特許第6153807号(P6153807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153807
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】大谷石加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/30 20060101AFI20170619BHJP
   B44C 5/06 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   B28D1/30
   B44C5/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-160773(P2013-160773)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-30175(P2015-30175A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】510230919
【氏名又は名称】大谷石産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100131303
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 徳人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄一
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3177475(JP,U)
【文献】 特開昭55−67579(JP,A)
【文献】 特開昭52−10319(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3106426(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0232199(US,A1)
【文献】 特公昭49−31868(JP,B1)
【文献】 実開昭63−171520(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/00−1/32
B44C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大谷石を所定の大きさに切断して原料石材を形成する工程と、
前記原料石材を所定の形状に加工して加工石材を形成する工程と、
前記加工石材に含まれる粘土鉱物であるミソのうち、当該加工石材の表面に露出しているミソを取り除くことによって、当該加工石材の表面に装飾用穴部を形成する工程と、
前記装飾用穴部に装飾材を取り付ける工程と、を備えることを特徴とする大谷石加工品の製造方法。
【請求項2】
前記装飾用穴部は、切削工具を用いて、前記ミソを切削することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の大谷石加工品の製造方法。
【請求項3】
前記加工石材の表面に、装飾性を向上するための所定の表面加工を施す工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の大谷石加工品の製造方法。
【請求項4】
前記装飾材は、宝石、金属、樹脂及びガラス、光輝性物質のうち少なくとも一の材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の大谷石加工品の製造方法。
【請求項5】
前記装飾材は、宝石、金属、樹脂及びガラス、光輝性物質の材料のうちの複数種の混合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の大谷石加工品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大谷石加工品の製造方法に関し、特に、装飾性を向上することが可能な大谷石加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大谷石加工品の製造方法として、例えば、特許文献1に記載された植木鉢(大谷石加工品)の製造方法が知られている。
特許文献1に記載された植木鉢の製造方法では、大谷石を切断して形成した立方体を複数用意し、この複数の立方体を相互に接触・衝突させることによる削り合いの後に、これに盛土・排水用の孔を穿孔することによって、植木鉢を形成する。
