(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO
2)の排出量削減を目的とした車体の軽量化および衝突安全性向上のため、車体や部品等に部分的にアルミニウム合金板を使用するニーズが高まっており、特に、ハイブリッド車等の分野において顕著となっている。一方、車体の組立や部品の取付け等の工程においては、主としてスポット溶接が用いられているが、アルミニウム合金板が部分的に使用された場合には、アルミニウム合金板と鋼板とをスポット溶接する必要性が生じる。
抵抗スポット溶接は、板面が相互に重ね合わせられた複数の金属板の重ね合わせ部の表側及び裏側から、それぞれの電極を加圧しながら通電することにより当該複数の金属板に発生するジュール熱によって、当該複数の金属板を接合する方法である。
【0003】
従来から、このような抵抗スポット溶接により、鋼板とアルミニウム合金板とを接合しようとする場合、鋼板とアルミニウムとの双方を溶融させると、鋼板とアルミニウム合金板との接合部に脆弱な金属間化合物(Fe
2Al
5やFeAl
3等)が生成されるために、継手強度が低下してしまうことが知られている(特許文献1〜3を参照)。
アルミニウム合金板と鋼板とを溶接する際に金属間化合物が生成するのを抑制し、継手強度を高めるため、これまでに多くの方法が提案されている。
【0004】
特許文献1、2には、鋼板とアルミニウム合金板とを抵抗スポット溶接するに際し、鋼板とアルミニウム合金板との間に、これらと共晶反応を生じる亜鉛を介在させることにより、共晶反応によって溶融された共晶金属や酸化皮膜を排出させる技術が開示されている。かかる特許文献1、2では、亜鉛とアルミニウムとの共晶金属は、アルミニウムの融点以下の温度で溶融するため、低温で酸化皮膜を除去することができ、接合過程で接合界面に生成される金属間化合物の生成を抑制できるとされている。特許文献1に記載の技術では、共晶反応によって溶融された金属や酸化皮膜を排出させるために、鋼板とアルミニウム合金板との少なくとも何れか一方に、溶融物の接合部からの排出を容易にするための加工を施すようにしている。また、特許文献2に記載の技術では、電極の少なくとも一方の先端部を曲面形状としている。
【0005】
また、特許文献3には、鋼板側電極の先端曲率半径R1を30[mm]〜90[mm]とし、アルミニウム合金板側電極の先端曲率半径R2を2.0<R2/R1<6.0とする技術が開示されている。かかる特許文献3では、接合面でのアルミニウムの溶融量が不足することなく、鋼板とアルミニウム合金板との接合面にアルミニウムの溶融ナゲットを円滑に作ることができ、この結果、金属間化合物が接合面に形成されることを抑制することができるとされている。
【0006】
また、特許文献4には、アルミニウム合金板と鋼板との溶接部に生成される金属間化合物の厚さや(接合面積に対する)面積率を規定することで、継手強度を確保する方法が提案されている。
また、特許文献5には、アルミニウム合金板と鋼板とを溶接するにあたり、予め接合面間に接着層等を設け、接着と溶接とを併用することで継手強度や耐食性を向上させる方法が提案されている。
また、例えば、アルミニウム合金板と鋼板との間にアルミクラッド鋼板をインサートして溶接することで、溶接後の継手強度を高める方法や、セルフピアスリベット等による機械的接合を溶接と併用する方法もある。また、ピンを回転させながら加圧力で被溶接材に押し付けて摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と、ピンの回転により軸方向に発生した塑性流動とによって溶接を行う、アルミニウム等の軽金属の溶接に好適な摩擦攪拌溶接法を用いる方法もある。また、一般的な溶接法ではなく、回転工具を強い圧力で被溶接材に押し当てることで、その摩擦熱と攪拌力とで被溶接材を接合する摩擦攪拌接合を用いる方法も考えられる。その他、例えば、アルミニウム合金板を鋼ピンで貫通させて鋼板に接触させ、鋼ピンと鋼板との間で通電を行うことで接触部を抵抗溶接することにより、鋼板とアルミニウム合金板とを接合させる方法等も考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。尚、本実施形態は、本発明におけるスポット溶接継手の製造方法の一例をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
【0016】
