(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を行った結果、有色素米の加水分解物が、メラノサイトの遊走、再配置に関与する幹細胞増殖因子(SCF)の合成促進効果を有することを新たに見出して、本発明を完成させるに至った。
【0005】
上述したように、毛髪の色調変化の発生は毛周期と密接に関連しており、毛周期の成長期初期に毛乳頭細胞から分泌されるSCFがメラノサイトの遊走、再配置に関与していることが知られている(非特許文献1)。従来、このSCFを有効成分とする毛髪の色調変化の予防・改善剤(特許文献3)も提案されているが、特許文献3に記載の従来発明でも十分な効果が得られなかった。その理由の一つとして、毛周期の退行期から休止期を経て成長期初期に至るまでの間に、毛母細胞の周辺細胞(毛乳頭を含む)からはSCF以外にも様々な因子が合成されるため、それらの中にはSCF合成を阻害することで、メラノサイトの遊走、再配置、及び増殖の阻害要因となり得る因子が含まれていることが考えられる。
【0006】
そこで、本発明者らは、このSCF合成の阻害要因について研究を行ったところ、毛周期の成長期から退行期にかけて、毛乳頭細胞が男性ホルモンの刺激を受けて分泌する毛周期の退行期移行因子(トランスフォーミング増殖因子−β1(TGF−β1))がSCFの合成を阻害することを確認した。すなわち、このTGF−β1が毛周期の退行期から成長期初期にかけて毛乳頭細胞によるSCFの分泌を抑制して、これにより、メラノサイトの遊走、再配置が十分に行われなくなり、その結果、白毛症等の毛髪の色素異常・脱失の原因となる知見を新たに見出した。そして、この知見に基づき、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、有色素米の加水分解物がTGF−β1の曝露下でもSCF合成促進作用を有し、これにより、毛周期の休止期から成長期初期にかけて起こるメラノサイトの遊走、再配置を亢進して、すぐれた毛髪の色調変化(色素異常・脱失による白化等)の予防・改善効果を発揮することを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
従来、白米の加水分解物を色調変化の改善等を目的として毛髪化粧料に用いることは既に特許文献4により知られており、また、黒米の抽出物が育毛剤に用いることは特許文献5等により知られているが、有色素米の加水分解物がSCF合成促進作用及びメラノサイトの遊走活性促進作用に基づく毛髪の色調変化の予防・改善効果を発揮することについては知られていなかった。さらに、有色素米の加水分解物がSCF合成の阻害因子と成り得るTGF−β1の曝露下でも、その合成促進効果を発揮することも新規な知見である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有色素米の抽出物を加水分解して得られる加水分解物を有効成分とする毛髪化粧料である。
本発明において、有色素米は黒米であることが好ましい。
また、本発明において、上記有色素米の抽出物はアルカリ性の溶媒を用いて得られるものであることが好ましい。
また、本発明において、上記加水分解物は、2以上の蛋白分解酵素により得られるものであることが好ましい。
また、本発明は、毛髪の色調変化の予防・改善用として用いることが好ましい。
また、本発明は、有色素米の抽出物を加水分解して得られる加水分解物を幹細胞増殖因子(SCF)合成促進剤として用いる毛髪化粧料である。
また、有色素米の抽出物を加水分解して得られる加水分解物をメラノサイト遊走活性促進剤として用いる毛髪化粧料である。
なお、本発明において「化粧料」という文言は、化粧品だけでなく医薬部外品も含むものとする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明に係る細胞増殖因子(SCF)合成促進剤は、その有効成分である有色素米の加水分解物がTGF−β1の曝露下でも毛乳頭細胞によるSCFの合成を促進する効果を発揮することから、毛周期の休止期から成長期初期にかけての毛包内のメラノサイトの遊走、再配置を促進し、極めて有用な毛髪の色調変化(特に、色素異常・脱失による白化(白毛症)等)の予防・改善用の毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、有色素米の抽出物を加水分解して得られる加水分解物を有効成分とするSCF合成促進剤及びメラノサイト遊走活性促進剤、並びに当該剤を配合した毛髪化粧料である。
本発明で言う有色素米とは、稲「Oryza sativa linne(Gramineae)」の種子であり、中国原産の古代米の一種で、一般的に、黒米(紫黒米)、紫米、赤米、緑米とも呼ばれるものを指す。また、本発明の抽出物に用いる有色素米は玄米又は精白米のいずれでも良い。
【0012】
抽出処理で用いられる溶媒としては、例えば、精製水;エタノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3‐ブチレングリコールなどのポリオール類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;ヘキサン、クロロホルム、ベンゼンなどの炭化水素系溶剤などがあげられ、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いられる。これらのうち、化粧料への幅広い適用という点で、精製水、又は精製水とエタノール、グリセリン、1,3‐ブチレングリコールとの1種又は2種以上を混合した溶媒が好ましい。
【0013】
これらの混合溶媒を用いる場合の容量比は、精製水とエタノールは1乃至25:1、精製水とグリセリンは1乃至15:1、精製水と1,3-ブチレングリコールは1乃至15:1が好ましい。
【0014】
