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特許6153601自立式薄膜、特に神経用途向けシステム用の自立式薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153601
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】自立式薄膜、特に神経用途向けシステム用の自立式薄膜
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20170619BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   A61N1/05
   A61N1/36
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-506229(P2015-506229)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-514487(P2015-514487A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013058005
(87)【国際公開番号】WO2013156527
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2014年10月27日
(31)【優先権主張番号】61/636,177
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12164860.4
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516049548
【氏名又は名称】メドトロニック・バッケン・リサーチ・センター・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ケ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント アドリアヌス ヘネケン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ウィレム アルバート ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス アドリアヌス ヨハンナ マリア デッカース
(72)【発明者】
【氏名】ダーク ヴァン ペイケレン
(72)【発明者】
【氏名】ミヘル マーセル ヨーゼ デクレ
【審査官】 白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−221073(JP,A)
【文献】 特開2007−167636(JP,A)
【文献】 特開平11−333001(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0224765(US,A1)
【文献】 特表2009−531150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立式薄膜である薄膜ストリップであって、
前記薄膜(301)は、貴金属を少なくとも部分的に含む少なくとも1つの金属トラックを備え、
前記少なくとも1つの金属トラックが、高伝導性金属および低伝導性金属を含む少なくとも1つのセクションを含み、前記低伝導性金属は、生体適合性金属であり、前記高伝導性金属より低い導電性を有し、前記高伝導性金属は、前記低伝導性金属によって少なくとも部分的に封入され、
前記薄膜(301)が、ほぼ平坦な表面上で広げられると、平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成するものであり、
前記薄膜(301)は、神経用途向けのシステムのためのリードコア(306)のリードコアセクション周りに巻き付けられた、
ことを特徴とする、薄膜ストリップ。
【請求項2】
前記薄膜(301)が、神経用途向けのシステム用の自立式薄膜であることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜ストリップ。
【請求項3】
前記高伝導性金属は、金、銅、アルミニウムおよび銀から選択される少なくとも一つを含むか、もしくは、金、銅、アルミニウムおよび銀から選択される少なくとも一つであり、前記低伝導性金属は、プラチナ、チタン、窒化チタンから選択される少なくとも一つを含むか、もしくは、プラチナ、チタン、窒化チタンから選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の薄膜ストリップ。
【請求項4】
自立式薄膜である薄膜ストリップ、特に神経用途向けの薄膜ストリップを製造する方法であって、
前記薄膜(301)を形成するための少なくとも1つの材料が、平面的な渦巻き状巻き付けを、ほぼ平坦な表面上に、前記平坦な表面上に堆積された後に少なくとも部分的に形成するように堆積されるステップと