本発明者らは、鋼板とアルミニウム合金板とを抵抗スポット溶接する際に、アルミニウム合金板側電極の(全体の)熱伝導率が、鋼板側電極の(全体の)熱伝導率よりも小さくなるようにすることにより、従来と同様の抵抗スポット溶接設備や電極成形機等を用いても、溶接継手の十字引張強さ(CTS)が大きな値で安定し(溶接継手によって値が大きく変動せず)、且つ、溶接継手の破断形態としてプラグ破断が安定して得られる(適切なプラグ径を有してプラグ破断する)という知見を得た。
アルミニウム合金板側電極の熱伝導率を、鋼板側電極の熱伝導率よりも小さくすることによって、鋼板で発生した熱が鋼板側電極を介して抜熱させることを促進させつつ、アルミニウム合金板で発生した熱がアルミニウム合金板側電極を介して抜熱されることを抑制することができる。これにより、面方向に広く且つ厚み方向に薄い溶融金属を、鋼板とアルミニウム合金板との間に形成(凝固)させることができる。
以上のような新たな知見に基づいて、本発明者らは、以下に説明する本実施形態に想到した。
【0017】
<抵抗スポット溶接>
図1は、抵抗スポット溶接装置の概略構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、アルミニウム合金板110と鋼板120とを抵抗スポット溶接する方法の一例の概要を説明する。
抵抗スポット溶接を行うに際し、まず、被溶接材であるアルミニウム合金板110と鋼板120とを重ね合わせる。
図1に示す例では、アルミニウム合金板110と鋼板120とを各1枚ずつ重ね合わせた状態としている。尚、アルミニウム合金板110と鋼板120との少なくとも何れか一方が複数枚であってもよい。
そして、アルミニウム合金板110と鋼板120との重ね合わせ部分に対して両側から、即ち、
図1中における上下方向から挟み込むように、アルミニウム側電極210と鋼板側電極220とを押し付けつつ通電することにより、アルミニウム合金板110と鋼板120との間に溶融金属を形成させる。この溶融金属は、溶接通電が終了した後、水冷されたアルミニウム側電極210及び鋼板側電極220による抜熱や鋼板110及びアルミニウム合金板120への熱伝導によって凝固し、アルミニウム合金板110と鋼板120との間に形成される。
【0018】
<アルミニウム合金板>
以下に、本実施形態における一方の被溶接材である、アルミニウム合金板110の特性の一例について詳述する。
(合金種)
アルミニウム合金板110の合金の種類は特に限定されるものではない。例えば、自動車車体等において一般的に用いられる5000(Al−Mg)系や6000(Al−Mg−Si)系等、何れの型のアルミニウム合金であっても何ら制限なく採用することが可能である。
(引張強さ)
アルミニウム合金板110の合金の引張強さについても特に限定されるものではない。例えば、自動車車体等において一般的に用いられる100〜400MPa級程度のものを何ら制限なく採用することができる。
(板厚)
アルミニウム合金板110の(溶接前の)板厚t
1についても特に限定されるものではなく、例えば、自動車車体等において一般的に用いられる、0.55[mm]〜2.0[mm]程度の厚みとされたアルミニウム合金板を何ら制限なく採用することができる。
【0019】
<鋼板>
以下に、本実施形態の他方の被溶接材である、鋼板120の特性の一例について詳述する。
(鋼種)
鋼板120の鋼種については特に限定されない。例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al−k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、二相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等、何れの型の鋼板であっても良い。何れの鋼種からなる鋼板であっても、本実施形態のスポット溶接継手の製造方法を適用することにより、鋼板の特性を損なうことなく、金属間化合物の生成を抑制しながらアルミニウム合金板と鋼板とを溶接することができ、信頼性の高いスポット接合継手(溶接部)が得られる。
【0020】
(引張強さ)
鋼板120の引張強さについても、特に限定されるものではなく、如何なる引張強さの鋼板であっても何ら制限なく採用することができる。例えば、自動車車体等において一般的に用いられる、270〜1470MPa級程度の引張強さとされた鋼板を何ら制限なく採用することができる。
(めっき)
