(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光走査装置10の構成を示す断面図である。本実施形態に係る光走査装置10は、第1可動反射部102、第2可動反射部104、及び光学部材200を備えている。第1可動反射部102は回転可能である。第2可動反射部104は、回転軸が第1可動反射部102の回転軸と交わる方向を向いており、かつ平面視で第1可動反射部102と並んで配置されている。光学部材200は、第1可動反射部102及び第2可動反射部104の双方に対向している。
【0012】
光学部材200は、さらに、第1固定反射面202、第2固定反射面204、第3固定反射面206、及び透光面208を備えている。第1固定反射面202は、光学部材200のうち第1可動反射部102に対向した外面であって、平面視で第1可動反射部102を挟んで第2可動反射部104とは逆側に位置している。第1固定反射面202は、光走査装置10に入射してきた光(以下、入射光と記載)を第1可動反射部102に向けて反射する。第2固定反射面204は、平面視で第1可動反射部102と第2可動反射部104の間に配置されており、第1可動反射部102で反射された入射光を第2可動反射部104に向けて反射する。第3固定反射面206は、平面視で第2可動反射部104を挟んで第1可動反射部102とは逆側に配置されており、第2可動反射部104で反射された入射光を第2可動反射部104から離れる方向に反射する。透光面208は、第1固定反射面202と第3固定反射面206の間に位置している。そして、第2固定反射面204は、透光面208とは逆側に位置し、透光面208を介して光学部材200の内部に入射した入射光を反射する。以下、詳細に説明する。
【0013】
本実施形態において、平面視において第1固定反射面202、第1可動反射部102、第2固定反射面204、第2可動反射部104、及び第3固定反射面206は、一つの直線に沿って配置されている。また、光走査装置10に入射する入射光(すなわち第1固定反射面202に入射するときの入射光)と、光走査装置10から出射する出射光(すなわち第2固定反射面204で反射された入射光)は同軸(
図1におけるx方向)となっている。このため、光走査装置10の幅は、小さくなる。
【0014】
第1可動反射部102及び第2可動反射部104は、同一の基板100に形成されている。基板100は、例えばシリコン基板である。そして第1可動反射部102及び第2可動反射部104は、基板100を加工することにより形成されている。第1可動反射部102及び第2可動反射部104の構造の詳細については後述する。
【0015】
第1固定反射面202、第2固定反射面204、及び第3固定反射面206は、一つの光学部材200の外面である。具体的には、光学部材200は、透光性の材料、例えばガラス又は樹脂により形成されている。そして第1固定反射面202及び第3固定反射面206は、光学部材200の外側の面によって構成されている。一方、第2固定反射面204は、光学部材200と外部の境界のうち光学部材200の内側の面によって構成されている。言い換えると、第1固定反射面202及び第3固定反射面206は、光学部材200に向かってきた光を反射する。一方、第2固定反射面204は、光学部材200の内部を進んできた光を反射する。
【0016】
そして、第1固定反射面202、第2固定反射面204、及び第3固定反射面206は、いずれも平面であるが、向きが互いに異なる。
【0017】
具体的には、第2固定反射面204は基板100と平行である。そして本図に示す例では、基板100に対する第1固定反射面202の角度θ
1は、基板100に対する第3固定反射面206の角度θ
2と等しい。ただし、第1固定反射面202と第3固定反射面206は互いに逆側を向いている。角度θ
1及びθ
2は、例えば10°以上30°以下である。ただし角度θ
1及びθ
2はこの範囲に限定されない。
【0018】
そして、第2固定反射面204は、第1固定反射面202および第3固定反射面206よりも、基板100から離れている。基板100を基準としたときの第2固定反射面204の高さGは、第1固定反射面202のうち入射光が当たる部分よりも高くなっており、また、第2固定反射面204のうち入射光が当たる部分よりも高くなっている。
【0019】
図2は、第1可動反射部102の詳細構造の一例を示す平面図である。第1可動反射部102は、可動電極120、枠体110、保持部材130、及び2つの第1固定電極140を備えている。保持部材130は、可動電極120を枠体110に取り付けており、かつ可動電極120の回転軸となる。2つの第1固定電極140は、可動電極120を介して互いに対向しており、可動電極120の回転軸と交わる方向に並んでいる。
【0020】
可動電極120の平面形状は矩形であるが、第1固定電極140と対向する辺(
図2においてY方向に伸びている辺)は、櫛歯形状となっている。枠体110は、可動電極120の4辺のうち第1固定電極140と対向していない2つの辺(