また、pHは酸性、中性、アルカリ性のいずれに調製しても良いが、得られる効果及び色調変化の予防・改善剤として利用の容易性の観点から、アルカリ性に調製することが好ましい。アルカリ調製剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩、水酸化カリウムなどのカリウム塩などが挙げられ、これらのpHは7.5
〜14.0に設定される。これらのうち低濃度で目的のpHに設定できるため、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば、精製水を抽出溶媒とする場合で、pH7.5 〜14.0の条件で抽出するときの抽出温度は4〜40℃が好ましく、より好ましくは15〜25℃である。また、このときの抽出時間は4時間〜7日間が好ましく、より好ましくは20〜24時間である。
【0016】
次に、上記のようにして得られた抽出物を加水分解処理する。処理の方法としては、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等が挙げられるが、それらの中でも酵素処理が最も好ましい。使用する酵素としては、蛋白分解酵素、澱粉分解酵素、繊維素分解酵素及び脂肪分解酵素から選ばれた1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
蛋白分解酵素は、動物由来酵素、植物由来酵素、及び微生物由来の酵素のいずれでも良い。例えば、アクチナーゼ類、ペプシンなどのペプシン類、トリプシンなどのトリプシン類、パパイン、キモパパインなどのパパイン類、グリシルグリシンペプチターゼ、カルボキシペプチターゼ、アミノペプチターゼなどのペプチターゼ類およびブロメラインなどがあげられ、これらの1種以上が用いられる。また、澱粉分解酵素としては、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼ等が挙げられる。また、繊維素分解酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。また、脂肪分解酵素としてはリパーゼ等が挙げられる。本発明で用いる酵素としては、蛋白分解酵素の1種または2種以上を組合せて用いることが好ましく、中でもアクチナーゼと、パパイン、キモパパイン又はブロメラインとの組合せが特に好ましい。
【0018】
前記蛋白分解酵素の使用量は、1回の処理につき抽出物100部(重量部、以下同様)に対して0.0005〜0.05部、好ましくは0.001〜0.005部であり、2種以上の酵素を使用する場合は、合計して0.003〜0.015部程度であることが作用効果の点で好ましい。
【0019】
酵素処理時間は用いる蛋白分解酵素の種類および分解温度などによって異なるが、通常1〜24時間が好ましい。なお、分解温度は約30〜50℃である。こうして得られた分解物は減圧下で濃縮して濃度を調整してもよいし、またこの分解物を凍結乾燥法やスプレードライ法により粉末化して用いてもよい。
【0020】
なお、得られた分解物溶液のpHは、皮膚への安全性の点からpH4〜8に調整されることが好ましい。
【0021】
本発明のSCF合成促進剤は毛髪用の化粧料(医薬部外品も含む)及び医薬品等(以下、一括して毛髪化粧料等という)に配合する使用が可能であり、その剤形としては、例えば、育毛剤、ヘアトニック、へアローション、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアークリーム等が挙げられる。毛髪化粧料等における上記SCF合成促進剤の配合量は、全体に対して固形分として、0.001〜10重量%の範囲であり、より好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。
【0022】
本発明のSCF合成促進剤及びメラノサイト遊走活性促進剤を配合する毛髪化粧料等には、必須成分たる有色素米の加水分解物に加えて、他の活性成分(毛母細胞賦活剤、抗男性ホルモン剤、血行促進剤、皮脂分泌抑制剤、抗炎症剤、毛髪保護剤、毛周期の成長維持剤等)を組合せて配合してもよく、これによって、相乗的な色調変化(白毛症等)の予防・改善効果、さらには、育毛効果、脱毛防止効果又は髪質改善効果をも期待することができる。
【0023】
例えば、他の活性成分としては、ミノキシジル、シプロテロンアセテート、ペンタデカン酸グリセリド、6−ベンジルアミノプリン(サイトプリン)、アデノシン、トランス−3,4'−ジメチル3−ヒドロキシフラバノン(t−フラバノン)、センブリエキス、ヒノキチオール、感光素、パントテン酸及びその誘導体、マイマイ花エキス、ゲンチアナエキス、カミツレエキス、ビタミンE及びその誘導体、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸アミド等)、塩化カルプロニウム、女性ホルモン類(エチニルエストラジオール、エストロン等)、イチョウエキス、チョウジエキス、アマモエキス、タケノコ皮エキス、黒大豆エキス、サリチル酸、グリチルリチン酸カリウム(カンゾウエキス)、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、l−メントール、塩酸ピリドキシン(ビタミンE6)、チオキソロン、オランダカラシエキス、カンファー、サリチル酸、レゾルシン、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、ミツイシコンブ、エルカ酸(cis−13−ドコセン酸)、ゴンドイン酸(cis−11−エイコセン酸)等の高級モノエン酸、さらにはアミノ酸類、ビタミン類などを配合してもよい。
【0024】
