【実施例】
【0013】
実施例に係る止流体装置取替方法につき、
図1から
図14を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例の流体管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面が粉体塗装あるいはモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいは石綿、コンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0014】
図1に示されるように、流体管2は、所定の圧力が加えられて流体管2から各施設等へと流体を流すことができる圧力管であり、この流体管2本管から各施設等へと分岐させるような用途で、流体管2の周壁2aに設けられた連通路3に対して止流体装置である分流体栓4がねじ込まれて固定されている。本実施例において分流体栓4は、空気弁装置5を上部に固定する用途で用いられている。尚、流体管2に設けられる止流体装置は、分流体栓に限らず、流体の流れを一時的であっても止めることができるものを包括的に指し示すものであり、例えば、開閉弁や、蓋により閉塞された分岐管等も含む。
【0015】
本実施例では、この分流体栓4が経年劣化や外的要因等により変形したことに起因し流体漏れを起こしてしまった場合における分流体栓4の取替方法を
図2から
図9を用いて説明する。
【0016】
まず、
図2(a)及び(b)に示されるように、流体管2における分流体栓4周辺を囲むように、第1分割部材1Aと第2分割部材1Bとから成る囲繞部材1をボルト・ナット54,54,…で固定し流体管2に外嵌する。尚、本実施例の囲繞部材1は、3体以上の複数に分割されたケース体からなる分割構造であってもよいし、若しくは分割構造を有さず、鋳型、或いは、溶接加工や機械加工等で連続形成されていても構わない。更に尚、囲繞部材1の材質は鋳鉄等の金属材により構成されているが、流体管の材質に応じて適用されるものであれば、上記で説明した流体管と同様に種々の材質であってもよい。
【0017】
また、囲繞部材1には、外方に連通し周方向に長寸幅を備える作業管部6が設けられている。作業管部6は管状に形成され、流体管2の管軸と略直交方向に延設されるようになっている。囲繞部材1における作業管部6の流体管端部近傍には、流体管2の外周面2bに当接する環状のシール部材56が配設されており、後述する穿孔工程時及び穿孔工程の完了後における囲繞部材1と流体管2外周面2bとの間への流体漏れを防止するようになっている。
【0018】
作業管部6は、分流体栓4を収容する作業部7と、後述する蓋体30が嵌合する蓋受部8と、を備え、蓋受部8は作業部7に比べ一回り大径であるため、作業部7と蓋受部8との境界には段部8aが形成されている。また、蓋受部8の上部には各種作業用装置と接続可能なフランジ部9を備えており、後述する各種作業用装置と接続可能となっている。尚、作業管部6は、本実施例の態様に限らず、例えば、挿口端部を備えた別体の作業管部を囲繞部材1に対して挿入接続して設けられてもよい。
【0019】
また、
図2(a)に示されるように、囲繞部材1は、この作業部7内に前記分流体栓4が位置するような配置で流体管2に対して取付けられる。詳しくは、囲繞部材1は作業部7の平面視における略中心が分流体栓4から軸方向にずれた位置となるように配置する。これは、後述する穿孔装置12におけるセンタードリル16が分流体栓4に干渉しないようにするためである。更に、囲繞部材1は、作業部7の内周面7aと分流体栓4との間に隙間が空くように配置する。これは、後述する穿孔装置12におけるホールソー15が分流体栓4に干渉しないようにするためである。
【0020】
続いて、
図3に示されるように、囲繞部材1に対して開閉自在な作業弁10を備えた作業弁装置11を固定する。作業弁装置11は、軸方向両端部にフランジ11a,11bを有しており、一方のフランジ11bを作業管部6におけるフランジ部9に対して図示しないボルト・ナットで固定する。尚、作業弁装置11は囲繞部材1の第1分割部材1Aに対して予め固定した状態で流体管2に固定されるようにしてもよい。
【0021】
