(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の熱膨張性微小球として、その発泡倍率が、前記第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いものの発泡倍率の1.3〜2倍を示すものを用いたことを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
前記第1の熱膨張性微小球として、組み合わせられるすべての熱膨張性微小球の中で、その発泡開始温度が最小値を示すものを用いることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
前記第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び前記第1の熱膨張性微小球は、いずれも質量平均粒径が10〜20μmの範囲内にあり、かつ粒径差が4μm以内に収められている請求項1〜4のいずれか記載の粘着剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4で開示されたタイプの粘着シートは、加熱した場合に被着体と粘着剤層との界面に凹凸を発生させることにより被着体との接触面積が小さくなり、粘着力が低下するものである。従って、他のタイプの粘着シートに比べて、被着体を容易に剥離させることができる。また、再剥離性粘着シートのなかでも、初期剥離力を高くすることができる。従って、被着体を加工する際に、強い力が加わる工程、例えば、積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程や処理液等に浸漬させるような工程、例えばメッキ工程等、各種工程で用いられている。
【0005】
しかしながら、加熱して被着体と粘着剤層との界面に凹凸を発生させ、被着体との接触面積を小さくして被着体を剥離する際に、粘着剤表層の凹凸高さ及び密度合いを均一にコントロールすることは難しく、凸部が少なく凹部が多く存在する部分あるいは、凸部の高さが不均一である部分において接触面積の低下が不足し部分的な付着を引き起こす場合があり、このことにより被着面全体における均一な剥離を妨げたり、また糊残りによる汚染を生じ、作業効率や加工精度の低下を引き起こすという問題があった。この問題は特に、初期剥離力を高く設定した場合や、被着体が微小化した場合に見られるものであった。
【0006】
なお、このような場合に見られる上記問題を解決する技術として、基材上に粘着剤層を設けた粘着シートの前記粘着剤層に含有させる熱膨張性微小球を2種以上の組み合わせで形成するとともに、それらの熱膨張性微小球を膨張させる前の粘着剤層の面積(S
0)と熱膨張性微小球を膨張させた後の粘着剤層の特定領域の面積(S
H1−H2)との比、及び熱膨張性微小球を膨張させた後の粘着剤層表面の凹凸の高低差(H1−H3)を特定の範囲に調整するものが提案されているが(特許文献5)、近年さらなる改善が求められている。
【0007】
特に、被着体がこれまで以上に極小化(微小化よりもさらに細かい)した場合でも、貼り付けが必要な間は適度な粘着力で確実に被着体に貼り付けることができ、しかも使用目的を終え不要となった後には被着体に糊残り等を生じさせることなく綺麗に剥離することのできる粘着剤組成物及びこれを用いた再剥離性の粘着シートの開発が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、被着体がこれまで以上に極小化した場合でも、被着体との密着性に優れ、かつ、加工完了後は、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく、均一に剥離可能な粘着剤組成物及びこれを用いた粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱膨張性微小球と粘着剤とを含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材上に設けた粘着シートの熱膨張性微小球として、特定関係にある2種以上の熱膨張性微小球を組み合わせて使用することにより、被着体がこれまで以上に極小化した場合でも、被着体から剥離する際、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく均一に剥離可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、以下に示す構成の粘着剤組成物が提供される。また本発明によれば、以下に示すいずれかの構成の粘着剤組成物による粘着剤層を基材上に形成した粘着シートが提供される。
【0011】
本発明の粘着剤組成物は、少なくとも粘着剤と熱膨張性微小球を含有する粘着剤組成物において、前記熱膨張性微小球は、大きさは実質的に同一であるが、発泡倍率が異なる2種以上の熱膨張性微小球を組み合わせてなり、かつ、その組み合わせられるすべての熱膨張性微小球の中で発泡倍率が最大値を示すものを第1の熱膨張性微小球とし、前記第1の熱膨張性微小球よりも発泡倍率が低い値を示すものを第2の熱膨張性微小球としたとき、組み合わせられるすべての熱膨張性微小球中に、第1の熱膨張性微小球:1に対して、第2の熱膨張性微小球:1以上3未満となる質量比で、第1の熱膨張性微小球と第2の熱膨張性微小球を含有させたことを特徴とする。
