【文献】
Journal of the American Chemical Society、2007年、129(43)、pp.13001−13007
【文献】
Chemistry A European Journal、2009年、15(18)、pp.4528−4533
【文献】
Chemistry A European Journal、2009年、15(27)、pp.6678−6687
【文献】
Journal of the American Chemical Society、2002年、124(25)、pp.7421−7428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0046】
反応工程a):
Xがブロモである式IIの化合物は公知であり、例えばRecueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas,81,365(1962)に開示されている。Xがクロロまたはブロモである式IIの化合物は、例えば国際公開第2008/049507号パンフレットに開示されている。
【0047】
1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼンは、いわゆるザンドマイヤー反応により2,3−ジクロロ−アニリンから調製され得る。そのようなザンドマイヤー反応は、臭素化剤としての臭化銅(II)の存在下で有機溶媒(例えば、アセトニトリル)中の有機亜硝酸エステル(例えば、亜硝酸tert−ブチルまたは亜硝酸イソ−ペンチル)を使用することにより(Journal of Organic Chemistry,1977,42,2426−31に記載のとおり)、または無機亜硝酸塩を使用して0℃〜15℃の温度で酸性水性反応媒体中でジアゾ化し次いで反応混合物を臭化銅(I)溶液に添加することを含む二段反応によって(Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas et de la Belgique,1932,51,98−113および特開昭62−114921号公報に記載のとおり)行われ得る。
【0048】
式IVの化合物は公知であり、例えば国際公開第2007/068417号パンフレットに記載されている。式IIIのハロベンジンがどのように生成されるかに応じて、この処理は、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、メチル−エチル−ケトン、酢酸エチル、酢酸メチルまたは芳香族もしくは脂肪族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、ペンタンまたは石油エーテル)などの有機溶媒中で、−20℃〜+10℃の温度で行われ、この温度は、反応を完結させるために、周囲温度またはそれより高い温度まで上げられ得る。
【0049】
この反応工程のための好ましい有機金属種は、C
1~6アルキルリチウムもしくはフェニルリチウムのハロゲン化物またはC
1~6アルキルマグネシウムもしくはフェニルマグネシウムのハロゲン化物、特にn−ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミドまたはイソプロピルマグネシウムクロリドである。
【0050】
式(V)の5−クロロまたは5−ブロモベンゾノルボルナジエンは、この反応混合物を水性媒体中(例えば、飽和塩化アンモニウム溶液中)で急冷し、生成物を酢酸エチルなどの溶媒中で抽出し、その溶媒抽出物を例えばブラインおよび水で洗浄し、それを乾燥させ、溶媒を蒸発除去してハロベンゾノルボルナジエン(V)を得ることによって単離され得、このハロベンゾノルボルナジエン(V)は、ヘキサンなどの溶媒からの結晶化によってさらに精製され得る。この反応は、国際公開第2007/068417号パンフレットに記載されている。
【0051】
反応工程b):
反応b)は、対応するニトロ/アミン置換ノルボルネンについて国際公開第2007/068417号パンフレットに記載されている方法を使用して行われ得る。また、水素化の程度は、例えばウィルキンソン触媒(RhCl(PPh
3)
3)を使用することによって、制御され得る。式VIの化合物は、国際出願PCT/EP2009/067283号明細書の30頁に記載されているような反応aまたはbの過程の間に生成され得る。この化合物は、公知の手順(例えば、HPLC)に従って単離され得る。
【0052】
反応工程c):
式VIIの化合物は、式VIの9−アルキリデン−ベンゾノルボルネンから、標準的なオゾン分解条件(−70℃のジクロロメタン中)を使用し、続いて還元剤(例えば、トリフェニルホスファン(J.J.Pappas et al,J.Org.Chem.33,787(1968)、硫化ジメチル(J.J.Pappas et al,Tetrahedron Letters,7,4273(1966)、亜リン酸トリメチル(W.S.Knowles et al,J.Org.Chem.25,1031(1960)、または亜鉛/酢酸(R.Muneyuki and H.Tanida,J.Org.Chem.31,1988(1966))が関与する還元的後処理を使用して、得られ得る。適切な溶媒は、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムおよびメタノールである。
【0053】
反応工程d):