図2においてX方向に伸びている辺)それぞれに対向している。保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している2辺それぞれに対して設けられている。詳細には、保持部材130は、可動電極120のうち枠体110と対向している辺の中心に接続している。そして2つの保持部材130を結ぶ線が、可動電極120の回転軸となっている。本実施形態では、枠体110、可動電極120、及び保持部材130は一体的に形成されている。
【0021】
第1固定電極140のうち可動電極120と対向する辺は、櫛歯形状となっており、可動電極120の櫛歯部分とかみ合っている。このため、第1固定電極140と可動電極120は、互いに対向する部分の面積が大きくなり、その結果、可動電極120の駆動力は大きくなる。
【0022】
また、第1固定電極140は、一部が可動電極120と枠体110の間に伸びている。その伸びている部分の先端は、保持部材130に対向している。
【0023】
第1可動反射部102の可動電極120は、例えば上面が鏡面になっている。この鏡面は、例えば可動電極120の上面に金属膜(例えばAl膜)を形成することにより、形成されている。そして可動電極120の角度を変えることにより、可動電極120に入射してきた光の反射角を変える。可動電極120の角度は、制御部300によって制御される。
【0024】
なお、第2可動反射部104の詳細構造は、平面視における向きが90°異なっている点を除いて、第1可動反射部102の詳細構造と同様である。
【0025】
図3は、光学部材200の断面図である。光学部材200は、ベース部材210及び反射層220有している。ベース部材210はガラスや樹脂などの透光性の材料を用いて形成されており、第1固定反射面202となる面、第2固定反射面204となる面、及び第3固定反射面206となる面、及び透光面208を有している。反射層220は、ベース部材210のうち第1固定反射面202となる面、第2固定反射面204となる面、及び第3固定反射面206となる面の上に形成されている。反射層220は、光を反射する材料、例えばAlなどの金属によって形成されている。なお、反射層220は、ベース部材210のうち透光面208には形成されていない。
【0026】
また、光学部材200は、底面が台形の四角柱を横にした形状を有している。そして、この台形の上底(互いに平行な2辺のうち相対的に短い辺)に相当する面が透光面208になっており、下底(互いに平行な2辺のうち相対的に長い辺)に相当する面が透光面208になっている。また台形の脚に相当する2つの面が、第1固定反射面202及び第3固定反射面206になっている。
【0027】
図4は、光学部材200の製造方法の一例を示す図である。まず、
図4(a)に示すように、三角柱のベース部材210を準備する。次いで、
図4(b)に示すように、ベース部材210の外面の全面に、反射層220を、例えば蒸着法やスパッタリング法を用いて形成する。次いで、
図4(c)に示すように、ベース部材210のうち、第1固定反射面202となる面及び第3固定反射面206となる面とが交わっている辺を研磨する。この研磨により、透光面208が形成される。このように、光学部材200を
図3に示した構造にすると、光学部材200を容易に形成することができる。
【0028】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、光走査装置10は、第1可動反射部102及び第2可動反射部104の他に、第1固定反射面202、第2固定反射面204、及び第3固定反射面206を備えている。そして、第1固定反射面202に入射した光は、第1可動反射部102に向けて反射される。第1可動反射部102は、光の方向を第1の方向に走査する。第1可動反射部102で反射された光は、第2固定反射面204を介して第2可動反射部104に入射する。第2可動反射部104は、光の方向を第2の方向に走査する。第2可動反射部104で反射された光は、第3固定反射面206を介して光走査装置10の外部に出射する。
【0029】
このため、光走査装置10から出射される光の方向を、光走査装置10に入射される光の向きにあわせることができる。すなわち光走査装置10から出射される光の光軸は、光走査装置10に入射される光の光軸と同一の向きを有している。また、第2固定反射面204に対する第1固定反射面202及び第3固定反射面206の角度θ
1、θ
2を大きくしなくても良いため、光走査装置10の厚さtを薄くできる。
【0030】
また、可動反射部として、第1可動反射部102及び第2可動反射部104の2つを用いている。このため、一つの可動反射部に、互いに直交する2つの回転軸を持たせる必要がない。従って、光走査装置10の径方向の寸法は、回転軸が2つではなく1つであるため、そのぶん小さくすることができる。また、光走査装置10の構造がシンプルになるので、製造コストを抑制できる。