【0012】
本発明の粘着剤組成物において、第1の熱膨張性微小球として、その発泡倍率が、第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いものの発泡倍率の1.3〜2倍を示すものを用いることが好ましい。
【0013】
本発明の粘着剤組成物において、第1の熱膨張性微小球として、組み合わせられるすべての熱膨張性微小球の中で、その発泡開始温度が最小値を示すものを用いることが好ましい。
【0014】
本発明の粘着剤組成物において、前記第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び前記第1の熱膨張性微小球は、いずれも発泡倍率が5倍以上15倍以下の範囲にあることが好ましい。
【0015】
本発明の粘着剤組成物において、前記第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び前記第1の熱膨張性微小球は、いずれも質量平均粒径が10〜20μmの範囲内にあり、かつ粒径差が4μm以内に収められていることが好ましい。
【0016】
本発明の粘着剤組成物において、100質量部の粘着剤に対して、前記すべての熱膨張性微小球を合計で10〜50質量部含めることが好ましい。
【0017】
本発明の粘着剤組成物において、前記粘着剤が、架橋剤と反応し得る活性基をその分子構造中に有するアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0018】
本発明の粘着剤組成物において、少なくとも一方の表面が被着体との接触面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤組成物から形成した粘着剤層又はこれを基材上に設けた粘着シートは、被着体がこれまで以上に極小化した場合でも、被着体との密着性に優れ、しかも、所定の温度以上に加熱した場合に、粘着剤層に含有された、特定関係にある2種以上の熱膨張性微小球により表面状態が均一に発泡し、粘着性が低下又は消滅する。これにより、被着体を貼付後、加工完了等、不必要になった時には、被着体がこれまで以上に極小化したものでも、その被着体から糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく均一に剥離可能となり、加工性、生産性等がこれまで以上に向上することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一例に係る粘着剤組成物は、必須成分として熱膨張性微小球と粘着剤を含有し、所望により架橋剤や粘着付与樹脂等の任意成分が含有され、これら各成分の種類及び/又は含有割合を調整することにより得られる。
【0021】
熱膨張性微小球としては、弾性を有する外殻の内部に発泡剤が封入された構造を有し、全体として熱膨張性(加熱により全体が膨らむ性質)を示す微小球を好適例として挙げることができる。弾性を有する外殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質等、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等で形成されたものを好適例として挙げることができる。発泡剤としては、加熱により容易にガス化して膨張する物質、例えばイソブタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を主として挙げることができる。熱膨張性微小球の市販品としては、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」シリーズ(松本油脂製薬社製)等を挙げることができる。
【0022】
本例では、この熱膨張性微小球は、2種以上の熱膨張性微小球の組み合わせからなることが必須である。特に、熱膨張性微小球として、大きさは実質的に同一であるが、少なくとも発泡倍率が異なる2種以上の熱膨張性微小球を組み合わせて使用する。これに加え、使用するすべての熱膨張性微小球の中で発泡倍率が最大値を示すものを第1の熱膨張性微小球とし、前記第1の熱膨張性微小球よりも発泡倍率が低い値を示すものを第2の熱膨張性微小球としたとき、使用するすべての熱膨張性微小球中に、第1の熱膨張性微小球:1に対して、第2の熱膨張性微小球:1以上3未満(好ましくは1〜2)となる質量比で、第1の熱膨張性微小球と第2の熱膨張性微小球を含有させたことを特徴とする。
ここで「大きさが実質的に同一」とは質量平均粒径の差が4μm以内(好ましくは3μm以内、より好ましくは1.5μm以内)であることを意味し、また「発泡倍率」は体積膨張率と同義である。
