(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153607
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】車両フレームを有する自動車
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
B62D21/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-518942(P2015-518942)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公表番号】特表2015-525695(P2015-525695A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2013061651
(87)【国際公開番号】WO2014005786
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】102012013148.8
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】シェーパー・フランク
(72)【発明者】
【氏名】アイスマン・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ラングホルスト・フリードヘルム
(72)【発明者】
【氏名】クノップ・ゼーレン
【審査官】
森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−142194(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0006561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フレーム及び/又は補助フレーム(2;2a)を有し、この車両フレーム及び/又は補助フレームが、走行方向(F)に対して横及び/又は走行方向(F)に沿って位置する接触面(10;10a)を、別の構造ユニット(6;7;8;12)に対する結合面として備え、これら別の構造ユニットが、接触面(10;10a)を貫通する結合手段(11)を介して結合されている、自動車において、
それぞれの結合手段(11)の軸(13)が、結合手段によって貫通される接触面(10;10a)を、90°とは異なる角度(α)で通過すること、及び、結合手段(11)が、平面図で、車両長手方向軸(14)及び車両横方向軸(15)に対して角度付けされて位置すること、を特徴とする自動車。
【請求項2】
結合手段(11)のそれぞれの軸(13)が、結合手段によって貫通される接触面(10;10a)を、接触面(10;10a)内に位置するベクトルに対して30°〜60°の角度(α)で通過すること、を特徴とする請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
結合手段(11)のそれぞれの軸(13)が、結合手段によって貫通される接触面(10;10a)を、接触面(10;10a)内に位置するベクトルに対して約45度の角度で通過すること、を特徴とする請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項4】
結合手段(11)が、ナットで固定されるネジによって構成されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項5】
結合手段(11)が、共通の水平面内で、それぞれ対で及び互いに角度付けされて配置されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項6】
結合手段(11)が、約90°互いに角度付けされて配置されていること、を特徴とする請求項5に記載の自動車(1)。
【請求項7】
構造ユニット(6;7;8;12)が、サイドメンバ(3)に結合されていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項8】
結合された構造ユニット(8)が、サイドメンバ(3)に結合されたクロスメンバ(4)によって構成されていること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項9】
結合された構造ユニット(6;7)が、アクスル(5)、サスペンションユニット(12)又はそれ以外のシャーシ部材を保持するための垂直成分を有する、サイドメンバ(3)に結合されたキャリヤ(6a;7a)を有すること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項10】
