特許第6153463号(P6153463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153463
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20170619BHJP
   B60C 7/18 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B60C7/18
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-264710(P2013-264710)
(22)【出願日】2013年12月21日
(65)【公開番号】特開2015-120393(P2015-120393A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚史
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−302815(JP,A)
【文献】 特開2009−179222(JP,A)
【文献】 特開2010−036883(JP,A)
【文献】 特開昭51−018003(JP,A)
【文献】 特開平04−221201(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/042460(WO,A2)
【文献】 特開昭61−203801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00, 7/14− 7/20
B60C 9/02, 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、
前記連結部の両方の端部をタイヤ軸に平行な回転軸の周りでそれぞれ回転可能に支持する2つの回転支持機構と、前記回転支持機構の少なくとも一方をタイヤ周方向に移動可能なスライド機構とを備えることを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記回転支持機構は、前記連結部の端部に設けられた車輪であり、前記スライド機構は、前記車輪を移動させるために前記内側環状部の外周面又は前記外側環状部の内周面に沿って設けられたレールであることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
両方の端部が前記内側環状部と前記外側環状部に対してそれぞれ固定された補助連結部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
タイヤ周方向に隣り合う前記連結部同士は、ばねで接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項5】
タイヤ径方向に対してタイヤ周方向の一方側に傾斜する前記連結部と、タイヤ周方向の他方側に傾斜する前記連結部とが、互いの中央部同士で回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の非空気圧タイヤ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、中実ゴム構造のソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能はない。そのため、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、乗り心地性能が重視される乗用車用には採用されていなかった。
【0005】
下記特許文献1には、上記課題を解決する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、前記環状バンドとホイール又はハブとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークとを有する非空気圧タイヤが記載されている。しかし、このようにスポークで荷重を支持する非空気圧タイヤでは、スポーク端に応力が集中して破損するおそれがある。
【0006】
特許文献2には、外側リムアセンブリと、内側ハブ連結部材と、外側リムアセンブリ及び内側ハブ連結部材の間に配置される複数のばね要素とを有する非空気圧タイヤが記載されている。この非空気圧タイヤでは、ばね要素の好ましくない移動を制限するために、ばね要素と共に作用する複数の減衰要素がさらに設けられているが、突発的な衝撃によってはばね要素が破損することが懸念される。
【0007】
特許文献3及び4には、リムとリムの外側に配置される複数のセグメントとを有し、セグメントとリムとを複数のリンク機構によって連結した非空気圧タイヤが記載されている。リンク機構のリンク部材は、リムとセグメントに対してピンを介して回転可能に連結されており、路面からの入力による衝撃のために連結部分が壊れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【特許文献2】特表2008−539113号公報
【特許文献3】特開2008−279814号公報
【特許文献4】特開2010−42722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、スポークの端部での破損を防いで耐久性を向上できる非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、
前記連結部の両方の端部をタイヤ軸に平行な回転軸の周りでそれぞれ回転可能に支持する2つの回転支持機構と、前記回転支持機構の少なくとも一方をタイヤ周方向に移動可能なスライド機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える支持構造体を有している。本発明によれば、連結部の両方の端部は、内側環状部及び外側環状部に対して回転支持機構により回転可能に支持されており、かつ少なくとも一方の端部は、内側環状部又は外側環状部に対してスライド機構によりタイヤ周方向に移動可能となっているため、支持構造体で荷重を支持する際、連結部の両方の端部の自由度が高く、連結部の両方の端部における応力集中を防ぐことができる。その結果、連結部(スポーク)の端部での破損を防いで耐久性を向上できる。
【0012】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記回転支持機構は、前記連結部の端部に設けられた車輪であり、前記スライド機構は、前記車輪を移動させるために前記内側環状部の外周面又は前記外側環状部の内周面に沿って設けられたレールであることが好ましい。この構成によれば、簡素な構造により回転支持機構とスライド機構を実現できるため、故障を防いで耐久性を向上できる。
【0013】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、両方の端部が前記内側環状部と前記外側環状部に対してそれぞれ固定された補助連結部をさらに備えることが好ましい。このような補助連結部を設けることで、回転支持機構及びスライド機構に過度の力が加わることを防ぐことができるため、耐久性を向上できる。また、連結部のみではタイヤ剛性等の性能が不足する場合、補助連結部により連結部を補助することができる。
【0014】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、タイヤ周方向に隣り合う前記連結部同士は、ばねで接続されていることが好ましい。この構成によれば、連結部が回転又はスライドしたとき、その移動量に応じてばねにより連結部を初期位置に戻そうとする力が働く。これにより、接地部の連結部は負荷に応じた移動量で停止することになるため、より大きな荷重を支持することができる。
【0015】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向の一方側に傾斜する前記連結部と、タイヤ周方向の他方側に傾斜する前記連結部とが、互いの中央部同士で回転可能に連結されていることが好ましい。この構成によれば、連結された一対の連結部により荷重を支持するようになるため、耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2図1の非空気圧タイヤの部分拡大図
