特許第6153707号(P6153707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6153707-トルクコンバータ 図000002
  • 特許6153707-トルクコンバータ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153707
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/02 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
   F16H45/02 X
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-189385(P2012-189385)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47811(P2014-47811A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年11月7日
【審判番号】不服2016-8217(P2016-8217/J1)
【審判請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕樹
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 滝谷 亮一
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−278717(JP,A)
【文献】 特開2007−132459(JP,A)
【文献】 特開2004−257537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側からのトルクが入力されるフロントカバーと、
外周部が前記フロントカバーに溶接により固定されたインペラと、
前記インペラに対向して配置されたタービンと、
前記インペラと前記タービンとの内周部の間に配置されたステータと、
外周部に摩擦部材が固定され油圧により軸方向に移動して前記フロントカバーに前記摩擦部材が押圧されるピストンを有し、前記フロントカバーから前記タービンへトルクを直接伝達するためのロックアップクラッチと、
を備え、
前記ピストンは、トルクコンバータ内に作動油がない状態では付勢部材で付勢することなしに前記摩擦部材が前記フロントカバーに接触するように配置されており、
前記ピストンは、前記フロントカバーと前記ピストンとの間に作動油が供給された状態では前記摩擦部材が前記フロントカバーから離れるように、かつ前記ピストンの前記タービン側の空間の油圧が前記フロントカバー側の空間の油圧よりも高くなった状態では前記摩擦部材が前記フロントカバーに押し付けられるように配置されており、
前記摩擦部材は、外周部に、外周側に行くにしたがって前記フロントカバーから離れるように傾斜するテーパ部を有している、
トルクコンバータ。
【請求項2】
前記摩擦部材は、前記ピストンにピストン作動用の油圧が供給されていない状態で前記フロントカバーに圧接されている、請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
前記摩擦部材と前記フロントカバーとの距離を調整するための調整部材をさらに備えた、請求項1又は2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記タービンは、タービンシェルと、前記タービンシェルの内部に固定された複数のタービンブレードと、前記タービンシェルの内周部に固定されトルクを出力するタービンハブと、を有し、
前記ピストンは、環状に形成されるとともに、内周部に前記タービンハブ側に延びる筒状部を有し、前記筒状部の内周面が前記タービンハブの外周面に摺動自在に支持されており、
前記調整部材は前記筒状部の軸方向先端と前記タービンハブとの間に配置されている、
請求項に記載のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータ、特にロックアップクラッチが設けられたトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータは、内部の作動流体を介してエンジンからのトルクをトランスミッション側へ伝達する装置であり、主に、フロントカバーと、インペラと、タービンと、ステータとから構成される。
【0003】
トルクコンバータには、トルクの伝達効率を向上させるためにロックアップクラッチが設けられている。ロックアップクラッチは、フロントカバーとタービンとの間の空間に配置されており、トルクコンバータの機能を必要としない領域において、フロントカバーとタービンとを機械的に連結することでフロントカバーからタービンにトルクを直接伝達する。具体的には、ロックアップクラッチは、油圧によって軸方向に移動自在なピストンを有している。ピストンの外周部には摩擦部材が固定されており、この摩擦部材がフロントカバーの摩擦面に押圧されることでフロントカバーと連結される。
【0004】