このような特定関係にある第1の熱膨張性微小球と第2の熱膨張性微小球を所定の質量比範囲で含む2種以上の熱膨張性微小球を組み合わせて用いることにより、被着体がこれまで以上に極小化した場合でも、被着体から剥離する際、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく均一な剥離が可能となり、加工性や生産性等がこれまで以上に向上することが期待される。
【0023】
本例において、第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び第1の熱膨張性微小球の大きさは、粘着シートの用途により適宜選択すればよく、具体的には、質量平均粒径で10〜20μmであることが好ましい。使用するすべての熱膨張性微小球中に、その大きさが、小さ過ぎたり大き過ぎるものを含む場合、被着体に対して初期の粘着力が低下したり、被着体の加工工程において(例えば、加熱乾燥などの高温処理)、被着体を保持でできなくなったり、また加熱処理により剥離する際に被着体から剥離しにくいものとなったり糊残りしやすくなる傾向がある。さらには、粘着剤層の表面粗さの制御が難しく、粘着性や剥離性が安定せず、被着体の加工工程に不都合を生ずることがある。
【0024】
本例において、前記第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び前記第1の熱膨張性微小球は、その粒度分布を調整してから使用することができる。粒度分布の調整は、使用する熱膨張性微小球に含まれる比較的大きな粒径のものを、遠心力型風力分級機、乾式分級機、篩過機等で分級して除去すればよい。平均粒径に比して大きな粒径粒子を除去し、粒度分布をシャープにすることにより、形成される粘着剤層の表面の平滑性を向上させ、加熱した場合の表面形状を均一にすることができる。具体的には、熱膨張性微小球の粒度分布の標準偏差が5.0μm以下にすることが望ましく、好ましくは4.5μm以下、更には4.0μm以下にすることが好ましい。標準偏差が5.0μmよりも大きくなると、加熱膨張後の粘着剤表層の高低差が大きくなり、また、それに伴い凹凸の密度合いが不均一な表面形状を形成することになる。その結果、均一な剥離を得ることができにくくなる。
【0025】
また、それぞれの熱膨張性微小球を使用するに際し、予め分級しておくことにより、形成される粘着剤層の厚さを調整し易くなる。例えば、粘着剤層の厚さを25〜35μm程度にする場合、質量平均粒径が10〜20μm程度の熱膨張性微小球を使用することの他、質量平均粒径が10μm未満のものと、大粒径(例えば、粒径が20μmを超えるもの)のものを分級して除去した熱膨張性微小球を使用することができる。このように熱膨張性微小球を分級する方法によれば、これまで使用していた熱膨張性微小球をそのまま使用することができる。従って、膨張特性、挙動等を新たに把握する必要がなく、開発時間を短縮し、開発効率を向上させることができる。
【0026】
本例では特に、最大発泡倍率を示す第1の熱膨張性微小球として、その発泡倍率が、第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いものの発泡倍率の1.3〜2倍を示すものを用いることが好ましい。こうした関係の第1の熱膨張性微小球及び第2の熱膨張性微小球を用いることにより、加熱処理の際に全厚み方向に対して、ムラなく膨張し短時間で剥離効果が得られやすい。
【0027】
本例において、第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び第1の熱膨張性微小球の発泡倍率は、5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることが更に好ましい。その一方で15倍以下であることが好ましく、12倍以下であることが更に好ましい。本例において、第2の熱膨張性微小球のうち最も含有量の多いもの及び第1の熱膨張性微小球の発泡倍率が、好ましくは5倍以上15倍以下の範囲にあると、加熱処理することによって粘着層の粘着力を効率よく低下させることができる。なお、熱膨張性微小球の外殻は、該熱膨張性微小球が前記所定の発泡倍率となるまで膨張した場合であっても破裂しない、適度な強度を有するものであることが好ましい。
【0028】
本例では、上述した、発泡倍率が最大値を示す第1の熱膨張性微小球として、組み合わせて使用されるすべての熱膨張性微小球の中で、そのガス化温度(熱膨張温度)が最小値を示すものを用いることが好ましい。こうした関係の第1の熱膨張性微小球と第2の熱膨張性微小球を用いることで、加熱処理の際に粘着剤層の厚み方向と水平方向にわたって均一に膨張し非膨張部分を少なくしやすい。
本例において、組み合わせて使用されるそれぞれの熱膨張性微小球のガス化温度(熱膨張温度)は、粘着シートの使用温度を考慮して好適なものを適宜選択すればよい。具体的には、その熱膨張温度が、粘着シートに貼付される被着体の切断加工、小片化加工等の際の加工温度よりも、25℃以上であるものを用いることが好ましい。なお、「熱膨張温度」とは発泡開始温度と同義であり、本例ではTMA測定における熱膨張開始温度のことをいう。
【0029】