また、本発明のSCF合成促進剤及びメラノサイト遊走活性促進剤を配合した毛髪粧料等には、通常の化粧料等に用いられる配合成分、例えば油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料、乳化剤、生理活性物質等を必要に応じて適宜配合することができる。これにより、髪質改善、及び頭皮のフケ、痒みの抑制の相乗効果も期待できる。
【0025】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エルカ酸、ゴンドイン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては,例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
【0027】
乳化剤としては、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)等を使用することもできる。
【0028】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、乳酸菌醗酵米、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、ビャッキュウ抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分、ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリグルタミン酸及びその誘導体、グルコシルトレハロースと加水分解水添デンプンを主体とする糖化合物等が挙げられる。
【0030】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物等がある。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0032】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、イネ抽出物、白芥子加水分解抽出物等がある。
【0033】
また、生理活性成分として、加水分解党参エキス(加水分解ヒカゲノツルニンジンエキス)、加水分解黒豆エキス、豆乳発酵液、ハイビスカス花発酵液、アッケシソウエキス、デイリリー花発酵液(ヘメロカリス属の花の発酵液)、紫蘭根エキス、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子発酵物、ローヤルゼリー発酵物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海草の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米抽出物加水分解物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、米醗酵エキス、アナアオサ抽出物、ソウハクヒエキス、ジョアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物等がある。
【0034】
次に、製造例、実施例(処方例)及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下に於いて、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0035】
以下に、SCF合成促進剤及びメラノサイト遊走活性促進剤の有効成分である有色素米の加水分解物の製造方法の一例を説明する。
【0036】
製造例1.黒米加水分解物溶液の調製(1)
精白した黒米250gに1000gの0.1%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1日間撹拌抽出した後、ろ布で粗ろ過して残った黒米の残渣を除去した。その抽出液を希塩酸で中和した後, 液量に対して, 蛋白分解酵素(アクチナーゼAS0.02%、パパイン0.02%)を加え, 40℃で2時間酵素分解処理を行い、その後80℃で1時間加熱して酵素を失活させ、室温まで冷却した。こうして得られた酵素処理液を精製ろ過し、淡褐色透明の黒米加水分解物溶液800gを得た(固形分濃度:1.70%)。
【0037】
製造例2.黒米加水分解物溶液の調製(2)
製造例1で用いたパパインの代わりにブロメラインを用いる他は製造例1と同様にして淡褐色透明の黒米加水分解物溶液795gを得た(固形分濃度:1.68%)。
【0038】
製造例3.赤米加水分解物溶液の調製
製造例1で用いた黒米の代わりに赤米を用いる他は、製造例1と同様にして淡赤色透明の赤米加水分解物溶液790gを得た(固形分濃度:1.60%)。
【0039】
処方例1.育毛料
[成分] 部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
モノニトログアヤコールナトリウム 0.02
塩酸ピリドキシン 0.03
l−メントール 0.8
タマサキツヅラフジ根エキス 0.3
褐藻エキス 0.3
豆乳発酵液 0.3
オタネニンジンエキス 0.3
ゲンチアナエキス 2.0
製造例1の加水分解物溶液 3.5
トリメチルグリシン 0.5
乳酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 10.0
フェノキシエタノール 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.4
L−アルギニン 適量
エタノール 20
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を十分攪拌混合して育毛料を得た。
【0040】
処方例2.育毛料
処方例1の成分中、製造例1の黒米加水分解物溶液に代えて製造例2の黒米加水分解物溶液を用いるほかは処方例1と同様にして育毛料を得た。
【0041】
処方例3.育毛料