次に、作業弁装置11における他方のフランジ11aに対し、図示しないボルト・ナットを用いて穿孔装置12を取付ける。穿孔装置12は、モータ等を内蔵した駆動装置13と、駆動装置13から駆動を受け取る軸部材14と、軸部材14の先端に設けられた穿孔手段であるホールソー15とを備えており、ホールソー15は、流体管2方向に延設されたセンタードリル16と、流体管2を開口する穿孔刃17とによって構成されている。
【0022】
次に穿孔装置12を用いて不断流状態で穿孔を行う穿孔工程について
図4及び
図5を用いて工程順に説明する。
図4(b)に示されるように、作業弁10を開放するとともに、前述したモータに電源を入力し、穿孔装置を作動しホールソー15を回転させ、続けて軸部材14を操作することによって、ホールソー15を流体管2に向けて回転軸の軸方向に進出させる。尚、軸部材14においては、駆動装置13に内蔵された図示しない進退装置を用いて進退させているが、ラチェット等の工具を使用して進退させてもよいし、送り出しレバー等を操作して進退させてもよい。
【0023】
図4(b)に示されるように、穿孔工程においては、先ずセンタードリル16が流体管2の周壁2aに穿孔を穿設するようになっており、これによりホールソー15全体の位置決めがなされ、設計上の穿孔位置に確実に穿孔作業を行うことができるようになっている。
【0024】
図4(a)に示されるように、平面視においてホールソー15は、そのセンタードリル16が作業部7の略中心を進退するように配置されている。そして、
図4(a)に示されるように、前記した囲繞工程において、センタードリル16と除去される分流体栓4とが干渉しないように、換言すればセンタードリル16が分流体栓4に接触しないように、前記ホールソーが流体管に対して位置決めすることで穿孔工程においてセンタードリル16が分流体栓4に干渉せず、センタードリル16が分流体栓4を破壊する場合に要する時間や労力を省くことができるばかりか、破壊された分流体栓4の破片が流体管2の内部に落下してしまう虞がない。また、
図4(a)に示されるように、囲繞工程において作業部7の内周面7aと分流体栓4との間に隙間が空くように配置することで、穿孔刃17が分流体栓4に干渉せず、穿孔効率を高い状態で維持することができる。
【0025】
こうして上記したホールソー15による穿孔により、分流体栓4周囲の流体管2の周壁2aが略円形に切断され穿孔2dが穿設される。このとき当然、切断された切片2cには既存の連通路3及び分流体栓4が含まれることになる。
【0026】
詳しくは図示しないが、センタードリル16には、穿孔中には外力によりセンタードリル16内から突出せず、外力を受けず、かつセンタードリル16が下方向に向いている時に径方向に展開する可動式の反し16a,16a,…が複数個設けられている。
図4(a)のように穿孔作業が終了した状態において反し16a,16a,…がセンタードリル16から突出するように展開し、穿孔刃17により切断された流体管2の切片2cの内周側に引掛る。そのため、
図5に示されるように、軸部材14を操作してホールソー15を引き戻す際に、ホールソー15と同時に切片2cの回収を行うことができる。
【0027】
続いて、
図5に示されるように、ホールソー15を完全に引き戻した後、再度作業弁10を閉鎖し、作業弁装置11から穿孔装置12を取外し回収する。そして、
図6に示されるように、穿孔装置12に代えて蓋体取付け装置18を作業弁装置11のフランジ11aに対して図示しないボルト・ナットにより固定する。
【0028】
蓋体取付け装置18は、後述する蓋体30を収容し所定の長さを有する円筒24と、外部から蓋体30の進退を操作可能なハンドル21が配置される操作部25と、外方端部のハンドル21の回転により作業管部6の軸方向に移動する第1軸部材19と、第1軸部材19の進出方向の先端部に接続ピン22により着脱可能に連結されるとともに、固定ネジ23,23,…により蓋体30と着脱可能に連結される第2軸部材20と、を備えている。
【0029】
円筒24は、第2軸部材20を密封状に内包するとともに、その軸方向一方端に第1軸部材19が密封状に挿通可能な天板26を有している。また円筒24は、周面に開閉可能な窓27,27を備えており、窓27を開くことで第1軸部材19及び第2軸部材20に外部より作業者がアクセスできるようになっている。
【0030】