本例において、すべての熱膨張性微小球の合計の配合割合は、加熱処理後の粘着剤層表面の凹凸を十分に形成できるよう適宜選選択すればよく、通常、後述する粘着剤:100質量部に対して10〜50質量部の範囲である。実験では熱膨張性微小球の配合割合が10質量部未満であると、加熱処理後の粘着剤表層の凸部が少なくなり剥離し難くなる傾向にあり、また、50質量部を超えると熱膨張性微小球を膨張する前から粘着剤層表面に凹凸が形成されてしまうため、加熱処理前の被着体との密着性が低下する傾向にあるので好ましくない。熱膨張性微小球を膨張させる前の被着体との密着性及び膨張後の被着体との剥離性の面から好ましい配合割合は13〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部である。
【0030】
一般に、粘着シートの剥離に要する時間は、配合される熱膨張性微小球の種類によって定まる。例えば、熱膨張性微小球が、120℃、30分間で膨張のピークに到達する場合、剥離に際しての加熱条件は、通常、120℃、30分となる。但し、作業工程やスケジュール等により、加熱時間が30分を超える場合がある。加熱時間が30分を超えると、膨張した粘着剤層が萎んでくる。例えば、120℃、30分間加熱した場合、粘着剤層の膨張倍率は約3倍であるのに対し、120℃、90分間加熱した場合、粘着剤層の膨張倍率は約1.5倍である。粘着剤層の萎みは、被着体と粘着剤層との再密着性の原因となり、被着体が粘着シートから容易に剥離できなくなる場合がある。
【0031】
粘着剤としては、従来から熱膨張性微小球を含有させた粘着剤層を形成する際に用いられている粘着剤の中から適宜選択すればよいが、熱膨張性微小球を膨張させたときの粘着剤層表面に形成される凹凸形状や初期粘着力、再剥離性の面からアクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。アクリル系粘着剤の組成に特に制限はない。但し、その酸価が30以上のアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤の酸価を30以上とすることにより、架橋剤を用いて架橋した場合に十分な架橋密度とすることができるため、加熱処理により粘着剤が被着体からの糊残りすることなく剥離しやすくなる。また、例えば、後述するような基材上に粘着剤層を有する粘着シートの構成とした場合において、架橋剤と反応しなかった未反応の官能基がわずかに残ってしまった場合、当該未反応の官能基は基材と反応し易くなることから、基材と粘着剤層との間で密着性が向上するためさらに糊残りすることなく剥離しやすくなる。さらには、当該未反応の官能基は、被着体とも反応し易くなることから、被着体の加工工程において(例えば、加熱乾燥などの高温処理)、被着体との密着性を保持しやすくもなる。なお、本発明において、このように高温処理においても粘着剤層は被着体との密着性を保持するものであっても、上述したように特定の2種以上の熱膨張性微小球を用いているため、加熱処理後は糊残りすることなく剥離することができる。
【0032】
このように基材や被着体との密着性向上の観点からは、アクリル系粘着剤の酸価は、40〜80であることが更に好ましい。なお、「酸価」とは、試料(アクリル系粘着剤)1g中に含まれる遊離脂肪酸や樹脂酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)をいい、JIS K0070に準拠して測定され、下記式(1)から中和滴定法により算出することができる。
【0033】
酸価A = B×F×5.611/S …(1)
【0034】
〔B:測定に用いた0.1ml/l水酸化カリウムのエタノール溶液の量、
F:0.1モル/l水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター、
S:試料の質量(g)、
5.611:水酸化カリウムの式量(56.11×1/10)〕
【0035】
アクリル系粘着剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることが更に好ましく、20万〜100万であることが特に好ましい。アクリル系粘着剤の重量平均分子量が上記範囲内とすることにより、より高精度の加工を行なうのに十分な粘着力を有し、かつ被着体に糊残りすることなく剥離性もより良好なものにしやすい。
【0036】
アクリル系粘着剤は、架橋剤と反応し得るものであるものが好ましい。このアクリル系粘着剤には、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との共重合体が包含される。アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの「アルキルエステル」としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等を挙げることができる。架橋剤と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基を挙げることができる。
【0037】