表層にさらにめっき層が設けられた鋼板120を採用することができるが、この際に施されるめっき層の種類についても、何ら制限されるものではない。例えば、めっき層の種類としては、Zn系(Zn、Zn−Fe、Zn−Ni、Zn−Al、Zn−Al−Mg、Zn−Al−Mg−Si等)、Al系(Al−Si等)、Sn系(Sn−Zn等)等、何れのめっき層であっても良い。また、これらのめっき層の目付量についても特に限定されないが、両面の目付け量で100[g/m
2]以下とすることが好ましい。めっきの目付け量が片面あたりで100[g/m
2]を越えると、めっき層が溶接の際の障害となる場合がある。尚、表層にめっき層が設けられていない鋼板120を採用してもよい。
(板厚)
鋼板の(溶接前の)板厚t
2についても特に限定されるものではなく、例えば、自動車車体等において一般的に用いられる、0.50[mm]〜2.3[mm]程度の厚みとされた鋼板を何ら制限なく採用することができる。尚、鋼板の板厚t
2が0.5[mm]を下回ると、構造部材や構造材料として必要な強度や剛性を確保することができなくなる。一方、板厚t
2が2.3[mm]を上回る鋼板については他の接合プロセスを適用することができるため、抵抗スポット溶接を利用する必要性が低い。
【0021】
<電極>
(アルミニウム合金板側電極の熱伝導率)
アルミニウム合金板側電極210の熱伝導率λ
1は、130[W/(m・K)]以上、240[W/(m・K)]以下とする。
アルミニウム合金板側電極210の熱伝導率λ
1が130[W/(m・K)]を下回ると、アルミニウム合金板側電極210とアルミニウム合金板110との間で溶着が著しく発生し、溶接が不安定になることがある。一方、アルミニウム合金板側電極210の熱伝導率λ
1が240[W/(m・K)]を上回ると、アルミニウム合金板側電極210によるアルミニウム合金板110の冷却効果が大きくなるため、所望のプラグ径の確保が難しくなり易く、溶接継手の形状が安定しなくなることがある。その結果、プラグ破断の形態が不安定になる。
【0022】
このような範囲の熱伝導率λ
1を有するアルミニウム合金板側電極210とするために、アルミニウム合金板側電極210を、例えば、電気接点用の材料として公知のCu−70W(Cu:30[質量%]、W:70[質量%])からなるものにすることができる。ただし、熱伝導率λ
1が前述した範囲となるものであれば、アルミニウム合金板側電極210の材質はCu-70Wに限定されない。
ここで、アルミニウム合金板側電極210の熱伝導率λ
1の測定は、例えば、非特許文献1、2等に記載されている温度傾斜法や、非特許文献2に記載されているレーザーフラッシュ法、熱線法等、公知の方法により行うことができる。したがって、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0023】
(鋼板側電極の熱伝導率)
鋼板側電極220の熱伝導率λ
2は、300[W/(m・K)]以上とする。
鋼板側電極220の熱伝導率λ
2が300[W/(m・K)]を下回ると、溶接継手100において、鋼板120側の温度上昇が著しくなり、これにより電極で加圧されるアルミニウム合金板110の板厚の減少が大きくなる等、溶接継手の形状が安定しなくなる。その結果、継手強度が低下する。
このような範囲の熱伝導率λ
2を有する鋼板側電極220とするために、鋼板側電極220を、例えば、JIS Z 3234(抵抗溶接用銅合金電極材料)に記載の銅合金(例えば、Cr−Cu(クロム銅)やアルミナ分散銅)を採用することができる。ただし、熱伝導率λ
2が前述した範囲になるものであれば、鋼板側電極220の材質は、Cr−Cuやアルミナ分散銅に限定されない。
【0024】
(電極先端の形状)
図2は、電極の形状の一例を示す図である。具体的に、
図2(a)は、JIS C 9304(1999年)に規定されるDR形電極を示す図であり、
図2(b)は、JIS C 9304(1999年)に規定されるR形電極を示す図である。
図2(b)に示すR形電極は、その先端における曲率半径が変化せずに一定となり(
図2(b)の曲率半径R
2を参照)、電極外径Dと先端径Wとが同じとなる。一方、
図2(a)に示すDR形電極は、その先端における曲率半径が2段階で変化し(
図2(a)の曲率半径R
1、R
3を参照)、電極外径Dと先端径Wとが異なる。DR形電極の先端の曲率半径R
1は、これら2段階の曲率半径のうち、より先端側の曲率半径をいう。尚、