前記薄膜(301)が、神経用途向けのシステムのためのリードコア(306)のリードコアセクション周りに巻き付けられるステップと、を含み、
前記薄膜(301)が、貴金属を少なくとも部分的に含む少なくとも1つの金属トラックを備え
前記少なくとも1つの金属トラックが、高伝導性金属および低伝導性金属を含む少なくとも1つのセクションを含み、前記低伝導性金属は、生体適合性金属であり、前記高伝導性金属より低い導電性を有し、前記高伝導性金属は、前記低伝導性金属によって少なくとも部分的に封入されていることを特徴とする、方法。
【請求項5】
少なくとも2つまたは複数の薄膜(301)が、前記ほぼ平坦な表面上に堆積されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つまたは複数の薄膜(301)が、前記ほぼ平坦な表面上に少なくとも部分的に互いに平行に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の薄膜ストリップと、ウエハ(400)と、を備え、
前記ウエハ(400)、特に、少なくとも1つの前記薄膜(301)がその上に堆積される少なくとも1つの表面を有するキャリアウエハであって、前記薄膜(301)が、前記ウエハ(400)の前記表面上に広げられると、平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成することを特徴とする薄膜ストリップおよびウエハ。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の薄膜ストリップと、
特に、神経用途向けのシステムのためのリード用のリードコア(306)であって、ある形状を有する少なくとも1つのリードコアセクションを含み、前記形状は、薄膜(301)が前記形状に置かれ、かつ/または前記形状上および/または前記形状周りに巻き付けられ得るように構成される、リード用のリードコア(306)と、
を備える、リード
【請求項9】
前記リードコア(306)または前記少なくとも1つのリードコアセクションが、前記薄膜(301)を受け入れるための少なくとも1つの溝(307)を含み、前記溝(307)は、前記薄膜(301)が、前記溝(307)内に完全に埋め込まれ得るように構成されることを特徴とする、請求項に記載のリード。
【請求項10】
前記リードコア(306)が、ポリマーから少なくとも部分的に作製され、および/または針状体であること、ならびに/または前記リードコア(306)が、約0.5mmから1.5mmの範囲内、特に約0.75mmから1.25mmの範囲内のコア直径を有し、好ましくは、前記コア直径は、約1mmであることを特徴とする、請求項またはに記載のリード。
【請求項11】
プローブ、特に神経用途向けのシステム用のプローブであって、請求項1からのいずれかに記載の薄膜ストリップまたは請求項8から10のいずれかに記載のリードを備える、プローブ。
【請求項12】
脳用途向けのシステム、特に神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、好ましくは脳深部電気刺激法システムであって、請求項1からのいずれかに記載の薄膜ストリップ、請求項8から10のいずれかに記載のリードまたは請求項11に記載のプローブを備える、脳用途向けのシステム。
【請求項13】
前記ほぼ平坦な表面上は、基板ウエハであり、
前記薄膜ストリップの長さは、前記基板ウエハの直径より大きく、特に前記長さは少なくとも21cm、特に少なくとも25cmであり、ならびに/または前記薄膜(301)の幅が、1.25mm以下、特に1mm以下であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜、特に神経用途向けシステム用の薄膜と、薄膜の製造方法と、ウエハと、リード用のリードコアと、リードと、プローブと、神経用途向けのシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能な神経刺激デバイスが、急性または慢性の神経学的状態を治療するために過去10年以上にわたって使用されている。脳深部電気刺激法(DBS)、つまり皮質下構造の優しい電気刺激は、この種類の埋め込み可能なデバイスに属し、パーキンソン病、ジストニア、および振戦に治療的に効果的であることが示されている。強迫神経症またはうつ病のような精神疾患の分野におけるDBSの新しい用途が、研究されており、期待できる結果を示している。既存のシステムでは、電極を担持するプローブが、埋め込み可能なパルス発生器(IPG)に連結されている。
【0003】
現在の刺激は、患者の約30%に軽症から重症の副作用を引き起こすため、将来的なシステムは、電気刺激の送達をより良好に制御するために、より多くの、より小さい電極を必要とする。
【0004】
これらの埋め込み可能なデバイスの磁気共鳴(MR)安全性は、重要な問題である。MR安全性、つまりMR走査中の磁場の結果としてのインプラントの加熱の低減は、ケーブルワイヤをデバイス上に巻き付けることによって実現され得る。しかし、巻き付けは、ケーブル配線の長さをかなり増大させる。DBSリードは、薄膜をコアの周りに巻き付けることによって製造され得る。これらの薄膜は、通常、キャリアウエハまたはプレート上に生み出され、製造後にこのウエハまたはプレートから取り外される。巻き付けられた薄膜によって製造されたDBSリ−ドの場合、薄膜の長さはかなりのものであり、キャリア基板のサイズを超える場合がある。