架橋剤と反応し得る官能基がカルボキシル基である単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等を挙げることができる。また、官能基がヒドロキシル基である単量体としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシオクチル、メタクリル酸ヒドロキシオクチル、アクリル酸ヒドロキシデシル、メタクリル酸ヒドロキシデシル、アクリル酸ヒドロキシラウリル、メタクリル酸ヒドロキシラウリル等を挙げることができる。
【0038】
架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、92:8〜98:2の範囲であることが好ましい。この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が少ないと、熱膨張性微小球が膨張した場合に、被着体と粘着剤層との剥離性が損なわれる傾向にある。一方、この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が多いと、被着体と粘着剤層との粘着力が乏しくなる傾向にある。被着体と粘着剤層との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、95:5〜93:7であることが更に好ましい。
【0039】
なお、所望により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体以外のその他の単量体を併用することもできる。その他の単量体としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリレート、N−ビニルピロリドン、テトラフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0040】
アクリル系粘着剤は、単量体成分をラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法は従来公知であり、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法等を挙げることができる。また、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−50〜−20℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−20℃超であると、被着体と粘着剤層との粘着力が低下する傾向にある。一方、ガラス転移温度が−50℃未満であると、加熱処理後の剥離時に糊残りを生じ易くなり、剥離性が良好になり難くなる傾向にある。被着体と粘着剤層との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−40℃〜−25℃であることが更に好ましい。
【0041】
次に、架橋剤について説明する。架橋剤は、用いるアクリル系粘着剤に合せて適宜選択すればよく、特に制約はない。架橋剤の具体例としては、イソシアネート系架橋剤、金属キレート架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。これらのなかでも、熱膨張性微小球が膨張する温度への加熱後における、被着体からの剥離性を向上させ、被着体への糊残りを防止するといった観点から、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0042】
常温における被着体との粘着性、及び熱膨張性微小球の膨張後における被着体からの剥離性の面で、多官能のエポキシ系架橋剤が好ましく、4官能のエポキシ系架橋剤が更に好ましい。具体的には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを挙げることができる。但し、これらのエポキシ系架橋剤は、架橋反応速度が遅くなる傾向にあるため、架橋反応が不十分である場合には、架橋反応を促進するために、(1)アミン等の触媒を添加する、(2)粘着剤の構成成分としてアミン系官能基を持つ単量体を用いる、(3)架橋剤にアジリジン系架橋剤を併用する、ことが望ましい。特に、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等の架橋剤に、触媒効果を有する3級アミンを添加することが好ましい。
【0043】
架橋剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の配合割合は、前述の熱膨張性微小球、アクリル系粘着剤、及び所望により用いられる、後述する粘着付与樹脂とともに、粘着剤層が好ましい弾性率となるように適宜選択すればよく、特に制限はない。但し、粘着剤組成物に含有される架橋剤の割合は、アクリル系粘着剤に対する割合で、0.5当量以下とするのが、基材との密着性が向上するために好ましい。架橋剤の割合が、アクリル系粘着剤に対する割合で0.5当量を超えると、被着体との粘着力が低下し易くなり、熱膨張性微小球を加熱膨張させる前に、被着体と粘着剤層とが剥離し易くなる傾向にあるために好ましくない。基材及び被着体との密着性の面から、粘着剤組成物に含有される架橋剤の割合は、アクリル系粘着剤に対する割合で、1×10