【0031】
また、光走査装置10の厚さ(または径)tを小さくするためには、光学部材200を第1可動反射部102及び第2可動反射部104に近づければよい。しかし、光学部材200を第1可動反射部102及び第2可動反射部104に近づけると、第1可動反射部102と第2可動反射部104の間の光路が短くなる。この光路が短くなると、第1可動反射部102と第2可動反射部104の間隔を狭くする必要が出てくる。しかし、第1可動反射部102と第2可動反射部104の間隔を狭くすることには限界がある。
【0032】
これに対して本実施形態では、第2固定反射面204までの高さG(
図1参照)は、第1固定反射面202の高さh(
図1参照)よりも大きくなっている。従って、第1可動反射部102及び第2可動反射部104を光学部材200に近づけても、第1可動反射部102と第2可動反射部104の間の光路を長くすることができる。従って、光走査装置10の厚さ(または径)tを小さくすることができる。
【0033】
この効果を、
図8に示した比較例を用いて具体的に説明する。この比較例に係る光走査装置12は、光学部材200が反射面209のみを有している点を除いて、
図1に示した光走査装置10と同様の構成である。反射面209は基板100に対して平行になっている。そして、反射面209は、光学部材200に向かって進んできた光を反射する。そして
図9は、
図8に示した光走査装置12の要部を上方から見た図である。
【0034】
入射光を導光する導光部500から第1可動反射部102への光の入射角をθ
IN、第1可動反射部102と第2可動反射部104の間の距離をL、基板100を基準にしたときの反射面209の高さをgとすると、以下の式(1)が成立する。
【0036】
式(1)から、gを小さくすると、Lも小さくなることが分かる。一方、第1可動反射部102及び第2可動反射部104はある程度の大きさを有しているため、距離Lを小さくすることには限界がある。このため、gを小さくすること、すなわち光走査装置10の幅(径)を小さくすることには限界がある。
【0037】
また、
図8に示す比較例において、第2可動反射部104の傾斜角をθ
T、第2可動反射部104による走査角度θ
Nとすると、以下の式(2)が成立する。
【0039】
この式(2)から、第2可動反射部104による走査角度θ
Nは、第2可動反射部104の傾斜角θ
Tに比例することが分かる。
【0040】
一方、第1可動反射部102の傾斜角をθ
S、第1可動反射部102による走査角度θ
M(
図9参照)とすると、以下の式(3)が成立する。
【0042】
この式(3)によれば、tanθ
Mはtan(π/2−θ
IN)に比例する。従って、光の入射角θ
INが大きくなると、第1可動反射部102による走査角度θ
Mは小さくなってしまう。
【0043】
そして、式(1)から、tan(π/2−θ
IN)を大きくするためには、Lを小さくするか、gを大きくする必要がある。Lを小さくすることには限界があり、また、gを大きくすると、光走査装置10の厚さ(または径)tは大きくなってしまう。
【0044】
例えば、θ
Sが10度である場合、θ
inが45度のときはθ
Mは約18.9度、θ
inが80度のときはθ
Mは約3.45度である。なお、この条件において、Lが2mmのとき、gは1mmとなる。
【0045】
これに対して、第1可動反射部102への入射光の入射角をM、透光面208での屈折角をN、基板100から透光面208までの距離をg、光学部材200の厚さをfとした場合、以下の(4)式が成立する。
【数4】
【0046】
また、空気の屈折率をn
A,ベース部材210の屈折率をn
Bとすると、以下の(5)式が成立する。
【数5】
【0047】
ここで、Lを2mm、fを0.5mm、n
Aを1、n
Bを1.5、Mを45度とすると、Nは28度、gは0.73mmとなり、比較例に係るg(=1mm)と比較して小さくなる。このため、実施形態に係る光走査装置10は、比較例に係る光走査装置12と比較して、光走査装置10の厚さ(または径)tを小さくすることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る光走査装置10の光学部材200の構成を示す断面図である。本実施形態に係る光走査装置10は、光学部材200が反射防止膜230を有している点を除いて、第1の実施形態に係る光走査装置10と同様の構成である。
【0049】
反射防止膜230は、少なくとも透光面208に設けられている。本図に示す例では、反射防止膜230は、光学部材200の第1固定反射面202、第2固定反射面204、第3固定反射面206、及び透光面208に設けられている。詳細には、第1固定反射面202、第2固定反射面204、及び第3固定反射面206においては、反射防止膜230は反射層220を介してベース部材210とは逆側に設けられている。そして透光面208においては、反射防止膜230はベース部材210の上に設けられている。