【0005】
埋め込まれたDBSシステム用の薄膜は、通常、キャリアウエハ上で製造される。通常、6インチ(15.24cm)または8インチ(20.32cm)の直径のシリコンキャリア基板が、使用される。しかし、MR安全DBSシステムは、数10センチメートルの薄膜を必要とする。この長さは、キャリアウエハの直径を超え、単なる真っすぐな薄膜を製造することはできない。
【0006】
キャリア基板サイズのこうした制限を打開するための知られている方法は、特許文献1に記載されているような折り畳み可能な薄膜設計を利用する。しかし、折り畳み方法は、いくつかの欠点を有する。膜を折り畳むことは、薄膜の機械的特性を激しく損なう。折り畳みは小半径に湾曲するように薄膜を強制し、湾曲部の外側部において材料を引き伸ばす。一方で、折り畳みは湾曲部の内側において材料を引っ張り、薄膜内の材料を割り、分断し、歪める場合がある。さらに、リードの製造プロセス、つまり薄膜のコア周りの巻き付けは、より複雑である。折り畳みの位置では、巻き付けプロセスは、中断されなければならない。薄膜の折り畳みのこの中断は、膜のコア周りの巻き付けプロセスを妨害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0123765A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、特に、薄膜がその上で製造される基板の寸法を超える薄膜が、折り畳まれずに製造され得るという点において、薄膜と、薄膜の製造方法と、ウエハと、リード用のリードコアと、リードと、プローブと、神経用途向けのシステムとを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1の特徴を有する薄膜によって本発明によって解決される。したがって、自立式薄膜であって、薄膜が、ほぼ平坦な表面上で広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成する、薄膜が提供される。
【0010】
特に、薄膜は、神経用途向け、より具体的には脳用途向けのシステム用の薄膜でよい。脳用途向けのシステムは、たとえば、神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、たとえば脳深部電気刺激システムでよい。薄膜は、薄膜ストリップまたは薄膜バンドとして具現化され得る。薄膜ストリップの幅は、その厚さより大きく、その長さよりかなり小さくすることができる。
【0011】
本発明は、薄膜を折り畳む必要なくキャリアウエハの長さを超える薄膜を製造するための解決策を提供する。本方法は、非常に長い薄膜を小さいキャリアウエハ上で製造することを可能にする。薄膜を折り畳む必要がないため、より幅広い範囲の材料およびスタックが使用され得る。これらの長い薄膜の巻き付けプロセスは、連続的であり、したがってリード製造を容易にする。
【0012】
薄膜は、たとえば数字「6」のようにまたは「G」のように少なくとも部分的に形成され得る。これは、平坦表面上の広げた配置にある薄膜が、平面上に、固定された中心点周りに、この地点からの距離を増大しながら巻き付く曲線を形成することができることを意味する。薄膜の湾曲状巻き付けの半径は、好ましくは連続的に増大する。
【0013】
好ましい実施形態では、薄膜の長さは、薄膜を生み出すために使用される基板ウエハの直径より大きい。本発明による薄膜の長さは、ウエハの直径によって限定されない。むしろ、薄膜の湾曲状巻き付けにより、8インチウエハ(20.32cmの直径を有するウエハ)などの従来のウエハが、ウエハの直径、すなわち20.32cmを超える直径を有する自立式薄膜を、折り畳むことなく製造し、1つだけのキャリアウエハ上により多くの同一の膜を収容するために使用され得る。
【0014】
薄膜の長さは、少なくとも21cm、より好ましくは少なくとも25cmでよい。加えてまたは代替的には、薄膜の幅は、1.25mm以下であり、特に1mm以下であることができる。
【0015】
さらに、薄膜は、貴金属を少なくとも部分的に含む少なくとも1つの金属トラックを備えることができる。たとえば、少なくとも1つの金属トラックは、高伝導性金属および低伝導性金属を含む少なくとも1つのセクションを含むことができ、低伝導性金属は、生体適合性金属であり、高伝導性金属より低い導電性を有し、高伝導性金属は、低伝導性金属によって少なくとも部分的に封入され、好ましくは、高伝導性金属は、金および/または銅および/またはアルミニウムおよび/または銀を含み、または金、もしくは銅、もしくはアルミニウムもしくは銀であり、ならびに/または低伝導性金属は、プラチナおよび/またはチタンおよび/または窒化チタンを含み、またはプラチナ、もしくはチタンもしくは窒化チタンである。
【0016】