-3〜0.3当量とすることが更に好ましい。
【0044】
粘着剤層の20℃における弾性率を、1.0×10
4Pa以上、1.0×10
6Pa未満の範囲とすると、初期剥離力が低下する傾向にあるため、被着体との密着性が低下する場合がある。このため、被着体の加工精度や加工歩留りが低下する場合も想定される。従って、粘着剤層を形成する粘着剤組成物に、粘着付与樹脂を含有させることが、常温付近における被着体との密着性の調整が容易となるために好ましい。
粘着付与樹脂としては、その軟化点が120℃以上であるものが好ましい。粘着付与樹脂の具体例としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;石油樹脂;クマロン−インデン樹脂等を挙げることができる。
【0045】
これらのなかでも、軟化点が120〜160℃の範囲内であるものが更に好ましく、150〜160℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記の範囲内である粘着付与樹脂を用いると、被着体への汚染、糊残りが少ないばかりでなく、作業環境下における被着体との密着性をさらに向上させることが可能となる。また、粘着剤層の弾性率を、所望とする所定の範囲内に調整し易く、しかも粘着剤層の弾性率が1.0×10
6Pa未満であっても初期剥離力を高くすることができるので好ましい。更に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール系の粘着付与樹脂を用いると、被着体への汚染、糊残りが少ないばかりか、50〜90℃の環境下での被着体との粘着性が向上するとともに、熱膨張性微小球の膨張後は、被着体から更に容易に剥離可能となる。
【0046】
粘着付与樹脂の配合割合は、粘着剤層の弾性率を所望とする所定の数値範囲内に調整することができるように適宜選択すればよく、特に制限はない。但し、粘着剤層の弾性率と初期剥離力の面から、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10〜100質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10質量部未満であると、作業時の被着体の密着性が低下する傾向にある。一方、100質量部超であると、常温における被着体との貼り付け性が低下する。被着体との密着性、及び常温における貼り付け性の面から、粘着付与樹脂の配合割合を、アクリル系粘着剤100質量部に対して、15〜50質量部とすることが更に好ましい。また、粘着付与樹脂の水酸基価は、30以上であることが好ましい。粘着付与樹脂の水酸基価が30以上とすることにより、加熱処理後の剥離の際により被着体に糊残りを生じにくくしやすい。
【0047】
また、このような粘着剤層には、本発明の粘着剤組成物としての機能を損なわない範囲であれば、反応促進剤、界面活性剤、顔料、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤などの種々の添加剤を含ませることができる。
本発明の粘着剤組成物は、上述した粘着剤、第1の熱膨張性微小球及び第2の熱膨張性微小球さらには必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、溶媒、並びに添加剤を任意の順序で添加し、溶解又は分散させることにより得ることができる。
【0048】
次に、本発明の粘着シートについて説明する。本発明の一例に係る粘着シートは、上述した粘着剤組成物を後述する基材の一方の面に塗布し、必要に応じて乾燥、硬化させることにより得ることができる。
粘着剤層の厚みとしては、選択する熱膨張性微小球の大きさにより異なってくる。例えば、第1の熱膨張性微小球及び第2の熱膨張性微小球として、質量平均粒径が10μm〜20μmのものを使用する場合、粘着剤層の厚みを、下限として20μm以上、さらには25μm以上とすることが好ましく、上限として55μm以下、さらには45μm以下、さらには35μm以下とすることが好ましい。粘着剤層の厚みを20μm以上とすることにより、初期の粘着力を十分なものにしやすい。粘着剤層の厚みを55μm以下とすることにより、加熱処理後の剥離時に凝集破壊が起こりにくくなり、より良好な剥離性を得やすい。また、加熱処理の際に熱膨張性微小球を十分に膨張させるためのエネルギーが再剥離性粘着剤の全体にいきわたりやすくなるため、加熱処理後の剥離の際に、より糊残りしにくくしやすい。
【0049】