蓋体30は、外周面30aの周方向に亘り一条の溝30bが設けられ、この溝30bに密封用のOリング31が配設されている。また、外周面30aにおける溝30bより上方の一部には、嵌合溝30cが設けられており、後述する仮止めネジ35が嵌合可能となっている。
蓋体30の上板30dの略中央には蓋体30を貫通する連通路30eが穿設され、この連通路30eには弁部であるバルブ40が取付けられているため、蓋体30の上流側と下流側とを連絡する流路を開閉自在であり、蓋体の下流側へ供給する流体の制御が可能となっている。
【0031】
次に蓋体取付け装置18を用いて囲繞部材1に対して不断流状態で蓋体30を固定する方法について
図6から
図9を用いて工程順に説明する。先ず、
図7に示されるように、作業弁10を開放し、前記ハンドル21を回転させて第1軸部材19を移動させ、第2軸部材20及びその先端に連結された蓋体30を囲繞部材1の蓋受部8側に移動させる。作業者は蓋体30を前記段部8aに当接させるまでハンドル21を回転させる。蓋体30が段部8aに当接するまで第1軸部材19を移動させると、それ以上、ハンドル21が回転できなくなるため、その時点で作業者は、蓋体30が所定の取付け位置、即ち、蓋体30及びバルブ40が作業弁装置11より上流側に配置されたことを確認できる。
【0032】
蓋受部8のフランジ部9には、その外周側からフランジ部9を貫通するネジ孔9aが設けられている。このネジ孔9aは、蓋体30が段部8aに当接した状態で前記蓋体30の嵌合溝30cと同じ高さとなるように設定されている。前記したように、ハンドルの回転により蓋体30が段部8aに当接したのを確認した後、ネジ孔9aに仮止めネジ35をねじ込み、仮止めネジ35の先端を蓋体30の嵌合溝30cに嵌合させ、蓋体30を囲繞部材1に対して仮止めする。このとき、蓋体30の外周に配設されたOリング31が蓋受部8の内周面8bに圧接されて、囲繞部材1及び蓋体30により流体管2の穿孔2dから作業管部6に流れ込む流体が密封状に止められることになる。更に、ネジ孔9aにおける仮止めネジ35の後端側に漏止キャップ36をねじ込み、ネジ孔9a部分からの流体の漏れを防止するようになっている。尚、本実施例の蓋体30に替えて、例えば流体管2に形成した穿孔2dを密封する蓋体を構成してもよく、当該蓋体により前記穿孔2dを防食するようにしてもよい。更にこの場合、前記穿孔2dに設置した当該蓋体を、別段の部材を用いて仮固定してもよいし、あるいは、当該蓋体自体がラッチ機構等の仮固定部を有し、当該仮固定部を用いて仮固定するようにしてもよい。
【0033】
特に図示しないが、蓋体30の囲繞部材1に対する仮止めが完了した状態、即ち円筒24内に流体圧がかかっていない状態で、円筒24の窓27を開き、前記第1軸部材19及び第2軸部材20の連結部である接続ピン22を外し、第1軸部材19と第2軸部材20との連結を解除する。次に、作業弁装置11と円筒24との連結を解除し、円筒24と操作部25及び第1軸部材19を回収する(
図8(a)参照)。こうして第2軸部材20と蓋体30との接続部分に外部より直接アクセス可能となって状態で、第2軸部材20と蓋体30とを連結する固定ネジ23,23,…を取外し、第2軸部材20を回収する(
図8(b)参照)。
【0034】
最後に、作業弁装置11と蓋受部8のフランジ部9とを固定するボルト・ナット(図示せず)を取外し、作業弁装置11を回収し、代わりに本体蓋37をフランジ部9にボルト・ナット55,55,…により固定し、新たな止流体装置の取付けを完了する(
図9(a)参照)。そして、
図9(b)に示されるように、流体管2に取付けられたバルブ40に空気弁装置5を取付け、空気弁装置5の付け替えが完了する。尚、上記した方法は、同種の止流体装置の取替方法に限らず、他種の止流体装置に取替える場合にも応用可能であることはいうまでもない。
【0035】
上記したように、流体管2の周壁2aにおける分流体栓4の周囲を切断して流体管2の切片2cごと既存の止流体装置を回収し、流体を止める蓋体30を流体管2を密封状に囲繞する囲繞部材1に対して密封状に固定することで、少なくとも囲繞部材1及び蓋体30により新たな止流体装置を構成でき、この新たな止流体装置は既存の連通路3などを利用しない構造となり、密封性を向上できることとなる。
【0036】
