特許第6153600号(P6153600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6153600チタンの耐荷重構造物を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153600
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】チタンの耐荷重構造物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   C23C24/04
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-503714(P2015-503714)
(86)(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公表番号】特表2015-520795(P2015-520795A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】AU2013000318
(87)【国際公開番号】WO2013149291
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】2012901345
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ザヒリ,サデン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヘディ,マーナズ
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,リチャード
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−200874(JP,A)
【文献】 特開2005−104287(JP,A)
【文献】 特表2011−513589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/04
B22F 7/04
B62K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンの耐荷重構造物を製造するための方法であって、
適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施し、単一の製作物として前記耐荷重構造物を形成し、それにより、それぞれの構成部品を製造して接合する必要性を回避する工程を含
前記耐荷重構造物がフレームであり、前記支持部材の形状と輪郭が前記耐荷重構造物の意図される形状及び輪郭を反映し、
コールドガスダイナミックスプレーが完了した後、前記支持部材が除去され、それにより自立性のチタンの耐荷重構造物が製造される、
前記方法。
【請求項2】
前記支持部材は機械的手段によって除去されるか、あるいは溶解または溶融させることによって除去される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記支持部材は前記チタンと支持部材の間の熱膨張率の差を利用することによって除去される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
コールドガスダイナミックスプレーによって付与される前記チタンは、前記耐荷重構造物における位置による特定の荷重支持要件を満たすために、コールドガスダイナミックスプレーを進めるときに変動する組成のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チタンは、前記耐荷重構造物における位置による特定の荷重要件に基づいて厚さが変化するように前記支持部材の上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記支持部材は、前記コールドガスダイナミックスプレーのために用いられるコールドガスダイナミックスプレーノズルに対して移動される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フレームは航空宇宙船、船舶または自動車のためのフレーム、あるいは自転車、オートバイ、スクーター、車椅子、ハンググライダーまたは旅行かばんのためのフレームである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記フレームは自転車のフレームである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタンおよびチタン合金からの構造物の製造に関する。本発明はまた、本発明に従って製造された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンおよびチタン合金は高い強度対重量比、高い剛性および優れた耐食性を有する。これらの理由のため、それらの材料を自転車のフレームのような耐荷重構造物(load-bearing structure)を製造するために用いるのが望ましい。自転車のフレームのようなチタンまたはチタン合金の耐荷重構造物を製造するための現在の製造方法には典型的に、(所望の部材の輪郭を製造するための真空鋳造と変形加工によって)個々の管状のフレーム部材を形成することと、次いで、それら様々な部材を組み立てて溶接することによってフレームを製造することが含まれる。チタンまたはチタン合金は酸素に対して高い親和性を有するので、溶接のような高温加工は保護雰囲気(還元雰囲気)の中で行なわれなければならない。全体的にみれば、この従来の方法は時間がかかり、エネルギー集約的かつ労働集約的であり、従って費用がかさむ。その結果、チタンまたはチタン合金の用途は、航空宇宙製品、生物医学製品および高級顧客向けスポーツ製品のようなものにいくぶん限定されてきた。従来の製造方法論に関連する制約は、チタンおよびチタン合金のより広範囲にわたる使用を妨げている。