処方例1の成分中、製造例1の黒米加水分解物溶液に代えて製造例3の赤米加水分解物溶液を用いるほかは処方例1と同様にして育毛料を得た。
【0042】
処方例4.ヘアートニック
[成分] 部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
モノニトログアヤコールナトリウム 0.02
塩酸ピリドキシン 0.03
l−メントール 0.8
加水分解コラーゲン 0.3
ハイビスカス花発酵液 0.3
アマモエキス 0.3
タケノコの皮エキス 0.3
ゲンチアナエキス 2.0
製造例1の黒米加水分解物溶液 3.5
トリメチルグリシン 0.5
乳酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 2.0
フェノキシエタノール 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.4
L−アルギニン 適量
エタノール 60
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を十分攪拌混合してヘアートニックを得た。
【0043】
処方例5.ヘアーフォーム
[原液成分] 部
カチオン化セルロース 3.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 適量
シリコーン油 5.0
ジプロピレングリコール 7.0
エタノール 15.0
防腐剤 0.1
製造例1の黒米加水分解物溶液 10.0
精製水 全量が100部となる量
[充填成分] 部
原液 90.0
液化石油ガス 10.0
シリコーン油をジプロピレングリコールとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の溶解物に添加し、ホモミキサーで均一に乳化した後、これを他の成分の混合溶液に添加して原液を得た。この原液を缶に充填し、バルブを装着後、ガスを充填した。
【0044】
処方例6.ヘアーフォーム
処方例5の成分中、製造例1の黒米加水分解物溶液に代えて製造例2の黒米加水分解物溶液を用いるほかは処方例1と同様にしてヘアーフォームを得た。
【0045】
処方例7.ヘアークリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 15.0
ワセリン 15.0
サラシミツロウ 2.0
防腐剤 0.1
香料 0.1
[B成分]
製造例1の黒米加水分解物溶液 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.1
グリセリン 5.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
キレート剤 0.1
色素 0.01
精製水 全量が100部となる量 [C成分]
苛性ソーダ 0.05 上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱溶解した後、攪拌しながらA成分をB成分に加え、ホモジナイザーを用いて乳化した。これを30℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0046】
実施例8.ヘアートリートメント
[成分] 部
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム
6.0
ポリビニルピロリドン 4.0
グリセリン 1.0
エチルパラベン 0.1
製造例2の黒米加水分解物溶液5.0
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を80℃に加温した後混合攪拌してヘアートリートメントを得た。
本品はヘアーパックとしても好適なものであった。
【0047】
実施例9.ヘアーシャンプー
[A成分] 部
N−ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム
10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム
20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
[B成分]
クエン酸 0.1
製造例1の黒米加水分解物溶液 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してヘアーシャンプーを得た。
【0048】
実施例10.ヘアーリンス
[A成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油
1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム
1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム
2.0
2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
セタノール 3.2
ステアリルアルコール 1.0
メチルパラベン 0.1
[B成分]
製造例2の黒米加水分解物溶液 5.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
精製水 全量が100部となる量
A成分及びB成分をそれぞれ80℃に加温して均一に溶解した後、A成分にB成分を加え、攪拌を続けて室温まで冷却してヘアーリンスを得た。
【0049】
試験例1.毛乳頭細胞SCF合成促進効果
ヒト毛乳頭細胞ACI3047を、無血清CSC培地を入れた96穴マイクロプレートに1×10
4 個/穴播種し、37℃,5.0%CO