【0050】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、透光面208に反射防止膜230が設けられているため、透光面208における光の透過率を上げることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る光走査装置10の構成を示す断面図である。本実施形態に係る光走査装置10は、透光面208が第1透光面208a及び第2透光面208bを有している点を除いて、第1又は第2の実施形態に係る光走査装置10と同様の構成である。
【0052】
基板100を基準にした場合、第1透光面208a及び第2透光面208bは互いに異なる方向に傾斜している。具体的には、第1透光面208aは第1可動反射部102に向けて傾斜しており、第2透光面208bは第2可動反射部104に向けて傾斜している。第1透光面208a及び第2透光面208bは、互いに同じ傾斜角度N
1を有している。
【0053】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、以下に説明するように、第1の実施形態と比較して、距離gをさらに縮めることができる。
【0054】
本実施形態において、Lは、以下の(6)式で表すことができる。
【数6】
ただし、sinCの定義は以下のとおりである。
【数7】
【0055】
そして、Lを2mm、fを1mm、n
Aを1、n
Bを1.5、Mを45度とした場合、N
1=10°ではg=0.3mmとなる。すなわち、第1の実施形態と比較して、gをさらに小さくすることができる。
【0056】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る内視鏡装置40の構成を示す図である。本実施形態に係る内視鏡装置40は、共焦点光学系の内視鏡装置であり、光走査装置10、光源420、ダイクロイックミラー430、光ファイバー440、光検出部450、AD変換部460、及び画像処理部470を備えている。光走査装置10は、ケース410の中に収容されている。ケース410は、内視鏡装置40の先端部を構成しており、その先端にレンズ412を有している。光源420は、例えばレーザ光源である。
【0057】
本実施形態において、光走査装置10は、基板100、光学部材200、制御部300、及び配線基板480を有している。光学部材200の構造は、第1〜第3の実施形態のいずれかと同様である。本図に示す例では、第1の実施形態と同様の場合を示している。また、本図に示す例では、基板100はSOI(Silicon ON Insulator)基板である。そして第1可動反射部102及び第2可動反射部104は、基板100の上側のシリコン層を用いて形成されている。そして、基板100は、配線基板480上に実装されている。また、配線基板480上には、制御部300も実装されている。制御部300は、例えば半導体ベアチップであり、基板100と共に配線基板480上に実装されている。
【0058】
次に、内視鏡装置40の動作について説明する。光源420が生成した光は、ダイクロイックミラー430で反射され、光ファイバー440に入射する。光ファイバー440は、入射した光を光学部材200の第1固定反射面202に向けて出射する。第1固定反射面202に入射した光は、第1可動反射部102、第2固定反射面204、第2可動反射部104、及び第3固定反射面206を介して、レンズ412から観察対象に向けて出射する。このとき、制御部300が第1可動反射部102及び第2可動反射部104を制御することにより、観察対象に向けて出射する光の向きが制御される。
【0059】
観察対象には、予め蛍光体の分子が含浸されている。この蛍光体の分子は、レーザ光で励起されることにより蛍光発光する。この蛍光発光した光は、レンズ412を介して第3固定反射面206、第2可動反射部104、第2固定反射面204、第1可動反射部102、及び第1固定反射面202を介して光ファイバー440に入射する。光ファイバー440に入射した光は、ダイクロイックミラー430を透過して光検出部450によって電気信号に変換される。この電気信号は、AD変換部460によってデジタル信号に変換される。画像処理部470は、AD変換部460が生成したデジタル信号に基づいて画像データを生成する。
【0060】
本実施形態によれば、光走査装置10は、第1〜第3の実施形態のいずれかと同様の構造を有している。このため、内視鏡装置40から出射される光の光軸を、内視鏡装置40が延伸する方向(すなわちケース410が向いている方向)に合わせることができる。また、ケース410の径rを小さくすることができる。
【0061】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば第1〜第3の実施形態に示した光走査装置10は、内視鏡装置40以外の装置、例えばレーザープロジェクタに使用されても良い。