特許第6153818号(P6153818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153818
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】オイルクーラ
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20170619BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20170619BHJP
   F28F 9/00 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   F28F3/08 311
   F28D9/00
   F28F9/00 331
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-175621(P2013-175621)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45427(P2015-45427A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0216987(US,A1)
【文献】 特開2013−7516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/08
F28D 9/00
F28F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のオイル連通孔(1)と一対の冷却水連通孔(2)とが互いに周方向に離間して穿設された複数の第1皿状プレート(3)、第2皿状プレート(4)を有し、第1皿状プレート(3)と第2皿状プレート(4)とが交互に積層されて、その積層方向に交互にオイル流路(5)と冷却水流路(6)とが形成されてコア(7)を構成し、コア(7)の上端に上端板(8)が配置されたオイルクーラにおいて、
オイル流路(5)に、その流路の厚みに整合するインナーフィン(10)が介装されると共に、積層法方向の上端に補助上端板(23)を介して前記上端板(8)が配置され、その補助上端板(23)およびインナーフィン(10)にはオイル連通孔(1)の位置に、その連通孔(1)にそれぞれ整合するインナーフィン孔(10a)、孔(23a)が形成され、
そのインナーフィン孔(10a)の内周が、前記オイル流路(5)の厚みで露出し、前記上端板(8)は、各皿状プレート(3)(4)のインナーフィン孔(10a)の位置に、そのインナーフィン孔(10a)の直径(D2)より大きな直径(D1)を有する断面弧状の凸部(11)外面側に突出させて、インナーフィン孔(10a)の孔縁には応力集中が加わらないように構成したことを特徴とするオイルクーラ。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルクーラにおいて、
前記凸部(11)の内周面が半球状に形成されたオイルクーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿状プレートを積層してなる積層型オイルクーラであって、そのオイル側の耐圧性を向上させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に皿状プレートを積層してオイルクーラを形成したものが提案されている。
これは、夫々一対のオイル連通孔と冷却水連通孔とが周方向に離間して穿設された皿状の多数の第1プレートと第2プレートとを交互に積層して、その積層方向に交互にオイル流路と冷却水流路とを形成してコアを構成したものである。そして、コアをオイル流入孔及び流出孔を有する基部に取付けると共に、その積層方向の最上端に上端板を取付け、それに冷却水の出入口パイプを接続したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−185462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示す如く、従来型のオイルクーラは、上端板8とプレート3との間にオイル流路5が存在し、それにインナーフィン10が介装されている。オイルクーラを構成するプレート3,4にはオイル連通孔1が設けられ、そのオイル連通孔1に整合してインナーフィン10にもインナーフィン孔10aが設けられている。オイル19はそのインナーフィン孔10aからオイル流路5内に進入する。ところが、そのオイル19の内圧は上端板8に加わり、それが矢印の如く上方に持ち上げられる。すると、その応力はインナーフィン10に加わり、そのろう付け部を引き剥がす方向に歪む。実験によれば、特にインナーフィン10にはそのインナーフィン孔10aの近傍に応力集中が起こり、そのために耐圧性を高くできない問題があった。
また、図8に示す如く、オイル連通孔1側へ上端板8を凹湾曲させる構造も提案されていた。この場合も、図7の場合と同様に、そのオイル19の内圧は上端板8に加わり、それが図7同様に上方に持ち上げられる。すると、その応力はインナーフィン10に加わり、そのろう付け部を引き剥がす方向に歪む。
そこで本発明は、インナーフィン10のインナーフィン孔10aに加わる応力集中を、その外側に分散させて耐圧性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、一対のオイル連通孔(1)と一対の冷却水連通孔(2)とが互いに周方向に離間して穿設された複数の第1皿状プレート(3)、第2皿状プレート(4)を有し、第1皿状プレート(3)と第2皿状プレート(4)とが交互に積層されて、その積層方向に交互にオイル流路(5)と冷却水流路(6)とが形成されてコア(7)を構成し、コア(7)の上端に上端板(8)が配置されたオイルクーラにおいて、
オイル流路(5)に、その流路の厚みに整合するインナーフィン(10)が介装されると共に、積層法方向の上端に補助上端板(23)を介して前記上端板(8)が配置され、その補助上端板(23)およびインナーフィン(10)にはオイル連通孔(1)の位置に、その連通孔(1)にそれぞれ整合するインナーフィン孔(10a)、孔(23a)が形成され、
