(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153609
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
F02B39/00 P
F02B39/00 D
F02B39/00 G
F02B39/00 N
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-521662(P2015-521662)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2015-522134(P2015-522134A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013049221
(87)【国際公開番号】WO2014011467
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】102012013659.5
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュムニグ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・デッカー・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・クレンウィンケル
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−508043(JP,A)
【文献】
特開2003−227344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F04D 1/00−13/16、17/00−19/02、
21/00−25/16、29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 軸受ハウジング(2)と、
− 前記軸受ハウジング(2)に取り付けられたシャフト(5)と、
− 前記シャフト(5)に配置されるタービンホイール(6)と、
− 前記シャフト(5)に配置されるコンプレッサホイール(7)と、
− 前記タービンホイール(6)又は前記コンプレッサホイール(7)の後壁(8)と外側面(11)との間のホイール側空間(10)であって、前記軸受ハウジング(2)の前記後壁(8)に対面するホイール側空間(10)と
を備える排気ガスターボチャージャ(1)であって、
− 前記軸受ハウジング(2)の前記外側面(11)に、前記回転する後壁(8)によって発生された流れを乱すための少なくとも1つの溝(13、18)が形成され、
前記溝(13)がらせん形状である、
排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記溝(13、18)がポケットの形態である請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
複数の円切片形状の溝(18)を特徴とする請求項1又は2に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項4】
前記らせん形状が、前記シャフト(5)の回転方向と逆方向に、内側から外側に向かって開口する請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
半径方向外側に延びる複数の溝(13)を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項6】
前記半径方向外側に延びる溝(13)が湾曲して延びる請求項5に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記シャフト(5)が前記軸受ハウジング(2)の前記外側面(11)を通して延び、シールが前記シャフト(5)と前記外側面(11)との間に配置される請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気ガスターボチャージャは、シャフトが回転運動可能に取り付けられるハウジングを有する。タービンホイールはシャフトの一方の端部に着座する。コンプレッサホイールはシャフトの他方の端部に着座する。軸受ハウジングの内部は、オイルで通常充填され、コンプレッサホイール及びタービンホイールに対してシールされる。タービンホイール及びコンプレッサホイールの本質的な構成要素はブレードである。タービンホイールでは、ブレードは排気ガスによって衝突される。コンプレッサホイールにおいて、ブレードは内燃機関用の給気を圧縮する。ブレードの反対側で、タービンホイール及びコンプレッサホイールの両方は後壁を有する。後壁は、軸受ハウジングの外側面の反対側に位置する。軸受ハウジングの前記外壁と、タービンホイール又はコンプレッサホイールの後壁との間の間隙又は空間は、通常、ホイール側空間と称される。