以上のように、ロックアップクラッチのピストンが軸方向に移動することで、ロックアップクラッチはオン(クラッチ連結状態)になる。したがって、ロックアップクラッチの応答性を良好にするためには、ピストンを素早くフロントカバー側に移動させる必要がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示されたトルクコンバータでは、ピストンに板ばねを固定するとともに、この板ばねに摩擦部材を固定している。そして、ピストンに油圧が作動していな状態において、摩擦部材を板ばねによってフロントカバーに圧接することにより、ロックアップクラッチの応答性を改善するようにしている。
【0006】
また、特許文献2に示されたトルクコンバータでは、ピストン内周部とタービンハブ外周面との間に環状の摺動部材を配置し、摺動部の摩擦抵抗を抑えてロックアップクラッチの応答性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−63152号公報
【特許文献2】特開2006-29357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2のトルクコンバータでは、ピストンに板ばねを設けたり、あるいはピストンとタービンハブとの間に摺動部材を設けたりすることによって、ロックアップクラッチの連結時に、ピストンの摩擦部材をフロントカバー側に素早く移動させている。
【0009】
しかし、これらの特許文献の構成では、板ばねや摺動部材が必要になり、コストアップを招くことになる。
【0010】
本発明の課題は、簡単な構成でロックアップクラッチのクラッチ連結時の応答性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1側面に係るトルクコンバータは、エンジン側からのトルクが入力されるフロントカバーと、外周部がフロントカバーに溶接により固定されたインペラと、インペラに対向して配置されたタービンと、インペラとタービンとの内周部の間に配置されたステータと、フロントカバーからタービンへトルクを直接伝達するためのロックアップクラッチと、を備えている。ロックアップクラッチは、外周部に摩擦部材が固定され油圧により軸方向に移動してフロントカバーに摩擦部材が押圧されるピストンを有している。そして、ピストンは、ピストン作動用の油圧が供給されていない状態では摩擦部材がフロントカバーに接触し、かつフロントカバーとピストンとの間に作動油が供給された状態では摩擦部材がフロントカバーから離れるように配置されている。
【0012】
ここで、トルクコンバータにおいては、フロントカバーとインペラの外周部を溶接すると、軸方向に膨らむ。また、トルクコンバータの内部に流体を供給すると、内圧によって、また遠心力による油圧によって、フロントカバーとインペラとが離れるように軸方向に膨らむ。すなわち、トルクコンバータの組み付け時において、フロントカバーとインペラとを溶接する前段階や、トルクコンバータ内部に流体を供給する前段階において、ピストンの摩擦部材とフロントカバーとが接触するような位置関係にあっても、ピストンの配置を適切な位置に配置することによって、使用時にはこれらの間に隙間を生じさせることができる。
【0013】
そこで本発明では、ピストンの摩擦部材とフロントカバーとが、使用前では互いに接触し、かつ実際の使用時には両者が離れるように配置している。
【0014】
このため、実際の使用時におけるピストンの摩擦部材とフロントカバーとの隙間を最小限にすることができ、ロックアップクラッチの連結時における応答性を改善することができる。また、ここでは、従来のトルクコンバータで用いられているような特別な部材は不要となり、コストアップを避けることができる。
【0015】
本発明の第2側面に係るトルクコンバータは、第1側面のトルクコンバータにおいて、摩擦部材は、ピストンに油圧が作動していない状態でフロントカバーに圧接されている。
【0016】
ここでは、使用前においては、ピストンの摩擦部材はフロントカバーに圧接されている。すなわち、両者の間の隙間を「0」ではなく「マイナス」にしている。このため、実際の使用時における両者の間の隙間をより小さくでき、応答性をさらに改善することができる。
【0017】
本発明の第3側面に係るトルクコンバータは、第1又は第2側面のトルクコンバータにおいて、摩擦部材は、外周部に、外周側に行くにしたがってフロントカバーから離れるように傾斜するテーパ部を有している。
【0018】
使用時において、内圧によってトルクコンバータが膨らんだ場合、外周側よりも内周側の方がより膨らみやすい。すなわち、使用時にトルクコンバータが軸方向に膨らんでも、膨らむ量は、外周側は内周側に比較して小さい。
【0019】
そこで、この第3側面のトルクコンバータでは、摩擦部材の外周側にテーパ部を設けている。これにより、使用時におけるトルクコンバータの膨らみが小さい場合でも、摩擦部材とフロントカバーとの間に確実に隙間を確保することができる。
【0020】
本発明の第4側面に係るトルクコンバータは、第1から第3側面のいずれかのトルクコンバータにおいて、摩擦部材とフロントカバーとの距離を調整するための調整部材をさらに備えている。
【0021】
ここでは、摩擦部材とフロントカバーとの隙間を調整部材によって調整できるので、各部材の寸法精度や組み付け精度を厳しく管理する必要がない。したがって、製造が容易になる。
【0022】
