【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1の特徴を有する薄膜によって本発明によって解決される。したがって、自立式薄膜であって、薄膜が、ほぼ平坦な表面上で広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成する、薄膜が提供される。
【0010】
特に、薄膜は、神経用途向け、より具体的には脳用途向けのシステム用の薄膜でよい。脳用途向けのシステムは、たとえば、神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、たとえば脳深部電気刺激システムでよい。薄膜は、薄膜ストリップまたは薄膜バンドとして具現化され得る。薄膜ストリップの幅は、その厚さより大きく、その長さよりかなり小さくすることができる。
【0011】
本発明は、薄膜を折り畳む必要なくキャリアウエハの長さを超える薄膜を製造するための解決策を提供する。本方法は、非常に長い薄膜を小さいキャリアウエハ上で製造することを可能にする。薄膜を折り畳む必要がないため、より幅広い範囲の材料およびスタックが使用され得る。これらの長い薄膜の巻き付けプロセスは、連続的であり、したがってリード製造を容易にする。
【0012】
薄膜は、たとえば数字「6」のようにまたは「G」のように少なくとも部分的に形成され得る。これは、平坦表面上の広げた配置にある薄膜が、平面上に、固定された中心点周りに、この地点からの距離を増大しながら巻き付く曲線を形成することができることを意味する。薄膜の湾曲状巻き付けの半径は、好ましくは連続的に増大する。
【0013】
好ましい実施形態では、薄膜の長さは、薄膜を生み出すために使用される基板ウエハの直径より大きい。本発明による薄膜の長さは、ウエハの直径によって限定されない。むしろ、薄膜の湾曲状巻き付けにより、8インチウエハ(20.32cmの直径を有するウエハ)などの従来のウエハが、ウエハの直径、すなわち20.32cmを超える直径を有する自立式薄膜を、折り畳むことなく製造し、1つだけのキャリアウエハ上により多くの同一の膜を収容するために使用され得る。
【0014】
薄膜の長さは、少なくとも21cm、より好ましくは少なくとも25cmでよい。加えてまたは代替的には、薄膜の幅は、1.25mm以下であり、特に1mm以下であることができる。
【0015】
さらに、薄膜は、貴金属を少なくとも部分的に含む少なくとも1つの金属トラックを備えることができる。たとえば、少なくとも1つの金属トラックは、高伝導性金属および低伝導性金属を含む少なくとも1つのセクションを含むことができ、低伝導性金属は、生体適合性金属であり、高伝導性金属より低い導電性を有し、高伝導性金属は、低伝導性金属によって少なくとも部分的に封入され、好ましくは、高伝導性金属は、金および/または銅および/またはアルミニウムおよび/または銀を含み、または金、もしくは銅、もしくはアルミニウムもしくは銀であり、ならびに/または低伝導性金属は、プラチナおよび/またはチタンおよび/または窒化チタンを含み、またはプラチナ、もしくはチタンもしくは窒化チタンである。
【0016】
低伝導性金属(LCM)は、比較的低い導電性を有する金属、または比較的低い導電性、たとえば20℃において約2.00×10
6から9.75×10
6S/mの範囲内、特に2.38×10
6から9.43×10
6S/mの間の導電性σを有する金属合金である。低伝導性金属(LCM)の電気抵抗ρは、20℃において約1.00×10
−7から4.50×10
−7Ωmの範囲内、特に20℃において1.06×10
−7から4.20×10
−7Ωmの間であることができる。
【0017】
高伝導性金属(HCM)は、比較的高い導電性を有する金属、または比較的高い導電性、たとえば20℃において約3.00×10
7から7.00×10
7S/mの範囲内、特に3.50×10
7から6.30×10
7S/mの間の導電性σを有する金属合金である。電気抵抗ρは、20℃において約1.50×10
−8から3.00×10
−8Ωmの範囲内、特に20℃において1.59×10
−8から2.82×10
−8Ωmの間であることができる。
【0018】
本発明の意味における生体適合性金属は、生体材料が医療治療に関してその所望の機能を実行する能力を有し、治療の受容者または受益者にいかなる望ましくない局所的または全身性の影響も引き起こさずに、その特有の状況において最も適切な有益な細胞または組織の反応を生成し、その治療の臨床的に関連するパフォーマンスを最適化する、たとえば金属または金属合金を意味する。換言すれば、本発明の意味における生体適合性金属は、たとえば脳組織に対して非毒性であり、ならびに/または人体に、好ましくは人脳内に有害な影響を及ぼさずに、または少しの有害な影響だけで埋め込むことができる、たとえば金属および/または金属合金を意味する。
【0019】
さらに、本発明は、請求項5の特徴を有する、薄膜の製造方法に関する。したがって、自立式薄膜、特に神経用途向けの自立式薄膜を製造する方法であって、薄膜を形成するための少なくとも1つの材料が、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けをほぼ平坦な表面上に、前記平坦な表面上に堆積された後に少なくとも部分的に形成するように堆積される、方法が、提供される。
