特許第6153846号(P6153846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪金具株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6153846-クレセント錠 図000002
  • 特許6153846-クレセント錠 図000003
  • 特許6153846-クレセント錠 図000004
  • 特許6153846-クレセント錠 図000005
  • 特許6153846-クレセント錠 図000006
  • 特許6153846-クレセント錠 図000007
  • 特許6153846-クレセント錠 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6153846
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】クレセント錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/08 20060101AFI20170619BHJP
   E05B 37/02 20060101ALI20170619BHJP
   E05C 3/04 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   E05B65/08 R
   E05B37/02 C
   E05C3/04 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-223847(P2013-223847)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-108215(P2015-108215A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-221292(P2013-221292)
(32)【優先日】2013年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205476
【氏名又は名称】大阪金具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】南 卓司
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−052567(JP,A)
【文献】 特開2007−063841(JP,A)
【文献】 実開昭61−166064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 37/02−37/08
E05B 65/08
E05C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側のサッシ枠に掛止金具を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片を回動可能に設け、クレセント片をその回動により掛止金具に掛止するようにしたクレセント錠のクレセント片を回動可能に支持する支軸部を屋内側サッシ枠に固設し、該支軸部に係合することによりクレセント片の回動を阻止するロック部材をクレセント片のレバーに摺動可能に配設するとともに、該ロック部材に係合しその摺動を選択的に阻止できるようにする符号錠をレバーに設けたクレセント錠において、符号錠のリングを、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リングと、該外リングの嵌合部と嵌合する嵌合部及びロック部材との係合部を備えた内リングとで構成し、外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材としてのピン部材をレバーに設け、該ピン部材を抜くことにより、内リングを軸方向に動作可能にするように構成したことを特徴とするクレセント錠。
【請求項2】
前記ロック部材を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、該支軸部のクレセント片の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成されたキー溝に係合するピンと、該ピンに一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピンを反支軸部側に移動させるカムと、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカムの他端を押圧する操作片とを備えて構成したことを特徴とする請求項記載のクレセント錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレセント錠に関し、特に、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片の開放操作を防止することができるクレセント錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレセント錠は、主としてアルミサッシのガラス窓やガラス戸に取り付けられており、屋外側のサッシ枠に掛止金具を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片を回動可能に設け、クレセント片を回動することにより掛止金具に掛止し、ガラス窓やガラス戸を施錠するようにしている。
【0003】
しかしながら、最近では、不法者がクレセント錠付近のガラスを割って手を室内側に差し入れ、クレセント片を開放操作することにより、ガラス窓やガラス戸が不正に開けられるという問題が生じている。
【0004】
本件出願人は、上記従来のクレセント錠が有する問題点に鑑み、先に、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片の開放操作を防止することができるクレセント錠を提案した(特許文献1参照。)。
【0005】
このクレセント錠は、図1図2に示すように、屋外側のサッシ枠に掛止金具(図示省略)を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片2を回動可能に設け、クレセント片2をその回動により掛止金具に掛止するようにしている。