尚、分流体栓4に対する囲繞部材1における作業部7の配置は、上述したような作業部7の平面視における略中心が分流体栓4から流体管2の軸方向にずれた位置に限らず、分流体栓4が作業部7内に配置されていれば流体管の周方向にずれた位置であってもよい。この場合、新たに構成される止流体装置の機能に支障はないが、流体管2の軸方向にずれた位置としたほうが、新たに構成される弁部であるバルブ40の流体取出し方向を分流体栓4(既存の止流体装置)の流体取出し方向と同方向に設置できるため、止流体装置周辺の設計変更を行う必要がない。
【0037】
また、
図10に示されるように、作業部7内において分流体栓4が流体管の周方向にずれた位置となるように囲繞部材1を取付けた場合、分流体栓4が作業部7の内周面7aに対して斜めに配置されることになるため、ホールソー15が分流体栓4に干渉しないように、この斜めになった分流体栓4の高さを考慮して内周面7aと分流体栓4との間に隙間が空くように配置することが望ましい。
【0038】
また、止流体装置の種類によっては、
図11に示されるように、連通路3に対して台座57を取付け、この台座57に栓部材58等を取付けたものがある。台座57は、流体管2の外周面2b上に配置され、上方に向け小径となるような立上りの傾斜面59を有している。このような止流体装置を取替える場合、立上りの傾斜面59部分にセンタードリル16が干渉しないように囲繞部材1における作業部7を配置することで、センタードリル16の穿孔方向に厚みが大きい立上りの傾斜面59部分を穿孔しないで済むため、当該部分を穿孔する場合にかかる余計な時間及び労力を省き、効率よく穿孔作業を行うことができる。
【0039】
また、
図12に示されるように、止流体装置が分流体栓ではなく、蓋部材50により閉塞された連通路を構成する分岐管部51と、分岐管部51の内部に流体を止める抑止体52で構成されている場合も、
図13(a)及び(b)に示されるように、囲繞工程において、センタードリル16と、除去される蓋部材50、分岐管部51及び抑止体52とが干渉しないように、ホールソー15が流体管2に対して位置決めすることで穿孔時にセンタードリル16が抑止体52に干渉しないため、抑止体52が流体管2内に落下することがない。この場合、分岐管部51は、流体管2と一体に構成されているが、例えば分岐管部は、割T字管等により流体管に接続された別体であってもよい。
【0040】
また、
図14に示されるように、止流体装置が連通路を構成する分岐管部51’を蓋部材50’により閉塞されて構成されており、分岐管部51’の内部に流体を止める抑止体等が配設されていない場合、囲繞工程において、センタードリル16が蓋部材50’の中心付近に対して穿孔を行い、センタードリル16が連通路を構成する分岐管部51’内に貫通されるようにしてもよい。これによれば、穿孔刃17による分岐管部51’周囲の流体管2周壁2aの切断が完了した状態で、前記反し16a,16a,…が蓋部材50’の内周側50a’に引掛り、蓋部材50’が固定された分岐管部51’及び切片2cをホールソー15と同時に回収することができる。そのため、
図12及び
図13に示されるように作業部7及びホールソー15を大型化しなくとも、止流体装置の回収が可能であり、取替作業に要する工機の小型化に伴う設備コストの軽減並びに工機の運搬を楽にする効果が期待できる。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記蓋体取付け工程において、囲繞部材1における作業管部6の作業部7若しくは蓋受部8内に
図14に示されるような抑止体を圧嵌することで流体を止めるようにしてもよい。
【0043】
また、前記穿孔工程において、ホールソー15により切断された流体管2の切片2cは、センタードリル16の周面に設けられた反し16a,16a,…を切片2cの内周側に引掛けるようにして回収されるが、これに限らず、例えば別途ロープ等の保持部材を止流体装置に括りつけることで、センタードリル16を利用しなくとも外部より流体管2の切片2cの回収を行えるようにしても良い。
【0044】
また例えば、本実施例では、穿孔手段としてのホールソー15は周方向に回転し、その中心にセンタードリル16を有していたが、流体管が樹脂管等の比較的軟質な材料から構成される場合、穿孔手段は本実施例のように周方向に回転せずに軸方向に進退移動のみするものであってもよいし、あるいはセンタードリルを特段に有さずともよい。