【文献】
J. Nucl. Med,2010年 5月,Vol.51,suppl.2,p394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11を含有する12〜14のアミノ酸長のペプチドからなることを特徴とするRHAMM結合ペプチド。
前記RHAMM結合ペプチドが、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:11からなるものである請求項1に記載のRHAMM結合ペプチド。
請求項1〜8および10のいずれか1項に記載のペプチドの1又はそれ以上の有効量、又は請求項9に記載の核酸の有効量と、薬理学的に許容し得るキャリアとを有してなる薬剤組成物。
前記の検出可能なラベルがビオチンベースのラベル、磁気ラベル、放射性ラベル、フルオレセインラベル、電子密度試薬、酵素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)又はハプテン(haptens)から選択されるものである請求項13に記載のプローブ。
ガン患者を治療するための薬剤の製造における請求項1〜8のいずれか1項に記載のRHAMM結合ペプチドの使用であって、該RHAMM結合ペプチドがRHAMMを発現する細胞に対し細胞毒性であり得る分子に共役しているもの。
RHAMMを発現する細胞の増殖を抑制する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRHAMM結合ペプチドの1又はそれ以上の有効量、又は1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量を、in vitroにて前記細胞に接触させる方法。
RHAMMを発現する細胞の運動性を抑制する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載のRHAMM結合ペプチドの1又はそれ以上の有効量、又は1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量を、in vitroにて前記細胞に接触させる方法。
RHAMMを発現する細胞の増殖を抑制するための薬剤の製造における請求項1〜8のいずれか1項に記載のRHAMM結合ペプチド又は該RHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の使用。
RHAMMを発現する細胞の運動性を抑制するための薬剤の製造における請求項1〜8のいずれか1項に記載のRHAMM結合ペプチド又は該RHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
定義
アミノ酸残基(residues)についての以下の標準的1文字および3文字略語は本明細書全体を通して使用されている。A, Ala-アラニン; R, Arg-アルギニン; N, Asn-アスパラギン; D, Asp-アスパラギン酸; C, Cys-システイン; Q, Gln-グルタミン; E, Glu-グルタミン酸; G, Gly-グリシン; H, His-ヒスチジン; I, Ile-イソロイシン; L, Leu-ロイシン; K, Lys-リジン; M, Met-メチオニン; F, Phe-フェニルアラニン; P, Pro-プロリン; S, Ser-セリン; T, Thr-トレオニン; W, Trp-トリプトファン; Y, Tyr-チロシン; V, Val-バリン。
【0040】
“類似化合物(analog)”には、本発明のRHAMM結合ペプチドの配列と実質的に同等のアミノ酸残基配列を有する全てのペプチドが含まれ、その場合、1又はそれ以上の残基が機能的に同様の残基で控えめに置換されていたり、HA結合ペプチドを模倣する能力を示すものが含まれる。
【0041】
“誘導体(Derivative)”とは、官能性側基の反応により化学的に誘導された1又はそれ以上の残基を有するペプチドを指すものである。そのような誘導体分子には例えば、遊離アミノ基が誘導されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチロキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成した分子が含まれる。遊離カルボキシル基が誘導されて塩、メチルエステル、エチルエステル又は他のタイプのエステル又はヒドラジドを形成していてもよい。遊離ヒドロキシル基が誘導されてO-アシル又はO-アルキル誘導体を形成していてもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素が誘導されN-im-ベンジルヒスチジンを形成していてもよい。更に、誘導体として含まれるものは、20の標準アミノ酸の1又はそれ以上の天然のアミノ酸誘導体を含むペプチドである。例えば、4-ヒドロキシプロリンがプロリンの代わりに用いられていてもよい。5-ヒドロキシリジンがリジンの代わりに用いられていてもよい。3-メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに用いられていてもよい。ホモセリンがセリンの代わりに用いられていてもよい。オルニチンがリジンの代わりに用いられていてもよい。
【0042】
“フラグメント(fragment)”の用語は、アミノ酸残基配列がここに示されているペプチドよりも短いアミノ酸残基配列を有する任意の従属するペプチドを指している。
【0043】
“単離ペプチド”又は“単離DNA”の用語は、場合により、ペプチド分子又はDNA分子として定義されており、これはペプチド分子又はDNA分子に自然に伴うことがある他の細胞成分から実質的に分離されたものである。この用語には、非限定的に、組換え又はクローン化DNA単離体および化学的に合成された類似化合物又は異種系により生物学的に合成された類似化合物が含まれる。
【0044】
ここで使用されている“ペプチド”の用語は、所定の配列を通常有するアミノ酸残基の連鎖として定義される。更に、ここで使用されている“ペプチド”の用語は、“ペプチド”および“たんぱく質”の用語を相互的に包含するものである。
【0045】
本文献中において、“RHAMM”とは、ヒアルロン酸媒介運動性のためのレセプター(Receptor for Hyaluronic Acid Mediated Motility)を指すもので、CD 168としても知られている。RHAMMは非一体的細胞表面(CD 168)および細胞内ヒアルロナン結合たんぱく質であり、これはin vitroで細胞運動性を促進し、その発現は攻撃性腫瘍において強く上方規制(upregulated)される[WO 2008/140587]。
【0046】
ここで使用されている“RHAMM結合ペプチド”の用語は、RHAMMを結合することのできるペプチドを意味する。
【0047】
“被験者”又は“患者”とは、症状、疾患又は病気の治療を必要とするヒトを含む動物を指すものである。
【0048】
概要:
本発明はペプチドおよびペプチドを符号化する核酸配列であってRHAMMを結合し得るものに関するものである。本発明は更に、細胞内のRHAMM発現と関連する病気、症状、疾患の治療において、上記のRHAMM結合ペプチド並びにこのRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸配列を使用する方法に関する。本発明のRHAMM結合ペプチドはRHAMMを発現する細胞を認識することのできるプローブに使用することができる。本発明は更に、RHAMMを発現する細胞を含むサンプルの認識のためRHAMM結合ペプチドを使用する方法に関する。
【0049】
本発明の利点として以下のことが含まれる。(a)特異性を以ってRHAMMと結合する新規な小さなペプチドが発見されたこと;(b)本発明者等の知る限り、腫瘍前駆細胞は直接、画像化されることはなかった。この新規なペプチドは非侵襲的(non-invasively)に画像化するための分子画像化プローブとして使用することができる。(c) RHAMMを特異的に結合する新規なペプチドの機能は、前駆細胞を選択的に標的として治療用薬剤と共に用いるべく開発することができる。これはリガンド-レセプター相互作用を介して直接的に、又は治療用ペイロードを標的細胞に移送することにより間接的に行うことができる。(d) RHAMMに対する本発明のペプチドの結合はエピトープ露出(epitope exposure)および抗RHAMM Mab結合を増大させ、それにより画像化が向上し、かつ、RHAMM陽性細胞を治療的標的とさせることができる。
【0050】
本発明の他の特徴および利点は以下に記載の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明および具体的実施例は本発明の具体例を示すものであるが、これらは説明のためだけのものである。なぜならば、当業者にとって明らかなように、この詳細な説明から鑑みて本発明の趣旨および範囲内において種々の変更および改良が可能であるからである。
【0051】
RHAMM結合ペプチド:
本発明者等は、約6乃至14のアミノ酸残基を有する新規なペプチドを単離し、配列させ、特徴づけた。それにより、1具体例において、本発明はペプチドを符号化する単離されたDNAを提供するものであり、このペプチドはSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。他の具体例において、本発明はSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:17からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたペプチドを提供するものである。
【0052】
本発明の新規なペプチドはRHAMMと結合することができる。本発明の態様として、本発明の新規なRHAMM結合ペプチドは特異的にRHAMMと結合することができる。本発明の態様として、本発明の新規なRHAMM結合ペプチドは実質的に高い親和性を以ってRHAMMと結合することができる。本発明の態様として、本発明の新規なRHAMM結合ペプチドは実質的に高い親和性を以って特異的にRHAMMと結合することができる。
【0053】
1具体例において、本発明の新規なRHAMM結合ペプチドは下記(1)の配列を有する。
【0054】
(1) EEXEEZ (SEQ ID NO:18)
ここで、XはA又はGから選択されるもの、ZはY又はEから選択されるものである。
【0055】
他の具体例において、本発明の新規なRHAMM結合ペプチドはSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:17から選択される配列を有するものでもよい。
【0056】
他の具体例において、本発明はRHAMM結合ペプチドを提供するものであり、ここでこのペプチドはSEQ ID NO:1、3, 9, 10, 11, 12および14からなる群から選択される。
【0057】
他の具体例において、本発明はRHAMM結合ペプチドを提供するものであり、ここでこのペプチドはSEQ ID NO:1, 9および14からなる群から選択される。
【0058】
1具体例において、本発明のペプチドはチューブリンのカルボキシ末端尾部(CTT)領域から得られるものでもよい。他の具体例において、RHAMM結合ペプチドはチューブリンのCTT領域に直接隣接する配列から得られるものでもよい。驚くことに、本発明者等は、RHAMMが有糸分裂紡錘体の維持に必須であるたんぱく質と構造的および機能的類似性を共有することを見出した。更に本発明者等は、RHAMMのHA結合ドメイン(領域)が、多くのキネシンおよび微小管関連たんぱく質(MAPs)のチューブリン結合ドメイン(領域)に対し配列相同性を示すことを見出した。チューブリンのCTT領域は従来のキネシンおよびMAPsと相互作用することを示した。
【0059】
例として、ヒト乳癌細胞ラインMDA-MB-231(RHAMMを発現するものとして知られている)は、
図6Aおよび
図7に示すように、本発明の染料共役ペプチドで培養したとき、細胞内蛍光を示した。抗RHAMMでブロックされた細胞は
図6Bに示すように、細胞内蛍光が約65%ないし約85%減少したことを示した。他のRHAMM発現ガン細胞(例えばPC3mLN4および患者由来卵巣腫瘍細胞)も、
図13および
図14に示すように、本発明のRHAMMペプチドで培養したとき、細胞内蛍光を示した。
【0060】
更に本発明者等は、RHAMMに対する本発明のRHAMM結合ペプチドの結合がエピトープ露出および抗RHAMM モノクローン抗体(mAb)結合を増大させることを見出した。本発明のRHAMM結合ペプチドのこの能力、つまり、抗RHAMM mabsに対しエピトープ露出を増大させる能力は、治療的に、並びに画像化向上に利用することができる。従って、本発明のペプチドは例えば、腫瘍(この病気に限定されないが)において利用可能なRHAMMを“活性化”させるのに使用することができる。ついで、治療的又は画像化(例えばFabフラグメント)抗RHAMM mAbが施され、これはRHAMMを発現する(腫瘍)細胞を標的化するのにより効果的である。
【0061】
ひとまとめで言うと、本発明は1組のRHAMM結合ペプチドを実証するものであり、これは或る形態においてチューブリン配列のCTTから得られるものであり、他の形態において人工のペプチド配列に基づくものである。
【0062】