そして、このクレセント錠は、クレセント片2を回動可能に支持する支軸部3を屋内側サッシ枠に固設し、支軸部3に係合することによりクレセント片2の回動を阻止するロック部材4をクレセント片2のレバー21の内部に摺動可能に配設するとともに、ロック部材4に係合しその摺動を阻止する符号錠5を前記レバー21に設けている。
【0006】
掛止金具は、図では省略しているが、例えば、屋外側のサッシ枠に形成した舌片状の通常一般のものからなり、クレセント片2の鍔部(図示省略)が掛合する。
【0007】
クレセント片2は、屋内側のサッシ枠に、固定台座1を介して、固定台座1に配設した支軸部3によって回動可能かつ非分離状態に枢着(枢着機構は図示省略)されており、側方に張り出した鍔部23が掛止金具に掛止されるとともに、鍔部を切り欠いた位置に回転することにより掛止金具を解放する。
クレセント片2は、その回動中心となるボス部22と、ボス部22から一体に延設された中空のレバー21とを備えている。
【0008】
支軸部3は、クレセント片2のボス部22が回動可能に外嵌する円筒状のものからなり、固定台座1に配設されている。
この支軸部3の外周部には、後述するロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31が全周にわたって形成されている。
スプライン31は、クレセント片2が掛止金具に掛止する角度にあればよいが、建付条件によってはこの掛止角度が変わるため、本実施例では支軸部3の全周に設けている。
この場合、ロック部材4のピン41は支軸部側に付勢されているため、このスプライン31に自動的に嵌合しようとするが、クレセント片2を回動させるときは、後述する操作片を押し込むことによりピン41を後退させながらレバー21を操作するので、ピン41がスプライン31に噛み込むことはない。
【0009】
ロック部材4は、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43と、操作片43とピン41の間に配設され、操作片43とピン41をそれぞれ離反方向に付勢するばね44とを備えている。
ピン41は、ボス部22に設けられた貫通孔を介して支軸部3のスプライン31に係合するもので、胴部に形成された切欠部41aにカム42の一端が係合している。
カム42は半月状のものからなり、その円弧部がボス部22の外面に揺動可能に支持されている。このカム42は、一端がピン41の切欠部41aに係合するとともに、他端が操作片43と対向するように配設されている。
操作片43は、レバー21内部で外側に偏倚してカム42の他端と対向する押し片45と、押し片45から内側に偏倚してレバー21の先端部から突出する操作片本体46と、操作片本体46からレバー21内部に折り返されたロック片47とを一体に備えている。
ロック片47には、符号錠5が係合するキー47aが形成されている。また、操作片本体46は、レバー21に固定された規制部材48によりその摺動範囲が規制されている。
【0010】
符号錠5は、操作片43のロック片47に嵌挿されるとともにレバー21の外側に一部が突出する複数のリング51を備え、各リング51は、ロック片47のキー47aと一致するキー溝51aを嵌挿孔の一部に備えている。
なお、各リング51には、リング51の回転操作を行うための操作片52を突設するようにしている。
そして、各リング51を回転させて符号を揃えることにより、キー溝51aをロック片47のキー47aと一致させ、ロック片47を解放することによって操作片43を支軸部側に摺動可能に解放する。
【0011】
また、各リング51の符号間には、操作片本体46に形成した突起46aと係合する係合溝51bを形成する。
これにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【0012】
次に、このクレセント錠の作用を説明する。
図1(a)に示すように、クレセント片2が掛止金具に掛止する位置で、支軸部側に付勢されたロック部材4のピン41が、支軸部3のスプライン31に嵌合することにより、クレセント片2の回動は阻止されている。
そして、符号錠5のリング51を符号が揃わない位置に回転させることにより、リング51が操作片43の摺動を阻止して、ピン41の嵌合状態を保持し、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
一方、居住者が符号錠5のリング51を合わせて操作片43を解放すると、図1(b)に示すように、操作片43を支軸部側に押し込むことができ、これにより、操作片43がカム42を介してピン41を引き抜き方向に摺動させ、支軸部3から離脱させる。
このように、操作片43を押し込んだ状態でレバー21を操作すると、クレセント片2を回転させることができ、これにより、クレセント片2を掛止金具から離脱させることができる。
【0013】
このように、このクレセント錠は、符号錠5によりロック部材4を介してクレセント片2をロックすることができ、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
また、居住者が解錠するときは、図1(b)に示すように、符号錠5の符号を合わせることによりロック部材4を解放し、この状態でレバー21を操作してクレセント片を回転させることにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
そして、クレセント片2をロックするために符号錠5を用いるようにしているため、不正な解錠を効果的に防止しながら、鍵の紛失等の問題がなく、使用勝手のよいクレセント錠を提供することができる。
【0014】
この場合、前記ロック部材4を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43とを備えて構成することにより、図1(b)に示すように、符号錠5の符号を合わせて解放した操作片43を支軸部側に押し込むことによって、カム42を介してピン41を支軸部3から離脱させることができ、この状態でレバー21を操作することにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
【0015】
また、各リング51の符号間に、操作片本体46に形成した突起46aと係合する係合溝51bを形成することにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−52567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記従来のクレセント錠は、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、符号錠5によってクレセント片2の不正な開放操作を防止することができるものであるが、符号錠5をクレセント錠という極めて限られたスペースに適用する必要があるため、従来、この種の符号錠に汎用されている符号錠を解錠するための符号の組み合わせを変更するための機構を設けることができず、このため、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することができないという問題があった。