そして、特許文献1に記載された植木鉢の製造方法によれば、大谷石同士の削り合いによって、ミソが斑点状に含まれる大谷石の表情を強く浮き彫りにすることができ、従来にない植木鉢の趣を楽しむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−223639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の大谷石加工品の製造方法では、当該製造方法により製造された大谷石加工品の装飾性を向上することが難しい。
すなわち、従来の大谷石加工品の製造方法では、大谷石が有する個性的な表情をより強く表現することのみによって装飾性を向上しているため、大谷石加工品の装飾性を向上することに限界がある。
本発明の課題は、従来の大谷石加工品の製造方法と比較して、大谷石加工品の装飾性をさらに向上させることが可能な大谷石加工品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法は、大谷石を所定の大きさに切断して原料石材を形成する工程と、前記原料石材を所定の形状に加工して加工石材を形成する工程と、前記加工石材に含まれる粘土鉱物であるミソのうち、当該加工石材の表面に露出しているミソを取り除くことによって、当該加工石材の表面に装飾用穴部を形成する工程と、前記装飾用穴部に装飾材を取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、加工石材の表面において装飾材が配設される。これによって、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、大谷石特有の質感に加えて装飾材が表現する美観により、大谷石加工品の装飾性をより一層向上することが可能となる。
特に、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、装飾材が、加工石材の表面に形成された装飾用穴部に配設されている。これによって、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、加工石材に対する装飾材の固定強度を向上することが可能となる。また、装飾材が加工石材の表面から突出することを抑制することができるため、大谷石加工品の使用時における装飾材への接触が抑制され、装飾材が加工石材から脱落することを防止することが可能となる。
【0006】
さらに、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、装飾材が配設される装飾用穴部が、加工石材(大谷石)に含まれる粘土鉱物であるミソを取り除くことによって形成されている。ここで、ミソ(黒色・茶色の斑点部分)は、モンモリロナイト等の粘土鉱物からなり、浮石質火山ガラスを主な構成物質としている。そして、ミソは、大谷石における他の部分(基質部分)と比較して強度が著しく低いため、基質部分から容易に取り除くことができる。したがって、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法によれば、加工石材において、装飾材を配設するための装飾用穴部を容易に形成することができ、その結果、加工石材に対して形成された装飾用穴部の大きさに対応した装飾材を容易に配設することが可能となる。
以上のように、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法によれば、従来の大谷石加工品の製造方法と比較して、大谷石加工品の装飾性を格段に向上することが可能となる。
【0007】
第二の発明に係る大谷石加工品の製造方法は、第一の発明に係る大谷石加工品の製造方法において、前記装飾用穴部は、切削工具を用いて、前記ミソを切削することにより形成されることを特徴とする。
第二の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、装飾材を配設するための装飾用穴部が、加工石材の表面に露出しているミソを切削工具で切削することによって形成される。これによって、第二の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、装飾材を配設するための装飾用穴部を更に容易に形成することが可能となり、特に、手作業によって装飾用穴部を形成することが可能となる。
【0008】
第三の発明に係る大谷石加工品の製造方法は、第一又は第二の発明に係る大谷石加工品の製造方法において、前記加工石材の表面に、装飾性を向上するための所定の表面加工を施す工程を備えることを特徴とする。
第三の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、加工石材の表面に、装飾性を向上するための所定の表面加工が施される。ここで、所定の表面加工としては、ダイヤ仕上げ加工、リブ仕上げ加工、ビシャン仕上げ加工、格子仕上げ加工、チェーン仕上げ加工、コボリ仕上げ加工、割り肌仕上げ加工等、種々の溝や凹部を施す加工を施すことができる。これによって、第三の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、大谷石加工品の装飾性を更により一層向上することが可能となる。
