(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧シートは、表面側から順に、(A)透明樹脂フィルム層、(B)高輝度顔料を含む接着剤層、(C)着色基材フィルム層を有する。このような層構成を有することにより、最奥の層Cの明色に、層Bの高輝度感が浮かび上がり、しかも層Aがあることにより高い奥行感が生まれる。
【0012】
上記層Aは、透明樹脂フィルムからなる層であり、上記層B中の高輝度顔料や上記層Cの明色による意匠効果を効果的に発揮させるとともに、高い奥行感を付与する働きをする。
【0013】
上記透明樹脂フィルムは、上記層B中の高輝度顔料や上記層Cの明色による意匠効果を効果的に発揮させるために、全光線透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。なお本明細書において、全光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に従い測定した値である。
【0014】
上記透明樹脂フィルムの厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは80μm以上である。化粧シートの奥行感を高めることができる。厚みの上限は、化粧シートの奥行感を高めるという観点からは特にないが、本発明の化粧シートを公知のウェブ装置を使用して生産することができるようにする観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下であってよい。
【0015】
また上記透明樹脂フィルムは、少なくとも化粧シートの表層側になる面の60°グロスが好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは100%以上である。60°グロスは高いほど好ましい。着色基材フィルムの明色を高めることができる。なお本明細書において、60°グロスは、JIS−K 7105:1981に従い測定した値である。
【0016】
このような透明樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの透明樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムの1種又は2種以上を、積層した積層フィルムであってもよい。
【0017】
これらの中で、意匠性の観点から、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂のフィルムが好ましい。
【0018】
上記(B)高輝度顔料を含む接着剤層は、(b1)透明接着剤100質量部;及び(b2)平均粒子径10〜250μmの表面を、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上で被覆処理されたガラス粒子0.01〜5質量部;を含む。
【0019】
上記成分b1は、高輝度顔料を包含するとともに、上記層Aと上記層Cとを接着する働きをする。また成分b1は、高輝度顔料や層Cの明色による意匠効果を効果的に発揮させるため、透明である。
【0020】
なお本明細書において、「透明接着剤」とは、可視光線透過率が30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上の接着剤を意味する。ここで可視光線透過率は、島津製作所株式会社の分光光度計「SolidSpec−3700(商品名)」、及び光路長10mmの石英セルを使用して試料の接着剤の波長380〜780ナノメートルにおける透過スペクトルを測定し、試料の接着剤の該透過スペクトルの積分面積の、波長380〜780ナノメートルの全範囲における透過率が100%であると仮定した場合の透過スペクトルの積分面積に対する割合として算出した値である。
【0021】
本明細書において「接着剤」の用語は、粘着剤をも含む用語として使用する。
【0022】
上記成分b1は、化粧シート生産時はもちろんのこと、化粧シートを用いて物品を加飾化粧する際や、加飾化粧された物品が使用される際にも不透明にならず、透明であることが好ましい。
【0023】
上記成分b1としては、十分な接着力を有すること、及び透明であること以外は制限されず、任意の接着剤を用いることができる。例えば、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エポキシ系、ポリクロロプレン系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、セルロース系、及びスチレン−ブタジエン共重合体系などの接着剤の1種又は2種以上の混合物を成分とする接着剤をあげることができる。
【0024】
これらの中で、接着力と透明性の観点から、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリル系、ポリメタクリル系、及びポリ酢酸ビニル系の接着剤が好ましい。
【0025】
上記成分b2は、高輝度顔料として化粧シートに高輝度意匠を付与するとともに、上記層Cの明色による意匠効果を効果的に発揮させる働きをする。
【0026】
上記成分b2は表面を、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫からなる群から選択される1以上の金属酸化物で被覆処理されたガラス粒子である。ガラス及び上記金属酸化物は透明な物質であり、成分b2により反射される光、即ちガラス粒子の表面や上記金属酸化物被覆層の表面で反射される光は少量であるが、ガラス粒子の表面で反射されるか、上記金属酸化物被覆層で反射されるかにより大きな行路差が生じるため、少量であっても人の目には高い輝度感を感じさせるものになる。また多くの光は成分b2を透過するため、着色基材フィルムの明色による意匠効果が効果的に発揮され、明色であっても、黄ばんだり黒ずんだりして着色基材フィルムの白さや明るさ、ないしは鮮やかさを損なうことがない。
【0027】
上記金属酸化物の中で、意匠性の観点から、酸化チタンが好ましい。
【0028】
上記成分b2は平均粒子径が10〜250μmである。平均粒子径が10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上であることにより、高輝度感と着色基材フィルムの明色による意匠効果とを両立させることができる。また250μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは120μm以下であることにより、成分b2の分散ムラを目立たなくする効果を得ることができる。
【0029】
なお本明細書において、平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0030】
上記成分b2の配合量は、上記成分b1が100質量部に対し、0.01〜5質量部である。配合量が0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であることにより、高い輝度感を得ることができる。また9質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であることにより、成分b2の分散ムラを目立たなくする効果を得ることができる。
【0031】
上記成分b2の市販例としては、日本板硝子株式会社の「メタシャイン(商品名)」などをあげることができる。
【0032】
上記高輝度顔料を含む接着剤には、本発明の目的に反しない限度において、上記成分b1及び上記成分b2以外の任意成分を、所望に応じて、更に含ませることができる。上記任意成分としては、例えば、光重合開始剤、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、成分b2以外の顔料、及びフィラーなどの添加剤をあげることができる。上記任意成分の配合量は、成分b1が100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
【0033】