本発明のペプチドはペプチドの一方又は双方の末端にシステイン残基を付加しジスルフィド結合形成により環化することにより変性させることが出来る。更に、本発明のペプチドはリン基およびアセチル基を付加することにより変性させることが出来る。リン酸化は動物の細胞で発生する最も一般的なたんぱく質変性の1つである[4]。これは最も一般的にトレオニン、セリンおよびチロシン残基において生じるものであり、多くの細胞上のプロセス(例えば、細胞のサイクル、成長、アポトーシス、分化など)の規定において重要な役割を果している[4]。この手法は可能である。なぜならば、本発明のペプチドの或るものはチロシンを有しているからであり、アシル基をN-末端アミノ酸に付加することができるからである[5]。本発明のペプチドにおける芳香族アミノ酸、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンを他の芳香族アミノ酸で置換し、ペプチド活性に対するそれらの作用を評価してもよい。同様に、本発明のペプチドにおける脂肪族アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシンを他の脂肪族アミノ酸で置換し、ペプチド活性に対するそれらの作用を評価してもよい。
【0063】
本発明のペプチドは、長さが約6乃至約14のアミノ酸のもので、その長さの範囲は当業者に公知のように如何なるものでもよい(すなわち、6-13, 6-12, 6-11, 6-10, 6-9, 6-8, 6-7, 7-13, 7-12, 7-11, 7-10, 7-9, 7-8, 8-13, 8-12, 8-11, 8-10, 8-9, 9-14, 9-13, 9-12, 9-11, 9-10, 10-11, 10-12, 10-13, 10-14)。長さが約14のアミノ酸を超えるペプチドも本発明の範疇に包含される。ペプチドの長さはRHAMMに対する結合能力によってのみ制限される。本発明のペプチドは更にペプチドの2量体および3量体並びに当業者にとって自明の付加的安定化フランキング(flanking)配列を含むものであってよく、これらについては米国特許No.5,824,315および米国特許No.6,184,204(その内容全体を参照として組み込まれるものとする)に記載されている。本発明の多量体は同じペプチドの多重からなるホモマーであっても、あるいは異なるペプチドからなるヘテロマーであってもよい。上述のように、本発明のペプチドのアミノ酸配列はランダムアミノ酸配列が側面に位置するものでもよい。好ましいものは、ペプチドに対し安定化作用を奏するフランキング配列であって、それにより生物学的利用性を増大させるものである。更に、他のペプチド模倣体も本発明のペプチドにおいて有用である。本発明のペプチドは更に、燐酸化、グリコシル化、ペグ化(pegylation)又は脂質化により変性されたペプチドも包含するものである。更に、本発明のペプチドは、本発明のペプチドに対して機能的に同等の変異体又は類似体のものも包含される。従って、限定的ではないが、これらには部分的な配列相同性を有するペプチド、1又はそれ以上の特定の保守的及び/又は非保守的なアミノ酸変質を有するペプチド、ペプチドの生物学的又は構造的特性を変更させない(すなわち、RHAMMに対し結合する能力を有する)ペプチド共役体が含まれる。
【0064】
機能的類似性(functional analogues)について言うと、当業者に自明なように、生物学的に機能的なペプチド類似体の本来の定義は、その分子の所定の部分内になし得る変化の数には制限があるが、許容し得るレベルの同等の生物学的活性(この場合、RHAMMと結合し得る能力が含まれる)を有する分子をもたらすものという考えである。異なる置換を有する複数の独特なペプチド/たんぱく質を、本発明に従って容易に作成し、使用することができる。更に、或る種の残基はたんぱく質又はペプチドの生物学的又は構造的特性にとって特に重要であることが理解される。つまり、レセプター認識領域における残基であり、このような残基は一般に交換されない。
【0065】
機能的類似体は保守的又は非保守的なアミノ酸置換により発生することができる。アミノ酸置換は一般にアミノ酸の側鎖置換の相対的類似性に基づくものである。例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどである。従って、本発明の範囲内において、保守的なアミノ酸の変化とは、当初に存在していたものと同じタイプのものの特定の位置でのアミノ酸の変化を意味する。すなわち、或る疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸と交換されたり、或る塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸と交換されたりすることである。保守的な置換の例としては、限定的ではないが、或る非極性(疎水性)残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン、メチオニン)を他のものと代わっての置換、或る極性(親水性)残基を他のものと代わっての置換、例えば、アルギニンとリジンとの間の置換、グルタミンとアルパラギンとの間の置換、グリシンとセリンとの間の置換、或る塩基性残基(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)を他のものと代わっての置換、或る酸性残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)を他のものと代わっての置換、或る有枝鎖アミノ酸(例えばイソロイシン、ロイシン、バリン)を他のものと代わっての置換、或る芳香族アミノ酸(例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)を他のものと代わっての置換などが含まれる。このようなアミノ酸の変化は、ペプチドの全体的電荷及び/又は配置を有意に変化させない機能的類似体をもたらすものとなる。このような保守的な変化の例は当業者にとって公知のものであり、本発明の範囲に包含されるものである。保守的な置換には更に、非誘導化残基に代わって化学的に誘導化した残基の使用が含まれる。但し、この場合、結果としてのペプチドが本発明のペプチドと生物学的および機能的に同等のものであることを要する。従って、本発明のペプチドはSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:17とは異なるアミノ酸配列を有するペプチドを包含するものである。更に、本発明のペプチドは単一の突然変異によってSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:17とは異なるアミノ酸配列を有するペプチドを包含するものである。この場合、この単一の突然変異は、単一のアミノ酸削除、挿入又は置換を表すものである。
【0066】
例えば、
図10Aおよび
図10Bは、RHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:1の場合、1, 3, 5, 6および11の位置でのアラニン置換はRHAMMに対する置換されたRHAMM結合ペプチドの特有の結合に影響を及ぼすものでないことを示している。
【0067】
例えば、
図17Aおよび
図17Bは、RHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:14の場合、1, 4, 7, 8, 11および12の位置でのアラニン置換はRHAMMに対する置換されたRHAMM結合ペプチドの特有の結合に影響を及ぼすものでないことを示している。
【0068】
RHAMM結合ペプチドの作成:
本発明のペプチドは当業者に公知の方法により、特に又好ましくはたんぱく質の化学分野で周知の化学的合成手法により作成することができる。例えば、固相合成法[6, 7, 8、これらは参照として組み込まれるものとする]又は均質溶液中での合成[9、これは参照として組み込まれるものとする]により合成たんぱく質を合成する方法である。
【0069】
その他、本発明のペプチドは当業者に公知の組換えDNA技法を利用して作成することができる。
【0070】
更に本発明はベクターを包含するものであり、これには本発明のペプチドの少なくとも1つを符号化する核酸が含まれる。
【0071】
RHAMM結合ペプチドの単離:
RHAMM結合ペプチドは、RHAMMに対し結合するペプチドについてサンプルを分析することにより単離することができる。たんぱく質-たんぱく質相互作用を検出することができる任意のシステム又は試験方法を利用することができる。例えば、限定的ではないが、共免疫沈降法、架橋法、勾配又はクロマトグラフィーカラムを介しての共精製法などを利用することができる。生体試料および市販のライブラリーをRHAMM結合ペプチドについてテストしてもよい。例えば、実施例1により詳述されているように、ラベル付きRHAMMをファージディスプレイライブラリー(phage display libraries)を探るのに使用してもよい。更に、本発明のペプチドに対し用意された抗体を使用してRHAMM結合親和性を有する他のペプチドを単離するのに使用してもよい。例えば、ラベル付き抗体を使用してファージディスプレイライブラリー又は生体試料を探るようにしてもよい。
【0072】
更に、RHAMMたんぱく質を符号化するDNA配列を使用して、HA結合たんぱく質を符号化する核酸についての生体試料又はライブラリーを探るようにしてもよい。
【0073】
組成物:
1形態として、本発明は、in vivoでの投与に適した生体適合性の形態で被験者に投与するための本発明の1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを含む組成物を提供する。他の形態として、本発明は、in vitroでサンプルを研究するために使用される1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを含む組成物を提供する。使用されるサンプルには細胞、組織および器官が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
“in vivoでの投与に適した生体適合性の形態”とは、如何なる毒性作用も治療作用により覆されるよう投与される物質の形態を意味する。これらの物質は如何なる動物にも、好ましくはヒトに投与され得るものである。本発明の薬剤組成物の治療活性量又は“有効量”の投与とは、ヒトにおいて免疫応答を引き出すという所望の結果を達成するのに必要な投与量および投与時間としての効果的な量と定義づけることができる。適当な投与経路は、筋肉注射、皮下注射、静脈注射、腹膜内注射、経口又は鼻腔投与などである。
【0075】
許容し得るキャリア(担体)については当業者に周知のものでよく、例えば滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、燐酸カルシウム、ゼラチン、デキストリン、寒天、ペクチン、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、脱イオン水などである。
【0076】
更に、本発明の組成物は、1又はそれ以上の安定化剤、例えば炭水化物(ソルビトール、マンニトール、澱粉、スクロース、デキストリン、グルコースなど)、たんぱく質(アルブミン、カゼインなど)、緩衝剤(アルカリ性燐酸塩など)などを含有していてもよい。更に、本発明の組成物は、本発明のペプチドの抗細胞増殖特性を向上させる1又はそれ以上の補佐薬を含有していてもよい。
【0077】
注射のための組成物は、限定的な意味ではなく、本発明のペプチド又は核酸と、これに関連して1又はそれ以上の薬理学的に許容し得る賦形剤又は希釈剤を含み、適当なpH並びに生理液と等浸透圧の緩衝溶液に溶解されたものである。注射のための組成物には、任意の薬理学的に適当な希釈剤を使用することができる。例えば、蒸留水、生理液又は塩溶液、及び/又は緩衝液である。注射用の組成物は従来の容積-重量手法により作ることができる。上記ペプチドの或る量を、希釈剤又は溶媒を用いて必要な容量に希釈する。この溶液はついで滅菌したフィルターを介してろ過され、ビン詰め又はアンプル化される。その結果得られた溶液は安定な透明液であり、化学的又は他の不純物を全く含まないものである。
【0078】
検出用プローブ:
試料中(限定するものではないが、例えば、細胞、組織又は器官内)のRHAMM発現の検出は適当なプローブにより行うことができる。このプローブには少なくとも本発明のRHAMM結合ペプチドと、検出可能なラベルとが含まれる。この検出可能なラベルは検出手段により検出可能なものである。この検出手段は検出可能なラベルに対し測定可能な応答をおこなうことができる任意の検出技法であればよい。本発明の形態として、この測定可能な応答は画像の形で提供される。前記の検出可能なラベルは、適当な検出手段を用いてRHAMM陽性細胞の位置の検出を可能にするものである。本発明のプローブはRHAMM陽性細胞の動きおよび発達を追跡することを可能にする。従って、1形態として、本発明のプローブは、限定的ではないが、診断並びに予後の方法においてRHAMM陽性細胞を検討するのに使用することができる。
【0079】
プローブの作成方法は当業者に周知である[10, 11、これらは参照としてここに組み込まれるものとする]。
【0080】
ラベリングの方法は当業者に周知である。好ましいラベルは、in vivo画像化で使用するのに適するものである。抗RHAMMプローブは検出の前に検出可能なようにラベル付けすることができる。その他、交雑形成物に結合する検出可能なラベルを使用することもできる。そのような検出可能なラベルとしては、限定的ではないが、検出可能な物理的又は化学的特性を有し、免疫測定法の分野において満足に開発された物質が含まれる。本発明で使用されるラベルは、検出手段により検出可能な組成物であればよい。この検出手段としては、限定的ではないが、分光手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段などが含まれる。
【0081】
本発明で使用されるラベルとしては、ビオチンベースのラベル、磁気ラベル(例えば、DYNABEADS(登録商標))、放射性ラベル(例えば、