本発明の第5側面に係るトルクコンバータは、第4側面のトルクコンバータにおいて、タービンは、タービンシェルと、タービンシェルの内部に固定された複数のタービンブレードと、タービンシェルの内周部に固定されトルクを出力するタービンハブと、を有している。また、ピストンは、環状に形成されるとともに、内周部にタービンハブ側に延びる筒状部を有し、筒状部の内周面がタービンハブの外周面に摺動自在に支持されている。そして、調整部材は筒状部の軸方向先端とタービンハブとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明では、簡単な構成でロックアップクラッチのクラッチ連結時の応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるトルクコンバータの縦断面構成図。
図2】摩擦部材の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[全体構成]
図1に、本発明の一実施形態によるトルクコンバータ1の縦断面を示す。図1の左側にはエンジン(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。また、図1に示すO−Oは、トルクコンバータ1の回転軸線である。
【0026】
トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションのドライブシャフト2にトルクを伝達するための装置であり、エンジンからのトルクが入力されるフロントカバー3と、3種の羽根車(インペラ4、タービン5、ステータ6)からなるトルクコンバータ本体7と、ロックアップクラッチ8と、から構成されている。
【0027】
フロントカバー3は、円板状の部材であり、主に、円板部3aと、円板部3aの外周部に形成された軸方向トランスミッション側に突出する外周筒状部3bと、を有している。外周筒状部3bは、インペラ4の外周部に溶接によって固定されている。
【0028】
インペラ4は、インペラシェル10と、その内側に固定された複数のインペラブレード11と、を有している。インペラシェル10の外周部は、前述のように、フロントカバー3の外周筒状部3bの先端部に溶接されている。
【0029】
タービン5は、流体室内でインペラ4に対向して配置されている。タービン5は、タービンシェル13と、タービンシェル13に固定された複数のタービンブレード14と、タービンシェル13の内周部に固定されたタービンハブ15と、を有している。
【0030】
タービンハブ15は、軸方向に延びる筒状部15aと、筒状部15aから半径方向外方に延びる円板状のフランジ部15bと、を有している。筒状部15aの内周部にはスプライン孔15cが形成されており、トランスミッションのドライブシャフト2がスプライン係合可能である。フランジ部15bにはタービンシェル13の内周部がリベット16により固定されている。
【0031】
ステータ6は、インペラ4とタービン5の内周部間に配置され、タービン5からインペラ4へと戻る作動油の流れを調整するための機構である。ステータ6は、主に、環状のステータキャリア18と、その外周面に設けられた複数のステータブレード19とから構成されている。ステータキャリア18は、ワンウェイクラッチ20を介して図示しない固定シャフトに一方向へ回転可能に支持されている。
【0032】
また、フロントカバー3とタービンハブ15の筒状部15aの先端との軸方向間にはスラストワッシャ22が設けられている。さらに、タービンハブ15のフランジ部15bとワンウェイクラッチ20との間には第1スラストベアリング23が設けられ、ステータキャリア18とインペラシェル10との間には第2スラストベアリング24が設けられている。
【0033】
[ロックアップクラッチ]
ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3とタービン5とを機械的に連結するための装置である。ロックアップクラッチ8は、主に、フロントカバー3からトルクが入力されるピストン30及びリティニングプレート31と、ドリブンプレート32と、リティニングプレート31とドリブンプレート32とを回転方向に弾性的に連結する複数のトーションスプリング33とから構成されている。
【0034】
ピストン30は、円板状のプレート部材であって、外周部に摩擦部材34が固定されている。このピストン30は、フロントカバー3側及びタービン5側の油圧を制御することによって軸方向に移動し、摩擦部材34をフロントカバー3の側面に押圧し(ロックアップクラッチのオン(連結)状態)、あるいはフロントカバー3の側面から離反させること(ロックアップクラッチのオフ(連結解除)状態)が可能である。
【0035】
摩擦部材34は、図2に拡大して示すように、外周部に、外周側に行くにしたがってフロントカバー3から離れるように傾斜するテーパ部34aを有している。なお、この図2では、フロントカバー3が内圧等によって膨らんだ様子を誇張して示している。
【0036】
図2から明らかなように、摩擦部材34にテーパ部34aが形成されていない場合(図2の二点鎖線で示す形状)、フロントカバー3が変形すると、摩擦部材34の外周端部に接触する可能性がある。しかし、テーパ部34aを設けることによって、フロントカバー3が変形しても摩擦部材34に接触するのを抑えることができる。したがって、ドラグが生じるのを避けることができる。
【0037】
ピストン30の外周部には軸方向トランスミッション側に延びる外周筒状部30aが設けられ、内周部には同方向に延びる内周筒状部30bが設けられている。内周筒状部30bはタービンハブ15の筒状部15aの外周面に軸方向に摺動自在に支持されている。また、内周筒状部30bの端面とタービンハブ15のフランジ部15bとの間には、ピストン30の初期位置を調整するためのシム35が設けられている。
【0038】