【0020】
平坦な表面は、キャリアウエハまたは基板ウエハのようなウエハでよい。たとえば、ウエハは、6インチ(15.24cm)直径または8インチ(20.32cm)直径のシリコンウエハであることができる。
【0021】
薄膜のウエハ上への堆積は、化学蒸着法(CVD)または物理的気相成長法(PVD)によって行われ得る。物理的気相成長法、特にスパッタリングを使用することが好ましい。スパッタ式堆積プロセスのすべての知られているタイプが、自立式薄膜を製造するために、薄膜をウエハ上に堆積させるために使用されてよい。特に、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオン支援蒸着、高ターゲット利用スパッタリング、高パワーパルス磁子スパッタリング(hipimis)および本発明者のガス流スパッタリングが適用されてよい。基板上に堆積された薄膜は、その後、エッチングプロセスによって、たとえばドライエッチングまたはウエットエッチングによって基板から取り外され得る。エッチングプロセスは、基板を除去し、したがって自立式薄膜を取り外すことができる。
【0022】
加えて、平坦な表面上には、少なくとも2つまたは複数の薄膜、特に薄膜ストリップが堆積されることが可能である。薄膜または薄膜ストリップはそれぞれ、ほぼ平坦な表面上に平行に少なくとも部分的に配置され得る。これにより、複数の薄膜は、同じほぼ平坦な表面上に配置され得る。好ましくは、平坦な表面は、ほぼ丸い形状を有することができる、シリコンウエハなどのキャリアウエハの表面である。キャリアウエハはまた、好ましくは矩形形状を有するグラスウエハとして形成されてもよい。薄膜が、数字「6」のようにまたは「G」のように少なくとも部分的に形成される場合、渦巻き状に巻き付けられた薄膜は、互いに平行になるように配置可能であり、したがって複数の同一の薄膜が、たとえば丸型ウエハのような基板の表面上に堆積され得る。このようにして、1ウエハあたり大量の薄膜ストリップが、生み出され得る。
【0023】
そのような薄膜は、薄膜の電極を担持する遠位端部と、たとえばIPGの接続ワイヤなどに接続するための接続手段を備える近位端部とを備えることができる。すべての遠位端部および/近位端部は、ウエハの中点、すなわち中心に関して同じ半径を有して、同じ輪状線上だけにそれぞれ配置され得る。
【0024】
さらに、本発明は、請求項8の特徴を有する、薄膜に関する。したがって、薄膜は、請求項5から7のいずれかに記載の製造方法によって与えられる。
【0025】
加えて、本発明は、請求項9の特徴を実現するウエハに関する。したがって、少なくとも1つの薄膜がその上に堆積される少なくとも1つの表面を有するウエハ、特にキャリアウエハであって、前記薄膜が、ウエハの平坦または平面の表面上に広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成する、ウエハが提供される。
【0026】
さらに、本発明は、特に、請求項10の特徴を有する、神経用途向けのシステムのためのリード用のリードコアに関する。したがって、特に神経用途向けのシステムのためのリード用のリードコアであって、ある形状を有する少なくとも1つのリードコアセクションを含み、この形状は、自立式薄膜がこの形状上に置かれ、かつ/またはこの形状上および/またはこの形状周りに巻き付けられ得るように構成され、前記薄膜が、ほぼ平坦な表面上に広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成し、特に薄膜が、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の薄膜である、リード用のリードコアが提供される。
【0027】
特に、リードコアまたは少なくとも1つのリードコアセクションが、薄膜またはそれぞれ薄膜ストリップを受け入れるための少なくとも1つの溝を含み、溝は、薄膜または薄膜ストリップが、溝内にすべて埋め込まれ得るように構成されることが可能である。溝はまた、薄膜およびリードコアが、互いに装着された後、ほぼ平坦な外側表面を形成するように構成されてもよい。
【0028】
ほぼ円筒状のリードコア周りの自立式薄膜の巻き付けは、特徴的な巻き付けプロファイルを示すことが判明した。薄膜の外側周囲縁は、平面のウエハ表面上に製造中に形成される薄膜を用いた平面的な湾曲状巻き付けにより、リードコア周りの巻き付け時にたるむ。薄膜用の溝を有するリードコアは、巻き付け時の薄膜のたるみを収容することを可能にする。特に、溝は、薄膜が、リードコア周りに巻き付けられ、特に溝の内側に配置される場合に、溝、特に溝の基部に完面像式に接触するように形成され得る。好ましくは、溝は、リードコアに沿ってらせん形状で延び、すなわち溝は、リードコアの長手方向軸の周りでらせん状に配置される。溝は、さらに、長手方向軸に対して傾斜された溝基部を備え、それにより、リードコア上に装着されたときの薄膜、および溝基部は、互いに完全に接触するようになる。これは、薄膜が良好に保護され、リードコアの外側表面上に波形を形成しないことを確実にするためである。さらに、溝は、薄膜を保護層、たとえばエポキシ糊を用いて覆うことを可能にする。保護層は、平滑な外側表面および薄膜のための良好な保護を形成するために、リードコアの溝または複数の溝だけが、保護層で充填されるように施与され得る。