基材としては、特に制約されるものではなく、粘着シートの利用分野に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、アクリル、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等の合成樹脂フィルムがあげられる。なかでも、粘着シートを50〜90℃程度の環境で長時間さらす分野で使用する場合には、寸法変化やカール発生等を回避すべく、JIS C2318で定義される加熱収縮率が0.5%以下の合成樹脂フィルムを用いることが好ましく、0.2%以下の合成樹脂フィルムを用いることが更に好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムのうちから、加熱収縮率が0.2%以下であるのものを選択するとよい。なお、合成樹脂フィルムは透明であっても、これを構成する材質に各種顔料や染料を配合して着色したものであってもよく、また、その表面がマット状に加工されていてもよい。
【0050】
基材の厚みは、粘着シートの利用分野に応じて適宜選択することができる。粘着シートの利用分野が、切断及び小片化加工時の被着体保持用途である場合、基材の厚さは25〜250μmであることが好ましい。さらに、被着体がセラミック系シートであり、粘着シートを、このセラミック系シートを極小の小片化加工する際に用いる場合には、基材の厚みは75〜188μmであることが好ましい。
【0051】
このような基材は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を含有させることができる。また、基材と粘着剤層との密着性を向上させるために、基材に表面にコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、放射線照射処理、酸処理、アルカリ処理、化学薬品処理、サンドブラスト処理、エンボス処理、下引き易接着層塗布形成などの易接着処理を施しても良い。また基材と粘着剤層との間に上述した粘着剤層から熱膨張性微小球を含有させない中間層を設けてもよい。このような中間層の厚みは特に制約されるものではないが、経済性、生産性の観点から、1〜50μm、好ましくは3〜30μm、さらには好ましくは5〜20μmである。
【0052】
また、基材の粘着剤層を設けた面とは反対側の面には、必要に応じて、前述と同様の粘着剤層や各種機能層を設けてもよく、また帯電防止処理、剥離処理、隠蔽処理、エンボス処理などの表面処理を施しても良い。また剥離処理として、シリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤を塗布しても良い。
また、粘着剤層中に残存する揮発分の量(残存揮発分量)によっては、粘着剤層と基材との粘着性や、加熱処理後における被着体からの剥離性、糊残り性に影響を及ぼす場合がある。従って、粘着剤層中の残存揮発分量を4質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることが更に好ましい。
【0053】
以上のような本発明の粘着シートは、適度な粘着力で被着体に貼り付けることができるとともに、使用目的を終え不要となった後には簡単に剥離することのできる再剥離性粘着シートとして使用することができる。具体的には、例えば、封筒や精密機械収納用ケース等のシール部分、壁紙、ラベル、車のバンパーや電線等の取り付け、フレキシブルプリント基板(FPC)製造工程における裏打用シートやメッキ工程でのマスク材、並びに半導体ウェハの切断工程、及び積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート等として、電気・電子業界において広く用いることができる。特に小片化加工された積層セラミックコンデンサー(チップコンデンサ)は、近年、より一層、極小化する傾向にあり、その仮止めシートとして、本発明技術は有用である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実験例(実施例及び比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0055】
1.再剥離性の粘着剤組成物及び粘着シートの作製
[実験例1〜16]
基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシートを使用し、その片面に、下記構成成分を表1記載の固形分比で均一に混合し溶解させて調製した粘着剤層形成塗工液a〜nをそれぞれベーカー式アプリケーターにて塗布した。各塗工液の粘着剤等の固形分比(質量換算)を表1に示す。各塗工液中の全固形分はいずれも40%に調製した。その後、80℃にて十分乾燥することによって粘着剤層を形成した後、この粘着層の表面に、その一方の表面がシリコーン離型処理された厚み38μmのPETシートを配設することにより、各例の粘着剤組成物及び粘着シートを作製した。
【0056】
《粘着剤層形成塗工液a〜nの構成成分》
・粘着剤(固形分34%): 294質量部(固形分100)
(ニッセツPE−121、アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体(AA/BA=10/90)、分子量:50万、ガラス転移温度:−20℃、酸化:78、日本カーバイド社製)
・熱膨張性微小球: 表1記載の種類と固形分比
・エポキシ系架橋剤: 表1記載の固形分比