なお、所定の表面加工を施す工程は、加工石材の表面に装飾用穴部を形成する工程より先に実施されることが好ましい。具体的には、所定の表面加工を施す工程は、原料石材を所定の形状に加工して加工石材を形成する工程より後であって、加工石材の表面に装飾用穴部を形成する工程より先に実施されることが好ましい。
【0009】
第四の発明に係る大谷石加工品の製造方法は、第一乃至第三のうちいずれか一の発明に係る大谷石加工品の製造方法において、前記装飾材は、宝石、金属、樹脂及びガラス、その他の光輝性物質のうち少なくとも一の材料からなることを特徴とする。
第四の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、装飾材が、大谷石とは異なる材料(宝石、金属、樹脂及びガラスその他の光輝性物質のうち少なくとも一の材料)により形成されている。ここで、大谷石は、加工方法やミソの出かた等によって、趣のある個性的な表情を表現することができる。したがって、第四の発明に係る大谷石加工品の製造方法によれば、大谷石により形成された加工石材と、大谷石とは質感の異なる材料により形成された装飾材とで、互いに異なる美観が表現され、それぞれの美観をより高め合うことができ、その結果、大谷石加工品の装飾性を更により一層向上することが可能となる。
【0010】
第五の発明に係る大谷石加工品の製造方法は、第一乃至第三のうちいずれか一の発明に係る大谷石加工品の製造方法において、前記装飾材は、宝石、金属、樹脂及びガラス、その他の光輝性物質の材料のうちの複数種の混合物からなることを特徴とする。
第四の発明に係る大谷石加工品の製造方法では、種々の装飾材が混在して使用されるために装飾材が大谷石とは質感が異なるばかりでなく、装飾材自体が種々の異なる質感のものが混在するために、大谷石加工品の装飾性をさらに格段に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る大谷石加工品の製造方法によれば、従来の大谷石加工品の製造方法と比較して、大谷石加工品の装飾性を著しく向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る大谷石加工品の製造方法により製造されたコースターの斜視図である。
図2図1に示すコースターの平面図である。
図3図1に示すコースターの裏面図である。
図4図2に示すA−A線に沿う断面図である。
図5図1に示すコースターの使用例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るコースターの製造方法を示すフローチャートである。
図7】本発明の別の実施形態に係る建物内装壁面の部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る大谷石加工品の製造方法及び当該製造方法によって製造された大谷石加工品について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る大谷石加工品の製造方法は、各種の大谷石加工品の製造に適用することが可能となっている。ここで、大谷石加工品としては、例えば、建築用材料(床材、柱材、壁材、石垣、壁面パネル、床面パネル、タイル等)、家具(テーブル、椅子、テレビ台等)、家庭用具・食卓用具(灰皿、コースター、火鉢、鍋敷き等)、装飾用具(額縁、花器、植木鉢等)、電気製品(照明の台座等)、浴槽等、大谷石が用いられることが可能な各種製品類が該当する。
【実施例1】
【0014】
本実施形態では、本発明に係る大谷石加工品の製造方法を、大谷石加工品であるコースター1の製造に適用した一例について説明する。
【0015】
(コースター1の構成)
まず、本発明に係る大谷石加工品の製造方法により製造されたコースター1の構成について、図面を参照しながら説明する。
コースター1は、コップ(グラス、カップ、ジョッキ等)、ボトル等の飲料用の容器C(図5参照)の下に敷いて使用される。
図1は、本発明の実施形態に係るコースターの斜視図である。図2は、図1に示すコースターの平面図である。図3は、図1に示すコースターの裏面図である。図4は、図2に示すA−A線に沿う断面図である。
図1乃至図4に示すコースター1(大谷石加工品)は、上面11に容器Cが載置される載置台10と、載置台10の下面側に配設された弾性材20と、載置台10に配設された装飾材30と、を備えている。
【0016】
