特許第6153602号(P6153602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153602
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】加熱体
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/02 20060101AFI20170619BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   H05B6/02 Z
   H05B6/10 331
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-507542(P2015-507542)
(86)(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公表番号】特表2015-515107(P2015-515107A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013058665
(87)【国際公開番号】WO2013160417
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】102012206991.7
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513184828
【氏名又は名称】ベール−ヘラ サモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100074538
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハリ パンクラッツ
(72)【発明者】
【氏名】ハンスヨアヒム ティーマン
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−156346(JP,A)
【文献】 特開2012−033460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/02
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料(14)を備えた誘導加熱用の加熱体(4)であって、交流電流により生成される誘導コイル(2)の磁界(1)の中に導入可能である加熱体において、
前記導電性材料(14)が複数の個々の材料部分(10、13)に区分されていて、前記材料部分(10、13)は、非導電的に互いに離間されており、前記材料部分(10、13)は、前記材料部分(10、13)とは異なる導電性の結合要素(7)によって互いに結合され、前記材料部分(10、13)および前記結合要素(7)は、鎖状の閉じた導体ネットワークを形成することを特徴とする
加熱体(4)。
【請求項2】
前記導電性材料(14)が電気絶縁性の支持層の上に設置されていることを特徴とする、
請求項1に記載の加熱体(4)。
【請求項3】
前記導電性材料(14)が、電気絶縁された状態で、少なくとも1つの加熱されるべき媒体で満たされた領域内に位置決めされていることを特徴とする、
請求項1または2に記載の加熱体(4)。
【請求項4】
前記材料部分(10、13)の少なくとも1つの第1の面が前記加熱されるべき媒体に接触していることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱体(4)。
【請求項5】
前記加熱体(4)を取り囲む前記媒体が非導電性であることを特徴とする、
請求項3に記載の加熱体(4)。
【請求項6】
前記各材料部分(10、13)が、前記誘導コイル(2)の前記磁界(1)内において、均一まは不均一なパターンに配設されていることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱体(4)。
【請求項7】
前記材料部分(10、13)が1つまたは複数の平面に配置されていることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱体(4)。
【請求項8】
前記導電性材料(14)が螺旋(15)状に配置または巻回されており、前記螺旋(15)の個々の巻回部または巻線が互いに非導電的に離間されていて、前記螺旋の中心(12)が、結合要素(7)を介して前記螺旋の最も外側の端部(11)に導電性を有するように結合されていることを特徴とする、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱体(4)。
【請求項9】
加熱体(4)が、立体的な画定において、電気絶縁された状態で位置決めされていて、加熱されるべき流体にその位置で接触し、さらに前記加熱体(4)が誘導コイル(2)の交番磁界(1)内に配置されており、この誘導コイルが交流電流で駆動可能な電流回路(3)内に組み入れられていることを特徴とする
求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱体(4)の配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料を備えた加熱体、特に誘導加熱用の加熱体であって、交流電流により生成される誘導コイルの磁界の中へ導入可能な加熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導によって導電性材料を加熱することができる。この加熱は、誘導コイルにより生成される磁界の中に導電性材料を導入することで行われる。その際、磁界は交流電流によって生成され、従って、交流電流の周波数で磁界の極性反転が生じる。