図2(a)に示すように、先端側の曲率半径R
1は、基端側の曲率半径R
3よりも大きくなる。
【0025】
アルミニウム合金板側電極210と鋼板側電極220として、DR形電極及びR形電極の何れを採用してもよい。また、抵抗スポット溶接で採用されるこの他の形状の電極を、アルミニウム合金板側電極210及び鋼板側電極220として採用してもよい。
また、アルミニウム合金板側電極210及び鋼板側電極220の先端の曲率半径については特に限定されないが、鋼板側電極220の先端の曲率半径は、40[mm]以上、150[mm]以下とすることが好ましい。鋼板側電極220の先端の曲率半径が40[mm]を下回ると、鋼板120における鋼板側電極220の接触範囲が狭くなり局所発熱に至りやすくなる。そうすると、鋼板側電極220と鋼板120との間での溶着が著しくなる。一方、鋼板側電極220の先端の曲率半径が150[mm]を上回ると、鋼板120における鋼板側電極220の接触範囲が広くなるために抵抗発熱に必要な溶接電流が過大となる。そうすると、散りが頻発する。
【0026】
また、アルミニウム合金板側電極210の先端の曲率半径を、鋼板側電極220の先端の曲率半径と同じ(アルミニウム合金板側電極210の先端の曲率半径:鋼板側電極220の先端の曲率半径=1:1)にすることができる。このようにすれば、アルミニウム合金板側電極210用の電極チップドレッサのバイト(の形状)と、鋼板側電極220用の電極チップドレッサのバイト(の形状)とを同一にすることができる。
【0027】
<溶接電源230>
アルミニウム合金板側電極210及び鋼板側電極220に電流を供給する溶接電源230は、交流電源又は直流電源の何れであっても良い。例えば、溶接電源230として、インバータ式直流電源、インバータ式交流電源、又は単相式交流電源等を採用することができる。
<加圧力>
加圧力については、アルミニウム合金板110及び鋼板120の板厚や、アルミニウム合金板側電極210及び鋼板側電極220の形状により適切な条件設定を選択できるが、1.98[kN]以上、5.0[kN]以下が好ましい。
加圧力が、1.98[kN]を下回ると、被溶接材における電極の接触範囲が小さくなり局所発熱に至りやすいため、電極と被溶接材との間での溶着が著しくなる。一方、加圧力が、5.0[kN]を上回ると、被溶接材との接触範囲での電極の押し込み量が多くなり溶接部の残存厚が薄くなるため、溶接継手の溶接部におけるアルミニウム合金板の厚みが薄くなり過ぎ、継手強度が低下する。尚、加圧力とは、後述する溶接電流を流す際に、重ね合わせたアルミニウム合金板110と鋼板120とを、対向する一対のアルミニウム板側電極210と鋼板側電極220とで挟み加えられる力をいう(
図1に示す矢印線を参照)。
【0028】
<通電時間>
通電時間については、アルミニウム合金板110及び鋼板120の板厚により適切な条件設定を選択できるが、100[ms]以上、300[ms]以下が好ましい。
通電時間が、100[ms]を下回ると、アルミニウム合金板110と鋼板120との界面において、加圧されるアルミニウムの領域を加熱させることができない。一方、通電時間が、300[ms]を上回ると、溶接継手の溶接部におけるアルミニウム合金板の厚みが薄くなり過ぎ、鋼板とアルミニウム合金板との接合面を十分に形成することができない。尚、通電時間とは、アルミニウム板側電極210がアルミニウム板110に接触し、且つ、鋼板側電極220が鋼板120に接触した状態で、アルミニウム板側電極210と鋼板側電極220との間を通電する時間である。
【0029】
<溶接電流>
溶接電流については、アルミニウム合金板110及び鋼板120の板厚、通電時間、及び加圧力により適切な条件設定を選択できる。尚、溶接電流は、溶接電源230、アルミニウム板側電極210、アルミニウム板110、鋼板120、及び鋼板側電極220により構成される閉回路に流れる電流である。すなわち、溶接電流は、アルミニウム板側電極210がアルミニウム板110に接触し、且つ、鋼板側電極220が鋼板120に接触した状態で、アルミニウム板側電極210と鋼板側電極220との間に流れる電流である。
【0030】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、アルミニウム合金板側電極210の熱伝導率λ
1を、130[W/(m・K)]以上、240[W/(m・K)]以下とし、鋼板側電極220の熱伝導率λ