コンプレッサホイール及びタービンホイールの回転中、回転流れがそれぞれのホイール側空間に発生され、この回転流れは、ある動作範囲において、ホイール側空間の半径方向内側領域に又はシャフトに負圧をもたらす可能性がある。前記負圧により、オイルは、シールを介して軸受ハウジングの内部からホイール側空間内に吸い込まれる。空気とオイルは、コンプレッサ及びタービンの流れ導き構成要素に沿ってエンジン内に及び/又は排気システム内に輸送されるので、前記漏洩オイルは、厳しい環境規制のため回避しなければならない排気ガス値の著しい悪化をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製造及び組立が廉価である一方で、可能な限り最高の効率でかつ可能な限り環境的に適合できる方法で操作することができる排気ガスターボチャージャを提供することである。特に、軸受ハウジングからホイール側空間内へのオイル漏洩を有効に防止することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい改良形態に関する。
【0005】
本発明によれば、溝が、タービンホイール又はコンプレッサホイールの後壁に対面する軸受ハウジングの外側面に形成される。前記溝は、回転する後壁によって発生された流れを乱すために役立つ。流れの前記破壊又は偏向の結果、ホイール側空間の半径方向内側の領域の圧力が増大され、これによって、軸受ハウジングの内部からホイール側空間内への漏洩が低減される。
【0006】
タービン又はコンプレッサホイールの後壁と軸受ハウジングの外側面との間の隙間は、排気ガスターボチャージャでは極めて小さい。軸受ハウジングの外側面に対するホイールの後壁の削り取りの危険を高めないように、本発明によれば、流れを乱すために突出要素が何ら使用されないことが意図される。その代わりに、本発明による溝のみが使用される。
【0007】
溝は、特にポケットの形態である。すなわち、溝は、軸受ハウジングの壁部のアパーチュアではなく、むしろポケット又は窪部又は凹部である。
【0008】
外側面の個々の溝又は多数の溝は、多様な形状を取り得る。簡単な一実施形態では、溝は、シャフトの全周の周りに円形に形成される。
【0009】
一代替例では、溝はらせん形状であることが意図される。前記らせん形状は、特に好ましくはタービンホイール及びコンプレッサホイールのシャフトの回転方向と逆方向に、内側から外側に向かって開口する。らせん形状の前記設計の結果、後壁が回転するときに向流が発生される。したがって、流れるガスは、らせん形状によってホイール側空間の半径方向内側の領域内に戻される。
【0010】
さらに、好ましくは、複数の半径方向外側に延びる溝を外側面に配置することが意図される。前記半径方向外側に延びる溝は、シャフトの周りに「光線のように」配置される。半径方向外側に延びる溝が湾曲して延び、さらに流れ方向に又は流れ方向と逆方向に傾斜し得ることが特に意図される。
【0011】
別の実施形態では、溝は円切片形状である。したがって、効率的に流れを乱すために複数の円切片形状の溝を円周に沿って直列に配置することが可能であることが好ましい。
【0012】
上述の溝の異なる実施形態は、複数の異なる溝が軸受ハウジングの外側面に形成されるように、容易に互いに組み合わせることが可能である。
【0013】
試験では、本発明による溝により、動作箇所に応じて、従来の装置に対して2.5〜8%の圧力増大をホイール側空間の半径方向内側の領域に獲得することができることが示されている。これにより、効率的に、軸受ハウジングの内部からホイール側空間内へのオイル漏洩が防止される。
【0014】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面を参照して例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】すべての例示的な実施形態のための本発明による排気ガスターボチャージャの単純化した概略図である。
【
図2】第1の例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの詳細図である。
【
図3】第2の例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの詳細図である。
【
図4】第3の例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの詳細図である。
【
図5】第4の例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、すべての例示的な実施形態のための排気ガスターボチャージャ1の一般的な構造の単純化した概略図を示している。排気ガスターボチャージャ1は、シャフト5が取り付けられるハウジング2を備える。タービンホイール6はシャフト5の一方の端部に着座する。コンプレッサホイール7はシャフト5の他方の端部に着座する。コンプレッサホイール7及びタービンホイール6は、各々、後壁8及びブレード9を有する。タービンホイール6は、排気ガスの流れによって衝突される。このようにして、タービンホイール6、シャフト5及びコンプレッサホイール7が回転される。コンプレッサホイール7は内燃機関用の給気を圧縮する。