載置台10は、大谷石によって形成されている。ここで、大谷石は、栃木県宇都宮市北西部の大谷町付近一帯で採掘される石材であって、珪酸、第二酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マンガン、石灰、酸化マグネシウム、カリウム、ナトリウム等を成分とする軽石凝灰岩であり、基質部分(石基)は多量の浮石質ガラス、斜長石、石英と少量の黒雲母角閃岩輝石で構成されている。さらに大谷石のなかに含まれる褐色の「みそ」と呼ばれる部分は、比較的含水量の多い沸石およびモンモリロナイトの粘土鉱物からなり、少量の蛋白石鉄塩鉱物などの不純物を含んでいる。
【0017】
大谷石は、多孔質で火熱に強く、1000℃以上でも安定し、他の石材に比べて軟らかく、採掘や加工がしやすい性質を有している。また、大谷石は、多量のゼオライトを含んでおり、このゼオライトは、多量のマイナスイオン及び強い遠赤外線を放出し、その多孔質構造により、脱臭効果及びガスや水を吸着し、シックハウス症候群の発症を防止する効能があること、また多量のマイナスイオンを発生するところから細胞の活性化や免疫性強化、自律神経の調整、精神安定、空気清浄化などの癒し効果、および腐敗進行防止やカビ発生の抑制など熟成作用を有し、さらに平均吸音率を測定することにより求められる残響時間から、コンクリートやガラスに比してその環境に適した音響空間を演出できる音響効果を有していることで知られている。
【0018】
載置台10は、平板状に形成されている。図2に示すように、本実施形態では、載置台10は、平面視で円形の板状に形成されている。なお、載置台10は、平面視で四角形(多角形)、星形、ハート形等、様々な形に形成することができる。ここで、載置台10の厚さは、加工性、強度、吸水性等を考慮すると、5mmから15mmの範囲内にあることが好ましく、本実施形態では、約9mmに形成されている。
載置台10の表面には、装飾材30を配設するための装飾用穴部12が形成されている。装飾用穴部12は、載置台10の上面11及び側面(外周面)のうち少なくとも一方において形成されている。本実施形態では、載置台10の上面11及び側面のそれぞれにおいて、複数の装飾用穴部12が形成されている。
【0019】
各層食用穴部12は、載置台10を貫通しない深さ(当該穴部12の深さ方向に貫通しない深さ)となるように、凹状に形成されている。本実施形態では、大谷石材表面の所々に露出した俗にミソと呼ばれる特有の空隙部を利用することにより作業性を良好にするものである。すなわち、各装飾用穴部12は大谷石材表面の所々に露出する空隙部内に含まれる粘土鉱物であるミソを取り除くことによって形成されている。ここで、ミソ(黒色・茶色の斑点部分)は、モンモリロナイト等の粘土鉱物からなり、浮石質火山ガラスを主な構成物質としている。そして、ミソは、大谷石材における他の部分(基質部分)と比較して強度がきわめて低いため、例えば先の細いドライバーあるいは先の尖った工具など簡単な切削工具類を用いて基質部分から容易に取り除くことができる。そこで、本実施形態では、載置台10の表面に現れているミソを、切削工具により削り取ることによって、各装飾用穴部12を形成している。なお、本実施形態では、大谷石材におけるミソを削り取ることによって各装飾用穴部12を形成しているが、大谷石材における基質部分を切削することによって各装飾用穴部12を形成しても構わない。
【0020】
また、載置台10の上面11に形成される装飾用穴部12については、上面11における容器Cが載置される領域(以下、「載置領域」)を除いた領域(以下、「周辺領域」とする)のみに形成されても、載置領域のみに形成されても、載置領域及び周辺領域のそれぞれに形成されても構わない。
さらに、各装飾用穴部12の深さは、適宜、設定することができるが、当該装飾用穴部12に配設される装飾材30が載置台10の表面から突出することがない深さに設定されていることが好ましい。特に、載置台10の上面11の載置領域に形成される装飾用穴部12については、当該装飾用穴部12に配設される装飾材30が載置台10の表面から突出することがない深さに設定されていることが好ましい。これによって、載置台10の上面11(載置領域)に載置された容器Cの載置状態が不安定となることを防止することが可能となる。
載置台10の上面11には、描画、印刷等によって、模様、文字、絵、ロゴ等を施すことができる。また、載置台10の上面11には、ダイヤ仕上げ加工、リブ仕上げ加工、ビシャン仕上げ加工、格子仕上げ加工、チェーン仕上げ加工、コボリ仕上げ加工、割り肌仕上げ加工等、種々の溝や凹部を施す表面加工を行うことができる。これによって、コースター1の装飾性を更に向上することが可能となる。
【0021】
弾性材20は、ゴム、樹脂、コルク等の弾性材料によって形成されている。本実施形態では、弾性材20は、コルクにより形成されている。また、弾性材20は、平面視で円形の平板状に形成されている。なお、弾性材20の形状は、平面視で四角形(多角形)、星形、ハート形等、載置台10の形状に合わせて変更することができる。そして、弾性材20は、接着により、載置台10の裏面に取付けられている。
