了時点で開口部4を未完成の状態としているからである。
【0031】
ヒール部3hの編成、およびヒール部3hとフロントサイド部3fとの接合を繰り返してヒール部3hを完成させることで、
図1に示す立体的なシューズアッパー1が編成される。それは、踵方向に向いた編目からなるフロントサイド部3fと、上方に向いた編目からなるヒール部3hと、が接合されることで、両部3f,3hが互いに支え合い、シューズアッパー1の踵近傍の形状が保たれるからである。
【0032】
[熱処理工程]
上記シューズアッパー1は、足型に嵌めた状態で熱処理を施す。この熱処理によって融着編糸に含まれる熱融着糸が溶融し、その溶融した熱融着糸がシューズアッパー1の形状を保つ糊の役割を果たすことで、シューズアッパー1が足型に対応した形状に成形される。
【0033】
<実施形態2>
実施形態1では、シューズアッパー1の領域IIの編成の際、履き口4を完成させずにヒール部3hの編成を開始し、領域IIIでヒール部3hを完成させたときに履き口4が完成されるようにした。これに対して、実施形態2では、領域IIの編成で履き口4を完成させる編成例を
図3、
図4に基づいて編成する。
【0034】
図3(A),(B)は、実施形態2のシューズアッパー1’の概略図である。このシューズアッパー1’の特徴、即ち実施形態1のシューズアッパー1との相違点は、インステップカバー部3’のヒール部3h’の形状と、その上端位置である。具体的には、ヒール部3h’は、ソールカバー部2から履き口4に向かうに従って先細りの略三角形状となっており、ヒール部3h’の上端は、履き口4にまで至っていない。
【0035】
上記シューズアッパー1’は、
図4に示す編成手順に従って編成することができる。図面の見方は
図2と同様であり、領域I→領域II→領域IIIの順に編成する。領域Iの編成は実施形態1と同様であり、領域IIの編成も、履き口4を完成させてしまうこと以外は実施形態1と同様である。
【0036】
領域IIの編成が終了した時点で、実施形態1と同様に、一方の針床にはフロントサイド部3f’の編幅方向の中間部分が係止された状態となっており、他方の針床にはソールカバー部2が係止されると共に、フロントサイド部3f’の中間部分以外の部分が係止された状態となっている。そこで、ヒール部3h’を1〜2段分編成するごとに、図中の黒矢印で示すように、ヒール部3h’の編幅方向左端部(右端部)の編目と、フロントサイド部3f’の左側部分(右側部分)のウエール方向終端部の編目と、を他方の針床状で重ね合わせることを繰り返す。その際、ヒール部3h’の幅を徐々に減らしていき、ヒール部3h’とフロントサイド部3f’とを接合する。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態の構成に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。例えば、履き口4の近傍の部分に弾性編糸を利用することで、履き口4を拡げ易くして、シューズアッパー1を履き易く、かつ脱ぎ易くすることができる。また、ヒール部3hや履き口4の縁部に相当する部分の厚みを厚くする編成を行ない、シューズアッパー1を補強しても良い。その他、編成されるフットウェアは靴下であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1,1’ シューズアッパー(フットウェア)
2 ソールカバー部
3,3’ インステップカバー部
3h,3h’ ヒール部 3f,3f’ フロントサイド部
4 履き口
F1 第一指袋 F2 第二指袋 F3 指股部