式VIIIの化合物は、H−D.Martin et al,Chem.Ber.118,2514(1985),S.Hayashi et al,Chem.Lett.1979,983、またはM.Suda,Tetrahedron Letters,22,1421(1981)により記載されている手順に従いまたはそれに類似の手順により、インサイチュー生成されるジハロメチリデンホスホランRP=C(Cl)Cl(ここでRは、トリフェニル、トリC
1~4アルキルまたはトリジメチルアミンである)を用いた式VIIの化合物のWittigオレフィン化によって得られる。
【0054】
適切な溶媒は、例えばアセトニトリルまたはCH
2Cl
2であり、好ましくはアセトニトリルである。
【0055】
温度は、周囲温度〜60℃の間で可変であり、好ましいのは、50〜60℃の範囲、特に60℃である。好ましいホスファン(phosphan)は、トリフェニルホスファンであり、これは、2.2〜8当量、好ましくは2.2当量の量で使用され得る。四塩化炭素は、1.5〜5当量、好ましくは1.5当量の量で使用され得る。CCl
4:PPh
3の比は、1:2から1:1.7までである。この反応はまた、四塩化炭素の代わりにクロロホルムを用いても行われ得る。四塩化炭素が好ましい。
【0056】
式VIIIの化合物は新規であり、特に本発明に従う方法のために開発され、したがって、本発明のさらなる目的を構成する。
【0057】
反応工程e1):
工程e1)〜工程f)および工程e2)の2つの処理変形形態(process variant)の工程からは、変形工程e1)〜f)が好ましい。この処理で使用されるパラジウムと少なくとも1つの配位子とを含む触媒は、概して、パラジウム前駆体および少なくとも1つの適切な配位子から形成される。この処理が溶媒中で行われる場合、錯体は通常、溶媒に可溶である。この処理の文脈において、パラジウム錯体は、環状有機パラジウム化合物(「パラダサイクル(palladacycle)」)および第二級ホスファン配位子からなるものを、明示的に包含する。
【0058】
パラジウム錯体は、ロバストな予備形成種として使用されても、インサイチューで形成されてもよい。典型的に、パラジウム錯体は、パラジウム前駆体を少なくとも1つの適切な配位子と反応させることによって作製される。
【0059】
不完全な変換の場合には、残りの量のパラジウム前駆体または配位子は、反応混合物に溶解せずに存在し得る。
【0060】
有用なパラジウム前駆体は、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化パラジウム溶液、パラジウム
2−(ジベンジリデンアセトン)
3もしくはパラジウム−(ジベンジリデンアセトン)
2、パラジウム−テトラキス(トリフェニルホスファン)、パラジウム/炭素、パラジウムジクロロ−ビス(ベンゾニトリル)、パラジウム−(トリス−tert−ブチルホスファン)
2またはパラジウム
2−(ジベンジリデンアセトン)
3とパラジウム−(トリス−t−ブチルホスファン)
2との混合物から選択され得る。
【0061】
有用な配位子は、例えば、第三級ホスファン配位子、N−複素環式カルベン配位子およびホスファン酸(phosphanic acid)配位子である。第三級ホスファン配位子には、一般的に、単座配位子および二座配位子の二種類がある。単座配位子は1つのパラジウム配位部位を占有し得るが、二座配位子は2つの配位部位を占有するものであり、したがってパラジウム種をキレート化することができる。
【0062】
以下は、第三級ホスファン配位子、N−複素環式カルベン配位子およびホスファン酸配位子の例、ならびに第二級ホスファン配位子を有するパラダサイクルの例である。
【0063】
(A)単座ホスファン配位子:
トリ−tert−ブチルホスファン、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(「P(tBu)
3HBF
4」)、トリス−オルト−トリルホスファン(「P(oTol)
3」)、トリス−シクロヘキシルホスファン(「P(Cy)
3」)、2−ジ−tert−ブチル−ホスファノ−1,1’−ビスフェニル(「P(tBu)
2BiPh」)、2−ジ−シクロヘキシル−ホスファノ−1,1’−ビスフェニル(「P(Cy)
2BiPh」)、2−ジシクロヘキシルホスファノ−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビスフェニル(「x−Phos」)、およびtert−ブチル−ジ−1−アダマンチル−ホスファン(「P(tBu)(Adam)
2」)。
【0064】
単座ホスファン配位子についてのさらなる情報は、米国特許出願公開第2004/0171833号明細書に見出され得る。
【0065】
(B)二座第三級ホスファン配位子:
(B1)ビホスファン配位子:
(B1.1)フェロセニル−ビホスファン配位子(「Josiphos」配位子):
1,1’−ビス(ジフェニルホスファノ)フェロセン(dppf)、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスファノ)−フェロセン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスファノ)フェロセニル]エチル−ジ−tert−ブチル−ホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ホスファノ)フェロセニル]エチルジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジ−フリルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(R)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニル)ホスファノ)フェロセニル]エチルジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチル−ホスファノ)フェロセニル]エチル−ジ−o−トリルホスファン