2の条件下に1日間プレ培養した後、TGF−β1と共に製造例1の黒米加水分解物溶液(試料溶液)を溶液として最終濃度が2.5%、5.0%となるように培地に添加し、同条件でさらに3日間培養した。次に、各培養上清をとり、Human SCF ELISA KIT(R&D Systems,USA)を用いて、培養上清中のSCFの測定を行った。試料溶液に代えてPBS(-)を添加した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたSCF量に対する各試料添加時のSCF量の相対値を求め、SCF合成促進率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として100pg/mLの線維芽細胞増殖因子(FGF‐7)を添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0050】
試験例1の結果を以下の表1に示す。
[表1]
【0051】
表1に示すように、まず、TGF−β1は毛乳頭細胞のSCFの合成を抑制することが確認された。そして本願発明の有効成分である製造例1の黒米加水分解物溶液は、TGF−β1の曝露下でも濃度依存的に毛乳頭細胞によるSCFの合成を促進することが明らかになった。なお、陽性対照であるFGF‐7も同様にSCF合成促進効果を示したことから、本試験系が正常であることも確認された。
【0052】
次に、毛乳頭細胞の存在下で製造例1の黒米加水分解物溶液が、メラノサイトの遊走活性促進効果を有すること確認するために、以下の試験例2を行った。
【0053】
試験例2.メラノサイト遊走活性試験
(1)毛乳頭細胞培養上清の調製
毛乳頭細胞(DSファーマバイオメディカル社製)を96−Well Plate(IWAKI社製)に1×10
4cells/wellになるように無血清CS-C培地(DSファーマバイオメディカル社製)を用いて播種した。1日培養後、その培養液に製造例1の黒米加水分解物溶液を当該培養液中での終濃度5%となるように添加した。また、陰性対照として製造例1の黒米加水分解物溶液に代えてPBS(-)を用いたものを調製した。これらを3日間培養後、上清を無菌的に回収し、PBS(−)(陰性対照)を添加した培養液の上清を試料1とし、製造例1の黒米加水分解物を添加した培養液の上清を試料2とした。
(2)メラノサイト遊走活性評価
メラノサイト遊走活性評価を市販のキット(CytoSelect
TM 24−Well Wound Healing
Assay(CELL BIOLABS,INC.))を用いて行った。まず、24-Well Plate (Corning社製)のwellに、正常ヒトメラノサイト(NHEM:クラボウ社製)を含む培地(Dremalife社製)を添加し、正常ヒトメラノサイト細胞の播種を行った(1.0×10
5cell/well)。その際、Wellの一部を所定のカバー(Wound
Healing Insert)で覆い、正常ヒトメラノサイト細胞が播種されない領域(Wound Field:WF)を作成した。この状態で正常ヒトメラノサイト細胞を24時間培養した後、上記カバーをより除き、Wellを培地で一度洗浄した。その後、培地を1Well当たり500μL添加し、さらに、当該Wellに上記毛乳頭細胞の培養上清である試料1及び2をそれぞれWellに500μL添加した。さらに、陽性対照として、SCFを150pg/mLになるように毛乳頭細胞用の培地で調製し(試料3)、これを試料としてWellに500μL添加した。このときのWellの状態を初期状態として写真撮影した。その後、1日培養後のWellの状態と、2日培養後のWell状態を写真撮影し、Wound
Field(WF)への正常メラノサイトの遊走を観察した。
【0054】
試験例2の結果を
図1〜3に示す。すなわち、試料1(陰性対照)を添加したWellの観察結果を
図1に、試料2(製造例1の黒米加水分解物溶液)を添加したWellの観察結果を
図2に、試料3(陽性対照)を添加したWellの観察結果を
図3に示す。
図1,2に示すように、試料2(製造例1の黒米加水分解物を添加した毛乳頭細胞培養上清)を添加したWellの方が、試料1を添加したWellと比較して、より多くのメラノサイト細胞がWound Field(WF)に遊走されていることが確認された。すなわち、製造例1の黒米加水分解物を添加した毛乳頭細胞培養上清がメラノサイトの遊走活性を亢進することが確認された。なお、
図3に示すように、SCFがメラノサイトの遊走活性を亢進することも確認されたことから、製造例1の黒米加水分解物溶液が毛乳頭細胞のSCF分泌を促進して、メラノサイトの遊走活性を促進することが示唆される。
【0055】
図1〜3に示す1日及び2日培養後のWellの状態を撮影した写真を画像解析ソフト(ImageJ)に取り込み、Wound
Field全面積に対する遊走されたメラノサイトの細胞面積が占める割合を算出した。算出式は以下の通りである。
デジタル画像からの細胞面積占有率(%)=(Wound Field中のメラノサイト細胞画像のピクセル数)/(Wound Fieldのピクセル数)×100
【0056】
Wound Fieldにおけるメラノサイト細胞の面積占有率の算出結果を表2に示す。
[表2]
表2に示すように、試料2(製造例1の黒米加水分解物溶液を添加した毛乳頭細胞培養上清)は試料1(陰性対照)と比較して、すぐれたメラサイト遊走活性効果を示すことも画像解析から明らかとなった。
【0057】
以上のように、本願発明の有色素米の加水分解物は、TGF−β1の曝露下でも、毛乳頭細胞によるSCFの合成を促進する効果を発揮し、かつ、メラノサイトの遊走活性を促進することから、この有色素米の加水分解物を配合した化粧料は、従来のものと比較して、格段にすぐれた毛髪の色調変化(色素異常・脱失による白化等)の予防・改善効果を発揮する。従って、SCF合成促進剤及びメラノサイト遊走活性促進剤は、育毛・養毛用、髪質改善用、染毛用又は白髪予防・改善用等の様々な用途の毛髪化粧料の配合剤として極めて有用である。