低伝導性金属(LCM)は、比較的低い導電性を有する金属、または比較的低い導電性、たとえば20℃において約2.00×10から9.75×10S/mの範囲内、特に2.38×10から9.43×10S/mの間の導電性σを有する金属合金である。低伝導性金属(LCM)の電気抵抗ρは、20℃において約1.00×10−7から4.50×10−7Ωmの範囲内、特に20℃において1.06×10−7から4.20×10−7Ωmの間であることができる。
【0017】
高伝導性金属(HCM)は、比較的高い導電性を有する金属、または比較的高い導電性、たとえば20℃において約3.00×10から7.00×10S/mの範囲内、特に3.50×10から6.30×10S/mの間の導電性σを有する金属合金である。電気抵抗ρは、20℃において約1.50×10−8から3.00×10−8Ωmの範囲内、特に20℃において1.59×10−8から2.82×10−8Ωmの間であることができる。
【0018】
本発明の意味における生体適合性金属は、生体材料が医療治療に関してその所望の機能を実行する能力を有し、治療の受容者または受益者にいかなる望ましくない局所的または全身性の影響も引き起こさずに、その特有の状況において最も適切な有益な細胞または組織の反応を生成し、その治療の臨床的に関連するパフォーマンスを最適化する、たとえば金属または金属合金を意味する。換言すれば、本発明の意味における生体適合性金属は、たとえば脳組織に対して非毒性であり、ならびに/または人体に、好ましくは人脳内に有害な影響を及ぼさずに、または少しの有害な影響だけで埋め込むことができる、たとえば金属および/または金属合金を意味する。
【0019】
さらに、本発明は、請求項5の特徴を有する、薄膜の製造方法に関する。したがって、自立式薄膜、特に神経用途向けの自立式薄膜を製造する方法であって、薄膜を形成するための少なくとも1つの材料が、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けをほぼ平坦な表面上に、前記平坦な表面上に堆積された後に少なくとも部分的に形成するように堆積される、方法が、提供される。
【0020】
平坦な表面は、キャリアウエハまたは基板ウエハのようなウエハでよい。たとえば、ウエハは、6インチ(15.24cm)直径または8インチ(20.32cm)直径のシリコンウエハであることができる。
【0021】
薄膜のウエハ上への堆積は、化学蒸着法(CVD)または物理的気相成長法(PVD)によって行われ得る。物理的気相成長法、特にスパッタリングを使用することが好ましい。スパッタ式堆積プロセスのすべての知られているタイプが、自立式薄膜を製造するために、薄膜をウエハ上に堆積させるために使用されてよい。特に、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、イオン支援蒸着、高ターゲット利用スパッタリング、高パワーパルス磁子スパッタリング(hipimis)および本発明者のガス流スパッタリングが適用されてよい。基板上に堆積された薄膜は、その後、エッチングプロセスによって、たとえばドライエッチングまたはウエットエッチングによって基板から取り外され得る。エッチングプロセスは、基板を除去し、したがって自立式薄膜を取り外すことができる。
【0022】
加えて、平坦な表面上には、少なくとも2つまたは複数の薄膜、特に薄膜ストリップが堆積されることが可能である。薄膜または薄膜ストリップはそれぞれ、ほぼ平坦な表面上に平行に少なくとも部分的に配置され得る。これにより、複数の薄膜は、同じほぼ平坦な表面上に配置され得る。好ましくは、平坦な表面は、ほぼ丸い形状を有することができる、シリコンウエハなどのキャリアウエハの表面である。キャリアウエハはまた、好ましくは矩形形状を有するグラスウエハとして形成されてもよい。薄膜が、数字「6」のようにまたは「G」のように少なくとも部分的に形成される場合、渦巻き状に巻き付けられた薄膜は、互いに平行になるように配置可能であり、したがって複数の同一の薄膜が、たとえば丸型ウエハのような基板の表面上に堆積され得る。このようにして、1ウエハあたり大量の薄膜ストリップが、生み出され得る。
【0023】
そのような薄膜は、薄膜の電極を担持する遠位端部と、たとえばIPGの接続ワイヤなどに接続するための接続手段を備える近位端部とを備えることができる。すべての遠位端部および/近位端部は、ウエハの中点、すなわち中心に関して同じ半径を有して、同じ輪状線上だけにそれぞれ配置され得る。
【0024】
さらに、本発明は、請求項8の特徴を有する、薄膜に関する。したがって、薄膜は、請求項5から7のいずれかに記載の製造方法によって与えられる。
【0025】
加えて、本発明は、請求項9の特徴を実現するウエハに関する。したがって、少なくとも1つの薄膜がその上に堆積される少なくとも1つの表面を有するウエハ、特にキャリアウエハであって、前記薄膜が、ウエハの平坦または平面の表面上に広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成する、ウエハが提供される。
【0026】