図3に示すように、弾性材20の大きさ(直径)は、載置台10の大きさ(直径)より小さく形成されている。また、図4に示すように、弾性材20の厚さは、載置台10の厚さより薄く形成されており、本実施形態では2mmに形成されている。ここで、本実施形態では、載置台10の下面の略全域を1枚の弾性材20によって覆っているが、載置台10の下面において分割された複数の弾性材20を配設しても構わない。
【0022】
装飾材30は、載置台10とは異なる材料により形成されている。具体的には、装飾材30は、宝石、金属、樹脂及びガラスのうち少なくとも一の材料から形成されている。宝石としては、例えば、真珠、水晶、サンゴ、琥珀、天然鉱物(いわゆる、「天然宝石」)、人工合成物(いわゆる、「人工宝石」)等を用いることができる。また、金属としては、スパンコール、金属粉末、金属箔、銅やアルミなどの金属球等、特に、貴金属により形成されたものを用いることができる。樹脂としては、ビーズ、スパンコール(金属がメッキ加工されたものを含む)、ラインストーン、その他の光輝性物質等を用いることができる。なお、ラインストーン、ビーズ等は、水晶、ガラス等により形成されているものであっても構わない。
図1図2及び図4に示すように、装飾材30は、各装飾穴部12の内側に配設されている。ここで、各装飾穴部12においては、1つの装飾材30が配設されていても、複数の装飾材30が配設されていても構わず、また、1種類の装飾材30が配設されていても、複数種類の装飾材30が配設されていても構わない。
【0023】
各装飾材30は、載置台10の表面に対して外方に向かって突出しないように構成(配置)されていることが好ましい。特に、載置台10の上面11の載置領域に形成された装飾用穴部12に配設される装飾材30については、載置台10の上面11から上方に向かって突出しないように構成(配置)されることが好ましい。これによって、載置台10の上面11(載置領域)に載置された容器Cの載置状態が不安定となることを防止することが可能となる。
なお、各装飾材30は、載置台10の表面に対して外方に向かって僅かに突出するように構成(配置)しても構わない。
【0024】
特に、載置台10の上面11における周辺領域又は載置台10の側面に配設される装飾材30については、載置台10の表面に対して外方に向かって僅かに突出するように配置することによって、装飾材30が目に付き易くなり(装飾材30の視認性が向上し)、コースター1の装飾性をより一層向上することが可能となる。
各装飾材30は、接着剤等によって、装飾用穴部12の内側に固定されている。この場合に使用される接着剤は例えばエポキシ系やシリコン系樹脂接着剤などのように接着固化後も透明性を維持できるものが好ましい。またこの際、装飾材30を装飾用穴部12の内側に挿入した状態で透明な樹脂等を装飾用穴部12に充填して、該穴部12が樹脂によって完全に塞がれた状態としても構わない。これによって、装飾材30が樹脂等により完全に覆われて、装飾材30と容器Cとの接触が抑制され、装飾材30の破損及び脱落を防止することが可能となる。
【0025】
(コースター1の作用・効果)
次に、コースター1(大谷石加工品)の作用・効果について説明する。
図5は、図1に示すコースターの使用例を示す図である。
図5に示すように、コースター1は、弾性材20を下側にしてテーブルTに載置されて使用される。そして、コースター1の載置台10の上面11には、飲料(食品)を入れた容器Cが載置される。
この際、コースター1の使用者は、載置台10の上面11及び側面のそれぞれに配設された装飾材30を目にすることになる。特に、容器Cが透明である場合には、容器Cを介して(透明な容器C越しに)、載置台10の上面11の載置領域に配設された装飾材30を煌びやかに視認することが可能となる。この場合に透明な容器Cの底部、および容器内に入れられている飲料水によって装飾材30が拡大され、あるいは変形して見えることになるために、大谷石本来の質感に加えて意外な装飾性を発揮させることができる。
【0026】
このように、コースター1では、載置台10において装飾材30が配設されている。これによって、装飾材30が表現する美観により、装飾性を向上することが可能となる。
特に、コースター1では、装飾材30が、載置台10とは質感の異なる材料により形成されている。具体的には、コースター1では、載置台10が大谷石材により形成され、装飾材30が宝石、金属、樹脂及びガラスその他の光輝性物質のうち少なくとも一の材料又はそれらの組み合わせにより形成されている。ここで、大谷石材は、加工方法やミソの出かた等によって、趣のある個性的な表情を表現することができる。これによって、コースター1では、大谷石により形成された載置台10と、大谷石とは異なる異質材料により形成された装飾材30とで、互いに異なる美観が協働表現され、それぞれの美観をより高め合うことができ、その結果、装飾性を更に向上することが可能となる。