【0067】
(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスファノ)フェロセニル]−エチル−ジ−tert−ブチルホスファン
【0069】
(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジエチルホスファノ)フェロセニル]−エチル−ジ−tert−ブチルホスファン
【0071】
(R)−(−)−1−[(S)−2−(P−メチル−P−イソプロピル−ホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン
【0073】
(R)−(−)−1−[(S)−2−(P−メチル−P−フェニル−ホスファノ)フェロセニル]エチル−ジ−tert−ブチルホスファン
【0075】
およびこれらのラセミ混合物、特に1−[2−(ジ−tert−ブチルホスファノ)フェロセニル]エチル−ジ−o−トリルホスファン、1−[2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファンおよび1−[2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファンのラセミ混合物。
【0076】
(B1.2)ビナフチル−ビスホスファン配位子:
2,2’ビス(ジフェニルホスファノ)−1,1’−ビナフチル(「BINAP」)、R−(+)−2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスファノ)−1,1’−ビナフチル(「Tol−BINAP」)、ラセミ2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスファノ)−1,1’−ビナフチル(「ラセミTol−BINAP」)。
【0077】
(B1.3)9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスファノ)−キサンテン(「Xantphos」)。
【0078】
(B2)アミノホスファン2配位子:
(B2.1)ビフェニル配位子:
2−ジシクロヘキシルホスファノ−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1’−ビフェニル(「PCy
2NMe
2BiPh」)
2−ジ−tert−ブチルホスファノ−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1’−ビフェニル(「P(tBu)
2NMe
2BiPh」)。
【0079】
(C)N−複素環式カルベン配位子:
1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(「I−Pr」)、1,2−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリウムクロリド(「I−Ad」)および1,3−ビス−(2,6−メチルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(I−Me」)。
【0080】
(D)ホスファン酸配位子:
ジ−tert−ブチル−ホスファンオキシド。
【0081】
(E)第二級ホスファン配位子を含有するパラダサイクル:
式(A−1)
【0083】
(式中、「norb」はノルボルニルである)の錯体、および式(A−2)
【0086】
パラジウム錯体(A−1)は、Synlett.,2549−2552(2004)に、コード名「SK−CC01−A」で記載されている。錯体(A−2)は、Synlett.(同書)に、コード名「SK−CC02−A」で記載されている。
【0087】
ホスファン酸配位子を含有するパラジウム錯体のさらなる例は、J.Org.Chem.66,8677−8681に、コード名「POPd」、「POPd2」および「POPD1」で記載されている。
【0088】
N−複素環式カルベン配位子を含有するパラジウム錯体のさらなる例は、ナフトキノン−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウム([「Pd−NQ−IPr]
2」)、ジビニル−テトラメチルシロキサン−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウム(「Pd−VTS−IPr」)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムジクロリド(「Pd−Cl−IPr」)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムジアセテート(「Pd−OAc−IPr」)、アリル−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムクロリド(「Pd−Al−Cl−IPr」)および式(A−3):
【0090】
(式中、R
5は、2,6−ジイソプロピルフェニルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである)の化合物である。[Pd−NQ−IPr]