さらに、本発明は、特に、請求項10の特徴を有する、神経用途向けのシステムのためのリード用のリードコアに関する。したがって、特に神経用途向けのシステムのためのリード用のリードコアであって、ある形状を有する少なくとも1つのリードコアセクションを含み、この形状は、自立式薄膜がこの形状上に置かれ、かつ/またはこの形状上および/またはこの形状周りに巻き付けられ得るように構成され、前記薄膜が、ほぼ平坦な表面上に広げられているとき、平面的な湾曲状巻き付け、特に平面的な渦巻き状巻き付けを少なくとも部分的に形成し、特に薄膜が、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の薄膜である、リード用のリードコアが提供される。
【0027】
特に、リードコアまたは少なくとも1つのリードコアセクションが、薄膜またはそれぞれ薄膜ストリップを受け入れるための少なくとも1つの溝を含み、溝は、薄膜または薄膜ストリップが、溝内にすべて埋め込まれ得るように構成されることが可能である。溝はまた、薄膜およびリードコアが、互いに装着された後、ほぼ平坦な外側表面を形成するように構成されてもよい。
【0028】
ほぼ円筒状のリードコア周りの自立式薄膜の巻き付けは、特徴的な巻き付けプロファイルを示すことが判明した。薄膜の外側周囲縁は、平面のウエハ表面上に製造中に形成される薄膜を用いた平面的な湾曲状巻き付けにより、リードコア周りの巻き付け時にたるむ。薄膜用の溝を有するリードコアは、巻き付け時の薄膜のたるみを収容することを可能にする。特に、溝は、薄膜が、リードコア周りに巻き付けられ、特に溝の内側に配置される場合に、溝、特に溝の基部に完面像式に接触するように形成され得る。好ましくは、溝は、リードコアに沿ってらせん形状で延び、すなわち溝は、リードコアの長手方向軸の周りでらせん状に配置される。溝は、さらに、長手方向軸に対して傾斜された溝基部を備え、それにより、リードコア上に装着されたときの薄膜、および溝基部は、互いに完全に接触するようになる。これは、薄膜が良好に保護され、リードコアの外側表面上に波形を形成しないことを確実にするためである。さらに、溝は、薄膜を保護層、たとえばエポキシ糊を用いて覆うことを可能にする。保護層は、平滑な外側表面および薄膜のための良好な保護を形成するために、リードコアの溝または複数の溝だけが、保護層で充填されるように施与され得る。
【0029】
さらに、リードコアが、ポリマーから少なくとも部分的に作製され、および/または針状体であること、ならびに/またはリードコアが、約0.5mmから1.5mmの範囲内、特に約0.75mmから1.25mmの範囲内のコア直径を有し、好ましくは、コア直径は約1mmであることが可能である。
【0030】
加えて、本発明は、請求項13の特徴を有するリードに関する。したがって、リード、特に神経用途向けのシステム用のリードであって、請求項1から4または請求項9のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項10から12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアを備える、リードが提供される。
【0031】
さらに、本発明は、プローブ、特に請求項14の特徴を有する、神経用途向けのシステム用のプローブに関する。したがって、プローブ、特に神経用途向けのシステム用のプローブであって、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項11または12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアおよび/または請求項13に記載の少なくとも1つのリードを備える、プローブが提供される。
【0032】
さらに、本発明は、神経用途向けのシステム、特に神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、好ましくは請求項15の特徴を有する脳深部電気刺激システムに関する。したがって、神経用途向けのシステム、特に神経変調療法および/または神経記録法向けのシステム、好ましくは脳深部電気刺激システムであって、請求項1から4または請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つの薄膜および/または請求項11または12のいずれかに記載の少なくとも1つのリードコアおよび/または請求項13に記載の少なくとも1つのリードおよび/または請求項14に記載の少なくとも1つのプローブを備える、神経用途向けのシステムが提供される。
【0033】
全般的に、本発明は、以下の着想に基づく。
【0034】
本発明の基本的着想の1つは、渦巻き設計を用いることによる薄膜の製造方法に関する。この設計は、製造プロセス中に使用されるキャリア基板のサイズを超える長さを有する薄膜を製造することを可能にする。
【0035】
別の着想は、渦巻き設計の薄膜を有するキャリアウエハに関する。薄膜は、絶縁性の酸化ケイ素および窒化ケイ素内に封入された貴金属の金属トラックを含むことができる。ポリマー、通常はパリレンが、薄膜を形成するために使用され得る。
【0036】