【0027】
また、コースター1では、装飾材30が、載置台10の表面に形成された装飾用穴部12に配設されている。これによって、コースター1では、載置台30に対する装飾材30の固定強度を向上することが可能となる。また、装飾材30が載置台30の表面から突出することを抑制することができるため、コースター1の使用時における装飾材30への接触(容器C等の接触)が抑制され、装飾材30が載置台10から脱落することを防止することが可能となる。さらに、装飾材30が載置台10の表面から突出することが抑制されることにより、載置台10に載置された容器Cの下方(載置領域)においても装飾材30を配設することが可能となり、載置台10において装飾材30を配設することが可能な範囲(位置)を拡大することが可能となる。
【0028】
さらに、コースター1では、載置台10の上面11及び側面のそれぞれにおいて装飾材30が配設されていることによって、使用時における装飾材30の視認性が高まり、装飾性を更に向上することが可能となる。
また、コースター1では、装飾材30が配設される装飾用穴部12が、大谷石に含まれる粘土鉱物であるミソを取り除くことによって形成されている。ここで、ミソは、大谷石における他の部分(基質部分)と比較して強度が著しく低いため、基質部分から容易に取り除くことができる。したがって、コースター1によれば、装飾材30を配設するための装飾用穴部12を容易に形成することができ、その結果、装飾材30入りのコースター1の製造を容易に行うことが可能となる。
【0029】
一方、コースター1を使用する際には、容器Cに入っている飲料の温度が周囲の温度より低い場合には、時間の経過に伴い、容器Cの外面に水滴が付着する。そして、容器Cの外面に付着した水滴は、容器Cの外面に沿ってコースター1の載置台10の上面11に落下する。
この際、コースター1では、容器Cが載置される載置台10が、高い吸水性を有する大谷石により形成されていることによって、載置台10の上面11に落下した水滴が載置台10の内部に吸収され、載置台10の上面11に水滴が溜まることが防止される。したがって、コースター1によれば、容器Cの外面に発生した水滴がテーブルTや洋服等に垂れることを防止でき、また、水滴の粘性によりコースター1が容器Cの底部に付着することを防止できる。
特に、コースター1では、載置台10が紙等と比較して重量が大きい大谷石により形成されていることによって、容器Cの底部への付着をより確実に防止することができる。
【0030】
また、コースター1では、載置台10を形成する大谷石が、強い遠赤外線及び多量のマイナスイオンを放出する天然ゼオライトを多量に含んでいることによって、載置台10に載置された容器C内の食品(飲料等)に対して遠赤外線が照射され、食品中の水分子を活性化させる。したがって、コースター1によれば、容器C内の食品の熟成を進ませることができ、食品の味を美味しくすることが可能となる。
また、コースター1から周囲に対して多量のマイナスイオンが照射され、周囲の人間にアルファ波を発生させる。したがって、コースター1によれば、大谷石の見た目の柔らかさとともに、周囲の人間をリラックスさせることが可能となる。
また、コースター1では、載置台10に含まれる天然ゼオライトが有する強い脱臭作用によって、脱臭効果を奏することが可能となる。
さらに、コースター1では、載置台10を軟岩(軟質)である大谷石により形成することによって、加工性が向上し、円形、四角形、星形、ハート形等、様々な形を容易に形成することが可能となる。
【0031】
また、コースター1では、載置板10の下面側に弾性材20が配設されていることによって、コースター1がテーブルT等を破損することを防止可能となるとともに、載置板10の割れを防止することが可能となる。
特に、本実施形態に係るコースター1では、弾性材20がコルクにより形成されているため、コルクが持つ弾力性、断熱性、吸音性、耐水性軽量性等の特性により、コースター1の使い勝手を向上することが可能となる。
【0032】
(コースター1の製造方法)
次に、コースター1(大谷石加工品)の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図6は、本発明の実施形態に係るコースターの製造方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、コースター1の製造方法では、原料石材形成工程、加工石材形成工程、表面加工工程、(装飾用)穴部形成工程、装飾材配設工程、弾性材配設工程の順に、各工程が実施される。
原料石材形成工程では、大谷石を採掘して、採掘された大谷石から原料石材を形成する。具体的には、切断装置を用いて、採掘された大谷石を所定の大きさに切断して、原料石材を形成する。ここで、切断装置としては、ガングソー、サーキュラーソー、ダイヤモンドブレード等を用いることができる。