【0003】
かかる背景に対して、これらの問題を伴わないチタンまたはチタン合金の耐荷重構造物を製造するための方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明はチタンの耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。
【0005】
本発明はまた、本発明に従って製造されるチタンの耐荷重構造物を提供する。
本明細書において、特に示さない限り、「チタン」という用語はチタンそれ自体およびチタン合金を意味するものとして用いられる。従って、本発明の方法はチタンの耐荷重構造物とチタン合金の耐荷重構造物を製造するために適用することができる。
【0006】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈において別のことが求められていない限り、「含む」という語句および「含むこと」といったその変形は、明示された完全体または工程あるいは完全体または工程の群を含むことを意味するが、しかし任意のその他の完全体または工程あるいは完全体または工程の群を排除しないことが理解されよう。
【0007】
本明細書において何らかの先行する出版物(またはそれから得られる情報)または何らかの公知の事柄に言及していることは、その先行する出版物(またはそれから得られる情報)または公知の事柄が本明細書で関連を示そうと試みている分野において常識的かつ一般的な知識の一部を構成していることを認容または自認しているのではなく、あるいは何らかの形でそのことを示唆しているのではなく、またそのように解釈されるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の態様を、添付する非限定的な図面を参照して説明する。
図1図1は自転車のフレームの骨組みの上にチタンを堆積させるためのコールドスプレー装置を示す概略図である。
図2図2はアルミニウムの支持部材の上にコールドスプレーを施したチタンの顕微鏡写真(エッチングしたもの)である。
図3図3はチタンとアルミニウムの間の境界面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るコールドスプレー(cold spray)の使用は、適当な支持部材(ここでは「骨組み(scaffold)」とも称する)の上にチタンの粒子を固体状態で非常な高速度で堆積させることを可能にする。有利なこととして、これは、別の方法では必要となるであろう多くの中間の高温製造加工工程(例えば、チタンの溶解、圧延および溶接)を解消する。そのような高温工程は典型的に、チタンの酸化を防ぐために雰囲気を制御することを要する。そのような加工工程が解消されることは、エネルギー消費と炭素の排出の点でも有益であるかもしれない。
【0010】
本発明に係るコールドスプレーの使用は、材料の投入量の低減、型と溶解費用の解消、および/またはチタン製品のための再加工と仕上げ加工の低減ももたらすかもしれない。従って、本発明に係るコールドスプレーの使用は製造コストを低減させ、製造の効率と速度を高めるとともに、それに応じて商業上の利益をもたらすだろう。
【0011】
コールドガスダイナミックスプレー法(Cold-gas dynamic spraying)(コールドスプレー法)は、表面に皮膜を付与するために用いられてきた公知のプロセスである。概括的に言うと、このプロセスは、高圧ガスの流れの中に(金属および/または非金属の)粒子を供給し、次いでガスの流れを(通常1000m/sを超える)超音速まで加速させる先細/末広ノズルにその流れを通すか、あるいはノズルのスロート(のど)を過ぎた所で超音速ガスの流れの中に粒子を供給することを含む。次いで、粒子は堆積させるべき表面へ向けられる。
【0012】
このプロセスは支持体および堆積させる粒子の融点未満の比較的低い温度において行われ、支持体の表面に粒子が衝突する結果として皮膜が形成される。プロセスが比較的低い温度において行われるという事実によって、被覆される表面および皮膜を構成する粒子への熱力学的、熱的および/または化学的影響を少なくするか、あるいは避けることができる。このことは、プラズマスプレー法、HVOFスプレー法、アークスプレー法、ガス炎スプレー法またはその他の加熱スプレープロセスのような高温被覆プロセスに伴うであろう相変態などを起こすことなく、粒子の初期の構造と特性を維持することができることを意味する。コールドスプレー法の基礎的原理、装置および方法論は、例えば、米国特許5302414号に記載されている。
【0013】
本発明の主旨においてコールドスプレー法を使用することにより、チタンの耐荷重構造物の製造をかなり単純化し、そしてより経済的なものにすることができる。本発明のプロセスにおいて、成形した支持部材の上にチタンの層を堆積して蓄積させるためにコールドガスダイナミックスプレー法が用いられる。この方法においては、最終的な構造物を得るために個々の構成部品を製造して接合する必要性が避けられる。特に、本発明によれば、コールドスプレー法によって、チタンの構成部品どうしを溶接する必要性が回避される。本発明のプロセスは、別の方法では(すなわち、従来は)個々の構成部品どうしを溶接することによって製造していた耐荷重構造物を製造するための方法であるとみなすことができる。別な表現をすると、様々な構成部品を製造して接合することによって組み立てていたのに対して、本発明に従って製造される耐荷重構造物は単一の製作物として形成される。
【0014】