2、Pd−VTS−IPr、Pd−Cl−IPr、Pd−OAc−IPrおよびPd−Al−Cl−IPrについてのさらなる情報は、Organic Letters,4,2229−2231(2002)およびSynlett.,275−278(2005)に見出され得る。式(A−3)の化合物についてのさらなる情報は、Organic Letters,5,1479−1482(2003)に見出され得る。
【0091】
単一のパラジウム錯体または異なるパラジウム錯体の混合物が、一般式(XI)の化合物を調製するための方法において使用され得る。
【0092】
パラジウム錯体の形成に特に有用なパラジウム前駆体は、酢酸パラジウム、パラジウム
2−(ジベンジリデンアセトン)
3、パラジウム−(ジベンジリデンアセトン)
2、塩化パラジウム溶液、またはパラジウム
2−(ジベンジリデンアセトン)
3とパラジウム−(トリス−tert−ブチルホスファン)
2との混合物から選択される、パラジウム前駆体である。酢酸パラジウムは特に有用であり、塩化パラジウムも同様である。
【0093】
少なくとも1つの配位子が、パラジウム錯体の形成に使用される。通常、このパラジウム錯体は、単座第三級ホスファン配位子、二座第三級ホスファン配位子およびN−複素環式カルベン配位子から選択される少なくとも1つの配位子を有し、典型的には、フェロセニル−ビホスファン配位子、ビナフチル−ビスホスファン配位子およびアミノホスファン配位子から選択される少なくとも1つの配位子を有する。
【0094】
特に好適であるのは、トリ−tert−ブチルホスピン(butylphospine)、P(tBu)
3HBF
4、P(oTol)
3、P(Cy)
3、P(tBu)
2BiPh、P(Cy)
2BiPh、x−Phos、P(tBu)(Adam)
2、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、ラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチル−ホスファノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスファン、ラセミ1−[2−(ジ−tert−ブチル−ホスファノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスファン、dppf、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチル−ホスファノ)−フェロセン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、ラセミ1−[2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、BINAP、Tol−BINAP、ラセミTol−BINAP、Xantphos、PCy
2NMe
2BiPh、P(tBu)
2NMe
2BiPh、I−Pr、I−AdおよびI−Meから選択される少なくとも1つの配位子を含有するパラジウム錯体、ならびに式(A−3)(式中、R
5は、2,6−ジイソプロピルフェニルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである)のパラジウム錯体である。
【0095】
好ましいのは、トリ−tert−ブチルホスピン(butylphospine)、P(tBu)
3HBF
4、P(tBu)
2BiPh、P(Cy)
2BiPh、x−Phos、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、ラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスファン、ラセミ1−[2−(ジ−tert−ブチルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスファン、dppf、PCy
2NMe
2BiPhおよびI−Prから選択される少なくとも1つの配位子を有するパラジウム錯体である。
【0096】
特に興味深いのは、以下の群から選択される少なくとも1つの配位子を含有するパラジウム錯体である。
(i)トリ−tert−ブチルホスピン(butylphospine)、P(tBu)
3HBF
4、P(tBu)
2BiPh、P(Cy)
2BiPh、x−Phos、PCy
2NMe
2BiPhおよびI−Pr;
(ii)トリ−tert−ブチルホスピン(butylphospine)、P(tBu)
3HBF
4、PCy
2NMe
2BiPhおよびI−Pr;
(iii)トリ−tert−ブチルホスピン(butylphospine)およびP(tBu)
3HBF
4;ならびに
(iv)(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファンおよびラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファン。
【0097】
好ましいのは、PCy
2NMe
2BiPh、I−Pr、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファンまたはラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファンを配位子として含有するパラジウム錯体である。
【0098】