(テトラッドX、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、エポキシ当量100、三菱ガス化学社製)
・粘着付与剤(固形分100%): 表1記載の固形分比
(YSポリスターT145、αピネン/フェノール樹脂、軟化点145℃、分子量1050、ヤスハラケミカル社製)
・トルエン: 226質量部
【0057】
【表1】
【0058】
なお、表1中、熱膨張性微小球の「X1」は、質量平均粒径が14μm、発泡開始温度が95℃、発泡倍率が5倍の熱発泡粒子(マツモトマイクロスフェアー、F−50D、松本油脂製薬社製)、「X2」は、質量平均粒径が13μm、発泡開始温度が90℃、発泡倍率が9倍の熱発泡粒子(F−48D、松本油脂製薬社製)、「X3」は、質量平均粒径が7μm、発泡開始温度が100℃、発泡倍率が4倍の熱発泡粒子(F−80GSD、松本油脂製薬社製)、「X4」は、質量平均粒径が16μm、発泡開始温度が105℃、発泡倍率が6倍の熱発泡粒子(F−65D、松本油脂製薬社製)である。参考までに、これらX1〜X4の上記物性を表2にまとめた。
【0059】
【表2】
【0060】
2.評価
各例の粘着剤組成物及び粘着シートについては、粘着剤層の厚さ、初期剥離力、加熱剥離性及び耐熱性の4項目について以下の方法により測定または評価した。結果を表3に示す。
【0061】
[粘着剤層の厚さ]
マイクロメーターを使用して、2枚のPETシートを含めた厚みを測定し、測定値から2枚のPETシートの厚みを減ずることにより算出した。
【0062】
[初期剥離力(N/25mm)]
SUS板の表面に、23℃、65%RHの条件下、10mm幅の粘着シートを貼付し、0.5時間放置して測定用サンプルを用意した。23℃、65%RHの条件下で180°剥離力を測定した。測定した180°剥離力の値を、25mm幅の粘着シートを用いた場合の値(N/25mm)に換算した。3N以上を良好として「〇」、3N未満を不良として「×」とした。
【0063】
[高温処理後の密着保持性]
被着体として、被着体としてSUS板(厚み1.5mm、21cm×5cm)に2cm×10cmの実験例で得られた粘着シートを貼り合せ、2cm×10cmの粘着シートを貼付した後、100℃のオーブンで5分間加熱した。放冷後、室温(23℃)にて、粘着シートの粘着層が被着体に密着しているか否かを目視により評価した。密着している場合を密着保持性ありとして「〇」、または「△」、密着していなかった場合を粘着保持性なしとして「×」とした。なお、「△」は、「〇」と比較して若干の劣りが見られる程度(密着はしているが、保持力が若干低下している程度)で、全体としてみれば必要十分な性能を発揮できている評価である。
【0064】
[加熱処理後の剥離性]
上記[高温処理後の密着保持性]の評価で使用したSUS板を用い、2cm×10cmの実験例で得られた粘着シートを貼り合せ、130℃のオーブンで5分間加熱した。放冷後、室温(23℃)にて、粘着シートの粘着層が被着体から剥離しているか否かを目視により評価した。剥離していた場合を良好として「〇」、または「△」、剥離していなかった場合を不良として「×」とした。なお、「△」は、「〇」と比較して若干の劣りが見られる程度(ほとんど剥離しているが一部わずかに剥離が残っている程度)で、全体としてみれば必要十分な性能を発揮できている評価である。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示すように、実験例1〜10では、特定関係にある第1の熱膨張性微小球(X2)と第2の熱膨張性微小球(X1,X4)を所定の質量比範囲(1質量部のX2に対して、X1またはX4を1以上3未満の質量比範囲)で含む2種の熱膨張性微小球を組み合わせたので、初期剥離力、高温処理後の密着保持性及び加熱処理後の剥離性のいずれも良好な結果が得られた。なお、実験例1〜6と比較して、実験例7は全熱膨張性微小球の配合量を少なく(16.2質量部)し、また実験例8はその配合量を多く(47.3質量部)したものである。全熱膨張性微小球の配合量が少なくなると熱処理後の剥離性が、若干ではあるが低下する傾向にあることが理解でき、全熱膨張性微小球の配合量が多くなると、高温処理後の密着保持性が、若干ではあるが低下する傾向にあることが理解できる。また実験例1〜6と比較して、実験例9は粘着剤層の厚みを薄く(25μm)し、実験例10はその厚みを厚く(55μm)したものである。厚みが薄くなると高温処理後の密着保持性が、若干ではあるが低下する傾向にあることが理解でき、厚みが厚くなると加熱処理後の剥離性が、若干ではあるが低下する傾向にあることが理解できる。
これに対し、実験例11は、2種の熱膨張性微小球を組み合わせたが、両微小球の大きさが実質的に同一でなかった(質量平均粒径の差が4μm超)ため、初期剥離力と加熱処理後の剥離性に劣っていた。実験例12〜14は、特定関係にある2種の熱膨張性微小球を組み合わせたが、本発明の質量比範囲外であったため、加熱処理後の剥離性に劣っていた。実験例15、16では、1種の熱膨張性微小球しか配合しなかったため、初期剥離力、高温処理後の密着保持性及び加熱処理後の剥離性のいずれかに不良を生ずる結果となった。