本発明の方法は耐荷重構造物を製造するために用いられ、そうすることにより、上記の望ましいチタンの材料特性を強化することを探求する。「耐荷重構造物」(load-bearing structure)という用語は、荷重を支えることをその機能とする構造物を示すために用いられる。耐荷重構造物は、その上に他の部品を取り付ける基礎構造であるフレーム(骨組み)の形をとることができる。例として、フレームは航空宇宙または船舶または自動車のためのものであってよいし、あるいはそれは自転車、オートバイ、スクーター、車椅子、ハンググライダーまたは旅行かばんのためのフレームであってもよい。本発明は自転車とオートバイのフレームを製造するのに特に適していると考えられる。
【0015】
耐荷重構造物は、構造物の(チタンの)表面自体が耐荷重機能を与えるモノコック構造(monocoque design)のものであってもよい。例として、この場合、耐荷重構造物はオートバイまたはスクーターのフェアリング(流線形の覆い)(fairing)であってもよい。
【0016】
耐荷重構造物は最終製品であってもよく、あるいはそれは最終製品の構成部品であってもよい。例えば、自転車の場合、主フレームを製造するために本発明を適用してもよい。また耐荷重構造物は平坦なものであっても、あるいは成形されていてもよく、また例えば、建造物において用いられてもよい。
【0017】
本発明のプロセスにおいて、支持部材の表面上にチタンの層を堆積して蓄積させるためにコールドスプレー法が用いられる。支持部材の形状と輪郭は、製造すべき耐荷重構造物の意図される形状を反映するだろう。この点で、支持部材は骨組みまたは骨格とみなしてもよい。
【0018】
支持部材のために用いられる材料は、その上にチタンをコールドスプレーしたときに変形しないものでなければならない。何といっても、支持部材はその上にチタンを堆積させるための土台を与え、その何らかの変形は、製造される構造物における欠陥および/または製作公差の離脱をもたらすかもしれない。支持部材自体を製造することの可能な機械的性質、費用および/または容易さは、支持部材のための材料の選択に影響するかもしれない。支持部材は共に接合した個々の構成部品で構成されていてもよく、あるいはそれは単一の構造物(例えば、型成形した構造物)であってもよい。
【0019】
本発明の態様において、コールドスプレーが完了して(耐荷重構造物の意図される用途に基づいて)支持部材の上に十分な厚さのチタンを堆積させた後、支持部材は除去され、それにより自立性のチタンの耐荷重構造物が製造される。
【0020】
構造物の重量をできるだけ小さく保つことが望ましい場合、支持部材を除去することは重要であろう。設計の複雑さとその利用方法に応じて、支持部材を様々な方法によって除去することができる。例えば、支持部材を機械的な手段によって除去してもよい。これには支持部材を破壊するか、あるいは切削することが含まれてもよい。支持部材を破壊する場合、支持部材は、この支持部材の表面上に耐荷重構造物を形成することができる程度に適度に剛性があって耐熱性の材料(例えば、セラミックス)で形成されてもよく、しかしそれは、支持部材と構造物を分離する必要があるときに支持部材を破壊して除去することができる程度に適度に脆い材料とする。
【0021】
チタンと支持部材の分離は、チタンと支持部材の間の熱膨張率の差を利用することによって達成することもできる。この場合、支持部材からの構造物の分離は、チタンの構造物と支持部材を加熱または冷却することによって達成することができる。
【0022】
この態様において、コールドスプレーによって形成されるチタンの構造物の厚さは、支持部材が除去された領域における構造上の要件を満たすような適切なものでなければならない。従って、チタンの厚さは用途によるであろう。例として、自転車のフレームについては、チタンの厚さは1〜5mmの範囲であろう。
【0023】
さらに別の手段として、支持部材を溶解または溶融させることによって除去してもよい。例えば、支持材料がアルミニウムである場合、これを水酸化ナトリウム中で溶解することによって除去することができる。当然のことであるが、支持部材を除去するためにいかなる手段を用いるとしても、それは製造されるチタンの構造物に悪影響を及ぼすものであってはならない。
【0024】
代替の態様において、コールドスプレーが完了した後に支持部材は除去されない。この場合、支持部材は製造される耐荷重構造物の望ましい特性に寄与するかもしれず、またこの場合、耐荷重構造物と支持部材は複合の(または混成の)構造物とみなすべきである。
【0025】
この態様の少しの変形において、製造された構造物の中の特定の位置に支持部材を残しておき、そして他の位置から支持部材を除去するのが望ましいかもしれない。例えば、使用するときに大きな荷重を受ける構造物の領域に支持部材を残しておき、そして低い荷重の領域から支持部材を除去するのが望ましいかもしれない。このようにして、耐荷重構造物の特性をさらに調整し、それと同時に重量を少なくすることができる。
【0026】
この態様はまた、設計上の可能性をさらに高める。例えば、支持部材が耐荷重構造物に寄与する特性に基づいて支持部材の材料を選択してもよい。加えて、あるいは代替として、支持部材の各領域は、製造される耐荷重構造物においてそれらの領域が占める位置に基づいて厚さおよび/または設計が変化してもよい。加えて、あるいは代替として、支持部材の各領域は、製造される耐荷重構造物においてそれらの領域が占める位置に基づいて異なる材料で製造されてもよい。このことから、本発明のプロセスは設計上と結果上の顕著な適応性を与えることが認識されるであろう。特に、現行の技術を用いる場合よりももっと複雑な形状のチタン構造物を製造することができる。
【0027】
粒子で被覆される支持部材の表面は、製造される構造物の対応する表面の特性に影響を及ぼすだろう。被覆される支持部材の表面は滑らかで欠陥が無いのが好ましい。
本発明の別の可能性のある利点は、コールドスプレーを進めるときに、コールドスプレーによって付与される組成を変化させうることであり、このことは製品の特性に関する適応性を与えるかもしれない。例えば、製造される構造物における位置による特定の荷重支持要件(location specific load-bearing requirements)を満たすために、チタンの等級(またはチタン合金のタイプ)を変化させることが望ましいかもしれない。荷重に対して感受性の低い領域は、より低い品質(あるいはより低い等級)であってより安価な材料で形成してもよい。