【0018】
本発明は、上記従来のクレセント錠の有する問題点に鑑み、符号錠によってクレセント片の不正な開放操作を防止することができようにするとともに、その符号錠を解錠するための符号の組み合わせを変更することが可能なクレセント錠を提供することを第1の目的とする。
【0019】
また、本発明は、クレセント片の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、符号錠を施錠することを可能にすることにより、不用意な締め出しを防止することができるようにしたクレセント錠を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記第1の目的を達成するため、本発明のクレセント錠は、屋外側のサッシ枠に掛止金具を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片を回動可能に設け、クレセント片をその回動により掛止金具に掛止するようにしたクレセント錠のクレセント片を回動可能に支持する支軸部を屋内側サッシ枠に固設し、該支軸部に係合することによりクレセント片の回動を阻止するロック部材をクレセント片のレバーに摺動可能に配設するとともに、該ロック部材に係合しその摺動を選択的に阻止できるようにする符号錠をレバーに設けたクレセント錠において、符号錠のリングを、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リングと、該外リングの嵌合部と嵌合する嵌合部及びロック部材との係合部を備えた内リングとで構成し、外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材をレバーに設けたことを特徴とする。
【0021】
そして、前記嵌合状態制御部材が、ピン部材からなり、該ピン部材を抜くことにより、内リングを軸方向に動作可能にするように構成するようにしている。
【0022】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明のクレセント錠は、前記ロック部材を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、該支軸部のクレセント片の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成されたキー溝に係合するピンと、該ピンに一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピンを反支軸部側に移動させるカムと、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカムの他端を押圧する操作片とを備えて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のクレセント錠によれば、外リングの嵌合部と嵌合する嵌合部及びロック部材との係合部を備えた内リングとで構成し、外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材をレバーに設けるようにすることにより、符号錠によってクレセント片の不正な開放操作を防止することができようにするとともに、外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材を操作することによって、符号錠を解錠するための符号の組み合わせを変更することができ、安全性の高いクレセント錠を提供することができる。
【0024】
そして、前記嵌合状態制御部材が、ピン部材からなり、該ピン部材を抜くことにより、内リングを軸方向に動作可能にするように構成することにより、簡易で操作の容易な機構によって、符号錠を解錠するための符号の組み合わせを変更することを可能にすることができる。
【0025】
また、本発明のクレセント錠によれば、前記ロック部材を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、該支軸部のクレセント片の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成されたキー溝に係合するピンと、該ピンに一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピンを反支軸部側に移動させるカムと、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカムの他端を押圧する操作片とを備えて構成することにより、クレセント片の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、符号錠を施錠することが可能となり、クレセント片の解放位置に対応する箇所で符号錠を施錠することにより、不用意な締め出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来のクレセント錠の一例を示し、(a)は施錠をする際の断面図、(b)は解錠する際の断面図(図2のA−A断面図)である。
図2】同クレセント錠のクレセント片の外観図である。
図3】本発明のクレセント錠の一実施例を示し、(a)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持した状態を示す断面図、(b)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を解除した状態を示す断面図である。
図4】同クレセント錠を示し、(a)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持した状態を示す横断面図、(b)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を解除した状態を示す横断面図である。
図5】同クレセント錠のクレセント片のレバーを示し、(a)は平面部、(b)は正面図、(c)は断面図、(d)は左側面図である。