【0017】
軸受ハウジング2の内部は、オイル又はオイル/空気混合気で充填され、タービンホイール6及びコンプレッサホイール7を収容する空間に対してシールされる。
【0018】
タービンホイール6及びコンプレッサホイール7の後壁8は、各々、軸受ハウジング2の外側面11の反対側に位置する。外側面11と後壁8との間に、両側で、各々、1つのホイール側空間10が画定される。
【0019】
さらに、
図1は、シャフト5に沿った軸方向14を示している。半径方向15は、軸方向14に対して直角に延びる。円周方向16は、軸方向14の周りに延びる。
【0020】
排気ガスターボチャージャ1の動作中、後壁8は、ホイール側空間10の外側面11に対して回転する。このようにして、回転流れ場がホイール側空間に発生され、半径方向外側に方向付けられたガス流がホイール後側に沿って発生される。これにより、ホイール側空間10内の圧力低下がもたらされる。軸受ハウジング2の内部に対してターボチャージャのいくつかの動作箇所に発生する負の圧力勾配の結果、軸受ハウジング2に対するシャフト5のシールにより漏れが生じ、オイル漏洩が起きる。本発明によれば、前記オイル漏洩は最大可能な程度に防止される。
【0021】
図2〜
図5は、タービンホイール6及び/又はコンプレッサホイール7の側面の後壁8の反対側に位置する外側面11の構造の4つの異なる例示的な実施形態を示している。同一又は機能的に同一の構成要素は、例示的な実施形態のすべてにおいて同一の参照番号によって示されている。
【0022】
図2によれば、外側面11に、全周の周りに形成される円形溝13が配置される。タービンホイール6又はコンプレッサホイール7は、外側面11に設けられた縁部17内で移動する。
【0023】
さらに、外側面11はシャフト凹部12を有する。シャフト5は前記シャフト凹部12を通して延びる。組立状態では、前記シャフト凹部12に、ホイール側空間10に対して軸受ハウジング2の内部をシールするためのシールが配置される。
【0024】
図3は、らせん形状の溝13を有する外側面11を示している。この場合、溝13は対数らせんに従う。らせん体は、シャフト5の回転方向と逆方向に、内側から外側に向かって開口する。図示した実施例では、シャフト5は、このように時計回りに回転するであろう。したがって、らせん形状の溝13は反時計回りに開口する。
【0025】
図3は、別の3つの溝18を示している。前記別の溝18は、各々円切片形状である。3つの円切片形状の溝18は、円周方向16に直列に配置される。溝13の内側端部は、口部19を介して別の溝18の1つの中に至る。内側溝の目的は、流れを減速させ、このように流れ場を乱すことなく静圧を増大することである。
【0026】
図4は、複数(実施例では12)の半径方向外側に延びる溝13を有する外側面11を示している。溝13は半径方向15に延びる。このことは、前記溝が円周方向16よりも半径方向15に延びることを意味する。すでに
図3に示した円切片形状の別の溝18が、さらに
図4に示されている。
【0027】
図4の溝13は湾曲形状である。このことは、各々の個々の溝が円周方向16に湾曲していることを意味する。
【0028】
図5は、同様に、12の半径方向外側に延びる溝13と、3つの別の円切片形状の溝18とを有する外側面11を示している。
図4と対照的に、
図5の溝13は、半径方向に湾曲し、同様に円周方向16に傾斜している。前記傾斜は、溝13の外縁の第1の箇所20及び第2の箇所21が、シャフト5の中心点を通した直線上に位置しないことを意味する。
【0029】
図2、
図4及び
図5に示した溝13及び別の溝18の実施形態は、主に、ホイール側空間10の半径方向外側に方向付けられた流れを乱すために使用される。
図3のらせん形状の溝13によって、流れは、質量流がらせん形状の溝13を介してホイール側空間10の半径方向内側の領域に至るように方向転換される。溝の数、位置、深さ及び形状は、それぞれの用途に関するCFD計算及び試験手順によって最適化できることが好ましい。
【0030】
本発明の上述の説明に加えて、本発明の追加の開示のために
図1〜5の本発明の概略図が明示的に本明細書により参照される。
【符号の説明】
【0031】
1 排気ガスターボチャージャ
2 軸受ハウジング
3 タービンハウジング
4 コンプレッサハウジング
5 シャフト
6 タービンホイール
7 コンプレッサホイール
8 後壁
9 ブレード
10 ホイール側空間
11 外側面
12 シャフト凹部
13 溝
14 軸方向
15 半径方向
16 円周方向
17 縁部
18 別の溝(円切片形状)
19 口部
20 第1の箇所
21 第2の箇所