特許第6153629号(P6153629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153629
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】被覆紐状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/00 20060101AFI20170619BHJP
   D05C 7/08 20060101ALI20170619BHJP
   H01B 13/34 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   B44C5/00 F
   D05C7/08
   H01B13/34 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-558619(P2015-558619)
(86)(22)【出願日】2014年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2014051054
(87)【国際公開番号】WO2015111129
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】593061031
【氏名又は名称】株式会社タナベ刺繍
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】田部 智章
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳典
(72)【発明者】
【氏名】朝國 加絵
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020416(JP,A)
【文献】 特開2007−00501(JP,A)
【文献】 特開2001−055660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/00
D05C 7/08
D06Q 1/00
H01B 7/36
H01B 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状の基材上に紐状体を載置する載置工程と、
前記紐状体を刺繍材により前記基材に縫い付ける縫付工程と、
前記基材を前記紐状体から切り離す切除工程とを備える被覆紐状体の製造方法。
【請求項2】
前記基材は、前記紐状体の形状に合わせて切り抜かれた切抜部を有する型板の一方面に貼着されており、
前記載置工程は、前記切抜部を介して前記紐状体を前記基材上に載置する請求項1に記載の被覆紐状体の製造方法。
【請求項3】
前記刺繍材は、上糸および下糸を備えており、
前記縫付工程は、直線状に配置した前記紐状体の両側で前記上糸および下糸を交絡させながら千鳥縫いを行う工程を備える請求項1に記載の被覆紐状体の製造方法。
【請求項4】
前記載置工程は、前記基材上に、前記紐状体と隣接するように装飾体を載置する工程を含み、
前記縫付工程は、前記紐状体を長手方向に沿って前記基材に縫い付ける途中で前記装飾体を前記基材に縫い付ける工程を備え、
前記切除工程は、前記基材を前記紐状体および前記装飾体から切り離す工程を備える請求項1に記載の被覆紐状体の製造方法。
【請求項5】
前記基材は、引裂き容易な延伸フィルムからなる請求項1に記載の被覆紐状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆紐状体の製造方法に関し、より詳しくは、電気コード等の紐状体を刺繍材により被覆した被覆紐状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンコード、電源コード、延長コード等の電気コードを布や糸などで被覆して、装飾性を高めることが従来から検討されている(例えば、特許文献1および2)。電気コードの具体的な被覆方法としては、例えば、布や紐などを電気コードに接着する方法、糸や革紐などを電気コードに巻き付けあるいは縫い付ける方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−155623号公報
【特許文献2】特開2012−20416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、被覆対象が、電気コードや電源ケーブル等のように使用中に繰り返し屈曲することが多い紐状体である場合には、接着や巻き付けによる被覆方法では耐久性の面で問題があった。一方、紐状体に糸を縫い付ける方法は、刺繍糸を用いることによって装飾性を高めることができる一方、作業中に針を誤って貫通させるおそれがあるため、例えば、電気コードの導電線を傷付けて導通不良が生じる等の問題が生じ易く、作業が困難になり易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、紐状体を刺繍材により容易且つ確実に被覆することができる被覆紐状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、可撓性を有するシート状の基材上に紐状体を載置する載置工程と、前記紐状体を刺繍材により前記基材に縫い付ける縫付工程と、前記基材を前記紐状体から切り離す切除工程とを備える被覆紐状体の製造方法により達成される。