図3図1の非空気圧タイヤのI−I断面図
図4】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの断面図
図5】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図6】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの断面図
図7】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
図8】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、図1の非空気圧タイヤの一部を拡大して示す部分拡大図である。図3は、図1の非空気圧タイヤのI−I断面図である。ここで、Oはタイヤ軸を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0018】
本発明の非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを有するものである。本発明の非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。本実施形態では、図1に示すように、支持構造体SSの外側に、支持構造体SSを補強する補強層6が設けられている例を示す。また、本実施形態では、図1に示すように、補強層6の更に外側にトレッドゴム7が設けられている例を示す。補強層6、トレッドゴム7としては、従来の空気入りタイヤのベルト層、トレッドゴムと同様のものを設けることが可能である。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0019】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する複数の連結部3とを備えている。
【0020】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0021】
内側環状部1の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0022】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0023】
内側環状部1のタイヤ軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0024】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0025】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0026】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5〜100MPaであり、より好ましくは7〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0027】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0028】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0030】
内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0031】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0032】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0033】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0034】
外側環状部2の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部2の厚みは、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0035】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0036】
外側環状部2のタイヤ軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0037】
外側環状部2の引張モジュラスは、図1に示すように外側環状部2の外周に補強層6が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層6を設けない場合には、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0038】
外側環状部2の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。外側環状部2を補強繊維により補強することで、外側環状部2と補強層などとの接着も十分となる。
【0039】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を置いて、タイヤ周方向CDに各々が独立するように複数設けられる。
【0040】
連結部3は、内側環状部1から外側環状部2までタイヤ径方向に沿って延びる棒状をしている。図1は、荷重が加わっていない初期位置での非空気圧タイヤTを示しており、この初期位置において、本実施形態の連結部3は、タイヤ径方向に傾斜して延びている。連結部3のタイヤ径方向に対する傾斜角度は、30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましい。傾斜角度が30°より大きいと、非空気圧タイヤTは十分な剛性を得ることができない。
【0041】
連結部3は、内側環状部1側の内側端部31と外側環状部2側の外側端部32を有している。連結部3の内側端部31には、第1の車輪41が回転可能に設けられている。同様に、連結部3の外側端部32には、第2の車輪42が回転可能に設けられている。第1の車輪41と第2の車輪42の回転軸は、どちらもタイヤ軸Oに平行となっている。第1の車輪41は、内側環状部1に対して回転可能に取り付けられ、第2の車輪42は、外側環状部2に対して回転可能に取り付けられている。これにより、連結部3の内側端部31と外側端部32は、内側環状部1及び外側環状部2に対してタイヤ軸Oに平行な回転軸の周りで回転可能に支持される。
【0042】
内側環状部1の外周面1aには、複数の第1のレール51が互いに間隔を空けて設けられている。第1のレール51は、タイヤ周方向CDに沿って延びるように設けられ、第1の車輪41をタイヤ周方向CDに沿って移動させることができる。第1のレール51は、第1の車輪41がタイヤ軸方向に飛び出さないように、断面がコの字状となっている。また、第1のレール51の長手方向の両端部は、第1の車輪41の移動を規制するために閉塞されているのが好ましい。これにより、第1の車輪41が第1のレール51に沿って移動し過ぎて、連結部3により荷重を支持できなくなるのを防ぐことができる。
【0043】
また、外側環状部2の内周面2aには、複数の第2のレール52が互いに間隔を空けて設けられている。第2のレール52は、タイヤ周方向CDに沿って延びるように設けられ、第2の車輪42をタイヤ周方向CDに沿って移動させることができる。第2のレール52は、第2の車輪42がタイヤ軸方向に飛び出さないように、断面がコの字状となっている。また、第2のレール52の長手方向の両端部は、第2の車輪42の移動を規制するために閉塞されているのが好ましい。これにより、第2の車輪42が第2のレール52に沿って移動し過ぎて、連結部3により荷重を支持できなくなるのを防ぐことができる。
【0044】