そのインナーフィン孔(10a)の内周が、前記オイル流路(5)の厚みで露出し、前記上端板(8)は、各皿状プレート(3)(4)のインナーフィン孔(10a)の位置に、そのインナーフィン孔(10a)の直径(D2)より大きな直径(D1)を有する断面弧状の凸部(11)外面側に突出させて、インナーフィン孔(10a)の孔縁には応力集中が加わらないように構成したことを特徴とするオイルクーラである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のオイルクーラにおいて、
前記凸部(11)の内周面が半球状に形成されたオイルクーラである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、その上端板8に、各皿状プレート3、4のオイル連通孔1の位置で、インナーフィン10のインナーフィン孔10aの直径D2以上の直径D1を有する断面弧状の凸部11を外面側に突出したものである。そのため、図6から明らかなように、インナーフィン10のインナーフィン孔10aの周囲に加わる応力集中を、その外側に分散させて回避し、耐圧性を向上することができる。逆に、上端板8に凸部11が存在しないと、図7に示す如く、オイルの圧力が上端板8を上方に持ち上げ、それに接合されたインナーフィン10のろう付部を剥離させ、インナーフィン孔10aの位置で応力集中がおこり、そこに亀裂が生じる。本発明の凸部11は、インナーフィン孔10aより直径が大きいので、その応力をインナーフィン孔10aの外側に分散して、応力集中を回避し、耐圧性を向上できる。
請求項2に記載の発明によれば、凸部11の内周面が半球状に形成されたため、さらに耐圧性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のオイルクーラの分解斜視図。
図2】同組立て状態を示す平面図。
図3】同組立て状態を示す正面図。
図4図2のIV−IV矢視断面図。
図5図2のV−V矢視断面図。
図6】本発明のオイルクーラの要部断面説明図。
図7】従来型オイルクーラの要部を示す説明図。
図8】他の従来型オイルクーラの要部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
このオイルクーラは、図1に示す如く、第1のプレート3と第2のプレート4とを交互に配置してコア7を形成し、その最上端に上端板8を設ける。プレート3とプレート4とには、夫々一対づつのオイル連通孔1と冷却水連通孔2とが設けられ、それらが対角位置に配置されている。第1のプレート3の冷却水連通孔2の孔縁部には冷却水用の環状膨出部2aが突設され、第2のプレート4のオイル連通孔1の孔縁部にはオイル用の環状膨出部1aが形成されている。そして、オイル流路5と冷却水流路6とは、夫々第1のプレート3の環状膨出部2a、第2のプレート4の環状膨出部1aにより分離される。即ち、図4に示す如く、プレート4のオイル用の環状膨出部1aがプレート3のオイル連通孔1にろう付けされ、各オイル流路5間を連通する。
【0010】
また、図5に示す如く、プレート3の冷却水用の環状膨出部2aがプレート4の冷却水連通孔2に接続されて各冷却水流路6間を連通する。
また、オイル流路5にはインナーフィン10が配置される。インナーフィン10は、オイル連通孔1,冷却水連通孔2に整合する位置にインナーフィン孔10aが図6の如く形成されている。
【0011】
次に、上端板8は一対のオイル連通孔1の位置に図4図6に示す如く、断面弧状で球面の一部を形成する凸部11がそれぞれ外側に突出し、その直径D1は、図6に示す如く、インナーフィン10のインナーフィン孔10aの直径D2よりも大である。
また、冷却水連通孔2の位置には、一対のパイプ14が接続される。
このようにしてなる各部品は、互いに接触する少なくとも一方にろう材が被覆され、炉内で一体的にろう付け固定される。そして、図4図5に示す如く、オイル流路5と冷却水流路6とがプレート3,プレート4の積層方向に交互に配置される。
【0012】
また、コア7の最下段には、図4に示す如く、下端板21が配置され、それがエンジン等の基部22に接続される。基部22には、オイル入口15とオイル出口16とが設けられ、オイル入口15が一方のオイル連通孔1に整合し、オイル出口16が他方のオイル連通孔1に整合する。そして、オイル入口15から流入するオイル19が一方のオイル連通孔1から他方のオイル連通孔1へオイル流路5を介して供給される。
また、一方のパイプ14から冷却水20が供給され、それが一方の冷却水連通孔2から他方の冷却水連通孔2に冷却水流路6を介して流通し、冷却水20とオイル19との間に熱交換が行われる。
【0013】
〔作用〕
オイル19をオイル入口15から一方のオイル連通孔1に供給すると、それがインナーフィン10のインナーフィン孔10aを介して各オイル流路5の各部に供給される。このとき、オイル19の油圧が上端板8の各凸部11に加わる。
図6において、上端板8の凸部11の直径D1は、インナーフィン10のインナーフィン孔10aの直径D2よりも大に形成されている。凸部11に油圧が加わるとそれが外側に押圧され、インナーフィン10のろう付け部を剥離する方向に応力が加わる。凸部11の付根は、インナーフィン孔10aの開口よりも外側に位置するため、従来のオイルクーラのように、インナーフィン孔10aに応力集中がかかることを回避し、応力をインナーフィン孔10aよりも外側に分散してインナーフィン10のろう付け部の剥離を防止し、オイルの耐圧性を向上させる。
【符号の説明】
【0014】
1 オイル連通孔
1a 環状膨出部
2 冷却水連通孔
2a 環状膨出部
3 プレート
4 プレート
5 オイル流路
6 冷却水流路
7 コア
8 上端板
【0015】
10 インナーフィン
10a インナーフィン孔
11 凸部
14 パイプ
15 オイル入口
16 オイル出口
19 オイル
20 冷却水
21 下端板
22 基部
23 補助上端板
23a 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8