3H,
35S,
32P,
51Cr,
125I)、フルオレセインラベル(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)、電子密度試薬(例えば金)、酵素(例えば、アルカリ性ホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、ELISAで一般に使用されている他のもの)、ジゴキシゲニン、ハプテン、たんぱく質(これに対し抗血清又はモノクローン抗体が利用可能である)(例えば、本発明のペプチドは、識別用放射性同位元素をペプチド内に組み込むことにより検出可能とすることができる。つまり、これをペプチドと特異的に反応する抗体を検出するのに使用する)。本発明のRHAMM結合ペプチドはキャリア(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)又はキーホールリンペトヘモシアニンと結合したもの)と共に提供することができる。
【0082】
上記のRHAMM結合ペプチドは、金又はポリスチレンのミクロスフェア、スライドグラス、チップなどの固体キャリアに、又はマイクロタイタープレートの壁面に共有結合的又は非共有結合的に結合させることができる。このRHAMM結合ペプチドは、限定的ではないが、ビオチン、フルオレセインおよび酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼなど)から選択されるラベルで直接的に又は間接的にラベル付けすることができる。
【0083】
使用される特定のラベルについては、RHAMM/RHAMM結合ペプチド錯体の形成に妨害しない限り、本発明にとって重要ではない。しかし、1態様として、RHAMM/RHAMM結合ペプチド錯体および腫瘍前駆細胞のin vivo検出のためのSPECT、CTおよびPET画像化技法の使用の容易性のため、画像化成分は放射性核種(例えば、
18F,
11C,
13N,
64Cu,
68Ga,
123I,
111In,
99mTcなど)であってもよい。SPECT又はPET画像化で使用される薬剤のための適当な画像化成分についての決定は、放射性核種がジェネレータ又はサイクロトンにより発生するか否か、又はこれらがキレータ又は有機/ハロゲン化物であるか否かにより行われる。
図15および16は、Ga-DOTA-共役ペプチドSEQ ID NO:1およびRe(CO)
3+-配位結合ペプチドSEQ ID NO:1の合成および質量分光分析特性評価を示している。
【0084】
ここで使用されている直接ラベル付きプローブは、検出可能なラベルが付着されたプローブであってもよい。なぜならば、この直接ラベルが既にプローブに付着されているから、プローブを検出可能なラベルで関連させるための後の工程を必要としないからである。これと対照的に、間接ラベル付きプローブは、検出可能なラベルが後に(典型的には、RHAMM結合ペプチドが標的RHAMMで交雑化された後に)結合される部分を有するものということができる。
【0085】
他の形態において、本発明のRHAMM結合ペプチドの任意のものを認識できるモノクローン抗体(mAb)も作成することができ、これを試料中のRHAMM結合ペプチドの存在を検出するのに使用することができる。mAbは本発明の組成物をその品質についてテストするための迅速、かつ、簡単な方法を提供する。一般に、抗体の作成方法は周知である。例えば、本発明のRHAMM結合ペプチドを特異的に認識するmAbを生産する方法は当業者にとって周知である。一般に、ペプチドはフロイントアジュバント中でマウスに注射される。3週間に亘って9回注射した後、マウスの脾臓が取除かれ、燐酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁される。この脾臓細胞はリンパ球源として役立ち、その或るものは適当な特異性の抗体を生産する。ついで、これらは永久に生育する骨髄腫パートナー細胞で融解され、この融解生産物は、HATのような選択剤の存在下で多数の組織培養ウェル中で培養される。これらのウェルはついでスクリーンにかけられ、有用な抗体を作る細胞を含有するものがELISAにより識別される。ついで、これらは新しく培養される。生育期間の後、これらのウェルは再びスクリーンにかけられ、抗体生産細胞が識別される。抗体生産について陽性である単一のクローンを含有するウェルが90%を超えるまで、幾つかのクローニング法が実行される。この手法により、mAbを生産する安定なクローンのライン(系統)が確立される。ついで、このmAbはProtein A又はProtein Gセファロースを用いてアフィニティクロマトグラフィにより精製される(米国特許Nos.4,609,893; 4,713,325; 4,714,681; 4,716,111; 4,716,117; 4,720,459参照)。
【0086】
RHAMM結合ペプチドの適用:
本発明は、検出、画像化、診断および治療手法を包含するものであり、これには、非限定的に、本発明のRHAMM結合ペプチドを用いてRHAMMを標的として捉えることが含まれ、これはリガンド- RHAMMが媒介する細胞運動性応答を刺激する役割を果たすRHAMM/リガンド錯体の形成を粉砕させるものである。これらの方法は、他の公知の治療法、すなわち、病原性症状、炎症および病原性感染に関連する症状を治療するための治療法との組合せで利用することができる。
【0087】
1.RHAMM陽性細胞の検出
図9を参照すると、本発明のRHAMM結合ペプチドが生物学的環境下において適度の安定性を有することが示されている(約110ないし約250分の半減期)。これはin vitro又はin vivo画像化を容易にするのに十分な長さである。
【0088】
本発明の1態様として、RHAMM結合ペプチドを、RHAMM陽性細胞を識別するための方法に使用することができる。このRHAMM陽性細胞の識別方法は、細胞を本発明のプローブと接触させ、この細胞内の検出可能なラベルを検出するための適当な検出技法を適用することが含まれる。RHAMM陽性細胞の識別は検出技法による検出可能なラベルの検出に基づいて決定される。
【0089】
他の1態様として、被験者の組織又は器官内におけるRHAMM発現を検出する方法が提供される。この方法は、(a) 本発明のプローブを被験者に投与すること;(b) 被験者の組織又は器官内のラベルを検出するための検出技法を適用することからなる。
【0090】
腫瘍形成性前駆細胞がRHAMM発現により特徴付けられるため、他の態様においては、本発明のRHAMM結合ペプチドが、腫瘍生検のようなサンプルが腫瘍形成性前駆細胞(これはガン患者に転移を発展させる危険性を示唆させる)を含むか否かを判定するための診断方法に使用される。このような診断方法は、1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを使用してサンプル中のRHAMMの存在を検出することからなる。RHAMM陽性サンプルはサンプルがガン前駆細胞を含むことを示唆するものである。
【0091】
本発明の1形態におけるガン患者の診断方法は、(a)患者から組織試料を得ること;(b)この試料に本発明のプローブを接触させること;(c) 該試料中のプローブによる検出可能なラベルを検出するため検出技法を適用することからなる。試料内のRHAMM発現の検出はガン診断を示唆するものとなる。
【0092】
本発明の他の形態におけるガン患者の診断方法は、(a) 本発明のプローブを被験者に投与すること;(b) 被験者の組織又は器官内のプローブラベルを検出するための検出技法を適用することからなる。被験者におけるRHAMMの検出はガン診断を示唆するものとなる。
【0093】
本発明の他の形態におけるガン患者の予後の判定方法は、(a)患者から腫瘍組織試料を得ること;(b)この試料に本発明のプローブを接触させること;(c) 該試料中のプローブラベルを検出するため検出技法を適用すること;(d) 患者の予後を判定することからなる。この予後は、患者におけるガンの攻撃性又は転移の可能性を予測するものである。試料内のRHAMM発現の検出は好ましくない予後を示唆するものとなる。
【0094】
他の形態として、本発明はガン患者のための治療方針を判定する方法を提供する。この方法は、(a)患者から腫瘍組織試料を得ること;(b)この試料に本発明のプローブを接触させること;(c) 該試料中のプローブラベルを検出するため検出技法を適用すること;(d) 患者の予後を判定することからなる。この予後は、患者におけるガンの攻撃性又は転移の可能性を予測するものである。試料内の測定可能なRHAMM発現の検出は好ましくない予後を示唆するものとなり;この予後に基づいて患者のための治療方針を処方する。
【0095】
本発明の診断および予後の方法における1態様として、試料中のRHAMM発現が公知のネガティブ対照又は公知の標準と比較される。この公知のネガティブ対照又は公知の標準との対比での試料中の測定可能なRHAMM発現の検出は、場合に応じて、試料内のRHAMMの存在、ガンの診断、又は好ましくない予後を示唆するものである。
【0096】
図6および7はフルオレセイン共役RHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:14(
図6A; SEQ ID NO:35)およびSEQ ID NOs:1および9(
図7; SEQ ID NOs:25および29)を使用したヒト乳癌細胞の可視化を説明する図である。
【0097】
図13はフルオレセイン共役RHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:1(SEQ ID NO:25)を使用したヒト卵巣ガン細胞の可視化を説明する図であり、
図14はフルオレセイン共役RHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:9(SEQ ID NO:29)を使用したヒト前立腺ガン細胞の可視化を説明する図である。
【0098】
図14に示すように、PC3mLN4ヒト前立腺ガンライン(攻撃的に侵襲性で転移性のもの)は蛍光染色について強い陽性を示し、HAペプチド模倣薬SEQ ID NO:9の急速な摂取を示唆している。
【0099】
本発明のRHAMM結合ペプチドの細胞による摂取は、特定の抗RHAMM mAbによりブロックされるが、特定の抗CD44 mAbによってはブロックされない。しかし、この抗CD44 mAbはCD44に対するHAの結合をブロックする(
図6, 7, 13, 14参照)。これらの結果は、本発明のHAペプチド模倣薬が、RHAMM依存機構により、前立腺ガン、乳癌および卵巣ガン細胞と関連し、これらガンにより取り上げられることを示唆するものである。
【0100】
2.治療学
図9を参照すると、本発明のRHAMM結合ペプチドが生物学的環境下において実質的に安定であることが示されている(約110ないし約250分の半減期)。これは治療法におけるその使用を容易にするのに十分な長さである。
【0101】
本発明のRHAMM結合ペプチドは、哺乳類において、細胞ロコモーション(例えば、ガン、炎症、自己免疫疾患)および組織外傷と関連する線維性疾患が関連する病状の予防又は治療並びにそれらの回復に使用することができる。
【0102】
本発明のRHAMM結合ペプチドは、RHAMM/リガンド錯体の形成から生じる病気又は疾患の治療のための組成物および方法において使用することができ、これは、このRHAMM/リガンド錯体の形成を粉砕することによりなされる。
【0103】
1態様として、本発明は細胞におけるRHAMMの発現と関連する病気又は症状から患っている被験者を治療するための方法を提供する。この方法は、患者に対し、1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチド又はこの1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量と、薬理学的に許容し得るキャリアとからなる組成物の有効量を少なくとも投与することからなる。
【0104】
1形態として、本発明は組織傷痕を防止し、又は減少させる方法を提供する。この方法は、1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチド又はこの1又はそれ以上の本発明のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量を、必要とする患者に対して少なくとも投与することからなる。
【0105】
ガン細胞の増殖を抑制するRHAMM結合ペプチドの能力は、腫瘍転移を防止する効果およびガン化学療法薬としての有用性を示唆するものである。従って、本発明は腫瘍転移を防止ないし減少させる方法を提供するものであり、これはRHAMM結合ペプチド又は本発明のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量を、これを必要とする被験者に投与することからなる。
【0106】
従って、本発明のRHAMM結合ペプチドは、RHAMM発現と関連するガンを治療するのに有用である。このガンの例としては、限定的ではないが、肺、胃腸、胸部、膀胱などのガン、皮膚ガン(黒色腫および非黒色腫)、並びに脳、頚部および白血病などのガンが含まれる。従って、本発明は被験者におけるガンを防止乃至治療するための方法を提供するものである。この方法は、1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチド又は本発明のこの1又はそれ以上のRHAMM結合ペプチドを符号化する核酸分子の有効量を、これを必要とする被験者に投与することからなる。
【0107】