2を、300[W/(m・K)]以上とした。したがって、このような熱伝導率の電極を採用することで、特別な装置等を導入することなく、溶接継手の十字引張強さ(CTS)が大きな値で安定し(溶接継手によって値が大きく変動せず)、且つ、溶接継手の破断形態としてプラグ破断が安定して得られる。よって、鋼板とアルミニウム合金板とを抵抗スポット溶接により接合する際の良好な作業性を確保しつつ、溶接部の継手強度に優れた、信頼性の高い溶接継手を形成することが可能となる。これにより、例えば、自動車分野において、部分的なアルミニウム合金板の適用で軽量化された自動車用部品の製造や車体の組立等の工程に本実施形態で説明した手法を適用することにより、車体全体の軽量化による低燃費化や炭酸ガス(CO
2)の排出量削減等のメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
【0031】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例(本発明例と比較例)を示す。尚、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
各実施例1〜12では、以下の条件で抵抗スポット溶接を行って溶接継手(十字引張試験片)を作製し、それぞれの溶接継手について十字引張強さ(CTS)を測定した。十字引張試験片は、JIS Z 3137(1999年)に規定される試験片であり、十字引張試験は、JIS Z 3137(1999年)に従って行った。
アルミニウム合金板側電極:JIS C 9304(1999年)に規定されるR形電極(先端の曲率半径=80[mm])
鋼板側電極:JIS C 9304(1999年)に規定されるR形電極(先端の曲率半径=80[mm])
アルミニウム合金板:A6022(6000系アルミニウム合金)(板厚=1.2[mm])
鋼板:溶融亜鉛合金化めっき(GA)鋼板(270MPa級)(板厚=1.4[mm])
通電時間:200[ms]
溶接電源:インバータ式直流電源
溶接電流については、0.3[kA]のピッチの溶接電流を上げて、それぞれの溶接電流において十字引張試験片を作製した。表2において、十字引張試験においてプラグが形成された十字引張試験片を作製したときに流した溶接電流のうち最小の値を溶接電流の最小値として示す。一方、表2において、十字引張試験においてプラグが形成された十字引張試験片を作製したときに流した溶接電流であって、抵抗スポット溶接の際に散りの発生が認められた溶接電流のうち最小の値を溶接電流の最大値として示す。
【0036】
実施例1、4〜9では、アルミニウム合金側電極の材質(熱伝導率λ
1)を異ならせて抵抗スポット溶接を行った。
実施例1〜3では、加圧力を異ならせて抵抗スポット溶接を行った。
実施例10、11、12は、それぞれ、鋼板側電極の材質(熱伝導率)λ
1)を、それぞれ実施例1、2、3と異ならせて抵抗スポット溶接を行った。
【0037】
実施例1〜7が本発明例であり、十字引張試験後の破断形態は、溶接電流の最小値から最大値までの全ての範囲において、安定したプラグ破断となり、十字引張強さ(CTS)が実用上十分な強度と見なせる0.8[kN]以上あった。
一方、実施例8では、アルミニウム合金側電極の熱伝導率λ
1が130[W/(m・K)]を下回る。このため、溶接電流が最大値のときには、アルミニウム合金側電極がアルミニウム合金板に溶着し、溶接継手を作製することができなかった(番号8のプラグ径の最小値の欄の「電極溶着」と、CTSの最小値の欄の「−」を参照)。また、十字引張強さ(CTS)の最大値が0.8[kN]を下回った。
【0038】
実施例9では、アルミニウム合金側電極の熱伝導率λ
1が240[W/(m・K)]を上回る。このため、十字引張強さ(CTS)の最小値が0.8[kN]を下回った(番号9のCTSの最小値の欄を参照)。さらに、溶接電流を上げると不安定なプラグ破断となり(プラグが得られず)、プラグ径を測定することができなかった(番号9のプラグ径の最大値の欄の「−」と、CTSの最大値の欄の「プラグ破断不安定」の欄を参照)。このため、溶接電流の最大値を特定することができなかった(番号9の溶接電流の最大値の欄の「−」を参照)。
【0039】
また、実施例10〜12では、鋼板側電極の熱伝導率λ
2が300[W/(m・K)]を下回る。このため、十字引張強さ(CTS)の最小値が0.8[kN]を下回った(番号10〜12のCTSの最大値の欄を参照)。