【0028】
別の態様において、堆積されるチタンの厚さは、製造される構造物の位置による特定の要件を満たすために変化させてもよい。例えば、大きな荷重を受けると予想される構造物の領域は、より小さな荷重を受けると思われる領域よりも厚くしてもよい。当然のことであるが、複数の材料を用いて構造物を製造する場合は、それら異なる材料の適合性を考慮しなければならない。二つ以上の提案される材料が幾つかの点(例えば、凝集性または結合性)で不適合である場合、それら不適合な材料を互いに適合性のある材料からなる一つ以上の領域によって分離する必要があるかもしれない。
【0029】
堆積すべきチタンに関係するこれらの態様は、コールドスプレーを行った後に支持部材が除去されるか否かにかかわらず、適用可能であることが認識されよう。
コールドスプレーされるチタン粒子の平均の大きさは、支持部材の上に結果として生じる堆積物の密度に影響を及ぼすようである。堆積物は密度が高く、欠陥や接続した微細な空隙(漏れ)やその他同種類のものが存在しないことが好ましく、というのは、そのようなものの存在は品質に対して有害であるかもしれないからである。典型的に、コールドスプレーによって適用される粒子のサイズは5〜40ミクロンであり、平均の粒子サイズは約25ミクロンである。当業者であれば、粉末の形態と形成すべき構造物の特性に基づいて、用いる最適な粒子サイズまたは粒子サイズの分布を決定することができるだろう。一般に、チタンの層の厚さはコールドスプレーの工程の間に徐々に増大するだろう。
【0030】
本発明において用いるのに適した粒子は商業的に入手可能である(市販されているものである)。有用な等級のチタンとしては、商用純度のチタン、特に等級2および3のものがある。有用なチタン合金は商業的に入手可能であり、それにはチタン64(6%アルミニウム、4%バナジウム)のようなチタン-アルミニウム-バナジウム合金がある。
【0031】
本発明の方法の実施のために用いられるコールドスプレー装置は従来の形のものであることが適当であり、そのような設備は市販されているか、あるいは個々に組み立てられる。概して言えば、コールドスプレーのために用いられる設備の原理は米国特許5302414号に記載され、そして例示されているものであろう。そのようなコールドスプレー装置は、必要に応じて、支持部材を保持し、そして操作するための設備と組み合わせてもよい。コールドスプレーを行うために多重ノズルを縦に並べて用いてもよい。
【0032】
コールドスプレーが完了した後、製造された構造物について表面仕上げを行ってもよく、例えば、末端使用者の仕様に応じて構造物を研削、切削または研磨してもよい。他の構成要素または部品(例えば、ブラケット、その他同種類のもの)を構造物に固定することができ、これは慣用の方法で行われてもよい。しかしながら、構造物と一体の部分としてブラケットやその他同種類のものを形成するためにコールドスプレーを用いることもできる。
【0033】
本発明は自転車やオートバイのフレームを製造するのに格別な有用性を有するだろう。本発明は、適切に成形した支持部材の上にチタンの粒子を堆積することによって、チタンの粉末から直接フレームを製造するために適用することができる。本発明に従ってコールドスプレーの技術を用いると、超音速よりも十分に大きな速度でチタンの粒子が支持部材に衝突し、それにより表面上での冶金的結合と堆積が形成され、継ぎ目のないチタンの外殻が形成されて、支持部材の上にモノコック構造が作り出される。このプロセスには溶融は含まれず、それによりチタンの製造のための保護雰囲気の形成に対するかなりの費用が節約される。粒子の極めて速い堆積のために材料の迅速な堆積を達成でき、このことがこのプロセスを費用対効果が高く、かつ労働集約性が低いものにする。実際に、このプロセスは完全に自動化される可能性がある。
【0034】
本発明は、以下に挙げるものを含めて、様々な態様で実施できることが認識されよう。特定の態様どうしを組み合わせてもよいが、他のものは明らかに互いに相容れないものであることが認識されよう。
【0035】
− 最も広い態様において、本発明はチタンの耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。
【0036】
− 本発明の主な利点は、他の方法では個々の構成部品どうしを溶接することが必要な耐荷重構造物を製造することを可能にすることである。上で説明したように、チタンの構成部品を溶接することには関連する実践上の制約がある。有利なこととして、本発明は個々の構成部品どうしを溶接する必要性を回避して、チタンの耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。この態様において、耐荷重構造物は、個々の構成部品を組み立てるのではなく、単一の構成として形成される。
【0037】
− 耐荷重構造物を形成した後、支持部材を除去するのが望ましいかもしれない。例えば、このことはチタンの構造物の重量を低減する点で有益であろう。この態様において、本発明はチタンの耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程によって耐荷重構造物を製造し、次いで支持部材を除去することを含む。
【0038】
− 別の態様において、耐荷重構造物を形成した後、支持部材(または支持部材の一部)は保持される。この場合、支持部材は構造物または構造物の一部に有益な特性(例えば、高い剛性または強度)を付与するために用いることができる。この態様において、このプロセスの最終的な製品はチタンと支持部材を含む複合構造物である。この点で、本発明はチタンの複合耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。支持部材のための材料としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましいだろう。
