【実施例1】
【0028】
図3〜
図7に、本発明のクレセント錠の一実施例を示す。
このクレセント錠は、
図1〜
図2の従来のクレセント錠と同様に、屋外側のサッシ枠に掛止金具(図示省略)を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片2を回動可能に設け、クレセント片2をその回動により掛止金具に掛止するようにしたもので、クレセント片2を回動可能に支持する支軸部3を屋内側サッシ枠に固設し、支軸部3に係合することによりクレセント片2の回動を阻止するロック部材4をクレセント片2のレバー21の内部に摺動可能に配設するとともに、ロック部材4に係合しその摺動を阻止する符号錠5を前記レバー21に設けている。
【0029】
掛止金具は、図では省略しているが、例えば、屋外側のサッシ枠に形成した舌片状の通常一般のものからなり、クレセント片2の鍔部23が掛合する。
【0030】
クレセント片2は、屋内側のサッシ枠に、固定台座1を介して、固定台座1に配設した支軸部3によって回動可能かつ非分離状態に枢着(枢着機構は図示省略)されており、側方に張り出した鍔部23が掛止金具に掛止されるとともに、鍔部を切り欠いた位置に回転することにより掛止金具を解放する。
クレセント片2は、その回動中心となるボス部22と、ボス部22から一体に延設された中空のレバー21とを備えている。
【0031】
支軸部3は、クレセント片2のボス部22が回動可能に外嵌する円筒状のものからなり、固定台座1に配設されている。
この支軸部3の外周部には、後述するロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝が、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成されている。
なお、スプライン31は、建付条件によって掛止角度が変わることがあるため、支軸部3の全周に設けることもできる。
この場合、ロック部材4のピン41は支軸部側に付勢されているため、このスプライン31に自動的に嵌合しようとするが、クレセント片2を回動させるときは、後述する操作片43を押し込むことによりピン41を後退させながらレバー21を操作するので、ピン41がスプライン31に噛み込むことはない。
【0032】
ところで、支軸部3の外周部に、ロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝を、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成することにより、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、後述する符号錠5を施錠することが可能となる。
【0033】
ロック部材4は、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢されて摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43と、カム42を介して操作片43を反支軸部側に付勢するばね44とを備えている。
ピン41は、ボス部22に設けられた貫通部を介して支軸部3のスプライン31に係合するもので、胴部に形成された切欠部41aにカム42の一端が係合している。
カム42は、レバー21に設けた支軸21aに揺動可能に支持されている。このカム42は、一端がピン41の切欠部41aに係合するとともに、他端が操作片43と対向するように配設され、その反対面をばね44により付勢されるようにしている。
操作片43は、レバー21内部で外側に偏倚してカム42の他端と対向する押し片45と、押し片45から内側に偏倚してレバー21の先端部から突出する操作片本体46と、操作片本体46に突設した符号錠5が係合するキーとなるロック片47とを一体に備えている。
また、操作片本体46は、レバー21に固定された規制部材48によりその摺動範囲が規制されている。
【0034】
符号錠5は、操作片43に嵌挿されるとともにレバー21の外側に一部が突出する複数のリング51を備え、各リング51は、ロック片47と一致するキー溝51aを嵌挿孔の一部に備えている。
そして、各リング51を回転させて符号を揃えることにより、キー溝51aをロック片47と一致させ、ロック片47を解放することによって操作片43を支軸部側に摺動可能に解放する。
【0035】
そして、符号錠5のリング51を、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リング51Aと、外リング51Aの嵌合部52aと嵌合する嵌合部52b及びロック部材4のロック片47との係合部としてのキー溝51aを備えた内リング51Bとで構成し、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材6をレバー21に設けるようにすることにより、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することができるようにしている。
【0036】
ここで、嵌合状態制御部材6は、
図4に示すように、ピン部材からなり、このピン部材をレバー21に形成したピン部材挿入孔21bから抜くことにより、内リング51Bを軸方向に動作可能にするように構成するようにしている。
また、嵌合状態制御部材6を構成するピン部材には、抜け止めとなる突起61を設け、突起61がレバー21に形成したガイド溝21c内を移動するようにすることにより、
図4(b)に示すように、操作具62によって外部から操作したときに、レバー21に形成したピン部材挿入孔21bから離脱しないようにしている。
なお、操作具62によって外部から操作することにより抜かれたピン部材は、反対側から押し込むことによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持する状態に復帰させることができる。
【0037】
また、各リング51の内リング51Bには、操作片43の操作片本体46に配設した突起46a(本実施例においては、ばね46bにより付勢される突起片で構成するようにしている。)と係合する係合溝51bを形成する。
これにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【0038】
次に、このクレセント錠の作用を説明する。
図3(a)に示すように、クレセント片2が掛止金具に掛止する位置で、支軸部側に付勢されたロック部材4のピン41が、支軸部3のスプライン31に嵌合することにより、クレセント片2の回動は阻止されている。
そして、符号錠5のリング51を符号が揃わない位置に回転させることにより、リング51が操作片43の摺動を阻止して、ピン41の嵌合状態を保持し、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
一方、居住者が符号錠5のリング51を合わせて操作片43を解放すると、操作片43を支軸部側に押し込むことができ、これにより、操作片43がカム42を介してピン41を引き抜き方向に摺動させ、支軸部3から離脱させる。
このように、操作片43を押し込んだ状態でレバー21を操作すると、クレセント片2を回転させることができ、これにより、クレセント片2を掛止金具から離脱させることができる。
【0039】
このようにして、符号錠5によりロック部材4を介してクレセント片2をロックすることができ、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
また、居住者が解錠するときは、符号錠5の符号を合わせることによりロック部材4を解放し、この状態でレバー21を操作してクレセント片を回転させることにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
そして、クレセント片2をロックするために符号錠5を用いるようにしているため、不正な解錠を効果的に防止しながら、鍵の紛失等の問題がなく、使用勝手のよいクレセント錠を提供することができる。
【0040】
この場合、ロック部材4を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43とを備えて構成することにより、符号錠5の符号を合わせて解放した操作片43を支軸部側に押し込むことによって、カム42を介してピン41を支軸部3から離脱させることができ、この状態でレバー21を操作することにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
【0041】
また、各リング51の符号間に、操作片43の操作片本体46に配設した突起46aと係合する係合溝51bを形成することにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【0042】
さらに、このクレセント錠によれば、符号錠5のリング51を、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リング51Aと、外リング51Aの嵌合部52aと嵌合する嵌合部52b及びロック部材4のロック片47との係合部としてのキー溝51aを備えた内リング51Bとで構成し、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材6をレバー21に設けるようにすることにより、
図3及び
図4に示すように、符号錠5のリング51を合わせて操作片43を解放した状態で、嵌合状態制御部材6を操作することによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を解除することで、ロック部材4のロック片47と係合することで拘束されている内リング51Bに対して、外リング51Aを回転させた後、嵌合状態制御部材6を操作することによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態にすることで、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することができ、安全性の高いクレセント錠を提供することができる。
【0043】
この場合、嵌合状態制御部材6を、ピン部材からなり、このピン部材を抜くことにより、内リング51Bを軸方向に動作可能にするように構成することにより、簡易で操作の容易な機構によって、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することを可能にすることができる。
【0044】
また、支軸部3の外周部に、ロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝を、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成することにより、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、後述する符号錠5を施錠することが可能となり、クレセント片2の解放位置に対応する箇所で符号錠5を施錠することにより、不用意な締め出しを防止することができる。
【0045】
以上、本発明のクレセント錠について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。