図6】同クレセント錠を示し、(a1)は外リングの断面図、(a2)は同右側面図、(b1)は内リングの断面図、(b2)は同左側面図、(b3)は同右側面図、(c1)はカムの正面図、(c2)は同左側面図、(c3)は同右側面図、(d1)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を維持した状態を示す断面図、(d2)は外リング及び内リングの嵌合部同士の嵌合状態を解除した状態を示す横断面図である。
図7】同クレセント錠の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のクレセント錠の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0028】
図3図7に、本発明のクレセント錠の一実施例を示す。
このクレセント錠は、図1図2の従来のクレセント錠と同様に、屋外側のサッシ枠に掛止金具(図示省略)を設けるとともに、屋内側のサッシ枠にクレセント片2を回動可能に設け、クレセント片2をその回動により掛止金具に掛止するようにしたもので、クレセント片2を回動可能に支持する支軸部3を屋内側サッシ枠に固設し、支軸部3に係合することによりクレセント片2の回動を阻止するロック部材4をクレセント片2のレバー21の内部に摺動可能に配設するとともに、ロック部材4に係合しその摺動を阻止する符号錠5を前記レバー21に設けている。
【0029】
掛止金具は、図では省略しているが、例えば、屋外側のサッシ枠に形成した舌片状の通常一般のものからなり、クレセント片2の鍔部23が掛合する。
【0030】
クレセント片2は、屋内側のサッシ枠に、固定台座1を介して、固定台座1に配設した支軸部3によって回動可能かつ非分離状態に枢着(枢着機構は図示省略)されており、側方に張り出した鍔部23が掛止金具に掛止されるとともに、鍔部を切り欠いた位置に回転することにより掛止金具を解放する。
クレセント片2は、その回動中心となるボス部22と、ボス部22から一体に延設された中空のレバー21とを備えている。
【0031】
支軸部3は、クレセント片2のボス部22が回動可能に外嵌する円筒状のものからなり、固定台座1に配設されている。
この支軸部3の外周部には、後述するロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝が、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成されている。
なお、スプライン31は、建付条件によって掛止角度が変わることがあるため、支軸部3の全周に設けることもできる。
この場合、ロック部材4のピン41は支軸部側に付勢されているため、このスプライン31に自動的に嵌合しようとするが、クレセント片2を回動させるときは、後述する操作片43を押し込むことによりピン41を後退させながらレバー21を操作するので、ピン41がスプライン31に噛み込むことはない。
【0032】
ところで、支軸部3の外周部に、ロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝を、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成することにより、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、後述する符号錠5を施錠することが可能となる。
【0033】
ロック部材4は、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢されて摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43と、カム42を介して操作片43を反支軸部側に付勢するばね44とを備えている。
ピン41は、ボス部22に設けられた貫通部を介して支軸部3のスプライン31に係合するもので、胴部に形成された切欠部41aにカム42の一端が係合している。
カム42は、レバー21に設けた支軸21aに揺動可能に支持されている。このカム42は、一端がピン41の切欠部41aに係合するとともに、他端が操作片43と対向するように配設され、その反対面をばね44により付勢されるようにしている。
操作片43は、レバー21内部で外側に偏倚してカム42の他端と対向する押し片45と、押し片45から内側に偏倚してレバー21の先端部から突出する操作片本体46と、操作片本体46に突設した符号錠5が係合するキーとなるロック片47とを一体に備えている。
また、操作片本体46は、レバー21に固定された規制部材48によりその摺動範囲が規制されている。
【0034】
符号錠5は、操作片43に嵌挿されるとともにレバー21の外側に一部が突出する複数のリング51を備え、各リング51は、ロック片47と一致するキー溝51aを嵌挿孔の一部に備えている。
そして、各リング51を回転させて符号を揃えることにより、キー溝51aをロック片47と一致させ、ロック片47を解放することによって操作片43を支軸部側に摺動可能に解放する。
【0035】
そして、符号錠5のリング51を、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リング51Aと、外リング51Aの嵌合部52aと嵌合する嵌合部52b及びロック部材4のロック片47との係合部としてのキー溝51aを備えた内リング51Bとで構成し、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材6をレバー21に設けるようにすることにより、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することができるようにしている。
【0036】
ここで、嵌合状態制御部材6は、図4に示すように、ピン部材からなり、このピン部材をレバー21に形成したピン部材挿入孔21bから抜くことにより、内リング51Bを軸方向に動作可能にするように構成するようにしている。
また、嵌合状態制御部材6を構成するピン部材には、抜け止めとなる突起61を設け、突起61がレバー21に形成したガイド溝21c内を移動するようにすることにより、図4(b)に示すように、操作具62によって外部から操作したときに、レバー21に形成したピン部材挿入孔21bから離脱しないようにしている。
なお、操作具62によって外部から操作することにより抜かれたピン部材は、反対側から押し込むことによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持する状態に復帰させることができる。