接着剤層を設ける方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法があげられる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを用いることができる。
【0034】
上記(C)着色樹脂フィルム層は、着色樹脂フィルムからなる層であり、化粧シートに明色による意匠効果を付与するとともに、基材フィルムとして物品の凹凸を吸収して加飾化粧面を滑らかにしたり、物品の有する意匠的に好ましくない色や模様等を隠蔽したりする働きをする。
【0035】
上記着色フィルムは明色であることにより、上記(B)高輝度顔料を含む接着剤層による輝度感を弥増すことができる。なお本明細書において「明色」とは、JIS Z8721:1993に従い、コニカミノルタ株式会社の分光測色計「CM−600d(商品名)」を使用して測定した明度が、5以上、10以下の色を意味する。好ましくは、7以上、10以下の色を意味する。
【0036】
上記着色フィルムは明色であること以外は制限されず、任意の着色フィルムを用いることができる。例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの着色フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムの1種又は2種以上を、積層した積層フィルムであってもよい。
【0037】
これらの中で、化粧シートの二次加工性の観点から、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂のフィルムが好ましい。
【0038】
また着色フィルムの厚みは、基材フィルムとして物品の凹凸を吸収して加飾化粧面を滑らかにする観点から、50μm以上、好ましくは80μm以上であってよい。厚みの上限は、凹凸吸収という観点からは特にないが、本発明の化粧シートを公知のウェブ装置を使用して生産することができるようにする観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは300μm以下であってよい。
【0039】
本発明の化粧シートは、所望に応じて、(A)透明樹脂フィルム層の表層側に、更にハードコート層を設けてもよい。化粧シートの耐擦傷性を高めることができる。上記ハードコート層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用い、公知のウェブ塗布方法を使用して形成することができる。
【0040】
本発明の化粧シートには、所望に応じて、エンボス模様を、エンボスロール等の公知の装置を使用して施してもよい。通常、エンボスにより艶消しとなる部分が全体の80%以下、好ましくは60%以下であれば、それ以外の光沢部分から、明色感、高輝度感、奥行感、及び透明感を得られ、本発明の効果を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
測定方法
(イ)光輝性(輝度感):
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの面と50cmの距離を隔てた位置から垂直に入射し、化粧シートの面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:光輝性が非常に高い。
○:光輝性が高い。
△:光輝性が低い。
×:光輝性がほとんどない。
【0043】
(ロ)透明感(層Cの明色による意匠効果)
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの面と該蛍光灯の光線とが50cmの距離を隔てるように平行に照射し、光源側の化粧シートの面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:層Cの明色を全く損なわない。
○:層Cの明色をほとんど損なわない。
△:層Cの明色を少し損なう。
×:層Cの明色を大きく損なう。
【0044】
(ハ)明色感
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの面と該蛍光灯の光線とが50cmの距離を隔てるように平行に照射し、光源側の化粧シートの面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:明色感が非常に高い。
○:明色感が高い。
△:明色感が低い。
×:明色感がない。
【0045】
使用した原材料
(A)透明樹脂フィルム:
(A−1)厚さ80μm、全光線透過率85%、60°グロス90%の透明ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
【0046】
(b1)透明接着剤:
(b1−1)DICグラフィックス株式会社の塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル共重合体系接着剤「VTP−NT(商品名)」、全光線透過率92%。
【0047】
(b2)ガラス粒子:
(b2−1)日本板硝子株式会社の酸化チタン被覆ガラス粒子「メタシャイン1080RS(商品名)」、粒子径80μm。
(b2−2)粒子径20μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(b2−3)粒子径40μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(b2−4)粒子径120μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(b2−5)粒子径200μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
【0048】
(b’2)比較成分:
(b’2−1)粒子径5μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(b’2−2)粒子径300μmの酸化チタン被覆ガラス粒子。
(b’2−3)日本板硝子株式会社の銀被覆ガラス粒子「メタシャイン1080PS(商品名)」、粒子径80μm。
【0049】
(C)着色基材フィルム:
(C−1)厚さ80μm、白色(明度9.4)の着色ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
(C−2)厚さ80μm、明灰色(明度5.6)の着色ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
【0050】
(C’)比較着色基材フィルム:
(C’−1)厚さ80μm、黒色(明度2.3)の着色ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
【0051】
実施例1
上記透明樹脂フィルム(A−1)に、上記成分(b1−1)100質量部と上記成分(b2−1)0.5質量部とを含む接着剤を、乾燥膜厚15μmとなるようにナイフコーターを使用して塗布し、乾燥後、その塗布面に上記着色基材フィルム(C−1)を、ラミネートロールの表面温度150℃の条件で熱ラミネートし、化粧シートを得た。上記(イ)〜(ハ)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
実施例2〜10、比較例1〜6
用いる原材料や配合比を、表1〜3の何れか1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
本発明の化粧シートは、光輝性、透明感、及び明色感の何れも良好である。一方、比較例1は、成分b2の粒子径が規定範囲よりも小さいため、光輝性に劣る。比較例2は、成分b2の粒子径が規定範囲よりも大きいため、透明感と明色感に劣る。比較例3は、成分b2の配合量が規定範囲よりも少ないため、光輝性に劣る。比較例4は、成分b2の配合量が規定範囲よりも多いため、透明感と明色感に劣る。比較例5は、ガラス粒子を被覆する金属が規定外の銀であるため、透明感と明色感に劣る。比較例6は、着色基材フィルムが規定範囲外の暗色であるため、明色感に劣る。