【0003】
この交番磁界によって渦電流が導電性材料内に誘導される。この誘導渦電流は材料の固有抵抗に抗して作用し、これにより熱が生成される。
【0004】
その際、この誘導は、加熱を経ない非導電性材料を通して行うことも可能である。取り囲んでいる非導電性材料の加熱は、導電性材料の熱放射によってしか生じ得ない。
【0005】
誘導による加熱は、今日、多くの用途に見ることができる。最もよく見られる産業上の用途は、例えば、金属の焼きなまし、焼き戻し、溶融または溶接である。しかしまた、家庭用の技術においても、例えば電磁誘導調理器に誘導加熱は見受けられる。
【0006】
誘導加熱は、さらにまた、加熱体の周囲を流動する流体を加熱するためにも用いられる。誘導加熱は、比較的高い効率で電気エネルギーを熱に変換することができるので、特に、電気車両における水の循環に用いることに適している。このことは特に有利である。なぜなら、電気車両の場合、内燃機関の廃熱が発生せず、従って、廃熱を例えば乗客用内部スペースの加熱に利用することができないからである。
【0007】
加熱される材料における渦電流の変化と、従ってまた熱分布とは、とりわけ、加熱体の形態、加熱体を構成している材料、および誘導コイルの磁界の種類に依存する。ここに挙げたパラメータが最適に選定されていない場合、加熱体内の熱分布が非常に不均一になる恐れがある。
【0008】
この不均一は、特に加熱体を均一に加熱するという課題にとって障害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、導電性を有し、かつ誘導により加熱される材料に関する配置であって、前記材料の内部における熱分布が最大限の均一性を有することを可能にする配置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、請求項1に記載の特徴を有する誘導コイルによって解決される。本発明の有利な実施態様が従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
有利には、導電性材料を備えた加熱体、特に誘導加熱用の加熱体であって、この加熱体は、交流電流により生成される誘導コイルの磁界の中に導入可能であり、前記導電性材料は複数の個々の材料部分に区分されていて、これらの材料部分は非導電的に互いに離間されており、かつ、導電性の結合要素によって、それ自体において閉じた導体ネットワークに結合されている。
【0012】
さらに、有利であるのは、前記導電性材料が電気絶縁性の支持層の上に設置されている場合、および/または、前記材料が、電気絶縁された状態で、少なくとも1つの加熱されるべき媒体で満たされた領域内に位置決めされている場合である。このような配置が必要であるのは、前記加熱体内に前記誘導コイルの交番磁界により生じる渦電流が周囲へ不所望に伝達されることを防止するためである。このような渦電流の伝達は、誘導加熱の熱出力に悪影響を及ぼすであろう。
【0013】
また、好ましいのは、前記材料部分の少なくとも1つの第1の面が前記加熱されるべき媒体に接触している場合である。このことが必要であるのは、前記加熱体から前記加熱されるべき媒体への有効な伝熱を保証するためである。
【0014】
さらにまた、有利であるのは、前記加熱体を取り囲む前記媒体が非導電性である場合、または導電性がただ非常に低い場合である。ここで、導電性が非常に低いということが意味することは、例えば、導電性材料の導電性に比べて1/1000以下の導電性を有することである。このことはまた、前記加熱体をより良好に絶縁することに役立ち、従って、これにより、誘導渦電流の不所望な伝達による加熱誘導部内の損失が最小限に抑えられる。
【0015】
さらに、好ましいのは、前記各材料部分が、前記誘導コイルの磁界内において、実質的に均一な、または実質的に不均一なパターンまたは幾何学的形状に配設されている場合である。このようにすることで、前記加熱体をそれぞれ個別に固有の用途に適合させることが可能となる。
【0016】
さらに別の有利な実施形態では、前記材料部分が1つまたは複数の平面に配置されている。このようにすることで、加熱されるべき媒体が前記加熱体の前記材料部分と接触する表面積を大きくすることができ、これにより伝熱性が向上する。
【0017】
さらにまた、好ましいのは、前記材料が螺旋状に配置または巻回されている場合であり、この場合、前記螺旋の個々の巻回部または巻線は互いに非導電的に離間されており、前記螺旋の中心は、結合要素を介して前記螺旋の最も外側の端部に導電性を有するように結合されている。
【0018】
さらに別の有利な実施形態では、前記加熱体が、立体的な画定において、電気絶縁された状態で位置決めされており、加熱されるべき流体にその位置で接触していて、さらに前記加熱体は誘導コイルの交番磁界内に配置されており、この誘導コイルは交流電流で駆動可能な電流回路内に組み入れられている。
【0019】
以下において、本発明について、実施例を用いて図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】誘導加熱部を示す模式配置図である。
図2】誘導加熱部用の加熱体の本発明に係る実施形態を示す。