好ましい錯体は、前駆体が塩化パラジウムであり、配位子が(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスファンである、錯体である。
【0099】
パラジウム錯体は、触媒量で、通常は、式(IV)の化合物に対して1:10〜1:10000のモル比で、典型的には、1:100〜1:1000、例えば1:500〜1:700または約1:600の比で、式(II)の化合物の調製において使用される。錯体は、予備形成されていても、前駆体および配位子を一緒に混合することによってインサイチューで形成されてもよく、その前駆体および配位子は、概しておよそ等モル量で使用される。
【0100】
反応工程f)のための特に好ましいパラジウム触媒は、Pd(OAc)
2であり(好ましい添加量は、3〜5mol%、特に4mol%である)、配位子は、Josiphos型、DavePhos(例えば、2−ジシクロヘキシルホスファノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル)型またはXantphos4,5−ビス(ジフェニルホスファノ)−9,9−ジメチルキサンテン)型から選択され、好ましいのは、Josiphos型、特に(2R)−1−[(1R)−1−[ビス(1,1−ジメチルエチル)ホスファノ]エチル]−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセンであるJosiphos SL−J009−1である(好ましい量は、3〜5mol%、特に4.4mol%である)。
【0101】
NH
3は、有利には0.9〜1.1MPa、好ましくは1〜1.05MPaの圧力下で添加される。
【0102】
好ましくは、この反応工程は、1.4〜2.6MPa、好ましくは1.5〜2.2MPaの圧力、特に2.2MPaで、80〜150℃、好ましくは100〜120℃の温度で行われる。好ましい溶媒は、ジメチルエーテルなどのエーテルである。
【0103】
反応工程f):
式Xの化合物は公知であり、例えば米国特許第5,093,347号明細書に、開示されている。
【0104】
反応工程f)のための好ましい塩基は、トリエチルアミンなどのアミン、または炭酸もしくは重炭酸ナトリウムもしくはカリウム、またはNaOHであり、好ましくはトリエチルアミンまたはNaOHである。
【0105】
好ましい溶媒は、キシレン、トルエンまたはクロロベンゼンである。好ましくは、この反応は、−10〜90℃、好ましくは70〜80℃の温度で行われる。
【0106】
反応工程e2):
式Xaの化合物は、例えば国際出願PCT/EP2009/067286号明細書に記載されている。
【0107】
反応工程e2)は、100〜180℃の温度で、好ましくは130℃で行われ得る。加熱は、密封バイアル、開放フラスコ中で、還流下またはマイクロ波照射下で可能であり、好ましくは密封バイアル中である。
【0108】
溶媒としては、アミド(DMF、NMP)、アルコール(シクロヘキサノール)、エーテル(ジグリム、ジオキサン)、スルホキシド(DMSO)、炭化水素(メシチレン、トルエン)、ニトリル(ブチロニトリル)およびそれらの混合物(トルエン/メタノール、トルエン/シクロヘキサノール、ジオキサン/メタノール、ジオキサン/水)、好ましくはトルエンおよびジオキサンが使用され得る。
【0109】
銅源としては、Cu(0)、Cu(I)またはCu(II)塩が使用され得る。例は、Cu(0)粉末、ヨウ化Cu(I)、チオフェンカルボン酸Cu(I)、Cu(II)フタロシアニン、酢酸Cu(II)、酸化Cu(II)、塩化Cu(II)、臭化Cu(II)、硫酸Cu(II)五水和物およびそれらの混合物であり、好ましくは酸化Cu(II)および塩化Cu(II)である。
【0110】
銅触媒は、2〜330mol%の間の量で、好ましくは8〜12mol%、特に10mol%で使用され得る。Cu(0)が使用される場合、この量は、好ましくは>100モル%である。
【0111】
配位子は、概して、有効な触媒作用のために必要とされる。例は、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、1,2−ビスジメチルアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、4−ジメチルアミノピリジン、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミンである。好ましくは、N,N’−ジメチルエチレンジアミンが使用される。炭酸塩、例えば、炭酸セシウムおよび好ましくは炭酸カリウムが、塩基として使用され得る。この転化は、概して5〜24時間後に完了する。
【実施例】
【0112】
調製実施例:
工程a):式Vaの5−ブロモ−9−イソプロピリデン−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンの調製
【0113】
【化29】
【0114】
窒素雰囲気下の乾燥トルエン(60mL)中の1,2,3−トリブロモ−ベンゼン(4.34g、13.8mmol)および6,6−ジメチルフルベン(2.38g、純度92.6%、20.7mmol)の攪拌溶液に、n−ブチルリチウムの2.5Mトルエン溶液5.5mL(14.5mmol)を、−5〜0℃で10分以内に滴下した。0℃でのさらなる10分および周囲温度での2時間後、反応混合物を、塩化アンモニウムの飽和水溶液上に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、ブラインおよび水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。粗物質のヘキサン中でのシリカゲルでの精製により、黄色油として2.38gの所望の生成物を得た(g.l.c.による純度84%、55%収率)。この反応もまた、国際公開第2007/068417号パンフレットに開示されている。