結合された構造ユニット(2a)が、空気バネベローズ(12)のホルダを構成するか有すること、を特徴とする請求項9に記載の自動車(1)。
【請求項11】
それぞれの構造ユニット(6;7)を結合するために、結合手段(11)が、構造ユニット(6;7)、サイドメンバ(3)及びクロスメンバ(4)に貫入し、これらを互いに結合すること、を特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項12】
それぞれ結合された構造ユニット(6;7;8)が、結合手段(11)用の挿入チャネルと、このチャネルの軸に対して直角に位置する、結合手段(11)の頭部又は輪郭付き成分用のアバットメント(9)を有すること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車(1)。
【請求項13】
アバットメント(9)が、構造ユニット(6;7;8)に統合されていること、を特徴とする請求項12に記載の自動車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フレームを有し、この車両フレームが、特に走行方向に対して横及び/又は走行方向に沿って位置する接触面を、別の構造ユニットに対する結合面として備え、これら別の構造ユニットが、接触面を貫通する結合手段を介して結合されている、請求項1の上位概念に記載の自動車、特に商用車(NKW)に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーシ領域で構造ユニットを車両フレームに対して保持する大抵のネジは、フレーム部分とこれに結合された構造ユニットの間の接触面に対して平行−従ってネジ軸に対して横−に、剪断の負荷を受ける。例えば制動又は加速時には、長手方向に位置しかつ互いにネジ固定された接触面に沿ってそこのネジに剪断方向に作用する高荷重が車両長手方向に生じる。それは、これらネジが接触面を垂直に貫通するからである。このようなネジ固定部により、接触面においては、加えられたネジ荷重の約10%しか剪断力として伝達され得ない。しかしながら、予荷重を与えるこの法線力は、接触面において結合される部材が、接触面の平面内で一方向に互いに移動することを防止する。従って、十分高い法線力を保証することが重要である。大きい荷重を伝達するためには、多数のネジが必要である。
【0003】
しかしながら接触面における摩擦係数が大きい変動の支配下にあるので(文献によれば約3倍)、このような結合部を過剰寸法にして形成することが、結合手段の軸に対して横の荷重導入下での結合部の解離及びその剪断を確実に阻止するために必要である。これは、高い材料コストと部材の付加的な重量を惹起する。しかしながら、所望の軽量構造形成のため及びコンパクトな構造スペースの必要性のため、重量及びサイズに関してネジ固定部を最適化することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/074613号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/007096号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 829 767号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2 246 240号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある課題は、ここにおいて改善を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1の特徴を有する自動車によってこの課題を解決する。本発明の有利な形成及び発展形は、従属請求項2〜14に記載されている。
【0007】
本発明によれば、接触面において、それぞれの結合手段の軸が、結合手段によって貫通される接触面を、90°とは異なる角度で通過することによって、ネジ結合部の荷重を法線方向成分と横方向成分に分割することが達成されている。従って、予荷重の割合を著しく高めることを可能にする噛合い係合式の割合が得られる。これにより、一方では、ネジ呼びサイズを下げることができ、これが、材料コスト及び重量を下げる。加えて、ネジ結合部のための締結プロセスは、明らかに低い精度に選択することができるので、プロセスコストが低減され、結合部の信頼性が向上させられている。比較的小さいネジにより、必要な構造スペースも低減することができる。最適には、このようなネジ結合部は、少なくとも実質的に張力の負荷しか受けない。加えて、表面品質に対しても低くした要求を課すことができる。
【0008】
できるだけ高い予荷重を発生させるために、結合手段のそれぞれの軸が、結合手段によって貫通される接触面を、接触面内に位置するベクトルに対して30°〜60°の角度で通過する場合が、有利である。
【0009】