さらに、本発明は、平行な渦巻き設計(図4を参照)を有するキャリアウエハを利用する。この構成は、複数の渦巻き設計された膜をウエハ上で製造することを可能にする。1つのウエハ上での複数の薄膜、またはそれぞれ電極の製造は、製造コストを低減する。提案された構成は、さらに、すべての薄膜が同一であることを可能にし、これは、生成およびその後のリードの製造に必要である。
【0037】
本発明の基本的な着想の1つは、長さが、基板サイズ(円形基板の場合は直径、四角形基板の場合は長さまたは幅)を超える薄膜を形成するために、渦巻き設計を有するキャリアウエハ上に作製された薄膜を提供することである。渦巻きは、すべての薄膜が同一であることを確実にするために、平行な渦巻きの構成によって最適に実現され得る。
【0038】
本発明の別の基本的着想の一部であり、キャリアウエハ上の渦巻き設計から製造される薄膜を有するリードは、特徴的なコア周りの巻き付けプロファイルを示す。外側周囲は、コア周りの巻き付け時にたるみを示す。薄膜は、断面において約1mmの直径を有することができるリードのコア(リードコア)と同様に、これもまた1mmの幅を有することができる。リードコア周りの巻き付け位置にあるそのような薄膜の平均たるみは、約10から数10ミクロンであり、膜の半径、膜の幅、およびコア直径によって決まることが表面化した。巻き出され、キャリアウエハ上のような平坦な構成に戻って配置される場合、自立式薄膜は、元の通常の渦巻き形態を再度示す。
【0039】
加えて、本発明は、巻き付け時に薄膜のたるみを収容する形状を備えたリードコアを提供する着想を利用する。薄膜が良好に保護され、リードの外側表面上に波形を形成しないことを確実にするために、溝が薄膜のために設けられ得る。薄膜を中に有する溝は、エポキシ糊で充填されて、円滑な外側表面および薄膜用の良好な保護を形成することができる。
【0040】
渦巻き式設計からの薄膜で製造されたリードを備えたプローブもまた、開示される。
【0041】
本発明のさらなる詳細および利点が、これ以後図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】脳深部電気刺激法(DBS)向けの神経刺激システムの概略図である。
図2】脳深部電気刺激法(DBS)向けのプローブ神経刺激システムおよびその構成要素の別の概略図である。
図3】本発明によるプローブシステムの概略図である。
図4】本発明による自立式薄膜の平面図である。
図5】単一平面内に渦巻き状に巻き付けられた自立式薄膜の平面図である。
図6】平行に渦巻き状に巻き付けられた複数の堆積された薄膜ストリップを担持する丸型ウエハの平面図である。
図7】本発明による自立式薄膜が取り付けられたリードの側面図である。
図8】巻き付け時の薄膜ストリップのたるみを収容するように適合されたリードコアの長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
脳深部電気刺激法(DBS)向けの神経刺激システム100の可能な実施形態が、図1に示される。神経刺激システム100は、患者1の胸部内、通常は鎖骨の下方、または患者1の腹部内に外科的に埋め込まれ得る制御器110を少なくとも備える。制御器110は、必要な電圧パルスを供給するように適合され得る。通常のDBSシステム100は、さらに、延長ワイヤ120を含むことができ、この延長ワイヤ120は、制御器110に接続され、好ましくは首に沿って皮下式に頭蓋骨まで進み、コネクタ内で終端する。DBSリード構成130は、たとえば頭蓋骨内の穿頭孔を貫通して脳組織内に埋め込まれ得る。
【0044】
図2は、さらに、DBSリード300と、DBSリード300の遠位端部304上に電極132をアドレスする電子手段を備える先進リードコネクタ(ALC)要素111とを備える脳深部電気刺激プローブ130の代表的な構造を示す。リード300は、薄膜301用のキャリア302を備え、前記キャリア302は、DBSリード300および薄膜301の機械的構成をもたらす。薄膜301は、好ましくは生体適合性材料から作製された、少なくとも1つの導電性層を含むことができる。薄膜301は、キャリア302に組み付けられ、さらにリード要素300を構成するように処理される。リード用の薄膜301は、好ましくは、遠位端部304、金属トラックを有するケーブル303、および近位端部310を有する薄膜生成物によって形成される。リード300上の薄膜301の近位端部310は、ALC要素111に電気的に接続される。ALC要素111は、DBSステアリング電子装置の交換マトリクスを備える。遠位端部304は、脳刺激のための電極132を備える。近位端部310は、ケーブル303内の各金属線のための相互接続接点305を備える。ケーブル303は、金属線(図示せず)を含んで、各々の遠位電極132を指定された近位接点305に接続する。
【0045】
図3は、図1および2に示されるような脳深部電気刺激システム100のような、脳用途向け、ここでは神経刺激法および/または神経記録法向けのシステム100の実施形態を概略的にかつより詳細に示す。プローブシステム100は、刺激および/または記録電極132を備えた、脳用途向けの少なくとも1つのプローブ130を備え、たとえば64個の電極132が、プローブ130の遠位端部の外側本体表面上に設けられ得る。延長ワイヤ120を用いることにより、制御器110によって供給されたパルスPが、ALC111に伝達され得る。制御器110は、埋め込み可能なパルス発生器(IPG)110であることができる。