加工石材形成工程では、原料石材形成工程で形成された原料石材を所定の形状に加工して加工石材を形成する。具体的には、切断装置、切削装置、研削装置等を用いて、原料石材を、平面視で円形の平板状に切断・切削・研削して、載置台10(穴部12が形成されていない状態の載置台10)を形成する。ここで、切断装置・切削装置としては、原料石材形成工程で用いた切断装置と同一のものを用いることができる。また、研削装置としては、ドラムホイール、バーチカルホイール等のダイヤモンド工具を用いることができる。
【0033】
表面加工工程では、加工石材形成工程で形成された加工石材(載置台10)の表面に、装飾性を向上するための所定の表面加工を施す。具体的には、切削装置、研削装置等を用いて、加工石材の表面に、所定の表面加工を施す。ここで、所定の表面加工としては、ダイヤ仕上げ加工、リブ仕上げ加工、ビシャン仕上げ加工、格子仕上げ加工、チェーン仕上げ加工、コボリ仕上げ加工、割り肌仕上げ加工等、種々の溝や凹部を施す加工が該当する。
穴部形成工程では、表面加工工程で所定の表面加工が施された加工石材(載置台10)の表面に、(装飾用)穴部12を形成する。具体的には、加工石材(所定の表面加工が施された載置台10)に含まれる粘土鉱物であるミソのうち、加工石材の表面に露出しているミソを取り除くことによって、加工石材の表面に(装飾用)穴部12を形成する。本実施形態では、各穴部12は、切削工具を用いて、ミソを切削することにより形成される。ここで、切削工具としては、ドリルビットや、ホールソー、ダイヤモンドビット、簡単なものでは先の細めのドライバーなどの工具等を用いることができる。
【0034】
装飾材配設工程では、穴部形成工程で(装飾用)穴部12が形成された加工石材(載置断10)の各穴部12に、装飾材30を配設する。具体的には、接着剤によって、装飾材30を各穴部12内に接着する。ここで、各装飾材30は、加工石材(載置台10)の表面に対して外方に向かって突出しないように配置されていることが好ましい。また、各穴部12では、装飾材30を内側に挿入した状態で、透明な樹脂等を装飾用穴部12内に充填して、当該穴部12が樹脂によって完全に塞がれた状態とすることが好ましい。
弾性材配設工程では、装飾材配設工程で装飾材30が配設された加工石材(装飾材30が配設された載置台10)の下面に、弾性材20を配設する。具体的には、接着剤によって、コルクからなる弾性材20を載置台10の下面に接着する。これによって、コースター1が完成する。
ここで、本実施形態では、表面加工工程が、(装飾用)穴部形成工程及び装飾材配設工程の先に実施される。しかしながら、表面加工工程は、穴部形成工程の後に実施しても構わず、また、穴部形成工程及び装飾材配設工程の後に実施しても構わない。また、表面加工工程については、省略しても構わない。
【0035】
(本実施形態に係るコースター1の製造方法の作用・効果)
本実施形態に係るコースター1(大谷石加工品)の製造方法では、加工石材(載置台10)の表面において装飾材30が配設される。これによって、装飾材30が表現する美観により、コースター1の装飾性を向上することが可能となる。
特に、本実施形態に係るコースター1の製造方法では、装飾材30が、加工石材(載置台10)の表面に形成された装飾用穴部12に配設される。これによって、加工石材に対する装飾材30の固定強度を向上することが可能となる。また、装飾材30が加工石材の表面から突出することを抑制することができるため、コースター1の使用時における装飾材30への接触が抑制され、装飾材30が加工石材から脱落することを防止することが可能となる。
さらに、本実施形態に係るコースター1の製造方法では、装飾材30が配設される装飾用穴部12が、加工石材(大谷石)に含まれる粘土鉱物であるミソを取り除くことによって形成される。ここで、ミソは、大谷石における他の部分(基質部分)と比較して強度が低いため、基質部分から容易に取り除くことができるために加工性に優れる。したがって、加工石材において、装飾材30を配設するための装飾用穴部12を容易に形成することができ、その結果、加工石材に対して装飾材30を容易に配設することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係るコースター1の製造方法では、装飾材30を配設するための装飾用穴部12が、加工石材の表面に露出しているミソを切削工具で切削することによって形成される。これによって、装飾材30を配設するための装飾用穴部を更に容易に形成することが可能となり、特に、手作業によって装飾用穴部12を形成することが可能となる。