【0029】
さらに、リードコアが、ポリマーから少なくとも部分的に作製され、および/または針状体であること、ならびに/またはリードコアが、約0.5mmから1.5mmの範囲内、特に約0.75mmから1.25mmの範囲内のコア直径を有し、好ましくは、コア直径は約1mmであることが可能である。
【0030】
加えて、本発明は、請求項13の特徴を有するリードに関する。したがって、リード、特に神経用途向けのシステム用のリードであって、請求項1から4または請求項9のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項10から12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアを備える、リードが提供される。
【0031】
さらに、本発明は、プローブ、特に請求項14の特徴を有する、神経用途向けのシステム用のプローブに関する。したがって、プローブ、特に神経用途向けのシステム用のプローブであって、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項11または12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアおよび/または請求項13に記載の少なくとも1つのリードを備える、プローブが提供される。
【0032】
さらに、本発明は、神経用途向けのシステム、特に神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、好ましくは請求項15の特徴を有する脳深部電気刺激システムに関する。したがって、神経用途向けのシステム、特に神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、好ましくは脳深部電気刺激システムであって、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項11または12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアおよび/または請求項13に記載の少なくとも1つのリードおよび/または請求項14に記載の少なくとも1つのプローブを備える、神経用途向けのシステムが提供される。
【0033】
全般的に、本発明は、以下の着想に基づく。
【0034】
本発明の基本的着想の1つは、渦巻き設計を用いることによる薄膜の製造方法に関する。この設計は、製造プロセス中に使用されるキャリア基板のサイズを超える長さを有する薄膜を製造することを可能にする。
【0035】
別の着想は、渦巻き設計の薄膜を有するキャリアウエハに関する。薄膜は、絶縁性の酸化ケイ素および窒化ケイ素内に封入された貴金属の金属トラックを含むことができる。ポリマー、通常はパリレンが、薄膜を形成するために使用され得る。
【0036】
さらに、本発明は、平行な渦巻き設計(
図4を参照)を有するキャリアウエハを利用する。この構成は、複数の渦巻き設計された膜をウエハ上で製造することを可能にする。1つのウエハ上での複数の薄膜、またはそれぞれ電極の製造は、製造コストを低減する。提案された構成は、さらに、すべての薄膜が同一であることを可能にし、これは、生成およびその後のリードの製造に必要である。
【0037】
本発明の基本的な着想の1つは、長さが、基板サイズ(円形基板の場合は直径、四角形基板の場合は長さまたは幅)を超える薄膜を形成するために、渦巻き設計を有するキャリアウエハ上に作製された薄膜を提供することである。渦巻きは、すべての薄膜が同一であることを確実にするために、平行な渦巻きの構成によって最適に実現され得る。
【0038】
本発明の別の基本的着想の一部であり、キャリアウエハ上の渦巻き設計から製造される薄膜を有するリードは、特徴的なコア周りの巻き付けプロファイルを示す。外側周囲は、コア周りの巻き付け時にたるみを示す。薄膜は、断面において約1mmの直径を有することができるリードのコア(リードコア)と同様に、これもまた1mmの幅を有することができる。リードコア周りの巻き付け位置にあるそのような薄膜の平均たるみは、約10から数10ミクロンであり、膜の半径、膜の幅、およびコア直径によって決まることが表面化した。巻き出され、キャリアウエハ上のような平坦な構成に戻って配置される場合、自立式薄膜は、元の通常の渦巻き形態を再度示す。
【0039】
加えて、本発明は、巻き付け時に薄膜のたるみを収容する形状を備えたリードコアを提供する着想を利用する。薄膜が良好に保護され、リードの外側表面上に波形を形成しないことを確実にするために、溝が薄膜のために設けられ得る。薄膜を中に有する溝は、エポキシ糊で充填されて、円滑な外側表面および薄膜用の良好な保護を形成することができる。
【0040】
渦巻き式設計からの薄膜で製造されたリードを備えたプローブもまた、開示される。
【0041】
本発明のさらなる詳細および利点が、これ以後図を参照して説明される。