なお、ピストン30の内周筒状部30bとタービン15の筒状部15aとの間にはシール部材36が設けられている。
【0039】
リティニングプレート31は、ピストン30のタービン5側でピストン30の外周筒状部30aの内周側に配置されている。このリティニングプレート31は、複数のトーションスプリング33を保持する保持部31aを有するとともに、トーションスプリング33の回転方向端に係合する係合部31bを有している。また、リティニングプレート31の内周部31cがリベット35によりピストン30に固定されている。
【0040】
ドリブンプレート32は、円板状のプレート部材であり、ピストン30とタービン5との間に配置されている。ドリブンプレート32は、内周部32aがタービンシェル14とともにタービンハブ15フランジ部15にリベット16により固定されている。また、ドリブンプレート32の外周部には、トーションスプリング33の両端に係合する複数の係合部33bが形成されている。
【0041】
トーションスプリング33は、エンジンの回転変動により生じる微少捩じり振動やロックアップクラッチ8の連結時のショックによる振動などを吸収・減衰するコイルスプリングからなる。トーションスプリング33は、リティニングプレート31のスプリング保持部31aとドリブンプレート33の係合部33bとの回転方向間で弾性変形することによって、ピストン30とドリブンプレート32とを回転方向に弾性的に連結する。
【0042】
[ピストンの配置]
ここで、ピストン30の固定された摩擦部材34とフロントカバー3との間の隙間は、ロックアップクラッチオン時の応答性を良好にするためには、小さい方が好ましい。一方で、隙間がないとロックアップクラッチオフ時のドラグトルクが発生するので、ある程度の隙間が必要である。
【0043】
ここで、トルクコンバータの組立において、フロントカバー3とインペラ4のインペラシェル10とを溶接すると、フロントカバー3とインペラ4とが軸方向において離れる方向に膨らむ。また、トルクコンバータ内部に流体が供給され、トルクコンバータが回転すると、遠心油圧によって、同様に、フロントカバー3とインペラ4とが離れる方向に膨らむ。
【0044】
そこで、設計上、フロントカバー3とインペラ4とを溶接する前の段階で、ピストン30の摩擦部材34がフロントカバー3に接触するか(隙間は「0」)、あるいは摩擦部材34がフロントカバー3を圧接するように(隙間はマイナス)寸法設定すれば、トルクコンバータの実使用時において、摩擦部材34とフロントカバー3との間の隙間を極力小さくすることができることになる。
【0045】
以下に一例を挙げておく。
【0046】
(a)溶接前の組立時
摩擦部材34とフロントカバー3との隙間を0〜−0.4mmに設定する。この隙間調整は、適切な厚みのシム35を選択することによって容易になるが、もちろん、シム35を用いずに隙間調整することも可能である。
【0047】
(b)溶接による変形
経験値から、フロントカバーで0.02mm、インペラで0.3mmと予想される。
【0048】
(c)トルクコンバータに供給される油圧+アイドル回転時の遠心油圧による変形
経験値から、フロントカバーで0.03mm、インペラで0.25mmと予想される。
【0049】
以上の例では、摩擦部材とフロントカバーとの間の隙間は、
最大隙間=0.02+0.3+0.03+0.25=0.6mm
最小隙間=0.02+0.3+0.03+0.25−0.4=0.2mm
となると予想される。
【0050】
[動作]
トルクコンバータの動作については、従来と同様である。すなわち、エンジン側のクランクシャフトからのトルクは、フロントカバー3に入力される。これにより、インペラ4が回転し、作動油がインペラ4からタービン5へと流れる。この作動油の流れによりタービン5は回転し、タービン5のトルクは、タービンハブ15に連結されたドライブシャフト2に出力される。
【0051】
また、トルクコンバータの速度比が上がり、ドライブシャフト2が一定の回転速度になると、ピストン30とフロントカバー3との間の空間の作動油がドレンされるとともに、ピストン30とタービン5との間の空間に作動油が供給される。この結果、ピストン30のタービン5側の空間内の油圧がフロントカバー3側の空間内の油圧よりも高くなり、ピストン30がフロントカバー3側に移動させられる。すると、ピストン30に固定された摩擦部材34がフロントカバー3の側面に押し付けられる。これにより、エンジンからのトルクは、フロントカバー3からピストン30及びリティニングプレート31に伝達され、さらにトーションスプリング33、ドリブンプレート32及びタービンハブ15を介してドライブシャフト2に出力される。
【0052】
このとき、前述のようなピストン30の配置によって、摩擦部材34とフロントカバー3との間の隙間は非常に小さくなっている。このため、ロックアップクラッチの応答性が良好になる。
【0053】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0054】
隙間調整の具体的数値は一例であって、これらの数値に限定されないことはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
1 トルクコンバータ
3 フロントカバー
4 インペラ
5 タービン
6 ステータ
8 ロックアップクラッチ
13 タービンシェル
14 タービンブレード
15 タービンハブ
30 ピストン
30b 内周筒状部
34 摩擦部材
34a テーパ部
35 シム
図1
図2