【0039】
− 耐荷重構造物はモノコック構造のものであってもよい。このことは重量の低減と材料消費量の節減をもたらすだろう。この態様において、本発明はモノコック構造のチタンの耐荷重構造物を製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。
【0040】
− 本発明は自転車やオートバイのフレームを製造するのに格別な有用性を有するだろう。従って、本発明はチタンの自転車やオートバイのフレームを製造するための方法を提供し、この方法は、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む。この態様において、コールドスプレーを行った後に支持部材の少なくとも一部を保持し、それにより複合構造物を製造するのが好ましいかもしれない。支持部材はフレームの最終的な特性に寄与するかもしれない。好ましくは、支持部材はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成される。チタンの自転車やオートバイのフレームの従来の製造法と比較して、本発明は以下のような利益をもたらす。
【0041】
− チタンのフレームはチタンの粉末から直接製作される。従来の製作方法において、チタンは(保護雰囲気の下での)鋳造および外形を形成するための一連の変形加工によって製造される。これらのチタンの外形物は溶接されて最終的なフレームとなる。現行のプロセスと違って、本発明においては、溶解、外形の製作およびチタンの部品の接合は必要とされない。それらの従来の工程は労働集約的で、かつ時間のかかるものとなりがちである。
【0042】
− 重量の節減と耐食性。チタンの密度(4.6g/cm)は鋼の密度(7.8g/cm)のほぼ半分である。この低い密度は重量の節減という改善をもたらす。チタンの優れた耐食性は、表面に保護性を与えるための何らかの余分の加工も解消する。
【0043】
− 本発明のプロセスは迅速かつ低コストのプロセスであり、また高度に自動化された製作プロセスとなる可能性がある。
− 複雑な成形物の製作における適応性と、それによる新製品の設計と開発に対する大きな可能性。
【0044】
− 環境保護的なプロセス。本発明は製造サイクルにおける溶解と接合の工程を解消し、それにより製作プロセスのカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)が減少する。それはまた、ポリマー複合材料の製造において用いられるような揮発分の使用を回避する。
【0045】
本発明は自転車のフレームを製造するのに格別な価値を見いだすだろう。そのようなフレームは複雑な形状を有することが多く、典型的には個々のフレーム部材どうしを溶接することによって形成される。従って、本発明は魅力的な代替の製造方法となる。
【0046】
以下において、本発明の方法を用いて自転車のフレームを製造するという主旨において加工工程と実際に考慮すべき事柄について検討する。しかしながら、これらの加工工程と実際に考慮すべき事柄は、他のタイプの耐荷重構造物の製造に対しても妥当性を有することが認識されよう。
【0047】
自転車のフレームの複雑な形状は、好結果の堆積とコールドスプレー(直接)製造装置の開発に関してのノズルの形状についての考察を必要とするかもしれない。これに関して、製造上で重要なこととして考慮すべきことは、フレームの複雑な角度を形成できるようにするにはノズルをどのように配置し、あるいは移動させるかである。
【0048】
この点で、骨組みを取り付けることのできる移動可能な(例えば、回転可能な)ステージを用いるのが適当であるかもしれない。ステージの移動はプログラム化できるコンピューター装置を用いて制御することができる。骨組みの上への堆積を最適化するために、コールドスプレーの操作パラメーターも変えることができる。
【0049】
コンピューター制御の下で移動可能なロボットアームにコールドスプレーノズルを取り付けることが適当であるかもしれない。しかし、この場合、コールドスプレー設備と関連して取り付けたガスホースおよび/または電力ケーブルの摩耗と引き裂きを回避または制限するように注意を払わなければならず、というのは、これにより、き裂の形成および付随する安全性の問題を招くかもしれないからである。この観点から、コールドスプレーノズルを固定して、ノズルに対して骨組みを移動させるのが好ましいかもしれない。従って、骨組みは、コンピューター制御の下で移動可能なロボットアームに取り付けられるかもしれない。
【0050】
本発明の実施には、最終製品の耐荷重性、重量および費用の見積りに関する設計の最適化も含まれるかもしれない。例えば、骨組み材料の応力分布とゆがみを評価するためのCAD/CAMモデルを開発するためにオートデスク(Autodesk)のソフトウェアを用いてもよい。チタンを堆積した後、製品の関連の機械的特性を測定および/またはモデル化してもよい。そのような研究から、骨組みの厚さとチタンの堆積厚さに基づいて製品の重量と荷重支持能力を見積もるための可能性を与えるテンプレートを開発してもよい。
【0051】
骨組みの適切なコールドスプレーを達成するのに必要な精巧な動きを与えるために、高度なロボット装置を用いてもよい。そのロボットは仮想世界におけるロボットプログラムの開発と実行を実証するための特別なソフトウェアを用いるものであってもよい。直接の製造プロセスのために必要な時間、コールドスプレー設備についての中断時間、および必要な人員に関して極めて費用対効果の高い好結果の道筋を実証するために、仮想世界から実際の堆積条件への開発プログラムの移行と実行を適用してもよい。好結果が得られる方法の例を以下に示す。
【0052】