【0115】
式Vbの5−クロロ−9−イソプロピリデン−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンの調製:
【0116】
【化30】
【0117】
窒素雰囲気下の乾燥トルエン(100mL)中の2−ブロモ−1,3−ジクロロベンゼン(22.59g、0.1mol)の溶液を、テトラヒドロフラン中の2Mイソプロピルマグネシウムクロリド(50mL、0.1mol)と、−8〜−15℃で1時間にわたって反応させた。それに続く0℃での6,6−ジメチルフルベン(13.03g、純度97.8%、0.12mol)の添加後、10時間にわたり還流温度まで加熱した。飽和塩化アンモニウム水での水性後処理ならびに酢酸エチルでの抽出、それに続くブラインおよび水での洗浄ならびに硫酸ナトリウム上での乾燥により、粗物質を得、これをヘキサン中でのシリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(19.03g、g.l.c.による純度95.2%、83.6%収率)を黄色固体として得た。この反応もまた、国際公開第2007/068417号パンフレットに開示されている。
【0118】
工程b):式VIaの5−クロロ−9−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンの調製:
【0119】
【化31】
【0120】
170gの5−クロロ−9−イソプロピリデン−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(0.785mol)、0.5gのPd10%(0.2mmol)および1リットルのTHFを、水素化反応器に投入した。19リットルの水素を周囲温度で供給した。反応を、0.05MPaの圧力で行った。完全な転化後、反応混合物をhyfloで濾別し、生成物溶液を蒸発させて167gの生成物(純度:92%;収率:90%)を得た。生成物をMeOHで結晶させ、濾別し、乾燥させた。純度:97.54%。
NMR(CDCl
3):7.0−7.1ppm(m,3H,芳香族),4.05ppm(m,1H,CH),3.85ppm(m,1H,CH),1.9−2ppm(m,2H,CH
2),1.7(s,3H,CH
3),1.65(s,3H,CH
3),1.2−1.3(m,2H,CH
2).
【0121】
工程c):式VIIaの5−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−9−オンの調製:
【0122】
【化32】
【0123】
20リットル反応器において、600gの5−クロロ−9−イソプロピリデン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(27.43mol)を、13LのCH
2Cl
2と0.5LのMeOHとの混合物に投入した。この反応混合物を−40℃で冷却し、変色するまでオゾン蒸気(55kg/時間)を供給した。オゾン残留物の除去後、PPh
3(23.83mol)を添加し、反応混合物を周囲温度まで加熱した。クロマトグラフィーにより精製を行った。421gの白色固体生成物を、純度>98%で単離した。
NMR(CDCl
3):7.1−7.3ppm(m,3H,芳香族),3.6ppm(d,1H,CH),3.4ppm(d,1H,CH),2.1−2.3ppm(m,2H,CH
2),1.3−1.5ppm(m,2H,CH
2).
【0124】
工程d):式VIIIaの5−クロロ−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンの調製:
【0125】
【化33】
【0126】
50gの5−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−9−オンおよび520mLのアセトニトリルの溶液に、157g(2.2当量)のPPh
3を、周囲温度で少しずつ(in portion)添加した。次いで、60gのCCl
4(1.5当量)を40分かけて供給した。反応混合物を60℃に加熱し、完全な転化まで攪拌した。この反応混合物を蒸留して、259gの粗油を得た。500gの氷水および500mLのCH
2Cl
2を添加した。相分離後、水相をCH
2Cl
2で洗浄した。合せた有機相をブラインで洗浄し、有機相を蒸留した。
【0127】
粗油を精製するために、400mLのアセトンを添加し、その油を50℃で溶解させた。500mLのヘキサンを添加することによって、生成物を析出させた。この生成物を濾別し、150mLのヘキサンで洗浄した。母液を蒸発させ、先に記載したように再び結晶させた;この操作を2回繰り返した。合計で66.1gの褐色の油を得た。この得られた油をシリカ(AcOEt/シクロヘキサン:1/9)で精製して、62.8gの式VIIaの化合物を得た。収率:93.2%。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ=7.13−7.03(m,3H,Ar−H);4.18−4.17(m,1H);3.97−3.96(m,1H);2.15−2.07(m,2H);1.45−1.32(m,2H).