図3】誘導加熱部用の加熱体の本発明に係るさらに別の実施形態を示す。
図4】誘導加熱部用の加熱体の本発明に係るさらに別の実施形態を示す。
【実施例】
【0021】
図1は誘導加熱部の基本構造を示す。そこには誘導コイル2が示されており、この誘導コイルは、交流電圧で駆動される電流回路3に接続されている。前記電流回路3の交流電圧によって前記誘導コイル2内に磁界1が生成される。前記電流回路3内には交流電流が印加されているので、前記磁界1は交番磁界であり、この交番磁界は、交流電流の周波数に従って磁界の向きを変える。
【0022】
前記磁界1の中に加熱体4が導入されており、この加熱体は導電性材料14から成る。前記加熱体4内に前記磁界1によって渦電流5が誘導される。前記渦電流5は前記加熱体4の固有抵抗に抗して作用するので、熱が前記加熱体4内に生じる。
【0023】
このことから明らかなように、前記加熱体4を構成している前記材料14は、前記加熱体4を有効に加熱できるように、ある一定の固有内部抵抗を有していなければならない。前記材料14の内部抵抗は加熱効果に影響を及ぼし、その際、前記内部抵抗と加熱効果との間には固有の最適条件がある。
【0024】
前記加熱体4が前記誘導コイル2に対して配置されている距離は、形成される前記磁界の内部に前記加熱体が位置しているような距離でなければならない。前記加熱体4と前記誘導コイル2との間には、非導電性材料から成る他の要素を配置しておくことも可能である。
【0025】
この簡単な原理に従って誘導加熱部が構成されている。前記加熱体4は、代替的な実施形態では、他の外形寸法および外形を有することも可能である。従って、原理上、前記加熱体4の前記材料14を規則的に、または不規則的にどのように配置することも可能である。これに関するその他の説明は図2の説明の中で行う。
【0026】
図2は加熱体4の特殊な実施形態を示す。この種の加熱体4は、図1で既に示されたような配置で用いることが可能である。
【0027】
前記加熱体4は、螺旋15状に巻回された導電性材料14から成る。前記材料14の各レーン10は、非導電性の分離層8によって互いに電気的に絶縁されている。この絶縁は、単に離間して配置することによって、すなわち前記材料14の前記レーン10の間における空気によって実施するか、または、電気絶縁性の材料を挿入することによって実施することが可能であり、その際、この電気絶縁性の材料は前記非導電性の分離層8を形成する。
【0028】
図2の前記加熱体4内に生じる渦電流6は、前記材料14の前記レーン10の内部に螺旋15の形状に生じる。これにより、前記加熱体4内に非常に均一な分布が生じる。前記加熱体4の内部における前記渦電流6のこの均一な分布に従って、前記加熱体4内の熱の発生も非常に均一なものになるであろう。
【0029】
しかし、前記渦電流6の発生をそもそもまず可能にするためには、前記帯体の始端11と終端12とは互いに導電性を有するように結合されていなければならず、これにより、それ自体において閉じた導電回路を形成することができる。これは、前記導電性結合部7を介して実現される。
【0030】
ここでも、前記加熱体4は、導電性の主特性が満たされている限り、実質的に様々な材料14で構成することが可能である。前記各レーン10の間における前記非導電性の分離層8も、同様に様々な材料14で構成することができる。前記加熱体4の前記材料14における最も重要な特徴は、導電性、あるいはその内部抵抗である。
【0031】
代替的な実施形態では、前記導電性材料のまた別の配置も考えられる。原理上、前記材料の前記各部分が導電性のブリッジによってそれ自体において閉じた1つまたは複数の導電回路に結合されている限り、どのような配置も可能である。同様に、前記各材料部分を異なる材料の組み合わせによって構成しておくことも可能である。代替的な実施形態の例が図3および図4に示されている。
【0032】
図3および図4は前記各材料部分13の代替的な配置を示し、これらの材料部分は全体としてそれぞれ1つの加熱体4を形成する。符号は図2の符号と一致している。
【0033】
既に述べたように、重要であることは、前記各材料部分13が、電気的に絶縁された状態に互いに離間して配置されていることであり、これにより、前記材料部分13内の渦電流は、前記電気結合要素7により予め定められた順序に沿って発生する。全ての材料部分13は、全体として、それ自体において閉じた1つまたは複数の導電回路を形成しなければならない。
【0034】
前記加熱体4をこのように複数の部分13に分割することによって、独自にそれ自体の用途に合わせた加熱体4を形成することが可能である。例えば、前記材料部分13の配置を加熱されるべき所定の面に適合させることによって、意図的に前記面を加熱することが可能となる。
【0035】
その他の代替的な実施形態では、前記材料部分における異なる幾何学的形状も考えられる。例えば、前記各材料部分を管状の構造物として実施しておくこともできるであろうし、これにより、前記加熱されるべき媒体が前記材料部分の周囲を流れることができるだけでなく、また、前記材料部分の内部を流通することも可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 磁界
2 誘導コイル
3 電流回路
4 加熱体
5 渦電流
6 渦電流
7 導電性結合部、電気結合要素
8 分離層
10 レ−ン
11 始端、螺旋の最も外側の端部
12 終端、螺旋の中心
13 材料部分
14 材料
15 螺旋
図1
図2
図3
図4