サブサイズの(標準サイズより小さい)骨組みのための仮想のロボットプログラム
市販のCADソフトウェアを用いて設計されたサブサイズの骨組みのための仮想の環境において、プログラムが開発された。この点において、「SAT」ファイルを製造することのできる任意の3D画像描画ソフトウェアが容認されるはずである。仮想のプログラム化の点で結果を迅速に達成するために、フルサイズの骨組みの代わりにサブサイズの骨組みが設計された。
【0053】
高度なアルゴリズムの開発
多くの接合部と角度を有する骨組みの精巧な形状は、好結果の堆積を得るための(4000を超える)かなりの数の(堆積)ターゲットとパス(通路)を伴う精巧なロボットプログラムを必要とした。この数多くのターゲットのプログラム化はかなりの努力を必要とし、また時間のかかるものである。これを克服するには、開発者がプログラムするのに要するターゲットの数をかなり減らすために、ソフトウェアの中で高度なアルゴリズムが開発されるかもしれない。このアルゴリズムにおいて、骨組みの各々の部分は、開発者によってプログラム化される16の主ターゲットとアルゴリズムによって作られる追加のターゲットを有するモジュールとみなされる。このやり方によって、プログラム化するための時間のうちのかなりの量が節約される。全体として、このアルゴリズムの中でのターゲットは以下の条件を満たさなければならない。
1.コールドスプレーノズルの出口との関係でロボットアームの届く範囲内にあること。
2.チタンの堆積について最適化されること(コールドスプレーノズルの角度と距離)。
3.ロボットアームの近傍でコールドスプレーノズルまたはその他の物体と衝突しないこと。
【0054】
このタイプの直接製造装置の開発の最終段階は、仮想ロボットプログラムを実際の実験室の条件下で検査することである。コールドスプレーされるチタン粒子の超音速ジェットにサブサイズの骨組みを晒すことによって、高精度のロボットの動きが試験されるかもしれない。超音速ジェットの挙動を予測することは、ジェットと骨組みの湾曲して角度のある表面との相互作用による複雑な乱流の発生のために、努力を必要とするかもしれない。このため、実際の条件下での仮想プログラムの実行を必要とする。
【0055】
ロボットのパラメーター
本発明に係る費用対効果の高い直接の製造のために、迅速な製造を行うためにロボットの速度を高めてもよい。しかし、チタンの堆積に及ぼす増大したロボットの線速度の主な影響はチタンの堆積の厚さの低下であることが見いだされた。この薄くなるという影響は、コールドスプレー装置の供給速度(粉末の射出量)を増大することによって補われるかもしれない。極めて速い粒子の(1000m/sを超える)速度のために、ロボットの線速度はチタンの堆積の効能にはさほどの影響を及ぼさない。これは、典型的なロボットの速度よりもほぼ4桁の大きさで速い。このことは、持続的で迅速な直接製造プロセスを達成するために、時間のかかる溶接と輪郭の製作工程を含む製造プロセスを解消するという、コールドスプレー技術にとっての独特な利点をもたらす。
【0056】
表面の品質の改善
コールドスプレーをした製品の表面の品質または表面の仕上げは、製品の市場での売買のために重要であるかもしれない。鏡面仕上げ、様々な色の陽極酸化およびその他の需要先導の反射面など、様々な表面仕上げを行ってもよい。高度に反射性の表面は、堆積したチタンの適切な研磨によって得ることができる。
【0057】
フルサイズの骨組みのための仮想のロボットプログラム
フルサイズの骨組みのための直接の製造を行うことは、以下のことを含むだろう:
1.プログラム化されたターゲットに対してロボットアームの届く範囲の全体で行うこと;および
2.プログラムを実行する間のコールドスプレーノズル設備や近傍にあるその他の物体との大きな骨組みの異常接近や衝突の防止。
【0058】
全ての骨組みの要素に対してロボットアームの届く最適な範囲を得るための位置決めの模擬実験を行った後に、フルサイズの骨組みに対してスプレーノズルの位置を最適化できるだろう。各々のプログラムのモジュールを実行した後に骨組みを最初の位置に持っていくために、「ホーム」の位置を定めてもよい。迅速に製造するために、骨組みを各部分に分割してもよく、例えば、前方の半分と鏡面の半分のような二つの半部分とする。次いで、各々の部分はターゲットをプログラム化するためのそれぞれのモジュールを持つようにする。
【0059】
これにさらに、実際の堆積条件においてロボットアームと骨組みとの関係でノズルを据えるために、校正モジュールが必要かもしれない。これは、骨組みとノズルが仮想プログラムにおいてシミュレーションしたのと空間において正確に同じ位置になることを確実にするために重要である。骨組みの構造物の全体の上にチタンを堆積するために、仮想プログラムにおける一連のモジュールを開発してもよい。仮想プログラム化を成功させる秘訣は、個々のターゲットに対して異常接近や衝突が無いようにして、全てのターゲットに対してロボットアームが届くようにすることである。
【0060】
フルサイズのチタンの自転車フレームの好結果の製造
適切な骨組みの上にチタンを堆積するための最初の工程は、ロボットの仮想ステーションにおけるシミュレーションの通りに骨組みとコールドスプレーノズルについての空間での正確な位置を得るために、製造装置において射程距離の校正を行うことを含む。ノズルと骨組みが一列になっていない場合は、仮想プログラムにおいてプログラム化したターゲットのほとんど全てが実際の堆積条件の下では所定の場所をはずれるであろうという事実のために、このことは極めて重要である。このことは、特定の領域での堆積の欠落と、おそらくは骨組みとノズルの衝突を招くかもしれない。これら困難なことを克服するために、校正の工程が工夫されるかもしれない。
【0061】
コールドスプレーノズルに対しての骨組みの校正