【0128】
工程e1):5−ブロモ−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンから出発する式IXの9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミンの調製:
【0129】
【化34】
【0130】
触媒調製:8.98mgの酢酸パラジウム(0.040mmol)および22mgのJosiphos配位子(Josiphos SL−J009−1、(2R)−1−[(1R)−1−[ビス(1,1−ジメチルエチル)ホスファノ]エチル]−2−(ジシクロヘキシルホスファノ)フェロセン(Solvias AG)、0.040mmol)を5mLシュレンク管に入れ、アルゴン/真空で不活性化(inertize)した。2.5mLのジメチルエーテルを添加し、この触媒を15分にわたり攪拌状態にしておいた。
【0131】
出発物質溶液:608mgの5−ブロモ−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2mmol)を5mLシュレンク管に入れ、アルゴン/真空で不活性化した。次いで、この出発物質に、2.5mLの脱ガスしたジメチルエーテルを添加した。
【0132】
反応:384gのNaOtBu(4mmol)を、ステンレス鋼の50mLオートクレーブに入れた。このオートクレーブの蓋を締め(screwed on)、アルゴン下に置いた。アルゴンの絶え間ない流れの下で、出発物質溶液をオートクレーブに移し入れ、続いて触媒溶液を移し入れた。NH
3を、圧力が1.05MPaに達するまで添加した。オートクレーブを105℃まで加熱し、圧力を1.6MPaまで上昇させた。32時間の反応後、反応を停止させた。79%の生成物を、HPLCにより同定した。
【0133】
式IXの化合物は、5−クロロ−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンを出発物質として用いて同様に調製され得る。
【0134】
工程f):式Iの3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製:
【0135】
【化35】
【0136】
9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イルアミン(166g、35%キシレン溶液、0.25mol)、トリエチルアミン(28g、0.275mol)およびキシレン(13g)を反応器中に投入し、混合物を80℃まで加熱した。3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボニルクロリド(182g、26%キシレン溶液、0.25mol)を2時間かけて添加した。転化後、生成物を抽出し、濃縮し、キシレン/メチシクロヘキサン(methycyclohexane)の混合物中で結晶させた。83gの純粋な生成物を単離した。(純度:97%、収率:82%)
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ=8.12(bs,1H,NH);8.05(s,1H,Pyr−H);7.83−7.80(d,1H,Ar−H);7.19−7.15(t,1H,Ar−H);7.04(d,1H,Ar−H);7.02−6.76(t,1H,CHF
2);4.1(s,1H,CH);3.95−4.0(bs,4H,CH & CH
3);2.18−2.08(m,2H,CH
2);1.55−1.3(2m,2H,CH
2).
【0137】
工程e2):式Iの3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製:
【0138】
20mLねじ蓋バイアルに、次の固体を充填した:CuO(0.05mmol、4.0mg)、無水CuCl
2(0.05mmol,6.7mg)、K
2CO
3(2.0mmol、277mg)、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.1mmol、193mg)および5−ブロモ−9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(1.0mmol、304mg)。磁気攪拌棒を加え、開けたままのバイアルをN
2で静かにフラッシした。ジオキサン(2mL)を添加し、続いてN,N’−ジメチルエチレンジアミン(0.45mmol、48μL)を添加した。このバイアルを密封し、余熱した130℃の遮蔽ブロック(screening block)の中に入れた。転化は24時間後に完了した。式Iの化合物の収率(HPLC分析)は、70%であった。
【0139】
この反応は、5,9,9−トリクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンを出発物質として使用して同様に行われ得る。