1形態として、本発明のRHAMM結合ペプチドは、ガンなどのRHAMM発現と関連する病気又は症状を有する患者の罹患率および死亡率を減少させるため、現存する治療法との組合せで使用してもよい。従って、1態様として、本発明はRHAMM発現と関連する病気又は症状を目的として被験者を治療する方法を提供するものである。この方法は、RHAMMと関連する病気のための少なくとも1つの他の療法との組合せで、本発明のRHAMM結合ペプチドを被験者に少なくとも投与することが含まれる。RHAMM結合ペプチドと、少なくとも1つの他の療法との組合せは、病気治療の効能を高めるものとなる。例えば、ガン治療の場合、血管形成を実質的に減少させることができる治療も被験者に施すすることができる。例えば、小分子薬剤、siRNAs、アンチセンス(antisense)治療又はこれらの組合せであって、血管形成スイッチとして作用する1又はそれ以上の成長因子を標的とするもの、又はトロホブラスト(trophoblast)および内皮細胞についての増殖信号を提供するものを施すことができる。成長因子は種々のガンの成長および生存に必要なもので、ガンの進行には必須のものである。従って、RHAMM結合分子を使用する本発明の抗ガン治療法は、VEGF、FGRおよびhCGを含む1又はそれ以上の成長因子を標的とする治療法と組合わせることができる。本発明のRHAMM結合ペプチドは更に、放射線療法又は化学療法とも組合わせることができる。このような組合せ療法はガン治療に対する相乗作用に寄与するものとなる。
【0108】
本発明者等は、例えば、本発明のRHAMM結合ペプチドがヒトの上皮性卵巣ガン(EOC)細胞の増殖を抑制し得ることを示した(
図11参照)。本発明者等は更に、本発明のRHAMM結合ペプチドがヒトのEOC細胞の生存率を減少させることを示した(
図12参照)。
【0109】
前述のように、ガン前駆細胞を識別することにより、本発明の検出方法は、これらの前駆細胞を選択的に死滅させたり、最終分化を強制させたりする新規な治療法の開発を可能にすることになる。例えば、本発明の技法は、高い発がん性前駆細胞サブセットを含有する腫瘍のin vivo画像化に使用することができ、転移の危険のある患者と、その危険のない患者とを選別して治療することを可能にする。最も重要なことは、本発明の技法が、乳癌などの原発性ガン内に存在する高い発がん性前駆細胞サブセットに対し抗がん薬を移送するのに使用できることである。例えば、RHAMMを発現する細胞に対する細胞毒性薬の標的移送を可能にするため、上記ペプチドを細胞毒性薬と共役させてもよい。同様の機構により、他の治療用エンティティ(entities)の移送も可能である。例えば、限定的ではないが、アルキル化剤、抗血管形成剤、抗有糸分裂剤、ホルモン治療薬、ヌクレオシド類似体又はそれらのプロドラッグなどが用いられる。更に、放射線治療薬の使用も考えられる。その場合、本発明のRHAMM結合ペプチドを放射性核種を発生する粒子に結合させ、それにより細胞破壊性エンティティをRHAMM陽性細胞に対し選択的に移送するしくみ(mechanism)が提供される。治療用放射性核種の例としては、ベータ線放射の放射性核種(
90Y,
185Reなど)、ベータ/ガンマー線放射の放射性核種(
47Sc,
153Sm,
177Lu,
188Reなど)、アルファ線放射の放射性核種(
213Bi,
223Ra,
225Acなど)、オージェ放射の放射性核種(
67Ga,
111Inなど)が含まれる。
【0110】
3.投与および投与量
本発明のプローブ及び/又はペプチドは当該分野で公知の任意の経路を介して哺乳動物被験者に直接投与することができる。例えば、限定的ではないが、注射(静脈注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉注射、皮内注射)、吸入、経皮投与、直腸投与、鼻腔投与、経口投与などを利用することができる。1形態として、本発明の検出用プローブ及び/又はペプチドは皮下投与することができる。他の形態として、本発明の検出用プローブ及び/又はペプチドは静脈内投与することができる。他の形態として、プローブ及び/又はRHAMM結合ペプチドの有効量を非全身投与又は局部投与(例えば、末梢投与)を介して投与することができる。これには、抹消筋肉内投与、腺内投与、皮下投与などの経路が含まれる。これにより、プローブ及び/又はペプチドを数時間に亘ってin vivoでRHAMMを発現する細胞および発ガン性細胞集団を有する部位に移送させることができる。
【0111】
本発明の他の形態において、RHAMM結合ペプチドが移植可能なデバイスを介して投与される。本発明の態様として、この移植可能なデバイスはRHAMM結合ペプチドを制御させながら放出させることができる。
【0112】
本発明のRHAMM結合ペプチドは上述のように、全身的に提供することができる。当業者に自明なように、本発明のRHAMM結合ペプチドは従来のリポソーム、特殊なリポソーム、脂質製剤および免疫リポソームを用いて使用することができる。
【0113】
これらのリポソームは、単層又は多層であってもよく、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、デミリストイルホスファチジルコリンおよびこれらの組合せから選択される成分から形成されたものでよい。多層リポソームには単層小胞に似た組成物の多層小胞が含まれる。しかし、溶液又はエマルジョン中の銀成分が捕捉されている複数のコンパートメント(区画)をもたらすように作成することができる。更に、他の補助剤およびモデファイアー(例えば、ポリエチレングリコール又は他の物質)をリポソーム製剤に含めることもできる。
【0114】
リポソーム製剤として、ジパルミトイルホスファチジルコリン:コレステロール(1:1)が含まれるが、当業者に自明のように、任意の数のリポソーム二重層組成物を本発明の組成物に使用することができる。これらリポソームは種々の公知の方法(米国特許No.4,235,871; RRC Liposome: A Practical Approach. IRL. Press, Oxford, 1990, 33-101頁、これらは参照として組み込まれるものとする)で作成することができる。
【0115】
RHAMM結合ペプチドを含有するリポソームは修正を有するものとすることができる。例えば、非ポリマー分子がリポソームの外部に結合したものを有するものとすることができる。その例としては、ハプテン、酵素、抗体又は抗体フラグメント、サイトキン、ホルモンおよび他の小たんぱく質、ポリペプチド又は非たんぱく質分子であってリポソームに所望の酵素的又は表面認識特性を与えるものが含まれる。特定の器官又は細胞型に対し標的としてリポソームを優先的に向ける表面分子としては、例えば、特定の抗原を有する細胞を標的としてリポソームを向けさせる抗体が含まれる。そのような分子を結合させるための技法は当業者に公知である(例えば、米国特許No.4,762,951参照。これは参照として組み込まれるものとする)。その他、あわせて、ポジティブ又はネガティブな正味荷電を有する任意の数の脂質を、リポソーム皮膜の表面荷電又は表面荷電密度を変更させるために使用できることは当業者にとって自明であろう。
【0116】
このリポソームは、脂質二重層の1成分として熱感応性又はpH感応性脂質を組み込み、脂質小胞皮膜の劣化を制御するようにしてもよい。
【0117】
本発明において、患者に対する投与量は、RHAMM/RHAMM結合リガンド錯体および発がん性細胞集団の部位を十分な特異性を以って効果的に画像化するのに適した投与量とし、それにより外科医がRHAMM/RHAMM結合ペプチド錯体の画像化により検出された腫瘍細胞集団を取除くための生検又は他の手法を実行できるようにする。この投与量は使用される特定のベクター(例えば、ペプチド又は核酸)および患者の症状、治療すべき患者の体重又は表面領域などにより決定される。更に、投与量のサイズは、特定の患者におけるプローブの投与に伴う悪い副作用の存在、性質および程度により決定される。
【0118】
投与について言うと、本発明の検出用プローブは、ポリペプチド又は核酸のLD-50並びに患者の質量および全体的健康を鑑みての種々の濃度でのポリペプチド又は核酸の副作用を考慮し決定された割合で投与される。投与は単一又は分割された投与量で、例えば一定の期間(例えば、2,3,4,5、6日間又は1〜3週間又はそれ以上)での規則的ベース(毎日)で投与される投与量でなされる。
【0119】
更なる態様において、ラベル付きプローブの約5乃至約2000 LD 50単位が、認められた臨床基準およびプラクティスを用いて患者に投与される。
【0120】
上述の開示は本発明を一般的に記載したものである。より完全な理解が以下の具体的実施例を参照することにより得られるであろう。これらの実施例は全く説明のためのものであり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。形態の変更および均等物の置換は状況により提示され好便となることも考えられる。ここでは特定の用語が使用されているが、これらは記載上の感覚によるもので制限を目的としたものではない。
【0121】
実施例:
以下の実施例は説明を目的としたものであり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0122】
実施例1−BLAST検索および配列アラインメント:
RHAMM (SEQ ID NO:19)のHA結合ドメイン(aa 718-750)に相当する照合配列を基本検索アラインメント検索ツール(BLAST)に使用し、配列相同性を示すたんぱく質のリストを編集した。
図1Bは分子画像化プローブの設計および最適化のフロー図である。HA結合ドメインはBLASTにおける照合配列として使用し、相同たんぱく質配列を決定した。ついで、相同配列についての推定結合パートナー(リガンド)を解明した。ペプチドのライブラリーはリガンド配列のトランケーションに基づいて合成し、表面プラズモン共鳴(SPR)結合検定を用いてスクリーンにかけ、高親和性リガンドを決定した。候補のペプチドリガンドを更に、種々のin vitro結合検定を用いて評価した。
【0123】
RHAMMと、MAPsの微小管結合ドメインと、キネシンとの一対比較の結果、RHAMMのHA結合ドメインに対し、適度の配列相同(Clustal X2[12]を使用して計算して約17-24%)が示された。しかし、MAPsおよびRHAMMは、チューブリン結合部位のアミノ酸配列に関して同様の物理化学的特性を分かち合っている。換言すれば、MAPsおよびRHAMMの双方は塩基性残基のストレッチ(stretch)を有し、これがチューブリンに結合するものと仮定される。更に、MAPsのチューブリン結合部位およびRHAMMのヒアルロナン結合部位の二次構造は同じ程度のらせん度を有し、双方ともベイシックジッパードメイン(basic zipper domain)として分類できる[13]。
【0124】
RHAMMは細胞質ゾルにおいて、細胞外表面および微小管中のHAと関連するのに共通の結合部位を使用すると報告されている[14]。微小管関連モータたんぱく質およびMAPsはチューブリンのCCTsへの直接結合を示すから、本発明者等は、RHAMMが、異なるチューブリン亜型のCCTsを表す合成ペプチドとの直接的相互作用を示すことができるという仮説をたてた。HAは、RHAMM上での負に帯電した基と、正に帯電した基と間での主なイオン相互作用を介してRHAMMと相互作用するから、負の帯電の類似した分布を有する分子は原則としてHA模倣体として役立つものとなる。例えば、チューブリンCCTs上のGluおよびAsp残基は、HA上のカルボキシレートを模倣するものとなる。従って、RHAMMのHA結合ドメインに対する合成CCTsの結合は、HA結合にとって重要であると思われる同じに荷電された側鎖を利用するものと思われる。
【0125】
実施例2−RHAMM に対するチューブリン由来ペプチドのスクリーニング:
物質:
全ての溶媒は更なる精製なしに使用し、VWR, Fisher Scientific, 又はSigma Aldrich社から購入した。フルオレニルメチロキシカルボニル(Fmoc)-Rink アミドMBHA(100-200メッシュ)樹脂、Fmocアミノ酸、Fmoc-保護アミノヘキサノン酸(Fmoc-Ahx)およびHBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール 1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート)カップリング試薬(ペプチド合成のためのもの)は、Peptides International社から購入した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N
'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDAC)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド・ナトリウム塩(sulfo-NHS)、フルオレセイン・イソチオシアナート(FITC)異性体Iおよびウシ胎仔血清(FBS)はSigma Aldrich社から購入した。NHS-BiotinはNova BioChem社から購入した。抗RHAMM(Santa Cruz Biotechnology, USA)、抗CD44(Pharmigen)およびIgG ab(Santa Cruz Biotechnology, USA)のような抗体は市販のものである。
【0126】
ペプチドの合成:
異なるチューブリン亜型のCTTおよびH12区域に相当する12のアミノ酸残基を有する17のペプチドを、Fmocプロトコルに従った固相ペプチド合成法を用いて合成させた。
【0127】