実際の堆積条件においてロボットの仮想ステーションに似せるようにターゲットを調製する必要があるために、コールドスプレーノズルに対して骨組みを正確に位置決めすることが重要であった。そのような正確な骨組みを行うために、ロボットアームと骨組みのホルダーについて正確な位置決めを行わなければならなかった。骨組みを定位置に保持するために、骨組みをロボットアームにピンを用いて取り付けるためのシャフトを設計してもよい。望ましくは、提案される校正は完全に自動化され、骨組みはロボットアームに対するその位置が自動的に調製される。
【0062】
ノズルの先端に対する骨組みの正確な位置決めを検査するための校正プログラムを開発してもよい。このプログラムにおいては、コールドスプレーノズルの先端に対する骨組みの角度の校正が可能である。製造のためのこの校正プロセスは主として、正確な直線的な位置決めと角度の位置決めのために開発される。このことは、完全に自動化された校正装置に対する可能性を伴う新たな設計の骨組みを将来開発するために、特に重要である。
【0063】
チタンの堆積
製造装置の校正およびコールドスプレーノズルと骨組みの整列の後の次の工程は、チタンの堆積である。開発したロボットプログラムの実行は、チタン粉末のコールドスプレーによって最初に直接製造したチタンの自転車フレームの好結果の製造をもたらした。以下の細目は例示として与えられ、限定的なものと解釈されるべきではない。
【0064】
自転車のフレームの望ましい形状を有するアルミニウムの骨組みを、0.5mmの壁厚を有するアルミニウム管を接合(溶接)することによって組み立てた。この骨組みの上に、およそ1mmの厚さのチタンの層を約45分間で堆積した。この時間はチタンの供給量とロボットの速度を増大させることによって短縮することができただろう。特にこれは、一般的な溶接のプロセスを用いる場合のおよそ2日間の製造時間と比較される。
【0065】
コールドスプレーしたチタンの堆積は、骨組みを取り巻く外殻の形のものである。この独特な構造物は接合部と溶接部を何ら有していなかった。これはかなり複雑な構造物を製造する方法におけるパラダイムシフトを示していると考えられる。
【0066】
苛性ソーダのような適当な溶液の中で骨組みを溶解することによって、チタンの外殻を残して骨組み材料を除去してもよい。
しかしながら、低密度の複合構造物においてチタンとアルミニウムが独特に結合した特性を利用するために、骨組み構造をチタンの自転車フレームの一部として残してもよい、ということも同様に可能である。
【0067】
チタンは強度、軽量性および耐久性を含めた多くの望ましい特性に寄与する。それらの特性は高性能の自転車において極めて有益である。この態様によれば、より「主流の」使用に向けて自転車のフレームを製造することも可能であるかもしれない。その場合、アルミニウムの骨組み(密度2.6g/cm)とコールドスプレーしたチタンの外殻または外層(密度4.6g/cm)の組み合わせを用いて軽い重量を達成することができる。これは約7g/cmの密度を有する典型的な鋼と比較すべきである。フレームのコストは用いるアルミニウムとチタンの比率を変えることによって制御することができる。その結果として得られるフレームは、(チタンの強度と比べて)比較的低いアルミニウムの強度を補うために多量に用いなければならない総アルミニウムのフレームよりもかさばらないだろう。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
チタンの耐荷重構造物を製造するための方法であって、適切に成形された支持部材の上にチタン粒子のコールドガスダイナミックスプレーを施す工程を含む、前記方法。
[2]
コールドガスダイナミックスプレーが完了した後、支持部材が除去され、それにより自立性のチタンの耐荷重構造物が製造される、[1]に記載の方法。
[3]
支持部材は機械的手段によって除去されるか、あるいは溶解または溶融させることによって除去される、[2]に記載の方法。
[4]
支持部材はチタンと支持部材の間の熱膨張率の差を利用することによって除去される、[2]に記載の方法。
[5]
コールドガスダイナミックスプレーが完了した後に支持部材は除去されず、得られる耐荷重構造物はチタンと支持部材を含む複合構造物である、[1]に記載の方法。
[6]
コールドガスダイナミックスプレーが完了した後に、支持部材は耐荷重構造物の特定の位置に保持され、耐荷重構造物の他の位置から除去される、[1]に記載の方法。
[7]
使用する際に比較的大きな荷重を受ける耐荷重構造物の領域に支持部材を保持して、そして使用する際に比較的小さな荷重を受ける耐荷重構造物の領域から支持部材を除去する、[6]に記載の方法。
[8]
支持部材が耐荷重構造物に寄与する特性に基づいて選択された材料から支持部材が形成される、[5]に記載の方法。
[9]
コールドガスダイナミックスプレーによって付与されるチタンは、耐荷重構造物における位置による特定の荷重支持要件を満たすために、コールドガスダイナミックスプレーを進めるときに変動する組成のものである、[1]に記載の方法。
[10]
チタンは耐荷重構造物における位置による特定の荷重要件に基づいて厚さが変化するように支持部材の上に堆積される、[1]に記載の方法。
[11]
チタンの粒子は5〜40ミクロンの粒子サイズを有し、平均の粒子サイズは約25ミクロンである、[1]に記載の方法。
[12]
コールドガスダイナミックスプレーによって堆積されるチタンは50μmから1mmまでの厚さを有する、[1]に記載の方法。
[13]
チタンは商用純度のチタン、またはチタン、アルミニウムおよびバナジウムの合金から選択され、本発明において用いるのに適した粒子は市販されているものである、[1]に記載の方法。
[14]
支持部材はコールドガスダイナミックスプレーのために用いられるコールドガスダイナミックスプレーノズルに対して移動される、[1]に記載の方法。
[15]
耐荷重構造物はフレームである、[1]に記載の方法。
[16]