また、本実施形態に係るコースター1の製造方法では、加工石材の表面に、装飾性を向上するための所定の表面加工が施される。これによって、コースター1の装飾性を更に向上することが可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るコースター1の製造方法では、装飾材30が、大谷石とは異質の材料(宝石、金属、樹脂及びガラス、光輝性物質等のうち少なくとも一の材料又はその混合)により形成されている。これによって、大谷石により形成された加工石材(載置台10)と、大谷石とは異質の材料により形成された装飾材30とで、互いに異なる美観が表現され、それぞれの美観をより高め合うことができ、その結果、コースター1の装飾性を更に向上することが可能となる。特に太陽光やランプの光照射をうけた場合に、装飾材30が乱反射することが多く、大谷石本来の黒いミソに比して著しい煌きの輝きを放つために、コースター1を構成する大谷石特有の材質と、装飾材30の光輝性とによって、これまでにない装飾性を発揮することができる。
以上のように、本実施形態に係る大谷石加工品(コースター1)の製造方法によれば、従来の大谷石加工品の製造方法と比較して、大谷石本来の風合いとは全く異なった加工品の装飾性を向上することが可能となる。
【実施例2】
【0038】
本実施形態では、本発明に係る大谷石加工品の製造方法を、大谷石加工品である建物の屋内装飾壁面(壁材)の製造に適用した一例について説明する。図7には建物内装壁面の部分的斜視図があらわされており、例えば幅120cm、高さ50cm、厚み25cmの立方体形に形成した大谷石の壁材40を、積み重ねて建物内壁面を構成している。この壁材40は、原料石材形成工程では、大谷石を採掘して、採掘された大谷石をガングソー、サーキュラーソー、ダイヤモンドブレード等を用いることにより、一定の厚みを有した方形立方体形状の原料石材を形成するものであることは、既述した実施例1の場合と同様である。加工石材形成工程においても、原料石材形成工程で形成された原料石材を所定の厚みを有した立方体形状に形成すると共に、積み重ねて表面となる側の正面を研削して平坦にし、表面加工を施す。
【0039】
表面加工工程では、装飾性を向上するための所定の表面加工を施す。具体的には、切削装置、研削装置等を用いて、加工石材の表面に、所定の表面加工を施す。ここで、所定の表面加工としては、ダイヤ仕上げ加工、リブ仕上げ加工、ビシャン仕上げ加工、格子仕上げ加工、チェーン仕上げ加工、コボリ仕上げ加工、割り肌仕上げ加工等、種々の溝や凹部を施す加工が該当する。
装飾用穴部形成工程では、表面加工工程で所定の表面加工が施された加工石材(壁材40)の表面に、装飾用穴部を形成する。具体的には、加工石材(所定の表面加工が施された壁材40)に含まれる粘土鉱物であるミソのうち、加工石材の表面に露出しているミソを取り除くことによって、加工石材の表面に装飾用穴部を形成する。本実施形態では、各装飾用穴部は、切削工具を用いて、ミソを切削することにより形成される。ここで、切削工具としては、ドリルビットや、ホールソー、ダイヤモンドビット、簡単なものでは先の細めのドライバーなどの工具等を用いることができる。
【0040】
装飾材配設工程では、装飾用穴部形成工程で該穴部が形成された加工石材(壁材40)の各装飾用穴部(ミソ跡部分)に、装飾材30を配設する。具体的には、接着剤によって、装飾材30を各装飾用穴部内に接着する。ここで、各装飾材30は、加工石材(壁材40)の表面に対して外方に向かって突出しないように配置されていることが好ましい。また、各穴部では、装飾材30を内側に挿入した状態で、透明な樹脂等を装飾用穴部内に充填して、当該穴部が樹脂によって完全に塞がれた状態とすることが好ましい。
以上の壁材40およびその表側となる部分の表面加工工程をはじめとした各工程については既述した実施例1のコースター1の製造方法における場合と異ならない。コースター1の特有の形状や構造の部分を除いた大谷石の加工石材表面に装飾材30を施すためのすべての手法については、この実施例2における壁材40の製造のための手法にそのまま当てはまる。
なお図7の例において、41は建物内の支柱、42は床面部、43は天井部、44は照明器具を、それぞれ表している。
【0041】
なお上記の実施例は大谷石を利用したコースターや屋内壁面に用いる壁材の製造を例示したものであるが、本発明はこのほかにも建築用材料(床材、柱材、石垣、壁面パネル、床面パネル、タイル、建物外壁材等)、家具(テーブル、椅子、テレビ台等)、家庭用具・食卓用具(灰皿、火鉢、鍋敷き等)、装飾用具(額縁、花器、植木鉢等)、電気製品(照明の台座等)、浴槽等、大谷石の使用可能な大谷石加工品全般に亘って適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 コースター
10 載置台
11 上面
12 装飾用穴部
20 弾性材
30 装飾材
C 容器
T テーブル
40 壁材
41 支柱
42 床面部
43 天井部
44 照明器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7