【0046】
図4は、本発明の全体原理を示す。本発明は、平面的な湾曲形状で巻き付けられた少なくとも1つのセクションを有する、直立型薄膜301、特に薄膜ストリップ320または薄膜バンドに関する。図4の薄膜ストリップ320は、近位端部310および遠位端部304を有する。遠位端部は、複数の電極132、特に刺激電極を担持する。電極は、神経組織、特に脳組織内に電気的および/または電磁的な刺激場をかけるように適合される。近位端部310は、ALCの相互接続接点に対応する複数の相互接続接点305を有する、接続要素を含む。したがって、薄膜ストリップ320の近位端部310は、ALC要素111に接続され得る。
【0047】
図4から明らかであるように、薄膜ストリップ320は、平面表面上に広げられ、湾曲形状を有する。薄膜ストリップ320は、中心点330の周りで湾曲され、ここで薄膜ストリップ320によって形成された曲線の半径は、変動する。近位端部310から開始して、湾曲状薄膜ストリップ320は、半径を増大させながら遠位端部304まで進む。図4の実施形態によれば、薄膜ストリップ320は、平面曲線として、特に平面渦巻きとして完全に成形される。しかし、薄膜ストリップ320は、平面的な湾曲状巻き付けまたは平面的な渦巻き状巻き付けを形成するセクションを含むことができる。他のセクションは、異なる形状または異なる量の曲線を有することができる。薄膜ストリップ320または薄膜301は通常、楕円形状または円形形状を少なくとも部分的に有することが可能であり得る。
【0048】
薄膜301または薄膜ストリップ320の長さを増大させるために、薄膜ストリップ320は、平面的な渦巻き状巻き付けを形成することが好ましい。それによって、薄膜ストリップ320の遠位端部304は、近位端部310に重なることができ、こうして薄膜ストリップ320の長さは、増大され得る。薄膜ストリップ320の湾曲状のまたは渦巻き状の巻き付けが、共通平面上に形成され、それにより、薄膜ストリップ320の遠位端部304および近位端部310が、その平面内に配置されることに注意すべきである。したがって、薄膜ストリップ320の遠位端部304は、近位端部310とは異なる中心点330からの距離で配置される。好ましくは、図4から明らかであるように、遠位端部304と中心点330の間の距離は、近位端部と中心点330の間の距離より大きい。
【0049】
図5は、薄膜ストリップ320を示し、ここで遠位端部304は近位端部310に重なる。この場合、遠位端部304は、中心330(図示せず)に対して距離を離して配置され、この距離は、近位端部310と中心点330の間の距離よりかなり小さい。したがって、薄膜301または薄膜301によって形成されたストリップ320は、ほぼ文字「G」または数字「6」の形態で成形される。遠位端部304と中心点330の間と、近位端部310と中心点330の間との距離の相違により、空隙が、薄膜ストリップ320の重なり合うセクション間に存在する。薄膜ストリップ320の重なり合うセクション間に比較的大きい空隙を有する利点は、図6から明らかである。
【0050】
図6は、いくつかの薄膜ストリップ320がその上に堆積されるウエハ400の平面図を示す。薄膜ストリップ320を形成するために薄膜301を堆積させることは、スパッタ堆積プロセスによって実施され得る。1つの薄膜ストリップ320の後、比較的大きい空隙が、その薄膜ストリップ320の重なり合うセクション間に存在することが明らかである。特に、各々の薄膜ストリップ320は、ウエハ400の中心から、湾曲状の、特に渦巻き状に湾曲状の形状で、ウエハ400の外側周囲まで進む。したがって、ウエハ400の中心近くに配置された遠位端部304と、ウエハ400の縁近くに位置する近位端部310との間の距離は、ウエハ400の半径にほぼ対応する。薄膜ストリップ320の重なり合うセクション間のこうした距離により、複数の薄膜ストリップ320が、ウエハ400上に平行に配置され得る。したがって、堆積プロセス用の基板として使用される表面領域は、効率的に利用され得る。
【0051】
図6は、さらに、薄膜ストリップ320のすべての遠位端部304が、ウエハ400の中心点330またはそれぞれ中点の周りを延びる同じ輪状線上に配置されることを示している。換言すれば、遠位端部304が配置される輪状線の中心は、ウエハ400の中点に対応する。同じことが、ウエハ400の外側周囲または外側縁近くに配置された近位端部310に対してもあてはまる。近位端部310もまた、ウエハ400の中点に対応する中心点を有する輪状線上に配置される。
【0052】
平坦な表面上に平面的に巻き付けられた薄膜ストリップ320は、図5に示すように外側周囲縁309、および内側周囲縁308を有する。薄膜301、特に薄膜ストリップ320を平面的に湾曲状のまたは渦巻き状に巻き付けられた形状で、ウエハ400上で製造することにより、薄膜301は、リードコア306の周りにらせん状に、すなわち3次元渦巻き形状で巻き付けられたとき、たるむ傾向がある。これは、特に、薄膜ストリップ320の外側周囲縁309にあてはまり、すなわち、外側周囲縁309は、薄膜ストリップの内側周囲縁308より大きい半径を有する。外側周囲縁309および内側周囲縁308の半径は、薄膜ストリップ320の幅によって異なる。