特に、摩擦係合と噛合い係合の間の最適な組合せのために、結合手段のそれぞれの軸が、結合手段によって貫通される接触面を、接触面内に位置するベクトルに対して約45度の角度で通過することができる。その場合、例えばμ=0.1の摩擦係数の場合、接触面に対して垂直に位置するネジによる標準ネジ固定と比較して、伝達すべき横方向力は、700%向上させることができ、ネジ間隙内の長手方向力は、30%低減されている。
【0010】
接触面が、平面図で、車両長手方向軸及び車両横方向軸に対して角度付けされて位置する限り、主力方向も、アクスルと車両フレームの間に、即ち横方向運動と長手方向運動の間にそれぞれ接触面に対して角度付けされて作用し、従って、そこに結合された部材の互いの剪断を少なくするので、結合部の付加的な信頼性が達成されている。接触面の平面内の荷重作用に対するこのような信頼性のために、接触面が、溝付け部又は摩擦を増大させるための同様の措置を備えている場合も寄与する。
【0011】
特に、ジョイント装置毎に、2つの軸方向外側に位置する接触面が、車両横軸に対して互いに反対に角度付けされて位置し、従って、外側の壁のように、その間に位置するジョイント装置を包囲することができる。
【0012】
高い安定性のために特に有利には、結合手段が、共通の平面、特に水平面内で、それぞれ対で及び互いに角度付けされて配置されている。
【0013】
この場合、結合手段は、接触面での垂線に対して対称に、約90°互いに角度付けされて配置することができるので、反対の荷重作用のために、−例えば加速及び制動時に−等しく良好な支持が得られる。
【0014】
高い負荷は、標準的なネジ固定部の場合は、例えば、構造ユニットが、サイドメンバに結合されている、従って接触面が走行方向に沿って位置するところに生じる。このような構造ユニットは、例えば、サイドメンバに結合されたクロスメンバによって構成すること、特にアクスル、サスペンションユニット又はそれ以外のシャーシ部材を、例えば空気バネベローズも、保持するための垂直成分を有する、サイドメンバに結合されたキャリヤによって構成することができる。
【0015】
結合手段の節約のため及び効率的な組立てのために特に有利には、固定手段が、それぞれの構造ユニットを結合するために、構造ユニット、サイドメンバ及びクロスメンバに貫入し、これら部材を同時に互いに結合する。
【0016】
有利には、それぞれ結合された構造ユニットが、固定手段用の挿入チャネルと、このチャネルの軸に対して角度付けされて位置する、固定手段の頭部又は輪郭付き成分用のアバットメントを有するので、自動的に固定手段の適切な位置が保証され、円錐形の楔又は結合手段を傾斜させるための同様の措置は不要である。車両のサイドメンバは、結合手段の貫入のために、例えば単純に長穴を備えることができる。特に、前記アバットメントが、直接的に構造ユニットに統合されている場合が有利である。
【0017】
本発明の別の利点及び特徴は、図面に図示した、以下で説明する本発明の対称の実施例からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】模範的に横に配置された、アクスル成分のキャリヤと、その結合部の領域に保持されたクロスメンバとを有する商用車の概略平面図
【
図2】横方向外側で付加的にシャーシ成分のキャリヤがサイドメンバに結合され、クロスメンバと結合されている、クロスメンバを介して結合された2つのサイドメンバ部分の斜め上からの斜視詳細図
【
図4】
図2と同様の視点から見た構造ユニットの結合部の斜視詳細図
【
図7】傾斜ネジ固定部と垂直なネジ固定部の荷重−変位グラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に概略的に図示した自動車1は、ここでは商用車(NKW)を構成し、車両フレーム2及び/又は例えば
図8に示した空気バネベローズキャリヤのような補助フレーム2aを備える。車両フレーム2は、典型的に2つの横のサイドメンバ3と複数のクロスメンバ4を有し、全体的に異なるように形成することができる。車両フレーム2には、少なくとも1つのアクスル5、例えばリヤアクスルが保持されている。
【0020】
例えば建設車又はオフロード車も、本発明により形成することができる。
【0021】
特に走行方向Fに対して横及び/又は走行方向Fに沿って位置する、結合面として使用される接触面10,10aには、別の構造ユニットを結合することができる。長手方向に位置する接触面10は、例えばサイドメンバ3の外面又は内面によって構成することができ、横方向に位置する接触面10aは、例えばアクスル5の拡大されたディファレンシャルによって又はクロスメンバ4の前面又は後面によって構成することができる。
【0022】