フレームは航空宇宙船、船舶または自動車のためのフレーム、あるいは自転車、オートバイ、スクーター、車椅子、ハンググライダーまたは旅行かばんのためのフレームである、[15]に記載の方法。
[17]
フレームは自転車のフレームである、[16]に記載の方法。
[18]
支持部材はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成され、そしてコールドガスダイナミックスプレーを行った後に支持部材の少なくとも一部は保持され、それにより複合耐荷重構造物が製造される、[17]に記載の方法。
[19]
[1]に記載の方法に従って製造されたチタンの耐荷重構造物。
【0068】
以下の非限定的な実施例を参照して本発明の態様を例証する。
【実施例】
【0069】
実施例1
材料と方法
コールドスプレー装置
適切に成形した骨組みの上にチタンの粉末を堆積させるために用いることのできるコールドスプレー装置の概略を図1に示す。
図1の要点:
1 囲い
2 ガス源(典型的には窒素、ヘリウムまたは両者の混合物)
3 高圧で供給されるガス
4 ヒーター
5 チタン粉末の供給装置
6 電気ヒーター
7 ラバール・ノズル
8 チタン粒子の超音波ジェット
9 骨組み
10 ロボット。
【0070】
高圧下にある窒素、ヘリウムガスまたはこれらの混合物を加熱装置と先細/末広ノズルに通す。ノズルの出口でのガスの急速な膨張によりガスは超音速を十分に超えるほどに加速され、そしてガスの温度は著しく低下する。コールドスプレーガスの流れの中にチタン粉末を注入することによって、粒子は超音速まで加速される。これにより、チタンの粒子はコールドスプレーによる堆積のために必要な運動エネルギーを得て、骨組みに結合する。
【0071】
下の表1は、アルミニウムの骨組みの上にコールドスプレーによるチタンの好結果の堆積を行うための最適化パラメーターを示す。ある範囲の操作パラメーターを用いて好結果の堆積が達成されうることは、注目するに値する。これは、ガスの温度と圧力の変化がそれぞれ、チタン粒子の堆積のための臨界速度を導く条件を生み出すことによる。さらに、この臨界速度を超える加速は、チタンの堆積の緻密化と生成する皮膜の機械的性質の変化に寄与する。
【0072】
表1は、本発明に従って等級2のチタン粉末をアルミニウムの骨組みの上に好結果をもって堆積させるのに有用であることが見いだされたコールドスプレーのパラメーター範囲を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
ロボット
コールドスプレーノズルの前方で骨組みを操作するためにロボットが用いられる。骨組みの動きは、規定された速度でプログラム化された軌道に従うようにプログラム化されるコンピューター制御のロボットアームによって極めて正確に制御される。
【0075】
骨組み
骨組みは、その上にチタンを堆積することのできる薄い構造物(厚さが0.5mm以上)である。このようにして、チタンは骨組みの上に継ぎ目のない外殻を形成する。本発明において、骨組みの材料としてアルミニウムを用いるのが好ましく、それはその軽量性、密度(2.7g/cm)および手ごろな値段のためである。しかし、原則的には、コールドスプレーを用いてチタンを堆積することのできるあらゆる材料を骨組みとして用いることができるだろう。
【0076】
実施例2
前述したように、本発明は自転車のフレームの製造において格別な有用性を有すると考えられる。本実施例においては、そのようなフレームを製造することに含まれる工程と加工について詳しく述べる。しかしながら、説明される工程と加工は本発明に従う他の製品を製造するのに適用できることを認識すべきである。
【0077】
堆積プロセスの最適化
チタンの堆積プロセスを最適化するために、臨界のコールドスプレーパラメーターを決定するための一連の実験を設定した。コールドスプレーによってチタンの粒子を未合金化アルミニウム(1100タイプ)の骨組みに付着させ、それによってチタンの自転車フレーム構造物を製造した。
【0078】
特に設計した管状のサンプルで一端がドーム形になっているものについて堆積を行った。ドーム形になっていることにより、湾曲した表面への堆積の実験が可能であった。また、この骨組み部材の幾つかのものを半分に切削し、チタンの堆積に及ぼす分割面の影響を検査した。分割試料についての実験は、モノコック型の構造物の将来の開発のために特に重要であると考えられる。
【0079】
試料のドーム形を有する端部と中間部分について好結果の堆積がなされたことが示された。コールドスプレーノズルの角度を調査することによって、試料の軸に垂直な45°の噴射角度を用いると、分割面を有するサンプルに対する堆積について充填効果が改善されることが示された。サンプルを200rpmで回転させて45°の噴射角度を用いたときに、分割面を充填するチタンの堆積が同様に改善されることが観察された。
【0080】
下の表2は、このタイプの支持体の上への堆積について決定されたコールドスプレーのパラメーターを示す。
【0081】
【表2】
【0082】
堆積したチタンの特徴づけ
堆積したチタンと下にあるアルミニウムの骨組みとの間の結合を判定するために、光学顕微鏡検査と走査型電子顕微鏡検査を用いた。光学顕微鏡による観察によって、チタンとアルミニウムの間で境界部分またはき裂が存在しない好結果の結合が形成したことが示された(図2を参照)。
【0083】
コールドスプレーにより堆積したチタンとアルミニウムの間の境界面の走査型電子顕微鏡検査により、チタンの堆積物と支持体の間で良好な連結が生じたことが明らかになったが、これはチタン粒子の超音速の衝突によって粒子がアルミニウムの表面を貫通し、アルミニウムの支持体との強い結合が形成されたためである(図3を参照)。
【符号の説明】
【0084】
1 囲い、 2 ガス源、 3 高圧で供給されるガス、 4 ヒーター、 5 チタン粉末の供給装置、 6 電気ヒーター、 7 ラバール・ノズル、 8 チタン粒子の超音波ジェット、 9 骨組み、 10 ロボット。
図1
図2
図3