リンク(rink)アミドMBHA樹脂(0.1 mmol)上のペプチド鎖の伸長を、自動化法(APEX 396自動合成装置)及び/又は手動法を用いて行った。この場合、Fmoc脱保護およびアミノ酸カップリングサイクルを関与させた標準固相ペプチド合成が用いられ、この各サイクルはKaiserテスト[15、16]を用いてモニターした。この合成を通しての繰返しFmoc脱保護(15分および20分)は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液を用いて行われた。全てのアミノ酸カップリングは30分および90分の間隔で、0.05M以上の濃度のFmoc保護アミノ酸およびHBTU、DMF中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて行われた。各脱保護およびカップリング工程の後、樹脂をDMF(3x)およびジクロロメタン(DCM) (3x)を用いて繰返し洗浄した。Fmoc-Ahxは同じパラメータを用いてカップリングした。アミノ末端のアシル化はFmoc脱保護に続いてDMF中の10%無水酢酸を用いて行われた(15および10分)。フルオレセインカップリングは4時間をかけて、ペプチドのアミノ基をDMF中のFITC蛍光染料(4当量)およびDIPEA(2当量)と反応させることにより行われた。
【0128】
システイン含有ペプチドの完全な脱保護は、1.0-1.5時間に亘って、94% v/vトリフルオロ酢酸(TFA)、 1% v/vトリイソプロピルシラン (TIPS)、2.5% v/vH
2Oおよび2.5% v/v1,2-エタンジチオール(EDT)からなる溶液を用いて達成された。他の全ての完全な脱保護は、2-4時間に亘って、88% v/vTFA、5% v/v水、5% m/vフェノール、2 % v/v TIPSからなる溶液を用いて行われた。ろ液を集め、冷tert-ブチルメチルエーテルを用いて析出させ、ついで−5℃で10分間、3000rpmで遠心分離を介してペレット化させた。ついで、このペレットを蒸留-脱イオン水に溶解させ、凍結乾燥させ固相粉体を得た。
【0129】
たんぱく質の精製:
この研究で使用された全てのペプチドは逆相HPLCにより92%を超えるよう精製され、これはESI質量分析により特徴づけられた。
【0130】
ペプチドの精製はH
2O+0.1%TFA(溶媒A)およびCH
3CN+0.1%TFA(溶媒B)からなる勾配溶媒系を用い、分析用および分取用(preparative)HPLCにより線流速1.5 mL/分および20 mL/分でそれぞれ行われた。分析用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(4.6mm x 250μm, 5μm)を用いて行われ、分取用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(22.0mm x 250mm, 10μm)を用いて行われた。吸光度はWaters 2998 Photodiode Array検出器を用い、220nmおよび254nmの波長で検出された。精製の間、フラクションを集め、凍結乾燥させ、ESI-MS(Waters Micromass Quattro Micro
TMAPI)により分析した。
【0131】
組換えたんぱく質RHAMM-CT(カルボキシ末端に対してのみ相応する切頭RHAMMであって、HA結合ドメイン、アミノ酸-706-766, 配列:RDSYAQLLGH QNLKQKIKHV VKLKDENSQL KSEVSKLRSQ LVKRKQNELR LQGELDKALG I, M.W. 7.1 kDa, pl=10.1; SEQ ID NO:20を有するもの)を、組換えプラスミドpPAL7-RHAMMを担持するE. coli BL21(D3)菌株から単離した。細菌はアンピシリン(100μg/mL)および0.5%グルコースを含有するLB媒体中、37℃で一晩生育させ、中期対数増殖期まで成長させた。組換えRHAMM遺伝子発現は2mM IPTGを用い37℃で4時間に亘り誘起させ、細菌細胞は遠心分離(10,000 x g; 20分)により取得した。この細菌細胞は溶解緩衝液(0.2M 燐酸ナトリウム、0.2M酢酸カリウム、1%トリトンX-100および0.1%プロテアーゼインヒビターからなるもの、pH=7.0)中で再懸濁させ、超音波処理(60秒、10秒/パルス)氏、遠心分離(4℃、12,000 x g; 20分)した。得られた上澄液をきれいなチューブに移し、ろ過した(0.45μmフィルターを用いて)。eXactタグ付き組換えRHAMMの精製は、製造者のプロトコルに従ってProfinity eXact(Bio-Rad USA)アフィニティ樹脂を用いて行われた。この実験において、溶解物は、Profinity eXactアフィニティ樹脂(4mL樹脂、カラム15 x 1.5cm)を充填した重力カラムに詰め込み、洗浄用緩衝液(0.2M 燐酸ナトリウム、pH=7.0)を用いて平衡化させた。このカラムを洗浄用緩衝液で洗浄し、不純物を取除き、組換えRHAMMを溶出用緩衝液(0.2M 燐酸ナトリウム、0.1Mフッ化ナトリウムからなるもの、pH=7.0)を用いて溶出させた。ついで、0.2M 燐酸ナトリウムおよび0.2M酢酸カリウム(pH=7.0)からなる緩衝液(pH=7.0)中にてMilliporeフィルター(Millipore, USA, カットオフ 3kDa)を用いて、たんぱく質を透析し、濃縮させた。この単離されたたんぱく質は1D SDS-PAGEに基づいて実証された。RHAMMの識別は、Westernブロット分析による抗RHAMM抗体を用いて確認された。
【0132】
SPR(表面プラズモン共鳴)スクリーイング検定:
RHAMMに対する異なるチューブリン由来ペプチドの選択およびランク付けのためProteON XPR36システムを使用した。RHAMMの不動態化のため、ProteON GLCセンサーチップ表面を、100 mM EDACおよび24mM sulfo-NHSを使用したアミンカップリングにより活性化させた。RHAMM(重炭酸ナトリウム緩衝液中30μg/mL, pH=9.7)を30μL/分の流量で注入させた。緩衝液サンプルは、参照として使用するための異なるセンサープレート上に注入した。ついで、エタノールアミンHCl(1M, pH=8.5)を、残存する表面の基を脱活性化するため注入した。ペプチド(PBS-T中10μM, 2% DMSO)はRHAMM官能化表面に、50μL/分で3分間注入した。続いて、10分間の解離(すなわち、PBS-T緩衝液の注入)を行った。これらの表面は、次のペプチドの注入の前に、1M NaClの30μLの2回の注入を用いて再生させた。全ての実験において、参照サブトラクションは、参照プレート(RHAMM無し)およびRHAMM官能化プレートから得られたデータを使用して行われた。
【0133】
フルオレセインラベル付きペプチドを使用しての拮抗的ELISA実験:
RHAMM との結合部位について、HAと競争するFITCラベル付きチューブリン由来ペプチドの能力をテストするためELISAを行った。組換えRHAMM(100μL, 0.05M PBS中10μg/mL, pH=9)を96ウェルELISAプレート(1μg/ウェルの最終濃度)上で不動態化し、4℃で一晩培養して1μg/ウェルのたんぱく質の最終量を得た。これらプレートを、(0.05%)PBS-Tween-20緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(5% 200μL/ウェル, PBS-Tween-20(1ウェル当り))で洗浄し、その後、室温で1時間培養した。上述のような3回の洗浄の後、FITCラベル付きチューブリン由来ペプチド(1μg/mLの最終濃度)およびHA(100μL/ウェル, M.W. 220 kDa, PBS中10μg/mL, HAについての連続的希釈=1:1, 1:2, 1:4, 1:8, 1:16)をプレートに添加し、一晩4℃で培養した。これらプレートを上述のようにして洗浄し、吸光度を485/535nmで測定した。
【0134】
フルオレセインラベル付きRHAMMを使用しての拮抗的ELISA実験:
RHAMMについて、染料(Alexa Fluor 647)共役HAと競争するラベル無しチューブリン由来ペプチドの能力をテストするためELISAを行った。RHAMM(100μL, 0.05M PBS中10μg/mL, pH=9)を96ウェルELISAプレート(1μg/ウェルの最終量を達成するため)上で不動態化し、4℃で一晩培養した。これらプレートを、(0.05%)PBS-Tween-20緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(200μL/ウェル, PBS中5% Tween-20)で、1時間室温で培養した。上述のような3回の(0.05%)PBS-Tween-20緩衝液での洗浄の後、チューブリン由来ペプチド(10μg/mL)およびHA共役Alexa Fluor 647(100μL/ウェル, M.W. 220 kDa, PBS中10μg/mLをプレートに添加し、一晩4℃で培養した。ネガティブ対照プレートは染料共役HAを受けることがなく、全ての実験は3通り行った。これらプレートを上述のようにして洗浄し、蛍光度を650nmで測定した。
【0135】
SPR(表面プラズモン共鳴)結合検定:
ペプチドスクリーニングの後、GWC SPRimager
TMIIシステムを使用し、結合速度定数(binding kinetic constants)を決定した。ミリQ水(milliQ water)中1nM濃度のチオール含有ペプチドを3時間に亘ってマレイミド官能化金メッキチップ上で不動態化した。過剰のペプチドをミリQ水で洗浄することにより除去した。結合の研究のため、RHAMMの一連の濃度のもの(500nM, 750nM, 1000nM)を不動態化ペプチド上に注入した。15分の解離段階の後、センサーチップ表面を次のペプチドサンプル注入のため再生させた。これは100mL/分での再生用緩衝液(HBS-EP中2M NaCl、pH=7.4)の2回の10分パルス注入で処理することにより行われる。この再生工程の後、ベースラインは当初の値に戻され、全ての結合された分析対象物の除去が確認される。データが分析され、対応する解離定数(K
D)をラングミュア結合モデルへの非線形回帰フィッティングを介して得た[17]。全ての実験において、参照サブトラクションは、参照プレート(ペプチド無し)およびペプチド官能化プレートから得られたデータを使用して行われた。
【0136】
血清安定性の検討:
血清中のチューブリンCTTsの安定性が11時間までについて評価された。各ペプチドを予熱(37℃、pH=7.3±0.1)ウシ胎仔血清(FBS)と混合させた(3mLの最終サンプル量および15μMのペプチド濃度)。最初の時間を記録し、各30分の時点で、40μLアリコートを反応混合物から取り出し、C18逆相(C18 Se−Pak)カートリッジを通過させた。ペプチドを、0.1%TFAと共に3mLのエタノール(70% v/v)を用いてカートリッジから溶出させ、凍結乾燥させ、分析用RP-HPLC(Grace Vydac Protein/Peptide RP-C18カラム 4.6 x 250mm, 5μm)を用いて分析した。このシステムの使用された移動相は、水中の0.1%TFA(溶離剤A)およびCH
3CN中の0.1% TFA(溶離剤B)であった。20分に亘っての1.5mL/分の流量での溶離剤Bの10-95%の直線勾配を各ペプチドサンプルについて使用した。無傷ペプチドのパーセントを、220nmおよび254nmにセットさせたWaters 2998フォトダイオードアレイ検出器を用いて検出し、ESI-MSを用いて識別した。ペプチドの半減期はGraphPad Prismバージョン5.01を用いて決定された。
【0137】
細胞取込みの研究:
RHAMM-CTに対し高い親和性を示す候補のペプチドを蛍光染料(FITC)と共役させ、ガン細胞(MDA-MB-231)を発現するRHAMMに対する特異性を細胞蛍光画像化検定を用いて評価した。
【0138】
MDA-MB-231細胞をDMEM媒体および10%FBS中で90%密集度まで培養した。ついで、これらの細胞を2x24-ウェル組織培養域(20000/ウェルの密集度)内のガラスカバースリップ(12 x 12mm, 50μg/mLのフィブロネクチンでコーティングされた)上に播種した。播種後1日目に、DMEM+0.1%FCSを用い37℃で一晩、飢餓工程を実行した。ついで、培養基を吸引し、DMEM+0.1%FCSを用い37℃で一晩、濯いだ。ついで細胞をDMEM中3%BSA +0.1%FCSを用い、室温で1時間ブロッキングした。このブロッキングの実験において、抗体(希釈1:100, マウスIgG ab, ヤギ, 抗RHAMM mAb, 又はマウス抗CD44 mAb、DMEM+0.1%FCS中)を添加し37℃で1時間培養した。抗マウスIgGでブロックされた細胞はポジティブ対照として利用される。なぜならば、この抗体はRHAMMに対し結合親和性を示さないからである。
【0139】
ついで、得られた培養基を吸引し、細胞をDMEM+0.1%FCSを用い室温で洗浄した。フルオレセイン共役ペプチド(50μg/mL)を添加し、37℃で30分間培養した。ついで、細胞をDMEM+0.1%FCSで洗浄し、更にPBS (pH=7.6)で洗浄した。製造者のプロトコルに従いDAPI(Electron microscopy science社、USA)を含有するFluoro-gel 11を用いて装着した。ついで、オリンパス社のFluoView FV1000連結IX81電動倒立顕微鏡システムを用いて細胞を撮影した。Tiff画像はImageJ(v1.42q)ソフトウェアを用いて分析した。各画像を8−ビットフォーマットに変換し、20および255の閾値に当てた。細胞体(n=15)に相当する関心の領域(ROI)を選択した。次に、各ROIの平均蛍光度を8−ビット取得データを用いて計算した。データはワンウェイANOVAのためのPrism(GraphPad Software, サンディエゴ、USA)統計プログラムを用いて分析した。
【0140】
結果:
RHAMMに対するチューブリン由来ペプチドのスクリーニング:
図2Aは非変性チューブリン由来ペプチド(
図2Aa)の全体的構造、N-アセチルシステインに共役したペプチド(
図2Ab) の全体的構造およびフルオレセインイソチオシアナート(
図2Ac)の全体的構造を示している。
図2Bはこの研究のため作成された17の全てのペプチドを記載した表である。17の合成ペプチドの配列は、異なるチューブリン亜型のCTTs並びに、α1a-(SEQ ID NOs:6, 7, 8)およびβIIIa-CTT(SEQ ID NOs:13, 14)を直接隣接させた配列を包含している。6炭素リンカーを使用して、ペプチドと、追加のペプチド変性体との間の距離を増大させた。
図2Bは更に、誘導体化ペプチドも含めている。誘導体化ペプチドは、フルオレセイン(
図2Bのペプチド1c, 3c, 9c, 11c, 12c, 14c; SEQ ID NOs:25, 27, 29, 31, 33, 35)又はN-アセチルシステイン変性N-末端(
図2Bのペプチド1b, 3b, 9b, 11b, 12b, 14b; SEQ ID NOs:24, 26, 28, 30, 32, 34)を用いて作成された。
【0141】
全てのペプチドはESI+質量分析法により特徴づけられ、逆相HPLCにより純度について分析された。
図2Bは、ESI−MSおよびRP HPLCを使用して、17の合成されたチューブリン由来ペプチドを分析した結果を示す表である。計算され、観察されたm/z値は、ESIにより決定された顕著な観察信号に基づくものである。純度は220nmで検出されたRP HPLCにより決定された。
【0142】
SPR(表面プラズモン共鳴)ベースのスクリーニング法は、RHAMMのHA結合ドメインを認識することができる潜在的ペプチド候補の迅速、かつ、正確な決定を下すために利用された。17のチューブリン由来ペプチドがスクリーニングされ、得られたセンサーグラムを使用してRHAMMに対し親和性を示すペプチドを導出させた。スクリーニングの前に、リガンド不動態化(この場合、RHAMM)のためのセンサープレートに対する最適条件を決定した。不動態化緩衝液のための最適pHは、たんぱく質脱活性化を最小にしながら、センサープレートに対するたんぱく質の静電気引力と釣り合うものとなる。この研究において、不動態化のための最適pHは、最高リガンド密度を生じさせるpHであるとして決定された。種々のpHの重炭酸ナトリウム緩衝液を用い、30μL/分の流量で、かつ、EDACおよびsulfo-NHSの濃度を一定にして、RHAMMをセンサープレートに結合させた。各pH不動態化条件についてのRHAMMリガンド密度は、6個の測定値の平均SPR応答およびpH=9.7で生じた最大リガンド不動態化から決定された(
図3A)。リガンド不動態化は、一部、等電点でのRHAMM上の正味荷電の損失により、pH=10.1のものよりも若干低かった。
【0143】
SPRセンサーチップ上のRHAMMの不動態化の後、チューブリン由来ペプチドの一連の注入が行われた。ペプチドのRHAMMとの会合は3分間おこなわれ、分析対象物無しの緩衝液内での解離を10分間おこなった。
図3Bは10μMの濃度で得られた実験的センサグラム(sensorgram)を示している。各ペプチド注入について、対照センサーグラム(不動態化RHAMMの無いものおよび緩衝液注入)はテストセンサグラムから差し引き、如何なる残存する結合されたペプチドをも除去するため、次のペプチド注入の前に、チップ表面を再生させた。17のペプチドのスクリーニングにより、RHAMMに対し向上した親和性を実証した6つのペプチドが得られた。すなわち、1a(SEQ ID NO:1), 3a(SEQ ID NO:3), 9a(SEQ ID NO:9), 11a(SEQ ID NO:11), 12a(SEQ ID NO:12)および14a(SEQ ID NO:14)である。
【0144】
RHAMMに対する不動態化チューブリン由来ペプチドの親和性:
先のセクションで導出された6つのペプチドのRHAMMに対する結合を定量化した。トランケーション(truncation, 切頭)の研究により、CTT(すなわち、S−ペプチドの最後の12のカルボキシ末端残基)は、MAP指示微小管アセンブリーを誘起させるのに十分であることが示された[18]。従って、リンカー部分によりスペースが設けられたラベルをCTTのアミノ末端基上に配置することが、ペプチド/たんぱく質相互作用に影響を及ぼすということはない。ペプチドはセンサープレート上で不動態化され、RHAMMは誘導体化表面上に異なった濃度および一定の流量(100μL/分)で流された。
図4Aは得られたセンサーグラムを示している。再び、実行緩衝液と、サンプル溶液との間の屈折率差を考慮するため、参照センサーグラム(不動態化ペプチド無しのセンサーグラムから得たデータ)から各曲線を差し引くことにより各センサーグラムを修正した。
【0145】
実験のセンサーグラムに、1:1ラングミュア結合モデルについての動態モデルから生じる曲線を当てはめた。異なるRHAMM濃度から得られた6つのペプチドのK
Dについての平均値が、各標準偏差と共に
図4Bの表に示されている。ポジティブ対照として、抗RHAMM mAbの動態プロフィールも測定され、その結果はRHAMMに対する5.53nM親和性を示した。ペプチドSEQ ID NO:1(K
D=24nM)、SEQ ID NO:9(K
D=32nM)およびSEQ ID NO:14(K
D=30nM)は、低いナノモル範囲の解離定数を示し、RHAMMに対する高い親和性を示唆した。
【0146】
6つのペプチドの各々の相対結合親和度もELISAを用いて測定した。この検定において、ペプチドにフルオレセインでラベル付けし、この染料はアミノヘキサノン酸リンカーの付加によりペプチドから離された。
図3Cに示すように、ELISAの結果は更に、ペプチドSEQ ID NOs:1, 9および14が全ての濃度において最も高い相対結合親和性を示したことを示唆するものであった。ペプチドに対する蛍光色素変性がリガンド-RHAMM相互作用又は非特異性結合に対し効果を奏するということができる。従って、SPRおよびELISAの結果は正確にマッチしないかもしれない。
【0147】
チューブリン由来ペプチドのHAによる競合的置換:
RHAMMのHA結合ドメインに対するペプチドの選択性を判定するため、競合的ELISAをおこなった。この検定において、フルオレセインラベル付きペプチドを使用し、RHAMMに対するペプチドの結合をブロックするラベル無しHAの効能を評価した。フルオレセインラベル付きペプチドSEQ ID NOs:1, 3, 9, 11, 12および14(
図2Bのペプチド1c, 3c, 9c, 11c, 12c, 14c(SEQ ID NOs:25, 27, 29, 31, 33, 35)に対応する)を、不動態化RHAMMを含有するELISAプレートに添加し、ついで、種々の濃度のHA(RHAMMの天然のリガンド)を添加した。HAがフルオレセインラベル付きペプチドを置換したとき(これらが同じ結合サイトについて競合したとき)、観察された蛍光度に減少が認められた。
図5AはHAによる、RHAMMに対するペプチド結合の競合的置換を示している。競合HA濃度が増加したとき、蛍光度の濃度依存的減少が6つのリガンド全てについて観察された。ここで、最も効果的な相対的置換はフルオレセインラベル付きペプチドSEQ ID NOs:1, 12および14(SEQ ID NOs:25, 33および35)のときに生じた。ただし、SEQ ID NO:9(SEQ ID NO:29)も置換された。
【0148】
ペプチドリガンドを更に評定するため、別の競合実験をおこなった。なぜならば、フルオレセインラベルの存在がこれらの低分子量ペプチドの物理的特性並びに結果的結合能に影響を及ぼすからである。ELISAを使用し、ラベル無しペプチドSEQ ID NOs:1, 3, 9, 11, 12および14(
図2Bのペプチド1a, 3a, 9a, 11a, 12a, 14aに対応する)を用いて染料ラベル付きHAと競合させた。この検定は、染料ラベルとたんぱく質との間の相互作用又はペプチドリガンドへの粗大染料の付加により生じる親和性の変化から生起される混同する結果を排除するものである。
図5Bに示すように、チューブリンから得られる無蛍光ペプチドによるラベル付きHAの置換は蛍光信号の減少により容易に観察される。ラベル無しRHAMMリガンド又はフルオレセインラベル付きリガンドSEQ ID NO:14およびラベル無しRHAMMリガンド又はフルオレセインラベル付きリガンドSEQ ID NO:9は結合について一貫してHAと特に競合し得るものと思われる。従って、ペプチドのアミノ末端基での更なる変性がRHAMMに対する結合について殆んど効果がないとする考えを強化するものである。しかし、配列SEQ ID NO:1を含有するフルオレセインラベル付きα1a-CTT(ペプチド1c; SEQ ID NO:25)はHAとの競合において、SEQ ID NO:1の非変性ペプチドと比較して、より優れていると思われる。
【0149】
RHAMM対CD44についての特異性:
先の結果は、これらのペプチドがRHAMMのHA結合ドメインを標的とし得ることを示している。しかし、これらのHA模倣体がRHAMMを特異的に標的とすることを示すためには、CD44のような他のヒアラデリン(hyaladerins)に対するペプチドの親和性をテストする必要がある。この目的のため、固相ペプチド結合検定(ELISA)が
図5cに示すようにCD44官能化表面を用いておこなわれた。上述のように、SEQ ID NOs:1, 3, 9, 11, 12および14(SEQ ID NOs:25, 27, 29, 31, 33, 35)の各FITC共役ペプチドを各ヒアラデリン(RHAMM又はCD44)に対し培養し、蛍光測定を行い、その結果を広範な洗浄プロトコルに続いて記録した。予想通り、RHAMMおよびフルオレセインペプチドから生じた蛍光測定は最高の信号を示し、そして、HAの添加に続いて蛍光度の著しい下落が示された。反対に、蛍光により示されるように、CD44およびフルオレセイン-ペプチド相互作用はかなり低くなり、HAの添加の後の蛍光測定の予想された減少を示さなくなる。すなわち、ペプチドの結合はRHAMMとの特異的相互作用により生じるものであり、他方、これらはCD44との限定的相互作用を示すものとなる。
【0150】
血清の安定性:
標的体又は治療薬としてのこれらの能力をテストするため、生物学的環境でのRHAMM結合ペプチドの安定性を検査する必要がある。ペプチドSEQ ID NOs:1, 3, 9, 11, 12および14の各々のin vitro血清安定性を11時間に亘って評価した。残存する無傷のペプチドの定量化をRP-HPLCを用いて導出した。この検定において、ペプチドは37℃でウシ胎仔血清にさらし、アリコートを30分間隔で分取した。各時点において、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて血清蛋白質を析出させることにより、反応を停止させた。遠心分離によりペプチドを含有する粗製溶液を得た。この溶液をC18逆相カラム(C18 Sep−Pak)に通過させ低分子量の不純物を除去した。無傷のペプチドをカラムから溶出させ、凍結乾燥させ、分析した。
図9に示すように、無変性のRHAMM結合ペプチドは、ほぼ2-4時間の妥当な半減期を有する血清安定性を示した。
【0151】
細胞蛍光検定(MDA−MB−231摂取の研究):
本発明のチューブリン由来ペプチドのRHAMM発現細胞に対する特異性並びに標的体としてのそれらの可能性を判定するため、抗RHAMM抗体で処理したMDA−MB−231細胞を用いて細胞蛍光検定をおこなった。MDA−MB−231胸部腫瘍細胞ラインはRHAMMレセプターの高い発現を示すものであり、従って、この細胞ラインは合成チューブリンペプチドの標的性および特異性を評価する上での理想的な選択であった。MDA−MB−231細胞を、フルオレセイン共役ペプチドSEQ ID NOs:1, 9および14(SEQ ID NOs: 25, 29および35)を用いて培養し、このプローブの細胞摂取を測定した。テストしたペプチドのすべてについての
図6A(SEQ ID NO:35について)および
図7(SEQ ID NOs:25および29について)に示すように、蛍光信号の蓄積がブロッキング処理を受けていない細胞並びに非特異性抗体(IgG抗体)で培養された細胞においても観察された。これはフルオレセインラベル付きプローブの高い摂取を示唆するものである。興味深いことに、抗CD44でブロックされた細胞は信号の減少を示さなかった。しかし、抗RHAMM mAbでブロックされた細胞は細胞蛍光の可なりの減少を示し、それによりRHAMMに対するペプチドSEQ ID NOs:1, 9および14の特異性が確認された(p<0.001)。
図6Bに示すように、抗RHAMM mAbでブロックされた細胞は細胞蛍光に関して約65%ないし約85%の減少を示した(フルオレセインラベル付きSEQ ID NOs:1, 9および14は細胞蛍光に関して約85%、約76%および約65%の減少をそれぞれ示した)。
【0152】
検討:
RHAMMは種々のガンにおいて過剰発現するガン遺伝子である。更に、RHAMM発現ガン細胞内でのHA、RHAMMの細胞外リガンドの蓄積の増大は、良くない臨床結果についての予後因子である。従って、結合についてHAと競合し得るものであって、RHAMMを標的にする低分子量リガンドは診断並びに治療目的において有用であると言える。この研究において、本発明者等は、RHAMMのHA結合ドメインを標的にし得るリガンドを識別することを探し求めた。HA結合ドメインを有するRHAMMのカルボキシ末端が細胞内の微小管網(ネットワーク)での局在性を媒介するから、データベース調査並びにRHAMMと、公知のチューブリン関連たんぱく質(例えば、MAPs)の微小管結合ドメインとの間の対方式の比較をおこなうことが妥当であると本発明者等は考えた。更に、これらのたんぱく質がチューブリンのCTTsへの直接的結合を示すため、本発明者等は、RHAMMが、異なるチューブリン亜型のCTTsを表す合成ペプチドと直接的相互作用を示すかもしれないと推論した。MAPsのチューブリン結合ドメインと、RHAMMのHA結合ドメインとの間の適度の相同性のため、チューブリンのどのペプチドフラグメントがRHAMMと相互作用するかについて判定する更なる調査がおこなわれた。この研究において、RHAMMと、新規なリガンドとの間の特異的相互作用が導出された。
