(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153668
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】押出機送りシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20170619BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20170619BHJP
B29C 47/12 20060101ALI20170619BHJP
B29C 47/10 20060101ALI20170619BHJP
B29C 47/92 20060101ALI20170619BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20170619BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/321
B29C47/12
B29C47/10
B29C47/92
B33Y30/00
【請求項の数】7
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-533357(P2016-533357)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-529136(P2016-529136A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014049570
(87)【国際公開番号】WO2015020944
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】61/863,110
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/448,364
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ぺレス アルフォンソ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハイド クリストファー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ペナ ドール マテオ
(72)【発明者】
【氏名】ピーパー フォレスト ダブリュ
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/134298(WO,A1)
【文献】
特表2013−506581(JP,A)
【文献】
特表2013−506580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B29C 47/00 − 47/96
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィラメント材料を受容および係合するために、互いに逆方向の雌ねじを持ち、間隔を置いた、一対の回転可能な要素と、
前記回転可能な要素を逆方向に回転させ、それによってノズルを通してのその後の吐出のために前記フィラメントを液化室内に駆動するための電気モータと、
を備え、
前記一対の回転可能な要素は、前記フィラメントの軸方向に間隔を開けて配される、
ことを特徴とする押出機送りシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記モータによって駆動されて前記回転可能な要素を逆方向に回転させる歯車列をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記モータがステッピングモータであることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記モータがDCモータであることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムであって、前記歯車列が前記モータによって駆動される傘歯車を含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記回転可能な要素が雌ねじ付き六角ナットであることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記モータの電力を制御し、それによってフィラメント材料押出速度を制御するための制御ループをさらに含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機に関し、より詳しくは、ねじ駆動装置を利用する付加製造装置において使用される押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2014年7月31日に出願された米国特許出願第14/448,364号の、および2013年8月7日に出願された米国仮出願第61/863,110号の優先権を主張し、その内容が本出願に引用して援用される。
【0003】
3Dプリンタなどの付加製造装置は、支持面上へフィラメント材料を押し出すことによって、物体を層単位で作り上げる。生産される物体の品質は、押出機ヘッドが層を作り上げるために領域を横断する際の、そのX−Y位置の制御と連動して、押出機を通してのフィラメント材料の流れ速度(flow rate)の厳格な制御に大いに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術の押出機システムが、
図1に概略的に図示される。フィラメント材料10は、フィラメント材料10を、液化室14内に向かって下方へ駆動するピンチローラ送りシステム12を通過する。その後、フィラメント材料は、ノズル16を通して作業台18上へ吐出される。ピンチローラシステム12は、それがフィラメント材料を液化室14内に駆動する際に、フィラメント材料10に各側で係合する。
図1における配置で達成され得る駆動力は限られる。さらに、
図1に図示される配置は、ピンチローラを駆動するモータシステムにおけるステップサイズ制限のために所望されるほど正確でない。
【0005】
また、雌ねじ付きナットを使用してフィラメントを液化室内に駆動することも知られている。この場合、フィラメントは、回転に応じてフィラメント材料を線形に駆動する雌ねじ付きナットを通過する。しかしながら、ナット回転はフィラメントに不要なトルクをかけ、フィラメントが線形に駆動される際に、フィラメントがひずんでしまう。
【0006】
本発明の目的は、フィラメントを押出機内に駆動する一方で、不要なトルクを実質的に排除するために、逆回転する要素を利用するねじ駆動装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る押出機送りシステムは、プラスチックフィラメント材料を受容および係合するために、互いに逆方向の雌ねじを持ち、間隔を置いた、一対の回転可能な要素を含む。電気モータが、回転可能な要素を逆方向に回転させ、それによってノズルを通してのその後の吐出しのためにフィラメントを液化室内に駆動するために提供される。好適な実施形態において、システムは、モータによって駆動されて回転可能な要素を逆方向に回転させる歯車列を含む。適切なモータはステッピングモータまたはDCモータである。
【0008】
好適な実施形態において、歯車列は、モータによって駆動される傘歯車を含む。
【0009】
さらに別の実施形態において、本発明のシステムは、モータの電力を制御し、それによってフィラメント材料押出速度を制御するための制御ループをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】先行技術の付加製造押出機システムの横断面図である。
【
図2】フィラメント材料を駆動するための一対の逆回転可能な六角ナットの概略説明図である。
【
図3】モータ、流れ調節器および逆回転する傘歯車を駆動する傘歯車を活用して本明細書で開示される本発明の実施形態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図2を参照すると、フィラメント材料10が、第1および第2の六角ナット20および22の内部を通過しているのが見られる。六角ナット20は、例えば、右ねじ山パターンの雌ねじ付きである。同様に、六角ナット22は、左ねじ山パターンのように、前記ネジ山と逆方向を有する、雌ねじ付きである。フィラメント10の直径が、六角ナット20および22を貫くねじ穴に対してわずかに大き目であることが好ましい。図で見られるように、六角ナット20は、反時計回り方向に回転され、六角ナット22は時計回り方向に回転される。逆回転する六角ナット20および22のねじ山が逆に向けられるので、フィラメント材料10は、
図2において下方へ駆動される。
【0012】
重要なことに、六角ナット20および22が、逆回転するので、2つの六角ナット間のトルクから生じる材料ひずみは、逆回転するナットがトルク効果を一致させるにつれて、実質的に排除される。
【0013】
本発明の実施形態が
図3に図示される。フレーム30は、傘歯車32,34および36を回転できるように支持する。流れ調節器40の管理下のモータ38は、傘歯車32を回転させる。傘歯車32は、傘歯車34および36に動作上係合し、これらの傘歯車を逆回転方向に駆動する。認識されるように、傘歯車34の内部は、右手になど、第1の向きにねじ付けられ、傘歯車36は、左手になど、逆向きに雌ねじ付きである。モータ38が、流れ調節器40の管理下で起動されると、フィラメント10は
図1に図示されるように液化室内に駆動されるであろう。モータ38は、ステッピングモータまたはDCモータでよい。
図3に図示されるモータ38の配置は、システムを通してのフィラメント材料10の流れが正確に制御され得ることを保証する。
【0014】
当業者は、適宜、回転可能な要素を駆動するために別々のモータが使用され得ることを認識するであろう。また、逆回転する傘歯車を通過するフィラメントのひずみを最小化するために、傘歯車34および36間の空間が小さくされるべきであることも注目される。
図3における間隙は明確にするために誇張されている。
【0015】
本発明者らは、フィラメント10の直径の変動性および他の物理的な不一致のため、傘歯車34および36を同じ速度で逆方向に駆動することは、一定の押出速度を確実にするためには十分でないことを本明細書で判断した。本発明者らは、押出速度と本発明のねじ駆動装置を使用するモータ38への入力電力との間に直接的な関係があることを分析的に判断した。特に、本発明者らは、押出速度Q=kIVであることを判断した。すなわち、フィラメントの流れ速度Qはモータ38上の電力(IV)に線形に比例する。一例として、一定の流れ速度を有することを望む場合、モータ38への電力は一定に保持される(すなわち、モータ電流(I)とモータ電圧(V)の積は一定に保持される)。流れ速度を増減するために、モータ38の電圧はモータ38の電圧へのPWM制御を介して制御される。したがって、フィラメントの流れ速度は、モータ38への電力を制御することによって制御される。流れ調節器40は、たとえばPID制御を利用する従来の制御ループを含んでよい。
【0016】
本発明の変形および変更は当業者には明らかであろうことが認識され、そしてすべてのそのような変形および変更は添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。