連結部3は、図3に示すように、タイヤ軸方向に沿って複数設けられている。本実施形態では、3本の連結部3がタイヤ軸方向に等間隔に配列されている。なお、連結部3の形状は特に限定されず、3本の連結部3の形状をすべて同じとしてもよく、それぞれ異ならせてもよい。
【0045】
タイヤ周方向に配列される連結部3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0046】
連結部3のタイヤ周方向CDの厚みは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましい。また、連結部3のタイヤ周方向CDの厚みは、耐久性を確保するため、2mm以上が好ましい。
【0047】
連結部3のタイヤ軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0048】
連結部3の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0049】
[他の実施形態]
(1)本発明の回転支持機構及びスライド機構は、前述の実施形態の構成に限定されない。例えば、図4に示すような車輪41,42とレール51,52の構成でもよい。
【0050】
(2)本発明の非空気圧タイヤTは、図5に示すように、両方の端部が内側環状部1と外側環状部2に対してそれぞれ固定された補助連結部8をさらに備えるのが好ましい。このような補助連結部8を設けることで、回転支持機構及びスライド機構に過度の力が加わることを防ぐことができるため、耐久性を向上できる。また、連結部3のみではタイヤ剛性等の性能が不足する場合、補助連結部8により連結部3を補助することができる。
【0051】
(3)前述の実施形態では、棒状の連結部3をタイヤ軸方向に複数配列した例を示したが、連結部3は、図6に示すように、タイヤ軸方向に連続して延びる板状でもよい。このとき、連結部3の両方の端部31,32には、タイヤ軸方向に長尺なローラ43,44をそれぞれ設けるようにする。また、ローラ43,44を移動させるためのレール53,54もタイヤ軸方向に幅広とする。なお、連結部3は、タイヤ軸方向に分割して複数配列したほうが、タイヤの左右で異なる路面入力が入った場合でも、連結部3もタイヤの左右で異なる移動ができる。しかしながら、連結部3を分割し過ぎると、各連結部の強度が落ちるため、耐久性能が悪化するおそれがある。
【0052】
(4)また、本発明の非空気圧タイヤTは、図7に示すように、タイヤ周方向CDに隣り合う連結部3同士は、ばね9で接続されていることが好ましい。ばね9としては、板ばね、コイルばね等が例示できる。この構成によれば、連結部3が回転又はスライドしたとき、その移動量に応じて連結部3を初期位置に戻そうとする力がばね9により働く。これにより、接地部の連結部3は負荷に応じた移動量で停止することになるため、より荷重を支持することができる。
【0053】
(5)前述の実施形態では、複数の連結部3は、タイヤ周方向CDに各々が独立するようにしているが、図8に示すように、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向CDの一方側に傾斜する連結部3と、タイヤ周方向CDの他方側に傾斜する連結部3とが、互いの中央部同士で回転可能に連結されていることが好ましい。すなわち、一対の連結部3が略X字状をなしている。この構成によれば、連結された一対の連結部3により荷重を支持するようになるため、耐久性を向上できる。
【0054】
また、タイヤ軸方向に複数の連結部3を配列する場合、タイヤ径方向に対してタイヤ軸方向の一方側に傾斜する連結部3と、タイヤ軸方向の他方側に傾斜する連結部3とを互いの中央部同士で回転可能に連結することもできる。このとき、内側環状部1の外周面1aと外側環状部2の内周面2aには、タイヤ軸方向に沿って延びるレールをそれぞれ設ける。
【0055】
(6)本発明の他の実施形態として、内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と中間環状部とを連結する複数の内側連結部と、中間環状部と外側環状部2とを連結する複数の外側連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤにおいて、前記外側連結部の両方の端部をタイヤ軸に平行な回転軸の周りでそれぞれ回転可能に支持する2つの回転支持機構と、前記回転支持機構の少なくとも一方をタイヤ周方向に移動可能なスライド機構とを備えるものでもよい。連結部が長過ぎると強度が落ちるが、中間環状部を設けることで、接地面側の連結部(ここでは、外側連結部)の長さを短くできるため、強度を保つことができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0057】
耐久性能
直径1.7mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、試験速度を80km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させた。故障が生じるまでの走行距離を測定し、比較例1を100としたときの指数で示し、この値が大きいほど耐久性能が優れる。
【0058】
実施例1
図2及び図3に示すような内側環状部1と外側環状部2と複数の連結部3とを備える支持構造体SS、その外周に設けられた補強層6、並びにトレッドゴム7を備える非空気圧タイヤを作製し、耐久性能を評価した。評価結果を表1に併せて示す。
【0059】
実施例2
第1の車輪41をタイヤ周方向CDに沿って移動できないようにしたこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0060】
実施例3
第2の車輪42をタイヤ周方向CDに沿って移動できないようにしたこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0061】
実施例4
図5のような補助連結部8をさらに設けたこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0062】
実施例5
連結部3の形状と回転支持機構及びスライド機構とを図6に示すような構成としたこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0063】
実施例6
図7に示すように、タイヤ周方向CDに隣り合う連結部3同士をばね9で接続したこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0064】
実施例7
図8に示すように、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向CDの一方側に傾斜する連結部3と、タイヤ周方向CDの他方側に傾斜する連結部3とを、互いの中央部同士で回転可能に連結したこと以外は、実施例1と同じとした。評価結果を表1に併せて示す。
【0065】
比較例1
内側環状部と外側環状部と複数の連結部とを備える支持構造体、その外周に設けられた補強層、並びにトレッドゴムを備える非空気圧タイヤを作製し、耐久性能を評価した。連結部は、タイヤ軸方向に連続して延びる板状とし、連結部3の両方の端部を内側環状部と外側環状部に固定した。評価結果を表1に併せて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1〜7の非空気圧タイヤは、比較例1と比較して、いずれも耐久性能を向上できた。また、実施例1〜3から分かるように、連結部の端部の車輪は、一方のみ移動可能とすることで耐久性能が向上するが、両方の車輪を移動可能とすることで耐久性能が大きく向上した。
【符号の説明】
【0068】
1 内側環状部
1a 内側環状部の外周面
2 外側環状部
2a 外側環状部の内周面
3 連結部
41 第1の車輪
42 第2の車輪
51 第1のレール
52 第2のレール
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8