【0153】
異なるチューブリン亜型のカルボキシ末端ドメイン(すなわち、CTT領域)から由来するペプチドフラグメント並びに上記ドメインに直接隣接する配列が、固相ペプチド合成を用いて合成された。得られたペプチドをRHAMMに対しスクリーニングにかけ、高親和性リガンドを判定した。この目的のため、SPRスクリーニング法を用いた。この場合、RHAMMたんぱく質をSPRセンサープレートに固定し、ペプチドを流して高親和性および特異性を有するリガンドを見出した。この方法を利用した理由は、単一のRHAMM充填センサープレートを使用して高いスクリーニングスループットが可能となること、並びにSPR結合RHAMMが、細胞レセプターとして自然な皮膜結合状態を反映するものとなることからである。このスクリーニングにより6個の高親和性リガンドが得られた。これらはRHAMMのHA結合領域についてHAと競合できるものであり、これはELISAにより決定される。これらのペプチドはCD44(公知のヒアラデリン(hyaladerin)であって、これもHAと結合する)と比較して、より高い対RHAMM特異性を示すことが更なる評価により判定された。
【0154】
これらペプチドは生物学的環境(ウシ血清)において適度の安定性(約110-250分の半減期)を示した。これはin vitro, ex vivo又はin vivo画像化を容易にするのに十分なものである。RHAMMについてより高い親和性を示す3つのHAペプチド模倣体(SEQ ID NOs:1, 9及び14)の特異性を、RHAMM発現ガン細胞中のリガンドの相対的摂取を定量化することにより分析した。この目的のため、SEQ ID NOs:1, 9及び14のペプチドをフルオレセイン(SEQ ID NOs: 25, 29および35)と共役させ、MDA−MB−231細胞(RHAMMを過剰発現する細胞ライン)を用いて培養した。細胞蛍光が3つの全てのペプチドについて観察され、摂取は抗CD44又は非特異的抗体(すなわち、IgG抗体)の添加によって減少することはなかった。しかし、抗RHAMM抗体の添加によりプローブ摂取の劇的な減少が観察され、プローブ摂取の特異的ブロッキングが示唆された。このように、適度の安定性を合わせ持つプローブの高い特異性により、RHAMM発現ガン細胞のための診断薬としての更なる開発が可能となる。
【0155】
この明細書に示された上記結果は、チューブリンの可変性カルボキシ末端部分でのRHAMMのHA結合ドメインについての共通サイトの存在を示唆している。繰返しのヘキサペプチドモチーフが殆んどの候補ペプチドで示された。この酸性カルボキシ末端セグメントを分担するペプチドはRHAMMと相互作用した。このモチーフ、つまりEEXEEZ(ここで、XはA又はG、ZはY又はE; SEQ ID NO:18)は、
図8Bに示すように、合成αIa(SEQ ID NO:1)、αIIIa(SEQ ID NO:3)、βIa(SEQ ID NO:9)およびβIV-CTT(SEQ ID NO:11)に存在している。この結果は、先の報告、つまり、短い配列EEGEE (SEQ ID NO:21)(Paschal等、1989)はチューブリンおよびMAP結合(RHAMMに対し配列類似性を分かち合うたんぱく質の一族)に関与するであろうという先の報告と合致するものである。
【0156】
HAおよびRHAMM相互作用における酸性官能基の役割にも拘わらず、これらの結果は以下のことも示唆している。つまり、CTT領域内のこれらの酸性残基のランダムな発生又は増大はRHAMM-チューブリン相互作用に直接影響を及ぼすとは思われないということを示唆している。DEXEEZ(ペプチドSEQ ID NOs:2および4に見られる)(SEQ ID NO:22)およびEEXEDZ(SEQ ID NO:10に見られる)(SEQ ID NO:23)モチーフを含有するペプチドが最初のスクリーニングに失敗したことは驚くべきことであり、これは1番目および5番目の配列内のAsp残基が、このモチーフ内の同様の酸性Glu残基を置換できないことを示唆するものである。これは更に、CTTのRHAMMとの相互作用が静電力および配座効果の双方により媒介されることを示唆している。
【0157】
意義:
この研究は少なくとも6個の新規なリガンド、つまりRHAMMのHA結合ドメインと相互作用するリガンドの発見を開示するものである。これら6個のペプチドはRHAMMに対し強い親和性を示し、内因性HAにより置換されることができる。このことはHA結合ドメインに対する特異的標的性を実証するものである。更に、これらのリガンドのRHAMMとの結合におけるより大きな性向(他のヒアラデリンCD44との比較において)(無細胞ベース(すなわち、ELISA)および細胞ベース(すなわち、細胞蛍光)の検定の双方において)は、標的用実体(targeting entity)としてのそれらの可能性を実証するものである。RHAMMの過剰発現およびその結果もたらされるHAとの相互作用はガンの病理に関与するものである。従って、これらのペプチドはRHAMM-HA相互作用をブロックできる、従ってRHAMMの形質転換能を制限する拮抗薬として役立つものである。
【0158】
実施例3−RHAMM に対するアラニン置換RHAMM結合ペプチドの親和性:
物質:
溶媒は更なる精製なしに使用し、VWR, Fisher Scientific, 又はSigma Aldrich社から購入した。フルオレニルメチロキシカルボニル(Fmoc)-Rink アミドMBHA(100-200メッシュ)樹脂、Fmocアミノ酸、Fmoc-保護アミノヘキサノン酸(Fmoc-Ahx)およびHBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール 1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート)カップリング試薬(ペプチド合成のためのもの)は、Peptides International社から購入した。
【0159】
ペプチドの合成:
リンク(rink)アミドMBHA樹脂(0.1 mmol)上のペプチド鎖の伸長を、自動化法(APEX 396自動合成装置)及び/又は手動法を用いて行った。この場合、Fmoc脱保護およびアミノ酸カップリングサイクルを関与させた標準固相ペプチド合成が用いられた。この合成を通しての繰返しFmoc脱保護(15分および20分)は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液を用いて行われた。全てのアミノ酸カップリングは30分および90分の間隔で、0.05M以上の濃度のFmoc保護アミノ酸およびHBTU、DMF中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて行われた。各脱保護およびカップリング工程の後、樹脂をDMF(3x)およびジクロロメタン(DCM) (3x)を用いて繰返し洗浄した。Fmoc-Ahxは同じパラメータを用いてカップリングした。フルオレセインカップリングは4時間をかけて、ペプチドのアミノ基をDMF中のFITC蛍光染料(4当量)およびDIPEA(2当量)と反応させることにより行われた。その後の樹脂は、88%のTFAおよび12%のスカベンジャー(5%の水、5%のトリイソプロピルシラン、2%のフェノールからなる)からなる劈開カクテルで処理した。得られた樹脂を700 rpmで3時間攪拌し、RP−HPLCを介して精製した。
【0160】
ELISA結合検定:
RHAMMに対する結合に重要な残基を決定するため、フルオレセインラベル付きペプチドSEQ ID NO:1(SEQ ID NO:25)又はフルオレセインラベル付きペプチドSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:35)内のアラニン置換の作用をテストする酵素連結免疫吸着検定(ELISA)をおこなった。組換えRHAMM(100μL, 0.05M PBS中10μg/mL, pH=9)を96ウェルプレート(1μg/ウェルの最終濃度)に添加し、4℃で一晩培養した。これらプレートを、(0.05%)PBS-Tween-20緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄し、BSAブロッキング溶液を用い、室温で1時間培養した。フルオレセインラベル付きペプチド(SEQ ID NO:25又はSEQ ID NO:35)(1μg/mLの最終濃度)を添加し、(0.05%)PBS-Tween-20緩衝液(200μL/ウェル)で洗浄し、吸光度を485/535nmで測定した。
【0161】
拮抗的ELISA:
拮抗的ELISAを用い、アラニン置換フルオレセインラベル付きSEQ ID NO:1(SEQ ID NO:25)又はフルオレセインラベル付きSEQ ID NO:14(SEQ ID NO:35)の能力がHAを置換し、RHAMMについて拮抗する能力を測定した。たんぱく質の不動態化および上述のような3回の洗浄の後、フルオレセインラベル付きチューブリン由来ペプチド(1μg/mLの最終濃度)およびHA(100μL/ウェル, M.W. 220 kDa, PBS中10μg/mL、HA=1mg/mL, 5mg/mLおよび10mg/mL)をプレートに添加し、4℃で一晩培養した。洗浄プロトコルの後、吸光度を485/535nmで測定した。
【0162】
結果:
図10Aは、12のアラニン置換(アラニンスキャン)フルオレセイン共役ペプチドSEQ ID NO:1(SEQ ID NO: 25)のRHAMMに対する親和性を示している。このデータは、SEQ ID NO: 1の残基2, 4, 7-10および12がRHAMMに対する正しい結合にとって重要であることを示している。
図10Bは、SEQ ID NO:1(SEQ ID NO: 25)の12のアラニン置換フルオレセインラベル付きペプチドの、HAによる拮抗的置換(不動態化RHAMM-CTに対する)を示している。データは、位置2, 4, 7-10および12でのSEQ ID NO:1のアラニン置換が、HAと競合するペプチドの能力を消滅させることを示している。ネガティブな対照(不動態化RHAMMのないもの)は測定値のそれぞれから差し引かれている。又、全てのデータは2つの独立した実験における3つの測定値の平均である。
【0163】
図17Aは、11のアラニン置換フルオレセイン共役ペプチドSEQ ID NO:14(SEQ ID NO: 35)の、RHAMMのHA結合領域に対する親和性を示している。このデータは、SEQ ID NO: 14の残基2, 3, 5, 6, 9および10がRHAMMに対する正しい結合にとって重要であることを示している。
図17Bは、11のアラニン置換フルオレセインラベル付きSEQ ID NO:14(SEQ ID NO: 35)の、HAによる拮抗的置換(不動態化RHAMM-CTに対する)を示している。データは、位置2, 3, 5, 6, 9および10でのSEQ ID NO:14のアラニン置換が、HAと競合するペプチドの能力を消滅させることを示している。ネガティブな対照(不動態化RHAMMのないもの)は測定値のそれぞれから差し引かれている。又、全てのデータは2つの独立した実験における3つの測定値の平均である。
【0164】
実施例4−ヒトの上皮性卵巣がん細胞:
物質:
緩衝液および媒体は、Invitrogen社, Sigma社およびVWR社から購入した。AlamarBlue検定キットはInvitrogen社から購入した。ジメチルスルフォキシド(DMSO)はAldrich社から購入した。上皮性卵巣がん(EOC)細胞は、患者の同意を得て、London Regional Cancer Centerから得た。
【0165】
増殖検定:
1つのRHAMM結合ペプチド(SEQ ID NO:1)の能力、つまり、患者の上皮性卵巣がんの腫瘍の増殖を制限する能力並びに他のRHAMM結合ペプチド(SEQ ID NO:3)の能力、つまり、腹水由来のヒトのEOC細胞の生存力を減少させる能力について検査した。この検定において、上皮性卵巣がん細胞(患者の腹水から得たもの)を96ウェルプレート中で5000細胞/ウェルの密度で培養させ、37℃、5%CO
2で24時間生育させた。ペプチド(1 uMおよび10uM)を1日目に細胞に添加し、増殖を6日間測定した。1/10
th量のAlamar Blue試薬を毎日、6日間培養基中の細胞に直接添加した。蛍光を570/590nmで読み取った。データは2つの実験の平均から採ったものである。DMSO(ジメチルスルフォキシド)のみで処置した細胞および“細胞なし”対照サンプルをこの実験に含めた。
【0166】
EOC細胞摂取の研究:
EOC細胞をDMEM媒体+10%FBS中で90%の密集度まで培養した。ついで、これらの細胞を2x24ウェル組織培養プレートに接種させた(20,000細胞/ウェルの密集度)。次に、3%BSA(DMEM中)+0.1%FCSを用いて室温で1時間、細胞のブロッキングをおこなった。このブロッキング実験において、抗体(希釈1:100, 抗IgG, ヤギ抗RHAMM mAb, 又はマウス抗CD44 mAb(DMEM+0.1%FCS媒体中))を添加し37℃で1時間培養した。ついで、得られた培養基を吸引し、細胞をDMEM+0.1%FCSを用い室温で洗浄した。フルオレセイン共役ペプチド(SEQ ID NO:25; 50μg/mL)を添加し、37℃で30分間培養した。ついで、細胞をDMEM+0.1%FCSで洗浄し、更にPBS (pH=7.6)で洗浄した。製造者のプロトコルに従いDAPI(Electron microscopy science社、USA)を含有するFluoro-gel 11を用いて装着した。ついで、オリンパス社のFluoView FV1000連結IX81電動倒立顕微鏡システムを用いて細胞を撮影した。Tiff画像はImageJ(v1.42q)ソフトウェアを用いて分析した。各画像を8−ビットフォーマットに変換し、20および255の閾値に当てた。関心の領域(ROI)を選択し、平均細胞蛍光度を導出した。
【0167】
ヒトの上皮性卵巣がん細胞の増殖:
図11はヒトの上皮性卵巣がん(EOC)細胞におけるペプチドSEQ ID NO:1の増殖検定を示している。EOC細胞は上皮性卵巣ガン患者の腹水から得たサンプルである。AlamarBlue検定を用いて増殖レベルを測定した。SEQ ID NO:1のペプチドを1日目に添加し、時間経過での作用を測定した。データは4つの患者OC細胞サンプル中の3つにおける増殖の抑制を示したものである。
【0168】
図13は卵巣腫瘍細胞におけるフルオレセイン共役ペプチドSEQ ID NO:1(SEQ ID NO: 25)の取込みを蛍光顕微鏡を用いて可視化したものを示している。予想した通り、EOC細胞を抗RHAMMで培養したときフルオレセインラベル付きSEQ ID NO:1(SEQ ID NO: 25)の摂取が減少し、細胞を抗IgG又は抗CD44で処理したときは、このプローブの摂取に影響を及ぼすことはなかった。
【0169】
図12はRHAMM結合ペプチドによる腹水由来ヒトEOC細胞の生存率減少を示すグラフである(p<0.05)。患者のEOCサンプルからの初代細胞を24ウェル培養皿に接種し、24時間後にRHAMM結合ペプチドSEQ ID NO:3(7および0.7uM濃度)又はDMSOベヒクル対照を用いて処置を開始した。再投与を6日間毎日行い、細胞生存率を蛍光光度法により、AlamarBlue
TM試薬を用いて評定した(蛍光単位、FUで測定した)。
【0170】
実施例5−PC3mLN4ヒトの前立腺がんライン:
物質および方法:
細胞摂取の研究:
侵襲性/転移性前立腺腫瘍細胞により発現される2つのヒアルロナンレセプターはCD44およびRHAMMである。従って、前立腺ガン細胞を選択的に標的にする本発明のペプチドの能力が評価された。この検定において、PC3mLN4ヒトの前立腺がん細胞をDMEM媒体+10%FBS中で90%の密集度まで培養した。ついで、これらの細胞を、2x24-ウェル組織培養域(20,000細胞/ウェルの密集度)内のガラスカバースリップ(12 x 12mm, 50μg/mLのフィブロネクチンでコーティングされた)上に播種した。次に、3%BSA(DMEM中)+0.1%FCSを用いて室温で1時間、細胞のブロッキングをおこなった。このブロッキング実験において、抗体(希釈1:100,ヤギ抗RHAMM mAb, 又はマウス抗CD44 mAb(DMEM+0.1%FCS媒体中))を添加し37℃で1時間培養した。ついで、得られた培養基を吸引し、細胞をDMEM+0.1%FCSを用い室温で洗浄した。フルオレセイン共役ペプチド(SEQ ID NO:29; 50μg/mL)を添加し、37℃で30分間培養した。ついで、細胞をDMEM+0.1%FCSで洗浄し、更にPBS (pH=7.6)で洗浄した。製造者のプロトコルに従いDAPI(Electron microscopy science社、USA)を含有するFluoro-gel 11を用いて装着した。ついで、オリンパス社のFluoView FV1000連結IX81電動倒立顕微鏡システムを用いて細胞を撮影した。Tiff画像はImageJ(v1.42q)ソフトウェアを用いて分析した。各画像を8−ビットフォーマットに変換し、20および255の閾値に当てた。関心の領域(ROI)を選択し、平均細胞蛍光度を導出した。
【0171】
PC3mLN4ヒトの前立腺がんラインにおけるペプチド摂取:
図14Aは、PC3mLN4ヒトの前立腺がんラインによる、HA模倣体(SEQ ID NO: 29)であるフルオレセイン共役ペプチドSEQ ID NO:9の取込み(摂取)を示している。このがんラインは攻撃的に侵襲性、転移性のものである。共焦点顕微鏡を用い、腫瘍細胞内のフルオレセイン共役ペプチドを検出した(
図14A(a)、しかし、RHAMMたんぱく質が抗RHAMM mAbでブロックされたとき、FITC信号は減少した
図14A(c))。これは、プローブの摂取が特定の抗RHAMMモノクローン抗体によりブロックされたことを示している。更に、フルオレセイン共役HA模倣体の摂取は、細胞が抗CD44モノクローン抗体で処理去れたときには変化しない(
図14A(b))。これらの結果は、本発明のHAペプチド模倣体が、RHAMM依存機構により、前立腺がん細胞と関連し、かつ、前立腺がん細胞により摂取されるということを示している。摂取の定量化(
図14B)は、抗体の処理を受けていない細胞(a)と、抗CD44でブロックされた細胞(b)との間で統計的な差異がないことを示している。抗RHAMM抗体で処理された細胞においては(c)、プローブの摂取が劇的に減少した(p<0.001)。
【0172】
実施例6−Ga-DOTA共役ペプチドの合成および特徴付け:
物質:
使用された溶媒は、VWR, Fisher Scientific, 又はSigma Aldrich社から購入した。Rink アミドMBHA樹脂(100-200メッシュ、0.56mmol/g)、標準Fmocアミノ酸およびHBTUカップリング試薬は、Peptides International社から購入した。1-ブロモヘキサノン酸、グリシン、ブロモエチルアセテートおよび硝酸ガリウム(III)はSigma Aldrich社から購入した。サイクレン(Cyclen)(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)およびRe(CO)
5BrはStrem Chemicals社から購入した。
【0173】
ペプチドの合成:
Fmoc脱保護およびアミノ酸カップリングサイクルが関与する標準固相ペプチド合成を使用して、リンク(rink)アミドMBHA樹脂(0.1 mmol)上にペプチドを合成させた。この合成を通して(15分および20分)、繰返しFmoc脱保護がおこなわれ、その際、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液が用いられた。全てのアミノ酸カップリングは30分および90分の間隔で、0.05M以上の濃度のFmoc保護アミノ酸およびHBTU、DMF中の5当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて行われた。各脱保護およびカップリング工程の後、樹脂をDMF(3x)およびジクロロメタン(DCM) (3x)を用いて繰返し洗浄した。同じパラメータを使用して6-ブロモヘキサノン酸をカップリングさせた。DMF中のサイクレン(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)(10当量)をピプチジル鎖の末端と3日間反応させた。DMF中のエチルブロモアセテート(3当量/アミン)を24時間、サイクレンの第2アミンと反応させ、ガリウムキレータ(DOTA)を生成させた。ペプチドの精製は、88%TFAでの処理ののち、H
2O+0.1%TFA(溶媒A)およびCH
3CN+0.1%TFA(溶媒B)からなる勾配溶媒系を用い、分析用および分取用(preparative)HPLCにより線流速1.5 mL/分および20 mL/分でそれぞれ行われた。分析用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(4.6mm x 250μm, 5μm)を用いて行われ、分取用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(22.0mm x 250mm, 10μm)を用いて行われた。吸光度はWaters 2998 Photodiode Array検出器を用い、220nmおよび254nmの波長で検出された。精製の間、フラクションを集め、凍結乾燥させ、ESI-MS(Waters Micromass Quattro Micro
TMAPI)により分析した。
【0174】
Ga-69/71のラベリング:
ガリウムコーディネーションは、
69/71Ga(NO
3)
3を用い、アセテート緩衝液中、pH=5.5で15分間おこなった。生産物をC18逆相(C18 Sep−Pak)カートリッジを用いて単離させた。生産物を、脱イオン水中30%アセトニトリルを1%トリフルオロ酢酸と共に使用して上記カートリッジから溶出させた。得られた製品は質量分光分析を用いて特徴付けられ、純度はRP-HPLCを用いて分析された。
【0175】
Ga-DOTA共役ペプチドの合成および特徴付け:
67/71Ga-DOTA共役ペプチドSEQ ID NO:1を合成し、PET画像化のため、
68Ga-配位放射線追跡子のための可能な非放射性サロゲート(代替物)として特徴づけられた。
図15AはDOTA共役ペプチドのガリウムラベリングを示している。
図15Bは、9.73分での精製ガリウム配位ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムを示している。
図15Cは、
図15Aの化合物のESI質量スペクトルを示している(観測値:936.7[M+2H]
2+、計算値:934.87[M+2H]
2+)。
【0176】
実施例7−Re(CO)3+配位ペプチドの合成および特徴付け:
物質:
使用された溶媒は、VWR, Fisher Scientific, 又はSigma Aldrich社から購入した。Rink アミドMBHA樹脂(100-200メッシュ、0.56mmol/g)、標準Fmocアミノ酸およびHBTUカップリング試薬は、Peptides International社から購入した。グリシン、ナトリウムシアノボロハイドライドおよび3-ピリジンカルボキシアルデヒドはSigma Aldrich社から購入した。Re(CO)
5BrはStrem Chemicals社から購入した。
【0177】
Re(CO)
3+キレータの合成([ビス(ピリジン-2-イルメチル)アミノ]酢酸):
10%酢酸(20mL)中のグリシン(0.602g、8.02mmol)溶液に対し、3-ピリジンカルボキシアルデヒド(4.28g、0.02mmol)を過剰に添加した。室温での1時間の攪拌後、ナトリウムシアノボロハイドライド(1.01g、0.016mmol)を添加し、得られた反応混合物を24時間攪拌した。その結果得られた混合物をクロロホルム(3x40mL)を用いて抽出し、MgSO
4を用いて乾燥させた。ついで、揮発性物質を蒸発させて黄色油を得た。この粗製製品をシリカクロマトグラフィ(90%クロロホルム; 10%メタノール)(1.67g、収量81%)を用いて精製した。
【0178】
ペプチドの合成:
Fmoc脱保護およびアミノ酸カップリングサイクルが関与する標準固相ペプチド合成を使用して、リンク(rink)アミドMBHA樹脂(0.1 mmol)上にペプチドを合成させた。この合成を通して(15分および20分)、繰返しFmoc脱保護がおこなわれ、その際、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液が用いられた。全てのアミノ酸カップリングは30分および90分の間隔で、0.05M以上の濃度のFmoc保護アミノ酸およびHBTU、DMF中の5当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いて行われた。各脱保護およびカップリング工程の後、樹脂をDMF(3x)およびジクロロメタン(DCM) (3x)を用いて繰返し洗浄した。Fmoc-アミノヘキサノン酸および([ビス(ピリジン-2-イルメチル)アミノ]酢酸)を上述の方法を用いてカップリングさせた。過剰の[Re(CO)
3Br
3](Net
4)
2を用いてレニウム配位を実行した。固相支持体からの劈開は88%のトリフルオロ酢酸を用いて実行した。
【0179】
ペプチドの精製は、H
2O+0.1%TFA(溶媒A)およびCH
3CN+0.1%TFA(溶媒B)からなる勾配溶媒系を用い、分析用および分取用(preparative)HPLCにより線流速1.5 mL/分および20 mL/分でそれぞれ行われた。分析用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(4.6mm x 250μm, 5μm)を用いて行われ、分取用HPLCはGrace Vydacたんぱく質/ペプチドRP-C18カラム(22.0mm x 250mm, 10μm)を用いて行われた。吸光度はWaters 2998 Photodiode Array検出器を用い、220nmおよび254nmの波長で検出された。精製の間、フラクションを集め、凍結乾燥させ、ESI-MS(Waters Micromass Quattro Micro
TMAPI)により分析した。
【0180】
Re(CO)
3+配位ペプチドSEQ ID NO:1を合成し、そのSPECT画像化のため、
99Tc(CO)
3+-配位放射線追跡子のための可能な非放射性サロゲート(代替物)として特徴づけられた。
図16AはRe(CO)
3+配位ペプチドSEQ ID NO:1の合成を示している。
図16Bは、11.06分での精製レニウム配位ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムを示している。
図16Cは、レニウム配位ペプチドのESI質量スペクトルを示している(観測値:939.1[M+2H]
2+、計算値:940.2[M+2H]
2+)。