【0037】
また、各リング51の内リング51Bには、操作片43の操作片本体46に配設した突起46a(本実施例においては、ばね46bにより付勢される突起片で構成するようにしている。)と係合する係合溝51bを形成する。
これにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【0038】
次に、このクレセント錠の作用を説明する。
図3(a)に示すように、クレセント片2が掛止金具に掛止する位置で、支軸部側に付勢されたロック部材4のピン41が、支軸部3のスプライン31に嵌合することにより、クレセント片2の回動は阻止されている。
そして、符号錠5のリング51を符号が揃わない位置に回転させることにより、リング51が操作片43の摺動を阻止して、ピン41の嵌合状態を保持し、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
一方、居住者が符号錠5のリング51を合わせて操作片43を解放すると、操作片43を支軸部側に押し込むことができ、これにより、操作片43がカム42を介してピン41を引き抜き方向に摺動させ、支軸部3から離脱させる。
このように、操作片43を押し込んだ状態でレバー21を操作すると、クレセント片2を回転させることができ、これにより、クレセント片2を掛止金具から離脱させることができる。
【0039】
このようにして、符号錠5によりロック部材4を介してクレセント片2をロックすることができ、これにより、不法者によって窓ガラス等が破られた場合でも、クレセント片2の開放操作を防止することができる。
また、居住者が解錠するときは、符号錠5の符号を合わせることによりロック部材4を解放し、この状態でレバー21を操作してクレセント片を回転させることにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
そして、クレセント片2をロックするために符号錠5を用いるようにしているため、不正な解錠を効果的に防止しながら、鍵の紛失等の問題がなく、使用勝手のよいクレセント錠を提供することができる。
【0040】
この場合、ロック部材4を、支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、支軸部3に係合するピン41と、ピン41に一端が係合し、他端を支軸部側に押圧することによりピン41を反支軸部側に移動させるカム42と、反支軸部側に付勢して摺動可能に配設され、符号錠5が係合するとともに、支軸部側に摺動することによりカム42の他端を押圧する操作片43とを備えて構成することにより、符号錠5の符号を合わせて解放した操作片43を支軸部側に押し込むことによって、カム42を介してピン41を支軸部3から離脱させることができ、この状態でレバー21を操作することにより、クレセント片2を掛止金具から容易に離脱させることができる。
【0041】
また、各リング51の符号間に、操作片43の操作片本体46に配設した突起46aと係合する係合溝51bを形成することにより、符号錠5のリング51を回転操作する際の位置決め(リング51が所定位置に来たときに回転抵抗が変化する。)と、リング51の係止を確実に行うことができる。
【0042】
さらに、このクレセント錠によれば、符号錠5のリング51を、外周面に符号を付し、内周側に嵌合部を備えた外リング51Aと、外リング51Aの嵌合部52aと嵌合する嵌合部52b及びロック部材4のロック片47との係合部としてのキー溝51aを備えた内リング51Bとで構成し、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を維持、解除する嵌合状態制御部材6をレバー21に設けるようにすることにより、図3及び図4に示すように、符号錠5のリング51を合わせて操作片43を解放した状態で、嵌合状態制御部材6を操作することによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態を解除することで、ロック部材4のロック片47と係合することで拘束されている内リング51Bに対して、外リング51Aを回転させた後、嵌合状態制御部材6を操作することによって、外リング51A及び内リング51Bの嵌合部52a、52b同士の嵌合状態にすることで、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することができ、安全性の高いクレセント錠を提供することができる。
【0043】
この場合、嵌合状態制御部材6を、ピン部材からなり、このピン部材を抜くことにより、内リング51Bを軸方向に動作可能にするように構成することにより、簡易で操作の容易な機構によって、符号錠5を解錠するための符号の組み合わせを変更することを可能にすることができる。
【0044】
また、支軸部3の外周部に、ロック部材4のピン41が嵌合するスプライン31としてのキー溝を、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所に形成することにより、クレセント片2の掛止位置と解放位置に対応する2箇所で、後述する符号錠5を施錠することが可能となり、クレセント片2の解放位置に対応する箇所で符号錠5を施錠することにより、不用意な締め出しを防止することができる。
【0045】
以上、本発明のクレセント錠について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のクレセント錠は、符号錠によってクレセント片の不正な開放操作を防止することができようにするとともに、その符号錠を解錠するための符号の組み合わせを変更することが可能であることから、防犯性が要求されるクレセント錠の用途に好適に用いることができるほか、一般のクレセント錠の用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 固定台座
2 クレセント片
21 レバー
22 ボス部
23 鍔部
3 支軸部
31 スプライン(キー溝)
4 ロック部材
41 ピン
42 カム
43 操作片
44 ばね
45 押し片
46 操作片本体
46a 突起(係合部)
47 ロック片
47a キー
48 規制部材
5 符号錠
51 リング
51A 外リング
51B 内リング
51a キー溝
51b 係合溝(係合部)
52a 嵌合部
52b 嵌合部
6 嵌合状態制御部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7