【0007】
この被覆紐状体の製造方法において、前記基材は、前記紐状体の形状に合わせて切り抜かれた切抜部を有する型板の一方面に貼着されていることが好ましく、前記載置工程は、前記切抜部を介して前記紐状体を前記基材上に載置することが好ましい。
【0008】
前記刺繍材は、上糸および下糸を備えることが好ましく、前記縫付工程は、直線状に配置した前記紐状体の両側で前記上糸および下糸を交絡させながら千鳥縫いを行う工程を備えることが好ましい。
【0009】
前記載置工程は、前記基材上に、前記紐状体と隣接するように装飾体を載置する工程を備え、前記縫付工程は、前記紐状体を長手方向に沿って前記基材に縫い付ける途中で前記装飾体を前記基材に縫い付ける工程を備え、前記切除工程は、前記基材を前記紐状体および前記装飾体から切り離す工程を備えることができる。
【0010】
前記基材は、引裂き容易な延伸フィルムからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紐状体を刺繍材により容易且つ確実に被覆することができる被覆紐状体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る被覆紐状体の製造方法に用いる型板の平面図である。
図2】(a)から(c)は、図1に示す型板を用いた被覆紐状体の製造方法の一例を示す要部工程図である。
図3】被覆紐状体の製造工程の途中の状態を示す要部拡大図である。
図4】(a)は被覆紐状体の製造工程の途中の状態を示す断面図であり、(b)は製造後の被覆紐状体の断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る被覆紐状体の製造方法に用いる型板の平面図である。
図6図5に示す型板を用いた被覆紐状体の製造方法の一例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被覆紐状体の製造方法に用いる型板の平面図である。図1に示す型板1は、イヤホンコードを被覆対象の紐状体とする場合に使用するものである。型板1は、矩形状に形成された板本体2が枠体4内に設けられて構成されており、板本体2には、被覆対象となる紐状体に合わせて切り抜かれた2つの切抜部6,8が形成されている。図1に破線で示すように、切抜部6,8は、板本体2の一方面(裏面側)に易剥離性の接着剤等で貼着された基材10,12によりそれぞれ覆われており、切抜部6,8を介して基材10,12上に紐状体(図示せず)を載置することができる。
【0014】
板本体2は、基材10,12の貼着により変形しない程度の剛性を有することが好ましく、例えば、厚紙や、合成樹脂プレート、金属プレート等から形成することができる。切抜部6,8は、被覆対象であるイヤホン全体の形状に合わせて、それぞれがイヤホンコードの半分程度を収容できるように形成されている。一方の切抜部6は、イヤホンコードのプラグ側の半分程度を、直線状に延ばした状態で収容することができる。他方の切抜部8は、イヤホンコードが二股に分岐した部分を、それぞれ直線状に延ばした状態で収容することができる。
【0015】
一方の切抜部6は、長手方向の両側に、幅狭の保持部6aおよびスリット状の挿入部6bを備えている。保持部6aでイヤホンコードの先端部を挟持する一方、挿入部6bに挿入片(図示せず)を挿入してイヤホンコードの中間部を係止することにより、イヤホンコードを切抜部6内に固定することができる。他方の切抜部8も、一方の切抜部6と同様に、保持部8aおよび挿入部8bを備えている。イヤホンコードを切抜部6,8内に確実に固定可能であれば、保持部6a,6bおよび挿入部8a,8b以外の固定手段を用いてもよい。
【0016】
基材10,12は、ミシン針が貫通可能なシート状の部材であり、縫付時にイヤホンコードに沿うように可撓性を有することが好ましい。基材10,12の材質として、例えば、合成樹脂フィルムや、金属箔、薄紙などを挙げることができる。基材10,12は、最終的にはイヤホンコードから切除されることから引裂き性に優れることが好ましく、例えば、延伸方向に引裂きが容易なポリエチレンフィルム等の延伸フィルムを好適に使用することができる。
【0017】
次に、上記の型板1を用いて被覆紐状体を製造する方法を、図2を参照しながら説明する。図2は、図1に示す型板の切抜部6の一部を拡大して示している。まず、図2(a)に示すように、イヤホンコード20のプラグ20a側を直線状に延ばした状態で切抜部6の内部に収容し、プラグ20aの基部を保持部6aに挟持すると共に、イヤホンコード20の中央側を図1に示す挿入部8bにおいて固定する。こうして、イヤホンコード20が、切抜部6を介して基材10上に位置決めされる。