【0053】
薄膜301は、1mmの幅を有することができる。リードコア306の直径は、好ましくは、1mmであり得る。リードコア306周りの巻き付け位置にある薄膜ストリップ320の巻き付け半径に応じて、薄膜ストリップ320のたるみは、近似的には約10マイクロメートルである。この寸法は、薄膜301の幅およびリードコア306の直径が異なる場合、変動し得る。薄膜ストリップ320が巻き出され、平坦な構成に戻って配置される場合、すなわち薄膜ストリップ320が、たとえばキャリアウエハ400上、または一般的な基板上のような平坦な表面上に広げられる場合、薄膜ストリップ320は、本発明において特有である元の湾曲状のまたは渦巻き形状を示すことは言うまでも無い。
【0054】
巻き付け時の薄膜のたるみを収容するために、本発明は、リードコア306に沿ってらせん状に延びる少なくとも1つの溝307を有するリードコア306を提案する。溝307は、薄膜ストリップ320の幅にほぼ対応する幅を有する。溝307の深さは、薄膜ストリップ320の厚さに対応することができるが、好ましくは、薄膜ストリップ320の厚さより大きい。図8に示されるように、溝307は、上り傾斜を有することができ、それにより、薄膜ストリップ320は、リードコア306の外側表面と完全に接触する。したがって、リードコア306の形状は、薄膜ストリップ320のたるみまたはねじりを考慮に入れる。
【0055】
溝307は、薄膜320を中に配置した後で、被覆層または保護層(図示せず)で充填され得る。被覆は、薄膜ストリップ320を保護し、薄膜301が、埋め込まれたときに人の組織に直接的に接触することを回避する。さらに、被覆は、リードコア306が平滑な外側表面を得るように配置され得る。換言すれば、薄膜ストリップ320が中に配置された溝307は、被覆材料で完全に充填されてよく、それにより、リードコア306は、不均一性のない外側表面を得る。被覆材料は、エポキシ糊を含むことができ、またはエポキシ糊でよい。被覆材料、たとえばエポキシ糊は、リードコア306の平滑な表面が達成されるまで溝を充填するように、薄膜301を溝307に巻き付けた後にリードコア306に施与され得る。
【0056】
たとえば、医療用途に使用するための薄膜301または薄膜ストリップ320を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
第1のステップでは、好ましくはシリコンからなるキャリアウエハ400が、提供される。ウエハ400は、シリコン単結晶から薄く切られてよい。代替的には、ガラスキャリアプレートが適用されてよい。薄膜301製造プロセスの最終段階において、薄膜301は、キャリアウエハ400から取り外される。薄膜301または薄膜ストリップ320それぞれの取り外しは、基板、すなわちシリコンウエハを、好ましくはエッチングプロセスによって除去することによって達成され得る。
【0057】
本発明は、以下の利点を提供する:
本書の最初で述べたように、従来の方法で製造された薄膜301の長さは、キャリアウエハ400の直径を超えることができず、直線の薄膜301の折り畳みが、このサイズ制限問題を回避する方法である。本発明は、薄膜301の長さに関するウエハ400のサイズ制限を解決する代替策を提供する。渦巻きまたは少なくとも湾曲状設計により、キャリア基板上で、キャリアウエハ400の直径をはるかに超える長さを有する薄膜301を製造することが可能になる。
【0058】
本発明は、強化された磁気共鳴(MR)対応性を有する脳深部電気刺激(DBS)リードの分野で適用される。DBSリードは、薄膜301を用いて製造され得る。MR対応性のために、薄膜301のリードコア306周りの巻き付けが、適用される。これにより、相当な長さを有する薄膜301または薄膜ストリップ320が適用されることになる。長さは、キャリアウエハ400の直径を超える。安全上の理由のため、薄膜301内の金属トラックは、無機性、好ましくは生体適合性の材料内に挟まれて、長期にわたる電気絶縁を確実にすることができる。この材料スタックは、曲がりによる機械的損傷を受けやすい。したがって、薄膜301を折り畳む当分野の方法の現状は、ウエハ400の直径によって可能にされるものより長い長さを有する薄膜ストリップ320を生み出すことには適用できない。本発明による製造方法では、折り畳みは回避され得る。本発明は、むしろ、折り畳むことなく比較的長い薄膜ストリップ320を製造することを可能にする。
【符号の説明】
【0059】
1 患者
100 神経刺激システム
110 制御器
111 先進リードコネクタ(ALC)
120 延長ワイヤ
130 プローブ
132 電極
300 リード
301 薄膜
302 キャリア
303 ケーブル
304 遠位端部
305 相互接続接点
306 リードコア
307 溝
308 内側周囲縁
309 外側周囲縁
310 近位端部
330 中心点
400 ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8