別の構造ユニットは、これらが接触面10,10aを貫通する結合手段を介して、例えばナットで固定されるネジ等を介して保持されるように、これら接触面10,10aに結合され、それぞれの結合手段11の軸13は、結合手段によって貫通される接触面10,10aを、90°とは異なる角度αで、即ち接触面に対して斜めに位置する。ナットで固定されるネジの代わりに、例えば
図10におけるような盲ら孔を設けることができ、これら盲ら孔に、ネジ11が係合する。リベット止め又はピン止めも、可能であり得る。
【0023】
特に、結合手段11のそれぞれの軸13は、結合手段によって貫通される接触面10,10aと、接触面10,10a内に位置するベクトルに対して30°〜60°の角度αで交差する。この場合、結合手段11は、共通の平面、特に水平面内で、例えば
図6に図示したように、それぞれ対で互いに角度付けされて配置することができる。ここでは、共に水平な平面内に位置する対の固定手段11が示されている。複数のこのような対が、上下に又は隣接して位置することができる。両結合手段11の間の角度は、ここでは約90°で向かい合って位置するが、これは強制的でなく、高い予荷重のための最適な場合を意味する。
【0024】
有利には、ここでも図示されているように、固定手段11の方向は、平面図で車両長手方向軸14に対しても、車両横方向軸15に対しても角度付けされて位置するので、固定手段の方向は、生じる両主荷重方向の一方に対する直線内に位置しない。
【0025】
図2及び3並びに
図4〜6による実施例では、構造ユニット6もしくは7が、車両フレーム2の横の両サイドメンバ3に結合されている。この場合、構造ユニット8は、両サイドメンバ3を結合するクロスメンバ4によって構成されている。
【0026】
結合された構造ユニット6もしくは7は、それぞれ、サイドメンバ3に結合された、垂直成分を有するキャリヤ6aもしくは7aによって構成され、特にアクスル5、サスペンションユニット11又は例えば空気バネベローズのホルダとして構成されたそれ以外のシャーシ部材12を保持するために使用される。
【0027】
このような空気バネベローズキャリヤは、特に
図8〜10による補助フレーム2aによって図示されている。そこには、空気バネベローズのために、図示されていない場合でも、固定手段11によって閉鎖可能なクランピングアイ16が設けられている。即ち、結合は、必ず車両フレーム2において行なう必要があるのではなく、シャーシに付設されたこのような補助フレーム2a又はシャーシの同様のユニットに適用することができる。
【0028】
図2〜6による実施例では、それぞれの構造ユニット6もしくは7を結合するために、固定手段11が設けられ、これら固定手段は、構造ユニット6もしくは7、サイドメンバ3及びクロスメンバ8に貫入し、全てを同時に互いに結合する。材料費及び組立費を節約するこの構造方式は、特に
図6による断面図で良好に認められる。ここでは、サイドメンバ3は、横方向内側に更に補強板3aによって二重化されているので、これに、長手方向に延在する、クロスメンバ8に対する第1の接触面10が続き、外側に、長手方向に延在する第2の接触面10が、構造ユニット7を取り付けるために提供されている(例えば
図4参照)。
【0029】
図6では、それぞれ結合された構造ユニット6もしくは7が、固定手段11用の挿入チャネルと、挿入チャネルを軸方向に制限する、固定手段11の頭部又は輪郭付き成分用のアバットメント9を有することも、良好に認められる。これらアバットメント9は、ここでは有利には、例えば
図4及び5において良好に認められるように、そこに相応の斜面が設けられていることによって、構造ユニット7に統合されている。これにより、別個の楔等が不要である。同じように、ここでも、横方向内側に位置するクロスメンバ8が、傾斜させられた端面9を、ネジ頭部又はナットのためのアバットメントとして既に一体に備えている。
【0030】
図7において、傾斜させることによって張力しか負荷を受けない(曲線II)ネジ11が、剪断方向に負荷を受ける(曲線I)ものよりも非常に大きい荷重を伝達することが明らかになる。本発明により、まさに対で互いに角度をなして向かい合って位置するネジの場合、接触面10もしくは10aに沿った荷重導入時に常に張力の作用を受けることを保証することができる。
【0031】
ウイッシュボーン式装置(
図1)又は4点リンク式装置(
図2,3)も、シャーシと結合されている別の部材も、このように結合することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 自動車
2 車両フレーム
2a 補助フレーム
3 サイドメンバ
4 クロスメンバ
5 車両アクスル
6 構造ユニット
6a 垂直成分を有するキャリヤ
7 構造ユニット
7a 垂直成分を有するキャリヤ
8 クロスメンバ
9 アバットメント
10 接触面
10a 接触面
11 結合手段
12 空気バネベローズ
13 結合手段の軸
14 長手方向軸
15 横方向軸
16 クランピングアイ