【0018】
ついで、この型板1を自動ミシン(図示せず)に搭載し、図2(b)に示すように、イヤホンコード20のプラグ20a側から中央付近までを、刺繍材22により基材10に縫い付ける。図3に拡大図で示すように、刺繍材22は、上糸22aおよび下糸22bから構成されており、イヤホンコード20の両側においてミシン針を基材10に貫通させて、上糸22aと下糸22bとを千鳥本縫いによって交絡させることにより、上糸22aが、基材10の表面側でイヤホンコード20を覆うようにジグザグ状に配置される。なお、基材10の裏面側においては、下糸22bがジグザグ状に配置される。上糸22aのジグザグ形状のピッチpは、図3においては誇張して大きく記載しているが、実際にはイヤホンコード20が露出しない程度にピッチpを狭めて縫い付けることが好ましい。上糸22aおよび下糸22bは、いずれか一方がジグザグ状となり、他方がイヤホンコード20に沿って直線状に延びる状態で、両者を交絡させることも可能である。
【0019】
上糸22aおよび下糸22bの交絡位置は、図4(a)に示すように、基材10の上方(表面側)とすることができるが、基材10の内部や基材10の下方(裏面側)であってもよく、糸調子は適宜調節可能である。刺繍材22としては、刺繍糸を好適に使用することができ、色や光沢等によって装飾性を高めることができる。刺繍材22は、糸状以外に、紐状や帯状等の刺繍材であってもよい。また、刺繍材22の材質は、肌触り性やアレルギー対策など装飾以外を主目的とするものであってもよい。
【0020】
こうして、刺繍材22によりイヤホンコード20の半分程度を基材10に縫い付けた後、図1に示す他方の切抜部8を使用して、イヤホンコード20の残りの部分を、上記と同様に刺繍材22により基材10に縫い付ける。こうして、イヤホンコード20の略全体を、基材10に縫い付けることができる。
【0021】
この後、イヤホンコード20を型板1から取り出して、図4(b)に示すように、基材10をイヤホンコード20から切り離すことにより、イヤホンコード20の外周全体が上糸22aおよび下糸22bにより覆われた状態になり、図2(c)に示すように、イヤホンコード20を刺繍材22で被覆した被覆紐状体30を得ることができる。基材10は、イヤホンコード20から切り離した後も、イヤホンコード20と刺繍材22との間に僅かに残留する可能性があるが(図4(b)参照)、刺繍材22のジグザグ形状のピッチを密にすることで、残留した基材10が外部に露出して美感に悪影響を与えることを防止することができる。この後は、型板1に残留する基材10(,12)を剥がして新たな基材10(,12)を貼着することにより、型板1を繰り返し使用することができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の被覆紐状体の製造方法によれば、イヤホンコード20を刺繍材22により基材10,12に縫い付けた後、基材10,12をイヤホンコード20から切り離すようにしているので、イヤホンコード20をミシン針等で傷付けることなく、刺繍材22により容易且つ確実に被覆することができ、耐久性が良好な被覆紐状体30を得ることができる。 また、この基材10,12が一方面に貼着された型板1を使用することにより、被覆紐状体30をより容易に製造することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、刺繍材による被覆対象としてイヤホンコードを例に説明したが、電源コード、延長コード等の電気コードやケーブル類など、他の紐状体であってもよい。
【0024】
また、図5に示すように、型板1’に形成する直線状の切抜部14に連通するように切り欠いて1または複数の装飾部14cを形成し、切抜部14および装飾部14cを覆うように基材16を貼着してもよい。この型板1’によれば、図6に示すように、切抜部14にイヤホンコード等の紐状体20を配置すると共に、装飾部14cに装飾体30(例えば、植物の葉や花など)を配置し、紐状体20を基材10に対して刺繍材22により長手方向に沿って縫い付ける途中で、刺繍材32により装飾体30を基材10に縫い付けることができる。刺繍材22,32は、同一のものであってもよく、あるいは異なるものであってもよい。この後、紐状体20および装飾体30から基材10を切り離すことにより、装飾性を高めた被覆紐状体を得ることができる。なお、図5において、図1と同様の構成部分に同一の符号を付している。
【符号の説明】
【0025】
1 型板
2 板本体
4 枠体
6,8 切抜部
10,12 基材
20 イヤホンコード(紐状体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6